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特開2023-131197精度管理方法、精度管理装置、及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131197
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】精度管理方法、精度管理装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/48 20060101AFI20230914BHJP
   G01N 21/21 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
G01N33/48 M
G01N33/48 P
G01N33/48 Q
G01N21/21 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035792
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100140431
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】川上 肇
【テーマコード(参考)】
2G045
2G059
【Fターム(参考)】
2G045AA24
2G045BA13
2G045BB21
2G045CA25
2G045CB01
2G045FA19
2G045JA01
2G045JA05
2G045JA07
2G059AA05
2G059BB08
2G059BB14
2G059DD03
2G059DD13
2G059EE01
2G059EE13
2G059FF01
2G059FF03
2G059FF12
2G059MM01
2G059MM02
2G059MM03
2G059MM05
2G059MM09
2G059MM10
(57)【要約】
【課題】各施設が採用した塗抹・染色処理条件に対して適切に標本の精度管理を行うことが可能な精度管理方法、精度管理装置、及びプログラムを提供すること。
【解決手段】検体から作製された標本の精度管理方法であって、標本に関する複数の指標と、複数の指標の各々に対応する管理値とが対応付けられた管理指標情報(MII)から、標本の精度管理に使用する少なくとも1つの指標を設定(S1)し、標本の画像データから、少なくとも一つの指標に関する特徴値を取得(S3)し、特徴値と、少なくとも一つの指標に対応付けられた管理値とに基づき、標本の精度管理情報を出力(S5)する、ことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体から作製された標本の精度管理方法であって、
前記標本に関する複数の指標と、前記複数の指標の各々に対応する管理値とが対応付けられた管理指標情報から、前記標本の精度管理に使用する少なくとも1つの指標を設定し、
前記標本の画像データから、前記少なくとも一つの指標に関する特徴値を取得し、
前記特徴値と、前記少なくとも一つの指標に対応付けられた管理値とに基づき、前記標本の精度管理情報を出力する、
ことを特徴とする、標本の精度管理方法。
【請求項2】
前記精度管理情報は、前記特徴値と前記管理値と比較可能に示す図表又は通知情報である、ことを特徴とする請求項1に記載の精度管理方法。
【請求項3】
前記指標は、前記管理指標情報から選択に応じて設定される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の精度管理方法。
【請求項4】
前記指標は、標本の精度管理に関する所定の基準に基づいて設定される、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の精度管理方法。
【請求項5】
前記指標は、標本の精度管理に関するガイドラインに基づいて設定される、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の精度管理方法。
【請求項6】
前記指標は、標本が作製される地域に応じて定められた前記ガイドラインに基づいて設定される、ことを特徴とする請求項5に記載の精度管理方法。
【請求項7】
前記指標は、標本の作製条件に関する所定の基準に基づいて設定される、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の精度管理方法。
【請求項8】
前記指標は、標本の作製に使用される試薬の種別及び/又は標本作製装置の種別に応じて定められた前記所定の基準に基づいて設定される、ことを特徴とする請求項7に記載の精度管理方法。
【請求項9】
前記指標は、前記管理指標情報を管理するサーバから送信された情報に基づいて設定される、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の精度管理方法。
【請求項10】
前記情報は、標本の作製条件に関する所定の基準を含む、ことを特徴とする請求項9に記載に精度管理方法。
【請求項11】
前記標本は、被検者から採取された細胞を含む検体から作製される、ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の精度管理方法。
【請求項12】
前記標本は、被検者から採取された血液から作製される血液塗抹標本である、ことを特徴とする請求項11に記載の精度管理方法。
【請求項13】
前記指標は、少なくとも標本の画像データにおける細胞の色情報を含む、ことを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の精度管理方法。
【請求項14】
前記細胞が血球である、ことを特徴とする請求項13に記載の精度管理方法。
【請求項15】
検体から作製された標本の精度管理を行う精度管理装置であって、
制御部を含み、
前記制御部は、
前記標本に関する複数の指標と、前記複数の指標の各々に対応する管理値とが対応付けられた管理指標情報から、前記標本の精度管理に使用する少なくとも1つの指標を設定し、
前記標本の画像データから、前記少なくとも一つの指標に関する特徴値を取得し、
前記特徴値と、前記少なくとも一つの指標に対応付けられた管理値とに基づき、前記標本の精度管理情報を出力する、
ことを特徴とする精度管理装置。
【請求項16】
検体から作製された標本の精度管理を行う精度管理装置に、
前記標本に関する複数の指標と、前記複数の指標の各々に対応する管理値とが対応付けられた管理指標情報から、前記標本の精度管理に使用する少なくとも1つの指標を設定することと、
前記標本の画像データから、前記少なくとも一つの指標に関する特徴値を取得することと、
前記特徴値と、前記少なくとも一つの指標に対応付けられた管理値とに基づき、前記標本の精度管理情報を出力することと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精度管理方法、精度管理装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
標本の染色状態に基づいて、標本作製装置の精度管理を実行する手法が知られている。例えば、特許文献1には、塗抹標本の血球画像における核領域の特定の色成分を指標として、特定の色成分の輝度値を所定の下限基準値、及び、所定の上限基準値と比較し、当該輝度値が所定の下限基準値以下、又は、所定の上限基準値以上の場合には染色異常の発生を通知するシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-169484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
塗抹標本の塗抹・染色処理条件は、塗抹標本の作製に使用される試薬、装置、及び、各工程の条件(例えば、塗抹条件、染色液のpH、染色液の温度、及び染色時間)を含み、塗抹標本の染色状態に影響を与えうる。しかしながら、塗抹標本の塗抹・染色処理条件が、検査施設ごと、地域もしくは国ごと、又は、使用される試薬及び装置ごとに異なる場合がある。このような複数の塗抹標本の塗抹・染色処理条件の中には、特許文献1に記載されている指標では標本の精度管理を適切に行うことができない塗抹・染色処理条件がある。
【0005】
