(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131296
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
H02P 9/08 20060101AFI20230914BHJP
F02N 11/08 20060101ALI20230914BHJP
F02N 11/04 20060101ALI20230914BHJP
F02D 29/06 20060101ALI20230914BHJP
B60R 16/033 20060101ALI20230914BHJP
H02P 101/45 20150101ALN20230914BHJP
H02P 103/20 20150101ALN20230914BHJP
H02P 101/25 20150101ALN20230914BHJP
【FI】
H02P9/08 B
F02N11/08 L
F02N11/04 A
F02D29/06 F
B60R16/033
H02P101:45
H02P103:20
H02P101:25
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035959
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】日野 陽至
【テーマコード(参考)】
3G093
5H590
【Fターム(参考)】
3G093AA02
3G093BA28
3G093CA01
3G093EB08
5H590CA07
5H590CA23
5H590CC02
5H590CD01
5H590CE05
5H590EA01
5H590EA07
5H590EA10
5H590FC12
5H590FC22
5H590FC25
5H590JA02
5H590JA19
(57)【要約】 (修正有)
【課題】広範な種類の車両に始動発電機を適用でき、且つ、部品又は回路について高い設計自由度を有する車両を提供すること。
【解決手段】直列式キャパシタブロック40は、接続切換装置51,52,53,54を通じてバッテリ30からの電流が供給されるただ1つの直列キャパシタ列41を有し、直列キャパシタ列は、直列式キャパシタブロックの正極から負極まで直列接続された複数のキャパシタセル42で構成され、制御装置60は、エンジン10の始動時に、バッテリ及び直列式キャパシタブロックの両方から始動発電機20へ電力が供給されるように、接続切換装置に、バッテリと直列式キャパシタブロックとを始動発電機に対し直列接続させ、エンジンが停止しておりエンジンを始動する前の予備充電時に、ただ1つの直列キャパシタ列が有する複数のキャパシタセルがバッテリから出力される電力で充電されるように接続切換装置を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両であって、
前記車両は、
クランク軸を有し、燃焼動作で生じる動力を前記クランク軸の回転として出力するエンジンと、
前記エンジンが停止している場合に前記クランク軸を駆動することにより前記エンジンを始動し、前記エンジンが燃焼動作している場合に前記クランク軸に駆動され発電する始動発電機と、
バッテリと、
直列式キャパシタブロックと、
前記バッテリと前記直列式キャパシタブロックと前記始動発電機とに接続され、自らの導通状態に応じて前記バッテリと前記直列式キャパシタブロック前記始動発電機との接続関係を変える接続切換装置と、
前記接続切換装置へ制御信号を出力することによって前記接続切換装置の導通状態を制御する制御装置とを備え、
以下のことを特徴とする:
(A) 前記直列式キャパシタブロックは、前記接続切換装置を通じて前記バッテリからの電流が供給されるただ1つの直列キャパシタ列を有し、前記直列キャパシタ列は、並列接続なしに前記直列式キャパシタブロックの正極から負極まで直列接続された複数のキャパシタセルで構成され、
前記制御装置は、
前記エンジンの始動時に、前記バッテリ及び前記直列式キャパシタブロックの両方から前記始動発電機へ電力が供給されるように、前記接続切換装置に、前記バッテリと前記直列式キャパシタブロックとを前記始動発電機に対し直列接続させ、
前記エンジンが停止しており前記エンジンを始動する前の予備充電時に、前記ただ1つの前記直列キャパシタ列が有する前記複数のキャパシタセルが前記バッテリから出力される電力で充電されるように前記接続切換装置に、前記バッテリと前記直列式キャパシタブロックとを前記始動発電機に接続させることなしに互いに接続させるように、前記接続切換装置を制御するか、又は、
(B) 前記直列式キャパシタブロックは、前記接続切換装置を通じて前記バッテリからの電流が供給される複数の前記直列キャパシタ列を有し、前記複数の前記直列キャパシタ列は、前記直列式キャパシタブロックの正極及び負極を介して互いに並列接続され、
前記制御装置は、
前記エンジンの始動時に、前記バッテリ及び前記直列式キャパシタブロックの両方から前記始動発電機へ電力が供給されるように、前記接続切換装置に、前記バッテリと前記直列式キャパシタブロックとを前記始動発電機に対し直列接続させ、
前記予備充電時に、前記複数の前記直列キャパシタ列のそれぞれが有する前記複数のキャパシタセルが前記バッテリから出力される電力で充電されるように前記接続切換装置に、前記バッテリと前記直列式キャパシタブロックとを前記始動発電機に接続させることなしに互いに接続させるように、ローパスフィルタ処理を施した信号で前記接続切換装置を制御する。
【請求項2】
請求項1に記載の車両であって、
前記直列式キャパシタブロックは、前記複数のキャパシタセルの各々と、前記各々のキャパシタセルの正端子及び負端子を介して並列接続された複数のバイパス回路を備え、前記複数のバイパス回路のそれぞれは、前記正端子と前記負端子の電圧が前記キャパシタセルの最大定格電圧と等しいか又は最大定格電圧よりも小さい上限電圧を超える場合に、前記キャパシタセルに向かって供給される電流を前記正端子から前記負端子にバイパスする。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両であって、
前記車両は、始動スイッチの操作に応じた前記エンジンの始動を可能な状態にするメイン電源スイッチを備え、
前記制御装置は、前記メイン電源スイッチがオフの場合、前記接続切換装置に、前記バッテリと前記直列式キャパシタブロックとを切断状態にさせるように、前記接続切換装置を制御する。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の車両であって、
