(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131254
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】熱処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/26 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
H01L21/26 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035881
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】山田 隆泰
(57)【要約】
【課題】発光素子の温度上昇を防止し、基板を効率良く加熱することができる熱処理装置を提供する。
【解決手段】熱処理装置1は、半導体ウェハーWに光を照射することによって半導体ウェハーWを加熱する。熱処理装置1は、半導体ウェハーWを収容するチャンバー6と、光を発光する複数のLEDランプ45と、複数のLEDランプ45のそれぞれに個別に接続された複数の光ファイバー46と、を備える。また、熱処理装置1において、複数の光ファイバー46のそれぞれの一方端はLEDランプ45に接続されるとともに、複数の光ファイバー46の他方端は面状に配されて発光面47を形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、
前記基板を収容するチャンバーと、
光を発光する複数の発光素子と、
前記複数の発光素子のそれぞれに個別に接続された複数の光ファイバーと、
を備え、
前記複数の光ファイバーのそれぞれの一方端は前記発光素子に接続されるとともに、前記複数の光ファイバーの他方端は面状に配されて発光面を形成する熱処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の熱処理装置において、
前記発光面は、前記複数の発光素子よりも前記基板に近い位置に形成される熱処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の熱処理装置において、
前記発光面は、前記基板の下側に配置される、熱処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の熱処理装置において、
前記発光面は、前記基板の上側にも配置される、熱処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一つに記載の熱処理装置において、
前記複数の光ファイバーのそれぞれの前記一方端と前記発光素子との間に光を集光する集光レンズが介在する、熱処理装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一つに記載の熱処理装置において、
前記複数の発光素子は複数の発光ダイオードである熱処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の熱処理装置において、
前記複数の発光ダイオードは載置板上に配置され、
前記載置板を冷却する冷却機構をさらに備える、熱処理装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一つに記載の熱処理装置において、
フラッシュ光を照射することによって前記基板を加熱するフラッシュランプをさらに備える、熱処理装置。
【請求項9】
請求項8に記載の熱処理装置において、
前記フラッシュランプから出射された光から所定波長の光をカットするフィルタを前記発光面と前記基板との間に備える、熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハー等の薄板状精密電子基板(以下、単に「基板」と称する)に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいて、極めて短時間で半導体ウェハーを加熱するフラッシュランプアニール(FLA)が注目されている。フラッシュランプアニールは、キセノンフラッシュランプ(以下、単に「フラッシュランプ」とするときにはキセノンフラッシュランプを意味する)を使用して半導体ウェハーの表面にフラッシュ光を照射することにより、半導体ウェハーの表面のみを極めて短時間(数ミリ秒以下)に昇温させる熱処理技術である。
【0003】
キセノンフラッシュランプの放射分光分布は紫外域から近赤外域であり、従来のハロゲンランプよりも波長が短く、シリコンの半導体ウェハーの基礎吸収帯とほぼ一致している。よって、キセノンフラッシュランプから半導体ウェハーにフラッシュ光を照射したときには、透過光が少なく半導体ウェハーを急速に昇温することが可能である。また、数ミリ秒以下の極めて短時間のフラッシュ光照射であれば、半導体ウェハーの表面近傍のみを選択的に昇温できることも判明している。
【0004】
このようなフラッシュランプアニールは、極短時間の加熱が必要とされる処理、例えば典型的には半導体ウェハーに注入された不純物の活性化に利用される。イオン注入法によって不純物が注入された半導体ウェハーの表面にフラッシュランプからフラッシュ光を照射すれば、当該半導体ウェハーの表面を極短時間だけ活性化温度にまで昇温することができ、不純物を深く拡散させることなく、不純物活性化のみを実行することができる。
【0005】
このようなフラッシュランプアニールを実行する装置として、典型的には半導体ウェハーを収容するチャンバーの上方にフラッシュランプを設けるとともに、下方にハロゲンランプを設けた熱処理装置が使用される。
【0006】
ハロゲンランプは比較的波長の長い赤外光を主として放射する。シリコンの半導体ウェハーの分光吸収率においては、500℃以下の低温域では1μmより大きい長波長の赤外光の吸収率が低い。すなわち、500℃以下の半導体ウェハーは、ハロゲンランプから照射された赤外光をあまり吸収しないため、ハロゲンランプによって予備加熱を行うと予備加熱の初期段階では非効率的な加熱が行われることとなる。したがって、予備加熱手段として、ハロゲンランプ以外の手段が求められていた。
【0007】
また、特許文献1に記載のように、完成した半導体ウェハーに対してさらに加熱を行うバーンイン工程において、半導体ウェハーの加熱手段としてLEDが採用されている。そして、特許文献1に記載の装置では、半導体ウェハーを必要とされる温度まで短時間で達成するために、LEDが高密度に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の装置のように、LEDが高密度に配置されると、発光によるLED自身の熱が相互に影響しあうため、LED自身が温度上昇する可能性がある。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、発光素子の温度上昇を防止し、基板を効率良く加熱することができる熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、前記基板を収容するチャンバーと、光を発光する複数の発光素子と、前記複数の発光素子のそれぞれに個別に接続された複数の光ファイバーと、を備え、前記複数の光ファイバーのそれぞれの一方端は前記発光素子に接続されるとともに、前記複数の光ファイバーの他方端は面状に配されて発光面を形成することを特徴とする。
【0012】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る熱処理装置において、前記発光面は、前記複数の発光素子よりも前記基板に近い位置に形成されることを特徴とする。
【0013】
また、請求項3の発明は、請求項2の発明に係る熱処理装置において、前記発光面は、前記基板の下側に配置されることを特徴とする。
【0014】
また、請求項4の発明は、請求項3の発明に係る熱処理装置において、前記発光面は、前記基板の上側にも配置されることを特徴とする。
【0015】
また、請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか一つの発明に係る熱処理装置において、前記複数の光ファイバーのそれぞれの前記一方端と前記発光素子との間に光を集光する集光レンズが介在することを特徴とする。
【0016】
