(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131264
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】情報処理装置、蓄電ユニットの状態表示方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/396 20190101AFI20230914BHJP
G01R 31/382 20190101ALI20230914BHJP
G01R 31/385 20190101ALI20230914BHJP
H01M 10/42 20060101ALI20230914BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
G01R31/396
G01R31/382
G01R31/385
H01M10/42 P
H01M10/48 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035899
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】籔 歳弘
【テーマコード(参考)】
2G216
5H030
【Fターム(参考)】
2G216AB01
2G216BA01
2G216BB01
2G216CD01
5H030AA10
5H030AS01
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】蓄電ユニットの状態を分かり易く表示すること。
【解決手段】複数の蓄電セルCを含む蓄電モジュールMを複数備える蓄電ユニットUの状態を表示する情報処理装置2は、表示部54と、記憶部52と、制御部51と、を備える。制御部51は、それぞれの蓄電モジュールMに含まれる複数の蓄電セルCの時系列の状態データを蓄電ユニットUから取得し、複数の蓄電モジュールMに対応する複数の表示領域72を表示部54に表示させ、それぞれの表示領域72に、ある時刻における、対応する蓄電モジュールMの蓄電セルCの状態データをグラフ表示させる、情報処理装置2。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電セルを含む蓄電モジュールを複数備える蓄電ユニットの状態を表示する情報処理装置であって、
表示部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
それぞれの前記蓄電モジュールに含まれる複数の前記蓄電セルの時系列の状態データを前記蓄電ユニットから取得し、
複数の前記蓄電モジュールに対応する複数の表示領域を前記表示部に表示させ、それぞれの前記表示領域に、ある時刻における、対応する前記蓄電モジュールの前記蓄電セルの状態データをグラフ表示させる、情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記複数の表示領域は、それぞれの第1方向のスケールを揃えた状態で並べて表示される、情報処理装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の情報処理装置であって、
前記複数の表示領域は、それぞれの第2方向が、対応する前記蓄電モジュール内の複数の前記蓄電セルの配置位置を示す、情報処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の情報処理装置であって、
前記表示領域に複数のマークが表示され、1つの前記マークが1つの前記蓄電セルの状態を示す、情報処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の情報処理装置であって、
前記時系列の状態データを記憶し、前記制御部が、グラフ表示のために前記情報処理装置外の装置と通信することなくアクセス可能な記録媒体と、
前記時刻の変更を受け付ける第1変更受付部と、
をさらに備える、情報処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の情報処理装置であって、
前記第1変更受付部は、前記表示部に表示される、スライダーバーと当該スライダーバー上を移動するスライダーとを有する、情報処理装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の情報処理装置であって、
前記制御部は、前記表示部に前記蓄電セルの状態データを表示させる前記蓄電ユニットの変更を受け付ける第2変更受付部を前記表示部に表示させる、情報処理装置。
【請求項8】
複数の蓄電セルを含む蓄電モジュールを複数備える蓄電ユニットの状態表示方法であって、
