(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131282
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】充電システム、充電システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20230914BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230914BHJP
H02M 3/28 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
H02J7/02 J
H02J7/00 P
H02M3/28 W
H02M3/28 V
H02M3/28 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035932
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】河口 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】古川 公久
(72)【発明者】
【氏名】上妻 央
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 尊衛
(72)【発明者】
【氏名】馬淵 雄一
【テーマコード(参考)】
5G503
5H730
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA04
5G503BB01
5G503FA06
5G503GB03
5G503GB06
5H730AA15
5H730AS01
5H730AS17
5H730BB27
5H730BB82
5H730BB84
5H730BB85
5H730BB86
5H730CC01
5H730DD03
5H730DD16
5H730EE04
5H730EE07
5H730EE08
5H730EE13
5H730EE72
5H730EE73
5H730EE76
(57)【要約】
【課題】
複数の負荷や蓄電池に同時充電が可能なマルチポート型充電システムにおいて、サイズ及びコストの増加を抑えつつ、多様な充電仕様に対応可能な充電システムを提供する。
【解決手段】
高周波トランスにより絶縁された1次側回路と2次側回路とで構成された変圧ユニットを複数備え、前記複数の変圧ユニットの1次側回路の入力端子が直列接続された充電システムであって、前記複数の変圧ユニットの内、少なくとも1つの変圧ユニットは複数の2次側回路を有し、前記複数の2次側回路の出力端子は、複数の異なる負荷に接続されることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波トランスにより絶縁された1次側回路と2次側回路とで構成された変圧ユニットを複数備え、前記複数の変圧ユニットの1次側回路の入力端子が直列接続された充電システムであって、
前記複数の変圧ユニットの内、少なくとも1つの変圧ユニットは複数の2次側回路を有し、
前記複数の2次側回路の出力端子は、複数の異なる負荷に接続されることを特徴とする充電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の充電システムであって、
前記1次側回路の入力端子に交流電力が入力され、
前記複数の2次側回路の出力端子から直流電力が出力されることを特徴とする充電システム。
【請求項3】
請求項2に記載の充電システムであって、
前記複数の2次側回路を有する変圧ユニットの1次側回路は、1つのAC/DC変換回路と複数のDC/AC変換回路との組み合わせで構成されることを特徴とする充電システム。
【請求項4】
請求項2に記載の充電システムであって、
前記複数の2次側回路を有する変圧ユニットの1次側回路は、1つのAC/DC変換回路と1つのDC/AC変換回路との組み合わせで構成されることを特徴とする充電システム。
【請求項5】
請求項1に記載の充電システムであって、
前記複数の2次側回路の各々は、整流回路およびチョッパ回路で構成されることを特徴とする充電システム。
【請求項6】
請求項1に記載の充電システムであって、
前記1次側回路の入力端子に直流電力が入力され、
前記複数の2次側回路の出力端子から直流電力が出力されることを特徴とする充電システム。
【請求項7】
請求項6に記載の充電システムであって、
前記複数の2次側回路を有する変圧ユニットの1次側回路は、2つのフルブリッジ回路で構成されることを特徴とする充電システム。
