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特開2023-131187鉛蓄電池管理装置、鉛蓄電池システムおよび鉛蓄電池管理方法
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  • 特開-鉛蓄電池管理装置、鉛蓄電池システムおよび鉛蓄電池管理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131187
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】鉛蓄電池管理装置、鉛蓄電池システムおよび鉛蓄電池管理方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/392 20190101AFI20230914BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230914BHJP
   G01R 31/379 20190101ALI20230914BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
G01R31/392
H01M10/48 P
G01R31/379
H02J7/00 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035762
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 広和
(72)【発明者】
【氏名】中尾 浩一郎
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216AB04
2G216BA29
2G216CB35
2G216CD04
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503EA08
5H030AA01
5H030AS06
5H030AS08
5H030FF42
(57)【要約】      (修正有)
【課題】鉛蓄電池の劣化検出を適正に行なう鉛蓄電池向けの管理装置、それを用いた鉛蓄電池システム、および鉛蓄電池管理方法を提供する。
【解決手段】鉛蓄電池管理装置は、鉛蓄電池の充電電流および放電電流を取得する取得部と、記憶部と、前記記憶部に情報を記憶させる処理部と、出力部と、を備える。前記処理部は、前記充電電流および放電電流に基づいて前記鉛蓄電池のサイクル数を得るとともに、前記放電電流に基づいて前記鉛蓄電池の放電積算量を算出して、前記記憶部に前記サイクル数および放電積算量を記憶させ、前記サイクル数および放電積算量の少なくともいずれかが、予め設定された予告閾値に到達した場合に、前記出力部に電池寿命予告を出力させる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛蓄電池の充電電流および放電電流を取得する取得部と、
記憶部と、
前記記憶部に情報を記憶させる処理部と、
出力部と、を備え、
前記処理部は、
前記充電電流および放電電流に基づいて前記鉛蓄電池のサイクル数を得るとともに、前記放電電流に基づいて前記鉛蓄電池の放電積算量を算出して、前記記憶部に前記サイクル数および放電積算量を記憶させ、
前記サイクル数および放電積算量の少なくともいずれかが、予め設定された予告閾値に到達した場合に、前記出力部に電池寿命予告を出力させる
鉛蓄電池管理装置。
【請求項2】
前記処理部は、判定閾値以上の通電電気量の、放電と充電とがされた場合に、前記記憶部に記憶させるサイクル数を増加させる、請求項1に記載の鉛蓄電池管理装置。
【請求項3】
前記処理部は、
前記鉛蓄電池の運用開始からの経過時間を得るための情報を前記記憶部に記憶させ、
前記経過時間、サイクル数および放電積算量のいずれかが、予め設定された予告閾値に到達した場合に、前記出力部に電池寿命予告を出力させる、請求項1または請求項2に記載の鉛蓄電池管理装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記経過時間、サイクル数および放電積算量の少なくともいずれかが、前記予告閾値または前記予告閾値より高い値に設定された寿命閾値に到達した場合に、いずれのパラメータが閾値に到達したのかを前記記憶部に記憶させる、請求項3に記載の鉛蓄電池管理装置。
