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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131209
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】給油装置
(51)【国際特許分類】
   B67D 7/54 20100101AFI20230914BHJP
【FI】
B67D7/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035806
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000151346
【氏名又は名称】株式会社タツノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】弁理士法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小倉 直裕
【テーマコード(参考)】
3E083
【Fターム(参考)】
3E083AA03
3E083AE01
3E083AE11
3E083AG24
3E083AH12
(57)【要約】
【課題】 VRポンプの出口圧力を所定値に保持することが出来る給油装置の提供。
【解決手段】 本発明の給油装置(100)は、給油時に発生したベーパーを貯油タンク(5)まで戻すため給油ノズル(6)から貯油タンク(5)に連通するVRライン(1)を有し、当該VRライン(1)にはベーパーを吸入し加圧して吐出するVRポンプ(2)が介装されており、VRライン(1)のVRポンプ(2)吐出側の領域に、VRポンプ(2)の吐出口側の圧力を設定値に保持する機能を有する背圧調整弁(3)が介装されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給油時に発生したベーパーを貯油タンクまで戻すため給油ノズルから貯油タンクに連通するベーパーリカバリーラインを有し、
当該ベーパーリカバリーラインにはベーパーを吸入して吐出するベーパーリカバリーポンプが介装されており、
ベーパーリカバリーラインのベーパーリカバリーポンプ吐出側の領域に、ベーパーリカバリーポンプの吐出口側の圧力を設定値に保持する機能を有する背圧調整弁が介装されていることを特徴とする給油装置。
【請求項2】
給油時に発生したベーパーを貯油タンクまで戻すため給油ノズルから貯油タンクに連通するベーパーリカバリーラインを有し、
当該ベーパーリカバリーラインにはベーパーを吸入して吐出するベーパーリカバリーポンプが介装されており、
ベーパーリカバリーラインのベーパーリカバリーポンプ吐出側の領域に、当該領域の圧力を計測し且つ計測した圧力を制御装置に送信する機能を有する圧力センサが介装されており、
前記制御装置は、前記圧力センサで計測された圧力に基づいて、給油量とベーパー回収量が等しくなる様にベーパーリカバリーポンプの回転数を決定する機能を有することを特徴とする給油装置。
【請求項3】
給油時に発生したベーパーを貯油タンクまで戻すため給油ノズルから貯油タンクに連通するベーパーリカバリーラインを有し、
当該ベーパーリカバリーラインにはベーパーを吸入して吐出するベーパーリカバリーポンプが介装されており、
ベーパーリカバリーラインのベーパーリカバリーポンプ吐出側の領域に、ベーパーリカバリーポンプの吐出口側の圧力を設定値に保持する機能を有する背圧調整弁が介装されており、
ベーパーリカバリーラインの背圧調整弁の出口側の領域に、当該領域の圧力を計測し且つ計測した圧力を制御装置に送信する機能を有する圧力センサが介装されており、
