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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131241
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】温水システム
(51)【国際特許分類】
   H04Q 9/00 20060101AFI20230914BHJP
   F24H 15/10 20220101ALI20230914BHJP
   F24H 15/296 20220101ALI20230914BHJP
   F24H 15/30 20220101ALI20230914BHJP
   F24H 1/00 20220101ALI20230914BHJP
   F24H 15/45 20220101ALI20230914BHJP
【FI】
H04Q9/00 301D
F24H15/10
F24H15/296
F24H15/30
F24H1/00 Z
F24H15/45
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035852
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中越 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】小野 秀
【テーマコード(参考)】
3L122
5K048
【Fターム(参考)】
3L122AA34
3L122AA64
3L122BA42
5K048AA16
5K048BA14
5K048DB01
5K048DC01
5K048DC06
5K048EB02
5K048EB12
5K048HA01
5K048HA02
5K048HA03
(57)【要約】
【課題】 電源装置の容量を大きくすることなく適切な外部との通信を実施することができる温水システムを提供する。
【解決手段】 温水システムは、温水機器と、温水機器と外部の無線通信装置との間の通信を中継する中継装置と、を備えた温水システムであって、温水機器は、温水システムの電気負荷に電力を供給する電源装置を含み、中継装置は、電力線を介して電源装置と有線接続され、電源装置から電力線を通じて供給される電力により動作し、温水機器と電力線を介して有線通信を行うとともに、外部の無線通信装置と無線通信を行うように構成され、温水機器から電力線を介して温水システムの運転状態に関する情報を取得し、運転状態に関する情報に基づいて、温水システムの消費電流が基準値を超えないように無線通信のタイミングを制御する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水機器と、
前記温水機器と外部の無線通信装置との間の通信を中継する中継装置と、を備えた温水システムであって、
前記温水機器は、前記温水システムの電気負荷に電力を供給する電源装置を含み、
前記中継装置は、
電力線を介して前記電源装置と有線接続され、前記電源装置から前記電力線を通じて供給される電力により動作し、
前記温水機器と前記電力線を介して有線通信を行うとともに、前記外部の無線通信装置と無線通信を行うように構成され、
前記温水機器から前記電力線を介して前記温水システムの運転状態に関する情報を取得し、前記運転状態に関する情報に基づいて、前記温水システムの消費電流が基準値を超えないように前記無線通信のタイミングを制御する、温水システム。
【請求項2】
前記中継装置は、取得した前記運転状態に関する情報が、複数の運転状態の中から予め設定された所定の運転状態である場合に、前記無線通信を行わない、請求項1に記載の温水システム。
【請求項3】
前記所定の運転状態は、温水加熱運転状態を含む、請求項2に記載の温水システム。
【請求項4】
前記温水機器は、前記温水システムの消費電流が前記基準値を超えた場合に前記運転状態に関する情報として前記無線通信制限通知を前記中継装置に送信する、請求項1に記載の温水システム。
【請求項5】
前記外部の無線通信装置は、通信基地局を含み、
前記中継装置は、無線LAN通信より広い領域において前記通信基地局と無線通信可能に構成される、請求項1から4の何れかに記載の温水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、給湯器等の温水機器が、通信網を介してサーバ等の管理装置と通信可能に構成される温水システムがある。このような温水システムは、温水機器に有線接続されるとともに、通信基地局等の外部の無線通信装置と無線通信が可能な中継装置を備えている。
【0003】
中継装置は、温水機器が備える電源装置から電力線を介して電力の供給を受けている。さらに、中継装置と温水機器とは、電力線を介して有線通信を行う。すなわち、電力線においては、電力供給用の直流電圧に通信用の電気信号が重畳される。