【請求項5】
前記サイクル数および放電積算量の少なくともいずれかの予告閾値の設定または変更を受け付ける受付部をさらに備える
請求項1~請求項4のいずれかに記載の鉛蓄電池管理装置。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれかに記載の鉛蓄電池管理装置と、
前記鉛蓄電池管理装置によって管理される鉛蓄電池と、を備える
鉛蓄電池システム。
【請求項7】
前記鉛蓄電池は、並列接続された複数の組電池ユニットを含み、
前記鉛蓄電池管理装置は、各組電池ユニットに設けられて各組電池ユニットのサイクル数および放電積算量を得るバンク管理装置と、前記電池寿命予告を出力するドメイン管理装置とを含む
請求項6に記載の鉛蓄電池システム。
【請求項8】
鉛蓄電池の充電電流および放電電流を取得し、
前記充電電流および放電電流に基づいて前記鉛蓄電池のサイクル数を得るとともに、前記放電電流に基づいて前記鉛蓄電池の放電積算量を算出し、
前記サイクル数および放電積算量の少なくともいずれかが、予め設定された予告閾値に到達した場合に、電池寿命予告を出力する
鉛蓄電池管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、鉛蓄電池向けの管理装置、それを用いた鉛蓄電池システム、および鉛蓄電池管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池は、停電時などの非常時の電力バックアップのために従来広く用いられている。この用途では、鉛蓄電池はフロート充電され、非常時にのみ放電するため、放電とそれに伴う充電の回数は、それ程多くない。
【0003】
近年、ピークシフトやエネルギーマネジメントなど、充放電を日常的に繰り返す用途(サイクル用途)への、鉛蓄電池の適用が拡大している。このニーズに応えて、サイクル用途に適した鉛蓄電池が開発されている。
【0004】
特許文献1は、無停電電源装置(UPS)が備える蓄電池を、デマンドコントロールやネガワット取引に活用するための技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6402924号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リチウムイオン電池を用いた典型的な蓄電池システムは、直列に接続された電池セルを複数個のセル管理装置(CMU)によって監視し(電圧や温度を測定し)、それらセル管理装置から電池管理装置(BMU)に測定データを集約する。BMU、またはBMUから測定データを受信したコンピュータが、測定データに基づいて、運用に伴う電池セルの劣化を検出する。
【0007】
鉛蓄電池システムでは、運用に伴う鉛蓄電池の劣化挙動が、リチウムイオン電池を用いた場合と大きく異なる。鉛蓄電池は、浅い放電深度での充放電を繰り返して、放電電気量の積算値はそれ程大きくない場合も、活物質の劣化が進行する。サイクル用途の鉛蓄電池システムにおける、運用に伴う適正な劣化検出のために、改善の余地が残されている。
【0008】
本発明の一態様は、鉛蓄電池の劣化検出を適正に行なう鉛蓄電池向けの管理装置、それを用いた鉛蓄電池システム、および鉛蓄電池管理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る鉛蓄電池管理装置は、鉛蓄電池の充電電流および放電電流を取得する取得部と、記憶部と、前記記憶部に情報を記憶させる処理部と、出力部と、を備える。前記処理部は、前記充電電流および放電電流に基づいて前記鉛蓄電池のサイクル数を得るとともに、前記放電電流に基づいて前記鉛蓄電池の放電積算量を算出して、前記記憶部に前記サイクル数および放電積算量を記憶させ、前記サイクル数および放電積算量の少なくともいずれかが、予め設定された予告閾値に到達した場合に、前記出力部に電池寿命予告を出力させる。
【発明の効果】
【0010】
上記態様によれば、鉛蓄電池の劣化検出を適正に行ない、鉛蓄電池システムを安定的に運用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】鉛蓄電池システムの概要を示す図である。
図2】鉛蓄電池システムおよび整流器の概要を示すブロック図である。
図3】管理装置の概要を示すブロック図である。
