(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131255
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】複合熱遮蔽材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D04H 1/4382 20120101AFI20230914BHJP
D04H 1/4209 20120101ALI20230914BHJP
D04H 1/4291 20120101ALI20230914BHJP
D04H 1/4309 20120101ALI20230914BHJP
D04H 1/435 20120101ALI20230914BHJP
D04H 1/732 20120101ALI20230914BHJP
D21H 13/38 20060101ALI20230914BHJP
D21H 13/14 20060101ALI20230914BHJP
D21H 13/24 20060101ALI20230914BHJP
D21H 13/16 20060101ALI20230914BHJP
D21H 17/68 20060101ALI20230914BHJP
H01M 10/658 20140101ALN20230914BHJP
H01M 50/262 20210101ALN20230914BHJP
【FI】
D04H1/4382
D04H1/4209
D04H1/4291
D04H1/4309
D04H1/435
D04H1/732
D21H13/38
D21H13/14
D21H13/24
D21H13/16
D21H17/68
H01M10/658
H01M50/262 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035882
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】391029509
【氏名又は名称】イソライト工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【弁理士】
【氏名又は名称】辻川 典範
(72)【発明者】
【氏名】杉山 勝
(72)【発明者】
【氏名】兪 知樹
【テーマコード(参考)】
4L047
4L055
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
4L047AA01
4L047AA04
4L047AA05
4L047AA08
4L047AA13
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4L055AF01
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4L055AG18
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4L055FA11
4L055FA30
4L055GA01
5H031AA00
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5H031BB03
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5H040AA27
5H040AA36
5H040AS01
5H040AS07
5H040LL04
5H040LL06
(57)【要約】
【課題】 厚みを数mm程度に薄くしても熱遮蔽性及び圧縮特性に優れた複合熱遮蔽材を提供する。
【解決手段】 アルカリアースシリケート繊維などの無機繊維を55~97質量%、ポリエチレン繊維などの有機繊維を3~45質量%、及びシリカ微粒子などの無機粒子を0~30質量%含む繊維成形体からなる複合熱遮蔽材であって、これら無機繊維及び有機繊維が単繊維の形態で3次元的に分散し、且つ該無機繊維同士が該有機繊維を介して溶着しており、好ましくはかさ密度が300kg/m3以上であり、3MPaの圧縮圧力を加えたときの圧縮歪が50%以下である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機繊維を55~97質量%、有機繊維を3~45質量%、及び無機粒子を0~30質量%含む繊維成形体からなる複合熱遮蔽材であって、前記無機繊維及び前記有機繊維が単繊維の形態で3次元的に分散し、且つ該無機繊維同士が該有機繊維を介して溶着していることを特徴とする複合熱遮蔽材。