前記始動発電機は、
スロットと周方向で交互に設けられた複数の歯部を備えるステータコア、及び、前記歯部に巻回され巻線を有するステータと、
前記ステータと空隙を空けて前記周方向に並び且つ前記歯部の数の2/3より多い磁極部を有するロータとを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、エンジンの始動発電機を搭載したスクータタイプの自動二輪車が示されている。特許文献1に示される始動発電機は、エンジン始動と発電の機能を兼ね備える。
特許文献1に示される車両では、始動発電機がモータとして機能する場合、トランスファリレーを介して直列接続されたバッテリ及びキャパシタ(蓄電手段)が、始動発電機に電力を供給する。また、始動発電機が発電機として機能する場合、トランスファリレーの状態が切り替ることによって、始動発電機に対してバッテリ及びキャパシタが並列接続される。特許文献1の始動発電機では、始動時間の短縮が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
始動発電機を広範な種類の車両に適用することができ、且つ、部品又は回路について高い設計自由度を有することが求められている。
【0005】
本発明の目的は、広範な種類の車両に始動発電機を適用でき、且つ、部品又は回路について高い設計自由度を有する車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
具体的には、エンジンの始動と発電の機能を兼ね備えた始動発電機は、例えば、小型のエンジンを搭載した車両だけでなく、大型のエンジンを搭載した車両にも適用することが望まれている。大型のエンジンは、始動時にクランク軸を回転させるためより大きな力を要求する。
【0007】
大型のエンジンの始動時にクランク軸を回転させる技術として、エンジンの始動時により大きな電流を始動発電機に供給することが考えられる。このために、例えば、複数のキャパシタを並列接続してキャパシタの容量を増加することが考えられる。また、始動発電機、バッテリ、及びキャパシタ周辺の部品又は回路について、接続状態の切替えをスイッチング素子といった接続切換装置によって行なうことが考えられる。部品又は回路を簡潔で小型にすることによって、部品の選択及び部品の配置についての設計自由度が増加する。
【0008】
しかしながら、複数のキャパシタを並列接続する構成の研究・開発を行なう段階において、接続切換装置で接続状態を切替えた場合、エンジンが停止している状態でキャパシタとバッテリとが並列接続されると、接続切換装置の寿命が短くなる場合があった。
【0009】
本発明者が検討したところ、並列接続によって抵抗が減少したキャパシタに電流が流れる時に接続切換装置が短い周期でオン/オフを繰返し、この繰返しに起因して接続切換装置に高い電圧が生じる場合があることが原因であることが分かった。しかし、接続切換装置を高い電圧から保護しようとすると、高い電圧に対する保護のための追加回路が増大したり、採用可能な接続切換装置の種類が制約されたりしてしまう。また、出力可能な電圧も制約される。この結果、設計自由度が制約されたり、装置が大型化したりする。
【0010】
本発明者は、並列接続なしに直列接続された複数のキャパシタセルで構成された直列キャパシタ列を用いることによって、接続切換装置が短い周期でオン/オフを繰返すことを抑制できることを見いだした。
具体的には、一つの直列キャパシタ列を、並列接続なしに直列接続されたキャパシタセルで構成する。一つの直列キャパシタ列における任意の一つのキャパシタセルに蓄えられる電荷の量は、この直列キャパシタ列における他のキャパシタセルに蓄えられる電荷の量と実質的に等しい。このため、キャパシタセルに蓄えられる電荷の量が制御されやすい。キャパシタセルの状態の監視、及び制御のための回路構成が簡潔である。この直列キャパシタ列を複数用いて並列接続するとともに、ローパスフィルタ処理された制御信号で接続切換装置を制御する。或いは、ただ1列の直列キャパシタ列を用いる場合には、制御信号で状態を変化させる。これによって、接続切換装置が短い周期でオン/オフを繰返すことを抑制でき、例えば大型のエンジンに適用した場合でも、高い電圧に対する保護のための手段を省略又は小型化したりできる。
【0011】
以上の知見に基づいて完成した本発明の各観点による車両は、次の構成を備える。
【0012】
(1) 車両であって、
前記車両は、
クランク軸を有し、燃焼動作で生じる動力を前記クランク軸の回転として出力するエンジンと、
前記エンジンが停止している場合に前記クランク軸を駆動することにより前記エンジンを始動し、前記エンジンが燃焼動作している場合に前記クランク軸に駆動され発電する始動発電機と、
バッテリと、
直列式キャパシタブロックと、
前記バッテリと前記直列式キャパシタブロックと前記始動発電機とに接続され、自らの導通状態に応じて前記バッテリと前記直列式キャパシタブロック前記始動発電機との接続関係を変える接続切換装置と、
前記接続切換装置へ制御信号を出力することによって前記接続切換装置の導通状態を制御する制御装置とを備え、
以下のことを特徴とする:
(A) 前記直列式キャパシタブロックは、前記接続切換装置を通じて前記バッテリからの電流が供給されるただ1つの直列キャパシタ列を有し、前記直列キャパシタ列は、並列接続なしに前記直列式キャパシタブロックの正極から負極まで直列接続された複数のキャパシタセルで構成され、
前記制御装置は、
前記エンジンの始動時に、前記バッテリ及び前記直列式キャパシタブロックの両方から前記始動発電機へ電力が供給されるように、前記接続切換装置に、前記バッテリと前記直列式キャパシタブロックとを前記始動発電機に対し直列接続させ、
前記エンジンが停止しており前記エンジンを始動する前の予備充電時に、前記ただ1つの前記直列キャパシタ列が有する前記複数のキャパシタセルが前記バッテリから出力される電力で充電されるように前記接続切換装置に、前記バッテリと前記直列式キャパシタブロックとを前記始動発電機に接続させることなしに互いに接続させるように、前記接続切換装置を制御するか、又は、
(B) 前記直列式キャパシタブロックは、前記接続切換装置を通じて前記バッテリからの電流が供給される複数の前記直列キャパシタ列を有し、前記複数の前記直列キャパシタ列は、前記直列式キャパシタブロックの正極及び負極を介して互いに並列接続され、