前記制御装置は、ベーパーリカバリーラインの背圧調整弁の出口側の領域における圧力が、前記背圧調整弁ではベーパーリカバリーポンプの吐出口側の圧力を設定値に保持することが出来ない圧力以上になった場合に、警告手段を作動し及び/又は給油作業を中止する機能を有することを特徴とする給油装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は給油装置に関し、より詳細には、給油中に発生するベーパーを給油装置外に流出させない技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばガソリンの様な揮発性の高い燃料を自動車の燃料タンクに給油する場合に、燃料タンク内に大量のベーパーが発生する。係るベーパーが大気中に放出されると、引火の危険性を招く恐れがあり、また、環境汚染の原因となってしまう。そのため、給油用ノズルを介して燃料タンク内のベーパーを回収する技術が提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。
また、ベーパーを給油装置(の貯油タンク)側に回収するベーパーリカバリーシステム(VRシステム)が提案されている。係るVRシステムにおいて、給油中のベーパーの大気への放出を防止するために、給油量とベーパー回収量を等しくするべきである。給油量が多い場合には車両タンクの給油口からベーパーが大気中に放出され、ベーパー回収量が多い場合には給油装置の地下タンクに連通する放出管からベーパーが大気中に放出されるからである。
【0003】
ここで、VRシステムの背圧は地下タンク内の圧力と概略等しく、地下タンク内の圧力は、一日における気温の変動や、給油装置を使用して車両等へ給油する給油量等に基づいて変動する。そのため、VRシステムの背圧も変動する。
しかし、VRシステムの背圧が変動すると、VRシステムにおけるベーパーリカバリーポンプ(VRポンプ)の出口圧も変動して、ベーパー回収量も変動する。そのため、給油量とベーパー回収量を同量に調節することが困難である。そしてVRシステムの背圧が変動するため、従来のVRシステムを用いた給油装置では、ベーパーが大気へ放出されることを防止するのが困難であった。
そのため、VRシステムを有する給油装置ではVRポンプの出口圧力を一定にすることが望まれるが、従来技術においては未だに提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2-219794号公報
【特許文献2】特開2014-58341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、VRポンプの出口圧力を一定にすることが出来る給油装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の給油装置(100)は、
給油時に発生したベーパーを貯油タンク(5)まで戻すため給油ノズル(6)から貯油タンク(5)に連通するベーパーリカバリーライン(1:VRライン)を有し、
当該ベーパーリカバリーライン(1)にはベーパーを吸入し(加圧し)て吐出するベーパーリカバリーポンプ(2:VRポンプ)が介装されており、
ベーパーリカバリーライン(1)のベーパーリカバリーポンプ(2)の吐出側の領域に、ベーパーリカバリーポンプ(2)の吐出口側の圧力を設定値に保持する機能を有する(例えば機械式の)背圧調整弁(3)が介装されていることを特徴としている。
【0007】
また本発明の給油装置(100-1)は、
給油時に発生したベーパーを貯油タンク(5)まで戻すため給油ノズル(6)から貯油タンク(5)に連通するベーパーリカバリーライン(1-1:VRライン)を有し、
当該ベーパーリカバリーライン(1-1)にはベーパーを吸入し(加圧し)て吐出するベーパーリカバリーポンプ(2:VRポンプ)が介装されており、
ベーパーリカバリーライン(1-1)のベーパーリカバリーポンプ(2)吐出側の領域に、当該領域(ベーパーリカバリーライン1-1のベーパーリカバリーポンプ2吐出側の領域)の圧力を計測し且つ計測した圧力を制御装置(10)に送信する機能を有する圧力センサ(7:或いは圧力スイッチ)が介装されており、
前記制御装置(10)は、前記圧力センサ(7)で計測された圧力に基づいて、給油量とベーパー回収量が等しくなる様にベーパーリカバリーポンプ(2)の回転数を決定する機能を有することを特徴としている。
【0008】
さらに本発明の給油装置(100-2)は、
給油時に発生したベーパーを貯油タンク(5)まで戻すため給油ノズル(6)から貯油タンク(5)に連通するベーパーリカバリーライン(1-2:VRライン)を有し、