【請求項2】
前記繊維成形体はかさ密度が300kg/m3以上であり、3MPaの圧縮圧力を加えたときの圧縮歪が50%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の複合熱遮蔽材。
【請求項3】
前記無機繊維がアルカリアースシリケート繊維、ムライト繊維、アルミナ・シリケート繊維、アルミナ繊維、ガラス繊維、及びシリカ繊維からなる群のうち1種以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の複合熱遮蔽材。
【請求項4】
前記有機繊維がポリエチレン繊維、ポリエチレン/ポリプロピレンの芯鞘構造繊維、ポリエステル繊維、及びポリビニルアルコール繊維からなる群のうち1種以上であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の複合熱遮蔽材。
【請求項5】
前記無機粒子がシリカ微粒子であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の複合熱遮蔽材。
【請求項6】
無機繊維を55~97質量%、有機繊維を3~45質量%、及び無機粒子を0~30質量%含む原料と、該原料100質量部に対して3~5質量部のバインダーとを水に添加して撹拌することで無機繊維及び有機繊維が単繊維の形態で分散したスラリーを調製する工程と、該スラリーを脱水して積層体を形成する工程と、該積層体を乾燥処理した後、加熱プレスする工程とからなることを特徴とする複合熱遮蔽材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合熱遮蔽材及びその製造方法に関し、特に無機繊維及び有機繊維からなる繊維成形体の形態を有する熱遮蔽性及び圧縮特性に優れた複合熱遮蔽材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯用電子機器等において既に実用化されているリチウムイオン二次電池に代表される充放電可能な二次電池は、再生可能エネルギーの蓄電や電気自動車等の用途において今後ますます需要拡大することが見込まれている。これら蓄電や電気自動車のバッテリーに二次電池を用いる場合は、その容量ができるだけ大容量であることが好ましく、このため、電解質を挟んで対向する1対の正極及び負極で構成される電池セルを直列又は並列に接続してケース内に収めたモジュールが一般的に用いられている。
【0003】
上記のモジュールの形態では、複数個の電池セルが近接して配置されるため、何らかの要因で発熱した1つの電池セルの熱が他の電池セルに伝熱することのないように、熱遮蔽材が互いに隣接する電池セルの間に設けられている。また、各電池セルは内部の充放電反応に伴って発熱と吸熱を繰り返すので、上記の熱遮蔽材には、断熱性だけでなく電池セルの上記熱による膨張及び収縮時に生ずる圧縮応力に耐える優れた圧縮特性を有している必要がある。更に、電気自動車のバッテリーのようにモジュール形態の二次電池は限られた空間内に設置されることが多いので、熱遮蔽材は厚みができるだけ薄いことが要望される。
【0004】
圧縮特性に優れた断熱材は、成形プレス用クッション材や車両の吸音材の用途においては様々な種類のものが提案されており、例えば特許文献1には、有機又は無機繊維の抄造紙に平均粒径20~250μmの微細な弾性体粉末を均一に分散させることで耐久性を高めた成形プレス用のクッション材が開示されている。また、特許文献2及び3には、高耐熱性の無機繊維を主成分とし、低融点の有機繊維を混綿させた屈曲可能な不繊マット状の断熱吸音材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-229097号公報
