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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131194
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】水処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/00 20230101AFI20230914BHJP
【FI】
C02F1/00 K
C02F1/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035788
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】チュオン テイ リ
(72)【発明者】
【氏名】榊原 崇
(72)【発明者】
【氏名】佐岡 美咲
(72)【発明者】
【氏名】足立 知弘
(57)【要約】
【課題】圧力・流量上昇を抑制し、安定した薬剤供給を行う水処理装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る水処理装置1は、濾材を内包した濾過部2と、濾過部2に原水を流入させるための原水流入配管10と、原水流入配管10の経路内で薬剤を添加する薬剤供給部3と、濾過部2から濾過後の浄水を取り出すための浄水吐出配管20と、原水流入配管10において、薬剤供給部3の上流側に減圧弁80を設けられ、原水流入配管10内の圧力を所望の範囲内に調整することにより、薬剤供給部3への原水流入量を所定の範囲内に調整することができる。薬剤供給部3に過剰な水量が流入することを抑制することにより、所望の水量・水圧を固形薬剤に与え、所望の濃度の薬液を供給することができ、薬剤供給部3から規定濃度以上の薬剤が溶出することを抑制する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾材を内包した濾過部と、
前記濾過部に原水を流入させる原水流入配管と、
前記原水流入配管の経路内で薬剤を添加する薬剤供給部と、
前記濾過部から濾過後の処理水を取り出す浄水吐出配管と、
前記原水流入配管において、前記薬剤供給部の上流側に設けた減圧弁と、を有し、
前記減圧弁は、前記薬剤供給部から規定濃度以上の薬剤が溶出することを抑制するために、前記原水流入配管内の圧力を所望の範囲内に調整することを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記薬剤供給部は、
中空である筐体と、
前記筐体内に設けられ鉛直方向に立ち上がる筒形状の噴出管と、
前記噴出管の上部に設けられ前記薬剤を設置できる薬剤載置部と、
前記噴出管の外周に設けられた回収部と、を有し、
前記原水流入配管を流れる原水は、前記噴出管を介して前記筐体内に入り、前記薬剤と接触し、前記回収部に溜まり、前記回収部から前記原水流入配管へ流れることを特徴とする請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記原水流入配管の経路内であって、前記減圧弁と前記薬剤供給部との間の第一分岐部で分岐し、前記薬剤供給部と前記濾過部との間の第二分岐部で前記原水流入配管に合流するバイパス配管と、
前記バイパス配管経路内にバイパスバルブと、
前記濾過部からの排水を流す逆洗ドレン管と、
前記浄水吐出配管の経路内に絞り部と、
前記濾過部に接続された前記原水流入配管、前記浄水吐出配管、前記逆洗ドレン管と、前記濾過部内の開口との連通接続を切り替える切替弁と、を有し、
濾過処理時には、前記バイパスバルブを閉鎖させ、前記濾過部と前記浄水吐出配管とを連通させ、