前記制御装置は、
前記エンジンの始動時に、前記バッテリ及び前記直列式キャパシタブロックの両方から前記始動発電機へ電力が供給されるように、前記接続切換装置に、前記バッテリと前記直列式キャパシタブロックとを前記始動発電機に対し直列接続させ、
前記予備充電時に、前記複数の前記直列キャパシタ列のそれぞれが有する前記複数のキャパシタセルが前記バッテリから出力される電力で充電されるように前記接続切換装置に、前記バッテリと前記直列式キャパシタブロックとを前記始動発電機に接続させることなしに互いに接続させるように、ローパスフィルタ処理を施した信号で前記接続切換装置を制御する。
【0013】
(1)の構成によれば、予備充電時にただ1つの直列キャパシタ列又は複数の直列キャパシタ列は、直列式キャパシタブロックとして、バッテリから出力される電力で充電されるように接続切換装置によってバッテリと接続される。そして、ただ1つの直列キャパシタ列又は複数の直列キャパシタ列は、直列式キャパシタブロックとして始動発電機に対しバッテリと直列接続される。直列キャパシタ列は、並列接続なしに直列接続された複数のキャパシタセルで構成される。これによって、大きな静電容量と低い最大定格電圧を有するキャパシタセルを複数個組合せることができる。このため、直列式キャパシタブロックが大きな静電容量を有することができる。エンジンを始動時、大きな静電容量を有する直列式キャパシタブロックとバッテリが始動発電機に対し直列接続されることによって、始動発電機が大型のエンジンのクランク軸を駆動してエンジンを始動することができる。つまり、小型のエンジン及び大型のエンジンを含む広範な大きさのエンジンを有する広範な種類の車両に始動発電機を適用することができる。しかも、直列キャパシタ列が並列接続なしに直列接続された複数のキャパシタセルで構成されるため、任意の一つのキャパシタセルに蓄えられる電荷の量は、この直列キャパシタ列における他のキャパシタセルに蓄えられる電荷の量と実質的に等しい。このため、キャパシタセルに蓄えられる電荷の量が制御されやすい。このため、キャパシタセルの状態の監視、及び制御のための回路構成が簡潔である。例えば、複数のキャパシタセルの各々における電流や温度を集中管理するバッテリ制御装置を削除又は簡単化することができる。
また、複数の直列キャパシタ列が並列接続される場合、ローパスフィルタ処理された制御信号で接続切換装置が制御されるので、接続切換装置が短い周期でオン/オフを繰返すことが抑制される。また、ただ1つの直列キャパシタ列が用いられる場合にも、接続切換装置が短い周期でオン/オフを繰返すことが抑制される。このため、接続切換装置を大きな電圧から保護するための回路や接続切換装置の選択についての制約を減少することができる。従って、(1)によれば、広範な種類の車両に始動発電機を適用でき、且つ、部品又は回路について高い設計自由度を有することができる。
【0014】
(2) (1)の車両であって、
前記直列式キャパシタブロックは、前記複数のキャパシタセルの各々と、前記各々のキャパシタセルの正端子及び負端子を介して並列接続された複数のバイパス回路を備え、前記複数のバイパス回路のそれぞれは、前記正端子と前記負端子の電圧が前記キャパシタセルの最大定格電圧と等しいか又は最大定格電圧よりも小さい上限電圧を超える場合に、前記キャパシタセルに向かって供給される電流を前記正端子から前記負端子にバイパスする。
【0015】
(2)によれば、キャパシタセルの各々が、バイパス回路と接続される。正端子と負端子の電圧が上限電圧よりも高い場合に電流をバイパスするバイパス回路は、例えば定電圧ダイオードといった定電圧素子及びトランジスタを用いて簡潔な構成で実現することができる。このため、複数のキャパシタセルのそれぞれの電圧、電流、温度を集中管理するバッテリ制御装置を削除又は簡単化することができる。従って、(2)の構成によれば、部品又は回路についてより高い設計自由度を有することができる。
【0016】
(3) (1)又は(2)の車両であって、
前記車両は、始動スイッチの操作に応じた前記エンジンの始動を可能な状態にするメイン電源スイッチを備え、
前記制御装置は、前記メイン電源スイッチがオフの場合、前記接続切換装置に、前記バッテリと前記直列式キャパシタブロックとを切断状態にさせるように、前記接続切換装置を制御する。
【0017】
(3)によれば、メイン電源スイッチがオフの場合、直列式キャパシタブロックの漏れ電流に起因する、バッテリに蓄えられた電力の消費が抑制される。従って、(1)のによれば、比較的小さい容量のバッテリが搭載される車両を含む広範な種類の車両に始動発電機を適用することができる。
【0018】
(4) (1)から(3)のいずれか1つの車両であって、
前記始動発電機は、
スロットと周方向で交互に設けられた複数の歯部を備えるステータコア、及び、前記歯部に巻回され巻線を有するステータと、
前記ステータと空隙を空けて前記周方向に並び且つ前記歯部の数の2/3より多い磁極部を有するロータとを備える。
【0019】
(4)によれば、磁極部で形成される極対を歯部が通過する電気角周期に基づく角速度が、例えばスロットの数の2/3と等しい又はそれより少ない磁極部を有する構成の場合と比べて大きい。このため、巻線のインピーダンスは、例えば歯部の数の2/3と等しい又はそれより少ない磁極部を有する構成の場合と比べて大きい。このため、エンジンが再始動した後、始動発電機が発電機として機能する回転速度の領域において制御装置を流れる発電電流が、より大きな巻線のインピーダンスによって抑制される。このため、制御装置における放熱のための構造をより簡潔にして小型化することができる。
「歯部数の2/3より多い磁極部」の関係を満たす磁極数と歯部の数との比としては、例えば、10:12、8:9、4:3等が挙げられる。しかし、当該比は、この例に限定されない。磁極部数は、歯部の数の8/9以上であることが好ましく、8/9よりも多いことがより好ましい。磁極部数は、スロット数以上であることがより好ましい。磁極部数は、歯部の数より多いことがより好ましい。磁極部数は、歯部の数の4/3であることが更に好ましい。なお、当該比の上限値としては、特に限定されないが、例えば、4/3である。
【0020】
本明細書にて使用される専門用語は特定の実施例のみを定義する目的であって発明を制限する意図を有しない。
本明細書にて使用される用語「および/または」はひとつの、または複数の関連した列挙された構成物のあらゆるまたはすべての組み合わせを含む。