本発明は、各施設が採用した塗抹・染色処理条件に対して適切に標本の精度管理を行うことが可能な精度管理方法、精度管理装置、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
図2及び図6に示すように、本発明の精度管理方法は、検体から作製された標本の精度管理方法であって、標本に関する複数の指標と、複数の指標の各々に対応する管理値とが対応付けられた管理指標情報(MII)から、標本の精度管理に使用する少なくとも1つの指標を設定(S1)し、標本の画像データから、少なくとも一つの指標に関する特徴値を取得(S3)し、特徴値と、少なくとも一つの指標に対応付けられた管理値とに基づき、標本の精度管理情報を出力(S5)する、ことを特徴とする。
【0007】
本発明の精度管理方法によれば、管理指標情報(MII)から、標本の精度管理に使用する少なくとも1つの指標が設定され、標本の画像データから、少なくとも一つの指標に関する特徴値が取得され、特徴値と、少なくとも一つの指標に対応付けられた管理値とに基づき、標本の精度管理情報が出力される。したがって、本発明の精度管理方法では、各施設が採用した塗抹・染色処理条件に対して適切に標本の精度管理を行うことが可能である。
【0008】
図1図2及び図6に示すように、本発明の精度管理装置(1)は、検体から作製された標本の精度管理を行う精度管理システムであって、制御部(50)を含み、制御部(50)は、標本に関する複数の指標と、複数の指標の各々に対応する管理値とが対応付けられた管理指標情報(MII)から、標本の精度管理に使用する少なくとも1つの指標を設定し、標本の画像データから、少なくとも一つの指標に関する特徴値を取得し、特徴値と、少なくとも一つの指標に対応付けられた管理値とに基づき、標本の精度管理情報を出力する、ことを特徴とする。
【0009】
本発明の精度管理装置(1)によれば、制御部(50)は、管理指標情報(MII)から、標本の精度管理に使用する少なくとも1つの指標を設定し、標本の画像データから、少なくとも一つの指標に関する特徴値を取得する。制御部(50)は、特徴値と、少なくとも一つの指標に対応付けられた管理値とに基づき、標本の精度管理情報を出力する。したがって、本発明の精度管理システムでは、各施設が採用した塗抹・染色処理条件に対して適切に標本の精度管理を行うことが可能である。
【0010】
図1図2及び図6に示すように、本発明のプログラムは、検体から作製された標本の精度管理を行う精度管理装置(1)に、標本に関する複数の指標と、複数の指標の各々に対応する管理値とが対応付けられた管理指標情報(MII)から、標本の精度管理に使用する少なくとも1つの指標を設定(S1)することと、標本の画像データから、少なくとも一つの指標に関する特徴値を取得(S3)することと、特徴値と、少なくとも一つの指標に対応付けられた管理値とに基づき、標本の精度管理情報を出力(S5)することと、を実行させるためのプログラム。
【0011】
本発明のプログラムによれば、管理指標情報(MII)から、標本の精度管理に使用する少なくとも1つの指標が設定され、標本の画像データから、少なくとも一つの指標に関する特徴値が取得され、特徴値と、少なくとも一つの指標に対応付けられた管理値とに基づき、標本の精度管理情報が出力される。したがって、本発明のプログラムでは、各施設が採用した塗抹・染色処理条件に対して適切に標本の精度管理を行うことが可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、各施設が採用した塗抹・染色処理条件に対して適切に標本の精度管理を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、精度管理システムの概要を示した模式図である。
図2図2は、精度管理装置の構成の一例を示したブロック図である
図3(A)】図3(A)は、管理指標情報の概要を示す図である。
図3(B)】図3(B)は、設定指標情報の概要を示す図である。
図4図4は、特徴値取得処理の概要を示す図である。
図5図5は、精度管理情報の出力画面の概要を示す図である。
図6図6は、標本の精度管理情報の出力制御処理の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、指標設定処理の第1例を示すフローチャートである。
図8図8は、指標設定処理の第1例におけるユーザ選択による設定画面の一例を示す図である。
図9図9は、指標設定処理の第1例におけるファイル選択による設定画面の一例を示す図である。
図10図10は、指標設定処理の第2例を示すフローチャートである。
図11図11は、指標設定処理の第2例における、Region IDを用いる処理の一例を示す図である。
図12図12は、指標設定処理の第2例における、Guideline IDを用いる処理の一例を示す図である。
図13図13は、指標設定処理の第2例における処理の他の一例を示す図である。
図14図14は、指標設定処理の第2例における設定画面の一例を示す図である。
図15図15は、指標設定処理の第2例における、Vender Recommend IDを用いる処理の一例を示す図である。
図16図16は、指標設定処理の第2例における、作製条件IDを用いる処理の一例を示す図である。
図17図17は、指標設定処理の第2例における、条件選択による設定画面の一例を示す図である。
図18図18は、指標設定処理の第3例を示すフローチャートである。
図19図19は、指標設定処理の第3例における管理センターと検査システムの情報処理の一例を示す図である。
図20図20は、管理対象の塗抹標本の染色状態を反映する特徴値の取得処理を示すフローチャートである
図21図21は、特徴値の取得処理の一例を示すフローチャートである。
図22図22は、特徴値の取得処理の一例を示す図である。
図23図23は、赤血球の染色性を反映する特徴値の一例を示す図である。
図24図24は、赤血球の赤成分の輝度値の平均値の取得処理の一例である。
図25図25は、白血球の染色性を反映する特徴値の一例を示す図である。
図26図26は、血球の形態を反映する特徴値の一例を示す図である。
図27図27は、顆粒指数の取得処理の一例を示すフローチャートである。
図28図28は、顆粒指数の取得処理の一例を示す図である。
図29図29は、一次顆粒及び二次顆粒の抽出処理の一例を示す図である。
図30図30は、管理対象の塗抹標本の染色状態を反映する特徴値と精度管理情報の出力画面の一例を示す図である。
図31図31は、管理対象の塗抹標本の染色状態を反映する特徴値と精度管理情報の出力画面の一例を示す図である。
図32図32は、管理対象の塗抹標本の染色状態を反映する特徴値と精度管理情報の出力画面の一例を示す図である。
図33図33は、塗抹標本から取得された複数の画像データを表示する画面の一例を示す図である。
図34図34は、特定の画像データと、特定の画像データに対応付けられた複数の特徴値とを関連づけて表示する画面の一例を示す図である。
図35図35は、取得する特徴値を選択可能な画面の一例を示す図である。
図36図36は、任意の特徴値に対して正常範囲を設定可能な画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこの実施の形態に限定されるものではない。
【0015】
[精度管理システムの概要]
図1及び図2を参照して、被検者から採取された血液の塗抹標本の精度管理情報を出力する精度管理システム100の概要について説明する。図1は、精度管理システム100の概要を示した模式図である。
【0016】
精度管理システム100は、塗抹標本作製装置20と標本搬送装置30と標本画像撮像装置40とを含む複数の検査システム70-1~70-4と、精度管理情報を出力する精度管理装置1と、を備える。
【0017】
検査システム70-1~70-4は、塗抹標本作製装置20によって塗抹標本スライド10を作製し、作製された塗抹標本スライド10を標本搬送装置30によって標本画像撮像装置40に搬送し、作製された塗抹標本スライド10を標本画像撮像装置40によって撮像し、塗抹標本の画像データを取得し、精度管理装置1に送信するシステムである。検査システム70-1~70-4は、複数の検査施設(検査施設A~D)に設けられている。複数の検査施設(検査施設A~D)は、塗抹標本を作製する際の塗抹・染色条件が互いに異なる。精度管理装置1は、標本画像撮像装置40の提供者(例えば、標本画像撮像装置40のメーカー)の施設に設置されており、ネットワークを介して検査システム70-1~70-4の塗抹標本作製装置20と標本搬送装置30と標本画像撮像装置40とに接続されている。