それぞれの前記蓄電モジュールに含まれる複数の前記蓄電セルの時系列の状態データを前記蓄電ユニットから取得し、
複数の前記蓄電モジュールに対応する複数の表示領域を表示部に表示させ、それぞれの前記表示領域に、ある時刻における、対応する前記蓄電モジュールの前記蓄電セルの状態データをグラフ表示させる、蓄電ユニットの状態表示方法。
【請求項9】
コンピュータに、複数の蓄電セルを含む蓄電モジュールを複数備える蓄電ユニットの状態を表示させるコンピュータプログラムであって、
それぞれの前記蓄電モジュールに含まれる複数の前記蓄電セルの時系列の状態データを前記蓄電ユニットから取得し、
複数の前記蓄電モジュールに対応する複数の表示領域を前記コンピュータの表示部に表示させ、それぞれの前記表示領域に、ある時刻における、対応する前記蓄電モジュールの前記蓄電セルの状態データをグラフ表示させる、
処理を前記コンピュータに実行させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、情報処理装置、蓄電ユニットの状態表示方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
大型の移動体の電源や再生可能エネルギーの蓄電用として、蓄電設備が使用されている。下記特許文献1には、電池の劣化率、満充電容量、充電状態(SOC)などの電池情報を表示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電設備は、典型的に、複数の蓄電モジュールを接続してなる蓄電ユニット(バンク、ブロック又はストリングなどとも呼ばれる)を備える。各蓄電モジュールは複数の蓄電セルを含む。蓄電設備の運用開始後に全ての蓄電セルから状態データ(運用ログデータ)が取得され、異常発生時などに参照できるよう蓄積される。大型の蓄電設備は蓄電セルの数が非常に多く、取得される状態データも膨大である。異常発生時の異常個所の特定と、蓄電設備の復旧とを迅速に行うために、蓄電ユニットの状態を分かり易く表示することに関し、改善の余地があった。
本発明の一態様は、蓄電ユニットの状態を分かり易く表示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
複数の蓄電セルを含む蓄電モジュールを複数備える蓄電ユニットの状態を表示する情報処理装置は、表示部と、制御部と、を備える。前記制御部は、それぞれの前記蓄電モジュールに含まれる複数の前記蓄電セルの時系列の状態データを前記蓄電ユニットから取得し、複数の前記蓄電モジュールに対応する複数の表示領域を前記表示部に表示させ、それぞれの前記表示領域に、ある時刻における、対応する前記蓄電モジュールの前記蓄電セルの状態データをグラフ表示させる。
【発明の効果】
【0006】
上記の構成によると、蓄電ユニットの状態を分かり易く表示できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態1に係る蓄電設備及び情報処理装置のブロック図
【
図9】実施形態2に係る蓄電設備及び情報処理装置のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態の概要]
(1)実施形態に係る情報処理装置は、複数の蓄電セルを含む蓄電モジュールを複数備える蓄電ユニットの状態を表示する。情報処理装置は、表示部と、制御部と、を備える。前記制御部は、それぞれの前記蓄電モジュールに含まれる複数の前記蓄電セルの時系列の状態データを前記蓄電ユニットから取得し、複数の前記蓄電モジュールに対応する複数の表示領域を前記表示部に表示させ、それぞれの前記表示領域に、ある時刻における、対応する前記蓄電モジュールの前記蓄電セルの状態データをグラフ表示させる。
【0009】
ここで「ある時刻」は、オペレータによって選択される任意の時点であってもよいし、予め定められた時刻であってもよい。「ある時刻」は、以下「第1時刻」とも称する。
蓄電ユニットの状態を把握するために、1つの蓄電モジュールに対応する1つの表示領域だけを表示部に表示させ、その表示領域に、ある時刻における1つの蓄電モジュールに含まれる蓄電セルの状態データをグラフ表示する方法が考えられる。しかしこの方法では、1つの蓄電モジュールの蓄電セルの状態が表示されるだけであるため、複数の蓄電モジュールの状態を比較し難い。そのため、異常発生時の異常個所の特定を迅速に行うことが困難である。
【0010】
上記(1)の情報処理装置によると、複数の蓄電モジュールに対応する複数の表示領域が表示部に表示され、それぞれの表示領域に、ある時刻における、対応する蓄電モジュールの蓄電セルの状態データがグラフ表示される。すなわち、ある時刻における複数の蓄電モジュールの蓄電セルの状態が、同時にグラフ表示される。このため、オペレータは複数の蓄電モジュールの状態を比較し易い。