【0004】
ここで、中継装置が外部の無線通信装置にデータ送信等の無線通信を行う場合、当該無線通信の際の中継装置における消費電流が比較的大きいため、無線通信時において電源装置の定格電流容量を瞬間的に超えてしまう恐れがある。これを防止するためには、予め電源装置の電流容量を大きくすることが考えられるが、瞬間的な電流変動のために電源装置の電流容量を大きくするのは無駄である。また、消費電流が大きくなると、電力線による有線通信の信号波形に歪みが発生する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-109150号公報
【特許文献2】特開平10-94199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1には、通信装置間の通信モードの設定に関して、各々の通信装置の容量や消費電流に応じて通信装置間で調停を行うことが開示されている。また、上記特許文献2には、複数の電気機器が接続される電力供給制御システムにおいて、電気機器の使用電力に関する情報を収集し、当該情報を基に各電気機器に電力供給を許可することが開示されている。
【0007】
しかしながら、上記特許文献では、いずれも、通信状態と電気機器における電力消費状態とを相互に考慮することができない。
【0008】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、電源装置の容量を大きくすることなく適切な外部との通信を実施することができる温水システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のある態様に係る温水システムは、温水機器と、前記温水機器と外部の無線通信装置との間の通信を中継する中継装置と、を備えた温水システムであって、前記温水機器は、前記温水システムの電気負荷に電力を供給する電源装置を含み、前記中継装置は、電力線を介して前記温水機器と有線接続され、前記電源装置から前記電力線を通じて供給される電力により動作し、前記温水機器と前記電力線を介して有線通信を行うとともに、前記外部の無線通信装置と無線通信を行うように構成され、前記温水機器から前記電力線を介して前記温水システムの運転状態に関する情報を取得し、前記運転状態に関する情報に基づいて、前記温水システムの消費電流が基準値を超えないように前記無線通信のタイミングを制御する。
【0010】
上記構成によれば、外部の無線通信装置と無線通信を行う中継装置が、温水システムの運転状態に関する情報を取得することにより、無線通信のタイミングを、温水システムの消費電流が基準値を超えないような時期に決定することができる。したがって、電源装置の容量を大きくすることなく適切な外部との通信を実施することができる。
【0011】
前記中継装置は、取得した前記運転状態に関する情報が、複数の運転状態の中から予め設定された所定の運転状態である場合に、前記無線通信を行わないようにしてもよい。この場合、温水システムの運転状態が、所定の運転状態である場合に、温水システムの消費電流が基準値を超える恐れがあると見なして、無線通信が禁止される。これにより、無線通信を行わない運転状態を設定するだけで無線通信のタイミングを容易に決定できる。
【0012】
前記所定の運転状態は、温水加熱運転状態を含んでもよい。これによれば、電気負荷での消費電流が大きくなり易い温水加熱運転時に無線通信を行うことがなくなるため、無線通信による消費電流の増大が電源装置の定格を超えることを防止することができる。
【0013】
前記温水機器は、前記温水システムの消費電流が前記基準値を超えた場合に前記運転状態に関する情報として前記無線通信制限通知を前記中継装置に送信してもよい。これによれば、中継装置は、無線通信制限通知を受けた場合に無線通信を制限する。したがって、実際に温水システムで消費されている電流に基づいて無線通信の制限を行うことができる。また、中継装置は、運転状態に関する情報に基づいて無線通信の制限を行うか否かの判定を行う必要がないため、無線通信の制限処理を簡単に実現することができる。
【0014】
前記外部の無線通信装置は、通信基地局を含み、前記中継装置は、無線LAN通信より広い領域において前記通信基地局と無線通信可能に構成されてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以上に説明した構成を有し、電源装置の容量を大きくすることなく適切な外部との通信を実施することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施の形態に係る温水システムの概略構成を示すブロック図である。