当該ベーパーリカバリーライン(1-2)にはベーパーを吸入し(加圧し)て吐出するベーパーリカバリーポンプ(2:VRポンプ)が介装されており、
ベーパーリカバリーライン(1-2)のベーパーリカバリーポンプ(2)吐出側の領域に、ベーパーリカバリーポンプ(2)の吐出口側の圧力を設定値に保持する機能を有する(例えば機械式の)背圧調整弁(3)が介装されており、
ベーパーリカバリーライン(1-2)の背圧調整弁(3)の出口側の領域に、当該領域(ベーパーリカバリーライン1-2の背圧調整弁3の出口側の領域)の圧力を計測し且つ計測した圧力を制御装置(10)に送信する機能を有する圧力センサ(7:或いは圧力スイッチ)が介装されており、
前記制御装置(10)は、ベーパーリカバリーライン(1-2)の背圧調整弁(3)の出口側の領域における圧力(VRシステムの背圧)が、前記背圧調整弁(3)ではベーパーリカバリーポンプ(2)の吐出口側の圧力を設定値に保持することが出来ない圧力以上になった場合(VRシステムの背圧が、背圧調整弁3の入口側圧力を設定値に保持できない圧力以上になった場合)に、警告手段を作動し及び/又は給油作業を中止する機能を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
上述の構成を具備する本発明によれば、VRライン(1)のVRポンプ(2)吐出側に背圧調整弁(3)を介装しているので、VRポンプ(2)の入口側圧力(すなわちVRポンプ2の吸入圧)およびVRシステムの背圧が変動しても、背圧調整弁(3)の入口側の圧力或いはVRポンプ(2)の吐出口側の圧力は常に設定圧となる。そのため、本発明の給油装置(100)により例えば車両(C)に給油する際に、給油量とベーパー回収量を同量となり、車両Cの図示しないタンクの給油口からベーパーが大気中に放出されてしまうことが防止され、或いは、放出管(8)からベーパーが大気中に放出されることも防止される。
【0010】
また本発明において、背圧調整弁(3)を介装することに代えて、圧力センサ(7:或いは圧力スイッチ)によりVRシステム(20-1)の背圧(VRポンプ2出口側の圧力)を計測する様に構成すれば、圧力センサ(7)によりVRシステム(20-1)の背圧(VRポンプ2吐出側の圧力)を監視し、当該圧力センサ(7)の計測結果を制御装置(10)に送信し、(ポンプ駆動モータ9を制御して)VRポンプ(2)の回転数を圧力センサ(7)で計測されたVRシステム(20-1)の背圧に対応して制御することが出来る。それにより、VRポンプ(2)によるベーパー吸引量を安定して制御することが出来る。その結果、給油量とベーパー回収量が同量となる様に制御することが可能となり、車両Cの図示しないタンクの給油口からベーパーが大気中に放出されてしまうこと、及び、放出管(8)からベーパーが大気中に放出されることが防止できる。
【0011】
さらに本発明において、背圧調整弁(3)を介装することに加えて、圧力センサ(7:或いは圧力スイッチ)によりVRシステム(20-2)の背圧(背圧調整弁3出口側の圧力)を計測する様に構成すれば、VRシステム(20-2)の背圧が背圧調整弁(3)の調整範囲を超えるという異常事態を圧力センサ(7)で感知して、係る異常事態が発生した際に作業者に対する警告を表示し、或いは給油を停止することが出来る。そのため、VRシステム(20-2)の背圧が異常に昇圧してVRポンプ(2)の吐出圧が許容範囲を超える圧力以上になった場合に、作業者に警告し、或いは、給油作業を停止して、作業者に異常を直ちに認識させて、或いは、異常事態における給油を直ちに強制終了することが出来る。これにより、給油作業の安全性がさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態を示すブロック図である。
図2】第1実施形態で用いられる背圧調整弁の一例を示す正面断面図である。
図3図2の背圧調整弁とベーパーリカバリーポンプの配置を示す説明図である。
図4】背圧調整弁の入口側圧力と出口側圧力の特性を示す特性図である。
図5】本発明の第2実施形態を示すブロック図である。
図6】第2実施形態における制御を示すフローチャートである。
図7】本発明の第3実施形態を示すブロック図である。