よって上記の情報処理装置によると、蓄電ユニットの状態を分かり易く表示できる。異常発生時の異常個所の特定を迅速に行うことが可能となる。
ここで「蓄電ユニット」は、複数の蓄電モジュールを直列に接続して構成されたバンクであってもよいし、複数の蓄電モジュールを並列に接続して構成されてもよい。蓄電ユニットからの状態データの取得は、記録媒体経由で行われてもよいし、通信ネットワーク経由で行われてもよいし、その他の方法で行われてもよい。
【0011】
(2)前記複数の表示領域は、それぞれの第1方向のスケールを揃えた状態で並べて表示されてもよい。
【0012】
上記(2)の情報処理装置によると、それぞれの表示領域の第1方向のスケールが揃っているので、複数の蓄電モジュールの状態を視覚的に比較・把握し易い。
【0013】
(3)前記複数の表示領域は、それぞれの第2方向が、対応する前記蓄電モジュール内の複数の前記蓄電セルの配置位置を示してもよい。
【0014】
上記(3)の情報処理装置によると、それぞれの表示領域の第2方向の位置が蓄電モジュール内の複数の蓄電セルの配置位置を示しているので、表示されている状態データがどの蓄電セルの状態を示しているかを視覚的・直感的に把握し易い。
【0015】
(4)前記表示領域に複数のマークが表示され、1つの前記マークが1つの前記蓄電セルの状態を示してもよい。
【0016】
上記(4)の情報処理装置によると、それぞれの蓄電セルの状態が1つのマークで表示(表現)されるので、個々の蓄電セルの状態を視覚的・直感的に把握し易い。
ここで「マーク」は、ドットであってもよいがそれに限定はされず、文字やアイコンであってもよい。
【0017】
(5)前記情報処理装置は、前記時系列の状態データを記憶し、前記制御部が、グラフ表示のために前記情報処理装置外の装置と通信することなくアクセス可能な記録媒体と、前記時刻の変更を受け付ける第1変更受付部とをさらに備えてもよい。
【0018】
ここで「情報処理装置外の装置」とは、ネットワーク(いわゆるインターネットである公衆通信網、移動通信規格による無線通信を実現するキャリアネットワークを含む)を介して情報処理装置が通信可能な外部装置を意味し、例えば、蓄電ユニットの遠隔監視装置である。
【0019】
上記(5)の情報処理装置によると、制御部がアクセス可能な記録媒体に時系列の状態データが記憶されるため、ある時刻の状態を表示しているときに、第1変更受付部で時刻の変更を受け付けると、変更後の時刻における状態データが迅速に(タイムラグ少なくほぼリアルタイムに)表示される。このため、膨大な状態データを解析するオペレータの負担・ストレスを大幅に低減できる。
【0020】
(6)前記第1変更受付部は、前記表示部に表示される、スライダーバーと当該スライダーバー上を移動するスライダーとを有してもよい。
【0021】
時刻の変更を受け付ける方法としては、例えば時刻を進めるための「進むボタン」と、時刻を戻すための「戻るボタン」とを表示して変更を受け付ける方法が考えられる。この方法では、「進むボタン」が1回押下されると現在表示されている状態データ(第1時刻の状態データ)の直後に取得された状態データ(第2時刻の状態データ)がグラフ表示され、「戻るボタン」が1回押下されると現在表示されている状態データの直前に取得された状態データがグラフ表示される。状態データが1秒などの短い時間間隔で計測される場合、1分間の状態データの変化を把握するだけでもボタンを押下する操作が煩雑となる。
【0022】
上記(6)の情報処理装置によると、オペレータはスライダーを移動させることによって時刻を変更できる。このため、例えばコンピュータの入力装置であるマウスを用いてスライダーを移動させる場合は、1日分の状態データであってもマウスでスライダーをドラッグして移動させるあるいはマウスをスクロールしてスライダーを移動させるという簡単な操作で変化・推移を把握できる。表示部がタッチパネルである場合にも、スライダーは操作し易い。また、スライダーバーによって全体の期間を視覚的に把握しながら、スライダーの位置によって現在表示されている状態がどの時点のものかを把握できるため、膨大な状態データを解析するオペレータの負担・ストレスを大幅に低減できる。
【0023】
(7)前記制御部は、前記表示部に前記蓄電セルの状態データを表示させる前記蓄電ユニットの変更を受け付ける第2変更受付部を前記表示部に表示してもよい。
【0024】
上記(7)の情報処理装置によると、蓄電ユニット(例えば、バンク)が複数ある場合に、それぞれの蓄電ユニットの状態を分かり易く表示できる。
【0025】
[実施形態の詳細]
以下に、本開示の実施形態について説明する。本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
