(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131202
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】ダイナミックダンパー
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
F16F15/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035797
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000158840
【氏名又は名称】鬼怒川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【弁理士】
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勇輝
【テーマコード(参考)】
3J048
【Fターム(参考)】
3J048AA03
3J048AB01
3J048AD07
3J048BA05
3J048BB06
3J048BF02
3J048BF08
3J048CB23
3J048EA15
3J048EA36
(57)【要約】
【課題】特定の固有振動数の制振性能の安定化が図れると共に、耐久性の向上を図り得るダイナミックダンパーを提供する。
【解決手段】ダイナミックダンパー1は、マス部材2と、一対のダンパー部材3、3と、該両ダンパー部材とマス部材とを連結する一対の締結ボルト4と、を有し、各ダンパー部材は、一対の外筒10と、小円筒状の一対の内筒11と、ゴム材からなる一対の弾性体12と、を備え、マス部材は、左右両側部に前記内筒の軸方向の一端部が挿入される挿入孔8が形成されていると共に、該各挿入孔からさらに深い位置に雌ねじ孔9が形成され、締結ボルトは、内筒の内部に貫入される軸部14の先端部に、各雌ねじ孔に螺着する雌ねじ部14aが形成され、内筒の一端部の断面形状を2面幅に形成する一方、マス部材の挿入孔の断面形状を二面幅状に形成して、締結ボルトの回転に伴う連れ回り回転を規制するようにした。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マス部材と、該マス部材を左右両側から弾性的に支持する一対のダンパー部材と、該両ダンパー部材と前記マス部材とを連結する一対の連結部材と、を有し、
前記各ダンパー部材は、一対の外筒と、該各外筒の内部に軸線方向に沿って設けられた一対の内筒と、前記各外筒と各内筒との間に設けられた一対の弾性体と、を備え、
前記各内筒は、前記各外筒から前記マス部材の方向へ延びた小径円筒状に形成され、
前記マス部材は、左右両側部に前記各内筒の軸方向の一端部が挿入される一対の挿入孔が形成されていると共に、該各挿入孔の底面に雌ねじ孔がそれぞれ形成され、
前記各連結部材は、ボルト状に形成されて、前記各内筒の内部に有する挿通孔に挿通される軸部の先端部に、前記マス部材の各雌ねじ孔に螺着する雌ねじ部がそれぞれ形成され、
前記各内筒の一端部と前記マス部材の各挿入孔との間に、前記連結部材の回転に伴う連れ回り回転を規制する回転規制機構を設けたことを特徴とするダイナミックダンパー。
【請求項2】
請求項1に記載のダイナミックダンパーであって、
前記回転規制機構は、前記内筒の少なくとも軸方向の一端部を断面を非円形状に形成し、前記マス部材の各挿入孔の内周面の断面を非円形状に形成して、非円形状の前記一端部を、非円形状の前記挿入孔に軸方向から挿入することによって構成されていることを特徴とするダイナミックダンパー。
【請求項3】
請求項1または2に記載のダイナミックダンパーであって、
前記各ダンパー部材は、前記各外筒に固定されたブラケットを介して振動部材に固定されていると共に、ゴム材によって形成された前記弾性体の外周面が前記各外筒の内周面に、内周面が前記各内筒の外周面にそれぞれ加硫接着されていることを特徴とするダイナミックダンパー。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のダイナミックダンパーであって、
前記各内筒は、前記一端部が前記ダンパー部材の軸方向一端側から突出して前記マス部材方向へ延出しているのに対して、他端部が前記ダンパー部材の軸方向他端側から突出しており、
前記各連結部材は、前記内筒の挿通孔に挿通された状態で、前記軸部の軸方向の一端部に一体に有する頭部が前記内筒の他端部から外部に出ていると共に、前記軸部の先端部の前記雄ねじ部が前記内筒の軸方向の一端部から突出していることを特徴とするダイナミックダンパー。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のダイナミックダンパーであって、