逆洗処理時には、前記バイパスバルブを連通させ、前記濾過部と前記逆洗ドレン管とを連通させることを特徴とする請求項1または2に記載の水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過と薬剤添加によって水を浄化する水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水処理装置における酸化剤の供給には固体の酸化剤を水に接触させる薬剤供給装置が用いられている。例えば、井戸水を浄水処理する場合には、固体の次亜塩素酸カルシウムを徐々に溶かす薬剤供給装置を用いて、浄水処理対象となる原水を酸化させることが可能である。
【0003】
定量ポンプで薬剤を注入するシステム、もしくは流量に関わらず一定量の薬剤を溶出させる薬剤供給装置においては、流量が増加した際において薬剤濃度が低下する。
【0004】
図6に示す通り、固形薬剤供給装置101においては、取水口102から原水を流入させて水溶性固形薬剤103に原水を接触させる、一定の範囲内で流量が増えた際に薬剤接触相104内の水位が上昇し、接触させる水溶性固形薬剤103の量が増加させることが可能である。本機構により、流量が上昇した際も薬剤溶出量が上昇し、薬剤の濃度低下を抑えることが可能である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公昭58-49836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような水処理装置においては、薬剤の添加量を調整し、所望の濃度の薬液を得る必要がある。特に、簡単な構成によって所望の濃度の薬液が得られることが望まれている。
【0007】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、水処理装置内部において、原水流入配管内部の水圧または水量を制御することで、固形薬剤供給装置に過剰な水流・圧力がかかることを抑制することにより、薬剤を浸す原水の水圧・水流を制限し、所望の濃度の薬液を得ることができる水処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、この目的を達成するために、本発明に係る水処理装置は、濾材を内包した濾過部と、前記濾過部に原水を流入させる原水流入配管と、前記原水流入配管の経路内で薬剤を添加する薬剤供給部と、前記濾過部から濾過後の浄水を取り出す浄水吐出配管と、前記原水流入配管において、前記薬剤供給部の上流側に設けた減圧弁と、を有し、前記減圧弁は、前記薬剤供給部から規定濃度以上の薬剤が溶出することを抑制するために、前記原水流入配管内の圧力を所望の範囲内に調整することが出来るという構成により、所期の目的を達成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水処理装置において、原水流入配管内の圧力を所望の範囲内に調整することにより、濾過処理時の水量を所望の範囲に制御することができることで、薬剤供給部への原水流入量を所定の範囲内に調整することができる。薬剤供給部内の水位を所望の高さにすることによって、薬剤の溶出量を所望の値に抑えることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態1の水処理装置の全体構成の概略図
図2】同水処理装置の逆洗処理時の水の流れを示す概略図
図3】同水処理装置のリンス処理時の水の流れを示す概略図
図4】同水処理装置の濾過部と切替弁の断面図
図5】同水処理装置の薬剤供給部の断面図
図6】従来の水処理装置の構成を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
(実施の形態1)
本実施の形態に係る水処理装置1は、井戸水または貯水槽に蓄えた水を原水とし、この原水に含まれる金属イオンや濁質成分を除去する濾過処理と、濾過処理によって系内に蓄積された金属イオンの凝集物、濁質成分を系外へ排出する逆洗処理を行うものである。
【0013】
図1は、本実施の形態の水処理装置1の全体構成を示すとともに、濾過処理時における水の流れを示した概略図となっている。
【0014】