【0018】
図2は、精度管理装置1の構成の一例を示したブロック図である。図2に示すように、精度管理装置80は、制御部50と、記憶部80と、入力部90と、表示部60と、通信部77とを含む。
【0019】
制御部50は、例示的に、塗抹標本の精度管理情報を出力するための情報処理を実行するCPUを備える。また、制御部50は、通信部77を介して、図1に示す塗抹標本作製装置20、標本搬送装置30及び標本画像撮像装置40と通信可能である。記憶部80は、例示的に、制御部50の情報処理を実行するための情報、及び、当該情報処理を実行することによって生成された情報を記憶するメモリを備える。入力部90は、例えば、キーボードやマウスなどであり、表示部60は、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどである。
【0020】
記憶部80は、例えば、管理指標情報MIIと、基準情報CIと、設定指標情報SIIと、精度管理情報AMIと、を記憶する。「基準情報CI」は、精度管理で使用する指標を設定するための所定の基準に関する情報である。所定の基準は、例えば、所定の国、地域、又は、組織に応じて定められた、標本の精度管理に関するガイドラインを含む。所定の基準は、塗抹標本の作製条件に応じて定められた指標を設定するための基準を含む。
【0021】
記憶部80には、塗抹標本に関する複数の指標と、複数の指標の各々に対応する管理値とが対応付けられた管理指標情報MII及び塗抹標本の精度管理に使用する指標を示す設定指標情報SIIが記憶されている。精度管理装置1は、検査施設A~Dのそれぞれについて、記憶部80に記憶された管理指標情報MIIの複数の指標から、精度管理に適した少なくとも1つの指標を設定指標情報SIIとして設定する。精度管理装置1は、ネットワークを介して標本画像撮像装置40から塗抹標本の画像データを受信する。精度管理装置1は、受信した画像データから設定された指標に関する特徴値を取得し、取得した特徴値と設定された指標に対応付けられた管理値とに基づき塗抹標本の精度管理情報AMIを出力する。
【0022】
図3(A)、(B)を参照して、塗抹標本に関する複数の指標と複数の指標の各々に対応する管理値とが対応付けられた管理指標情報MII及び塗抹標本の精度管理に使用する指標を示す設定指標情報SIIを説明する。
【0023】
図3(A)は、図2に示す記憶部80に記憶されている管理指標情報MIIの概要を示す図である。図3(A)に示すように、管理指標情報MIIは、塗抹標本に関する複数の指標と、複数の指標の各々に対応する管理値(例えば、下限値、上限値及び目標値)とが対応付けられたデータベースである。塗抹標本に関する複数の指標は、塗抹標本スライド10において、塗抹標本の染色状態や特定の細胞の形態を反映した管理項目である。塗抹標本に関する複数の指標は、例えば、血液中の血球細胞の色情報及び形態情報の少なくとも一方を含む。管理指標情報MIIでは、指標として、RBC Color R(赤血球の赤成分の輝度値)、RBC Color G(赤血球の緑成分の輝度値)、RBC Color B(赤血球の青成分の輝度値)、RBC Color H(赤血球の色相値)、RBC Color S(赤血球の赤成分の彩度値)、RBC Color V(赤血球の赤成分の明度値)、RBC Redness Index(赤血球の赤み指標)、Granule Index(白血球の顆粒指数)、Diameter(血球の細胞径)、Nuclear Diameter(血球の核径)等が記憶されている。
【0024】
図3(B)は、図2に示す記憶部80に記憶されている設定指標情報SIIの概要を示す図である。図3(B)に示すように、設定指標情報SIIは、塗抹標本の精度管理に使用する指標が記憶されたデータベースである。設定指標情報SIIは、管理指標情報MIIの指標に対応する指標と、各指標を精度管理に使用するか否かを示す設定とが対応付けられている。例えば、検査施設Aの設定指標情報SIIでは、指標「RBC Redness Index」が使用する指標として設定されている。また、検査施設Bの設定指標情報SIIでは、指標「RBC Redness Index」、指標「Granule Index」、指標「Diameter」が使用する指標として設定されている。同様に、検査施設C~Dについて、設定指標情報SIIが記憶部80に記憶されている。
【0025】
図4及び図5を参照して、管理対象の塗抹標本の特徴値の取得処理及び精度管理情報の出力処理を説明する。
【0026】
図4は、管理対象の塗抹標本の特徴値の取得処理の概要を示す図である。
【0027】
図4に示すように、精度管理装置1は、図3(B)に示す設定指標情報SIIとして設定された指標に関する管理対象の塗抹標本の特徴値Yの取得処理として、管理対象の塗抹標本(例えば、Sample)から血液中の血球細胞の領域を反映した画像データを取得し、取得した画像データから管理対象の塗抹標本の染色状態を反映する特徴値Yを取得する。管理対象の塗抹標本の染色状態を反映する特徴値Yは、例えば、その日に撮像された全ての塗抹標本のうち、少なくとも一つの塗抹標本の画像データから取得される。
【0028】
図5は、精度管理情報の出力画面の概要を示す図である。精度管理情報AMIは、設定指標情報SIIで設定された指標については出力し、設定指標情報SIIで設定されなかった指標については出力されない。図5に示す例は、一の検査施設(検査施設A)の設定指標情報SIIに設定された指標Iに対応付けられた管理値と、指標Iに関する特徴値Yと、に基づき、塗抹標本の精度管理情報AMIを出力する例である。例えば、精度管理情報AMIは、指標Iに対応付けられた管理値と特徴値Yとを比較可能に示す図表(例えばチャート又はグラフ)、又は、通知情報(例えばアラート)である。図5に示す例では、一の検査施設(検査施設A)の設定指標情報SIIとして設定された指標Iに対応付けられた管理値と、指標Iに関する管理対象の塗抹標本の染色状態を反映する特徴値Yと、を出力した図表である。指標Iに対応付けられた管理値は、例えば、一日ごとに、その日に撮像された全ての塗抹標本の各々の画像データから生成される。
【0029】
図5に示すように、一の検査施設(検査施設A)の設定指標情報SIIとして設定された指標Iに対応付けられた管理値と、指標Iに関する管理対象の塗抹標本の染色状態を反映する特徴値Yに対応する複数のプロットPと、が出力される。管理値としては、例えば、指標Iに対応する目標値ACI、及び、指標Iに対応する管理幅MWが出力される。ユーザは、管理値である目標値ACI及び管理幅MWと、出力されたプロットPとの関係を視覚的に把握することにより、管理対象の塗抹標本における精度管理を容易に行うことができる。例えば、一の検査施設(検査施設A)の設定指標情報SIIとして設定された指標Iに対応付けられた管理値である目標値ACI及び管理幅MWに対して、指標Iに関する管理対象の塗抹標本の特徴値Yに対応するプロットPを出力することにより、検査施設Aの検査技師が管理対象の塗抹標本における精度管理を行うことができる。ここで、出力される図表における横軸(「Sample」)は、管理対象である塗抹標本を示しており、例えば、Sample 2の塗抹標本と、Sample 4の塗抹標本とは異なる塗抹標本であることを示す。縦軸は、管理対象の塗抹標本の染色状態を反映する特徴値の値を示している。
【0030】
管理指標情報MIIに記憶されている管理値は、複数の指標の各々に対応して設定された中央値や平均値である。また、管理値は、中央値や平均値に対して、例えば、±2SD(Standard Deviation:標準偏差)、又は、±3SDである上限値及び下限値の少なくとも一方を含む。管理値は、中央値や平均値の他、例えば、移動平均に基づく値を使用してもよい。また、管理値は、中央値や平均値のみでもあってもよい。
【0031】