前記各内筒は、軸方向の全体の断面が非円形の四角形状に形成されていることを特徴とするダイナミックダンパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイナミックダンパー、特に、自動車の車体に取り付けられて、振動部材の特定周波数の振動を吸収するダイナミックダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車の車体の振動を抑制するダイナミックダンパーとしては、以下の特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
このダイナミックダンパーは、質量部材を両持ち支持する第1の取付金具及び第2取付金具と、該各取付金具と質量部材とをそれぞれ連結する一対の連結部材と、を備えている。
【0004】
前記質量部材は、直方体状に形成された金属製のマス部材であって、車体フレームと取付ボルトにより取り付けられた断面L字形状のブラケットに前記連結部材及び第1、第2取付金具を介して取り付けられている。
【0005】
前記各連結部材は、内筒と、該内筒の中央孔に嵌挿されるボルトからなる軸部材と、その周囲に配置されて取付金具の円筒部に圧入される外筒と、前記軸部材と外筒とを結合するゴム状弾性体とからなる円筒形の連結ブッシュと、を備えている。
【0006】
そして、ダイナミックダンパーを車体フレームに取り付けるには、まず、前記円筒部に外筒が圧入された取付金具を、前記ブラケットを介して車体フレームに対して取り付ける。また、内筒の先端部を質量部材の挿入孔に挿入した後に、内筒に挿入された軸部材の頭部を回転操作して、前記質量部材の挿入孔の内部に形成された雌ねじ部に軸部材の先端部に有する雄ねじ部を螺着しつつ所定トルクで締め付けることにより、質量部材を連結部材に取り付けるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-74626号公報(
図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のダイナミックダンパーにあっては、前記内筒が、質量金具の挿入孔に対して回転可能に形成されていることから、前述のように、連結部材に質量部材を固定する際に、前記軸部材の頭部を締め付け方向へ回転操作すると、軸部材の頭部の一端面と該一端面が着座する内筒の軸方向の一端縁との間に大きな摩擦抵抗が発生する。このため、軸部材の回転に伴って内筒が連れ回り回転して連結ブッシュや外筒を含む連結部材全体が不用意に回転してしまうおそれがある。
【0009】
この結果、質量部材に対する連結ブッシュを含む連結部材の取り付け位置に回転方向の位置ずれが発生して、この位置ずれにより狙いの周波数、つまり特定の固有振動数の制振性能が不安定になるおそれがある。
【0010】
また、連結部材は、回転方向の位置ずれが発生した状態で質量部材に連結されると、狙いの周波数の車体の固有振動数に対応できずに耐久性が低下するおそれがある。
【0011】
本発明は、前記従来のダイナミックダンパーの技術的課題に鑑みて案出されたもので、ダンパー部材をマス部材に連結部材によって取り付ける際のダンパー部材の回転方向の位置ずれを抑制して、特定の固有振動数の制振性能の安定化が図れると共に、耐久性の向上を図り得るダイナミックダンパーを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願請求項1に係る発明は、マス部材と、該マス部材を左右両側から弾性的に支持する一対のダンパー部材と、該両ダンパー部材と前記マス部材とを連結する一対の連結部材と、を有し、
前記各ダンパー部材は、一対の外筒と、該各外筒の内部に軸線方向に沿って設けられた一対の内筒と、前記各外筒と各内筒との間に設けられた一対の弾性体と、を備え、
前記各内筒は、前記各外筒から前記マス部材の方向へ延びた小径円筒状に形成され、
前記マス部材は、左右両側部に前記各内筒の軸方向の一端部が挿入される一対の挿入孔が形成されていると共に、該各挿入孔の底面に雌ねじ孔がそれぞれ形成され、
前記各連結部材は、ボルト状に形成されて、前記各内筒の内部に有する挿通孔に挿通される軸部の先端部に、前記マス部材の各雌ねじ孔に螺着する雌ねじ部がそれぞれ形成され、