図1に示すように、水処理装置1は、濾材を内包した濾過部2と、原水に対して薬剤を添加する薬剤供給部3を有し、濾過部2、薬剤供給部3を後述するように配管で接続して構成される。濾過部2は、原水から金属イオンや濁質成分を除去し、原水を浄化するものであり、いわば、水処理装置1の心臓部である。濾過部2に溜まった汚れは、逆洗処理、リンス処理を行って装置外へと排出し、濾過部2を綺麗に保ち、繰り返し使用することが可能にしている。逆洗処理とは、濾過部2内で原水を逆流する方向に流し、汚れを排出する処理である(図2)。リンス処理とは、逆洗処理を行った後、濾過部2内に濾過方向に原水を流して分離した汚れを装置外へ排出するものである(図3)。この濾過部2に対して、原水を送る側の配管を原水流入配管10とし、濾過部2で浄化された水を濾過部2から送出する配管を浄水吐出配管20とし、逆洗とリンス運転で汚れを排出する配管を逆洗ドレン管40とする。浄化された水は、水処理装置1外部に設けられる浄水タンク6などに貯められ、必要な時に生活水として使われることになる。
【0015】
水処理装置1に対しては、原水流入配管10の入口側(濾過部2の反対側)に接続された電動ポンプ4によって原水が送られる。なお、電動ポンプ4を使用する代わりに、原水を蓄えた貯水槽を高所に設け、貯水槽と水処理装置1との高低差によって原水を水処理装置1に送る方法でもよい。また、地域などで共同運営している水道水を直接接続してもよい。本実施の形態では、井戸、貯水槽、水道等に加え、原水を送り出す装置類を含めて水源とする。
【0016】
電動ポンプ4は、井戸水または貯水槽へ蓄えた水を吸い上げ、吐出する電動機で駆動するポンプであって、例えば、渦巻きポンプ、タービンポンプなどの遠心ポンプや、渦流ポンプ(カスケードポンプ)、ジェットポンプ、軸流ポンプ、斜流ポンプなどが用いられる。また、井戸水位が低い場合は、吸い上げ型のポンプではなく、サブマーシブルポンプ等、水中ポンプを用いると良い。一般家庭で用いる場合、井戸の深さは、浅井戸であれば1メートルから10メートル程度、深井戸であれば10メートルから30メートル以上吸い上げる必要がある。後段の配管や水処理装置の損失水頭を考慮すると、20メートル以上の揚程があるものがよく、渦流ポンプやジェットポンプなどがより好ましい。電動式ポンプで吐出する流量は、例えば5リットルから100リットル毎分程度であるが、一般家庭用であれば5リットルから50リットル毎分程度の流量特性をもつものがより好ましい。
【0017】
原水流入配管10、浄水吐出配管20は、電動ポンプ4の水圧に耐えられる材質、構造であればよい。具体的には、耐久性、加工のしやすさから、例えば、塩化ビニル樹脂や鋼管、あるいは、これらの複合材料を用いた直管や配管継手が使用できる。なお、呼び径は損失水頭が低くなるよう大きい方が好ましく、例えば呼び径13から50ミリメートル、厚みは1から5ミリメートル程度のものが好ましい。電動ポンプ4の最大圧に耐えうる部材選定が困難な場合は、電動ポンプ4と水処理装置1の間に減圧弁や調圧弁、逃し弁を取り付けると良い。
【0018】
薬剤供給部3は、原水流入配管10の経路内に設けられている。薬剤供給部3は、原水に対して酸化剤を添加し、原水に含まれる金属イオンを水に難溶な物質として凝集させ、濾過部2において捕集しやすくする働きをする。
【0019】
(濾過部)
次に濾過部関連部品である、濾過部2と切替弁5に関して図4を用いて説明する。
【0020】
濾過部2は、濾材や集水管70を内部に有するもので、原水を通過させて浄化するものである。濾過部2の内部の濾材は、主として汚れを濾過するための上層71と、整流作用を有する下層72とで構成されている。上層71に用いられる濾材は、活性炭やマンガン砂、アンスラサイト等であって、原水水質に合わせ1~4種類程度を層状にして使用する。本実施の形態の濾過部2は、この上層71を中心に濾過の作用が働く。下層72に用いられる濾材は、集水管から出入りする水を分散するための砂利や穴が粗い樹脂等で構成されている。そして、下層72では、最下層に比較的粒径の大きい砂利層を設け、水の流れを良くするとともに、集水管70の下部から濾材が流出しないようにしている。なお、下層72の濾材量は、濾過部2の直径の1/2~1倍程度にするとよい。また、上層71と下層72を合わせた濾材の充填量は、濾過部2の内容積の1/4~4/5倍程度になるようにするとよい。