図8】第3実施形態における制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
最初に図1図4を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
第1実施形態の全体的な構成を示す図1において、全体を符号100で示す給油装置は、VRライン1(ベーパーリカバリーライン)、VRポンプ2(ベーパーリカバリーポンプ)、ポンプ駆動用モータ9、背圧調整弁3、貯油タンク5、給油ノズル6、後述する制御装置10、VRシステム20(ベーパーリカバリーシステム)を含んでいる。
VRライン1は、給油時に発生したベーパーを貯油タンク5まで戻すため、給油ノズル6から貯油タンク5に連通している。そしてVRライン1には、VRポンプ2及び背圧調整弁3を介装している。図1において、ベーパーの流れを矢印Vで示す。
VRポンプ2は、給油ノズル6側からのベーパーを吸入し、加圧して吐出する機能を有している。背圧調整弁3は、VRライン1のVRポンプ2の吐出側の領域に介装されており、VRポンプ2の吐出口側の圧力を設定値に保持する機能を有している。ここで、VRポンプ2はポンプ駆動モータ9により駆動される。
【0014】
給油装置100は、車両Cの図示しない燃料タンクに給油するため、貯油タンク5から給油ノズル6に連通する給油ライン31を有しており、給油ライン31には給油ポンプ32、流量計34が介装される。給油ポンプ32は給油モータ33で駆動される。給油ライン31における燃料の流れる方向を矢印Fで示す。
また給油装置100は、ベーパー回収量が多い場合にベーパーを大気中に放出するための放出管8を含んでいる。
そして給油装置100は、給油制御やVRシステム20の制御を実行する制御装置10を含んでいる。
制御装置10は、給油制御に関して、信号ラインSL1を介して流量計34から計測流量を受信すると共に、信号ラインSL2を介して給油モータ33に制御信号を送信する。また、VRシステム20の制御に関して、信号ラインSL3を介してポンプ駆動モータ9に制御信号を送信する。制御装置10が提供する給油量等の情報、緊急時の警報情報、その他は表示器11に表示される。
図1において、符号12はノズルスイッチ、符号13はノズル掛けを示す。
【0015】
図1において、VRポンプ2は、容積型の回転式ポンプを使用している。
容積型の回転式ポンプを使用するのは、容積型の回転式ポンプの一例であるベーンポンプでは、側面にクリアランスが存在(ローターの回転のため)する。そのクリアランスを経由して、高圧側(吐出側)から低圧側(吸入側)に向かう気体の漏れが存在する。すなわち、ロータートップ(端面側におけるクリアランス)の漏れがないと(ロータートップのクリアランスが無いと)、ローターは回転しない。そして、上述した漏れにより、吐出量が減少してポンプ出口の圧力が低下した場合の対処として、第1実施形態では背圧調整弁3を設置している。
【0016】
それに対して、回転式ポンプではないポンプ、例えば往復ピストンポンプの場合には、上述したベーンポンプにおける様な漏れが存在せず、係る漏れによるポンプ出口側圧力低下を考慮する必要がない。
さらに、充填ノズル先端におけるAir(ベーパー)/Liquid(ガソリン)の比率(A/L比)が、ガソリン流量の全域において、98~102の範囲に内にあるという規制が存在する場合があるが、往復ピストンポンプでは脈動があり、給油の際の流量が小さい場合にはユーザーが当該脈動により違和感を覚える。
それに対して、回転式ポンプでは、ポンプ駆動用モータの回転数で制御しており、そのため、回転数を落とせば脈動が小さい状態で吸入することが出来るので、小流量でも連続して吸入出来る。
以上の理由に基づいて、図示の実施形態では、VRポンプ2として回転式ポンプを選択している。さらに、図示の実施形態では、容積型の回転式ポンプとして、構造的に簡単で汎用性があるベーンポンプを選択している。
ただし、ベーンポンプ以外の容積式の回転式ポンプとして、例えば、トロコイドポンプ、ロータリーポンプ等を使用することも可能である。
また、回転数制御のみならずA/L比を制御できる弁を設けることで往復ピストンポンプを使用することも可能である。
【0017】