【特許文献2】特開2008-223165号公報
【特許文献3】特登05208434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1に記載のクッション材は、成形プレス機のように常温で用いられる機器に用いる場合は所望のクッション性能を維持できると考えられるが、抄造紙に全体に亘って均一に分散させる弾性体粉末に天然ゴムなどのゴム材が用いられているため、高温になったときにクッション材自体が過度に収縮するおそれがあり、よって二次電池の熱遮蔽材としての用途には適していないと考えられる。
【0007】
特許文献2の断熱材は、無機繊維と有機繊維とを混綿して断熱材を形成する工程に、原料繊維を空気流に乗せて均一に分散させた後に網上にマット素材として積層する乾式のエアレイド製法を用いるため、原料繊維を単繊維まで分散させにくく、最終的に得られる断熱材に繊維塊が混在すると考えられる。この場合は、断熱材の密度にムラが生じるので、二次電池の熱遮蔽材として例えば数mm程度の厚さにしたときに、所望の熱遮蔽性や圧縮特性を満たさなくなるおそれがある。更に、特許文献2の断熱材はかさ密度が13kg/m3程度と極めて小さいため、二次電池の熱遮蔽材としての用途では十分な圧縮特性を期待することができない。
【0008】
特許文献3の技術は、原料の無機繊維に対して、難燃剤で処理した有機繊維を単に混綿して断熱材の基材となるウェブを形成するものであるため、これら繊維を単繊維まで分散させることは困難であり、よって該ウェブを熱処理した後にニードルパンチ加工することで得た断熱材は、特に厚みを数mm程度に薄くしたとき、密度にムラのある材料になってしまう。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、厚みを数mm程度に薄くしても熱遮蔽性及び圧縮特性に優れた熱遮蔽材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る複合熱遮蔽材は、無機繊維を55~97質量%、有機繊維を3~45質量%、及び無機粒子を0~30質量%含む繊維成形体からなる複合熱遮蔽材であって、前記無機繊維及び前記有機繊維が単繊維の形態で3次元的に分散し、且つ該無機繊維同士が該有機繊維を介して溶着していることを特徴としている。
【0011】
また、本発明に係る複合熱遮蔽材の製造方法は、無機繊維を55~97質量%、有機繊維を3~45質量%、及び無機粒子を0~30質量%含む原料と、該原料100質量部に対して3~5質量部のバインダーとを水に添加して撹拌することで無機繊維及び有機繊維が単繊維の形態で分散したスラリーを調製する工程と、該スラリーを脱水して積層体を形成する工程と、該積層体を乾燥処理した後、加熱プレスする工程とからなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、厚みを数mm程度に薄くしても熱遮蔽性及び圧縮特性に優れた複合熱遮蔽材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態の複合熱遮蔽材について説明する。この本発明の実施形態の複合熱遮蔽材は、無機繊維を55~97質量%、有機繊維を3~45質量%、及び無機粒子を0~30質量%の範囲で含む繊維成形体からなる。また、この繊維成形体を構成する無機繊維及び有機繊維は単繊維の形態で3次元的にほぼ均一に分散しており、且つ該無機繊維同士が該有機繊維を介して溶着している。これにより、該繊維成形体は複合熱遮蔽材として用いたときに優れた熱遮蔽性(遮熱性とも称する)と及び圧縮特性の効果を奏することができる。
【0014】
具体的には、本発明の実施形態の複合熱遮蔽材においては、繊維成形体のかさ密度を300kg/m3以上にすることができ、また、3MPaの圧縮圧力を加えたときの圧縮歪を50%以下にすることができる。ここで、圧縮歪とは、下記式1に示すように所定の圧力を一方向から加えたときに、その方向に圧縮されて減少した厚み減少分Δtを圧縮前の全体の厚みtで除して100をかけた値であり、圧縮歪が50%以下であれば、圧縮特性に優れていると判断することができる。このかさ密度が300kg/m3未満では、有機繊維分解時に復元しにくくなって、十分な熱遮蔽性が得られなくなるおそれがある。