本開示の実施形態は装置、方法、これらの装置または方法の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の種々の態様で実現できる。
【0026】
<実施形態1>
(1)蓄電設備及び情報処理装置
図1を参照して、実施形態1に係る蓄電設備1及び情報処理装置2について説明する。実施形態1に係る蓄電設備1は、電気モータ12によって走行する大型の移動体11に搭載されて電気モータ12に電力を供給する設備である。大型の移動体11としては、港湾でコンテナを無人搬送する港湾AGV(Automatic Guided Vehicle)が例示される。蓄電設備1は、1000個以上の蓄電セルC(
図3参照)を備えている。
情報処理装置2は、蓄電設備1から蓄電セルCの時系列の状態データを取得してグラフ表示する装置である。情報処理装置2は状態表示装置と称することもできる。
【0027】
(1-1)蓄電設備
図2に示すように、蓄電設備1は並列に接続されている複数(例えば10個)の蓄電ユニットUと、複数の蓄電ユニットUを監視する統合監視部13とを備えている。蓄電ユニットUにはそれらの並び方向(
図2ではX1方向)の一方の側から他方の側に向かってユニット番号(U01からU10)が付与されている。
【0028】
(1-1-1)蓄電ユニット
蓄電ユニットUは直列に接続されている複数(例えば15個)の蓄電モジュールM、電流センサ20、電流遮断装置21及び個別監視部22を備えている。蓄電モジュールMにはそれらの並び方向(
図2ではX2方向)の一方の側から他方の側に向かってモジュール番号(M01からM15)が付与されている。
【0029】
図3に示すように、蓄電モジュールMは直列に接続されている複数(例えば12個)の蓄電セルC、電圧センサ30、及び、複数(例えば2つ)の温度センサ31(31A及び31B)を備えている。
【0030】
蓄電セルCは繰り返し充放電可能な二次電池であり、例えばリチウムイオン二次電池である。1つの蓄電モジュールMを構成している蓄電セルCにはそれらの並び方向(
図3ではX3方向)の一方の側から他方の側に向かってセル番号(C01からC12)が付与されている。
【0031】
電圧センサ30は直列に接続されている複数の蓄電セルCと並列に設けられている。電圧センサ30は各蓄電セルCの電圧値をそれぞれ所定の時間間隔(以下、時系列という)で計測して個別監視部22に出力する。
2つの温度センサ31は、蓄電セルCの並び方向に離間して配されている。2つの温度センサ31は、別々の蓄電セルCの温度を時系列で計測する。2つの温度センサ31は一方がメイン、他方がサブである。温度センサ31は計測した温度を個別監視部22に出力する。サブの温度センサ31を備えている理由は、メイン及びサブのいずれか一方の計測値が温度閾値を超過した場合に警報を発するためである。温度センサ31は1つだけであってもよい。
【0032】
図4に示すように、蓄電モジュールMは蓄電セルCを収容するケース32(保持部材)を有している。12個の蓄電セルCは互いに隣接した状態でケース32に収容されている。ケース32に代えて、複数の蓄電セルCを一まとまり(モジュール)に保持する保持フレームが用いられてもよい。
【0033】
図2に示すように、電流センサ20は蓄電モジュールMと直列に接続されている。電流センサ20は蓄電ユニットUから電気モータ12に流れる放電電流、及び、図示しない充電装置から蓄電ユニットUに流れる充電電流を時系列で計測して個別監視部22に出力する。
電流遮断装置21は、蓄電モジュールMと直列に接続されている。電流遮断装置21は常閉式であり、蓄電ユニットUに異常が発生したときにオープン(オフ)される。
【0034】
個別監視部22は、蓄電ユニットUの状態を監視する装置である。個別監視部22はCPUやRAMが1チップ化されたマイクロコンピュータ、各センサ(電流センサ20、電圧センサ30及び温度センサ31)が接続されているインタフェース、着脱可能な不揮発性の記録媒体40が接続されている外部インタフェース、及び、統合監視部13と通信するための通信部を備えている。記録媒体40は例えばUSB(Universal Serial Bus)メモリであってもよいし、書き換え可能なカード型のROMであってもよい。
個別監視部22は、各センサから出力された計測値(電流値、電圧値、温度)に基づいて蓄電ユニットUの状態を監視し、異常時に電流遮断装置21をオープン(オフ)する。個別監視部22はまた、計測した電流値に基づいて蓄電ユニットUの充電状態(SOC:State Of Charge)を推定する処理、各センサから出力された計測値に基づいて以下の(A)から(F)のデータを記録媒体40に記録する処理なども行う。
【0035】
(A)各蓄電セルCの電圧値(以下、セル電圧データという)