前記各内筒の一端部と前記マス部材の各挿入孔との間に、前記連結部材の回転に伴う連れ回り回転を規制する回転規制機構を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ダンパー部材をマス部材に連結部材によって取り付ける際の前記ダンパー部材の回転方向の位置ずれを抑制して、特定固有振動数に対する安定した制振性能を発揮しつつ耐久性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係るダイナミックダンパーが取り付けられる自動車のフロントサスペンションメンバーを示す俯瞰図である。
【
図2】本実施形態のダイナミックダンパーを示す斜視図である。
【
図6】本実施形態に供される内筒を示し、(a)は内筒の正面図、(b)は左側面図、(c)は右側面図である。
【
図7】本実施形態のダイナミックダンパーのマス部材を取り外した状態を示す斜視図である。
【
図8】マス部材の一方の挿入孔に一方のダンパー部材の内筒と締結ボルトが挿入された状態を示す斜視図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係るダイナミックダンパーからマス部材を取り外した状態を示す斜視図である。
【
図10】第2実施形態に供される内筒を示し、(a)は内筒の正面図、(b)は内筒の左側面図である。
【
図11】同第2実施形態のマス部材の一方の挿入孔に一方のダンパー部材の内筒と締結ボルトが挿入された状態を示す斜視図である。
【
図12】第2実施形態における
図3のB-B線断面図である、
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るダイナミックダンパーの実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、ダイナミックダンパーを、自動車のフロントサスペンションメンバーに適用したものを示している。
【0016】
図1は本発明に係るダイナミックダンパーが取り付けられる自動車のフロントサスペンションメンバーを示す俯瞰図である。
【0017】
自動車の振動部材であるフロントサスペンションメンバー01は、周知のように、走行時の車体の捩れを抑え、路面からの衝撃を緩和し、乗り心地、操縦安定性を向上させるもので、
図1に示すように、剛性の高い溶接構造用熱間圧延鋼板などによって成形された四角形のフレーム02によって構成されており、フロントサスペンションの他に、エンジンやステアリングなどを支持するようになっている。
【0018】
そして、振動抑制装置である前記ダイナミックダンパー1は、フロントサスペンションメンバー01の
図1の矢印で示す位置に取り付けられている。
【0019】
図2は本実施形態のダイナミックダンパーを示す斜視図、
図3は同ダイナミックダンパーの平面図、
図4は
図3のA-A線断面図、
図5は
図3のB-B線断面図、
図6は本実施形態に供される内筒を示し、(a)は内筒の正面図、(b)は左側面図、(c)は右側面図、
図7は本実施形態のダイナミックダンパーのマス部材を外した状態を示す斜視図、
図8はマス部材の一方の挿入孔に一方のダンパー部材の内筒と締結ボルトが挿入された状態を示す斜視図である。
【0020】
前記ダイナミックダンパー1は、
図2に示すように、質量体であるマス部材2と、該マス部材2を左右両側から弾性的に支持する一対のダンパー部材3、3と、前記ダンパー部材3,3とマス部材2を連結する一対の連結部材である締結ボルト4,4と、前記各ダンパー部材3,3をフロントサスペンションメンバー01に取り付ける一対の取付金具5、5と、を有している。
【0021】
前記各取付金具5、5は、
図2及び
図3に示すように、各ダンパー部材3、3の後述する外筒10,10が圧入される円筒部6,6と、該円筒部6,6の両側にそれぞれ溶接固定された各一対のL字形状の支持ステー7、7と、を有している。
【0022】
各円筒部6は、軸方向の長さが所定長さに設定されていると共に、内径も所定の大きさに設定されている。
【0023】
各一対の支持ステー7、7は、各円筒部6の径方向両側に配置され、各上端部7a、7aが円筒部6の両側面に溶接固定され、各下端部7b、7bにボルト孔7cが貫通形成されている。そして、各取付金具5,5は、前記各ボルト孔7cに挿入される図外のボルトによって前記フロントサスペンションメンバー01のフレーム02に固定されるようになっている。
【0024】
マス部材2は、
図2~
図5、
図8に示すように、鉄系金属材でほぼ直方体に形成されて所定の質量を有し、両側部に幅方向に延びた一対の挿入孔8が対向して形成されている。
【0025】
前記両挿入孔8は、同軸状に配置されて、それぞれの断面形状がマス部材2の前後方向に長い長孔状に形成されており、