図2図2は、本実施の形態における中継装置の無線通信可否制御の流れを示すフローチャートである。
図3図3は、本実施の形態の温水システムにおける消費電流の時間的変化の例を示すグラフである。
図4図4は、比較例の温水システムにおける消費電流の時間的変化の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一または相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されない。
【0018】
(一実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態に係る温水システムの概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施の形態における温水システム1は、温水機器2と、温水システム専用の中継装置3と、を備えている。さらに、温水システム1は、温水機器2を操作するリモコン4を備えている。温水機器2は、例えば、燃料ガスを燃焼させて湯水を加熱する燃焼部を備えた燃焼加熱式の給湯器である。
【0019】
温水機器2は、温水システム1の電気負荷5に電力を供給する電源装置6を含んでいる。電源装置6は、外部交流電源(商用電源)から供給される交流電圧を変換して所定の直流電圧を生成する。電気負荷5は、温水機器2内の電気負荷および温水機器2外の電気負荷を含む。温水機器2内の電気負荷は、例えば、ガス電磁弁51、給湯流量調整弁52、バイパス流量調整弁53等を含み得る。さらに、温水機器2内の電気負荷は、イグナイタ55、風呂ポンプ56、送風ファン57等を含み得る。
【0020】
ガス電磁弁51は、燃焼加熱式の給湯器における燃料ガス流路に設けられ、燃料ガスの燃焼部への燃料ガスの供給または遮断を切り替えるための電磁弁である。給湯流量調整弁52およびバイパス流量調整弁53は、何れも給湯器の通水流路に設けられ、通水流路各部の通水量を調整する調整弁である。これらの調整弁52,53は、ステッピングモータを駆動することにより弁開度が多段階に調整できる。イグナイタ55は、燃焼部に供給された燃料ガスへの着火を行う。風呂ポンプ56は、浴槽と温水機器2との間で湯水を循環させるためのポンプである。送風ファン57は、燃焼部に空気を供給する。
【0021】
温水機器2は、制御部7を備えている。制御部7は、通常、温水機器2の筐体内に設けられる。制御部7は、CPU、ROM、およびRAM等で構成されたマイクロコントローラ、集積回路および制御回路と、制御プログラムまたはデータを記憶するメモリとを備えている。制御部7は、メモリに記憶された制御プログラムに従って温水機器2の各種電気負荷5を制御する。温水機器2は、例えば、風呂または台所等における給湯機能、風呂の追い焚き機能等を備えている。
【0022】
温水機器2外の電気負荷は、自動排水栓54、中継装置3およびリモコン4を含む。自動排水栓54は、自動排水機能を有する浴槽の縁部に備えられ、ステッピングモータを駆動することにより開栓動作または閉栓動作するように構成される。中継装置3は、温水機器2と外部の無線通信装置9との間の通信を中継する。中継装置3は、電力線8を介して温水機器2と有線接続される。中継装置3は、電源装置6からの電力供給により動作する。
【0023】
電力線8は、2芯ケーブルによって構成され、制御部7に接続される。制御部7は、電源装置6で生成された直流電圧に通信データを重畳することにより、中継装置3に通信データを伝送する。これにより、中継装置3は、温水機器2との間で電力線8を介した有線通信を行うことができる。中継装置3は、温水機器2から送られてきた通信データを無線通信により外部の無線通信装置9に送信する。
【0024】
中継装置3は、CPU、ROM、およびRAM等で構成されたマイクロコントローラ、集積回路および制御回路と、制御プログラムまたはデータを記憶するメモリとを備えている。さらに、中継装置3は、外部の無線通信装置9と通信を行うための通信インターフェイスを備えている。
【0025】
例えば、中継装置3は、LPWA(Low Power Wide Area)による無線通信が可能なLPWA通信ユニットである。この場合、外部の無線通信装置9は、通信基地局である。LPWA通信ユニットは、無線LAN通信より広い領域において外部の無線通信装置9と無線通信が可能である。LPWA通信ユニットは、温水システム1の管理者が通信キャリアと契約して無線送信を行う。すなわち、LPWA通信ユニットは、温水システム1の利用者(例えば住宅の入居者)の通信回線を利用する必要がない。
【0026】
中継装置3から無線通信により外部の無線通信装置9に送信された温水機器2からの通信データは、インターネット等の通信網11を介して所定の管理装置10に送信される。中継装置3から管理装置10に送られる通信データは、温水機器2の機器情報を含む。管理装置10は、例えば、中継装置3から送信された温水機器2の機器情報を記憶するクラウドサーバ、およびクラウドサーバと温水機器2との間の連係を行うアプリケーションサーバ等から構成される。