本明細書中で使用される場合、用語「含む、備える(including)」「含む、備える(comprising)」または「有する(having)」およびその変形の使用は、記載された特徴、工程、操作、要素、成分および/またはそれらの等価物の存在を特定するが、ステップ、動作、要素、コンポーネント、および/またはそれらのグループのうちの1つまたは複数を含むことができる。
本明細書中で使用される場合、用語「取り付けられた」、「結合された」および/またはそれらの等価物は広く使用され、特に指定しない限り直接的および間接的な取り付け、および結合の両方を包含する。
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
一般的に使用される辞書に定義された用語のような用語は、関連する技術および本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想的または過度に形式的な意味で解釈されることはない。
本発明の説明においては、多数の技術および工程が開示されていると理解される。
これらの各々は個別の利益を有し、それぞれは、他の開示された技術の1つ以上、または、場合によっては全てと共に使用することもできる。
したがって、明確にするために、この説明は、不要に個々のステップの可能な組み合わせをすべて繰り返すことを控える。
それにもかかわらず、明細書および特許請求の範囲は、そのような組み合わせがすべて本発明および請求項の範囲内にあることを理解して読まれるべきである。
本明細書では、新しい車両について説明される。
以下の説明では、説明の目的で、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な詳細が述べられる。
しかしながら、当業者には、これらの特定の詳細なしに本発明を実施できることが明らかである。
本開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面または説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【0021】
本明細書中で使用される電気的な「接続」は、リード線といった導体による直接の接続、及び電気エネルギー又は情報を伝達する伝達部品を介した接続の両方を包含する。伝達部品は、例えば、ヒューズのような、正常動作する限り接続状態を維持する部品、又は、リレーのような入力信号の変化タイミングと出力信号の変化タイミングが一致する部品である。
【0022】
車両は、例えば、自動車及び鞍乗型車両(straddle vehicle)である。鞍乗型車両とは、運転者がサドルに跨って着座する形式のビークルをいう。鞍乗型車両としては、例えば、スクータ型、モペット型、オフロード型、オンロード型の自動二輪車が挙げられる。また、鞍乗型車両としては、自動二輪車に限定されず、例えば、自動三輪車、ATV(All-Terrain Vehicle)等であってもよい。また、鞍乗型車両は、例えば、リーン姿勢で旋回可能に構成されている。リーン姿勢で旋回可能に構成された鞍乗型車両は、カーブの中心方向に傾いた姿勢で旋回するように構成される。リーン姿勢で旋回可能に構成された鞍乗型車両としては、例えば、自動二輪車、自動三輪車が挙げられる。リーン姿勢で旋回可能に構成された鞍乗型車両では、操作の軽快性が求められる。このため、リーン姿勢で旋回可能に構成された鞍乗型車両では、小型・軽量であることが求められる。
【0023】
エンジンは、例えば、単気筒エンジン及び2以上の気筒を有するエンジンを含む。エンジンの燃焼動作とは、エンジンが、燃焼によって生じるパワーをクランク軸のトルク及び回転速度として出力することである。エンジンは、例えば、4ストロークの間に高負荷領域と低負荷領域とを有する4ストロークエンジンである。4ストロークの間に高負荷領域と低負荷領域とを有する4ストロークエンジンは、例えば、単気筒エンジン、2気筒エンジン、不等間隔燃焼型3気筒エンジン、又は、不等間隔燃焼型4気筒エンジンである。ただし、エンジンは、特に限定されず、例えば、等間隔燃焼型3気筒エンジン、又は、等間隔燃焼型4気筒エンジンでもよい。また、エンジンは、例えば、2ストロークエンジンでもよい。
【0024】
始動発電機は、エンジンを始動する機能と、エンジンが燃焼動作している場合に発電する機能とを有する。始動発電機は、特に限定されず、例えばエンジンが燃焼動作している場合にエンジンの出力をアシストする機能を有してもよい。
始動発電機は、例えば、クランク軸との間でクラッチを介さず動力が伝達されるようにクランク軸に接続される。始動発電機は、例えば、クランク軸に対し直結されている。ただし、始動発電機は、特に限定されず、例えば、固定速度比のギアを介してクランク軸と接続されていてもよい。
始動発電機は、例えばアウタロータ型のブラシレス発電機である。ただし、始動発電機は、特に限定されず、例えば、インナーロータ型でもよく、また、アキシャルギャップ型でもよい。
【0025】
直列式キャパシタブロックは、1つ又は複数の直列キャパシタ列によって構成される。即ち、1つ又は複数の直列キャパシタ列によって構成されるキャパシタブロックが、直列式キャパシタブロックと称される。(A)においては、直列式キャパシタブロックは、ただ1つの直列キャパシタ列によって構成される。(B)においては、直列式キャパシタブロックは、複数の直列キャパシタ列が当該直列式キャパシタブロックの正極及び負極を介して互いに並列接続されることによって構成される。このように、直列式キャパシタブロックでは、当該直列式キャパシタブロックの正極及び負極を介した複数の直列キャパシタ列の並列接続は、許容され得る。但し、当該直列式キャパシタブロックの正極及び負極を介さない複数の直列キャパシタ列の並列接続は、許容されない。従って、そのようなキャパシタブロックは、直列式キャパシタブロックに該当しない。
直列式キャパシタブロックは、1つのブロックとしてバッテリとの電気的接続状態が切り替えられることができるように構成されていてもよい。従って、直列式キャパシタブロックは、その内部に含まれる複数のキャパシタセルの電気的接続状態が変更されないように構成されていてもよい。(A)又は(B)のいずれにおいても、直列式キャパシタブロックは、複数のキャパシタセルの電気的接続状態が変更されないように構成されていてもよい。(B)において、直列式キャパシタブロックは、複数の直列キャパシタ列の電気的接続状態が変更されないように構成されていてもよい。車両は、例えば、ただ1つの直列式キャパシタブロックを備えることが可能である。