図4】サイクル数および放電積算量を得る処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
鉛蓄電池管理装置は、鉛蓄電池の充電電流および放電電流を取得する取得部と、記憶部と、前記記憶部に情報を記憶させる処理部と、出力部と、を備える。前記処理部は、前記充電電流および放電電流に基づいて前記鉛蓄電池のサイクル数を得るとともに、前記放電電流に基づいて前記鉛蓄電池の放電積算量を算出して、前記記憶部に前記サイクル数および放電積算量を記憶させ、前記サイクル数および放電積算量の少なくともいずれかが、予め設定された予告閾値に到達した場合に、前記出力部に電池寿命予告を出力させる。
【0013】
ここで「鉛蓄電池」は、複数個の鉛蓄電池を直列に接続した、または直並列に接続した、組電池であってもよい。
「放電積算量」は、鉛蓄電池の運用開始時点から鉛蓄電池より放電される電気量の積算値を意味する。
「予告閾値」は、鉛蓄電池の寿命(エンドオブライフ:EOL)に相当する寿命閾値より低い値に設定されてもよい。例えば、鉛蓄電池のEOLに相当するサイクル数が5500サイクルである場合に、予告閾値は5000サイクルに設定されてもよい。
【0014】
上記構成の鉛蓄電池管理装置により、鉛蓄電池の劣化(劣化予兆)の検出を適正に行ない、鉛蓄電池システムを安定的に運用することができる。
サイクル用途の鉛蓄電池システムにおいて、鉛蓄電池が寿命に至って所望の充放電ができなくなると、電力料金を削減できない、電力取引に参加できないなど、システムのユーザー・顧客に機会損失が生じる。上記構成では、サイクル数および放電積算量の少なくともいずれかが予告閾値に到達した場合に電池寿命予告が出力されるため、鉛蓄電池を交換するなど、予防保全を実施できる。
前述のように、鉛蓄電池は非常時の電力バックアップのために従来多く用いられている。その用途では、大半の時間、鉛蓄電池はフロート充電される。鉛蓄電池のサイクル数は非常に少ない(例えば、1カ月に数回のみである)ため、サイクル数をカウントする必要性や、そのための鉛蓄電池管理装置(すなわち、回路基板)を備える必要性は乏しかった。
これに対し、上記構成の鉛蓄電池管理装置は、リチウムイオン電池の電池管理装置と同様に、電池の運用状態を詳細に把握する。この鉛蓄電池管理装置は、鉛蓄電池のサイクル数を得て記憶する機能を有する。これにより、非常用途と異なり、日常的に充放電を繰り返すサイクル用途(ピークシフトやエネルギーマネジメント)のシステムに鉛蓄電池を適用できるとともに、出力される電池寿命予告に基づき予防保全を実施して鉛蓄電池システムを安定的に運用できる。
【0015】
前記処理部は、判定閾値以上の通電電気量の、放電と充電とがされた場合に、前記記憶部に記憶させるサイクル数を増加させてもよい。
【0016】
ピークシフトなどのサイクル用途(産業用途)では、車載負荷に電力供給する自動車用途と異なり、鉛蓄電池の充電および放電が、ある程度の時間にわたり継続的に行なわれる。本発明者らは、判定閾値以上の通電電気量の放電と充電とがなされた場合にサイクル数を増加させる(インクリメントする)ことで、サイクル用途(産業用途)の鉛蓄電池システムにおけるサイクル数のカウントを適正に行なえることを見出した。
従来、そのニーズが乏しかったことから、鉛蓄電池システムにおいてサイクル数をカウントするための具体的な手法は確立されていない。上記構成によれば、サイクル用途の鉛蓄電池システムにおけるサイクル数のカウントを、少ない追加コストで適正に行なうことができる。
【0017】
前記処理部は、前記鉛蓄電池の運用開始からの経過時間を得るための情報を前記記憶部に記憶させ、前記経過時間、サイクル数および放電積算量の少なくともいずれかが、予め設定された予告閾値に到達した場合に、前記出力部に電池寿命予告を出力させてもよい。
【0018】
上記構成により、鉛蓄電池の運用状態を多面的に評価して、予防保全を促すことで、鉛蓄電池システムを高い信頼性で運用することができる。
【0019】
前記処理部は、前記経過時間、サイクル数および放電積算量の少なくともいずれかが、前記予告閾値または前記予告閾値より高い値に設定された寿命閾値に到達した場合に、いずれのパラメータが閾値に到達したのかを前記記憶部に記憶させてもよい。
【0020】
上記構成により、運用履歴データ、運用実績に基づく、鉛蓄電池の適正な交換(更新)や、今後の運用変更(例えば、サイクル頻度の変更、上下限電圧(または上下限SOC)の変更)などを、鉛蓄電池システムのユーザーや顧客に提案することができる。