[式1]
圧縮歪[%]=Δt/t×100
【0015】
上記の無機繊維は、アルカリアースシリケート繊維等の生体内低残存性繊維、ムライト繊維、アルミナ・シリケート繊維、アルミナ繊維、ガラス繊維、及びシリカ繊維等からなる群のうちの1種以上であるのが好ましい。複合熱遮蔽材として使用する温度条件や用途等に応じて、上記の無機繊維の群の中から1種類又は複数種類が適宜選択される。
【0016】
上記の無機繊維の平均繊維径は1~10μmが好ましく、3~6μmがより好ましい。この平均繊維径が1μm未満では、無機繊維自体の機械的強度が弱くなりすぎて耐久性や取り扱い上の問題が生じるおそれがある。なお、人体の健康に及ぼす影響を考慮すると3μm以上が好ましい。一方、この平均繊維径が10μmより大きいと、無機繊維自体の固体伝熱が高くなりすぎて所望の熱遮蔽性が達成されなくなるおそれがある。平均繊維径が6μm以下になると固体伝熱の影響がほとんどなくなるのでより好ましい。なお、上記の平均繊維径は、測定対象となる無機繊維群を電子顕微鏡で撮像し、得られた画像内の任意の200本の無機繊維に対して、それらの任意の部分の幅を計測して算術平均したものである。
【0017】
また、上記の無機繊維の平均繊維長は0.1~5mmが好ましく、0.5~3mmがより好ましい。この平均繊維長が0.1mm未満では無機繊維同士が絡み合いにくくなって、機械的強度が弱くなりすぎるおそれがある。平均繊維長が0.5mm以上であるとこの問題がほとんど生じないのでより好ましい。一方、この平均繊維長が5mmを超えると、無機繊維同士が絡み合った塊が生じやすくなるため、結果的に繊維成形体のかさ密度が不均一になると共に、機械的強度も弱くなる。平均繊維長が3mm未満ではこの問題がほとんど生じないのでより好ましい。なお、上記の平均繊維長は、測定対象となる無機繊維群を電子顕微鏡で撮像し、得られた画像内の任意の100本の無機繊維に対して、それらの長手方向の端から端までの直線距離を計測して算術平均したものである。
【0018】
上記の有機繊維には、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエチレン繊維及びポリエチレン/ポリプロピレンの芯鞘構造繊維からなる群のうち1種以上を用いることが好ましい。複合熱遮蔽材として使用する温度条件や用途等に応じて、上記の有機繊維の群の中から1種類又は複数種類が適宜選択される。なお、上記の芯鞘構造繊維とは、ポリプロピレンからなる芯部と、これを略同芯軸状に囲むポリエチレンからなる鞘部との二重構造を有する繊維のことである。
【0019】
本発明の実施形態の複合熱遮蔽材は、上記のように骨材として更に無機粒子を30質量%以下の範囲内で含んでもよい。このように無機粒子を添加することにより熱遮蔽性をより一層向上させることができる。但し、無機粒子の含有量が30質量%を超えると後述する湿式による繊維成形体の形成時にスラリーのろ過抵抗が大きくなりすぎる問題が生じうる。上記の無機粒子の添加の効果を奏させるには含有率が1質量%以上であることが好ましい。上記の無機粒子の種類には特に限定はないが、シリカ微粒子を用いることが好ましい。上記の無機粒子の粒度も特に限定はないが、平均粒子径D50が1~100μm程度であるのが好ましい。なお、平均粒子径D50は、レーザー回折式粒度分布測定装置により求めた体積基準の粒度分布における積算値50%での粒径である。
【0020】
次に、上記した本発明の実施形態の複合熱遮蔽材の製造方法について説明する。この製造方法は、先ず無機繊維を55~97質量%、有機繊維を3~45質量%、及び無機粒子を0~30質量%含む複合熱遮蔽材を作製すべく、上記の範囲内の所定の配合割合となるように秤量した原料と、該原料の100質量部に対して3~5質量部のバインダーとを予め容器内に張り込んでおいた水に添加し、該容器に設けられている撹拌機で撹拌する。これにより、無機繊維及び有機繊維がほぼ単繊維の形態で水中内に均一に分散したスラリーが調製される。このスラリーの固形分濃度は特に限定はないが、0.5~1.0質量%程度が好ましい。
【0021】