図1で示す背圧調整弁3の詳細について、図2を参照して説明する。
図2において、背圧調整弁3は機械式の弁を構成しており、本体部3A、入口部3B、出口部3C、一次圧力室3D、二次圧力室3E、ダイヤフラム3F、スプリング3G、圧力調整ねじ3H、大気圧導入孔3Iを有している。
入口部3BはVRライン1(図1)を介してVRポンプ2(図1)の吐出口に連通しており、出口部3CはVRライン1により貯油タンク5(図1)に連通している。背圧調整弁3の本体部3Aの中央近傍には、図2の上方に突出する突出部3Jが形成されており、突出部3Jの上端は弁座3Kを構成する。ダイヤフラム3Fと一体的に構成されたステム部3Lは弁体として機能し、突出部3Jの弁座3Kと共に、弁機構3Mを構成する。図2において、背圧調整弁3内の流体(燃料)の流れの方向を、流入側の矢印A1、流出側の矢印A2で示す。
背圧調整弁3は、圧力調整ねじ3H(のねじ込み量)を調整することにより、スプリング3Gの弾性反発力を調整し、以て、ダイヤフラム3Fとステム3Lを弁座3Kに押圧する力を調整することが出来る。それにより、一次圧力室3D内の流体が所定の圧力設定値以上になった場合に弁機構3Mを通過して、二次圧力室3E内に流入して、背圧調整弁3の出口部3Cから貯油タンク5側に吐出される(矢印A2)。係る構成により、一次圧力室3D内の流体(燃料)の圧力(吸入側圧力:VRポンプ2側の領域の圧力)を常に所定の設定値に保持することが出来る。
なお、貯油タンク5内の圧力は、気温差、給油装置の使用(車両への給油等)により変動することが想定されるので、背圧調整弁3の吐出圧は貯油タンク5内の圧力と同一とはならないが、概略等しい。
【0018】
図2に示す背圧調整弁3は、VRライン1(ベーパーリカバリーライン)におけるVRポンプ2(ベーパーリカバリーポンプ)の吐出側の領域に設けられている(図1図3参照)。
図3において、VRポンプ2の入口部2Aは給油ノズル6側(図1)に連通しており、出口部2Bは背圧調整弁3の入口部3Bと連通しており、背圧調整弁3の出口部3Cは貯油タンク5(図1)に連通している。図3において、流体(燃料)の流れの方向を矢印Aで示す。
背圧調整弁3をVRライン1のVRポンプ2の吐出側(出口側)に介装することにより、VRライン1のVRポンプ2の吐出側の領域において、背圧調整弁3の入口側の圧力(或いは、背圧調整弁3の一次圧力室3D内の流体の保持圧力:図2参照)は、前記設定値に保持される。
【0019】
次に図4を参照して、背圧調整弁3の入口側の圧力(すなわちVRポンプ2の吐出口側の圧力)と、背圧調整弁3の出口側の圧力(すなわちVRシステム20の背圧)の関係について説明する。図4において、横軸はVRシステム20の背圧(図示の実施形態では背圧調整弁の出口圧)を示し、縦軸はVRポンプ2の吐出口側の圧力(図示の実施形態では背圧調整弁の入口圧)を示す。
まず、背圧調整弁を介装しない場合には(従来技術の場合)、VRポンプの吐出口側の圧力とVRシステムの背圧との関係は、図4(2)の特性線Bで示す様な関係になる。
図4(2)の特性線Bによれば、VRシステム20の背圧が変動する(上昇する)に伴い、VRポンプ2の吐出側の圧力は徐々に変動(上昇)している。ここで、VRシステム20の背圧は貯油タンク5内の圧力であり、貯油タンク5内の圧力は、朝、昼の気温差や、給油装置の使用(車両への給油等)により地下タンクの油面が降下することにより変動し、VRシステム20の背圧も変動する。なお、図4(2)における符号αは、後述する図4(1)においてVRポンプの出口圧(背圧調整弁の入口圧)が設定値を超えない範囲の境界を示すが、参考のため図4(2)でも表示している。
図4(2)の特性線B(従来のVRシステムにおける特性線)から明らかな様に、従来技術においてはVRシステム20の背圧に応じてVRポンプ2の吐出側圧力(出口圧)が変動するため、給油ノズル6側からのベーパー回収量も変動する。そのため、給油量とベーパー回収量を同量とすることが困難であり、給油中のベーパーが大気へ放出されることの防止も困難である。
【0020】
図4(1)は、図示の実施形態において、背圧調整弁3の入口側の圧力(すなわちVRポンプ2の吐出口側の圧力)と、背圧調整弁3の出口側の圧力(すなわちVRシステム20の背圧)との関係を、特性線Aで示している。