また、請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれか一つの発明に係る熱処理装置において、前記複数の発光素子は複数の発光ダイオードであることを特徴とする。
【0017】
また、請求項7の発明は、請求項6の発明に係る熱処理装置において、前記複数の発光ダイオードは載置板上に配置され、前記載置板を冷却する冷却機構をさらに備えることを特徴とする。
【0018】
また、請求項8の発明は、請求項1ないし請求項7のいずれか一つの発明に係る熱処理装置において、フラッシュ光を照射することによって前記基板を加熱するフラッシュランプをさらに備えることを特徴とする。
【0019】
また、請求項9の発明は、請求項8の発明に係る熱処理装置において、前記フラッシュランプから出射された光から所定波長の光をカットするフィルタを前記発光面と前記基板との間に備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1、請求項2、および請求項6の発明によれば、複数の発光素子のそれぞれに個別に接続された複数の光ファイバーを備えることから、発光素子の過度な温度上昇を防止しつつ、光の減衰を抑制することができる。このため、基板を効率良く加熱することができる。
【0021】
また、請求項3および請求項4の発明によれば、発光面は、基板の下側に配置されることから、基板の予備加熱が効率よく行われる。
【0022】
また、請求項5に記載の発明によれば、複数の光ファイバーのそれぞれの一方端と発光素子との間に光を集光する集光レンズが介在することから、さらに効率よく発光素子からの光が基板に出射される。これにより、さらに効率良く基板を加熱することができる。
【0023】
請求項7の発明によれば、載置板を冷却する冷却機構をさらに備えることから、発光素子の冷却が促進される。これにより、発光素子の過度な温度上昇を防止することができる。
【0024】
請求項8の発明によれば、基板を加熱するフラッシュランプをさらに備えることから、基板を急速に昇温することができる。
【0025】
請求項9の発明によれば、フラッシュランプから出射された光から所定波長の光をカットするフィルタを発光面と基板との間に備えることから、フラッシュランプからのフラッシュ光が、発光面から発光素子に到達することが防止される。このため、発光素子の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明に係る熱処理装置の構成を示す縦断面図である。
【
図7】円板状の載置板上に配置された複数のLEDランプを示す平面図である。
【
図8】載置板の内部の冷却機構を説明する図である。
【
図9】
図1におけるLEDランプと光ファイバーとの接続部分を拡大して示す図である。
【
図10】光ファイバーと発光面との接続部分を拡大して示す図である。
【
図12】第2実施形態における熱処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【
図13】第3実施形態における熱処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【
図14】第4実施形態における熱処理装置におけるLEDランプと光ファイバーとの接続部分を拡大して示す図である。
【
図15】第1実施形態の変形例における熱処理装置の構成を概略的に示す断面図である。
【
図16】
図15におけるチャンバー側部の平面を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。以下の実施の形態では、技術の説明のために詳細な特徴なども示されるが、それらは例示であり、実施の形態が実施可能となるためにそれらすべてが必ずしも必須の特徴ではない。
【0028】
なお、図面は概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、適宜、構成の省略、または、構成の簡略化が図面においてなされるものである。また、異なる図面にそれぞれ示される構成などの大きさおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得るものである。また、断面図ではない平面図などの図面においても、実施の形態の内容を理解することを容易にするために、ハッチングが付される場合がある。
【0029】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0030】
また、以下に記載される説明において、ある構成要素を「備える」、「含む」または「有する」などと記載される場合、特に断らない限りは、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0031】
また、以下に記載される説明における、相対的または絶対的な位置関係を示す表現、たとえば、「一方向に」、「一方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」または「同軸」などは、特に断らない限りは、その位置関係を厳密に示す場合、および、公差または同程度の機能が得られる範囲において角度または距離が変位している場合を含むものとする。
【0032】
また、以下に記載される説明において、等しい状態であることを示す表現、たとえば、「同一」、「等しい」、「均一」または「均質」などは、特に断らない限りは、厳密に等しい状態であることを示す場合、および、公差または同程度の機能が得られる範囲において差が生じている場合を含むものとする。
【0033】
また、以下に記載される説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「側」、「底」、「表」または「裏」などの特定の位置または方向を意味する用語が用いられる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられるものであり、実際に実施される際の位置または方向とは関係しないものである。
【0034】
また、以下に記載される説明において、「…の上面」または「…の下面」などと記載される場合、対象となる構成要素の上面自体または下面自体に加えて、対象となる構成要素の上面または下面に他の構成要素が形成された状態も含むものとする。すなわち、たとえば、「甲の上面に設けられる乙」と記載される場合、甲と乙との間に別の構成要素「丙」が介在することを妨げるものではない。
【0035】
<第1の実施の形態>
以下、本実施の形態に関する熱処理装置について説明する。
【0036】
図1は、本発明に係る熱処理装置1の構成を示す縦断面図である。
図1の熱処理装置1は、基板として円板形状の半導体ウェハーWに対してフラッシュ光照射を行うことによってその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。処理対象となる半導体ウェハーWのサイズは特に限定されるものではないが、例えばφ300mmやφ450mmである。なお、
図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0037】
熱処理装置1は、半導体ウェハーWを収容するチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するフラッシュ加熱部5と、複数のLED(Light Emitting Diode)ランプ45を内蔵するLED加熱部4と、を備える。チャンバー6の上側にフラッシュ加熱部5が設けられるとともに、下側にLED加熱部4が設けられている。また、熱処理装置1は、チャンバー6の内部に、半導体ウェハーWを水平姿勢に保持する保持部7と、保持部7と装置外部との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う移載機構10と、を備える。さらに、熱処理装置1は、LED加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6に設けられた各動作機構を制御して半導体ウェハーWの熱処理を実行させる制御部3を備える。
【0038】