上記の有機繊維の含有率が3質量%より少ないと後工程の加熱プレス後に得られる成形体において無機繊維同士を十分に溶着させることができなくなるので、厚みを数mm程度に薄くしたときに所望のかさ密度や圧縮特性が得られなくなる。また、高温条件下に複合熱遮蔽材が晒されてその有機繊維が分解したときに復元しにくくなる。逆に45質量%を超えて有機繊維を添加すると、上記の高温条件下に晒されたときに分解する量が大きくなりすぎ、熱遮蔽性が著しく低下する。なお、単繊維の分散性を向上させるため、界面活性剤等の分散剤又はシリカゾル等をスラリーに配合しても良い。
【0022】
上記のバインダーには、セルロース繊維、アクリルラテックス、又はデンプン等の有機バインダーを用いることが好ましい。これらの中では、シート状に形成したときに複合熱遮蔽材の柔軟性を高めることができるのでアクリルラテックスが好ましい。また、上記の有機バインダーが分解した後においてもある程度強度を確保するために、必要に応じてコロイダルシリカ等の無機バインダーを添加しても良い。
【0023】
上記にて調製したスラリーを例えば1対のローラー及びこれらに架け渡されたメッシュ状ベルトで構成される無限軌道の該ベルト上に供給する。これにより、スラリー中で3次元的に複雑に絡み合って構成される単繊維からなる無機繊維及び有機繊維のフロック(凝集体)が、該ベルトの上で脱水(ろ過)されながら積層するので、シート状の積層体を連続的に形成することが可能になる。得られた積層体を、好ましくは100~110℃程度の温度条件下で乾燥処理することにより、共に単繊維の形態を有する有機繊維及び無機繊維が3次元的に絡み合った構造の成形体が形成される。
【0024】
この成形体を次に加熱プレス機で圧力をかけながら130~150℃程度で熱処理する。これにより、有機繊維の一部又は全体が溶融することで、絡み合った状態の無機繊維同士を有機繊維を介して溶着させることができる。これにより、密度に関してムラのないかさ密度300kg/m3以上で、且つ圧縮歪50%以下の複合熱遮蔽材を製造することができる。この複合熱遮蔽材は、異常な高温条件にさらされたとき、均一に分散した有機繊維が加熱面側から全体的に分解していくので、該有機繊維によって弾性変形したまま拘束されていた無機繊維が元の形状に復元することで、遮熱性が向上する。なお、複合熱遮蔽材の形状には特に限定はなく、複合熱遮蔽材として利用される二次電池等の形状に応じて適宜サイズや厚みが定められる。
【実施例0025】
[実施例1]
アルカリアースシリケート繊維70質量%、ポリエチレン/ポリプロピレンの芯鞘構造繊維25質量%、及び微少繊維状セルロース(固形分25%)5%の配合割合となるように調整した原料及びバインダーを水に添加し、撹拌により分散及び混合してスラリーを調製した。このスラリーを抄紙機に供給して形成した湿紙を100℃の空気中で乾燥処理して厚み4.7mm、かさ密度150kg/m3のシートを得た。このシートを設定温度150℃、プレス圧0.5MPaで加熱プレスして、厚み1.5mm、かさ密度470kg/m3の複合熱遮蔽材を得た。
【0026】
得られた複合熱遮蔽材を下記の方法で評価した。すなわち、先ず圧縮特性を評価するため、複合熱遮蔽材を3MPaで加圧したときの圧縮歪を測定したところ48%であった。次に遮熱性を評価するため、天井部分の一部を開放した電気炉に複合熱遮蔽材をセットし、該複合熱遮蔽材の加熱面と非加熱面の両表面に熱電対を取り付けた。そして、25℃から700℃まで昇温したときの昇温曲線を求めた。その結果、加熱面が700℃に到達した時点での非加熱面の温度は281℃であった。
【0027】
[実施例2]
アルカリアースシリケート繊維85質量%、ポリエチレン/ポリプロピレンの芯鞘構造繊維10質量%、及び微少繊維状セルロース(固形分25%)5%の配合割合となるように調整した原料及びバインダーを水に添加し、撹拌により分散及び混合してスラリーを調製した。このスラリーを抄紙機に供給して形成した湿紙を100℃の空気中で乾燥処理して厚み4.5mm、かさ密度140kg/m3のシートを得た。このシートを設定温度150℃、プレス圧0.5MPaで加熱プレスして、厚み1.5mm、かさ密度420kg/m3の複合熱遮蔽材を得た。得られた複合熱遮蔽材に対して実施例1と同様に圧縮特性及び遮熱性を評価したところ、3MPa加圧時の圧縮歪は47%であり、加熱面が700℃到達時点での非加熱面の温度は275℃であった。
