(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131330
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】標示杭
(51)【国際特許分類】
G01C 15/04 20060101AFI20230914BHJP
G01C 15/06 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
G01C15/04
G01C15/06 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036020
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】591034017
【氏名又は名称】株式会社リプロ
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100220892
【弁理士】
【氏名又は名称】舘 佳耶
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(72)【発明者】
【氏名】岡田 謙吾
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 佳佑
(57)【要約】
【課題】
ネジ等の取付部材を用いることなく、標示部材を杭部材に取り付けることができ、施工の手間を軽減することができる標示杭を提供する。
【解決手段】
標示杭1を、下端部が地中に埋設される杭部材10と、杭部材10の上端面又は側面に取り付けられた標示部材20とを備えたものとし、標示部材20に磁着部22を設ける一方で、杭部材10には被磁着部13を設け、磁着部22と被磁着部13とが磁着することで、標示部材20が杭部材10に取り付けられるようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下端部が地中に埋設される杭部材と、
杭部材の上端面又は側面に取り付けられた標示部材と
を備えた標示杭であって、
標示部材に磁着部が設けられる一方で、杭部材には被磁着部が設けられており、
前記磁着部と前記被磁着部とが磁着することで、標示部材が杭部材に取り付けられる
ことを特徴とする標示杭。
【請求項2】
前記被磁着部が、杭部材に設けられた凹部に配されており、
当該凹部に、標示部材が嵌め込まれた
請求項1記載の標示杭。
【請求項3】
前記凹部に嵌め込まれた標示部材の外面と、当該凹部の周辺における杭部材の外面とが略面一とされた請求項2記載の標示杭。
【請求項4】
標示部材の外周形状が、前記凹部の内壁形状と略同一とされた請求項2又は3記載の標示杭。
【請求項5】
杭部材が、
杭本体と、
杭本体の上部に被せられたキャップと
を備え、
キャップに、前記被磁着部が設けられ、
杭本体に、電子デバイスが収容され、
前記被磁着部と電子デバイスとの間に、電子デバイスを磁気的に保護するための磁気防止材料で形成された部材が配された
請求項1から4いずれか記載の標示杭。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭部材と標示部材とで構成される標示杭に関する。
【背景技術】
【0002】
杭は、地面に打ち込まれ、土地の境界や測量時の基準点等を示す印として利用される。このような杭には、その識別番号等、杭の管理に必要な情報が標示される。また、この種の杭には、矢印や十字マーク等の指示記号が標示されることもある。この指示記号により、土地の境界や測量時の基準点等のより詳細な位置を把握することができる。識別番号や指示記号等の情報(杭関連情報)が標示された杭は、一般に、標示杭と呼ばれている。
【0003】
標示杭には、杭関連情報が標示された標示部材を、杭部材に取り付けるタイプのものがある。例えば特許文献1に、このタイプの標示杭が記載されている。特許文献1の標示杭は、ネジ等(同文献における
図2の止着部材15)を用いて、標示部材(同文献における表示プレート20)を杭部材(同文献における杭本体1及びキャップ12)に取り付ける構造となっている。具体的には、標示部材及び杭部材に設けられたネジ孔(同文献における挿通孔21及び挿入孔13)にネジ等を通して螺合することで、標示部材を杭部材に取り付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の標示杭では、標示部材を杭部材に取り付けるために、ネジ孔にネジ等を押し込む必要があった。このため、標示部材の取り付けに、手間を要していた。また、標示部材の取り付けに必要なネジ等を紛失するおそれもあった。さらに、ネジ等やそれを通すためのネジ孔の位置を考慮して、標示のレイアウトを行う必要もあった。