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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131315
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】過給機
(51)【国際特許分類】
   F02B 39/00 20060101AFI20230914BHJP
   F02B 37/24 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
F02B39/00 E
F02B37/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035996
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三原 勇二
【テーマコード(参考)】
3G005
【Fターム(参考)】
3G005EA04
3G005EA16
3G005FA32
3G005FA51
3G005GB24
3G005GB81
3G005GB86
3G005GB88
(57)【要約】
【課題】2つのスクロール流路の間の排気ガスの漏れを抑制すること。
【解決手段】過給機100は、インペラ8を収容する空間SP1と、インペラ8の径方向において空間SP1の外側に位置する第1のスクロール流路15および第2のスクロール流路16と、第1のスクロール流路15および第2のスクロール流路16を空間SP1に接続する接続流路14と、を含むハウジング3と、接続流路14に配置される複数の固定式のベーンVであって、各スクロール流路15,16および接続流路14を径方向に仕切る壁W1,W2と一体に形成される第1のベーンV1と、インペラ8の円周方向において第1のベーンV1の間に配置される第2のベーンV2と、を含む複数の固定式のベーンVと、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インペラを収容する空間と、前記インペラの径方向において前記空間の外側に位置する第1のスクロール流路および第2のスクロール流路と、前記第1のスクロール流路および前記第2のスクロール流路を前記空間に接続する接続流路と、を含むハウジングと、
前記接続流路に配置される複数の固定式のベーンであって、各スクロール流路および前記接続流路を前記径方向に仕切る壁と一体に形成される第1のベーンと、前記インペラの円周方向において前記第1のベーンの間に配置される第2のベーンと、を含む複数の固定式のベーンと、
を備える、過給機。
【請求項2】
インペラを収容する空間と、前記インペラの径方向において前記空間の外側に位置する第1のスクロール流路および第2のスクロール流路と、前記第1のスクロール流路および前記第2のスクロール流路を前記空間に接続する接続流路と、を含むハウジングと、
前記接続流路に配置される複数の固定式のベーンであって、当該ベーンと、各スクロール流路および前記接続流路を前記径方向に仕切る壁との間の距離は、各スクロール流路の舌部において最小である、複数の固定式のベーンと、
を備える、過給機。
【請求項3】
前記複数の固定式のベーンは、各スクロール流路の前記舌部に最も近い第1のベーンと、前記インペラの円周方向において前記第1のベーンの間に配置される第2のベーンと、を含み、
前記第1のベーンの長さは、前記第2のベーンの長さよりも大きい、請求項2に記載の過給機。
【請求項4】
前記第1のベーンは、対応する舌部と接触する、請求項3に記載の過給機。
【請求項5】
前記第1のベーンと、対応する舌部とは、それらの間に隙間を有し、
前記複数の固定式のベーンの間の全てのスロートの合計面積に対する、前記隙間の面積の割合が、0%より大きく4%以下である、請求項3に記載の過給機。
【請求項6】
前記割合が、2%以下である、請求項5に記載の過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
過給機のタービンは、スクロール流路の下流にベーンを備える場合がある。例えば、特許文献1は、可動ベーンを備える過給機を開示する。この過給機は、2つのスクロール流路を備え、各スクロール流路の端部と対向する可動ベーンは、他の可動ベーンよりも大きい。これらの大きい可動ベーンは、2つのスクロール流路を互いに連通させる位置と、2つのスクロール流路を互いに遮断する位置と、の間で移動可能である。低速運転時には、これらの大きい可動ベーンは、2つのスクロール流路を互いに遮断する。
【0003】
また、特許文献2は、可動式のシールベーンを備えるターボチャージャを開示する。このターボチャージャは、2つのスクロール流路を備え、各スクロール流路の端部と対向するシールベーンは、2つのスクロール流路の間のバイパスを開閉するように構成される。このターボチャージャでは、必要な温度まで排気ガス温度を上げる場合に、ターボチャージャの効率を積極的に低下させるために、シールベーンによってバイパスを開く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-144664号公報