チャンバー6は、筒状のチャンバー側部61の上下に石英製のチャンバー窓を装着して構成されている。チャンバー側部61は上下が開口された概略筒形状を有しており、上側開口には上側チャンバー窓63が装着されて閉塞され、下側開口には下側チャンバー窓64が装着されて閉塞されている。チャンバー6の天井部を構成する上側チャンバー窓63は、石英により形成された円板形状部材であり、フラッシュ加熱部5から出射されたフラッシュ光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。また、チャンバー6の床部を構成する下側チャンバー窓64も、石英により形成された円板形状部材であり、LED加熱部4からの光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。
【0039】
また、チャンバー側部61の内側の壁面の上部には反射リング68が装着され、下部には反射リング69が装着されている。反射リング68,69は、ともに円環状に形成されている。上側の反射リング68は、チャンバー側部61の上側から嵌め込むことによって装着される。一方、下側の反射リング69は、チャンバー側部61の下側から嵌め込んで図示省略のビスで留めることによって装着される。すなわち、反射リング68,69は、ともに着脱自在にチャンバー側部61に装着されるものである。チャンバー6の内側空間、すなわち上側チャンバー窓63、下側チャンバー窓64、チャンバー側部61および反射リング68,69によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。
【0040】
チャンバー側部61に反射リング68,69が装着されることによって、チャンバー6の内壁面に凹部62が形成される。すなわち、チャンバー側部61の内壁面のうち反射リング68,69が装着されていない中央部分と、反射リング68の下端面と、反射リング69の上端面とで囲まれた凹部62が形成される。凹部62は、チャンバー6の内壁面に水平方向に沿って円環状に形成され、半導体ウェハーWを保持する保持部7を囲繞する。チャンバー側部61および反射リング68,69は、強度と耐熱性に優れた金属材料(例えば、ステンレススチール)にて形成されている。
【0041】
また、チャンバー側部61には、チャンバー6に対して半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部(炉口)66が形設されている。搬送開口部66は、ゲートバルブ185によって開閉可能とされている。搬送開口部66は凹部62の外周面に連通接続されている。このため、ゲートバルブ185が搬送開口部66を開放しているときには、搬送開口部66から凹部62を通過して熱処理空間65への半導体ウェハーWの搬入および熱処理空間65からの半導体ウェハーWの搬出を行うことができる。また、ゲートバルブ185が搬送開口部66を閉鎖するとチャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間とされる。
【0042】
さらに、チャンバー側部61には、貫通孔61aが穿設されている。チャンバー側部61の外壁面の貫通孔61aが設けられている部位には放射温度計20が取り付けられている。貫通孔61aは、後述するサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの下面から放射された赤外光を放射温度計20に導くための円筒状の孔である。貫通孔61aは、その貫通方向の軸がサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの主面と交わるように、水平方向に対して傾斜して設けられている。よって、放射温度計20はサセプタ74の斜め下方に設けられることとなる。貫通孔61aの熱処理空間65に臨む側の端部には、放射温度計20が測定可能な波長領域の赤外光を透過させるフッ化バリウム材料からなる透明窓21が装着されている。
【0043】
また、チャンバー6の内壁上部には熱処理空間65に処理ガスを供給するガス供給孔81が形設されている。ガス供給孔81は、凹部62よりも上側位置に形設されており、反射リング68に設けられていても良い。ガス供給孔81はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間82を介してガス供給管83に連通接続されている。ガス供給管83は処理ガス供給源85に接続されている。また、ガス供給管83の経路途中にはバルブ84が介挿されている。バルブ84が開放されると、処理ガス供給源85から緩衝空間82に処理ガスが送給される。緩衝空間82に流入した処理ガスは、ガス供給孔81よりも流体抵抗の小さい緩衝空間82内を拡がるように流れてガス供給孔81から熱処理空間65内へと供給される。処理ガスとしては、例えば窒素(N2)等の不活性ガス、または、水素(H2)、アンモニア(NH3)等の反応性ガス、或いはそれらを混合した混合ガスを用いることができる(本実施形態では窒素ガス)。
【0044】
一方、チャンバー6の内壁下部には熱処理空間65内の気体を排気するガス排気孔86が形設されている。ガス排気孔86は、凹部62よりも下側位置に形設されており、反射リング69に設けられていても良い。ガス排気孔86はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間87を介してガス排気管88に連通接続されている。ガス排気管88は排気部190に接続されている。また、ガス排気管88の経路途中にはバルブ89が介挿されている。バルブ89が開放されると、熱処理空間65の気体がガス排気孔86から緩衝空間87を経てガス排気管88へと排出される。なお、ガス供給孔81およびガス排気孔86は、チャンバー6の周方向に沿って複数設けられていても良いし、スリット状のものであっても良い。また、処理ガス供給源85および排気部190は、熱処理装置1に設けられた機構であっても良いし、熱処理装置1が設置される工場のユーティリティであっても良い。
【0045】
図2は、保持部7の全体外観を示す斜視図である。保持部7は、基台リング71、連結部72およびサセプタ74を備えて構成される。基台リング71、連結部72およびサセプタ74はいずれも石英にて形成されている。すなわち、保持部7の全体が石英にて形成されている。
【0046】
基台リング71は円環形状から一部が欠落した円弧形状の石英部材である。この欠落部分は、後述する移載機構10の移載アーム11と基台リング71との干渉を防ぐために設けられている。基台リング71は凹部62の底面に載置されることによって、チャンバー6の壁面に支持されることとなる(
図1参照)。基台リング71の上面に、その円環形状の周方向に沿って複数の連結部72(本実施形態では4個)が立設される。連結部72も石英の部材であり、溶接によって基台リング71に固着される。
【0047】
サセプタ74は基台リング71に設けられた4個の連結部72によって支持される。
図3は、サセプタ74の平面図である。また、
図4は、サセプタ74の断面図である。サセプタ74は、保持プレート75、ガイドリング76および複数の基板支持ピン77を備える。保持プレート75は、石英にて形成された略円形の平板状部材である。保持プレート75の直径は半導体ウェハーWの直径よりも大きい。すなわち、保持プレート75は、半導体ウェハーWよりも大きな平面サイズを有する。
【0048】
保持プレート75の上面周縁部にガイドリング76が設置されている。ガイドリング76は、半導体ウェハーWの直径よりも大きな内径を有する円環形状の部材である。例えば、半導体ウェハーWの直径がφ300mmの場合、ガイドリング76の内径はφ320mmである。ガイドリング76の内周は、保持プレート75から上方に向けて広くなるようなテーパ面とされている。ガイドリング76は、保持プレート75と同様の石英にて形成される。ガイドリング76は、保持プレート75の上面に溶着するようにしても良いし、別途加工したピンなどによって保持プレート75に固定するようにしても良い。或いは、保持プレート75とガイドリング76とを一体の部材として加工するようにしても良い。
【0049】
保持プレート75の上面のうちガイドリング76よりも内側の領域が半導体ウェハーWを保持する平面状の保持面75aとされる。保持プレート75の保持面75aには、複数の基板支持ピン77が立設されている。本実施形態においては、保持面75aの外周円(ガイドリング76の内周円)と同心円の周上に沿って30°毎に計12個の基板支持ピン77が立設されている。12個の基板支持ピン77を配置した円の径(対向する基板支持ピン77間の距離)は半導体ウェハーWの径よりも小さく、半導体ウェハーWの径がφ300mmであればφ270mm~φ280mm(本実施形態ではφ270mm)である。それぞれの基板支持ピン77は石英にて形成されている。複数の基板支持ピン77は、保持プレート75の上面に溶接によって設けるようにしても良いし、保持プレート75と一体に加工するようにしても良い。