加えて、ネジ等に鉄等の金属を採用した場合には、その錆(腐食物)が標示部材の外面に広がって、標示を見にくくするおそれもあった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、ネジ等の取付部材を用いることなく、標示部材を杭部材に取り付けることができ、施工の手間を軽減することができる標示杭を提供するものである。また、取付部材の紛失を防ぐことができる標示杭を提供することも本発明の目的である。さらに、標示のレイアウトの自由度が高い標示杭を提供することも本発明の目的である。加えて、標示の視認性が低下しにくい標示杭を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、
少なくとも下端部が地中に埋設される杭部材と、
杭部材の上端面又は側面に取り付けられた標示部材と
を備えた標示杭であって、
標示部材に磁着部が設けられる一方で、杭部材には被磁着部が設けられており、
前記磁着部と前記被磁着部とが磁着することで、標示部材が杭部材に取り付けられる
ことを特徴とする標示杭
を提供することによって解決される。
【0008】
本発明の標示杭においては、標示部材の磁着部と杭部材の被磁着部とが磁着することで、標示部材が杭部材に取り付けられる。このため、ネジ等の取付部材を用いなくても、標示部材を杭部材に取り付けることができる。したがって、標示杭の施工の手間を軽減することができる。また、取付部材の紛失を防ぐことも可能となる。さらに、取付部材等を考慮して、標示のレイアウトを行う必要もなくなる。加えて、取付部材の腐食等による標示の視認性の低下も防ぐことができる。
【0009】
しかし、標示部材と杭部材とが磁着しているだけだと、イタズラで標示部材が取り外されるおそれがある。このため、本発明の標示杭においては、杭部材に設けられた凹部に、標示部材を嵌め込むことが好ましい。これにより、標示部材を簡単に取り外すことができなくなる。また、取り付け後に標示部材の取り付け位置がズレないようにすることもできる。
【0010】
本発明の標示杭においては、前記凹部に嵌め込んだ標示部材の外面と、当該凹部の周辺における杭部材の外面とを略面一にすることが好ましい。これにより、標示部材をつかみにくくなり、標示部材をさらに取り外しにくくすることができる。
【0011】
本発明の標示杭においては、標示部材の外周形状を、前記凹部の内壁形状と略同一にすることが好ましい。これにより、標示部材の側面と当該凹部の内壁との間に隙間が殆どない状態となり、標示部材をより一層取り外しにくくすることができる。
【0012】
ところで、近年では、杭の高機能化が進められており、種々の電子デバイスを備えた杭が開発されている。本発明の標示杭において、このような電子デバイスを設ける場合には、以下の構成を採用することが好ましい。
すなわち、
杭部材を、
杭本体と、
杭本体の上部に被せられたキャップと
を備えたものとし、
キャップに、前記被磁着部を設け、
杭本体に、電子デバイスを収容し、
前記被磁着部と電子デバイスとの間に、電子デバイスを磁気的に保護するための磁気防止材料で形成された部材を配した
構成である。電子デバイスは、磁気(磁場あるいは磁界)によって、誤動作を起こすおそれがあるところ、被磁着部と電子デバイスとの間に、磁気防止材料で形成された部材を配することで、電子デバイスを磁気的に保護することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によって、取付部材を用いることなく、標示部材を杭部材に取り付けることができ、施工の手間を軽減することができる標示杭を提供することが可能になる。また、取付部材の紛失を防ぐことができる標示杭を提供することも可能となる。さらに、標示のレイアウトの自由度が高い標示杭を提供することも可能となる。加えて、標示の視認性が低下しにくい標示杭を提供することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第一実施形態の標示杭を施工している様子を示した斜視図である。
【
図2】第一実施形態の標示杭における上部付近を示した拡大断面図である。
【
図3】第二実施形態の標示杭を施工している様子を示した斜視図である。
【
図4】第三実施形態の標示杭を施工している様子を示した斜視図である。
【
図5】第四実施形態の標示杭を施工している様子を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の標示杭について、図面を用いてより具体的に説明する。しかし、以下で述べる構成は、飽くまで好適な実施形態であり、本発明の標示杭の技術的範囲は、以下で述べる構成に限定されない。本発明の標示杭には、発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更を施すことができる。