【0021】
鉛蓄電池管理装置は、前記サイクル数および放電積算量の少なくともいずれかの予告閾値の設定または変更を受け付ける受付部をさらに備えてもよい。
【0022】
上記構成により、鉛蓄電池管理装置が工場から出荷された後に、予告閾値を設定したり変更したりできるため、個々のユーザー・顧客のニーズに柔軟に応じることができる。
【0023】
鉛蓄電池システムは、上述の鉛蓄電池管理装置と、前記鉛蓄電池管理装置によって管理される鉛蓄電池と、を備える。
前記鉛蓄電池は、並列接続された複数の組電池ユニットを含み、前記鉛蓄電池管理装置は、各組電池ユニットに設けられて各組電池ユニットのサイクル数および放電積算量を得るバンク管理装置と、前記電池寿命予告を出力するドメイン管理装置とを含んでもよい。
【0024】
鉛蓄電池管理方法は、鉛蓄電池の充電電流および放電電流を取得し、前記充電電流および放電電流に基づいて前記鉛蓄電池のサイクル数を得るとともに、前記放電電流に基づいて前記鉛蓄電池の放電積算量を算出し、前記サイクル数および放電積算量の少なくともいずれかが、予め設定された予告閾値に到達した場合に、電池寿命予告を出力する。
【0025】
上述の鉛蓄電池管理方法は、鉛蓄電池に併設された管理装置によって実施されてもよいし、鉛蓄電池から離れて設置されたコンピュータや、スマートフォン・タブレットといった携帯端末装置によって実施されてもよい。
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明するが、本発明は実施形態に限定されない。
【0027】
図1に示すように、鉛蓄電池システム100は、組電池ユニットUと、監視装置110とを備える。組電池ユニットUは、金属製の筐体(電池盤)115に、直列接続された複数個の鉛蓄電池Pb1,Pb2,・・・を収容している。鉛蓄電池として、サイクル用途に適したものが用いられている。
【0028】
監視装置110は、金属製の筐体(監視盤)の前面に、モニタ111と、前面扉を開けるための取っ手113とを有する。監視装置110は、筐体内に、後述する管理装置1D,1Bの両方を収容する。
【0029】
監視装置110は、図1に示すように単一の組電池ユニットUを監視してもよいし、図2に示すように複数個の組電池ユニットUを監視してもよい
【0030】
図2は、鉛蓄電池システム100および整流器4の電気的構成を示す。
整流器4は、商用電源などから供給される交流電力を、制御部5によって制御される電力変換器(AC/DCコンバータ)3で直流電力に変換し、図示しない直流電力負荷と、鉛蓄電池システム100とに供給する。
【0031】
鉛蓄電池システム100は、ドメイン管理装置1Dと、整流器4から延びる共通電力線Loに並列に接続された複数個の組電池ユニットUと、を備えている。本実施形態では、同一構成を有する5個の組電池ユニット(U1は1番目の組電池ユニット、U2は2番目の組電池ユニット、U5は5番目の組電池ユニット)が、個別電力線Lmにより、共通電力線Loに並列接続されている。
【0032】
各組電池ユニットUは、直列に接続された複数個の鉛蓄電池Pb1,Pb2・・・を含む組電池(以下、バンクとも称する)と、複数個の電圧センサー33と、電流センサー41と、電流遮断装置45と、バンク管理装置1Bとを備えている。
【0033】
電圧センサー33は、各鉛蓄電池Pbの電圧を測定する。各組電池ユニットUの複数個の電圧センサー33が、1枚の回路基板(監視ユニット)に搭載されていてもよい。電圧センサー33または監視ユニットは、信号線を介してバンク管理装置1Bと接続されており、各鉛蓄電池Pbの電圧測定データを、バンク管理装置1Bに送信する。
【0034】
電流センサー41は、各組電池ユニットUの個別電力線Lmに設けられ、複数個の鉛蓄電池を直列接続した組電池(バンク)の電流を測定する。電流センサー41は信号線を介してバンク管理装置1Bに接続されており、電流測定データを、バンク管理装置1Bに送信する。
【0035】
電流遮断装置45は、正常時はクローズ(normally close)に制御される。電流遮断装置45は、組電池ユニットUの異常発生時やメンテナンス時に、バンク管理装置1Bにより開放され、電流を遮断する(バンクを解列する)。
【0036】