管理指標情報MIIに記憶されている管理値の生成処理としては、複数の塗抹標本の各々から血液中の血球細胞の各々の領域を反映した画像データを取得し、複数の画像データの各々から塗抹標本の染色状態を反映する特徴値を取得することにより、例えば、目標値及び上限値と下限値とに基づく管理幅により管理値が生成される。目標値は取得した複数の特徴値の平均値から算出され、管理幅は目標値に対する±2SD(Standard Deviation:標準偏差)から上限値及び下限値が算出される。
【0032】
特徴値は、血液中の血球細胞の領域を反映した画像データにおいて、塗抹標本の染色状態を反映する数値化した情報である。また、特徴値は、例えば、赤血球の色情報を含み、複数の画像データの各々から細胞ごとに細胞内領域の色指標を取得し、複数の画像データの各々の塗抹標本における染色状態を定量的に数値化したものである。
【0033】
精度管理情報AMIは、例えば、塗抹標本に関する指標と、指標に対応する管理値と、画像データから取得された指標に関する特徴値と、が関連付けられた情報である。
【0034】
精度管理情報AMIを出力することにより、設定された指標に対して、管理値と特徴値とを比較し、例えば、管理対象の塗抹標本の染色状態に問題が生じているか否かを把握することができる。このような場合には、精度管理情報AMIに基づいて管理対象の塗抹標本の品質を担保することが可能である。
【0035】
精度管理情報AMIを出力するタイミングは、任意であり、例えば、一日ごと、数日ごと、一週間ごと、もしくは、一か月ごと、又は、数時間ごとでもよい。
【0036】
被検者は、主としてヒトであるが、ヒト以外の他の動物であってもよい。精度管理システム100は、例えば患者から採取された検体の臨床検査又は医学的研究のための分析を行う。検体は、生体由来の検体である。生体由来の検体は、例えば、被検者から採取された血液(全血、血清又は血漿)、尿、又はその他の体液などの液体、あるいは、採取された体液や血液に所定の前処理を施して得られた液体などである。また、検体は、例えば、液体以外の、被検者の組織の一部や細胞などであってもよい。
【0037】
塗抹標本作製装置20は、スライドに対して検体を塗抹する塗抹処理を行い、検体が塗抹された塗抹標本スライド10に対して、検体の染色処理を施すための装置である。塗抹標本作製装置20は、検体としての試料を吸引し、スライド上に滴下・塗抹し、染色することにより塗抹標本スライド10を作製する。
【0038】
標本搬送装置30は、塗抹標本作製装置20により作製された塗抹標本スライド10を受け取り、標本画像撮像装置40に搬送する。また、標本搬送装置30は、標本画像撮像装置40により撮像後の塗抹標本スライド10を受け取り、貯留する。
【0039】
標本画像撮像装置40は、標本搬送装置30により搬送された塗抹標本スライド10の画像を撮像する。
【0040】
なお、検査システム70-1~70-4は、他の装置を含んでもよい。例えば、検査システム70-1~70-4は、検体の分析を行う分析装置(例えば、検体の血球の分類及び計数を実行する血球計数検査装置)や、検体が収容された容器を搬送する搬送装置を含んでもよい。
【0041】
なお、塗抹標本作製装置20と標本搬送装置30と標本画像撮像装置40とを含む検査システム70は、例えば、米国特許出願公開第2019/0049474号明細書に記載されている。米国特許出願公開第2019/0049474号明細書は、本明細書に参照としてここに組み込まれる。
【0042】
図6は、塗抹標本の精度管理情報の出力制御処理の一例を示すフローチャートである。図6に示すように、図2に示す精度管理装置1の制御部50は、記憶部80に記憶されている管理指標情報MIIから塗抹標本の精度管理に使用する少なくとも一つの指標を設定する(ステップS1)。制御部50は、塗抹標本の画像データから、少なくとも一つの指標に関する特徴値を取得する(ステップS3)。制御部50は、特徴値と、少なくとも一つの指標に対応付けられた管理値とに基づき、塗抹標本の精度管理情報AMIを表示部60に出力する(ステップS5)。以下では、指標設定処理に係るステップS1の具体例を説明する。
【0043】
<指標設定処理の第1例>
指標設定処理の第1例では、精度管理装置1の制御部50は、入力部90を介したユーザの入力に基づいて指標を設定する。図7は、指標設定処理の第1例を示すフローチャートである。制御部50は、管理指標情報MIIを、図2に示す記憶部80から取得する(ステップS11)。制御部50は、入力部90を介したユーザ入力を受け付ける(ステップS13)。制御部50は、入力部90を介したユーザ入力に基づき、塗抹標本の精度管理に使用する少なくとも一つの指標を設定する(ステップS15)。指標設定処理の第1例では、精度管理に用いられる指標及び管理値は、例えば、記憶部80に記憶されている管理指標情報MIIに含まれる複数の指標から、入力部90を介してユーザが選択することによって設定される。図8及び図9を参照して、指標設定処理の第1例における設定画面例を説明する。
【0044】
図8は、指標設定処理の第1例におけるユーザ選択による設定画面の一例を示す図である。図8に示すように、ユーザは、管理指標情報MIIに含まれる複数の指標の中から任意に指標(例えば「RBC Color G」)を選択して、選択された指標が設定される。例えば下限値、上限値、及び、目標値を含む管理値は、ユーザにより指標が選択されると、選択された指標に対応する各値が管理指標情報MIIから自動的に抽出される。なお、抽出された各管理値は、ユーザが変更可能に設定されてもよい。ユーザにより設定ボタンB1が選択されると、精度管理に使用される指標、及び、当該指標に対応する管理値が、図2に示す設定指標情報SIIとして記録される。
【0045】
図9は、指標設定処理の第1例におけるファイル選択による設定画面の一例を示す図である。まず、画面上において、作成された指標ファイルデータ(例えばCSVファイル)が選択可能に表示される。指標ファイルデータには、管理指標情報MIIに基づき、精度管理で使用する少なくとも1つの指標と、指標に対応する管理値とが対応付けられた情報を含む。図9に示すように、ユーザが、特定の指標ファイル(例えば「ファイル02」)を選択し、設定ボタンB3を押下すると、選択された指標ファイルデータが取り込まれ、指標ファイルデータに含まれる情報に基づき設定指標情報SIIが設定される。
【0046】
<指標設定処理の第2例>
指標設定処理の第2例では、精度管理装置1の制御部50は、基準情報CIに基づいて指標を設定する。図10は、指標設定処理の第2例を示すフローチャートである。制御部50は、管理指標情報MIIを、図2に示す記憶部80から取得する(ステップS21)。制御部50は、入力部90を介したユーザの入力に基づき、塗抹標本の精度管理に関する基準情報CIを記憶部80から取得する(ステップS23)。制御部50は、入力部90を介したユーザ入力に基づき、塗抹標本の精度管理に使用する少なくとも一つの指標を設定する(ステップS25)。
【0047】
図11図14を参照して、所定の国、地域、又は、組織に応じて定められた、塗抹標本の精度管理に関するガイドラインに基づいて管理指標情報MIIから精度管理で使用する指標を設定する手法を説明する。本手法では、管理指標情報MIIに含まれる各指標や管理値が、検査施設の所在する国や地域、または所属する組織などの領域種別情報、及び、検査施設の所在・所属に応じて適用されるガイドライン種別情報の少なくとも一方に関連付けられている。
【0048】
図11は、指標設定処理の第2例における、Region IDを用いる処理の一例を示す図である。Region IDは、検査施設の所在する国や地域、又は所属する組織等の領域種別情報の一例である。図11に示すように、精度管理装置1の制御部50では、例えば、図2に示す入力部90を介してユーザによって中国を示すRegion ID「CN」が指定される。そして、制御部50は、記憶部80に記憶されている管理指標情報MIIから、Region ID「CN」に対応付けられた一又は複数の指標と、当該指標に関連づけられた管理値とを抽出して、設定指標情報SIIとして設定する。なお、各領域種別情報と管理指標情報MIIに含まれる指標とは、各国、地域、又は組織で定められたガイドライン情報に基づいて、関連付けられている。
【0049】