【0016】
1.第一実施形態
1-1.標示杭の使用方法
図1は、第一実施形態における標示杭1の使用状況を示した斜視図である。標示杭1は、地面に打ち込まれ、土地の境界や測量時の基準点等を示す印として利用される。この標示杭1は、主に、杭部材10と標示部材20とを備えている。加えて、標示杭1には、標示杭1を高機能化するための電子デバイス30が設けられている。
【0017】
標示部材20は、識別番号や指示記号等の杭関連情報を標示するためのものである。この標示部材20は、杭関連情報(図示省略)が標示された標示部21と、磁着部22(ここでは永久磁石)とを備えている。
【0018】
杭部材10は、少なくともその下端部が地中に埋め込まれた状態で用いられる。杭部材10の上面には、標示部材20を嵌め込む(収容する)ための凹部12aを設け、その凹部12aの内部には、被磁着部13を設けている。
【0019】
第一実施形態の標示杭1では、磁着部22を被磁着部13に磁着することによって、ネジ等の取付部材を用いることなく、標示部材20を杭部材10に取り付けることができる。このため、標示部材20の取り付けにかかる手間を軽減することができる。また、ネジ等の取付部材の紛失を防ぐことも可能となる。さらに、取付部材等が不要となるため、標示のレイアウトの自由度を向上させることができる。加えて、取付部材の腐食等が原因で、標示が見にくくなることもなくなる。
【0020】
以下、標示杭1の構造についてより詳しく説明する。
【0021】
1-2.標示杭の構造
図2は、杭部材10に標示部材20を取り付けた状態の標示杭1を示した拡大断面図である。第一実施形態の標示杭1では、杭部材10を、杭本体11と、それに被せたキャップ12とで構成している。また、杭本体11の上面には、電子デバイス30を収容するための収容部11aを設け、キャップ12の上面には、標示部材20を嵌め込むための凹部12aを設けている。
【0022】
凹部12aの内部には、被磁着部13を配している。第一実施形態の標示杭1では、被磁着部13を凹部12aの底部に固定している。この被磁着部13は、凹部12aの底部以外の箇所(例えば凹部12aの内壁等)に設けることも可能である。また、キャップ12に対する被磁着部13の固定方法は、特に限定されない。例えば、ボルトや接着剤等を用いて、被磁着部13をキャップ12に固定することができる。第一実施形態の標示杭1では、ボルト(図示省略)で被磁着部13を固定している。
【0023】
被磁着部13の厚さは、特に限定されない。ただし、被磁着部13が薄すぎると、磁着部22と磁着する力が弱くなるおそれがある。このため、被磁着部13の厚さは、薄くしすぎないことが好ましく、例えば0.5mm以上とすることが好ましい。被磁着部13の厚さは、1mm以上とすることがより好ましく、1.5mm以上とすることがさらに好ましい。一方、被磁着部13が厚すぎると、そのコストが不必要に高くなる。このため、被磁着部13の厚さは、厚くしすぎないことが好ましく、例えば5mm以下とすることが好ましい。被磁着部13の厚さは、4mm以下とすることがより好ましく、3mm以下とすることがさらに好ましい。
【0024】
被磁着部13及び磁着部22は、相互に磁着する材料で形成される。磁着に用いられる典型的な部材としては、永久磁石が挙げられる。被磁着部13及び磁着部22の双方を永久磁石で形成することで、それらを強力に磁着させることができる。また、被磁着部13及び磁着部22の一方を永久磁石とし、他方を永久磁石にくっつきやすい部材(以下、「磁石引付部材」と呼ぶことがある。)とすることもできる。特に、被磁着部13は、永久磁石ではなく、磁石引付部材にすることが好ましい。というもの、被磁着部13が永久磁石だと、鉄片等、標示部材20とは別の異物が凹部12aに入り込んで被磁着部13と磁着することが懸念されるからである。被磁着部13を磁石引付部材とすれば、磁着部22(永久磁石)とは磁着しながらも、異物(磁化されていないものに限る。)とは磁着しないようにすることができる。
【0025】
永久磁石としては、磁気を発するものであれば特に限定されず、例えば、アルニコ磁石や、フェライト磁石や、ネオジム磁石等を採用することができる。第一実施形態の標示杭1では、磁着部22をフェライト磁石としている。なお、磁着部22(永久磁石)の磁化方向は、特に限定されず、厚さ方向に磁化されていても(例えば標示部21との界面側にN極が現れ、その反対面側にS極が現れるようにしても)、面方向に磁化されていても(例えば、
図2の左側にN極が現れ、右側にS極が現れるようにしても)よい。
【0026】