【0026】
キャパシタセルは、直列キャパシタ列を構成する。キャパシタセルは、キャパシタンスを有する単体の部品である。キャパシタセルは、キャパシタユニットと言うこともできる。キャパシタセルは、単にキャパシタと言うこともできる。
【0027】
予備充電時とは、例えば、エンジンが停止しておりエンジンを始動する前の期間の少なくとも一部であってもよい。予備充電時とは、例えば、メイン電源スイッチがオンになってからエンジンが始動されるまでの期間の少なくとも一部であってもよい。この場合、予備充電時は、メイン電源スイッチがオンになる前の期間の少なくとも一部をさらに含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、広範な種類の車両に始動発電機を適用でき、且つ、部品又は回路について高い設計自由度を有する車両を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る車両を模式的に示す図である。
【
図2】構成(A)における直列式キャパシタブロックとバッテリの接続状態を説明するブロック図である。
【
図3】構成(B)における直列式キャパシタブロックとバッテリの接続状態を説明するブロック図である。
【
図4】
図4は、第二実施形態に係る直列式キャパシタブロックの構成を示すブロック図である。
【
図5】第三実施形態に係る直列式キャパシタブロックとバッテリの接続状態を説明するブロック図である。
【
図6】第四実施形態に係る始動発電機を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を、実施形態に基づいて図面を参照しつつ説明する。
【0031】
[第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態に係る車両を模式的に示す図である。
図1のパート(a)は、車両の概略構成を示す側面図である。
図1のパート(b)は、車両の電気構成を示すブロック図である。
図1のパート(c)及びパート(d)は、直列式キャパシタブロックの概略構成を示すブロック図である。
【0032】
図1に示す車両1は、エンジン10と、始動発電機20と、バッテリ30と、直列式キャパシタブロック40と、接続切換装置51,52,53,54と、制御装置60とを備える。
【0033】
エンジン10は、クランク軸15を有する。エンジン10は、燃焼動作で生じる動力をクランク軸15の回転として出力する。エンジン10は、例えば100mL以上の排気量を有する。エンジン10は、より詳細には、例えば、400mL以上の排気量を有する。
始動発電機20は、エンジン10が停止している場合にクランク軸15を駆動することによりエンジン10を始動する。また、始動発電機20は、エンジン10が燃焼動作している場合にクランク軸15に駆動され発電する。始動発電機20は、永久磁石を有する永久磁石式始動発電機である。
【0034】
バッテリ30及び直列式キャパシタブロック40は、電力を蓄える。バッテリ30及び直列式キャパシタブロック40は、蓄えた電力を放出する。バッテリ30は、例えば鉛バッテリである。ただし、バッテリ30の種類は特に限定されず、例えば、リチウムイオンバッテリでもよい。直列式キャパシタブロック40は、例えば、電気二重層キャパシタで構成される。ただし、キャパシタの種類は特に限定されず、例えば、電解キャパシタでもよい。
【0035】
接続切換装置51~54は、バッテリ30と、直列式キャパシタブロック40と、始動発電機20とに接続される。より詳細には、接続切換装置51~54は、例えばインバータ21を介して始動発電機20と接続される。接続切換装置51~54は、自らの導通状態に応じてバッテリ30と直列式キャパシタブロック40と始動発電機20との接続関係を変える。接続切換装置51~54のそれぞれは、例えば、トランジスタで構成される。ただし、接続切換装置51~54の種類は特に限定されず、例えば、リレーでもよい。
制御装置60は、接続切換装置51~54へ制御信号を出力することによって、接続切換装置51~54の導通状態を制御する。制御装置60は、例えば、プロセッサと、このプロセッサで実行されるプログラム及びデータを記憶したメモリとを備える。制御装置60には、メイン電源スイッチ5、及び始動スイッチ6が接続されている。メイン電源スイッチ5は、操作に応じてオン状態になることで、始動スイッチ6の操作に応じたエンジン10の始動を可能な状態にする。始動スイッチ6は、操作に応じてオン状態になることで、エンジン10を始動する。
【0036】
直列式キャパシタブロック40として、主に、構成(A)及び構成(B)の2通りの何れかが、採用され得る。なお、直列式キャパシタブロックとバッテリと始動発電機における接続状態を見やすく示すため、制御装置及び補機への電力供給についての図示は省略されている。
【0037】
まず、
図1のパート(c)に示す構成(A)について説明する。
直列式キャパシタブロック40は、ただ1つの直列キャパシタ列41Aを有する。ただ1つの直列キャパシタ列41Aは、並列接続なしに直列式キャパシタブロック40の正極40aから負極40bまで直列接続された複数のキャパシタセル42で構成されている。ただ1つの直列キャパシタ列41Aには、接続切換装置51~54を通じてバッテリ30からの電流が供給される。
構成(A)の場合、制御装置60は、エンジン10の始動時に、バッテリ30及び直列式キャパシタブロック40の両方から始動発電機20へ電力が供給されるように、接続切換装置51~54に、バッテリ30と直列式キャパシタブロック40とを始動発電機20に対し直列接続させる。制御装置60は、予備充電時に、ただ1つの直列キャパシタ列41Aが有する複数のキャパシタセル42がバッテリ30から出力される電力で充電されるように接続切換装置51~54を制御する。予備充電時は、エンジン10が停止しておりエンジン10を始動する前の期間である。予備充電時は、エンジン10が停止しておりエンジン10を始動する前、メイン電源スイッチ5が導通状態となることで開始する。予備充電時の始動スイッチ6の操作までの期間である。ただし、予備充電時は、メイン電源スイッチ5が導通状態となってから、直列式キャパシタブロック40の電圧が目標電圧に達するまでの期間でもよい。
【0038】
次に、
図1のパート(d)に示す構成(B)について説明する。