図12は、指標設定処理の第2例における、Guideline IDを用いる処理の一例を示す図である。Guideline IDは、検査施設の所在・所属に応じて適用されるガイドライン種別情報の一例である。図12に示すように、精度管理装置1の制御部50では、例えば、入力部90を介してユーザによって中国のガイドラインを示すGuideline ID「G02」が指定される。そして、制御部50は、記憶部80に記憶されている管理指標情報MIIから、Guideline ID「G02」に関連づけられた一又は複数の指標と、当該指標に対応付けられた管理値とを抽出して、設定指標情報SIIとして設定する。なお、各ガイドライン種別情報と管理指標情報MIIに含まれる指標とは、各国、地域、又は組織で定められたガイドライン情報に基づいて、関連付けられている。
【0050】
なお、図11及び図12の例では、同じ種類の指標であっても、領域種別情報又はガイドライン種別情報に応じて、異なる管理値が設定されてもよい。例えば、図11及び図12の指標「RBC Color R」は、領域種別情報又はガイドライン種別情報に応じて、「RBC Color R 01」、「RBC Color R 02」、「RBC Color R 03」などに対応づけられた上限値、下限値、目標値が、互いに異なった値で設定されていてもよい。
【0051】
また、図13は、中国を示すRegion ID「CN」に対応する指標及び管理値の設定例を示す。図13に示すように、精度管理に用いる指標は、領域種別情報又はガイドライン種別情報に応じて、異なる種類の指標が設定されてもよい。図13は、領域種別情報に応じて、異なる種類の指標が設定される例である。例えば、日本のRegion ID「JP」と関連付けられた指標の種類(RBC Color S、RBC Redness Index、NEUT Granule Index、NEUT Cell Diameter)と、中国のRegion ID「CN」と関連付けられた指標の種類(RBC RGB、RBC Redness Index、NEUT Nucler Color G、NEUT N/C)とは、少なくとも1つ異なっている。そして、中国を示すRegion ID「CN」が指定されると、「CN」に関連づけられた指標と、当該指標に対応付けられた管理値とが抽出されて、設定指標情報SIIとして設定される。
【0052】
図14は、指標設定処理の第2例における設定画面の一例を示す図である。まず、画面上において、複数のRegion ID、例えば「JP」、「US」又は「CN」がプルダウン形式で選択可能に表示される。図14に示すように、ユーザが、Region ID(例えば「CN」)を選択し、設定ボタンB5を押下すると、管理指標情報MIIから、Region ID「CN」に関連づけられた一又は複数の指標と、当該指標に対応付けられた管理値とが抽出されて、設定指標情報SIIとして設定される。設定された指標および管理値の情報は、設定一覧に表示される。
【0053】
次に、図15を参照して、塗抹標本の作製条件に応じて定められた所定の基準に基づいて、管理指標情報MIIから精度管理で使用する指標を設定する手法を説明する。標本の作製条件に応じた所定の基準は、標本の作製に使用される試薬の種別及び/又は標本作製装置の種別に応じて、精度管理に使用する指標やその管理値が定められた情報である。このような情報は、例えば、標本の作製に使用される試薬や装置の提供元、又は解析や精度管理のソフトウェアを提供する提供元から、推奨する精度管理条件の情報としてユーザに提供され得る。本手法では、管理指標情報MIIに含まれる各指標や管理値が、標本の作製に使用される試薬の種別及び/又は標本作製装置の種別に関する情報(Vender Recommend ID)、及び、標本作製の試薬及び/又は装置に応じて付される作製条件の種別に関する情報(作製条件ID)の少なくとも一方に関連付けられている。
【0054】
ここで、「試薬の種別」(例えば「試薬A」)は、例えば、染色液もしくは緩衝液、又は、これらの組み合わせに関する情報である。塗抹標本の染色状態は、特にpHが影響を与えるため、重要なパラメータである。「塗抹標本作製装置の種別」は、例えば、塗抹標本作製装置の種類、又は、設定情報に関する情報である。標本の染色状態においては、特に染色条件・染色時間が影響を与え、細胞径においては、特に乾燥条件(例えば強制乾燥又は自然乾燥)が影響を与える。
【0055】
図15は、指標設定処理の第2例における、塗抹標本の作製に使用される試薬の種別及び/又は標本作製装置の種別に関する情報(Vender Recommend ID)を用いる処理の一例を示す図である。図15に示すように、精度管理装置1の制御部50では、入力部90を介してユーザによって、複数のVender Recommend ID、例えば「試薬A/SP-10」、「試薬B/SP-10」及び「試薬A/SP-50」等から特定のVender Recommend ID「試薬B/SP-10」が指定される。そして、制御部50は、記憶部80に記憶されている管理指標情報MIIから、Vender Recommend ID ID「試薬B/SP-10」に関連づけられた一又は複数の指標と、当該指標に対応付けづけられた管理値とを抽出して、設定指標情報SIIとして設定する。なお、Vender Recommend IDと管理指標情報MIIに含まれる指標とは、標本の作製条件に応じて定められた所定の基準に基づいて、関連付けられている。
【0056】
次に、図16を参照して、塗抹標本の作製条件に応じて定められた所定の基準に基づいて、管理指標情報から精度管理で使用する指標を設定する手法を説明する。
【0057】
図16は、指標設定処理の第2例における、標本作製の試薬及び/又は装置に応じて付される作製条件の種別情報(作製条件ID)を用いる処理の一例を示す図である。図16に示すように、制御部50では、入力部90を介してユーザによって、作製条件ID、例えば「試薬A/SP-10の作製条件ID:C01」、「試薬B/SP-10の作製条件ID:C02」及び「試薬A/SP-50の作製条件ID:C10」等から特定の作製条件ID「C02」が指定される。そして、制御部50は、記憶部80に記憶されている管理指標情報MIIから、作製条件ID「C02」に関連づけられた一又は複数の指標と、当該指標に対応付けられた管理値とを抽出して、設定指標情報SIIとして設定する。なお、作製条件IDと管理指標情報MIIに含まれる指標とは、標本の作製条件に応じて定められた所定の基準に基づいて、関連付けられている。
【0058】
図17は、指標設定処理の第2例における、条件選択による設定画面の一例を示す図である。まず、画面上において、複数のVender Recommend ID、例えば「試薬A/SP-10」、「試薬B/SP-10」及び「試薬A/SP-50」等がプルダウン形式で選択可能に表示される。図17に示すように、ユーザが、Vender Recommend ID(例えば「試薬B/SP-10」)を選択し、設定ボタンB7を押下すると、管理指標情報MIIから、Vender Recommend ID「試薬B/SP-10」に関連づけられた一又は複数の指標と、当該指標に対応付けられた管理値とを抽出して、設定指標情報SIIとして設定する。
【0059】
なお、設定画面上においては、Vender Recommend IDとは異なる条件が選択可能に表示され、選択された当該条件に関連づけられた一又は複数の指標と、当該指標に対応付けられた管理値とが抽出されて、設定指標情報SIIとして設定されてもよい。「異なる条件」とは、例えば、作製条件ID、又は、染色液、バッファーのpH、もしくは、染色時間に関する情報を含む。また、これらの複数の条件を個別に選択可能なように設定画面上において複数の選択カラムが表示されてもよい。
【0060】
なお、精度管理に用いる指標には、同じ種類の指標であっても、Vender Recommend ID又は作製条件IDに応じて、異なる管理値が設定されてもよい。例えば、図16及び図17の指標「RBC Color R」は、Vender Recommend ID又は作製条件IDに応じて、「RBC Color R 01」、「RBC Color R 02」、「RBC Color R 03」などに対応づけられた上限値、下限値、目標値が、互いに異なった値で設定されていてもよい。さらに、各指標は、Vender Recommend ID又は作製条件IDに応じて、異なる種類の指標が設定されてもよい。例えば、Vender Recommend ID「試薬A/SP-10」、と関連付けられた指標の種類(RBC Color S、RBC Redness Index、NEUT Granule Index、NEUT Cell Diameter)と、Vender Recommend ID「試薬B/SP-10」と関連付けられた指標の種類(RBC RGB、RBC Redness Index、NEUT Nucler Color G、NEUT N/C)とは、少なくとも1つ異なっている。そして、Region ID「試薬B/SP-10」が指定されると、「試薬B/SP-10」に関連づけられた指標と、当該指標に対応付けられた管理値とが抽出されて、設定指標情報SIIとして設定される。