【0050】
図2に戻り、基台リング71に立設された4個の連結部72とサセプタ74の保持プレート75の周縁部とが溶接によって固着される。すなわち、サセプタ74と基台リング71とは連結部72によって固定的に連結されている。このような保持部7の基台リング71がチャンバー6の壁面に支持されることによって、保持部7がチャンバー6に装着される。保持部7がチャンバー6に装着された状態においては、サセプタ74の保持プレート75は水平姿勢(法線が鉛直方向と一致する姿勢)となる。すなわち、保持プレート75の保持面75aは水平面となる。
【0051】
チャンバー6に搬入された半導体ウェハーWは、チャンバー6に装着された保持部7のサセプタ74の上に水平姿勢にて載置されて保持される。このとき、半導体ウェハーWは保持プレート75上に立設された12個の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。より厳密には、12個の基板支持ピン77の上端部が半導体ウェハーWの下面に接触して当該半導体ウェハーWを支持する。12個の基板支持ピン77の高さ(基板支持ピン77の上端から保持プレート75の保持面75aまでの距離)は均一であるため、12個の基板支持ピン77によって半導体ウェハーWを水平姿勢に支持することができる。
【0052】
また、半導体ウェハーWは複数の基板支持ピン77によって保持プレート75の保持面75aから所定の間隔を隔てて支持されることとなる。基板支持ピン77の高さよりもガイドリング76の厚さの方が大きい。従って、複数の基板支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの水平方向の位置ずれはガイドリング76によって防止される。
【0053】
また、
図2および
図3に示すように、サセプタ74の保持プレート75には、上下に貫通して開口部78が形成されている。開口部78は、放射温度計20が半導体ウェハーWの下面から放射される放射光(赤外光)を受光するために設けられている。すなわち、放射温度計20が開口部78およびチャンバー側部61の貫通孔61aに装着された透明窓21を介して半導体ウェハーWの下面から放射された光を受光して当該半導体ウェハーWの温度を測定する。さらに、サセプタ74の保持プレート75には、後述する移載機構10のリフトピン12が半導体ウェハーWの受け渡しのために貫通する4個の貫通孔79が穿設されている。
【0054】
図5は、移載機構10の平面図である。また、
図6は、移載機構10の側面図である。移載機構10は、2本の移載アーム11を備える。移載アーム11は、概ね円環状の凹部62に沿うような円弧形状とされている。それぞれの移載アーム11には2本のリフトピン12が立設されている。移載アーム11およびリフトピン12は石英にて形成されている。各移載アーム11は水平移動機構13によって回動可能とされている。水平移動機構13は、一対の移載アーム11を保持部7に対して半導体ウェハーWの移載を行う移載動作位置(
図5の実線位置)と保持部7に保持された半導体ウェハーWと平面視で重ならない退避位置(
図5の二点鎖線位置)との間で水平移動させる。水平移動機構13としては、個別のモータによって各移載アーム11をそれぞれ回動させるものであっても良いし、リンク機構を用いて1個のモータによって一対の移載アーム11を連動させて回動させるものであっても良い。
【0055】
また、一対の移載アーム11は、昇降機構14によって水平移動機構13とともに昇降移動される。昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて上昇させると、計4本のリフトピン12がサセプタ74に穿設された貫通孔79(
図2,3参照)を通過し、リフトピン12の上端がサセプタ74の上面から突き出る。一方、昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて下降させてリフトピン12を貫通孔79から抜き取り、水平移動機構13が一対の移載アーム11を開くように移動させると各移載アーム11が退避位置に移動する。一対の移載アーム11の退避位置は、保持部7の基台リング71の直上である。基台リング71は凹部62の底面に載置されているため、移載アーム11の退避位置は凹部62の内側となる。なお、移載機構10の駆動部(水平移動機構13および昇降機構14)が設けられている部位の近傍にも図示省略の排気機構が設けられており、移載機構10の駆動部周辺の雰囲気がチャンバー6の外部に排出されるように構成されている。
【0056】
図1に戻り、チャンバー6の上方に設けられたフラッシュ加熱部5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、フラッシュ加熱部5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。フラッシュ加熱部5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状の石英窓である。フラッシュ加熱部5がチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53が上側チャンバー窓63と相対向することとなる。フラッシュランプFLはチャンバー6の上方からランプ光放射窓53および上側チャンバー窓63を介して熱処理空間65にフラッシュ光を照射する。
【0057】
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。複数のフラッシュランプFLが配列される領域は半導体ウェハーWの平面サイズよりも大きい。
【0058】
キセノンフラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された円筒形状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。このようなキセノンフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし100ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、ハロゲンランプの如き連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。すなわち、フラッシュランプFLは、1秒未満の極めて短い時間で瞬間的に発光するパルス発光ランプである。なお、フラッシュランプFLの発光時間は、フラッシュランプFLに電力供給を行うランプ電源のコイル定数によって調整することができる。
【0059】
また、リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を熱処理空間65の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
【0060】
チャンバー6の下方に設けられたLED加熱部4は、筐体41の内側に複数個の発光素子としてのLEDランプ45と、複数本の光ファイバー46と、発光面47とを備えている。また、LED加熱部4は、発光面47と半導体ウェハーWとの間にフィルタ90を備える。LED加熱部4は、複数のLEDランプ45から光ファイバー46を通過する光によってチャンバー6の下方から下側チャンバー窓64を介して熱処理空間65への光照射を行って半導体ウェハーWを加熱する。発光面47は、半導体ウェハーWの面積と同程度の面積を有する。
【0061】
図7は、円板状の載置板44上に配置された複数のLEDランプ45を示す平面図である。LED加熱部4には、数千個のLEDランプ45が載置板44上に配置される。ただし、
図7では図示の便宜上個数を簡略化して描いている。従来のハロゲンランプが棒状ランプであったのに対して、各LEDランプ45は四角柱形状の点光源ランプである。複数のLEDランプ45が配置されている円板状の載置板44は、保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って平行に(つまり水平方向に沿って)設置されている。よって、複数のLEDランプ45の配列によって形成される平面は水平面である。