【請求項8】
請求項6に記載の充電システムであって、
前記複数の2次側回路を有する変圧ユニットの1次側回路は、1つのフルブリッジ回路で構成されることを特徴とする充電システム。
【請求項9】
請求項1に記載の充電システムであって、
前記複数の2次側回路の各々は、フルブリッジ回路で構成されることを特徴とする充電システム。
【請求項10】
請求項1に記載の充電システムであって、
前記負荷は、電気自動車または搬送用ロボットのバッテリであることを特徴とする充電システム。
【請求項11】
複数の変圧ユニットを備え、複数の負荷に同時充電が可能なマルチポート型の充電システムの制御方法であって、
(a)前記複数の負荷の各充電容量と、前記複数の変圧ユニットの各定格電力と、前記複数の変圧ユニットの合計ユニット数より、前記複数の負荷の各々に割り当てるメインポートの数および前記メインポートから分岐されたサブポートの数を求めるステップと、
(b)前記複数の負荷の各々へ供給する出力電力指令を求めるステップと、
を有することを特徴とする充電システムの制御方法。
【請求項12】
請求項11に記載の充電システムの制御方法であって、
(c)前記(b)ステップの後、前記出力電力指令に基づいて、前記複数の変圧ユニットの各々から前記複数の負荷の各々へ充電するステップと、
(d)前記複数の負荷の各々の現時点の充電電力を検出するステップと、
(e)前記(d)ステップで検出した現時点の充電電力と、前記(c)ステップにおける充電開始時の充電電力との差分を求めるステップと、
(f)前記(e)ステップで求めた差分と所定の閾値とを比較判定するステップと、
を有し、
前記(f)ステップにおいて、前記差分が前記所定の閾値よりも大きいと判定された場合、前記複数の負荷の各々へ供給する出力電力指令を更新することを特徴とする充電システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電システムの構成とその制御に係り、特に、異なる充電仕様の複数の負荷や蓄電池に同時充電が可能なマルチポート充電器に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(Electric Vehicle:EV)の普及に伴い、さまざまな形態の充電器の需要が増加すると予想されている。とりわけ、半導体変圧器(Solid State Transformer:SST)を内蔵したコンバータ盤と複数台の利用者端末(EVポート)を組み合わせたマルチポート充電器は、小型で複数台のEVに同時充電が可能であるため、ビル内の駐車場やコンビニエンスストア、ショッピングモール、住宅街など、さまざまな場所での普及が期待されている。
【0003】
一方、物流分野においても、例えば配送車のEV化が検討されているが、配送EVへの充電は荷積み時や運転手の休憩時間に集中する。このように充電器を特定車両用途に制限した場合、充電設備の利用率向上が課題となる。例えば、一般車や商用トラック、バスなど、用途が異なるEVで充電器を共用することにより設備利用率の向上が期待できるが、バッテリ仕様(電圧,容量)や利用状況(普通充電,急速充電)の違いにより大きく異なる充電仕様(電圧,電力)への対応が課題となる。
【0004】
本技術分野の背景技術として、例えば、特許文献1のような技術がある。特許文献1には、複数のセルユニットで高周波トランスのコアを共用することにより蓄電装置間で充電電力が大きく異なる場合でも一次側の電圧バランスを維持することが可能な電源装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、コンバータの負担を軽減可能であり、且つ、バッテリ電圧仕様の変化に対する汎用性を向上させるマルチポート電力変換システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-182257号公報
【特許文献2】特開2021-27768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したマルチポート充電器は、一般に、コンバータ盤内に複数台設置された半導体変圧器(SST:以下、「変圧ユニット」とも呼ぶ)の1次側の入力端子が直列接続された構成となっており、直列接続された1次側回路の電圧バランスを確保するために、変圧ユニット間の電力アンバランス条件に制約があるため、充電仕様が大きく異なる負荷を同時に充電することが難しい。1ユニット当たりの分担電圧・電力を低減し、ユニット数を増加させることで、同時に充電可能な充電仕様を拡大することもできるが、システム規模の増大に伴い、マルチポート充電器のサイズ及びコストの増加に繋がる。