【0061】
<指標設定処理の第3例>
指標設定処理の第3例では、一又は複数の検査システムは、管理センター(サーバ)から送信された精度管理に使用する指標及び管理値の情報を含む指標関連情報に基づいて指標を設定する。図18は、指標設定処理の第3例を示すフローチャートである。図19は、指標設定処理の第3例における管理センターと検査システムの情報処理の一例を示す図である。
【0062】
図18及び図19に示すように、精度管理装置1の制御部50は、管理指標情報MIIを管理する管理センター110に情報の送信を要求する(図18のステップS31/図19に示す「(1)要求」)。管理センター110は、制御部50に対して、情報を配信する。制御部50は、管理センター110からの情報を取得する(図18のステップS33/図19に示す「(2)配信」)。制御部50は、管理センター110からの情報に基づき、塗抹標本の精度管理に使用する少なくとも一つの指標を設定又は更新し、設定指標情報SIIとして記録する(図18のステップS35/図19に示す「(3)記録/更新」)。
【0063】
精度管理装置1の制御部50からの要求に応じて、管理センター110から送信される情報は、例えば、検査施設A~Dに応じた指標及び管理値を含む管理指標情報MIIの少なくとも一部を含んでもよい。また、管理センター110から送信される情報は、標本の作製条件に関する所定の基準を含む情報を含んでもよい。また、管理センター110は、要求の有無に関わらず、検査施設A~Dの情報に基づいて、検査施設A~Dに応じた指標や管理値を含む管理指標情報MIIの少なくとも一部を自動配信してもよい。例えば、検査施設A~Dの情報は、各検査施設内で採用されている塗抹標本の作製条件に関する所定の基準、又は、塗抹標本の作製に使用される試薬の種別及び/又は標本作製装置の種別に応じて定められた所定の基準に関する情報を含む。
【0064】
管理センター110は、一又は複数のサーバ又は情報処理装置を備える施設である。管理センター110は、例えば、解析や精度管理のソフトウェア等を提供するベンダーの施設であってもよいし、複数の検査施設が連携する施設グループのセントラル施設であってもよい。管理センター110は、上記いずれかの施設と所定の通信ネットワークを介して接続可能なクラウドシステムであってもよい。
【0065】
なお、図19の例では、管理システム200において、管理センター110は1台配置されているが、これに限られず管理センターの数は任意である。また、管理システム200において、検査施設A~Dの数も任意である。
【0066】
<特徴値取得処理>
【0067】
図20は、管理対象の塗抹標本の染色状態を反映する特徴値の取得処理を示すフローチャートである。
【0068】
図20に示すように、図2に示す精度管理装置1の制御部50は、管理対象の複数の画像データを取得する(ステップS1)。制御部50は、管理対象の複数の画像データから特徴値を取得する(ステップS2)制御部50は、S1~S2のステップを実行することにより、管理対象の塗抹標本の染色状態を反映する特徴値を取得する。
【0069】
図21は、図20のステップS2の特徴値取得処理を示すフローチャートである。図21に示すように、図5に示す制御部50は、取得した複数の画像データIDに基づいて各細胞成分を認識する(ステップS11)。次に、制御部50は、ステップS11での認識結果を踏まえ、核・細胞質を含む各細胞の各領域を特定し抽出する(ステップS12)。制御部50は、複数の画像データIDごとに、抽出された各領域における血球の色情報(塗抹標本の染色状態を反映する特徴値)を取得する(ステップS13)。
【0070】
図22は、管理対象の塗抹標本における画像データの取得処理、及び、特徴値の取得処理の詳細を示す図である。図22に示すように、図2に示す制御部50は、複数の塗抹標本の各々から、例えば数百又は数千の複数の画像データIDを取得する。より具体的には、制御部50は、図1に示す検査システム70-1~70-4の標本画像撮像装置40が撮像することによって取得された複数の画像データIDを取得する。
【0071】
制御部50は、複数の画像データIDの各々から塗抹標本の染色状態を反映する特徴値を取得する。図22に示すように、制御部50は、特徴値取得処理として、(1)細胞成分の認識、(2)核・細胞質領域の抽出、及び、(3)画像データごとに血球の色情報の取得を実行する。
【0072】
より具体的には、制御部50は、処理(1)として、取得した複数の画像データIDに基づいて各細胞成分を認識する。次に、制御部50は、処理(2)として、処理(1)の認識結果を踏まえ、例えば核・細胞質を含む各細胞の各領域を特定し抽出する。制御部50は、処理(3)として、複数の画像データIDごとに、抽出された各領域における細胞種(赤血球、白血球、血小板など)の情報と構造成分(核、細胞質、顆粒など)の情報とを対応付けて、血球の色情報(塗抹標本の染色状態を反映する特徴値)を取得する。
【0073】
塗抹標本の染色状態を反映する特徴値は、上記した、画像データの血球の各領域から取得される色情報を含む。「塗抹標本の染色状態を反映する特徴値」は、例えば、血球の画像データから取得される色成分(例えばRed,Green,Blue)の輝度値、色相(Hue)、彩度(Saturation)、及び、明度(Value)の値、並びに、これらを組み合わせた値(例えばHSV値,RGB)の少なくとも一つの値を含む。
【0074】
「血球」は、例えば、赤血球、白血球、及び、血小板の少なくとも一つを含む。白血球は、例えば、好塩基球、好酸球、好中球、単球、及び、リンパ球の少なくとも一つを含む。
【0075】
血液に含まれる血球の約9割を占める赤血球は、塗抹標本においても占める割合(面積)が大きい。よって、赤血球の色情報は塗抹標本全体の染色状態を反映する情報となり得ることから、塗抹標本の染色状態を反映する特徴値としてより好ましい。赤血球の色情報は、白血球の色情報に比べて、pHなどの染色条件の違いによる染色状態の変化を反映しやすい傾向がある。他方で、塗抹標本の染色状態を反映する特徴値として、白血球の色情報を採用してもよい。この場合、赤血球および白血球などの塗抹標本の染色状態を反映する複数種類の特徴値を用いて、精度管理してもよい。例えば、赤血球の色情報の少なくとも1つと白血球の色情報の少なくとも1つとを用いることにより、塗抹標本全体の染色状態の品質を管理しつつ、重要な解析対象である白血球の構成要素(例えば、核又は顆粒)の染色性も併せて管理することができる。
【0076】
図23は、赤血球の染色性を反映する特徴値の一例を示す図である。図23に示すように、赤血球の染色性を反映する特徴値は、例えば、赤血球の各色成分の輝度値の平均値、赤血球の色相値の平均値、赤血球の彩度値の平均値、赤血球の明度値の平均値、及び、赤血球のHSV値を含む。ここで、図24を参照して、特徴値の一例である、赤血球の赤成分の輝度値の平均値の取得処理の一例を説明する。
【0077】
図24に示すように、図2に示す制御部50は、一の塗抹標本(サンプル)を撮像することによって生成される複数の画像データIDを取得する。次に、制御部50は、取得された複数の画像データIDごとの赤血球領域の赤(R)の平均値(redcell_r_mean)を取得する。そして、制御部50は、一の塗抹標本の複数の画像データID全体(枚数)に基づいて、複数の画像データIDごとの赤血球領域の赤(R)の平均値(redcell_r_mean)の平均値(RBC Color R)を取得する。
【0078】
画像データから得られる特徴値は、白血球の構造成分である核、細胞質、及び顆粒等から得られる色情報に対応する特徴値を含む。これらは、白血球の構造成分の染色性を反映するものである。白血球から得られる特徴値の具体例について図25を参照して説明する。
【0079】