【0062】
図8は、載置板44の内部の冷却機構を説明する図である。載置板44は、その内部に冷却する冷却機構を備える。冷却機構は、載置板44上に配置された複数のLEDランプ45を冷却処理する。載置板44は、円板状であり、例えば金属またはセラミックで形成されている。載置板44は、その内部に所定の温度(例えば23℃)に調節された冷却水が循環するように循環流路44aが設けられている。載置板44内の循環流路44aに外部ポンプ44bによって冷却水が循環されることにより載置板44およびそれに配置された複数のLEDランプ45が冷却される。なお、載置板44は、冷却機構として、ペルチェ素子を内蔵していてもよい。
【0063】
また、
図7に示すように、複数のLEDランプ45は同心円状に配置される。より詳細には、保持部7に保持される半導体ウェハーWの中心軸CXと同軸の同心円状に複数のLEDランプ45は配置される。各同心円において、複数のLEDランプ45は均等な間隔で配置される。例えば、
図7に示す例では、内側から二番目の同心円においては、8個のLEDランプ45が45°間隔で均等に配置される。
【0064】
また、隣接するLEDランプ45同士は、所定値以上の距離Lの間隔で配置されることが好ましい。距離Lは、隣接するLEDランプ45からの熱の影響を排除してLEDランプ45の温度上昇を抑制することができる距離である。このような距離Lの間隔をあけてLEDランプ45が配置されると、LEDランプ45の過度の温度上昇が抑制される。このため、LEDランプ45の劣化が防止される。したがって、LEDランプ45の長寿命化が促進される。
【0065】
LEDランプ45は、発光ダイオードを含んでいる。発光ダイオードは、ダイオードの一種であり、順方向に電圧を加えた際にエレクトロルミネセンス効果によって発光する。本実施形態のLEDランプ45は、主として可視光の波長域の光を放射する。また、LEDランプ45は、少なくとも1秒以上連続して発光する連続点灯ランプである。
【0066】
複数のLEDランプ45のそれぞれには電力供給部49(
図1)から電圧が印加されることによって、当該LEDランプ45が発光する。電力供給部49は、制御部3の制御に従って、複数のLEDランプ45のそれぞれに供給する電力を個別に調整する。すなわち、電力供給部49は、LED加熱部4に配置された複数のLEDランプ45のそれぞれの発光強度および発光時間を個別に調整することができる。
【0067】
図9は、
図1におけるLEDランプ45と光ファイバー46との接続部分を拡大して示す図である。また、
図10は、光ファイバー46と発光面47との接続部分を拡大して示す図である。また、
図11は、発光面47の平面図である。なお、本明細書において、光ファイバー46には、被覆がないコアとクラッドのみの状態のものだけでなく、被覆された光ファイバー素線、光ファイバー心線、光ファイバーコードなども含まれる。
【0068】
図9に示すように、それぞれの光ファイバー46の一方端46aは、LEDランプ45のそれぞれに個別に接続される。光ファイバー46とLEDランプ45との接続部分の周囲には、管状の接続管48が設けられる。接続管48は、例えば弾性部材からできている。接続管48がその管内に光ファイバー46の一方端46aとLEDランプ45とを収容することにより、光ファイバー46のそれぞれの一方端46aがLEDランプ45に接続される。
【0069】
複数の光ファイバー46の他方端46bは、金属材料(例えば、ステンレススチール)の板42に設けられた複数の貫通孔42aに挿入されることにより固定され、発光面47を形成する。金属材料の板42は、図示されない支持部材により発光面47がチャンバー6内の半導体ウェハーWに向くように固定される。このとき、発光面47は、保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配置される。
【0070】
光ファイバー46は、LEDランプ45よりも耐熱性が高いため、隣接する光ファイバー46同士を接触させて配置することも可能である。このため、複数の光ファイバー46の他方端46b(本実施形態においては全ての光ファイバー46の他方端46b)を固定するための複数の貫通孔42aが近接していてもよい。また貫通孔42aがハニカム形状や多角形状であってもよい。
【0071】
また、光ファイバー46は可撓性を有するため、光ファイバー46の形状をある程度自在に変更することができる。これにより、発光面47の配置の自由度が高まる。このため、本実施形態において、発光面47は、保持部7に保持された半導体ウェハーWの下側であって、複数のLEDランプ45よりも半導体ウェハーWに近い位置に形成される。
【0072】
チャンバー6内の保持部7と発光面47との間にフィルタ90を備える。本実施形態においては、フィルタ90は発光面47の直上に設置される。フィルタ90はLEDランプ45(光ファイバー46)から発光する光の波長領域(半値幅は20nm程度)を通過させ、それ以外の波長をカットする。これにより、フラッシュランプFLからのフラッシュ光において、LEDランプ45(光ファイバー46)から発光する光の波長領域と重複しない波長領域の光については、発光面47から入射してLEDランプ45に到達することが防止される。これにより、LEDランプ45が強度の強いフラッシュ光に曝されて損傷することを抑えることができる。
【0073】
フィルタ90として水フィルタが採用されてもよい。ただし、これに限定されるものではなく、フィルタ90は波長350nm以上1000nm(1μm)未満の光を透過するとともに波長1000nm(1μm)以上4000nm(4μm)以下の光を遮光または減光するものであることが好ましい。このようなフィルタ90として、例えばいわゆる光学フィルタが用いられてもよい。フィルタ90として用いられ得る光学フィルタは、例えば帯域フィルタや短波長パスフィルタである。より具体的には、光学フィルタは、ガラス、石英または樹脂のような透明な基材に誘電体または金属の多層膜を付けたものである。多層膜の界面で生じる反射が干渉することで光の透過特性が変化する性質を利用し、多層膜の材質、膜厚、層数を調整することによって特定波長域の光だけを透過する光学フィルタを得ることができる。よって、多層膜の材質、膜厚、層数を適宜に調整すれば、波長350nm以上1000nm(1μm)未満の光を透過するとともに波長1000nm(1μm)以上4000nm(4μm)以下の光を遮光または減光する光学フィルタを作成することができる。なお、LEDランプ45の発光波長域に応じて、その発光波長域の光を透過するような光学フィルタを得ることが好ましい。
【0074】
また、スパッタリングにより金属(例えば銀(Ag))の薄膜を成膜した石英板をフィルタ90として用いるようにしても良い。このようなフィルタ90も波長350nm以上1000nm(1μm)未満の光を透過するとともに波長1000nm(1μm)以上4000nm(4μm)以下の光を遮光または減光する。このため、かかるフィルタ90を発光面47と半導体ウェハーWとの間に設けることにより、上記と同様に、半導体ウェハーWからの輻射光が発光面47に到達するのを防いでLEDランプ45の損傷を防止することができる。なお、石英の下側チャンバー窓64に金属の薄膜を成膜してフィルタとして機能させるようにしても良い。
【0075】
制御部3は、熱処理装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行う回路であるCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えている。制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理装置1における処理が進行する。
【0076】
上記の構成以外にも熱処理装置1は、半導体ウェハーWの熱処理時にLEDランプ45およびフラッシュランプFLから発生する熱エネルギーによるLED加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6の過度な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、チャンバー6の壁体には水冷管(図示省略)が設けられている。また、LED加熱部4およびフラッシュ加熱部5は、内部に気体流を形成して排熱する空冷構造とされている。また、上側チャンバー窓63とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、フラッシュ加熱部5および上側チャンバー窓63を冷却する。
