(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131211
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】板状焼結体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 35/645 20060101AFI20230914BHJP
C23C 14/34 20060101ALI20230914BHJP
B22F 3/24 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
C04B35/645 500
C23C14/34 B
B22F3/24 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035809
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】岡野 晋
(72)【発明者】
【氏名】杉内 幸也
【テーマコード(参考)】
4K018
4K029
【Fターム(参考)】
4K018AA03
4K018AA06
4K018AA14
4K018AA19
4K018AA40
4K018AB01
4K018AB02
4K018AB03
4K018AC01
4K018BA02
4K018BA03
4K018BA08
4K018BA09
4K018BA20
4K018CA23
4K018EA11
4K018FA01
4K018FA06
4K018HA08
4K018KA29
4K018KA51
4K029DC03
4K029DC04
4K029DC05
4K029DC09
(57)【要約】
【課題】脆性材料からなるスパッタリングターゲットを製造する場合でも、熱間等方圧加圧法により形成した焼結体に割れを生じさせることなく、円滑にスライスして複数枚のスパッタリングターゲットを製造することができる板状焼結体の製造方法を提供する。
【解決手段】熱間等方圧加圧法により粉末材料からなるブロック状の焼結体を形成する焼結体形成工程と、焼結体を板状にスライスして複数枚のターゲット用素板を形成するスライス工程と、ターゲット用素板を機械加工してスパッタリングターゲットを形成する機械加工工程と、を有し、焼結体の表面のビッカース硬度が130HV以上550HV以下である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末材料からなるブロック状の焼結体を形成する焼結体形成工程と、前記焼結体を板状にスライスして複数枚の素板を形成するスライス工程と、前記素板を機械加工して板状焼結体を形成する機械加工工程と、を有し、前記焼結体の表面のビッカース硬度が130HV以上550HV以下であることを特徴とする板状焼結体の製造方法。
【請求項2】
前記焼結体のヤング率は75GPa以上であることを特徴とする請求項1に記載の板状焼結体の製造方法。
【請求項3】
前記焼結体形成工程は、前記粉末材料を成形型内に充填した状態で冷間等方圧加圧法により加圧して成形体を形成する冷間加圧工程と、前記成形体を前記熱間等方圧加圧法により成形して焼結することにより、前記焼結体を形成する熱間加圧工程と、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の板状焼結体の製造方法。
【請求項4】
前記粉末材料は、酸化物、炭化物、又は窒化物の少なくともいずれかを含んでいることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の板状焼結体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脆性材料からなる板状焼結体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スパッタリングターゲットに代表されるような大型の板状焼結体の製造方法においては、粉末材料を加圧して成形体を製造し、その成形体を焼成して得られた板状焼結体をスパッタリングターゲット(焼結体)に加工している。スパッタリングターゲットのような高密度の焼結体を得るための成形方法として、熱間静水圧プレスを用いた熱間等方圧加圧法(HIP:Hot Isostatic Pressing法)が用いられることが多い。熱間等方圧加圧法では、金属製のカプセルの中に粉末材料が密封され、このカプセルの周囲に加熱されたアルゴン等のガスの圧力が加えられることで、粉末材料の表面が一様の加圧力を受けて、方向性なく圧縮成形されるとともに焼成され、焼結体が形成される。
【0003】
このような熱間等方圧加圧法(以下、HIP法と称す)によりスパッタリングターゲットを成形する製造方法として、例えば、特許文献1が開示されている。特許文献1に記載のスパッタリング用クロムターゲットの製造方法は、Cr粉末を金属容器に詰めて、これを真空密封し、この真空密封容器に熱間静水圧プレスによる全方向均一の加熱、加圧処理を施して、Cr粉末を高密度の均質成形体に成形し、ついで容器内から取り出した成形体を所定厚みの板厚にスライスした後、これらの板体に機械加工を施してその板体をスパッタリングターゲットとしている。