【特許文献2】特表2016-504520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
2つのスクロール流路を備える過給機では、一方のスクロール流路で圧力が高くなり、他方のスクロール流路で圧力が低くなる。したがって、高い圧力を有するスクロール流路から、低い圧力を有するスクロール流路に向けて排気ガスが漏れる可能性がある。このような排気ガスの漏れは、過給機の効率の低下に繋がり得る。
【0006】
このような排気ガスの漏れを防止するために、例えば、上記の特許文献1,2の可動式のベーンを使用して、2つのスクロール流路を互いに遮断することが考えられ得る。しかしながら、ベーンとスクロール流路の壁面との間の頻繁な接触は、ベーンの故障に繋がり得る。したがって、このような接触を避けるためには、ベーンとスクロール流路の壁面との間に隙間を維持しなければならない。この場合、排気ガスの漏れを抑制することができないおそれがある。
【0007】
本開示は、2つのスクロール流路の間の排気ガスの漏れを抑制することができる過給機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る過給機は、インペラを収容する空間と、インペラの径方向において空間の外側に位置する第1のスクロール流路および第2のスクロール流路と、第1のスクロール流路および第2のスクロール流路を空間に接続する接続流路と、を含むハウジングと、接続流路に配置される複数の固定式のベーンであって、各スクロール流路および接続流路を径方向に仕切る壁と一体に形成される第1のベーンと、インペラの円周方向において第1のベーンの間に配置される第2のベーンと、を含む複数の固定式のベーンと、を備える。
【0009】
本開示の他の態様に係る過給機は、インペラを収容する空間と、インペラの径方向において空間の外側に位置する第1のスクロール流路および第2のスクロール流路と、第1のスクロール流路および第2のスクロール流路を空間に接続する接続流路と、を含むハウジングと、接続流路に配置される複数の固定式のベーンであって、当該ベーンと、各スクロール流路および接続流路を径方向に仕切る壁との間の距離は、各スクロール流路の舌部において最小である、複数の固定式のベーンと、を備える。
【0010】
複数の固定式のベーンは、各スクロール流路の舌部に最も近い第1のベーンと、インペラの円周方向において第1のベーンの間に配置される第2のベーンと、を含んでもよく、第1のベーンの長さは、第2のベーンの長さよりも大きくてもよい。
【0011】
第1のベーンは、対応する舌部と接触してもよい。
【0012】
第1のベーンと、対応する舌部とは、それらの間に隙間を有してもよく、複数の固定式のベーンの間の全てのスロートの合計面積に対する、隙間の面積の割合が、0%より大きく4%以下であってもよい。
【0013】
上記の割合が、2%以下であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、2つのスクロール流路の間の排気ガスの漏れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、第1実施形態に係る過給機の概略的な断面図である。
図2図2は、図1中のII-II線に沿った概略的な断面図である。
図3図3は、第2実施形態に係る過給機を示す概略的な断面図である。
図4図4は、第3実施形態に係る過給機を示す概略的な断面図である。
図5図5は、第1のベーンと舌部との間の隙間がどのように漏れ量に影響を及ぼすかを説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料および数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0017】
図1は、第1実施形態に係る過給機100の概略的な断面図である。本実施形態に係る過給機100は、例えば、船舶のエンジンに適用される。過給機100の適用先はこれに限定されず、過給機100は船舶以外の様々な機械に適用されてもよい。過給機100は、ハウジング1と、シャフト7と、タービンインペラ8と、コンプレッサインペラ9と、を備える。
【0018】
後述するように、タービンインペラ8およびコンプレッサインペラ9は、シャフト7と一体的に回転する。したがって、シャフト7の中心軸線方向、径方向および円周方向は、タービンインペラ8およびコンプレッサインペラ9にも共通である。本開示では、これらシャフト7、タービンインペラ8およびコンプレッサインペラ9の中心軸線方向、径方向および円周方向は、他に指示が無い限り、それぞれ単に「中心軸線方向」、「径方向」および「円周方向」と称され得る。
【0019】