【0077】
次に、熱処理装置1における処理動作について説明する。処理対象となる半導体ウェハーWは、前工程としてのイオン注入によって不純物が注入されたシリコン(Si)の半導体基板である。その不純物の活性化が熱処理装置1によるアニール処理により実行される。以下に説明する半導体ウェハーWの処理手順は、制御部3が熱処理装置1の各動作機構を制御することにより進行する。
【0078】
まず、半導体ウェハーWの処理に先立って給気のためのバルブ84が開放されるとともに、排気用のバルブ89が開放されてチャンバー6内に対する給排気が開始される。バルブ84が開放されると、ガス供給孔81から熱処理空間65に窒素ガスが供給される。また、バルブ89が開放されると、ガス排気孔86からチャンバー6内の気体が排気される。これにより、チャンバー6内の熱処理空間65の上部から供給された窒素ガスが下方へと流れ、熱処理空間65の下部から排気される。
【0079】
続いて、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、装置外部の搬送ロボットにより搬送開口部66を介して処理対象となる半導体ウェハーWがチャンバー6内の熱処理空間65に搬入される。このときには、半導体ウェハーWの搬入にともなって装置外部の雰囲気を巻き込むおそれがあるが、チャンバー6には窒素ガスが供給され続けているため、搬送開口部66から窒素ガスが流出して、そのような外部雰囲気の巻き込みを最小限に抑制することができる。
【0080】
搬送ロボットによって搬入された半導体ウェハーWは保持部7の直上位置まで進出して停止する。そして、移載機構10の一対の移載アーム11が退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12が貫通孔79を通ってサセプタ74の保持プレート75の上面から突き出て半導体ウェハーWを受け取る。このとき、リフトピン12は基板支持ピン77の上端よりも上方にまで上昇する。
【0081】
半導体ウェハーWがリフトピン12に載置された後、搬送ロボットが熱処理空間65から退出し、ゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖される。そして、一対の移載アーム11が下降することにより、半導体ウェハーWは移載機構10から保持部7のサセプタ74に受け渡されて水平姿勢にて下方より保持される。半導体ウェハーWは、保持プレート75上に立設された複数の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。また、半導体ウェハーWは、パターン形成がなされて不純物が注入された表面を上面として保持部7に保持される。複数の基板支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの裏面(表面とは反対側の主面)と保持プレート75の保持面75aとの間には所定の間隔が形成される。サセプタ74の下方にまで下降した一対の移載アーム11は水平移動機構13によって退避位置、すなわち凹部62の内側に退避する。
【0082】
半導体ウェハーWが石英にて形成された保持部7のサセプタ74によって水平姿勢にて下方より保持された後、LED加熱部4の複数のLEDランプ45が点灯して予備加熱(アシスト加熱)が開始される。複数のLEDランプ45から出射された光は、光ファイバー46を通過した後、発光面47から出射する。発光面47から出射された光は、フィルタ90および石英にて形成された下側チャンバー窓64、サセプタ74を順に透過して半導体ウェハーWの下面に照射される。LEDランプ45(発光面47)からの光照射を受けることによって半導体ウェハーWが予備加熱されて温度が上昇する。なお、移載機構10の移載アーム11は凹部62の内側に退避しているため、LEDランプ45による加熱の障害となることは無い。
【0083】
上述のように、複数のLEDランプ45が点灯して半導体ウェハーWが昇温を開始すると、半導体ウェハーWの温度は放射温度計20によって測定される。測定された半導体ウェハーWの温度は制御部3に伝達される。制御部3は、LEDランプ45からの光照射によって昇温する半導体ウェハーWの温度が所定の予備加熱温度T1に到達したか否かを監視しつつ、電力供給部49を制御してLEDランプ45の出力を調整する。すなわち、制御部3は、放射温度計20による測定値に基づいて、半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1となるようにLEDランプ45の出力をフィードバック制御する。予備加熱温度T1は、半導体ウェハーWに添加された不純物が熱により拡散する恐れのない、200℃ないし800℃程度、好ましくは350℃ないし600℃程度とされる(本実施の形態では600℃)。
【0084】
本実施形態においては、LEDランプ45から光ファイバー46を経由して、波長1000nm(1μm)以下の光が半導体ウェハーWに照射される。シリコンの半導体ウェハーWの分光吸収率においては、500℃以下の低温域では波長1μmより大きい赤外光の吸収率が低いものの、波長1000nm(1μm)以下の光の吸収率は相対的に高い。すなわち、500℃以下の低温域であっても、半導体ウェハーWはLEDランプ45から光ファイバー46を通過して出射された光を良好に吸収する。従って、予備加熱の初期段階に半導体ウェハーWの温度が500℃以下のときにも、LEDランプ45によって半導体ウェハーWを効率良く加熱することができる。
【0085】
また、LED加熱部4と保持部7との間には石英の下側チャンバー窓64が存在している。よって、LEDランプ45から光ファイバー46を通過して出射された光は石英の下側チャンバー窓64を透過してから半導体ウェハーWに照射されることとなる。石英の分光透過率においては、比較的長い波長域の光の透過率が低いものの、波長900nm以下の光の透過率は高い。従って、LEDランプ45から光ファイバー46を通過して出射された光は下側チャンバー窓64によってはほとんど吸収されない。このため、LEDランプ45によって半導体ウェハーWをより効率良く加熱することができる。
【0086】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した後、制御部3は半導体ウェハーWをその予備加熱温度T1に暫時維持する。具体的には、放射温度計20によって測定される半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した時点にて制御部3がLEDランプ45の出力を調整し、半導体ウェハーWの温度をほぼ予備加熱温度T1に維持している。
【0087】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達して所定時間が経過した時点でフラッシュ加熱部5のフラッシュランプFLがサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの表面にフラッシュ光照射を行う。このとき、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接にチャンバー6内へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ52により反射されてからチャンバー6内へと向かい、これらのフラッシュ光の照射により半導体ウェハーWのフラッシュ加熱が行われる。
【0088】
フラッシュ加熱は、フラッシュランプFLからのフラッシュ光(閃光)照射により行われるため、半導体ウェハーWの表面温度を短時間で上昇することができる。すなわち、フラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光は、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された、照射時間が0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の極めて短く強い閃光である。そして、フラッシュランプFLからのフラッシュ光照射によりフラッシュ加熱される半導体ウェハーWの表面温度は、瞬間的に1000℃以上の処理温度T2まで上昇し、半導体ウェハーWに注入された不純物が活性化された後、表面温度が急速に下降する。このように、熱処理装置1では、半導体ウェハーWの表面温度を極めて短時間で昇降することができるため、半導体ウェハーWに注入された不純物の熱による拡散を抑制しつつ不純物の活性化を行うことができる。なお、不純物の活性化に必要な時間はその熱拡散に必要な時間に比較して極めて短いため、0.1ミリセカンドないし100ミリセカンド程度の拡散が生じない短時間であっても活性化は完了する。