直列式キャパシタブロック40は、複数の直列キャパシタ列41B,41Cを有する。
図1のパート(d)には、例として2つの直列キャパシタ列41B,41Cを有する構成が示されている。複数の直列キャパシタ列41B,41Cは、直列式キャパシタブロック40の正極40a及び負極40bを介して互いに並列接続される。複数の直列キャパシタ列41B,41Cの各々は、並列接続なしに直列式キャパシタブロック40の正極40aから負極40bまで直列接続された複数のキャパシタセル42で構成されている。複数の直列キャパシタ列41B,41Cは、接続切換装置51~54を通じてバッテリ30からの電流が供給される。
構成(B)の場合、制御装置60は、エンジン10の始動時に、バッテリ30及び直列式キャパシタブロック40の両方から始動発電機20へ電力が供給されるように、接続切換装置51~54に、バッテリ30と直列式キャパシタブロック40とを始動発電機20に対し直列接続させる。制御装置60は、予備充電時に、複数の直列キャパシタ列41B,41Cの各々が有する複数のキャパシタセル42がバッテリ30から出力される電力で充電されるように接続切換装置51~54に、バッテリ30と直列式キャパシタブロック40とを始動発電機20に接続させることなしに互いに接続させるように、ローパスフィルタ(LPF)処理を施した信号で接続切換装置51~54を制御する。ローパスフィルタ処理は、信号を積分することによって平滑化する処理である。
【0039】
図2は、構成(A)における直列式キャパシタブロックとバッテリの接続状態を説明するブロック図である。
図2のパート(a)は、エンジンの始動時における電気的な接続状態を示す。
図2のパート(b)は、予備充電時における電気的な接続状態を示す。
図2には、直列式キャパシタブロックとして、上記構成(A)の例が示されている。
【0040】
図2のパート(a)に示すように、エンジン10の始動時に、接続切換装置51~54が、バッテリ30と直列式キャパシタブロック40とを始動発電機20に対し直列接続させる。より詳細には、接続切換装置51,53がオン状態となり、接続切換装置52,54がオフ状態となる。
なお、接続の見やすさのため、オフ状態の接続切換装置と接続に寄与しない配線の図示は省略されている。
【0041】
図2のパート(b)に示すように、予備充電時に、接続切換装置51~54に、バッテリ30と直列式キャパシタブロック40とを始動発電機20に接続させることなしに互いに接続させる。より詳細には、接続切換装置52,54がオン状態となり、接続切換装置51,53がオフ状態となる。オフ状態の接続切換装置の図示は省略される。
これによって、ただ1つの直列キャパシタ列41Aが有する複数のキャパシタセル42がバッテリ30から出力される電力で充電される。
【0042】
一般的に、静電容量の大きなキャパシタセルを製造しようとすると、最大定格電圧は減少しやすい。キャパシタセルの静電容量は、一般的に、電極間の絶縁体(誘電体)の厚み即ち電極と電極の距離を小さくすることで増加することができるためである。その反面、電極間の絶縁体(誘電体)の厚み即ち電極と電極の距離を小さくすると、絶縁破壊が生じやすくなる。従って、電極間の絶縁体(誘電体)の厚み即ち電極と電極の距離を小さくすると、最大定格電圧は減少する。
【0043】
図2に示す直列キャパシタ列41Aは、並列接続なしに直列接続された複数のキャパシタセル42で構成される。これによって、大きな静電容量と低い最大定格電圧を有するキャパシタセル42を複数個組合せることができる。このため、直列式キャパシタブロック40が大きな静電容量を有することができる。
図2のパート(a)に示すエンジン10の始動時、大きな静電容量を有する直列式キャパシタブロック40とバッテリ30が始動発電機20に対し直列接続されることによって、始動発電機20がエンジン10のクランク軸15を駆動してエンジン10を始動する。従って、車両1のエンジン10(
図1参照)が大型であっても、始動時にクランク軸15を回転させることができる。キャパシタセル42は、例えば、30F以上の静電容量を有する。これによって、幅広い範囲の大きさに属するエンジン10の始動に対応することができる。ただし、キャパシタセル42の静電容量として、として30F未満を採用することも可能である。
【0044】
また、直列キャパシタ列41Aが並列接続なしに直列接続された複数のキャパシタセル42で構成されるため、任意の一つのキャパシタセル42に蓄えられる電荷の量は、この直列キャパシタ列41Aにおける他のキャパシタセル42に蓄えられる電荷の量と実質的に等しい。このため、キャパシタセル42に蓄えられる電荷の量が制御されやすい。このため、キャパシタセル42の状態の監視、及び制御のための回路構成が簡潔である。例えば、複数のキャパシタセル42の各々における電流や温度を集中管理するバッテリ制御装置を削除又は簡単化することができる。
【0045】
図3は、構成(B)における直列式キャパシタブロックとバッテリの接続状態を説明するブロック図である。
図3のパート(a)は、エンジンの始動時における電気的な接続状態を示す。
図3のパート(b)は、予備充電時における電気的な接続状態を示す。
図3には、直列式キャパシタブロックとして、上記構成(B)の例が示されている。
【0046】
図3のパート(a)に示すように、エンジン10の始動時に、接続切換装置51~54が、バッテリ30と直列式キャパシタブロック40とを始動発電機20に対し直列接続させる。より詳細には、接続切換装置51,53がオン状態となり、接続切換装置52,54がオフ状態となる。なお、接続の見やすさのため、オフ状態の接続切換装置の図示は省略される。
【0047】
図3のパート(b)に示すように、予備充電時に、接続切換装置51~54に、バッテリ30と直列式キャパシタブロック40とを始動発電機20に接続させることなしに互いに接続させる。より詳細には、接続切換装置52,54がオン状態となり、接続切換装置51,53がオフ状態となる。オフ状態の接続切換装置の図示は省略される。接続切換装置52,54の状態は、より詳細には、制御装置60のローパスフィルタ処理部61によるローパスフィルタ処理を施した信号によって、オフ状態からオン状態に変化する。
これによって、複数の直列キャパシタ列41B,41Cが有する複数のキャパシタセル42がバッテリ30から出力される電力で充電される。
【0048】
図3に示す構成(B)によれば、複数の直列キャパシタ列41B,41Cが並列接続されることによって、総計の静電容量が増大する。ただし、