ハウジング1は、ベアリングハウジング2と、タービンハウジング3と、コンプレッサハウジング4と、を含む。中心軸線方向において、ベアリングハウジング2の一方の端部は、Gカップリング等の締結機構21aによってタービンハウジング3に連結される。中心軸線方向において、ベアリングハウジング2の他方の端部は、締結ボルト等の締結機構21bによってコンプレッサハウジング4に連結される。
【0020】
ベアリングハウジング2は、軸受孔22を含む。軸受孔22は、ベアリングハウジング2内を中心軸線方向に延在する。軸受孔22は、軸受50,60を収容する。軸受50,60は、シャフト7を回転可能に支持する。
【0021】
中心軸線方向において、シャフト7の第1の端部には、タービンインペラ8が設けられる。タービンハウジング3は、タービンインペラ8を回転可能に収容する第1の空間SP1を含む。中心軸線方向において、第1の端部とは反対側のシャフト7の第2の端部には、コンプレッサインペラ9が設けられる。コンプレッサハウジング4は、コンプレッサインペラ9を回転可能に収容する第2の空間SP2を含む。
【0022】
コンプレッサハウジング4は、中心軸線方向においてベアリングハウジング2と反対側の端部に、吸気口10を含む。吸気口10は、不図示のエアクリーナに接続される。ベアリングハウジング2およびコンプレッサハウジング4は、それらの間にディフューザ流路11を規定する。ディフューザ流路11は、環状形状を有する。ディフューザ流路11は、コンプレッサインペラ9および第2の空間SP2に対して径方向外側に位置する。ディフューザ流路11は、第2の空間SP2を介して吸気口10に連通する。
【0023】
コンプレッサハウジング4は、コンプレッサスクロール流路12を含む。コンプレッサスクロール流路12は、ディフューザ流路11に対して径方向外側に位置する。コンプレッサスクロール流路12は、ディフューザ流路11と連通する。また、コンプレッサスクロール流路12は、不図示のエンジンの吸気口と連通する。
【0024】
コンプレッサCでは、コンプレッサインペラ9が回転すると、吸気口10からコンプレッサハウジング4内に空気が吸気される。吸気は、コンプレッサインペラ9の翼の間の空間を通る間に、遠心力によって増速される。増速された空気は、ディフューザ流路11およびコンプレッサスクロール流路12で加圧される。加圧された空気は、不図示の吐出口から流出し、エンジンの吸気口に導かれる。
【0025】
タービンハウジング3は、中心軸線方向においてベアリングハウジング2と反対側の端部に、吐出口13を含む。吐出口13は、不図示の排気ガス浄化装置に接続される。
【0026】
図2は、図1中のII-II線に沿った概略的な断面図である。タービンハウジング3は、接続流路14と、第1のスクロール流路15と、第2のスクロール流路16と、を含む。すなわち、タービンTbは、ダブルスクロールタービンである。接続流路14は、環状形状を有する。接続流路14は、第1のスクロール流路15および第2のスクロール流路16を、第1の空間SP1に接続する。接続流路14は、タービンインペラ8および第1の空間SP1の径方向外側に位置する。接続流路14には、複数の固定式のベーンVが配置される。ベーンVについては、詳しくは後述する。
【0027】
第1のスクロール流路15は、接続流路14の径方向外側に位置する。第1のスクロール流路15および接続流路14は、壁W1によって径方向に互いに仕切られる。第2のスクロール流路16は、部分的に第1のスクロール流路15の径方向外側に位置し、かつ、部分的に接続流路14の径方向外側に位置する。第2のスクロール流路16および接続流路14は、壁W2によって径方向に互いに仕切られる。第1のスクロール流路15および第2のスクロール流路16の各々は、不図示のガス流入口と連通する。ガス流入口は、不図示のエンジンの排気マニホールドから排出される排気ガスを受け入れる。
【0028】
図1を参照して、タービンTbでは、排気ガスがガス流入口から第1のスクロール流路15および第2のスクロール流路16に導かれ、さらに、接続流路14および第1の空間SP1を介して吐出口13に導かれる。排気ガスは、タービンインペラ8の翼の間の空間を通る間に、タービンインペラ8を回転させる。
【0029】
タービンインペラ8の回転力は、シャフト7を介してコンプレッサインペラ9に伝達される。コンプレッサインペラ9が回転すると、上記のとおりに空気が加圧される。こうして、加圧された空気がエンジンの吸気口に導かれる。
【0030】
続いて、ベーンVについて詳細に説明する。
【0031】
図2を参照して、複数のベーンVは、円周方向に沿って互いに離間して接続流路14に配置される。複数のベーンVは、第1のベーンV1と、第2のベーンV2と、を含む。
【0032】