【0004】
また、特許文献2には、冷間等方圧加圧法(CIP:Cold Isostatic Pressing法)により圧粉体を形成した後、この圧粉体に熱間等方圧加圧法(HIP法)を施して合金成形体(焼結体)を成形することで、均一組織でほぼ理論密度に等しい焼結体を得ることができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63-162863号公報
【特許文献2】特開昭61-264533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、焼結体をスパッタリングターゲットとするには、焼結体を所定厚みの板厚にスライスする必要があるが、例えば、酸化物や炭化物、窒化物を含む脆性材料からなるスパッタリングターゲットを製造する場合、金属材料とは異なり脆いため、スライス加工時の負荷に耐えられず、スパッタリングターゲットに割れが発生してしまう。このため、このような脆弱材料からなるスパッタリングターゲットを製造するためには、1つの金属カプセルにつき、1枚の焼結体しか製造することができない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、脆性材料からなるスパッタリングターゲットを製造する場合でも、焼結体に割れを生じさせることなく、円滑にスライスして複数枚のスパッタリングターゲットのような板状焼結体を製造することができる板状焼結体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の板状焼結体の製造方法は、粉末材料からなるブロック状の焼結体を形成する焼結体形成工程と、前記焼結体を板状にスライスして複数枚の素板を形成するスライス工程と、前記素板を機械加工して板状焼結体を形成する機械加工工程と、を有し、前記焼結体の表面のビッカース硬度が130HV以上550HV以下である。
【0009】
焼結体のビッカース硬度を130HV以上550HV以下としたことにより、脆性材料からなるスパッタリングターゲットのような板状焼結体を製造する場合でも、スライス時の割れを防止することができる。焼結体のビッカース硬度が130HV未満では、焼結体が切断時の振動に耐え切れずに、焼結体の全体にわたってクラックが発生して割れる不具合がある。ビッカース硬度が550HVを超えると、切断刃への抵抗が大きくなって、スライスし切れずに切断刃が横ぶれし、スライスした後の素板に割れが生じる。焼結体のビッカース硬度は200HV以上450HV以下がより好ましい。
切断刃としてはバンドソーやワイヤソーを用いることができる。
【0010】
本発明の板状焼結体の製造方法において、前記焼結体のヤング率は75GPa以上であることが望ましい。
【0011】
焼結体のヤング率が75GPa以上であると、反りの少ない平坦な板状焼結体を得ることができ、75GPa未満の場合、スライスすると、板状焼結体に生じる反りが大きくなる傾向にあり、機械加工工程での表面研磨量が増えて時間がかかるおそれがある。焼結体のヤング率は100GPa以上であるのがより好ましい。
【0012】
本発明の板状焼結体の製造方法において、前記焼結体形成工程は、前記粉末材料を成形型内に充填した状態で冷間等方圧加圧法により加圧して成形体を形成する冷間加圧工程と、前記成形体を前記熱間等方圧加圧法により成形して焼結することにより、前記焼結体を形成する熱間加圧工程と、を有するとよい。
【0013】
熱間等方圧加圧法による熱間加圧工程の前に、冷間等方圧加圧法による冷間加圧工程を設けることにより、均一な密度の板状焼結体を製造することができる。
【0014】
本発明の板状焼結体の製造方法において、前記粉末材料は、酸化物、炭化物、又は窒化物の少なくともいずれかを含んでいるものとすることができる。
【0015】
これら酸化物、炭化物、又は窒化物の少なくともいずれかを含む脆性材料からなる板状焼結体であっても、割れを生じさせることなく、円滑にスライスして板状焼結体を製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の板状焼結体の製造方法によれば、脆性材料からなるスパッタリングターゲットのような板状焼結体を製造する場合でも、熱間等方圧加圧法により形成した焼結体に割れを生じさせることなく、円滑にスライスして、効率よく板状焼結体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の板状焼結体の製造方法により製造されるスパッタリングターゲットの例を示す斜視図である。
【
図2】
図1の板状焼結体の製造方法を示すフローチャートである。
【
図3】
図2の製造方法による形態の変遷を(a)から(d)の順に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の製造方法で製造される板状焼結体であるスパッタリングターゲットを示している。このスパッタリングターゲット1の原料は、ZnO、WO
3、WO
2、SiO
2、Y
2O
3、TiO
2、Al
2O
3、In
2O
3、SnO
2、ZrO
2、NbC、WC、SiC、ITO(In