【0021】
濾過部2は、上部において、外部配管(原水流入配管10、浄水吐出配管20、逆洗ドレン管40)と接続されている。濾過部2内部には、開口となる流入口73と流出口74が設けられ、流出口74は、集水管70と接続されている。
【0022】
濾過部2の上部には、切替弁5が取り付けられており、外部配管(原水流入配管10、浄水吐出配管20、逆洗ドレン管40)と濾過部2内の流入口73と流出口74が接続され、その操作によって外部配管と流入口73、流出口74との連通が切り替えられる。切替弁5内には、流路を切り替える流路切替コマ75を備えており、流路切替コマ75を回転させることによって、接続された配管、開口との連通方向を変更する。流路切替コマ75は、外部の取っ手で回転させる、あるいは、外部モータ等で動かすことが出来る。
【0023】
濾過処理時には、流路切替コマ75の操作によって、原水流入配管10と流入口73、流出口74と浄水吐出配管20を連通させる。一方、逆洗処理時には、流路切替コマ75の操作によって、原水流入配管10と流出口74、流入口73と逆洗ドレン管40を連通させる。また、リンス処理時には、流路切替コマ75の操作によって、原水流入配管10と流入口73、流出口74と逆洗ドレン管40を連通させる。
【0024】
なお、切替弁5に接続する配管の種類によって様々な運転が可能である。例えば、原水流入配管10と浄水吐出配管20を接続することで、原水を直接浄水タンク6に送ることが出来る。
【0025】
なお、本実施の形態では、切替弁5を用いたが、切替弁5を使用する以外にも複数のバルブを使用することでも流路を切り替えることが出来る。
【0026】
このような構成において、濾過処理時、逆洗処理時の水の流れについて説明する。濾過処理時には、濾過部2内では、濾過処理時には以下のように水が流れ、流出口74から浄化された水が得られる。
【0027】
[濾過処理時の濾過部2内の流路]
流入口73→上層71→下層72→集水管70→流出口74
なお、リンス処理時においても、濾過部2内では濾過処理時と同じように水が流れるが、後述する逆洗処理後の汚れを含んだ水が流出口74から流出する。そのため、流出口74は逆洗ドレン管40に連通され、外部へ排出される。
【0028】
また、濾過部2には濾過処理で溜まった汚れを逆洗処理で排出することが出来る。逆洗処理時には以下のように水が流れ、流出口74から汚れが排出される。
【0029】
[逆洗処理時の濾過部2内の流路]
流出口74→集水管70→下層72→上層71→流入口73
(薬剤供給部)
図5に示すように、薬剤供給部3は、その内部に入れられた薬剤によって、原水に含まれる金属イオンの凝集を促進し、濾過部2で捕捉しやすくするために設けられている。薬剤供給部3は、流入路31、薬剤路32、バイパス路33、流出路34を有している。流入路31は、原水流入配管10と接続され、原水を薬剤供給部3に流入させる。薬剤路32は、流入路31から分岐し、薬剤を溶かすものである。バイパス路33には絞り部33a、同じく流入路31から分岐し、薬液を必要な濃度に調整するために設けられている。そして、バイパス路33は、流入路31から分岐後、流出路34の入口側に接続されている。流出路34は、薬剤路32、バイパス路33と合流し、再び原水流入配管10に接続し、原水流入配管10に薬剤の含まれた原水を送り出すことになる。図5に示すように、薬剤路32は、分岐後、鉛直方向に立ち上がる噴出管52と、噴出管52の上部で薬剤に接触し、薬剤を溶出させる薬剤載置部53と、噴出管52の外周であって、筐体51の内部となる回収部54とで構成される。
【0030】
噴出管52は小径の管路で上部に薬剤載置部53を備えて立設されている。噴出管52は、下部の径を小さくし、薬剤載置部53を噴出管52の上部に設けることによって、原水を所望の流量で薬剤と接触させることを実現している。薬剤載置部53は、原水の流量に対し、所望の濃度の薬液が得られるよう、置く薬剤の量(数)を確保するための大きさとなる。