図25は、白血球の染色性を反映する特徴値の一例を示す図である。図25に示すように、白血球の染色性を反映する特徴値は、例えば、白血球の細胞質領域の各色成分の輝度値の平均値、白血球の細胞質領域の色相値の平均値、白血球の細胞質領域の彩度値の平均値、及び、白血球の細胞質領域の明度値の平均値を含む。白血球の染色性を反映する特徴値は、例えば、白血球の核領域の各色成分の輝度値の平均値、白血球の核領域の色相値の平均値、白血球の核領域の彩度値の平均値、及び、白血球の核領域の明度値の平均値を含む。また、白血球の染色性を反映する特徴値は、白血球の細胞質領域、及び、核領域における輝度値、色相値、彩度値、及び、明度値に関する標準偏差の値を含んでもよい。白血球の染色性を反映する特徴値は、例えば、白血球の顆粒指数の平均値を含む。なお、特徴値には、血球の形態を反映する特徴値が含まれる。
【0080】
塗抹標本画像データの血球から得られる特徴値には、上述した「塗抹標本の染色状態を反映する特徴値」以外に、血球の形態情報を反映する特徴値が挙げられる。
【0081】
図26は、血球の形態を反映する特徴値の一例を示す図である。図26に示すように、血球から得られる血球の形態を反映する特徴値は、例えば、血球の細胞径の平均値、血球の核径の平均値、血球のN/C比の平均値、血球の細胞質の面積の平均値、血球の円形度(真円率)の平均値、及び、核の円形度の平均値を含む。
【0082】
ここで、図27及び図28を参照して、特徴値の一例としての、白血球のうち、例えば好中球に関する顆粒指数(Granule_Index)の取得処理の一例について説明する。
【0083】
図27は、図20のステップS2の特徴値取得処理を示すフローチャートであり、顆粒指数の取得処理の一例を示すフローチャートである。図27に示すように、図2に示す制御部50は、塗抹標本に対応する、例えば白血球を含む画像データを取得する(ステップS21)。制御部50は、取得された画像データに対して、例えば局所二値化処理を実行して、細胞質領域を抽出する(ステップS22)。制御部50は、顆粒を抽出する(ステップS23)。具体的には、制御部50は、抽出した細胞質領域から所定のピクセル数に基づいて顆粒(例えば、数ピクセル以上の顆粒)を特定する。制御部50は、特定された顆粒ごとに、顆粒サイズ(面積)と、平均輝度とを取得する。制御部50は、顆粒サイズと、顆粒平均輝度と細胞質平均輝度の差のそれぞれに所定の閾値を定めることによって、特定された顆粒を、一次顆粒と、二次顆粒とに分類する。
【0084】
次に、制御部50は、顆粒に関する領域を算出する(ステップS24)。具体的には、制御部50は、顆粒として認識した顆粒領域の一次顆粒及び二次顆粒の数の合計を算出する。制御部50は、顆粒として認識した領域の面積の合計(総顆粒面積)、又は、顆粒として認識した領域の総顆粒面積比を算出してもよい。制御部50は、算出した顆粒領域の顆粒の数の合計、総顆粒面積及び総顆粒面積比の少なくとも一つの値を顆粒指数として取得する(ステップS25)。
【0085】
ここで、図28を参照して、特徴値の一例としての、白血球のうち、例えば好中球に関する顆粒指数(Granule_Index)の取得処理の一例について説明する。図28に示すように、(1)図2に示す制御部50は、塗抹標本に対応する、白血球を含む画像データを取得する。(2)制御部50は、取得された画像データに対して、例えば局所二値化処理を実行して、細胞質領域を抽出する。ここで、「顆粒指数」は、白血球に含まれる顆粒の数を反映する特徴値であり、白血球の細胞質領域において特定された顆粒領域の数または面積に基づき取得することができる。「顆粒領域」は、二値化処理した画像データに基づき、細胞質部分と区別して特定することができる。顆粒指数を取得することにより、血球中の顆粒の変化を客観的・定量的に示すことができるため、顆粒が増加する感染症や顆粒が低下する骨髄異形成症候群(MDS: myelodysplastic syndromes)などの顆粒の増減を伴う疾患の診断・評価に活用できる可能性がある。
【0086】
(3)制御部50は、抽出した細胞質領域から所定のピクセル数に基づいて顆粒(例えば、数ピクセル以上の顆粒)を特定する。制御部50は、特定された顆粒ごとに、顆粒サイズ(面積)と、平均輝度とを取得する。制御部50は、顆粒サイズと、顆粒平均輝度と細胞質平均輝度の差(例えば細胞質から顆粒部分を除いた部分の平均輝度と、顆粒の平均輝度との差)のそれぞれに所定の閾値を定めることによって、特定された顆粒を、一次顆粒と、二次顆粒とに分類する。ここで、顆粒平均輝度と細胞質平均輝度の差が0(ゼロ)である場合、画像データの背景部分と同様の輝度であることを示す。また、顆粒平均輝度と細胞質平均輝度の差が負方向に大きい場合、顆粒部分が他の部分よりも濃い(暗い)ことを示す。顆粒の分類処理について、図29を参照してより詳しく説明する。
【0087】
図29は、一次顆粒及び二次顆粒の抽出処理の一例を示す図である。例えば、二次顆粒の顆粒サイズの閾値が「10」ピクセルと、顆粒平均輝度と細胞質平均輝度の差の閾値が「0」と設定された場合、制御部50は、特定された顆粒を、図29におけるグラフにおける破線で囲まれた領域R1に含まれる一次顆粒G1と、図29におけるグラフの領域R1とは異なる領域R2に含まれる二次顆粒G2とに分類する。なお、上記の各閾値は、例えば画像データの解像度に基づいて任意に設定可能であり、適宜変更可能である。また、1ピクセルの大きさは、適宜設定されてよいが、例えば約0.01μm2である。
【0088】
図28に戻り、(4)制御部50は、顆粒として認識した顆粒領域の一次顆粒及び二次顆粒の数の合計を算出する。制御部50は、顆粒として認識した領域の面積の合計(総顆粒面積)、又は、顆粒として認識した領域の総顆粒面積比を算出してもよい。ここで、顆粒領域の顆粒の数の合計と、総顆粒面積及び総顆粒面積比とは所定の相関関係があるため、特徴値として、顆粒領域の顆粒の数の合計に加えて、又は、代えて、総顆粒面積及び総顆粒面積比を採用可能である。総顆粒面積比とは、例えば、細胞質面積の中で顆粒面積がどの程度占めているかの比率をいう。(5)制御部50は、算出した顆粒領域の顆粒の数の合計、総顆粒面積及び総顆粒面積比の少なくとも一つの値を顆粒指数として取得する。
【0089】
<精度管理情報に関する出力画面例>
図30は、管理対象の塗抹標本の染色状態を反映する特徴値と精度管理情報の出力画面の一例を示す図である。図30は、管理対象の塗抹標本の染色状態を反映する特徴値と精度管理情報の出力画面であって、内部精度管理としての出力画面の一例を示す。図1に示す精度管理装置1は、一の検査施設において作製された複数の塗抹標本の各々から複数の特徴値を取得し、それら特徴値に基づき決定された精度管理情報を出力する。図30に示すように、精度管理装置1は、特徴値の指標I(例えば、RBC Redness Index, RBC Color S, Granule Index)ごとに、赤血球の色情報に関する複数の特徴値のプロットP及び白血球の色情報に関する複数の特徴値のプロットPを、管理幅MWとともに出力する。この構成によれば、赤血球の色情報で塗抹標本全体の染色状態を把握しつつ、重要な解析対象となる白血球の染色性及び形態もあわせて精度管理することが可能となる。
【0090】
特徴値の指標IであるRBC Redness Indexは、赤血球の色相値、赤血球の彩度値、及び赤血球の明度値のそれぞれについて主成分分析を行い、主成分分析を行った各値の平均値から算出される値である。特徴値の指標IであるRBC Color Sは、赤血球の彩度値である。特徴値の指標IであるGranule Indexは、白血球の顆粒指数である。
【0091】
なお、精度管理装置1は、赤血球の色情報に関する複数の特徴値のプロットPのみを出力画面に出力してもよいし、白血球の色情報に関する複数の特徴値のプロットPのみを出力画面に出力してもよい。
【0092】
内部精度管理としての精度管理情報は、所定の一の検査施設内での塗抹標本の染色状態のバラツキを示す情報である。当該精度管理情報は、所定の一の検査施設の染色条件に応じた精度管理の基準となりうる。したがって、当該一の検査施設において日々作製される塗抹標本の品質を、当該一の検査施設に適した基準で管理することか可能となる。
【0093】