【0089】
フラッシュ加熱処理が終了した後、所定時間経過後にLEDランプ45が消灯する。これにより、半導体ウェハーWが予備加熱温度T1から急速に降温する。降温中の半導体ウェハーWの温度は放射温度計20によって測定され、その測定結果は制御部3に伝達される。制御部3は、放射温度計20の測定結果より半導体ウェハーWの温度が所定温度まで降温したか否かを監視する。
【0090】
半導体ウェハーWの温度が所定以下にまで降温した後、移載機構10の一対の移載アーム11が再び退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12がサセプタ74の上面から突き出て熱処理後の半導体ウェハーWをサセプタ74から受け取る。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、リフトピン12上に載置された半導体ウェハーWが装置外部の搬送ロボットによりチャンバー6から搬出され、半導体ウェハーWの加熱処理が完了する。
【0091】
<第2の実施の形態>
以下、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図12は、第2実施形態における熱処理装置201の構成を概略的に示す断面図である。
【0092】
第2実施形態における熱処理装置201は、第1実施形態における熱処理装置1のフラッシュ加熱部5に代えて、チャンバー6の上側に上側LED加熱部205を備える。上側LED加熱部205は、LED加熱部4と同一の構成である。つまり、上側LED加熱部205は、複数のLEDランプ245を内蔵する。上側LED加熱部205もまた制御部3により制御される。
【0093】
上側LED加熱部205は、筐体241の内側に複数個のLEDランプ245と、複数本の光ファイバー246と、発光面247と、複数のLEDランプ245が配置される円板状の載置板244とを備える。発光面247は、金属材料(例えば、ステンレススチール)の板242に設けられた複数の貫通孔242aに光ファイバー246が挿入されることにより固定されて形成される。上側LED加熱部205は、複数のLEDランプ245から光ファイバー246を通過する光によってチャンバー6の上方から上側チャンバー窓63を介して熱処理空間65への光照射を行って半導体ウェハーWを加熱する。
【0094】
複数のLEDランプ245のそれぞれには電力供給部249(
図12)から電圧が印加されることによって、当該LEDランプ245が発光する。電力供給部249は、制御部3の制御に従って、複数のLEDランプ245のそれぞれに供給する電力を個別に調整する。すなわち、電力供給部249は、上側LED加熱部205に配置された複数のLEDランプ245のそれぞれの発光強度および発光時間を個別に調整することができる。
【0095】
なお、第2実施形態においては、フラッシュ加熱部5が備えられない。このため、フラッシュランプFLによる波長をカットするフィルタ90は不要である。同様に、上側LED加熱部205においても、フィルタは不要である。
【0096】
<第3の実施の形態>
以下、本発明の第3の実施の形態について説明する。
図13は、第3実施形態における熱処理装置301の構成を概略的に示す断面図である。
【0097】
第3実施形態における熱処理装置301は、第1実施形態における熱処理装置1のLED加熱部4に代えて、LED加熱部304を備える。LED加熱部304は、複数の発光面347を備える。それぞれの発光面347は、それぞれ複数の光ファイバー46の他端部が金属材料(例えば、ステンレススチール)の板342に設けられた複数の貫通孔342aに挿入されることにより固定され、形成される。金属材料の板342は、第1実施形態の金属材料の板42と同様に、図示されない支持部材により発光面347が半導体ウェハーW方向を向くように固定される。このとき、発光面347は、保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配置される。
【0098】
金属材料の板342に設けられた貫通孔342aは、半導体ウェハーWにおいて、加熱時の温度が低くなりがちな半導体ウェハーWの端部に対応する位置に多く偏って設けられる。すなわち、複数の光ファイバー46の他方端46bは、半導体ウェハーWの端部に対応する位置に多く偏って配置され、発光面347が形成される。これにより、第3実施形態における熱処理装置301によれば、半導体ウェハーWの加熱温度の面内均一性が向上する。
【0099】
<第4の実施の形態>
以下、本発明の第4の実施の形態について説明する。
図14は、第4実施形態における熱処理装置401におけるLEDランプ45と光ファイバー46との接続部分を拡大して示す図である。
【0100】
第4実施形態の熱処理装置401においては、複数の光ファイバー46のそれぞれの一方端46aとLEDランプ45との間に光を集光する集光レンズ443が介在する。これにより、LEDランプ45から光ファイバー46への光の通過率が増す。このため、さらに効率よくLEDランプ45からの光が半導体ウェハーWに出射される。これにより、さらに効率良く半導体ウェハーWを加熱することができる。
【0101】
<以上に記載された実施の形態によって生じる効果について>
次に、以上に記載された実施の形態によって生じる効果の例を示す。なお、以下の説明においては、以上に記載された実施の形態に例が示された具体的な構成に基づいて当該効果が記載されるが、同様の効果が生じる範囲で、本願明細書に例が示される他の具体的な構成と置き換えられてもよい。
【0102】
また、当該置き換えは、複数の実施の形態に跨ってなされてもよい。すなわち、異なる実施の形態において例が示されたそれぞれの構成が組み合わされて、同様の効果が生じる場合であってもよい。
【0103】
以上に記載された実施の形態の熱処理装置は、半導体ウェハーWに光を照射することによって半導体ウェハーWを加熱する熱処理装置1,201,301,401である。熱処理装置1,201,301,401は、半導体ウェハーWを収容するチャンバー6と、光を発光する複数のLEDランプ45と、複数のLEDランプ45のそれぞれに個別に接続された複数の光ファイバー46と、を備える。また、熱処理装置1,201,301,401において、複数の光ファイバー46のそれぞれの一方端46aはLEDランプ45に接続されるとともに、複数の光ファイバー46の他方端46bは面状に配されて発光面47を形成する。
【0104】
このような熱処理装置1,201,301,401によれば、複数のLEDランプ45のそれぞれに個別に接続された複数の光ファイバー46を束ねて発光面47を形成することから、LEDランプ45同士の間隔を距離L以上としつつも発光面47から出射される光の単位面積当たりの強度を高めることができる。このため、LEDランプ45の過度な温度上昇を防止しつつ半導体ウェハーWを効率良く加熱することができる。
【0105】
また、光ファイバー46が可撓性を有するため、発光面47の配置の自由度が増す。発光面47をLEDランプ45よりも半導体ウェハーWに近い位置に形成することにより、光の減衰を抑制することができる。
【0106】
また、熱処理装置1,201,301,401において、発光面47は、半導体ウェハーWの下側に配置される。このため、半導体ウェハーWの予備加熱が効率よく行われる。
【0107】
また、熱処理装置201において、発光面47は、半導体ウェハーWの上側にも配置される。このため、LEDランプ45だけで半導体ウェハーWの熱処理を行うことができる。このため、熱処理装置201において全体的な装置構成や制御が簡便になる。
【0108】
また、熱処理装置401において、複数の光ファイバー46のそれぞれの一方端46aとLEDランプ45との間に光を集光する集光レンズ443が介在する。このため、熱処理装置401によれば、さらに効率よくLEDランプ45からの光が半導体ウェハーWに出射される。これにより、さらに効率良く半導体ウェハーWを加熱することができる。