【0031】
薬剤を溶かした薬液は、回収部54へ流出する。回収部54において、薬剤を溶かした薬液は、筐体51の下部に貯まり、その後、回収開口55から流出路34へと流れだす。噴出管52の径を小さくし、筐体51の内壁面との距離を確保してあるので、筐体51内に流下した薬剤の溶けた原水は、液面を筐体51の高さに対し、1/2程度、あるいはそれ以下にすることができている。薬液は所望の深さで筐体51内に貯まることによって、流出路34において原水と混合する割合が調整されている。
【0032】
また、薬剤路32を流れる原水の流量は、バイパス路33を流れる原水の流量によって調整できる。すなわち、バイパス路33の絞り部33aの径を調整することで、薬剤路32とバイパス路33を流れる原水の流量割合を調整する。このようにして合流後の流出路34における薬剤濃度が所望の濃度になるように調整できるようになっている。なお、絞り部33aの代わりに、流量調整用のバルブを用いてバイパス路33を流れる原水の流量を調整してもよい。
【0033】
薬剤載置部53には、水溶性で、固形の薬剤60を備えている。薬剤60としては、タブレットや顆粒状のものを用いることがよい。なぜなら、薬剤60の表面積が大きくでき安定した薬剤濃度を保つことができるからである。タブレットであれば、直径30mm程度、高さ10~20mmのもの、顆粒状であれば直径5mmから15mmのものを使用するとよい。薬剤60の大きさが小さい場合には、隣り合った薬剤が同時に水に接触して薬剤同士が固着してしまう。固着すると、薬剤の下部だけが水に接触して所望の濃度の薬液が得られなくなるということがある。あるいは、薬剤60の大きさが小さい場合には、噴出管52から供給される水との接触面積が大きくなって所望の濃度の薬液が得られなくなる。そのため、所望の濃度の薬液を供給するため、上述の大きさの薬剤60を用いている。
【0034】
また、薬剤60は、上述のように、原水に含まれる金属イオンを酸化して水に難溶な凝集物を生成する働きをする。薬剤60としては、種々の酸化剤を用いることができるが、求められる水浄化性能によってはPAC(ポリ塩化アルミニウム)やキトサン等、無機の凝集剤や高分子の凝集剤を使用しても良い。原水に対して薬剤を添加する場合には、薬剤60は水に溶けやすいものがよいが、停止中、あるいは逆洗処理中、すなわち、薬剤の添加を中断しているときには、固形形状を保持し、薬剤載置部53から流れ出さないものがよい。本実施の形態では、トリクロロイソシアヌル酸を用いている。
【0035】
なお、薬剤供給部3の筐体51内には、常に空気層が存在するようにするとよい。筐体51は、原水流入配管10との接続部を除いて密閉空間なので、一旦空気が無くなり、筐体51内が水で満たされると、薬剤60が常に水に接触し溶出し続けることになる。本実施の形態の水処理装置1では、薬剤供給部3の蓋部35を取り外した際に空気が入る構成となっている。薬剤供給部3の蓋部35を取り外す作業は、主に原水に溶出して徐々に減少した薬剤60を補充する際に行われる。また、詳細は後述するが、逆洗処理時の流路が逆洗ドレン管40に接続される構成であり、逆洗ドレン管40は水を系外に排出するために外気に開放されている。外気に開放されることで筐体51内に溜まっていた水が排出され、同時に空気が流入することで筐体51内に空気層が保たれる。その他にも、原水流入配管10に空気補給用の配管や、逆止弁などのバルブを取付けることでも薬剤供給部3に空気を送ることができる。
【0036】