ドメイン管理装置1Dは、通信バス120(例えば、CAN(Controller Area Network)バスまたはLANケーブル)を介して各組電池ユニットUのバンク管理装置1Bと接続されており、各バンク管理装置1Bから各組電池ユニットUの状態に関するデータを所定時間ごとに取得する。
【0037】
監視装置110(図1参照)が、単一の組電池ユニットUを監視する場合、ドメイン管理装置1Dを省略し、バンク管理装置1Bに、以下に説明するドメイン管理装置1Dの機能を持たせてもよい。
【0038】
ドメイン管理装置1Dには、通信機器25が接続されている。通信機器25は、各バンク管理装置1Bから取得した状態データを外部に送信する。通信機器25は、独立したデバイス、例えばルータ型の通信デバイスであってもよいし、ネットワークカード型のデバイス(ネットワークインターフェースカード)であってもよい。
【0039】
ドメイン管理装置1Dは、信号線を介して整流器4の制御部5に接続されていてもよい。
【0040】
図3は、管理装置1D,1Bの構成を示すブロック図である。ドメイン管理装置1Dおよびバンク管理装置1Bを区別して示すが、構成はほぼ同じであり、以下これらを総称して管理装置1ともいう。
【0041】
管理装置1(回路基板)は、処理部10、第1通信部11、第2通信部12、第3通信部13、記憶部14、および入出力部15を備える。
【0042】
処理部10は、マイクロコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit )および内蔵するROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等のメモリを用い、各構成部を制御して処理を実行する。
【0043】
第1通信部11は、電圧センサー33または監視ユニット、および電流センサー41(図2参照)との通信を実現する通信デバイスである。バンク管理装置1Bの第1通信部11は、各組電池ユニットUの充電電流および放電電流を取得する取得部として機能する。第1通信部11は具体的には、RS-232C等のシリアル通信インタフェースである。
【0044】
第2通信部12は、他の管理装置1との通信を実現する通信デバイスである。第2通信部12は例えば、CANバスにおける通信を実現する通信デバイスである。
【0045】
第3通信部13は、通信機器25(図2参照)との通信を実現する通信デバイスである。第3通信部13は例えば、Ethernet(登録商標)、又は無線通信用アンテナ等の通信インタフェースを用いる。
【0046】
第1通信部11から第3通信部13の一部は、マイクロコンピュータである処理部10の内部に組み込まれていてもよい。
【0047】
記憶部14は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリを用いる。記憶部14には、処理部10が読み出して実行する管理プログラム1Pが記憶されている。ドメイン管理装置1Dの記憶部14に記憶されている管理プログラム1PDと、バンク管理装置1Bの記憶部14に記憶されている管理プログラム1PBとは内容が異なる。管理プログラム1PBおよび管理プログラム1PDは、処理部10内蔵のROMに記憶されていてもよい。
【0048】
管理プログラム1PBおよび管理プログラム1PDは、書き換え可能であってもよい。管理プログラム1PB又は管理プログラム1PDは、記憶媒体9に記憶されている管理プログラム9PB又は管理プログラム9PDを、処理部10が入出力部15を介して読み出し、複製して記憶部14に記憶したものであってもよい。
【0049】
記憶部14は、第1通信部11、第2通信部12、および第3通信部13における通信設定を記憶する。処理部10は、記憶部14に記憶してある通信設定に基づき、監視ユニット、他の管理装置1、および通信機器25と通信可能である。記憶部14は、監視ユニットや電流センサー41から取得した状態データを、通信機器4に渡すまで一時的または非一時的に記憶する。
【0050】
入出力部15は、外部機器との接続インタフェースであり、複数の外部端子を備える。外部端子は、USB(Universal Serial Bus)を含んでもよい。
【0051】