【0027】
ここで、機器情報としては、温水機器2の制御部7から電源投入後に最初に中継装置3へ送信される機器構成情報、温水機器2の制御部7から定期的(例えば1時間間隔)に中継装置3へ送信される温水システム1の運転履歴を示す運転履歴情報、エラー情報等がある。機器構成情報は、温水機器2の種類等を示す情報であり、運転履歴情報は、温水機器2の給湯設定温度、燃焼運転回数、燃焼運転時間等を含む情報である。
【0028】
リモコン4は、浴室または台所等の室内の壁面等に設置される壁面設置型のリモコン機器(専用リモコン)である。リモコン4も温水機器2の電源装置6から供給される電力により動作する。制御部7およびリモコン4は、電力線8により互いに通信可能に接続されている。リモコン4は、制御部7に対する操作信号を出力可能に構成される。図1には、1つのリモコン4が示されているが、温水システム1は、複数のリモコン4を備えてもよい。複数のリモコン4同士も、電力線8を介して互いに通信可能に構成される。
【0029】
リモコン4は、温水機器2の状態を報知する表示装置58を備えている。表示装置58は、例えば、給湯および/または風呂湯水についての現在の設定温度、動作確認表示、現在時刻等が表示される。また、リモコン4は、設定温度到達音、警告音、所定のアナウンス等を出力する音声出力部(スピーカ)を備えている。
【0030】
本実施の形態において、中継装置3は、上記機器情報とは別に、温水機器2から電力線8を介して温水システム1の運転状態に関する情報(運転状態情報)を取得する。温水機器2の制御部7は、運転状態に変更が生じた場合に、変更後の運転状態情報を中継装置3に送信する。中継装置3は、取得した温水システム1の運転状態情報に基づいて、温水システム1の消費電流が基準値を超えないように外部の無線通信装置9との無線通信のタイミングを制御する。より具体的には、中継装置3は、取得した運転状態情報が、複数の運転状態の中から予め設定された所定の運転状態である場合に、無線通信を行わない。
【0031】
図2は、本実施の形態における中継装置の無線通信可否制御の流れを示すフローチャートである。中継装置3は、メモリに、無線通信が可能な状態を示す許可フラグまたは無線通信を行わない状態を示す禁止フラグを択一的に記憶する。中継装置3のメモリには、初期状態として、許可フラグが記憶されている(ステップS1)。また、中継装置3のメモリには、無線通信を行わない状態として設定されている所定の運転状態が記憶されている。
【0032】
例えば、所定の運転状態は、温水加熱運転状態を含む。温水機器2は、温水加熱運転状態において、温水機器2の燃焼部が燃焼中であることを示す燃焼ON信号を出力する。燃焼ON信号は、電力線8を通じてリモコン4および中継装置3に送信される。リモコン4は、燃焼ON信号を受信すると、表示装置58において燃焼中であることを示す表示を行う。また、中継装置3は、燃焼ON信号を、温水加熱運転状態を示す運転状態情報として受信する。
【0033】
中継装置3は、メモリに許可フラグが記憶されている場合には、温水機器2から送られてくる機器情報を外部の無線通信装置9に適宜送信する。さらに、中継装置3は、温水機器2から送信される運転状態情報を待ち受ける(ステップS2)。中継装置3は、運転状態情報を取得する毎に、変更後の運転状態が所定の運転状態、すなわち、上記例においては温水加熱運転状態かどうかを判定する(ステップS3)。
【0034】
中継装置3は、取得した運転状態情報が所定の運転状態になったことを示す場合(ステップS3でYes)、メモリに禁止フラグを記憶する(ステップS4)。中継装置3は、メモリに禁止フラグが記憶されている場合には、温水機器2から機器情報が送られてきても外部の無線通信装置9には送信せず、メモリに一時記憶する。
【0035】
メモリに禁止フラグが記憶された後も、中継装置3は、温水機器2から送信される運転状態情報を待ち受ける(ステップS2に戻る)。中継装置3は、取得した運転状態情報が所定の運転状態以外の運転状態になったことを示す場合(ステップS3でNo)、かつ、メモリに禁止フラグが記憶されている場合(ステップS5でYes)には、メモリに許可フラグを記憶する(ステップS6)。これにより、中継装置3は、外部の無線通信装置9に機器情報の送信を再開する。
【0036】
上記構成によれば、外部の無線通信装置9と無線通信を行う中継装置3が、温水システム1の運転状態に関する情報を取得することにより、無線通信のタイミングを、温水システム1の消費電流が基準値を超えないような時期に決定することができる。また、消費電流の増大を抑えることにより、電力線8による有線通信の信号波形に歪みが発生することを抑制することができる。したがって、電源装置6の容量を大きくすることなく適切な外部との通信を実施することができる。