薬剤供給部3の各部材は、薬剤と長時間接する可能性があるのでPVC(ポリ塩化ビニル)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、PP(ポリプロピレン)など薬剤に対する反応性が低い素材を選ぶとよい。一方、噴出管52には薬剤載置部53を支えるための強度が必要なので、薬剤に対する相性を考慮すると、噴出管52の材質はPPより強度がある塩化ビニルやABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)などを選択することが好ましい。噴出管52の外径は、基台51aや上部カバー51bの内径の4分の1以下に抑えるとよい。上述のように、噴出管52の外側に載置部出口58から排出された薬剤供給後の溶液を一時貯留する空間(回収部54)を設けることができ、筐体51内の水位が急激に上昇し薬剤載置部53まで到達することを抑制できるからである。例えば、基台51aの内径が130mmの場合、外径25~40mm程度の塩ビ管などを使用するとよい。
【0037】
(配管構成)
上述のとおり、図1~3に示すように、本実施の形態の水処理装置1は、濾過部2と、原水流入配管10と、浄水吐出配管20と、逆洗ドレン管40を備えている。原水流入配管10は、入口側を水源となる電動ポンプ4の吐出口と配管接続され、出口側は濾過部2の切替弁5に接続されている。原水流入配管10の経路内には、薬剤供給部3が設けられ、さらに、薬剤供給部3を迂回するバイパス配管14が設けられている。このバイパス配管14は、薬剤供給部3の上流側の原水流入配管10で分岐(第一分岐部12)し、薬剤供給部3を迂回して、薬剤供給部3の下流側で原水流入配管10に合流(第二分岐部13)する。また、バイパス配管14内を流れる流量を調整するバイパスバルブ15が設けられている。つまり、バイパスバルブ15は、バイパスバルブ15内を流れる流量を調整可能(バイパスバルブ15内の水路を開放または閉鎖可能)である。
【0038】
濾過部2は2つの出口を有しており、一方の出口には、内部で浄化された水を取り出す浄水吐出配管20が接続されている。他方の出口には、逆洗処理時、リンス処理時に、濾過部2で捕集された粒状物質(よごれ、濁質成分、金属凝集物など)を系外へ排出する逆洗ドレン管40が接続されている。
【0039】
次に、図1~4を用いて、水処理装置1内の配管構成と、濾過処理、逆洗処理における水の流れを説明する。図4は、濾過部2の断面概略図で、図4(a)は濾過処理時の全体図、図4(b)は逆洗処理時の切替弁5の状態、図4(c)はリンス処理時の切替弁5の状態を示すものである。
【0040】
まず、図1図4(a)を用いて濾過処理時の水の流れを説明する。
【0041】
濾過処理時において、バイパスバルブ15を閉鎖して、原水流入配管10は、水源側の原水入口11から薬剤供給部3を経由して濾過部2へと接続する。濾過部2では、原水流入配管10と流入口73とが連通し、流出口74と浄水吐出配管20とが連通するように、切替弁5を操作して、接続を切り替える。
【0042】
浄水吐出配管20の経路内には、絞り部24を設けている。これは、所望の濾過性能を得るため、濾過部2の能力によって設定された流量になるように濾過処理時における流量を抑える必要があるためである。
【0043】
このような配管構成において、濾過処理時には、以下のように水が流れることになる。
【0044】
[濾過処理時の流路]
原水入口11→(原水流入配管10)→第一分岐部12→薬剤供給部3→第二分岐部13→切替弁5→濾過部2→切替弁5→(浄水吐出配管20)→浄水出口21
なお、浄水吐出配管20の経路内には、逆止弁62を設けている。浄水出口21から取り出した浄水は、高所に設けた浄水タンク6へと配管接続される場合が多い。逆止弁62は、高所に設けられた浄水タンク6からの浄水の逆流を制止し、濾過部2内への水の逆流入を防ぐものである。
【0045】
次に、図2図4(b)を用い逆洗処理時の水の流れを説明する。
【0046】
逆洗処理時において、バイパスバルブ15を開放して、原水流入配管10は、水源側の原水入口11から、バイパス配管14を経由してバイパスバルブ15を連通させ、濾過部2へと接続する。濾過部2では、原水流入配管10と流出口74とが連通し、流入口73と逆洗ドレン管40とが連通するように、切替弁5を操作して、接続を切り替える。
【0047】