図4(1)の特性線Aで示す様に、背圧調整弁3の出口側の圧力、すなわちVRシステム20の背圧が許容範囲を超えない領域(図4の符号αよりも左側の領域)では、背圧調整弁3の入口側の圧力、すなわちVRポンプ2の吐出口側の圧力は常に所定の設定値に保持される。特性線Aの他に示される破線の特性線は、背圧調整弁3を備えない場合における前記関係の仮想線である。
図4(1)における特性線Aで示す特性を有する図示の実施形態によれば、VRポンプ2の入口側圧力(すなわちVRポンプ2の吸入圧)が変動しても、VRポンプ2の吐出口側の圧力(或いは背圧調整弁3の入口側圧力)は常に設定圧となるため、ベーパー回収量を容易且つ正確に調整することが出来るので、給油量とベーパー回収量を同量とすることが可能である。そのため、給油量がベーパー回収量よりも多くなることが防止され、車両タンクの給油口からベーパーが大気中に放出されてしまうことが防止される。そして、ベーパー回収量が給油量より多くなることも防止され、放出管8からベーパーが大気中に放出されることも防止される。
【0021】
次に図5図6を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。
第1実施形態(図1図4参照)では、VRポンプ2の吐出側に背圧調整弁3を設けて、VRポンプ2の出口圧力を一定にしているが、図5の第2実施形態では背圧調整弁は設けていない。
図5の第2実施形態では、上述した様に背圧調整弁を設けていない。第2実施形態では、VRライン1-1のVRポンプ2の吐出側の領域に圧力センサ7を介装し、VRシステム20-1の背圧(VRポンプ2の吐出側の圧力)を監視し、圧力センサ7の計測結果を制御装置10に送信している。制御装置10は、圧力センサ7で計測されたVRシステム20-1の背圧に対応してVRポンプ2の回転数を制御する機能を有しており、以て、給油ノズル6側からのベーパー吸引量を安定して制御している。
図5図6を参照して行われる第2実施形態の説明では、図1図4の第1実施形態とは異なる構成、作用効果について、主として説明する。その際、第1実施形態と同様な構成部材(VRポンプ2、貯油タンク5、給油ノズル6、制御装置10等)は同様の符号を付して説明する。
【0022】
図5において、全体を符号100-1で示す第2実施形態第に係る給油装置は、給油ノズル6から貯油タンク5に連通するVRライン1-1、貯油タンク5から給油ノズル6に連通する給油ライン31、ベーパーを大気中に放出するための放出管8、給油制御その他の制御を実行する制御装置10を含んでいる。第2実施形態における給油ライン31、放出管については、そこに介装されている機器を含めて第1実施形態と同様である。
第1実施形態と同様に、VRライン1-1にはベーパーを吸入し加圧して吐出するVRポンプ2が介装されている。第2実施形態では、VRライン1-1のVRポンプ2の吐出側の領域に圧力センサ7(或いは圧力スイッチ)が介装されている点で第1実施形態とは相違する。圧力センサ7は、VRライン1-1におけるVRポンプ2の吐出側の領域の圧力(すなわち、VRシステム20-1の背圧)を計測する機能と、計測結果、信号ラインSL4を介して制御装置10に送信する機能とを有している。
【0023】
第2実施形態において、制御装置10は、例えば「VRシステムの背圧-VRポンプによるベーパー吸引流量」特性(予め記憶されている特性)に基づいて、VRポンプ2の回転数を制御する機能を有している。すなわち制御装置10は、圧力センサ7で計測されたVRポンプ2の吐出側の領域の圧力(VRシステム20-1の背圧)から、前記「VRシステムの背圧-VRポンプによるベーパー吸引流量」特性に基づいて、給油量とベーパー回収量が等しくなる様にVRポンプ2の回転数を決定する機能を有している。そして制御装置10は、信号ラインSL3を介してポンプ駆動モータ9に制御信号を送信して、VRポンプ2の回転数を、給油量とベーパー回収量が等しくなる回転数に制御する機能を有している。制御装置10の係る機能により、VRポンプ2によるベーパー吸引量を安定して、給油量とベーパー回収量が等しくなる様に制御することが出来る。