【0109】
また、熱処理装置1,201,301,401において、複数のLEDランプ45により加熱される。このため、さらに効率よく半導体ウェハーWを加熱することができる。
【0110】
また、熱処理装置1,201,301,401において、複数のLEDランプ45は載置板44上に配置される。また、熱処理装置1,201,301,401は、載置板44を冷却する冷却機構をさらに備える。このため、LEDランプ45の冷却が促進される。これにより、LEDランプ45の過度な温度上昇を防止することができる。
【0111】
また、熱処理装置1,301,401は、フラッシュ光を照射することによって半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプFLをさらに備える。このため、半導体ウェハーWを急速に昇温することができる。
【0112】
また、熱処理装置1,301,401は、フラッシュランプFLから出射された光から所定波長の光をカットするフィルタ90を発光面47,347と半導体ウェハーWとの間に備える。このため、フラッシュランプFLからのフラッシュ光が、発光面47,347からLEDランプ45に到達することが防止される。このため、LEDランプ45の損傷を防止することができる。
【0113】
<以上に記載された実施の形態の変形例について>
以上に記載された実施の形態では、それぞれの構成要素の材質、材料、寸法、形状、相対的配置関係または実施の条件などについても記載する場合があるが、これらはすべての局面においてひとつの例であって、本願明細書に記載されたものに限られることはないものとする。
【0114】
したがって、例が示されていない無数の変形例、および、均等物が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。たとえば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの実施の形態における少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態における構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【0115】
上述の実施形態においては、発光面47,247,347が筐体41の内側に形成される構成が採用されるが、発光面47,247,347は筐体41の外側に形成される構成であってもよい。例えば、チャンバー6の内部に形成されてもよい。この場合、石英の下側チャンバー窓64は不要となるため、チャンバー6の底壁をステンレスで形成し、その底壁を複数の光ファイバー46の束が貫通するようにすれば良い。
【0116】
また、上述の実施形態においては、フィルタ90が発光面47,347の直上に配置される構成が採用されるが、発光面47の上側に設置される下側チャンバー窓64の直下にフィルタ90が設置されてもよい。さらに、フィルタ90が、チャンバー6内であって下側チャンバー窓64の直上位置に設置されてもよい。
【0117】
また、上述の実施形態においては、発光素子としてLEDランプ45が採用されているが、これに限定されない。発光素子はLEDランプ45に限定されるものではなく、例えばレーザーダイオードであっても良い。
【0118】
また、上述の実施形態においては、複数のLEDランプ45が同心円状に配置されているが、これに限定されるものではない。例えば、複数のLEDランプ45を等間隔で格子状に配置されてもよい。
【0119】
また、上述の実施形態においては、複数の光ファイバー46,246の他方端は、金属材料(例えば、ステンレススチール)の板42,242,342に設けられた複数の貫通孔42a,242a,342aに挿入されることにより固定されているが、これに限定されるものではない。例えば、結束バンドにより束ねられることで固定されてもよい。結束バンドは図示されない支持部材により発光面47がチャンバー6内の半導体ウェハーWに向くように固定されてもよい。
【0120】
また、上述の実施形態においては、半導体ウェハーWの下側に配置されるLEDランプ45と、半導体ウェハーWの上側に配置されるLEDランプ245とが採用されているが、これに限定されない。LEDランプが半導体ウェハーWの側面に配置されてもよいし、LEDランプに接続される発光面が半導体ウェハーWの側面に配置される構成が採用されてもよい。
【0121】
また、
図15は、第1実施形態の変形例における熱処理装置501の構成を概略的に示す断面図である。また、
図16は、
図15におけるチャンバー側部561の平面を概略的に示す平面図である。
【0122】
第1実施形態の熱処理装置1においては、発光面47は半導体ウェハーWの主面に沿って互いに平行となるように平面状に配置されるが、このような発光面47の配置に限定されない。例えば、
図15に示す熱処理装置501のような構成が採用されてもよい。
【0123】
具体的には、
図15に示すように、一部のLEDランプ545から接続される一部の光ファイバー546の他方端はチャンバー側部561に挿入されることで形成された発光面547がチャンバー506の側部から半導体ウェハーWの方向に向けられてもよい。
【0124】
詳細には、チャンバー側部561には、加熱用貫通孔561aが形成されている。加熱用貫通孔561aは、後述する光ファイバー546および発光面547をチャンバー506の内側に導くための円筒状の孔である。加熱用貫通孔561aの熱処理空間565に臨む側の端部には、発光面547からの光を透過させる石英からなる透明窓521が装着されている。
【0125】
発光面547は半導体ウェハーWの方向に光を照射するように加熱用貫通孔561aに配置される。このとき、発光面547は、半導体ウェハーWの周縁部または側部を向くように配置されることが好ましい。この理由は以下の通りである。半導体ウェハーWの周縁部は特に放熱が生じやすいと考えられ、半導体ウェハーWの周縁部の温度が中央部よりも低下する傾向にある。このため、半導体ウェハーWの周縁部へ向けられる光の量が、半導体ウェハーWの中央部に向けられる光の量よりも多い方が、半導体ウェハーWの温度の面内均一性が向上するためである。
【0126】
また、
図16に示すように、加熱用貫通孔561aは、チャンバー側部561の周囲に複数箇所(
図16の例では6箇所)形成される。また、半導体ウェハーWの温度の面内均一性向上の観点から、複数の加熱用貫通孔561aが半導体ウェハーWの周囲に略等間隔に形成されることが好ましい。
【0127】
なお、
図15および
図16において図示を省略しているが、発光面547と半導体ウェハーWとの間にフィルタ90が備えられても良い。
【0128】
また、以上に記載された実施の形態において、特に指定されずに材料名などが記載された場合は、矛盾が生じない限り、当該材料に他の添加物が含まれた、たとえば、合金などが含まれるものとする。
【符号の説明】
【0129】
1,201,301,401,501 熱処理装置
3 制御部
4,304 LED加熱部
5 フラッシュ加熱部
6,506 チャンバー
7 保持部
10 移載機構
11 移載アーム
12 リフトピン
13 水平移動機構
14 昇降機構
20 放射温度計
21,521 透明窓
41,51,241 筐体
42,242,342 板
42a,242a,342a 貫通孔
44,244 載置板
44a 循環経路
44b 外部ポンプ
45,245,545 LEDランプ
46,246,546 光ファイバー
46a 一方端
46b 他方端
47,247,347,547 発光面
48 接続管
49,249 電力供給部
52 リフレクタ
53 ランプ光放射窓
61,561 チャンバー側部
61a 貫通孔
62 凹部
63 上側チャンバー窓
64 下側チャンバー窓
65,565 熱処理空間
66 搬送開口部
68,69 反射リング
71 基台リング
72 連結部
74 サセプタ
75 保持プレート
75a 保持面
76 ガイドリング
77 基板支持ピン
78 開口部
79 貫通孔
81 ガス供給孔
84,89 バルブ
85 処理ガス供給源
86 ガス排気孔
87 緩衝空間
88 ガス排気管
90 フィルタ
185 ゲートバルブ
190 排気部
205 上側LED加熱部
443 集光レンズ
561a 加熱用貫通孔
CX 中心軸
FL フラッシュランプ
L 距離
T1 予備加熱温度
T2 処理温度
W 半導体ウェハー