このとき、濾過部2内では、濾過処理時とは水の流れが逆になる。本実施の形態による水処理装置1では、切替弁5とバイパスバルブ15を切り替えることによって水源(電動ポンプ4)をひとつにして、濾過処理、逆洗処理を行うことができる。
【0048】
逆洗処理時には、以下のように水が流れることになる。
【0049】
[逆洗処理時の流路]
原水入口11→(原水流入配管10)→第一分岐部12→(バイパス配管14)→バイパスバルブ15→(バイパス配管14)→第二分岐部13→切替弁5→濾過部2→切替弁5→逆洗ドレン管40
このように、逆洗処理時には、濾過部2を通過した後、装置外へ排出するので、薬剤の添加によって金属イオン等を凝集させる必要がない。従って、逆洗処理時には、原水は、薬剤供給部3を迂回するバイパス配管14を経由して濾過部2へ送られる。そして、逆洗処理時には薬剤の溶出を抑えて、原水に近い状態のまま濾過部2に供給され、濾過部2内の洗浄を行うことになる。
【0050】
なお、本実施の形態の水処理装置1は、逆洗処理時に配管内に残った異物を排出するための「リンス処理」を行うことができる。このリンス処理について、図3図4(c)を用いて説明する。リンス処理は切替弁5の流路を変更することで可能である。切替弁5は、原水流入配管10と流入口73を連通し、流出口74と逆洗ドレン管40とを連通するように切り替える。このような状態では、濾過部2内では、濾過処理と同方向に通水し、濾過部2を通過した水は逆洗ドレン管40を通って排出される。また、絞り部24を通らず、径の大きい逆洗ドレン配管から排出されるため、原水流入配管10内の圧力は逆洗処理時と同程度に低くなり、バイパスバルブ15は開放された状態となる。
【0051】
このようなバルブ操作によって、リンス処理時には、以下のように水が流れることになる。
【0052】
[リンス処理時の流路]
原水入口11→(原水流入配管10)→第一分岐部12→(バイパス配管14)→第二分岐部13→切替弁5→濾過部2→切替弁5→逆洗ドレン管40
逆洗処理が終わった直後には、濾過部2内、あるいは、水処理装置1の配管内には、濾過部2の逆洗によって洗い出された異物が残っている。そのため、リンス処理によって、異物を排出することができる。
【0053】
次に、本実施の形態の最も特徴的な部分について説明する。本実施の形態の水処理装置1は、図1図5に示すように、原水流入配管10の経路内には、薬剤供給部3の前段側に減圧弁80が設けられ、原水流入配管10内の流れる圧力を所望の範囲内に調整することができる。
【0054】
薬剤供給部3は、中空である筐体51と、筐体51内に設けられ鉛直方向に立ち上がる筒形状の噴出管52と、噴出管52の上部に設けられ薬剤60を設置できる薬剤載置部53と、噴出管52の外周に設けられた回収部54と、を有している。原水流入配管10を流れる原水は、噴出管52を介して筐体51内に入り、薬剤60と接触し、回収部54に溜まり、回収部54から原水流入配管10へ流れる。薬剤60の一部は噴出管52から流れ込む水に浸漬し、薬剤60の一部は、筐体51内の空気層に露出している。
【0055】
この構成によれば、井戸水位の変動などが大きく、水処理装置1内の圧力の変動も大きくなることが想定される場合、特に、水道に接続される配管内の水圧変化により、原水流入配管10内の圧力が高くなり所定の値を超えることもある。水処理装置1に高水圧原水が供給された際、水処理装置1内の高圧になるよりに、前述のとおり、薬剤供給部3の筐体51内に空気層が存在しているため、薬剤供給部3に存在する空気が圧縮され、薬剤供給部3の内部の水位が上昇し、規定濃度以上の薬剤60が溶出することがある。
【0056】
このように、原水流入配管10に高圧がかかった場合、図1に示す通り、減圧弁80は、上流側から減圧弁80で設定した所定の圧力以上の原水が流れ込むと、弁を動作し、減圧弁80の後段側の配管は所定の圧力が保持することができる。原水流入配管10内の圧力を所望の範囲内に調整することにより、濾過処理時の水量を所望の範囲に制御することができることで、薬剤供給部3への原水流入量を所定の範囲内に調整することができる。薬剤供給部3に過剰な水量が流入することを抑制することにより、所望の水量・水圧を固形薬剤に与え、所望の濃度の薬液を供給することができる。