ドメイン管理装置1Dの入出力部15には、モニタ111及び入力インタフェース152が接続可能である。モニタ111及び入力インタフェース152は、タッチパネル内蔵型の液晶パネルを用いて一体化されてもよい。モニタ111及び入力インタフェース152は、有線又は無線により通信接続される、ディスプレイ及び入力インタフェースを有する保守員の端末装置に代替されてもよい。有線又は無線による通信接続は、通信機器25を介して行なわれてもよい。ドメイン管理装置1Dの入出力部15およびモニタ111は、電池寿命予告を出力する出力部として機能する。
【0052】
本実施形態では、バンク管理装置1Bが、各組電池ユニットUにおける鉛蓄電池Pbのサイクル数および放電積算量を得る。ドメイン管理装置1Dが、各バンク管理装置1Bで得たサイクル数および放電積算量に基づき、電池寿命予告を出力する。サイクル数および放電積算量の少なくともいずれかが、予め設定された予告閾値に到達した場合に、ドメイン管理装置1Dに接続されているモニタ111に電池寿命予告が出力される。ドメイン管理装置1Dからの電池寿命予告は、通信機器25(図2参照)を介して、電子メールやメッセージ、Webページのかたちで外部に出力されてもよいし、遠隔監視サーバ(図示せず)に送信されてもよい。
【0053】
各バンク管理装置1Bからの情報を集約するドメイン管理装置1Dで電池寿命予告を出力するため、各バンクに出力部を設ける場合と比べて追加コストを低減できる。ドメイン管理装置1Dの出力部は、電池寿命予告を出力する際、いずれの組電池ユニットUにおける電池寿命予告であるかを併せて示してもよい。
【0054】
ドメイン管理装置1Dの入出力部15および入力インタフェース152は、サイクル数および放電積算量の少なくともいずれかの予告閾値の設定または変更を受け付ける受付部として機能する。第3通信部13が受付部として機能して、遠隔からの予告閾値の設定または変更を受け付けてもよい。管理装置1Dが工場から出荷された後に、鉛蓄電池システム100が設置される現場において、または遠隔から、予告閾値を設定したり変更したりできるため、個々のユーザー・顧客のニーズに柔軟に応じることができる。ユーザーが鉛蓄電池Pbを深く放電することを望む場合は予告閾値を低く設定し、そうでない場合は予告閾値を標準的な値に設定できる。例えば、放電深度(DOD)70%でのサイクルが想定される場合は予告閾値を5000サイクルに設定し、DOD30~50%でのサイクルが想定される場合は予告閾値を5500サイクルに設定する。
【0055】
ドメイン管理装置1Dは、各バンク管理装置1Bから送信される各バンクの電流値を合計して、総合電流値(共通電力線Loを流れる電流値)を算出してもよい。
ドメイン管理装置1Dは、いずれの組電池ユニットUが稼働しているか(解列されていないか)を認識し、認識した状態を外部に出力してもよい。
【0056】
各バンク管理装置1Bは、組電池ユニットUに関し、判定閾値以上(例えば、10アンペアアワー[Ah]以上)の放電と充電とがされた場合に、サイクル数を増加させる。以下に、所定サンプリング周期で充放電を検出する例を示す。
・判定閾値以上の、放電、充電、放電、充電、が行われた場合、2サイクルの充放電が行なわれたとカウントする。
・判定閾値以上の、放電、放電、充電、放電、充電、が行われた場合も、2サイクルの充放電が行なわれたとカウントする。
・判定閾値以上の、放電、充電、充電、放電、充電、が行われた場合も、2サイクルの充放電が行なわれたとカウントする。
【0057】
本実施形態では放電から充電に切り替わったタイミングでサイクル数をインクリメントするが、これに限定されず、充電から放電に切り替わったタイミングでサイクル数をインクリメントしてもよい。
【0058】
図4を参照して、各バンク管理装置1Bにおいてサイクル数をカウントする方法および放電積算量を算出する方法を説明する。各バンク管理装置1Bは、図4に示す処理を定期的に実行してもよい。
【0059】
バンク管理装置1Bは、個別電力線Lmを流れる電流の向きが、前回の処理実行時と同じかを判定し(ステップS101)、同じであれば(S101:YES)、「積算量」にその時点の電流値に基づく電気量を積算する(ステップS102)。「積算量」は、変数ないしカウンタとして記憶部14に用意された記憶領域であってもよい。個別電力線Lmを流れる電流の向きが、前回の処理実行時と異なる場合(S101:NO)、「積算量」の値をゼロにリセットし(ステップS103)、その後、「積算量」にその時点の電流値に基づく電気量を積算する(S102)。
【0060】