ここで、前記特性に代えて、VRシステム背圧とVRポンプによるベーパー吸引流量の関係を示す演算式を用いて、圧力センサ7で計測されたVRポンプ2の吐出側の領域の圧力(VRシステム20-1の背圧)から制御装置10が演算して、VRポンプ2の回転数を給油量とベーパー回収量が等しくなる回転数に制御することも出来る。
【0024】
第2実施形態における制御について、主に図6を参照して説明する。
図6において、ステップS1では、VRライン1-1のVRポンプ2の吐出側の領域における圧力を計測する。ステップS1の圧力計測は圧力センサ7で実行し、計測結果は信号ラインSL4を介して制御装置10に送信される。
ステップS2では、ステップS1で計測したVRポンプ2の吐出側の領域の圧力(VRシステム20-1の背圧)に基づいて、当該計測された圧力に適合したVRポンプ2の回転数を決定する。上述した様に、VRポンプ2の回転数決定の態様は、例えば予め決定されている「VRシステムの背圧-VRポンプによるベーパー吸引流量」特性を参酌して、給油量とベーパー回収量が等しくなる様に、VRポンプ2の回転数を決定する。そしてステップS3に進む。ステップS2において、「VRシステムの背圧-VRポンプによるベーパー吸引流量」特性を記憶することに代えて、当該特性に相当する演算式を用いて、制御装置10で演算してVRポンプ2の回転数を決定しても良い。
【0025】
ステップS3では、ステップS2で決定された回転数でVRポンプ2を運転する様に制御する。そしてステップS1に戻り(リターン)、制御を継続する。
図6において、制御を終了する場合は、ステップS3でリターンすることなく、終了すれば良い。
図5図6の第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1図4の第1実施形態と同様である。
【0026】
図7図8を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。
図7図8の第3実施形態では、第1実施形態(図1図4)における背圧調整弁3を備えると共に、第2実施形態(図5図6)と同様な圧力センサ7(或いは圧力スイッチ)をVRライン1-2の背圧調整弁3の出口側の領域に介装している。
図7の第3実施形態では、第1実施形態と同様に背圧調整弁3を有しているが、圧力センサ7によりVRシステム20-2の背圧(背圧調整弁3の出口側の圧力)を計測し、VRシステム20-2の背圧が背圧調整弁3の調整範囲を超える圧力となった場合には、その旨を圧力センサ7により検知して、給油者に対する警告を表示し、或いは給油を停止する。
以下の第3実施形態の説明では、第1実施形態及び第2実施形態とは異なる構成、作用を主として説明する。その際、第1実施形態及び第2実施形態と同様な構成部材(VRポンプ2、背圧調整弁3、貯油タンク5、給油ノズル6、センサ7、制御装置10等)は同様の符号を付して説明する。
【0027】
図7において、全体を符号100-2で示す第3実施形態第に係る給油装置は、給油ノズル6から貯油タンク5に連通するVRライン1-2、貯油タンク5から給油ノズル6に連通する給油ライン31、ベーパーを大気中に放出するための放出管8、給油制御等を実行する制御装置10を含んでいる。第3実施形態における給油ライン31、放出管8等については、その介装部材を含めて、第1及び第2実施形態と同様である。
VRライン1-2には、第1及び第2実施形態と同様に、VRポンプ2が介装されている。そして、VRライン1-2のVRポンプ2の吐出側の領域には、第1実施形態と同様に、VRポンプ2の吐出口側の圧力を設定値に保持する機能を有する機械式の背圧調整弁3が介装されている。
第3実施形態では、第1実施形態と異なり、VRライン1-2の背圧調整弁3の出口側の領域に圧力センサ7(或いは圧力スイッチ)が介装されている。圧力センサ7は、VRライン1-2の背圧調整弁3の出口側の領域の圧力(VRシステム20-2の背圧)を計測すると共に、当該圧力の計測結果を、号ラインSL4を介して制御装置10に送信する機能を有している。
【0028】
図7において、背圧調整弁3の出口側の領域における圧力(VRシステム20-2の背圧)が許容範囲を超えると、背圧調整弁3ではVRポンプ2の吐出口側の圧力(背圧調整弁3の入口側の圧力)を設定値に保持することが出来なくなり、VRポンプ2の吐出口側の圧力(背圧調整弁3の入口側の圧力)が設定値よりも高圧になる。