(B)蓄電ユニットUの電圧値(以下、ユニット電圧データという)
(C)蓄電モジュールMの温度(以下、モジュール温度データという)
(D)蓄電ユニットUの電流値(以下、ユニット電流データという)
(E)蓄電ユニットのSOC
(F)警報
【0036】
セル電圧データは状態データの一例である。状態データはログデータあるいは運用ログデータと言い換えることもできる。ユニット電圧データは各蓄電モジュールMの電圧値の合計値である。モジュール温度データはメインの温度センサ31によって計測された温度である。警報は蓄電ユニットUに何らかの異常が生じて個別監視部22が警報を発した場合に記録される。
【0037】
上述した各データは記録媒体40に記録される順序が決まっており、記録された順序からそのデータのユニット番号、モジュール番号、セル番号、計測された日付(年月日及び時刻)などを特定可能である。
【0038】
(1-1-2)統合監視部
統合監視部13は、複数の蓄電ユニットUの状態を監視する装置である。統合監視部13は、CPUやRAMが1チップ化されたマイクロコンピュータ、及び、個別監視部22と通信するための通信部を備えている。
【0039】
統合監視部13は、個別監視部22から出力されたデータに基づいて蓄電ユニットUの状態を監視し、蓄電設備1に何らかの異常が発生した場合に蓄電設備1の設備管理者に異常を報知する処理などを実行する。
前述したように、実施形態1では個別監視部22が記録媒体40にデータを記録するが、各蓄電ユニットUの個別監視部22が統合監視部13にデータを出力し、統合監視部13が記録媒体40にデータを記録してもよい。
【0040】
(1-2)情報処理装置
図5を参照して、情報処理装置2について説明する。情報処理装置2は、本実施形態では携帯可能なコンピュータであり、例えばノート型のパーソナルコンピュータや、タブレットコンピュータやスマートフォンである。
情報処理装置2は制御部51、記憶部52、外部インタフェース53、表示部54及び操作部55を備えている。制御部51はCPU51A及びRAM51Bを備えている。制御部51は記憶部52に記憶されているプログラムを実行することによって情報処理装置2の各部を制御する。記憶部52はハードディスクなどの不揮発性の記録媒体を有する記憶装置である。記憶部52には制御部51によって実行される各種のプログラムやデータが記憶されている。各種のプログラムには後述する状態表示プログラム(コンピュータプログラムの一例)が含まれる。
【0041】
外部インタフェース53は個別監視部22から取り外された記録媒体40が接続されるインタフェースである。表示部54は液晶ディスプレイなどの表示装置、表示装置を駆動する駆動回路などで構成されている。操作部55はキーボード、マウス、タッチパネルなどで構成されている。
【0042】
(2)状態表示プログラム
図6を参照して、情報処理装置2によって実行される状態表示プログラムについて説明する。状態表示プログラムは蓄電セルCの状態を把握するためのプログラムである。状態表示プログラムは、複数の蓄電モジュールMに対応する複数の表示領域72を表示部54に表示し、それぞれの表示領域72に、ある時刻(時刻79)における、対応する蓄電モジュールMの蓄電セルCのセル電圧データをグラフ表示する。
【0043】
(2-1)状態表示プログラムが使用される状況の一例
蓄電設備1に何らかの異常が発生した場合、蓄電設備1の設備管理者は異常が発生したことを蓄電設備1の製造メーカまたは保守サービスプロバイダーに連絡する。連絡を受けた保守担当部門は、蓄電設備1が設置されている場所(以下、現地という)に保守員(オペレータの一例)を派遣する。
【0044】
現地に派遣された保守員は、各個別監視部22(
図2参照)から記録媒体40を回収し、回収した記録媒体40を情報処理装置2の外部インタフェース53(
図5参照)に接続して記憶部52にデータをコピーする。保守員は記憶部52にデータをコピーした後、状態表示プログラムを起動して蓄電セルCの状態を把握する。
ここでは保守員が現地に派遣される場合を例に説明したが、蓄電設備1の設備管理者が記録媒体40を回収して保守担当部門にデータを送信する構成であってもよい。
【0045】
外部インタフェース53に記録媒体40を物理的に接続することに代えて、情報処理装置2は、統合監視部13に接続された図示しない通信部を介して蓄電セルCの状態データ(時系列データ)を取得し記憶部52(
図5参照)に記憶してもよい。外部インタフェース53に接続された記録媒体40も、蓄電セルCの状態データを記憶した記憶部52も、制御部51に含まれるRAM51Bも、制御部51が、グラフ表示のために外部装置と通信することなくアクセス可能な記録媒体に相当する。
【0046】
(2-2)状態表示プログラムのフローチャート