【0028】
[実施例3]
無機繊維をアルカリアースシリケート繊維に代えてAl2O3が72質量%のムライト繊維にした以外は実施例1と同様にして複合熱遮蔽材を作製した。得られた複合熱遮蔽材は厚み1.5mm、かさ密度390kg/m3であった。この複合熱遮蔽材に対して実施例1と同様に圧縮特性及び遮熱性を評価したところ、3MPa加圧時の圧縮歪は48%であり、加熱面が700℃到達時点での非加熱面の温度は280℃であった。
【0029】
[実施例4]
アルカリアースシリケート繊維75質量%、ポリエチレン繊維20質量%、微少繊維状セルロース(固形分25%)5%の配合割合となるように調整した原料及びバインダーを水に添加し、撹拌により分散及び混合してスラリーを調製した。このスラリーを抄紙機に供給して形成した湿紙を100℃の空気中で乾燥処理して厚み4.8mm、かさ密度140kg/m3のシートを得た。このシートを設定温度150℃、プレス圧0.5MPaで加熱プレスして、厚み1.5mm、かさ密度450kg/m3の複合熱遮蔽材を得た。得られた複合熱遮蔽材に対して実施例1と同様に圧縮特性及び遮熱性を評価したところ、3MPa加圧時の圧縮歪は46%であり、加熱面が700℃到達時点での非加熱面の温度は279℃であった。
【0030】
[実施例5]
有機繊維を微少繊維状セルロース(固形分25%)に代えてアクリルラテックス(固形分45%)にした以外は実施例4と同様にして複合熱遮蔽材を作製した。得られた複合熱遮蔽材は厚み1.5mm、かさ密度460kg/m3であった。この複合熱遮蔽材に対して実施例1と同様に圧縮特性及び遮熱性を評価したところ、3MPa加圧時の圧縮歪は44%であり、加熱面が700℃到達時点での非加熱面の温度は274℃であった。
【0031】
[実施例6]
アルカリアースシリケート繊維65質量%、ポリエチレン/ポリプロピレンの芯鞘構造繊維20質量%、無機粒子のシリカ微粒子10質量%、アクリルラテックス(固形分45%)5%の配合割合となるように調整した原料及びバインダーを水に添加し、撹拌により分散及び混合してスラリーを調製した。このスラリーを抄紙機に供給して形成した湿紙を100℃の空気中で乾燥処理して厚み3.6mm、かさ密度210kg/m3のシートを得た。このシートを設定温度150℃、プレス圧0.5MPaで加熱プレスして、厚み1.5mm、かさ密度500kg/m3の複合熱遮蔽材を得た。得られた複合熱遮蔽材に対して実施例1と同様に圧縮特性及び遮熱性を評価したところ、3MPa加圧時の圧縮歪は43%であり、加熱面が700℃到達時点での非加熱面の温度は253℃であった。
【0032】
[実施例7]
アルカリアースシリケート繊維55質量%、ポリエチレン/ポリプロピレンの芯鞘構造繊維20質量%、無機粒子のシリカ微粒子20質量%、アクリルラテックス(固形分45%)5%の配合割合となるように調整した原料及びバインダーを水に添加し、撹拌により分散及び混合してスラリーを調製した。このスラリーを抄紙機に供給して形成した湿紙を100℃の空気中で乾燥処理して厚み3.6mm、かさ密度220kg/m3のシートを得た。このシートを設定温度150℃、プレス圧0.5MPaで加熱プレスして、厚み1.5mm、かさ密度530kg/m3の複合熱遮蔽材を得た。得られた複合熱遮蔽材に対して実施例1と同様に圧縮特性及び遮熱性を評価したところ、3MPa加圧時の圧縮歪は45%であり、加熱面が700℃到達時点での非加熱面の温度は250℃であった。
【0033】
[実施例8]
アルカリアースシリケート繊維92質量%、ポリエチレン/ポリプロピレンの芯鞘構造繊維3質量%、及び微少繊維状セルロース(固形分25%)5%の配合割合となるように調整した原料及びバインダーを水に添加し、撹拌により分散及び混合してスラリーを調製した。このスラリーを抄紙機に供給して形成した湿紙を100℃の空気中で乾燥処理して厚み3.0mm、かさ密度180kg/m3のシートを得た。このシートを設定温度150℃、プレス圧0.5MPaで加熱プレスして、厚み1.5mm、かさ密度360kg/m3の複合熱遮蔽材を得た。得られた複合熱遮蔽材に対して実施例1と同様に圧縮特性及び遮熱性を評価したところ、3MPa加圧時の圧縮歪は48%であり、加熱面が700℃到達時点での非加熱面の温度は270℃であった。