図3のパート(b)に示すように、直列式キャパシタブロック40がバッテリ30の電力で充電される場合に、接続切換装置52,54を通る電流も増大する。特に、大容量である直列キャパシタ列41B,41Cにおける純抵抗成分は低減されているため、接続切換装置52,54がオン状態になった直後は、直列キャパシタ列41B,41Cの電圧とバッテリ30の電圧の差に応じた大きな電流が流れやすい。直列キャパシタ列41Bと直列キャパシタ列41Cには静電容量の差、及び、純抵抗成分の差が存在する。これらの差に応じて、接続切換装置52,54がオン状態になった直後に直列キャパシタ列41Bと直列キャパシタ列41Cに流れる電流のピークには時間差が生じる場合がある。
例えば、接続切換装置52,54がオン状態になった直後は、接続切換装置52,54に大きな電流が流れ、しかも流れる電流が単調に増大せず複雑に変化する場合がある。この場合、電流の変動に対し、直列式キャパシタブロック40とバッテリ30とを接続する回路のインダクタンスの影響が無視できなくなる。特に、車両1(
図1参照)のメイン電源スイッチ5が運転者の操作に応じてオフ状態からオン状態に変化することを表す制御信号に応じて、制御装置60が接続切換装置51,53をオフ状態からオン状態に切替える場合、メイン電源スイッチ5のチャタリングに起因して、接続切換装置51,53がオン状態とオフ状態を短時間で繰り返す場合がある。オン状態とオフ状態の繰返しに応じて、直列キャパシタ列41B,41Cとバッテリ30と接続切換装置51,53に電流の流れの開始及びその中断が生じる。そして、接続切換装置51,53には、インダクタンス及び電流の複雑な変化に起因する逆起電力に起因する大きな電圧が発生する場合がある。逆起電力に起因する大きな電圧に対応するため、接続切換装置51,53を大きな電圧から保護するための回路が必要になったり、接続切換装置51,53を特定の種類の装置から選択したりすることが求められる。
【0049】
図3に示す本実施形態によれば、接続切換装置52,54が、制御装置60のローパスフィルタ処理部61によるローパスフィルタ処理を施した信号によってオフ状態からオン状態に変化する。このため、制御装置60に入力される信号のチャタリングの影響が抑制される。即ち、接続切換装置52,54が短い周期でオン/オフを繰返すことが抑制される。このため、接続切換装置51~54を大きな電圧から保護するための回路や接続切換装置51~54の種類の選択についての制約を減少することができる。
【0050】
[第二実施形態]
図4は、第二実施形態に係る直列式キャパシタブロックの構成を示すブロック図である。
図4のパート(a)は、ただ1つの直列キャパシタ列を有する直列式キャパシタブロックを示す。
図4のパート(b)は、複数の直列キャパシタ列を有する直列式キャパシタブロックを示す。
【0051】
本実施形態の直列式キャパシタブロック40は、ただ1つの直列キャパシタ列41Aを有する場合でも、或いは複数の直列キャパシタ列41B,41Cを有する場合でも、複数のバイパス回路43を備えている。両者の場合に共通の特徴について説明する。本実施形態における残りの点は第一実施形態と同じであるため、第一実施形態と共通の要素には同じ符号を付し、共通の説明を省略する。
【0052】
複数のバイパス回路43は、複数のキャパシタセル42と、それぞれ接続されている。バイパス回路43の各々は、各々のキャパシタセル42の正端子42a及び負端子42bを介してキャパシタセル42と並列接続されている。なお、
図4では、見やすさのため、1つのキャパシタセル42の正端子42a及び負端子42bのみ符号が付されている。
複数のバイパス回路43のそれぞれは、正端子42aと負端子42bの電圧が上限電圧を超える場合に、キャパシタセル42に向かって供給される電流を正端子42aから負端子42bにバイパスする。上限電圧は、キャパシタセル42の最大定格電圧と等しいか又は最大定格電圧よりも小さい電圧である。
バイパス回路43は、例えば、図示しない電圧検出素子及び電流スイッチ素子で構成される。電圧検出素子は、正端子42a及び負端子42bの間の電圧が上限電圧を超えたことを検出する。電流スイッチ素子は、キャパシタセル42と並列接続され、電圧検出素子による検出に応じて、正端子42aから負端子42bへ電流を流す。バイパス回路43は、例えば、定電圧ダイオード及びトランジスタを用いて簡潔な構成で実現することができる。
従って、本実施形態によれば、例えば、複数のキャパシタセルのそれぞれの電圧、電流、温度を集中管理するバッテリ制御装置を削除又は簡単化することができる。よって、部品又は回路についてより高い設計自由度を有することができる。
【0053】
[第三実施形態]
図5は、第三実施形態に係る直列式キャパシタブロックとバッテリの接続状態を説明するブロック図である。
図5のパート(a)は、エンジンの始動時における電気的な接続状態を示す。
図5のパート(b)は、予備充電時における電気的な接続状態を示す。
図5のパート(c)は、メイン電源スイッチがオフの場合における電気的な接続状態を示す。なお
図5には、直列式キャパシタブロックとして、上記構成(A)の例が示されている。
【0054】
図5のパート(a)及びパート(b)に示す本実施形態の状態は、
図2のパート(a)及びパート(b)を参照して説明した第一実施形態の状態と同じである。このため、
図5のパート(a)に示すエンジンの始動時の状態と、
図5のパート(b)に示す予備充電時における状態についての説明は省略し、
図5のパート(c)に示すメイン電源スイッチがオフの場合における状態について説明する。
【0055】
本実施形態における制御装置60は、メイン電源スイッチ5がオフの場合、接続切換装置51~54に、バッテリ30と直列式キャパシタブロック40とを切断状態にさせるように、接続切換装置51~54を制御する。これにより、バッテリ30から直列式キャパシタブロック40への電流が遮断される。
【0056】
直列式キャパシタブロック40を構成するキャパシタセル42では、漏れ電流に起因して蓄えられた電力が徐々に失われる場合がある。バッテリ30と直列式キャパシタブロック40が接続されていると、キャパシタセル42で失われる電力がバッテリ30に蓄えられた電力で補われる。このため、メイン電源スイッチ5が長時間に亘りオフの場合、バッテリ30に蓄えられた電力が漏れ電流として消費される。
【0057】