2O
3-SnO
2)、IGZO(InGaZnO
4)、AZO(Al
2O
3-ZnO)、ZrO
2-SiO
2-In
2O
3、Cr-CrO
2、AlN、GaN、NbN、InN、などの酸化物、炭化物、窒化物のいずれかを含むセラミックスにより形成されている。酸化物、炭化物、窒化物のいずれかを含む材料はいわゆる脆性材料となる。これら酸化物、炭化物、窒化物は、スパッタリングターゲット1中に5質量%以上100質量%以下の割合で混合される。
【0019】
本発明は、これら脆性材料だけでなく、例えば、Cu、Al、W、Cr、Ti、CuGa等の金属材料からなるスパッタリングターゲットにも適用することができる。
また、
図1に示す例では、スパッタリングターゲット1は、平面視が矩形状(正方形又は長方形)の平板状に形成されており、例えば1辺が50mm以上1500mm以下の平面サイズで、厚さが2mm以上30mm以下に形成される。
【0020】
このスパッタリングターゲット1は、
図2に示すように、目的とする材質のスパッタリングターゲットに応じて原料となる各種粉末材料を混合する混合工程と、混合工程後の粉末材料を成形型内に充填した状態で冷間等方圧加圧法により加圧して成形体を形成する冷間加圧工程と、成形体を熱間等方圧加圧法により成形して焼結する熱間加圧工程と、その焼結により形成された焼結体を板状にスライスして複数枚のターゲット用素板を形成するスライス工程と、ターゲット用素板の外形寸法を整える機械加工工程と、を有する工程を経て製造される。
以下、その工程順に説明する。
【0021】
混合工程では、原料となる粉末材料が複数種の混合からなる場合、これら粉末材料を所望の配合比率で混合機により均一に混合する。粉末材料が一種類からなる場合は、この混合工程は不要である。
例えば、スパッタリングターゲット1がCu-CuOの場合であると、Cuの含有量が10質量%以上80質量%以下、CuOの含有量が10質量%以上70質量%以下、残部が不可避不純物金属元素とされる。また、酸化物、炭化物、窒化物を含む場合は、全体に対して、10質量%以上70質量%以下の範囲とされる。
なお、粉末材料としては、平均粒径が2μm以上20μm以下の範囲のものとすると、後の焼結体の表面硬度を所定範囲に制御し易くなる。
【0022】
冷間加圧工程では、成形型(図示略)内に粉末材料を充填し、冷間等方圧加圧法により加圧することにより
図3(a)に示すようなブロック状の成形体11を形成する。成形型は、成形時の粉末材料の収縮に追従できるように、面方向に沿う外力に対して容易に変形が可能な段ボール、厚紙、樹脂フィルム、ゴム等により形成される。加圧力は、10MPa以上200MPa以下とするのが好ましい。加圧後に圧力解放して成形型から成形体11を取り出し、成形体11の表面の研削加工等がなされる。この冷間加圧工程により、相対密度が45%以上85%以下の成形体が得られる。この成形体11の相対密度をこの範囲に制御することにより、次工程において所望の表面硬度の焼結体を得ることが可能になる。
【0023】
熱間加圧工程では、冷間加圧工程で得られた成形体11を
図3(b)に示すように金属製のカプセル容器12内に収容し、熱間等方圧加圧法により、カプセル12の周囲に加熱されたアルゴン等のガスによる圧力を加えて、成形体11を加圧及び加熱することにより、
図3(c)に示すような焼結体13を形成する。カプセル容器12としては、圧延鋼板(SPCC)製のものが広く用いられている。加熱温度は材料によっても異なるが、500℃以上1600℃以下、加圧力は70MPa以上180MPa以下の焼結条件とするのが好ましい。なお、焼結体形成工程の熱間加圧工程では、加圧力は80MPa以上170MPa以下とするのがさらに好ましい。
この熱間加圧工程により、成形体11は、相対密度が89%以上にまで高められた焼結体13に形成される。
この焼結体13は、例えば、1辺が80mm以上2000mm以下の平面サイズで、厚さが50mm以上2000mm以下のブロック状に形成される。焼結体13の表面のビッカース硬度は130HV以上550HV以下、ヤング率は75GPa以上とされる。
【0024】
スライス工程では、焼結体13をワイヤソー、バンドソー等を用いたダイヤモンドからなる切断刃(図示略)により厚さ3mm以上30mm以下にスライスして、
図3(d)に示すように複数枚の板状のターゲット用素板14を作製する。一つの焼結体13から2枚から60枚のターゲット用素板14が形成される。このように、本実施形態によれば、ブロック状の一つの焼結体13から2枚以上又は3枚以上のターゲット用素板14が形成される。
【0025】
このスライス工程において、焼結体13の表面のビッカース硬度が130HV以上550HV以下であったことにより、焼結体13及びターゲット用素板14にクラック等による割れを生じさせることなく、焼結体13を円滑にスライスすることができる。この場合、焼結体13のビッカース硬度が130HV未満であると、焼結体13が切断時の振動に耐え切れずに、焼結体13の全体にわたってクラックが発生して割れる不具合がある。ビッカース硬度が550HVを超えると、切断刃への抵抗が大きくなって、スライスし切れずに切断刃が横ぶれし、スライスした後のターゲット用素板14に割れが生じる。焼結体13のビッカース硬度は200HV以上450HV以下がより好ましい。