換言すれば、背圧調整弁3の出口側の領域における圧力(VRシステム20-2の背圧)の許容範囲は、背圧調整弁3によりVRポンプ2の出口側の圧力(背圧調整弁3の入口側圧力)を設定値に保持出来る範囲であり、当該許容範囲は予め決定されており、制御装置10に記憶されている。
制御装置10は、圧力センサ7から取得した背圧調整弁3の出口側の領域の圧力(VRシステム20-2の背圧)の計測結果を前記「許容範囲」と比較し、背圧調整弁3の出口側の領域における圧力(VRシステム20-2の背圧)が前記許容範囲外となり、背圧調整弁3ではVRポンプ2の吐出口側の圧力(背圧調整弁3の入口側圧力)を設定値に保持することが出来なくなった場合には、図示しない警告手段を作動し及び/又は給油作業を停止する機能を有している。
一方、当該圧力計測結果が許容範囲内の場合、VRポンプ2の吐出口側の圧力(背圧調整弁3の入口側圧力)を設定値に保持し、給油量とベーパー回収量が等しくなる様にVRポンプ2の回転数を制御しつつ、給油作業を継続する。
【0029】
主に図8を参照して、第3実施形態における制御について説明する。
図8において、ステップS11では、VRライン1-2においてVRシステム20-2の背圧(背圧調整弁3の出口側の領域の圧力)を計測する。計測は圧力センサ7により行なわれ、圧力センサ7の計測結果は信号ラインSL4を介して制御装置10に送信される。
ステップS12では、ステップS11で計測したVRシステム20-2の背圧(背圧調整弁3の出口側の領域の圧力)を、予め制御装置10に記憶された許容範囲と比較する。上述した様に、VRシステム20-2の背圧の許容範囲は、背圧調整弁3によりVRポンプ2の出口側の圧力(背圧調整弁3の入口側圧力)を設定値に保持出来る(VRシステム20-2の)背圧の範囲である。
ステップS12の比較の結果、VRシステム20-2の背圧(背圧調整弁3の出口側の領域の圧力)が許容範囲を超える場合(許容範囲の上限値より大きい場合:ステップS12が「YeS」)、ステップS13に進む。一方、VRシステム20-2の背圧(背圧調整弁3の出口側の領域の圧力)が許容範囲内の場合(許容範囲の上限値以下の場合:ステップS12が「No」)、ステップS11に戻る。
ステップS12における比較は、制御装置10により実行される。
【0030】
ステップS13(ステップS12が「Yes」:VRシステム20-2の背圧(背圧調整弁3の出口側の領域の圧力)が許容範囲を超えると判断された場合)では、給油量とベーパー回収量を同量とすることが困難であり、給油中のベーパーが大気へ放出される恐れがあると判断して、図示しない警告手段を作動し、給油者に対して警告を発する。その際、警告に代えて、或いは当該警告に加えて、給油作業を停止する様に給油装置100-2を制御することも出来る。前記警告及び/又は給油作業を停止する旨の制御は、制御装置10により実行される。
なお、VRシステム20-2の背圧(背圧調整弁3の出口側の領域の圧力)が許容範囲内である場合(ステップS12が「No」)には、ステップS11に戻り、VRポンプ2の吐出口側の圧力(背圧調整弁3の入口側圧力)を設定値に保持し、給油量とベーパー回収量が等しくなる様にVRポンプ2の回転数を制御しつつ、給油作業を継続する。
図7図8の第3実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1図4の第1実施形態と同様である。
【0031】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【符号の説明】
【0032】
1、1-1、1-2・・・VRライン(ベーパーリカバリーライン)
2・・・VRポンプ(ベーパーリカバリーポンプ)
3・・・背圧調整弁
5・・・貯油タンク
6・・・給油ノズル
7・・・圧力センサ
8・・・放出管
10・・・制御装置
20、20-1、20-2・・・VRシステム(ベーパーリカバリーシステム)
100、100-1、100-2・・・給油装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8