図5に示すように、内面である上面8aと下面8bが平行する平坦な2面幅状に形成されていると共に、前後の両端部8c、8dが半円弧状に形成されている。したがって、各挿入孔8は、断面が長孔形状の非円形状に形成されている。ここで、非円形状とは、真円や真円に近い形状以外の概念であって、四角形や矩形状の多角形の他に、前記2面幅状の長孔も含まれる。また、各挿入孔8は、
図4に示すように、マス部材2の外側面から内部軸方向の深さが中心位置方向に向かって約1/3程度に形成されて、後述する内筒11の一端部11aの長さとほぼ同じか若干長く形成されていると共に、内部の先端面(底面)の中央位置には雌ねじ孔9がそれぞれ形成されている。
【0026】
前記各ダンパー部材3は、
図2及び
図4に示すように、前記円筒部6の内部に圧入保持される外筒10と、該外筒10の軸心位置に配置された内筒11と、外筒10の内周面と内筒11の外周面に加硫接着されたゴム製の弾性体12と、を有している。
【0027】
前記各外筒10は、鉄系金属によって円筒状に形成されて、軸方向の長さは前記円筒部6の軸方向長さとほぼ同一に形成されていると共に、外径が円筒部6の内径より僅かに大きく形成されて、円筒部6内に所定の圧入代をもって圧入固定されている。
【0028】
前記各内筒11は、
図5~
図9に示すように、鉄系金属によって細長い小径円筒状に形成されて、内部に締結ボルト4は挿入されるボルト挿通孔11eが形成されていると共に、軸方向の長さが外筒10からマス部材2の挿入孔8内部先端面まで延びている。つまり、各内筒11は、軸方向の一端部11aがマス部材2の前記挿入孔8の内部先端面(底面)に当接し、他端部11bが弾性体12を介して外筒10の軸方向外側まで延びている。前記一端部11aは、軸方向の長さDが挿入孔8の軸方向の長さとほぼ同じ長さに設定されて、挿入孔8の開口縁から先端面(底面)までの長さになっている。
【0029】
そして、内筒11は、
図6(a)~(c)に示すように、他端部11b側は小径円筒状に形成されているが、挿入孔8に挿入される一端部11a側は上面11cと下面11dが接線方向から平坦状にカットされた2面幅状に形成されており、つまり、一端部11aは、断面形状が横長の長円形状である非円形状に形成されて、前記挿入孔8の長孔状の断面形状に合致するように形成されており、したがって、長孔状の挿入孔8の内部に嵌合状態の挿入されるようになっている。
【0030】
ここで非円形状とは、四角形や矩形状の多角形の他に前述のように、真円や真円に近い形状以外の前記長円形状も含む概念である。
【0031】
そして、前記マス部材2の非円形状の挿入孔8と内筒11の非円形状の一端部11aによって回転規制機構が構成されている。
【0032】
各締結ボルト4は、頭部13と、該頭部13の一端面13aの中央に結合されて、前記内筒11のボルト挿通孔11eの内部に挿入される軸部14と、を有している。
【0033】
頭部13は、外周面がスパナなどの工具が嵌着される六角形状に形成されていると共に、軸部14側の前記一端面13aが内筒11の他端部11bの外端縁に着座する着座面になっている。
【0034】
軸部14は、
図4及び
図7に示すように、軸方向の長さが内筒11の軸方向長さよりも長く形成されて、先端部の外周面に前記挿入孔8の先端部に有する雌ねじ孔9の螺着する雄ねじ部14aが形成されている。
〔本実施形態におけるダイナミックダンパーの作用効果〕
本実施形態のダイナミックダンパー1によれば、予め各ダンパー部材3を、円筒部6を介して取付金具5に取り付けておき、この状態で各ダンパー部材3を、各締結ボルト4よってマス部材2の左右両側に取り付ける。
【0035】
この場合、まず、ダンパー部材3の内筒11の一端部11aを、マス部材2の各挿入孔8に挿入する。その後、内筒11のボルト挿通孔11eに締結ボルト4の軸部14を挿入すると共に、締結ボルト4の頭部13を、スパナ等の工具によって回転操作して雄ねじ部14aをマス部材の雌ねじ孔9に螺着締結させる。
【0036】
このとき、内筒11は、断面長円形状の一端部11aが長孔状の挿入孔8に挿入されていることから、マス部材2に対して回転が規制されている。このため、締結ボルト4の頭部13の一端面13aと内筒11の他端部11bの外端縁との間で大きな摩擦抵抗が作用しても、締結ボルト4の回転操作に伴って内筒11が連れ回り回転することがない。
【0037】
したがって、各ダンパー部材3は、マス部材2に対して予め設定された回転位置に位置決め保持されていることから、安定した寸法精度が確保されると共に、各マス部材2を介して狙いの周波数、つまり特定の固有振動数に対する精度の高い制振性能を発揮することができる。
【0038】