図7を参照して、状態表示プログラムを実行する制御部51によって実行される処理のフローチャートについて説明する。本処理は状態表示プログラムが起動されると開始される。
【0047】
S101では、制御部51は図示しない期間指定画面を表示部54に表示させる。期間指定画面は表示対象とするセル電圧データの期間の指定を受け付ける画面である。期間の指定は例えば日付を指定することによって行われる。日付を指定すると、指定した日付の午前0時から午後0時(24時)までの間に記録されたセル電圧データが表示対象となる。期間の指定はこれに限られず、適宜の方法で指定できる。例えば連続する複数の日付を指定してもよいし、日付とその日付における特定の時間帯とを指定してもよい。
保守員は期間指定画面で期間の指定を行った後、期間指定画面に表示されている所定のボタンをクリックすることにより、電圧表示画面71(
図6参照)の表示を指示する。制御部51は当該ボタンがクリックされるとS102に進む。
【0048】
S102では、制御部51は記憶部52に記憶されている各蓄電ユニットUのセル電圧データのうち指定された期間に計測されたセル電圧データをRAM51Bに読み込む。
S103では、制御部51は電圧表示画面71を表示部54に表示させる。
【0049】
(2-3)電圧表示画面
図6に示すように、電圧表示画面71は「U01&U02」から「U09&U10」の5つのタブ画面73で構成されている。保守員は各タブ画面73の左上のタブ80(第2変更受付部の一例)をクリックすることによってタブ画面73を選択できる。
【0050】
各タブ画面73にはそれぞれ2つの蓄電ユニットUの情報が表示される。具体的には、「U01&U02」には蓄電ユニットU01及びU02の情報、「U03&U04」には蓄電ユニットU03及びU04の情報、「U05&U06」には蓄電ユニットU05及びU06の情報、「U07&U08」には蓄電ユニットU07及びU08の情報、「U09&U10」には蓄電ユニットU09及びU10の情報が表示される。電圧表示画面71が表示された直後は「U01&U02」のタブ画面73が初期表示される。
【0051】
ここで、電圧表示画面71に2ユニットずつ表示している理由は、ノート型のパーソナルコンピュータのように表示部54の画面サイズが小さい情報処理装置2を考慮したためである。各蓄電ユニットUの情報の表示の仕方はこれに限定されない。例えば3ユニットずつ表示してもよいし、タブの代わりにスクロールバーを設けて10ユニット分を1画面にスクロール表示してもよい。画面サイズが大きい場合は1画面に10ユニット全部を表示してもよい。
【0052】
図6では「U07&U08」が選択された場合を示している。タブ画面73には2つのグラフ領域74、2つの第1変更受付部75、サマリー領域76、蓄電ユニットU07の設定領域77、及び、蓄電ユニットU08の設定領域78がある。
【0053】
上段のグラフ領域74は蓄電ユニットU07を構成している180個の蓄電セルCの電圧がグラフ表示される領域である。下段のグラフ領域74は蓄電ユニットU08を構成している180個の蓄電セルCの電圧がグラフ表示される領域である。
グラフの縦軸(第1方向の一例)は蓄電セルCの電圧を示しており、横軸(第2方向の一例)は蓄電セルCを示している。グラフ領域74は蓄電ユニットUを構成している蓄電モジュールMの数(ここでは15)で横方向に等分割されて15の表示領域72に区画されている。これらの表示領域72はそれぞれの縦軸のスケールを揃えた状態で並べて表示されている。これらの表示領域72は左から順に蓄電モジュールM01から蓄電モジュールM15に対応している。すなわち、表示領域72の並びは蓄電モジュールMの番号と対応している。
【0054】
1つの表示領域72には、ある時刻における、対応する蓄電モジュールMを構成している12個の蓄電セルCの電圧がそれぞれ1つのドットで表示される。ドットは左から順に蓄電セルC01から蓄電セルC12に対応している。すなわち、表示領域72は横方向(第2方向の一例)が蓄電モジュールM内の複数の蓄電セルCの配置位置を示している。
タブ画面73が表示された直後は、期間指定画面で指定された期間の開始時刻(あるいは開始時刻の直近の時刻)に計測されたセル電圧データのグラフが初期表示される。
【0055】
第1変更受付部75は、グラフ表示する時刻(ある時刻)の変更を受け付けるユーザインタフェースである。上段の第1変更受付部75は上段のグラフ領域74に対応している。下段の第1変更受付部75は下段のグラフ領域74に対応している。