【0026】
このスライス工程により、割れがなく、また、焼結体13のヤング率を75GPa以上としたことにより、反りも単位長さ当たり5mm以下と小さい平坦なターゲット用素板14を得ることができる。ここでの反りが大きいと、その後の機械加工工程で反りを除去するのに時間がかかることになる。なお、反りは、スパッタ面となる表面における値である。
【0027】
機械加工工程では、スライス工程で得られたターゲット用素板14を必要に応じてフライス盤等を用いた機械加工により所定形状に仕上げる。このとき、ターゲット用素板14の表面を研磨して平滑にする。研磨は、研磨機により機械的、化学的、あるいはこれらを併用して行う。また、研磨材としてダイヤモンド系砥石、炭化ケイ素系砥粒等を用いることができる。
この機械加工工程を経ることにより、前述した反りが削減され、より平坦なスパッタリングターゲット1を得ることができる。
最後に洗浄等の工程を経て仕上げられる。
【0028】
このようにして製造されたスパッタリングターゲット1は、予め冷間等方圧加圧法により粉末材料を成形体11に形成してから、その成形体11を熱間等方圧加圧法により加圧して焼結しているので、焼結体13が均質になり、品質にばらつきのないスパッタリングターゲット1を得ることができる。
そして、その熱間加圧工程で形成される焼結体11の表面のビッカース硬度を130HV以上550HV以下としたことにより、次のスライス工程でこの焼結体11をスライスする際の割れの発生を抑制することができる。
また、スライス後のターゲット用素板14の反りが小さく、その後の機械加工工程の負担を軽減し、平坦なスパッタリングターゲット1を得ることができる。
【0029】
なお、本発明は上記実施形態の構成のものに限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、実施形態では本発明をスパッタリングターゲットに適用したが、構造用ファインセラミックス、電子部品用ファインセラミックス等など、板状の焼結体に広く適用することができる。
また、上記実施形態では、冷間等方圧加圧法により成形体を形成したが、冷間等方圧加圧法に代えて、ホットプレス処理(HP処理)や機械プレスにより加圧して成形体を形成してもよい。
【実施例0030】
表1に示す各種組成の粉末材料からCIP法により成形体を形成した後、HIP法により加圧焼結して460mm×200mm×250mmのブロック状の焼結体を形成した。その際の焼結条件は表1に示す通りである。
得られた焼結体の密度(相対密度)、ビッカース硬度、ヤング率を測定し、表1に示す所定の切断厚みにスライスしてターゲット用素板を作製した。このターゲット用素板の作製に際しては、株式会社アマダマシナリー製バンドソー(装置型式:DBSAW-500、刃型式:DB-BLADE M (5410))を用いた。
スライス時のターゲット用素板等の割れの有無を確認し、得られたターゲット用素板について、単位長さ当たりの反り量を測定した。
【0031】
焼結体の密度(相対密度)は、焼結体の重量を測定し、その重量を焼結体の体積で除して算出した。
【0032】
焼結体のビッカース硬度は、焼結体から試験片を切り取り、JIS Z 2244に準拠してビッカース硬さ試験機により測定した。試験片は任意の3点からサンプリングし、N=3の平均値を各測定値とした。
【0033】
焼結体のヤング率は、焼結体から試験片を切り取り、JIS R 1602に準拠する引張試験を実施して求めた。
【0034】
ターゲット用素板等の割れの有無は、ターゲット用素板及び焼結体の切断端面をスケール付きルーペを用いて目視し、長さ10mm以上のクラックが認められたものを割れ「有」、長さ10mm以上のクラックが認められなかったものを割れ「無」とした。
【0035】
単位長さ当たりの反り量は、ターゲット用素板のスパッタ面となる表面において、対角線上にストレートゲージを当て、ターゲット用素板の表面とストレートゲージとの間に生じた隙間を隙間ゲージで対角の2カ所測定し、測定した値の平均値を反り量とした。そして、この反り量を測定長さで割ることで、単位長さ当たりの反り量を算出した。
これらの結果を表1に示す。
【0036】
【0037】
表1に示されるように、焼結体のビッカース硬度が130HV以上550HV以下の実施例1-15は、焼結体のスライス時に割れが発生しなかった。これら実施例の単位長さ辺りの反り量は、総じて小さく、ターゲット用素板として好ましい。特に、ヤング率が75GPa以上であると、例えばヤング率が82GPaの実施例7では単位長さ辺りの反り量は0.0100mm以下に小さくなっており、さらに、ヤング率が100GPa以上であると、0.0020mm以下にまで小さくなり、より好ましい。
これに対して、比較例1では、焼結体の表面のビッカース硬度が120HVと低かったとめに、焼結体のスライス時の振動に耐え切れずに焼結体全体にクラックが走って割れてしまった。比較例2,3はいずれも焼結体表面のビッカース硬度が550HVを超えて高かったため、割れが発生した。このため、これら比較例1-3では、ターゲット用素板の反り量を測定することができなかった。