また、前述のように、各ダンパー部材3が、マス部材2に対して適正な回転位置に保持されていることから、耐久性の向上が図れる。すなわち、前記公報記載の従来技術のように、ダンパー部材(連結部材)の回転位置がずれてしまった場合は、狙った特定の固有振動数の制振性能を発揮できなくなって、無用な振動を受けることになることから、ダンパー部材3の耐久性が低下するおそれがある。しかし、本実施形態では、狙った特定の固有振動数の制振性能を発揮するので、耐久性の向上が図ることができる。
【0039】
さらに、本実施形態では、回転規制機構として、内筒11の軸方向の一端部11aを接線方向に直線状にカットされた2面幅状に形成されて断面が非円形状の長円形状に形成すると共に、マス部材2の挿入孔8の断面も内筒の一端部の断面形状に合わせて2面幅状の細長い非円形状の長孔状に形成したことから、構造が簡素化されているので、製造作業が容易になり、製造コストの高騰を抑制できる。
【0040】
また、組み立て時に、内筒11の非円形の一端部11aを、マス部材2の非円形の挿入孔8に挿入して嵌合状態に挿入するだけであるから、簡単な作業で効果的な回転規制が可能になる。
〔第2実施形態〕
図9~
図12は本発明の第2実施形態を示し、
図9は本実施形態に係るダイナミックダンパーからマス部材を取り外した状態を示す斜視図、
図10は本実施形態に供される内筒を示し、(a)は内筒の正面図、(b)は内筒の左側面図、
図11は本実施形態のマス部材の一方の挿入孔に一方のダンパー部材の内筒と締結ボルトが挿入された状態を示す斜視図、
図12は本実施形態における
図3のB-B線断面図である。
【0041】
本実施形態では、マス部材2の各挿入孔8の断面が長孔状になっていることは第1実施形態と同じであるが、内筒21の全体の断面形状をほぼ四角形状に形成したものである。
【0042】
すなわち、前記各挿入孔8は、上面8aと下面8bが平坦な2面幅状の前後方向に長い長孔状に形成されている。一方、内筒21は、内部に締結ボルト4が挿入されるボルト挿通孔21eが形成されていると共に、一端部21aだけではなく軸方向の全体の断面形状が正方形に形成されている。つまり、上下面21c、21cと両側面21d、21dが平坦状に形成されている。
【0043】
したがって、この第2実施形態によれば、各ダンパー部材3をマス部材2に取り付けるには、第1実施形態と同じく、まず、各ダンパー部材3の内筒21の一端部21a、21aを、マス部材2の各挿入孔8、8に挿入する。その後、内筒21のボルト挿通孔21eに締結ボルト4の軸部14を挿入すると共に、頭部13を、スパナ等の工具によって回転操作して雄ねじ部14aをマス部材の雌ねじ孔9に螺着締結させる。
【0044】
このとき、内筒21は、一端部21aの上下面21c、21cが挿入孔8の上下面8a、8bに面接触状態で当接嵌合されて、マス部材2に対して回転が規制されている。このため、締結ボルト4の頭部13の一端面13aと内筒21の他端部の外端縁との間で大きな摩擦力が作用しても、締結ボルト4の回転操作に伴って内筒11が連れ回り回転することがない。
【0045】
したがって、各ダンパー部材3は、マス部材2に対して予め設定された回転位置に位置決め保持されていることから、安定した寸法精度が確保されると共に、各マス部材2を介して狙いの周波数、つまり特定の固有振動数に対する精度の高い制振性能を発揮することができる。
【0046】
また、本実施形態の内筒21は、全体が断面正方形状の簡単な構造であることから、製造作業が容易になり、コストの低減化が図れる。
【0047】
本発明は、前記各実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば、マス部材の挿入孔の断面形状や内筒の断面形状を非円形状として、三角形、5角形などの多角形状や星形形状などとすることも可能である。
【0048】
また、本実施形態では、マス部材2の一対の挿入孔8,8を同軸上に設けているが、両者を前後方向や上下方向に互いにオフセットして設けることも可能である。
【0049】
また、ダイナミックダンパーの適用対象部材としては、車体の他の振動部材や自動車以外の船舶などの振動部材に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0050】
01…フロントサスペンションメンバー
02…フレーム
1…ダイナミックダンパー
2…マス部材
3…ダンパー部材
4…締結ボルト(連結部材)
5…取付金具
6…円筒部
7…支持ステー
8…挿入孔
8a…上面
8b…下面
9…雌ねじ孔
10…外筒
11・21…内筒
11a・21a…一端部
11b…他端部
11c…上面
11d…下面
21c…上下面
21d…両側面
12…弾性体
13…頭部
13a…一端面
14…軸部
14a…雄ねじ部