【0034】
[実施例9]
アルカリアースシリケート繊維58質量%、ポリエチレン/ポリプロピレンの芯鞘構造繊維37質量%、及び微少繊維状セルロース(固形分25%)5%の配合割合となるように調整した原料及びバインダーを水に添加し、撹拌により分散及び混合してスラリーを調製した。このスラリーを抄紙機に供給して形成した湿紙を100℃の空気中で乾燥処理して厚み4.5mm、かさ密度120kg/m3のシートを得た。このシートを設定温度150℃、プレス圧0.5MPaで加熱プレスして、厚み1.5mm、かさ密度480kg/m3の複合熱遮蔽材を得た。得られた複合熱遮蔽材に対して実施例1と同様に圧縮特性及び遮熱性を評価したところ、3MPa加圧時の圧縮歪は47%であり、加熱面が700℃到達時点での非加熱面の温度は298℃であった。
【0035】
[実施例10]
アルカリアースシリケート繊維55質量%、ポリエチレン/ポリプロピレンの芯鞘構造繊維10質量%、無機粒子のシリカ微粒子30質量%、アクリルラテックス(固形分45%)5%の配合割合となるように調整した原料及びバインダーを水に添加し、撹拌により分散及び混合してスラリーを調製した。このスラリーを抄紙機に供給して形成した湿紙を100℃の空気中で乾燥処理して厚み4.5mm、かさ密度180kg/m3のシートを得た。このシートを設定温度150℃、プレス圧0.5MPaで加熱プレスして、厚み1.5mm、かさ密度540kg/m3の複合熱遮蔽材を得た。得られた複合熱遮蔽材に対して実施例1と同様に圧縮特性及び遮熱性を評価したところ、3MPa加圧時の圧縮歪は43%であり、加熱面が700℃到達時点での非加熱面の温度は246℃であった。
【0036】
[実施例11]
無機繊維をアルカリアースシリケート繊維に代えてアルミナ・シリケート繊維にした以外は実施例1と同様にして複合熱遮蔽材を作製した。得られた複合熱遮蔽材は厚み1.5mm、かさ密度420kg/m3であった。この複合熱遮蔽材に対して実施例1と同様に圧縮特性及び遮熱性を評価したところ、3MPa加圧時の圧縮歪は47%であり、加熱面が700℃到達時点での非加熱面の温度は275℃であった。
【0037】
[実施例12]
無機繊維をアルカリアースシリケート繊維に代えてアルミナ繊維にした以外は実施例1と同様にして複合熱遮蔽材を作製した。得られた複合熱遮蔽材は厚み1.5mm、かさ密度400kg/m3であった。この複合熱遮蔽材に対して実施例1と同様に圧縮特性及び遮熱性を評価したところ、3MPa加圧時の圧縮歪は48%であり、加熱面が700℃到達時点での非加熱面の温度は278℃であった。
【0038】
[実施例13]
無機繊維をアルカリアースシリケート繊維に代えてガラス繊維にした以外は実施例1と同様にして複合熱遮蔽材を作製した。得られた複合熱遮蔽材は厚み1.5mm、かさ密度390kg/m3であった。この複合熱遮蔽材に対して実施例1と同様に圧縮特性及び遮熱性を評価したところ、3MPa加圧時の圧縮歪は45%であり、加熱面が700℃到達時点での非加熱面の温度は277℃であった。
【0039】
[実施例14]
無機繊維をアルカリアースシリケート繊維に代えてシリカ繊維にした以外は実施例1と同様にして複合熱遮蔽材を作製した。得られた複合熱遮蔽材は厚み1.5mm、かさ密度380kg/m3であった。この複合熱遮蔽材に対して実施例1と同様に圧縮特性及び遮熱性を評価したところ、3MPa加圧時の圧縮歪は43%であり、加熱面が700℃到達時点での非加熱面の温度は275℃であった。
【0040】
[実施例15]
有機繊維をポリエチレン/ポリプロピレンの芯鞘構造繊維に代えてポリエステル繊維にした以外は実施例1と同様にして複合熱遮蔽材を作製した。得られた複合熱遮蔽材は厚み1.5mm、かさ密度480kg/m3であった。この複合熱遮蔽材に対して実施例1と同様に圧縮特性及び遮熱性を評価したところ、3MPa加圧時の圧縮歪は47%であり、加熱面が700℃到達時点での非加熱面の温度は279℃であった。