第1のベーンV1は、壁W1,W2に一体に形成される。すなわち、径方向において第1のベーンV1の最も内側の部分は、第1のスクロール流路15の舌部T1、および、第2のスクロール流路16の舌部T2を規定する。本開示において、「舌部」とは、スクロール流路15,16および接続流路14を径方向に仕切る壁W1,W2の円周方向における端部を意味する。したがって、第1のベーンV1と壁W1,W2との間には、隙間は無い。もし、第1のベーンV1と壁W1,W2とが離れている場合、排気ガスの流れFとは逆向きの方向に、第1のスクロール流路15から第2のスクロール流路16に向かう漏れ流れ、または、第2のスクロール流路16から第1のスクロール流路15に向かう漏れ流れが発生する場合がある(例えば、図4の漏れ流れL1,L2を参照)。図2を参照して、しかしながら、本実施形態では、第1のベーンV1と壁W1,W2との間に隙間は無いため、このような漏れ流れを遮断することができる。
【0033】
第1のベーンV1の表面は、壁W1の径方向外側の表面、すなわち、第1のスクロール流路15を規定する表面に対して滑らかに連続する。また、第1のベーンV1の表面は、壁W1の径方向内側の表面、すなわち、接続流路14を規定する表面に対して滑らかに連続する。他の実施形態では、例えば、壁W1と別に準備される第1のベーンV1が後で壁W1に対して連結される場合には、第1のベーンV1の表面と、壁W1の径方向内側の表面との間の接合部には、窪みまたは突起等の滑らかでない部分が形成されてもよい。
【0034】
第1のベーンV1の表面は、壁W2の径方向外側の表面、すなわち、第2のスクロール流路16を規定する表面に対して滑らかに連続する。また、第1のベーンV1の表面は、壁W2の径方向内側の表面、すなわち、接続流路14を規定する表面に対して滑らかに連続する。他の実施形態では、例えば、壁W2と別に準備される第1のベーンV1が後で壁W2に対して連結される場合には、第1のベーンV1の表面と、壁W2の径方向内側の表面との間の接合部には、窪みまたは突起等の滑らかでない部分が形成されてもよい。
【0035】
第2のベーンV2は、円周方向において2つの第1のベーンV1の間に位置する。第2のベーンV2は、壁W1,W2から離間する。第2のベーンV2は、流れ方向Fにおいて下流側の端部、すなわちトレイリングエッジが、上流側の端部、すなわちリーディングエッジよりも径方向内側に位置するように、円周方向に対して傾斜する。
【0036】
第1のベーンV1は、第1のベーンV1が壁W1,W2と一体に形成される点で第2のベーンV2と異なり、その他の点については、第1のベーンV1は、第2のベーンV2と略同じであってもよい。具体的には、第1のベーンV1の径方向内側の部分は、第2のベーンV2の径方向内側の部分と同じまたは略同じであってもよい。
【0037】
上記のような過給機100は、タービンインペラ8を収容する第1の空間SP1と、径方向において第1の空間SP1の外側に位置する第1のスクロール流路15および第2のスクロール流路16と、第1のスクロール流路15および第2のスクロール流路16を第1の空間SP1に接続する接続流路14と、を含むタービンハウジング3と、接続流路14に配置される複数の固定式のベーンVと、を備える。ベーンVは、各スクロール流路15,16および接続流路14を径方向に仕切る壁W1,W2に一体に形成される第1のベーンV1と、円周方向において第1のベーンV1の間に配置される第2のベーンV2と、を含む。このような構成によれば、第1のベーンV1と壁W1,W2との間に隙間は無いため、第1のスクロール流路15から第2のスクロール流路16に向かう漏れ流れ、または、第2のスクロール流路16から第1のスクロール流路15に向かう漏れ流れを遮断することができる。
【0038】
続いて、他の実施形態について説明する。
【0039】
図3は、第2実施形態に係る過給機200を示す概略的な断面図である。過給機200は、第1のベーンV1が壁W1,W2とは別体である点で、上記の過給機100と異なる。他の点については、過給機200は、過給機100と同じであってもよい。
【0040】
上記のように、第1のベーンV1は、壁W1,W2とは別体である。したがって、第1のスクロール流路15の舌部T1、および、第2のスクロール流路16の舌部T2は、第1のベーンV1とは別である。
【0041】
本実施形態では、ベーンVと壁W1,W2との間の距離は、舌部T1,T2において最小である。具体的には、本実施形態では、第1のベーンV1は、舌部T1,T2に連続的に形成される。別の表現では、第1のベーンV1は、舌部T1,T2と接触する。したがって、第1のベーンV1と舌部T1,T2との間には、隙間は無い。すなわち、第1のベーンV1と舌部T1,T2との間の距離は、ゼロである。したがって、第1のベーンV1と壁W1,W2との間の距離、すなわち、第1のベーンV1と舌部T1,T2との間の距離は、第2のベーンV2と壁W1,W2との間の距離dよりも小さい。
【0042】
第1のベーンV1の長さは、第2のベーンV2の長さよりも大きい。本開示において、第1のベーンV1および第2のベーンV2の「長さ」とは、各ベーンのリーディングエッジおよびトレイリングエッジを結ぶ線分の長さを意味する。
【0043】