【0008】
上記特許文献1では、特殊なトランスが必要であり、トランスが大型となる。
【0009】
また、上記特許文献2では、変圧ユニット間の電力バランスは考慮されておらず、充電仕様が大きく異なる負荷を同時に充電することは困難である。
【0010】
そこで、本発明の目的は、複数の負荷や蓄電池に同時充電が可能なマルチポート型充電システムにおいて、サイズ及びコストの増加を抑えつつ、多様な充電仕様に対応可能な充電システム及び充電システムの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、高周波トランスにより絶縁された1次側回路と2次側回路とで構成された変圧ユニットを複数備え、前記複数の変圧ユニットの1次側回路の入力端子が直列接続された充電システムであって、前記複数の変圧ユニットの内、少なくとも1つの変圧ユニットは複数の2次側回路を有し、前記複数の2次側回路の出力端子は、複数の異なる負荷に接続されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、複数の変圧ユニットを備え、複数の負荷に同時充電が可能なマルチポート型の充電システムの制御方法であって、(a)前記複数の負荷の各充電容量と、前記複数の変圧ユニットの各定格電力と、前記複数の変圧ユニットの合計ユニット数より、前記複数の負荷の各々に割り当てるメインポートの数および前記メインポートから分岐されたサブポートの数を求めるステップと、(b)前記複数の負荷の各々へ供給する出力電力指令を求めるステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の負荷や蓄電池に同時充電が可能なマルチポート型充電システムにおいて、サイズ及びコストの増加を抑えつつ、多様な充電仕様に対応可能な充電システム及び充電システムの制御方法を実現することができる。
【0014】
これにより、一般車や商用トラック、バスなど、用途が異なるEVに同時充電が可能となり、充電設備の利用率向上が図れる。
【0015】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例1に係る充電システムの概略構成を示す回路図である。
【
図2】本発明の実施例2に係る充電システムの概略構成を示す回路図である。
【
図3】本発明の実施例3に係る充電システムの概略構成を示す回路図である。
【
図4】
図3の充電システムの動作の一例を示すタイミングチャートである。
【
図5】本発明の実施例4に係る充電システムの概略構成を示す回路図である。
【
図6】
図5の充電システムの動作の一例を示すタイミングチャートである。
【
図7】本発明の実施例5に係る充電システムの制御方法(ポート分配モード)を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の実施例5に係る充電システムの制御方法(充電モード)を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【実施例0018】
図1を参照して、本発明の実施例1に係る充電システムについて説明する。
図1は、本実施例の充電システム1の概略構成を示す回路図である。
【0019】
本実施例の充電システム1は、
図1に示すように、主要な構成として、変圧ユニット2と、変圧ユニット3とを備えている。
【0020】
充電システム1には、入力側の端子として、入力端子4~7が設けられ、出力側の端子として、出力端子8~13が設けられている。
【0021】
入力端子4~7は、図示しない電力供給源に接続されており、電力供給源から交流電力が入力端子4~7を介して入力される。入力端子5と入力端子6は直列に接続されている。
【0022】
出力端子8~13には、図示しない負荷、或いは、EVや搬送用ロボットなどの蓄電池(バッテリ)が接続されており、充電システム1で交流電力から直流電力に変換された電力が出力端子8~13を介して負荷や蓄電池(バッテリ)へ出力される。
【0023】
なお、EVや搬送用ロボットなどの蓄電池(バッテリ)も、広義には負荷と捉えることができるため、以下では「負荷」に統一して説明する。
【0024】
変圧ユニット2の1次側回路は、スイッチング素子H1~H4で構成されるAC/DC変換回路と、スイッチング素子Qa1~Qa4及びスイッチング素子Qb1~Qb4で構成される複数の(ここでは2つの)DC/AC変換回路との組み合わせで構成されている。AC/DC変換回路とDC/AC変換回路との接続部には、平滑コンデンサとしてコンデンサC11が配置されている。