バンク管理装置1Bは、「積算量」の絶対値(組電池ユニットUにおける一方向の通電電気量)が、判定閾値以上かを判定する(ステップS104)。例えば、「積算量」の絶対値が、10Ah以上であるかが判定される。
【0061】
「積算量」の絶対値が判定閾値以上であれば(S104:YES)、バンク管理装置1Bは、電流測定データの符号から、放電が行われているかを判定する(ステップS105)。放電が行われていれば(S105:YES)、「放電フラグ」に1をセットする(ステップS106)。「放電フラグ」は、記憶部14に用意された記憶領域であってもよい。
【0062】
「積算量」の絶対値(組電池ユニットUにおける一方向の通電電気量)が、判定閾値以上でない(例えば、10Ah未満である)場合(S104:NO)、サイクル数をカウントする処理を終了し、放電積算量算出の処理に進む。
【0063】
電流測定データの符号から、放電が行なわれていないと判定される場合(S105:NO)、「放電フラグ」が1であるかが判定される(ステップS107)。「放電フラグ」が1であれば(S107:YES)、「放電フラグ」をゼロにリセットし、かつ、記憶部14に記憶されているサイクル数をインクリメントする(ステップS108)。「放電フラグ」が1でなければ(S107:NO)、サイクル数をカウントする処理を終了し、放電積算量算出の処理に進む。
【0064】
バンク管理装置1Bは、電流測定データの符号から、放電が行われているかを判定する(ステップS109)。放電が行われていれば(S109:YES)、その時点の電流値に基づく放電電気量を算出し、記憶部14に記憶されている放電積算量を更新する(ステップS110)。放電が行われていなければ(S109:NO)、処理を終了する。
【0065】
図3に示すドメイン管理装置1Dの処理部10は、さらに、鉛蓄電池システム100の運用開始からの経過時間を得るための情報を記憶部14に記憶させる。
ドメイン管理装置1Dは、経過時間、いずれかの組電池ユニットUにおけるサイクル数、またはいずれかの組電池ユニットUにおける放電積算量が、予め設定された予告閾値に到達した場合に、入出力部15に電池寿命予告を出力させる。
【0066】
ドメイン管理装置1Dの処理部10は、さらに、経過時間、サイクル数および放電積算量の少なくともいずれかが、予告閾値または予告閾値より高い値に設定された寿命閾値に到達した場合に、いずれの組電池ユニットUにおいていずれのパラメータが閾値に到達したのかを把握する。処理部10は、把握した情報を記憶部14に記憶させる。
【0067】
以上説明した管理装置1により、鉛蓄電池Pbの劣化検出を適正に行ない、出力される電池寿命予告に基づき予防保全を実施して、鉛蓄電池システム100を安定的に運用することができる。
【0068】
判定閾値以上の通電電気量の放電と充電とがされた場合にサイクル数をインクリメントする構成により、サイクル用途の鉛蓄電池システム100におけるサイクル数のカウントを、少ない追加コストで適正に行なうことができる。
【0069】
運用開始からの経過時間、サイクル数および放電積算量の少なくともいずれかが、予め設定された予告閾値に到達した場合に電池寿命予告を出力する構成により、鉛蓄電池システム100を高い信頼性で運用することができる。
【0070】
いずれの組電池ユニットUにおいて、経過時間、サイクル数および放電積算量のいずれが予告閾値または寿命閾値に到達したのかを記憶する構成により、運用履歴データに基づく、高付加価値の提案をユーザーや顧客に対し行なえる。
【0071】
上述の実施形態では、監視装置110(図1参照)の筐体に、管理装置1D,1Bを収容したが、にバンク管理装置1Bを組電池ユニットUの筐体115に収容してもよい。
【0072】
組電池ユニットUの筐体115は、複数のバンクに相当する鉛蓄電池Pbを収容してもよい。
【0073】
鉛蓄電池管理装置を備えた鉛蓄電池システム100は、ピークシフトやエネルギーマネージメントに用いられてもよいし、電力バックアップに用いられてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1B バンク管理装置
1D ドメイン管理装置
10 処理部
11 第1通信部(取得部)
14 記憶部
15 入出力部(出力部)
110 監視装置(鉛蓄電池管理装置)
111 モニタ(出力部)
U 組電池ユニット(鉛蓄電池)
図1
図2
図3
図4