【0057】
そして、原水流入配管10から薬剤供給部3の流入路を通り、噴出管52への原水流入量を所定の範囲内に流入させる。噴出管52の外径を小さくして、筐体内部の容積を確保したため、薬剤供給部3内の水位を所望の高さにすることによって、薬剤の溶出量を所望の値に抑えることができる。そのため、薬剤供給部3から流出する原水の薬液濃度を所望の濃度にすることができる。
【0058】
また、減圧弁80は、流入する原水の圧力を一定以下に低下させることができるため、水処理装置1の濾過流量と逆洗流量を規定値内に調整することができる。
【0059】
具体的に、濾過処理時の配管には、原水流入配管10から薬剤供給部3を経由して濾過部2へと接続し、切替弁5の切り替えにより、絞り部24、浄水吐出配管20を経由し、浄水タンク6に浄水を送る経路がある。絞り部24は、他の配管と比べると径を小さくした部分があるため、濾過処理時における流量を抑えるようにしている。この絞り部24と電動ポンプ4との組み合わせによって、濾過処理時の流量を所望の設計値にすることができる。絞り部24を通る経路では、逆洗処理時の経路と比べて配管の圧力損失が大きく、原水流入配管10内の圧力が高くなり易い。ここで、原水流入配管10内の圧力が高くなり所定の圧力を超えると、減圧弁80は、原水流入配管10内の圧力を一定以下に低下させることができるため、水源側の原水入口11から薬剤供給部3への原水流入量を所定の範囲内に流れて濾過部2へと接続し、濾過流量の規定範囲内に流れることができる。
【0060】
一方、図2に示すように、逆洗処理を行う際には、大きな流量を必要とする。すなわち、逆洗処理時の流量よりも濾過処理時の流量を小さくしている。逆洗処理時の配管には、前述のとおり、原水流入配管10からバイパス配管14を経由して濾過部2へと接続し、逆洗ドレン管40とが連通するように、切替弁5を切り替える。そのため、バイパス配管14の径を大きくすることによって、バイパス配管14の圧力損失が小さいため、薬剤供給部3側を通らず、すべての原水がバイパス配管14に流入し、逆洗処理時にバイパス配管14を通過する水の流量を確保するようになっている。
【0061】
逆洗処理時には、薬剤供給部3を通らず、絞り部24のような径を小さくした部分がなく、減圧弁80は、流入する原水の圧力を一定以下に低下させることができるので、濾過処理時よりも大きな流量を確保し、逆洗処理を効率的に行うことができる。なお、逆洗処理時の大きな流量をそのまま排出するため、逆洗ドレン管40は絞り部24に比べ径を大きくとっている。また、逆洗処理時には、原水は薬剤供給部3を流らないため、薬剤が水と接触することも防止する。
【0062】
このように、減圧弁80は、原水流入配管の圧力が所望の範囲内に調整することで、濾過流量と逆洗流量の規定値内に調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明にかかる水処理装置は、安定した濃度の薬液が供給可能で、濾過性能が安定した水処理装置であるため、井戸水や貯留水の浄化に使用される家庭用小型水処理装置等として有用である。
【符号の説明】
【0064】
1 水処理装置
2 濾過部
3 薬剤供給部
4 電動ポンプ
5 切替弁
6 浄水タンク
10 原水流入配管
11 原水入口
12 第一分岐部
13 第二分岐部
14 バイパス配管
15 バイパスバルブ
20 浄水吐出配管
21 浄水出口
24 絞り部
31 流入路
32 薬剤路
33 バイパス路
33a 絞り部
34 流出路
40 逆洗ドレン管
51 筐体
51a 基台
51b 上部カバー
52 噴出管
53 薬剤載置部
54 回収部
55 回収開口
58 載置部出口
60 薬剤
62 逆止弁
70 集水管
71 上層
72 下層
73 流入口
74 流出口
75 流路切替コマ
80 減圧弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6