【0025】
変圧ユニット2の2次側回路は、ダイオードD21~D24とインダクタンスL21とコンデンサC21とで構成される整流回路14と、インダクタンスLb1とスイッチング素子Sb1とダイオードDb1とコンデンサC22とで構成されるチョッパ回路15と、ダイオードD31~D34とインダクタンスL31とコンデンサC31とで構成される整流回路14と、インダクタンスLb2とスイッチング素子Sb2とダイオードDb2とコンデンサC32とで構成されるチョッパ回路15との組み合わせで構成されている。
【0026】
変圧ユニット2の2次側回路の整流回路14とチョッパ回路15との組み合わせにより、AC/DC変換回路が構成される。
【0027】
変圧ユニット2の1次側回路の複数の(2つの)DC/AC変換回路と、2次側回路の複数の(2つの)整流回路14との間には、それぞれインダクタンスLraと高周波トランスTra、インダクタンスLrbと高周波トランスTrbが配置されており、1次側回路と2次側回路は高周波トランスTra,Trbによって絶縁されると共に、高周波結合により1次側回路から2次側回路へ交流電力が伝達される。
【0028】
変圧ユニット3の1次側回路は、スイッチング素子H1~H4で構成されるAC/DC変換回路と、スイッチング素子Qa1~Qa4で構成されるDC/AC変換回路との組み合わせで構成されている。AC/DC変換回路とDC/AC変換回路との接続部には、平滑コンデンサとしてコンデンサC11が配置されている。
【0029】
変圧ユニット3の2次側回路は、ダイオードD21~D24とインダクタンスL21とコンデンサC21とで構成される整流回路14と、インダクタンスLb1とスイッチング素子Sb1とダイオードDb1とコンデンサC22とで構成されるチョッパ回路15との組み合わせで構成されている。
【0030】
変圧ユニット3の1次側回路のDC/AC変換回路と、2次側回路の整流回路14との間には、インダクタンスLraと高周波トランスTraが配置されており、1次側回路と2次側回路は高周波トランスTraによって絶縁されると共に、高周波結合により1次側回路から2次側回路へ交流電力が伝達される。
【0031】
以上説明したように、本実施例の充電システム1は、高周波トランスTra,Trbにより絶縁された1次側回路と2次側回路とで構成された変圧ユニットを複数備えており、複数の変圧ユニット2,3の1次側回路の入力端子5,6が直列接続されている。そして、複数の変圧ユニット2,3の内、少なくとも1つの変圧ユニット2は複数の2次側回路を有しており、複数の2次側回路の出力端子8,9及び10,11は、それぞれ異なる負荷(図示せず)に接続される。
【0032】
これにより、例えば、変圧ユニット2,3の定格電力が共に10kWである場合、変圧ユニット2の出力端子8,9には要求電力5kWのEVを割り当てて接続する一方、変圧ユニット2の出力端子10,11及び変圧ユニット3の出力端子12,13には要求電力15kWまでのEVを割り当てて接続することができる。
【0033】
つまり、ユニット2の定格電力10kWから出力端子8,9の出力電力5kWを差し引いた残り5kWを出力端子10,11から出力し、変圧ユニット3の出力端子12,13の出力電力10kWと合せて最大15kWの出力電力を供給することができる。
【0034】
なお、
図1では、充電システム1内に2つの変圧ユニット2,3を配置する例を示したが、充電システム1に内蔵する変圧ユニットの数を増やすことで、より大容量のEVにも対応可能となる。
【0035】
図示しないが、例えば、充電システム1内に変圧ユニット3と同じ構成の変圧ユニットをさらに2つ追加して4ユニット構成とした場合、変圧ユニット2の出力端子8,9に要求電力5kWのEVを割り当てて接続する一方、変圧ユニット2の出力端子10,11及び変圧ユニット3の出力端子12,13、さらに追加した2つの変圧ユニットの出力端子を割り当てて接続することで、最大で要求電力35kWまでのEVを割り当てて接続することができる。
【0036】
また、変圧ユニット2の出力端子8,9に要求電力5kWのEVを割り当てて接続し、変圧ユニット2の出力端子10,11及び変圧ユニット3の出力端子12,13に要求電力15kWのEVを割り当てて接続し、追加した2つの変圧ユニットの出力端子に要求電力20kWのEVを割り当てて接続することも可能である。
【0037】
本実施例の充電システム1により、サイズ及びコストの増加を抑えつつ、多様な充電仕様に対応可能な充電システムを実現することができる。