第1変更受付部75は左右方向に長いスライダーバー75Aと、スライダーバー75A上を移動するスライダー75Bとを備えている。スライダーバー75Aの左端は指定された期間の開始時刻に対応している。右端は指定された期間の終了時刻に対応している。スライダー75Bの位置は指定された期間中の時刻とリニアに対応している。例えば、スライダーバー75Aの左端から右側に向かってスライダーバー75Aの長さの1/3の長さだけ離間した位置は、指定された期間の開始時刻から終了時刻までの時間の1/3の時間が経過した時点の時刻に対応している。
【0056】
スライダーバー75Aの右側にはスライダー75Bの現在の位置に対応する時刻79が表示される。タブ画面73が表示された直後は、スライダー75Bはスライダーバー75Aの左端(指定した期間の開始時刻に対応する位置)に位置している。
保守員はスライダー75Bを左右に移動させることにより、指定した期間中の時刻を変更できる。スライダーバー75Aの右側に時刻79が表示されるので、保守員は時刻79を見ながらスライダー75Bを移動させることにより、目的の時刻に容易に変更できる。保守員が時刻を変更すると、変更した時刻(あるいはその時刻の直近の時刻)に計測されたセル電圧データがグラフ表示される。
【0057】
サマリー領域76、蓄電ユニットU07の設定領域77及び蓄電ユニットU08の設定領域78についての説明は省略する。
【0058】
図8を参照して、保守員がスライダー75Bを移動させたときのグラフの変化・推移について説明する。制御部51は、スライダー75Bの位置が変化する毎に、変化後の位置に対応する時刻(あるいはその時刻の直近の時刻)に計測されたセル電圧データをグラフ表示する。セル電圧データはRAM51Bに読み込まれているので、人の感覚ではセル電圧データはほぼ遅延なくグラフ表示される。このため、
図8に示すように、保守員がスライダー75Bを移動させると、スライダー75Bの移動に追従してグラフがアニメーションのように変化する。
【0059】
図8に示す例の場合、蓄電モジュールM10の蓄電セルCの電圧が18時26分頃にばらつき始めている。そして、21時50分頃に蓄電セルCのばらつきが最大に達しており、その後はばらつきが大きいままで推移している。グラフの変化がアニメーションのように表示されるので、保守員はどの蓄電モジュールMで蓄電セルCの電圧がばらついたか、そのばらつきがどの辺りの時刻から始まったか、そのばらつきの大きさがどの程度であったかなどを直感的に把握できる。
【0060】
(3)実施形態の効果
情報処理装置2によると、複数の蓄電モジュールMに対応する複数の表示領域72が表示部54に表示され、それぞれの表示領域72に、ある時刻(時刻79。第1時刻)における、対応する蓄電モジュールMの蓄電セルCのセル電圧データがグラフ表示される。すなわち、複数の蓄電モジュールMの蓄電セルCのセル電圧データが同時にグラフ表示される。このため、保守員は複数の蓄電モジュールMの状態を比較し易い。よって情報処理装置2によると、蓄電ユニットUの状態を分かり易く表示できる。
【0061】
情報処理装置2によると、それぞれの表示領域72の縦軸(第1方向)のスケールが揃っているので、複数の蓄電モジュールMの状態を比較し易い。
【0062】
情報処理装置2によると、それぞれの表示領域72の横軸(第2方向)のスケールが蓄電モジュールM内の複数の蓄電セルCの配置位置を示しているので、表示されているセル電圧データがどの蓄電セルCのセル電圧データであるかを直感的に把握し易い。
【0063】
情報処理装置2によると、それぞれの蓄電セルCのセル電圧データが1つのドットとして独立して表示されるので、個々の蓄電セルCの電圧を把握し易い。
【0064】
情報処理装置2によると、時刻を変更すると全ての蓄電モジュールMについて変更後の時刻(第2時刻)におけるセル電圧データが表示される。このため、蓄電モジュールM毎に受付部を何度も操作する場合に比べて操作回数を大幅に低減できる。
【0065】
情報処理装置2によると、保守員はスライダー75Bを移動させることによって時刻を変更できる。このため、例えばマウスを用いてスライダー75Bを移動させる場合は、1日分のセル電圧データであってもマウスでスライダー75Bをドラッグして移動させるという簡単な操作で1日の変化を把握できる。このため、ボタンを押下する場合に比べてセル電圧データの変化を短時間で且つ少ない操作で把握できる。
スライダーバー75Aは指定された期間の開始時刻から終了時刻までの期間を表しているので、保守員はスライダー75Bの位置から、指定した期間中のどの辺りの時点のグラフが表示されているかを直感的に把握し易いという利点もある。
【0066】
情報処理装置2によると、表示対象とする蓄電ユニットUの変更を受け付けるタブ80を表示するので、蓄電ユニットUが複数ある場合に、それぞれの蓄電ユニットUの状態を分かり易く表示できる。
【0067】
<実施形態2>
実施形態2を
図9によって説明する。