本実施形態によれば、メイン電源スイッチ5がオフの場合、直列式キャパシタブロック40の漏れ電流に起因する、バッテリ30に蓄えられた電力の消費が抑制される。従って、比較的小さい容量のバッテリが搭載される車両を含む広範な種類の車両に始動発電機20を適用することができる。
【0058】
なお、
図5のパート(c)では、バッテリ30が他の装置と電気的に接続されない状態が示されている。ただし、バッテリ30は、メイン電源スイッチ5がオフの場合であっても、例えば図示しい遠隔認証キーと通信するセキュリティ装置に電力を供給し得る。また、バッテリ30は、メイン電源スイッチ5がオフの場合であっても、例えば、制御装置60に電力を供給し得る。
【0059】
また、エンジン10が燃焼動作して、始動発電機20が発電している場合、バッテリ30及び直列式キャパシタブロック40が始動発電機20に対し並列に接続され、バッテリ30及び直列式キャパシタブロック40の双方が充電される。
ただし、エンジン10の燃焼動作におけるバッテリ30及び直列式キャパシタブロック40の接続形態はこれに限られない。
例えば、エンジン10が燃焼動作している場合、直列式キャパシタブロック40が始動発電機20に接続されることなく、バッテリ30が始動発電機20に接続されてもよい。また、例えば、エンジン10が燃焼動作している場合、まず、バッテリ30が始動発電機20に接続されることなく直列式キャパシタブロック40が始動発電機20に接続され、次に、直列式キャパシタブロック40の電圧が目標電圧を超える場合に、直列式キャパシタブロック40が始動発電機20に接続されることなくバッテリ30が始動発電機20に接続されてもよい。この場合、バッテリ30及び直列式キャパシタブロック40の双方が充電されるので、バッテリ30の電力の予備充電時における減少量が抑制される。
【0060】
[第四実施形態]
図6は、第四実施形態に係る始動発電機を示す断面図である。
【0061】
図6に示す始動発電機20は、ロータ70と、ステータ80とを有する。始動発電機20は、ラジアルギャップ型である。始動発電機20は、アウタロータ型である。即ち、ロータ70はアウタロータである。ステータ80はインナーステータである。ロータ70は、クランク軸15(
図1参照)の一端部にクラッチを介さずに接続されている。ロータ70は、常にクランク軸15の回転と連動して回転する。
また、ロータ70は、クランク軸15の一端部に減速機を介さずに接続されている。ロータ70は、クランク軸15の一端部に固定されている。
ロータ70は、ロータ本体部71を有する。ロータ本体部71は、例えば強磁性材料からなる。ロータ本体部71は、有底筒状を有する。ロータ本体部71は、筒状のバックヨーク部74を有する。ロータ本体部71はクランク軸15に固定されている。ロータ70には、電流が供給される巻線が設けられていない。
【0062】
ロータ70は、永久磁石部77を有する。ロータ70は、複数の磁極部77aを有する。複数の磁極部77aは永久磁石部77により形成されている。複数の磁極部77aは、バックヨーク部74の内周面に、設けられている。永久磁石部77は、複数の永久磁石を有する。即ち、ロータ70は、複数の永久磁石を有する。複数の磁極部77aは、複数の永久磁石のそれぞれに設けられている。
なお、永久磁石部77は、1つの環状の永久磁石によって形成されることも可能である。この場合、1つの永久磁石は、複数の磁極部77aが内周面に並ぶように着磁される。
【0063】
複数の磁極部77aは、始動発電機20の周方向にN極とS極とが交互に配置されるように設けられている。本適用例では、ステータ80と対向するロータ70の磁極数が24個である。ロータ70の磁極数とは、ステータ80と対向する磁極数をいう。磁極部77aとステータ80との間には磁性体が設けられていない。
磁極部77aは、始動発電機20の径方向におけるステータ80よりも外方に設けられている。バックヨーク部74は、径方向における磁極部77aよりも外方に設けられている。始動発電機20は、歯部85の数よりも多い磁極部77aを有している。
なお、ロータ70は、磁極部77aが磁性材料に埋め込まれた埋込磁石型(IPM型)であってもよいが、本適用例のように、磁極部77aが磁性材料から露出した表面磁石型(SPM型)であることが好ましい。
【0064】
ステータ80は、ステータコアSTと複数の巻線Wとを有する。ステータコアSTは、周方向に間隔を空けて設けられた複数の歯部(ティース)85を有する。複数の歯部85は、ステータコアSTから径方向外方に向かって一体的に延びている。本適用例においては、合計18個の歯部85が周方向に間隔を空けて設けられている。換言すると、ステータコアSTは、周方向に間隔を空けて形成された合計18個のスロットSLを有する。歯部85は周方向に等間隔で配置されている。
【0065】
ロータ70は、歯部85の数より多い数の磁極部77aを有する。磁極部77aの数は、スロット数の4/3である。
【0066】
各歯部85の周囲には、巻線Wが巻回している。つまり、複数相の巻線Wは、スロットSLを通るように設けられている。
図5には、巻線Wが、スロットSLの中にある状態が示されている。
【0067】
始動発電機20は、三相発電機である。巻線Wのそれぞれは、U相、V相、W相の何れかに属する。巻線Wは、例えば、U相、V相、W相の順に並ぶように配置される。
【0068】
始動発電機20の構成において、磁極部77aで形成される極対を歯部85が通過する電気角周期に基づく角速度が、例えばスロットの数の2/3と等しい又はそれより少ない磁極部を有する構成の場合と比べて大きい。このため、巻線Wのインピーダンスは、例えば歯部の数の2/3と等しい又はそれより少ない磁極部を有する構成の場合と比べて大きい。このため、エンジン10が再始動した後、始動発電機20が発電機として機能する回転速度の領域において流れる発電電流が、より大きな巻線Wのインピーダンスによって抑制される。このため、放熱のための構造をより簡潔にして小型化することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 車両
5 メイン電源スイッチ
6 始動スイッチ
10 エンジン
15 クランク軸
20 始動発電機
30 バッテリ
40 直列式キャパシタブロック
40a 正極
40b 負極
41A,41B、41C 直列キャパシタ列
42 キャパシタセル
42a 正端子
42b 負端子
43 バイパス回路
51~54 接続切換装置
60 制御装置
70 ロータ
77a 磁極部
80 ステータ
85 歯部
SL スロット
ST ステータコア
W 巻線