また、内部精度管理としての精度管理情報は、以下のような場面でも活用可能である。例えば、内部精度管理としての精度管理情報は、検査装置のメンテナンス後や試薬交換後や試薬ロット変更時に取得される塗抹標本の染色状態に問題が無いかどうかの確認の際に使用される。また、内部精度管理としての精度管理情報によれば、経時的な特徴値の上昇又は下降の傾向を確認することで、試薬や検査装置の異常を事前に把握可能である。さらに、気温や湿度等の環境条件は、塗抹標本の染色性に影響するため、内部精度管理としての精度管理情報は、環境条件の変化に応じた、染色処理条件の最適化を行う際にも使用されうる。
【0094】
図31は、管理対象の塗抹標本の染色状態を反映する特徴値と精度管理情報の出力画面の一例を示す図である。管理対象の塗抹標本の染色状態を反映する特徴値と精度管理情報とを出力する際に、当該管理対象の塗抹標本の染色状態を反映する特徴値が所定の範囲内に含まれるか否かを識別可能に出力される。図31に示す画面例では、例えば、特定の特徴値に対応するプロットP1が管理幅MWから外れているため、この特定の特徴値に対応するプロットP1について、出力画面上で他のプロットと異なる形態で出力される。例えば、プロットP1が他のプロットよりも強調して出力される。より具体的には、プロットP1が他のプロットとは異なる色、異なる大きさ、又は、異なる形状(例えばプロットP1を丸形状として他のプロットを四角形状とする。)で出力される。この構成によれば、所定の範囲内に含まれない特定の特徴値に対応するプロットを所定の範囲内に含まれる他のプロットと容易に識別することが可能である。
【0095】
図32は、管理幅MWから外れる特定の特徴値に対応するプロットに関して所定のアラート表示を含む出力画面の一例を示す。図32に示すように、管理幅MWから外れる特定の特徴値に対応するプロットP3に対してユーザの第1の指定操作が実行される場合、プロットP3に対応する特定の特徴値の詳細情報を含むアラート表示AIが出力される。ユーザの第1の指定操作は、任意であるが、例えば、ユーザが操作するマウスの動作に対応するカーソルC1がプロットP3上で一定時間停止することを含む。
【0096】
この構成によれば、管理幅から外れる特定の特徴値に関する詳細情報をユーザに適切に提示可能である。したがって、ユーザは当該詳細情報に触れることによって、特徴値が管理幅から外れた原因の特定が容易になる。なお、カーソルC1がプロットP3上で停止する場合にマウスでワンクリック操作を行うときは、後述する図33に示すような、プロットP3の特徴値に関連づけられた複数の画像データを表示する画面が表示されてもよい。
【0097】
図33は、一の塗抹標本から取得された複数の画像データを表示する画面の一例を示す図である。特に図33は、例えば図32に示す画面上においてユーザが所定の操作を行った場合に出力される画面である。例えば、図32に示す出力画面上において、特定の特徴値に対応するプロットP5に対してユーザの第2の指定操作が実行される場合、プロットP5に対応する特定の特徴値を取得する際に使用された複数の画像データIDを表示する、図33に示す画面が出力される。
【0098】
この構成によれば、ユーザが所望する特定の特徴値を取得する際に使用された複数の画像データIDの一覧を容易に確認できる。なお、ユーザの第2の指定操作は、任意であるが、例えば、カーソルC3がプロットP5上で停止する場合にマウスでダブルクリック操作を行うことを含む。また、ユーザの第1の指定操作と第2の指定操作とは異なる操作であることが好ましいが、同一の操作でもよい。
【0099】
図34は、特定の画像データと、特定の画像データに対応付けられた複数の特徴値(Feature Values)とを関連づけて表示する画面の一例を示す図である。特に図34は、例えば図33に示す画面上においてユーザが所定の操作を行った場合に出力される画面である。例えば、図33に示す出力画面上において、特定の画像データID1に対してユーザの第3の指定操作が実行される場合、指定された特定の画像データID1に対応する複数の特徴値の詳細情報を表示する、破線で囲まれた領域R3を含む、図33に示す画面が出力される。
【0100】
この構成によれば、ユーザが所望する特定の画像データに対応する複数の特徴値の一覧を容易に確認できる。なお、ユーザの第3の指定操作は、任意であるが、例えば、カーソルC5が画像データID1上で停止する場合にマウスでダブルクリック操作を行うことを含む。
【0101】
ここで、予め設定した正常範囲から外れた特徴値FV(例えばgranule_Index)については、他の特徴値と異なる形態で表示されてもよい。この構成によれば、異常値である特定の特徴値FVを他の(正常な)特徴値と容易に識別可能である。正常範囲は、設定した精度管理の指標の管理値(例えば上限値、下限値により得られる管理幅の情報)に基づき設定されてもよい。
【0102】
図35は、取得される特徴値を選択可能な画面の一例を示す図である。取得される特徴値、又は、図30図32に示すような画面上に出力される特徴値は、例えば、検査施設ごと、又は、地域等ごとに予め定められている。他方で、図35に示すような特徴値の選択画面をユーザが操作することによって、ユーザが所望する一又は複数の特徴値を選択することが可能である。この構成によれば、ユーザが所望する特徴値を、管理対象の塗抹標本の染色状態を反映する特徴値と精度管理情報の出力画面において出力可能である。
【0103】
図36は、任意の特徴値に対して正常範囲(管理幅)を設定可能な画面の一例を示す図である。図36に示す画面において、ユーザは、例えば、各検査施設で実施された精度管理の結果に基づいて、任意の特徴値に対する管理幅を、破線で囲まれた領域R5において設定可能である。例えば、5行目の項目(cell列が「LY」でfeature列が「cell_s_mean」)の各値(lower、upper)は、リンパ球の細胞質の染色状態に関する特徴値の管理幅を示す。6行目の項目(cell列が「MO」でfeature列が「cell_v_mean」)の各値は、単球の細胞質の染色状態に関する特徴値の管理幅を示す。また、7行目の項目(cell列が「SNE」でfeature列が「segment_num」の各値は、好中球の分葉数に関する特徴値の管理幅を示す。この構成によれば、ユーザは、検査施設における日々の精度管理の指標から、任意に特徴値に対する管理幅を設定することができるため、主観的な検査者間の判定誤差を抑制することが可能である。
【0104】
図36に示す各特徴値に設定された管理幅を外れた異常の特徴値に対応する画像データについては、例えば、図33に示す複数の画像データを表示する画面において、画像データID1,ID3,ID5,ID7,ID9,ID11,ID13のように、正常の特徴値に対応する他の画像データIDとは異なる形態で表示されてもよい。異なる形態で表示する手法は任意であるが、例えば、画面上において、異常の特徴値に対応する画像データのみに色枠を付けたり、正常の特徴値に対応する他の画像データよりも大きく表示することを含む。
【0105】
<他の実施形態>
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更/改良(例えば、各実施形態を組み合わせること、各実施形態の一部の構成を省略すること)され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0106】
例えば、被検者から採取された血液の塗抹標本の精度管理情報を出力したが、被検者から採取された細胞の標本の精度管理情報を出力してもよい。
【0107】
例えば、精度管理システム100に含まれる塗抹標本作製装置20によって塗抹標本スライド10を作製したが、検査施設に所属する検査技師が手動で塗抹標本スライド10を作製してもよい。また、塗抹標本スライド10を標本画像撮像装置40によって撮像したが、検査施設に所属する検査技師が手動で塗抹標本スライド10を撮像してもよい。
【符号の説明】
【0108】
1:精度管理装置、10:塗抹標本スライド、20:塗抹標本作製装置、30:標本搬送装置、40:標本画像撮像装置、50:制御部、60:表示部、70-1~70-4:検査システム、77:通信部、80:記憶部、90:入力部、100:精度管理システム、110:管理センター、200:管理システム
図1
図2
図3(A)】
図3(B)】
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