前述した実施形態1では、蓄電設備1は通信ネットワークに接続されておらず、蓄電セルCのセル電圧データが個別監視部22の記録媒体40に記録される場合を例に説明した。これに対し、実施形態2に係る蓄電設備1では、統合監視部13がアクセスポイント(AP)91を介して通信ネットワークに無線接続されている。
【0068】
実施形態2に係る個別監視部22は、統合監視部13にセル電圧データを出力する。統合監視部13は、個別監視部22から出力されたセル電圧データを、通信ネットワークを介してサーバ90に送信する。サーバ90はハードディスクなどの不揮発性の記録媒体を有する記憶部を備えており、統合監視部13から受信したセル電圧データを記憶部に記憶する。
【0069】
実施形態2に係る情報処理装置2もサーバ90と通信可能に構成されている。保守員はサーバ90から通信ネットワークを介してセル電圧データを情報処理装置2にダウンロードする。サーバ90から情報処理装置2にセル電圧データをダウンロードする場合は、情報処理装置2は携帯型ではなく据え置き型のコンピュータであってもよい。
【0070】
サーバ90が設置される場所は適宜に決定できる。例えば、サーバ90は現地に設置されてもよいし、保守担当部門に設置されてもよい。保守員はサーバ90上で状態表示プログラムを実行してもよい。その場合はサーバ90が情報処理装置の一例である。
【0071】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0072】
(1)上記実施形態では蓄電設備として大型の移動体11に搭載される蓄電設備1を例に説明したが、蓄電設備の用途はこれに限られず、無停電電源システムや太陽光発電システムの蓄電装置などの種々の用途に使用できる。
【0073】
(2)上記実施形態では蓄電設備1が10個の蓄電ユニットUを備えている場合を例に説明したが、蓄電ユニットUの数は適宜に決定できる。1つの蓄電ユニットUが備える蓄電モジュールMの数や、1つの蓄電モジュールMが備える蓄電セルCの数も同様である。
【0074】
(3)上記実施形態では第1変更受付部75がスライダーバー75Aとスライダー75Bとを備えている場合を例に説明したが、第1変更受付部75のユーザインタフェースはこれに限られない。例えば、第1変更受付部75は「進むボタン」と「戻るボタン」とで構成されてもよい。あるいは、第1変更受付部75は変更後の時刻(時間、分、秒)を数値で直接受け付けてもよい。
【0075】
(4)上記実施形態では第2変更受付部としてタブ80を例に説明したが、第2変更受付部のユーザインタフェースはこれに限られない。例えば、蓄電ユニットUが一覧表示されるドロップダウンメニューを電圧表示画面71に表示し、ドロップダウンメニューで蓄電ユニットUの変更を受け付けてもよい。あるいは、期間指定画面で蓄電ユニットUの選択を受け付け、電圧表示画面71には期間指定画面で選択された蓄電ユニットUの状態データを表示してもよい。
【0076】
(5)上記実施形態では蓄電セルCの状態データとしてセル電圧データを例に説明したが、蓄電セルCの状態データはこれに限られない。例えば、状態データは蓄電セルCの温度、SOC、健康状態(SOH:State Of Health)であってもよい。
【0077】
(6)上記実施形態では個別監視部22に記録媒体40が着脱可能に接続されており、保守員が個別監視部22から記録媒体40を回収して情報処理装置2に接続する場合を例に説明した。これに対し、個別監視部22にハードディスクなどの記録媒体を有する記憶部と、USBケーブルが接続されるUSBポートとを備え、USB経由で状態データが情報処理装置2にコピーされてもよい。
あるいは、状態データがBluetooth(登録商標)などの無線通信によって個別監視部22から情報処理装置2にコピーされてもよい。
あるいは、蓄電設備1が移動しない場合(自然エネルギーの蓄電用の蓄電設備のように所定の場所に設置される蓄電設備の場合)は、統合監視部13を通信ネットワークに有線接続するためのNIC(Network Interface Card)を備え、通信ネットワークを介して状態データが情報処理装置2にコピーされてもよい。
【0078】
(7)上記実施形態では二次電池としてリチウムイオン二次電池を例に説明したが、二次電池はこれに限られない。例えば、二次電池は鉛蓄電池であってもよい。
【0079】
(8)上記実施形態では蓄電セルCとして二次電池を例に説明したが、蓄電セルCは電気化学反応を伴うキャパシタであってもよい。
【符号の説明】
【0080】
2: 情報処理装置
40: 記録媒体(記録媒体の一例)
51: 制御部
52: 記憶部(記録媒体の一例)
54: 表示部
72: 表示領域
75: 第1変更受付部
75A: スライダーバー
75B: スライダー
80: タブ(第2変更受付部の一例)
C: 蓄電セル
M: 蓄電モジュール
U: 蓄電ユニット