【0041】
[実施例16]
有機繊維をポリエチレン/ポリプロピレンの芯鞘構造繊維に代えてポリビニルアルコール繊維にした以外は実施例1と同様にして複合熱遮蔽材を作製した。得られた複合熱遮蔽材は厚み1.5mm、かさ密度470kg/m3であった。この複合熱遮蔽材に対して実施例1と同様に圧縮特性及び遮熱性を評価したところ、3MPa加圧時の圧縮歪は48%であり、加熱面が700℃到達時点での非加熱面の温度は277℃であった。
【0042】
[実施例17]
アルカリアースシリケート繊維、ムライト繊維、アルミナ・シリケート繊維、アルミナ繊維、ムライト繊維、ガラス繊維、及びシリカ繊維を各々10質量%、ポリエチレン/ポリプロピレンの芯鞘構造繊維25質量%、及び微少繊維状セルロース(固形分25%)5%の配合割合となるように調整した原料及びバインダーを水に添加し、撹拌により分散及び混合してスラリーを調製した。このスラリーを抄紙機に供給して形成した湿紙を100℃の空気中で乾燥処理して厚み4.5mm、かさ密度140kg/m3のシートを得た。このシートを設定温度150℃、プレス圧0.5MPaで加熱プレスして、厚み1.5mm、かさ密度410kg/m3の複合熱遮蔽材を得た。得られた複合熱遮蔽材に対して実施例1と同様に圧縮特性及び遮熱性を評価したところ、3MPa加圧時の圧縮歪は46%であり、加熱面が700℃到達時点での非加熱面の温度は280℃であった。
【0043】
[実施例18]
アルカリアースシリケート繊維65質量%、ポリエチレン/ポリプロピレンの芯鞘構造繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、及びポリビニルアルコール繊維を各々5質量%、無機粒子のシリカ微粒子10質量%、アクリルラテックス(固形分45%)5%の配合割合となるように調整した原料及びバインダーを水に添加し、撹拌により分散及び混合してスラリーを調製した。このスラリーを抄紙機に供給して形成した湿紙を100℃の空気中で乾燥処理して厚み4.5mm、かさ密度160kg/m3のシートを得た。このシートを設定温度150℃、プレス圧0.5MPaで加熱プレスして、厚み1.5mm、かさ密度490kg/m3の複合熱遮蔽材を得た。得られた複合熱遮蔽材に対して実施例1と同様に圧縮特性及び遮熱性を評価したところ、3MPa加圧時の圧縮歪は47%であり、加熱面が700℃到達時点での非加熱面の温度は255℃であった。
【0044】
[比較例1]
一般的なセラミックペーパーのように、アルカリアースシリケート繊維95質量%、微少繊維状セルロース(固形分25%)5%の配合割合となるように調整した原料及びバインダーを水に添加し、撹拌により分散及び混合してスラリーを調製した。このスラリーを抄紙機に供給して形成した湿紙を100℃の空気中で乾燥処理して厚み1.5mm、かさ密度200kg/m3のシートを得た。得られた複合熱遮蔽材に対して実施例1と同様に圧縮特性及び遮熱性を評価したところ、3MPa加圧時の圧縮歪は68%であり、加熱面が700℃到達時点での非加熱面の温度は339℃であった。このように、加熱プレスしていないため圧縮歪が大きく、遮熱性も不十分であった。
【0045】
[比較例2]
アルカリアースシリケート繊維50質量%、ポリエチレン/ポリプロピレンの芯鞘構造繊維45質量%、微少繊維状セルロース(固形分25%)5%の配合割合となるように調整した原料及びバインダーを水に添加し、撹拌により分散及び混合してスラリーを調製した。このスラリーを抄紙機に供給して形成した湿紙を100℃の空気中で乾燥処理して厚み4.3mm、かさ密度160kg/m3のシートを得た。このシートを設定温度150℃、プレス圧0.5MPaで加熱プレスして、厚み1.5mm、かさ密度460kg/m3の複合熱遮蔽材を得た。得られた複合熱遮蔽材に対して実施例1と同様に圧縮特性及び遮熱性を評価したところ、3MPa加圧時の圧縮歪は46%であり、加熱面が700℃到達時点での非加熱面の温度は325℃であった。このように、圧縮歪は小さく抑えることができたが、基材の有機繊維が多すぎることで遮熱性が不十分であった
【0046】