【0037】
また、上記構成によれば、温水システム1の運転状態が予め定められた所定の運転状態である場合に、温水システム1の消費電流が基準値を超える恐れがあると見なして、無線通信が禁止される。これにより、無線通信を行わない運転状態を設定するだけで無線通信のタイミングを容易に決定できる。
【0038】
さらに、本実施の形態において、温水システム1が温水加熱運転状態である場合に、無線通信を行わない。ここで、温水加熱運転状態は、温水加熱状態および温水加熱状態となる前の温水加熱準備状態を含む。例えば、図示しない給湯栓が開かれることで温水機器2内に最低作動流量以上の通水が発生すると、温水機器2の制御部7は、燃焼部へ燃焼用空気を供給するための送風ファン57を駆動するファンモータを作動させる。そのファンモータの回転数が目標回転数に達する等して加熱開始条件が満たされると、制御部7は、ガス電磁弁51やイグナイタ55を作動させて着火を行う。温水加熱状態は、加熱開始条件が満たされた場合の燃焼部における着火動作を含む。温水加熱準備状態は、温水加熱を行うための着火動作の開始までの動作を含む。さらに、温水加熱運転状態は、温水加熱状態終了後のポストパージ運転状態を含み得る。ポストパージ運転状態において、制御部7は、温水加熱の終了後に送風ファン57を動作させる。
【0039】
このように、温水加熱運転状態において、送風ファン57、イグナイタ55、ガス電磁弁51が動作し得る。また、温水加熱運転状態において給湯流量の調整操作が行われると、温水機器2は、給湯流量調整弁52およびバイパス流量調整弁53の開度を変更する。また、温水加熱運転状態において浴槽と温水機器2との間で湯水を循環させる際には、風呂ポンプ56が動作する。
【0040】
このように、温水加熱運転状態は、電気負荷5による消費電流が大きい状態または大きくなる可能性が高い状態と言える。本実施の形態によれば、電気負荷5での消費電流が大きくなり易い温水加熱運転時に無線通信を行うことがなくなるため、無線通信による消費電流の増大によって温水システム1全体の消費電流が電源装置6の定格を超えることを防止することができる。
【0041】
図3は、本実施の形態の温水システムにおける消費電流の時間的変化の例を示すグラフである。図4は、比較例の温水システムにおける消費電流の時間的変化の例を示すグラフである。比較例の温水システムは、温水加熱運転時にも中継装置からの無線通信を実行し得る点で本実施の形態の温水システム1と相違する。
【0042】
図3および図4のグラフは、何れも、温水機器2の消費電流の時間的変化、リモコン4の消費電流の時間的変化、中継装置3の消費電流の時間的変化および温水システム1全体の消費電流の時間的変化をそれぞれグラフに表している。温水システム1全体の消費電流のグラフは、温水機器2の消費電流、リモコン4の消費電流および中継装置3の消費電流を合計したものである。消費電流を示す各グラフの縦軸の数値は、所定の単位電流を1としたときの相対値を示す。
【0043】
リモコン4は、消費電流が3でほぼ一定である。また、中継装置3は、無線通信を行う場合のみ消費電流が発生し、それ以外の場合はスリープ状態となる。本例では無線通信を行う場合の消費電流が4であり、スリープ状態の消費電流はほぼ0である。図3に示すように、時刻t1からt4の間において、温水システム1が温水加熱運転状態になると、温水機器2の消費電流が上昇し、温水機器2とリモコン4との消費電流の合計値は13となっている。
【0044】
図4に示すように、時刻t1からt4の間において、中継装置3が無線通信を行うと、温水システム1全体の消費電流は、さらに上昇し、17となってしまう。電源装置の電流容量が17未満であると、電源電圧が降下し、各電気負荷5の正常な動作を担保できなくなる。そのため、温水加熱運転状態における無線通信を許容する比較例においては、電源装置の電流容量を17以上にする必要がある。
【0045】
一方、本実施の形態によれば、時刻t1からt4の間の温水加熱運転状態において、中継装置3は、禁止フラグがメモリに記憶されている状態となっており、無線通信を行わない。そのため、時刻t1からt4の間に温水機器2から機器情報が送信されても、中継装置3は、無線通信を行わず、時刻t4を過ぎてから(例えば時刻t5に)外部の無線通信装置9に無線通信を行う。このため、本実施の形態によれば、温水システム1全体の消費電流が13を超えることはないため、電源装置6の容量を比較例より抑える(例えば14とする)ことができる。
【0046】
また、これにより、管理装置10との通信機能を有していない既存の温水システム1に、中継装置3を後付けするような場合でも、温水機器2の電源装置6において改変を要することなく、無線通信機能の付加を実現できる。