上記のような過給機200は、タービンインペラ8を収容する第1の空間SP1と、径方向において第1の空間SP1の外側に位置する第1のスクロール流路15および第2のスクロール流路16と、第1のスクロール流路15および第2のスクロール流路16を第1の空間SP1に接続する接続流路14と、を含むタービンハウジング3と、接続流路14に配置される複数の固定式のベーンVと、を備える。ベーンVと、各スクロール流路15,16および接続流路14を径方向に仕切る壁W1,W2との間の距離は、各スクロール流路15,16の舌部T1,T2において最小である。このような構成によれば、舌部T1,T2における隙間を、他の位置におけるベーンVと壁W1,W2との間の距離dよりも小さくすることができるため、舌部T1,T2における漏れ流れを抑制することができる。
【0044】
また、過給機200では、複数の固定式のベーンVは、各スクロール流路15,16の舌部T1,T2に最も近い第1のベーンV1と、円周方向において第1のベーンV1の間に配置される第2のベーンV2と、を含み、第1のベーンV1の長さは、第2のベーンV2の長さよりも大きい。このような構成によれば、舌部T1,T2に最も近い第1のベーンV1の長さを延ばすだけで、舌部T1,T2における隙間を小さくすることができる。したがって、簡単な構成によって、舌部T1,T2における漏れ流れを抑制することができる。
【0045】
また、過給機200では、第1のベーンV1は、対応する舌部T1,T2と接触する。このような構成によれば、第1のベーンV1と舌部T1,T2との間に隙間は無いため、漏れ流れを遮断することができる。
【0046】
図4は、第3実施形態に係る過給機300を示す概略的な断面図である。過給機300は、第1のベーンV1が壁W1,W2から離間している点で、上記の過給機200と異なる。他の点については、過給機300は、過給機200と同じであってもよい。
【0047】
上記のように、本実施形態では、第1のベーンV1は、舌部T1,T2から離間している。別の表現では、第1のベーンV1は、舌部T1,T2と非接触である。したがって、第1のベーンV1と舌部T1,T2との間には、隙間gが形成される。このような構成では、隙間gにおいて、第1のスクロール流路15から第2のスクロール流路16に向かう漏れ流れL1、または、第2のスクロール流路16から第1のスクロール流路15に向かう漏れ流れL2が発生する場合がある。
【0048】
図5は、第1のベーンV1と舌部T1,T2との間の隙間gがどのように漏れ量に影響を及ぼすかを説明するグラフである。図5では、図4に示すような過給機300における漏れ流れL1,L2を、CFD(Computational Fluid Dynamic)によって解析した。
【0049】
グラフの横軸は、複数のベーンVの間の総スロート面積に対する、各隙間gの面積の割合r(%)を示す。各スロートの面積は、中心軸線方向に見て隣接する2つのベーンの間の距離が最短な位置における、流路の断面から得られる。同様に、隙間gの面積は、中心軸線方向に見て第1のベーンと舌部T1,T2との間の距離が最短な位置における、隙間gの断面から得られる。割合rは、総スロート面積に対する、各舌部T1,T2における隙間gの面積、すなわち、舌部T1,T2の一方における隙間gの面積の割合を示す。
【0050】
グラフの縦軸は、漏れ量(%)を示す。
【0051】
図5に示されるように、割合rが減少するにつれて、すなわち、隙間gが減少するにつれて、漏れ量も減少する。漏れ量は、割合rが約4%において急激に減少する。したがって、割合rが4%以下になるように隙間gを設計することによって、漏れ量を大きく低減させることができることがわかる。また、割合rが約2%以下であれば、漏れ量を20%以下という小さい値に抑制することができることがわかる。
【0052】
図4を参照して、上記の知見に基づく過給機300では、第1のベーンV1と、対応する舌部T1,T2とは、それらの間に隙間gを有し、複数の固定式のベーンVの間の全てのスロートの合計面積に対する、隙間gの面積の割合rが、0%より大きく4%以下、より具体的には0%より大きく2%以下である。このような構成によれば、第1のスクロール流路15から第2のスクロール流路16に向かう漏れ流れL1、または、第2のスクロール流路16から第1のスクロール流路15に向かう漏れ流れL2を、小さい値に抑制することができる。
【0053】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0054】
本開示は、過給機の効率の低下を抑制することができるので、例えば、持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する」に貢献することができる。
【符号の説明】
【0055】
3 タービンハウジング
8 タービンインペラ
14 接続流路
15 第1のスクロール流路
16 第2のスクロール流路
100 過給機
200 過給機
300 過給機
g 隙間
r スロートの合計面積に対する隙間の面積の割合
SP1 第1の空間
T1 舌部
T2 舌部
V ベーン
V1 第1のベーン
V2 第2のベーン
W1 壁
W2 壁
図1
図2
図3
図4
図5