【0047】
(他の実施の形態)
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造および/または機能の詳細を実質的に変更できる。
【0048】
例えば、上記実施の形態において、無線通信を行わない所定の運転状態が温水加熱運転状態である例を示したが、所定の運転状態の設定態様は、これに限られない。例えば、所定の運転状態は、所定の電気負荷が動作している状態に設定されてもよい。例えば、給湯流量調整弁52またはバイパス流量調整弁53が動作している状態が所定の運転状態に設定されてもよい。この場合、温水機器2は、給湯流量調整弁52またはバイパス流量調整弁53の動作時に、調整弁動作状態信号を中継装置3に送信する。中継装置3は、調整弁動作状態信号を受信している間、外部の無線通信装置9に無線通信を行わない。このように、温水機器2の燃焼部が燃焼中以外の場合であっても、中継装置3が無線通信を行わない期間が設けられ得る。
【0049】
また、温水機器2は、温水システム1の消費電流が基準値を超えた場合に運転状態に関する情報として無線通信制限通知を中継装置に送信してもよい。例えば、図3の例において、消費電流の基準値は12に設定される。温水機器2は、温水システム1全体の消費電流を監視し、基準値を超えた場合に、中継装置3に無線通信制限通知を送信する。中継装置3は、無線通信制限通知を受信した場合、外部の無線通信装置9に無線通信を行わないようにしてもよい。
【0050】
これによれば、実際に温水システム1で消費されている電流に基づいて無線通信の制限を行うことができる。また、中継装置3は、運転状態に関する情報に基づいて無線通信の制限を行うか否かの判定を行う必要がないため、無線通信の制限処理を簡単に実現することができる。
【0051】
また、上記実施の形態のような制御と並行して、中継装置3が、所定の運転状態の継続中に、無線通信を実行可能とする制御が行われてもよい。例えば、温水機器2が温水加熱運転状態となっている期間が所定の基準期間を超えて継続している場合に、中継装置3は、外部の無線通信装置9に無線通信を実行し得る。この場合、無線通信を行う期間、温水機器2の制御部7は、所定の電気負荷5の動作を停止させる。例えば、中継装置3は、無線通信を実施するための無線通信実施信号を温水機器2の制御部7に送信する。制御部7は、無線通信実施信号を受信した場合、所定の電気負荷5の動作を停止させる。
【0052】
例えば、所定の電気負荷5の動作の停止により、燃焼動作が停止する。ただし、中継装置3における無線通信の期間は、例えば100ミリ秒未満とごく短いため、所定の電気負荷5の動作の停止は、温水機器2における燃焼動作に支障がない期間(少なくとも湯水の温度低下が生じない期間)に留まる。なお、中継装置3は、1回の無線通信期間で送信量が不足する場合には、無線通信を間欠的に行う。この場合、所定の電気負荷5の動作の停止も間欠的に行われる。
【0053】
また、上記実施の形態においては、外部の無線通信装置9が通信基地局となるLPWAユニット等の中継装置3を例示したが、これに限られない。例えば、中継装置3は、無線LAN通信を行う無線通信装置として構成されてもよい。この場合、外部の無線通信装置9は、屋内に設置された無線LANルータとなる。すなわち、この場合の中継装置3は、温水システム1の利用者(例えば住宅の入居者)の通信回線を利用して管理装置10へ機器情報の送信を行う。
【0054】
また、温水システム1が他の住宅設備機器と無線通信を行うことにより連係している場合、外部の無線通信装置9は、他の住宅設備機器または他の住宅設備機器との通信を中継する他の中継装置であってもよい。
【0055】
また、上記実施の形態において、中継装置3とリモコン4とが別体で構成される態様を例示したが、これに限られない。例えば、リモコン4が、中継装置3として外部の無線通信装置9と無線通信可能に構成されてもよい。
【0056】
また、上記実施の形態においては、リモコン4を1つ備えた構成を例示したが、複数のリモコン4を備えていてもよい。この場合、複数のリモコン4のうちの何れか1つが中継装置3として機能してもよい。
【0057】
また、上記実施の形態においては、温水機器2として給湯器を例に挙げたが、これに限られず、例えば、給湯機能以外の機能を有する温水熱源機にも適用可能である。また、本発明は、住宅用の温水システムだけでなく業務用の温水機器を備えた業務用の温水システムにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、電源装置の容量を大きくすることなく適切な外部との通信を実施するために有用である。
【符号の説明】
【0059】
1 温水システム
2 温水機器
3 中継装置
5 電気負荷
6 電源装置
8 電力線
9 外部の無線通信装置
図1
図2
図3
図4