磁石引付部材としては、例えば、質量磁化率が30×10-6~300×109cm3/gのものを採用することができる。具体的には、クロム(およそ3.5×10-6cm3/g)やマンガン(およそ9.2×10-6cm3/g)等が例示される。磁石引付部材としてより好ましい材料は、質量磁化率がより高いものであり、例えば鉄(およそ220×109cm3/g)を採用することができる。鉄の他にも、好適な材料としては、ニッケルやコバルト等の強磁性体材料(それらを含む合金)が例示される。第一実施形態の標示杭1では、被磁着部13を鉄で形成している。
【0027】
また、磁着部22及び被磁着部13は、より広い面積で接触することが好ましい。これにより、標示部材20と杭部材10(キャップ12)とをより強力に磁着させることができる。このため、磁着部22は、標示部材20(標示部21)の一方の面に、全面的に設けることが好ましい。また、被磁着部13は、磁着部22と同等のサイズで形成することが好ましい。第一実施形態の標示杭1では、磁着部22を、標示部材20の一方の面に全面的に設け、被磁着部13を、凹部12aの底部全面を覆うサイズとし、磁着部22よりも若干大きく形成している。
【0028】
磁着部22及び被磁着部13を相互に磁着する部材で形成する一方で、標示部21は、それらにくっつきにくい材料(以下、「非磁石引付部材」と呼ぶことがある。)で形成することが好ましい。というのも、標示部21を磁石引付部材で形成すると、標示部21が磁着部22(永久磁石)によって磁化されて、被磁着部13に磁着する(標示部材20がひっくり返って凹部12aに嵌る)ためである。標示部21に好適に採用できる非磁石引付部材としては、プラスチックや、アルミニウムや銅等の永久磁石に誘引されにくい金属が例示される。第一実施形態の標示杭1では、標示部21を、防錆処理を施したアルミニウムで形成している。
【0029】
同様に、杭部材10(杭本体11及びキャップ12)も、非磁石引付部材で形成することが好ましい。というのも、杭部材10が磁石引付部材で形成すると、標示部材20(磁着部22)が意図しない箇所(凹部12a以外の箇所)に磁着しまうためである。杭部材10に好適に採用できる非磁石引付部材としては、プラスチックや木材、コンクリート等が例示される。第一実施形態の標示杭1では、杭部材10を、プラスチック(樹脂部材)で形成している。
【0030】
このように、第一実施形態の標示杭1では、磁着部22及び被磁着部13が磁着することにより、標示部材20が杭部材10に取り付けられるところ、磁着しているだけだと、イタズラで標示部材20が取り外されるおそれがある。これを防ぐために、第一実施形態の標示杭1においては、標示部材20の外周形状を凹部12aの内壁形状と略同一にして、標示部材20の側面と凹部12aの内壁との間に隙間が殆ど生じないようにしている。これにより、人の手では標示部材20がつかみにくくなり、イタズラで標示部材20を取り外すことを難しくすることができる。また、取り付け後における標示部材20の位置ズレの範囲を小さくすることができる。さらに、隙間に雨水や砂埃等が入り込んで、各種部材が腐食することや損傷すること等を防ぐこともできる。
【0031】
ただし、標示部材20の側面と凹部12aの内壁との間の隙間が小さすぎると、標示部材20が凹部12aに嵌め込みにくくなる。このため、その隙間の幅(全周において一定でない場合はその最小値)は0.1mm以上あることが好ましい。隙間の幅は、0.3mm以上とすることがより好ましく、0.5mm以上とすることがさらに好ましい。一方、標示部材20の側面と凹部12aの内壁との隙間が大きすぎると、その隙間を手掛かりに標示部材20が取り出されるおそれがある。このため、その隙間の幅(全周において一定でない場合はその最大値)は3mm以下であることが好ましい。隙間の幅は、2mm以下とすることがより好ましく、1mm以下とすることがさらに好ましい。
【0032】
また、標示部材20がキャップ12(凹部12a)からある程度突出していると、その突出部分をつかんで標示部材20が取り出されるおそれがある。このため、標示部材20のキャップ12(凹部12a)からの突出量は、3mm以下とすることが好ましい。その突出量は、1mm以下とすることがより好ましく、0.5mm以下とすることがさらに好ましい。第一実施形態の標示杭1では、標示部材20の厚さ(標示部21と磁着部22との合計の厚さ)を、凹部12aの深さ(被磁着部13の上面からキャップ12の上面までの高低差)と略同一(突出量0mm)にしている。
【0033】
なお、メンテナンス等のために標示部材20を交換する場面も想定される。このため、標示部材20を取り外すための工具を用意しておくことが好ましい。これにより、この工具を使用するメンテナンス作業者は標示部材20を容易に取り外せる一方で、その工具を持っていない人は標示部材20を容易には取り外せないようにすることができる。このような工具としては、標示部材20の側面と凹部12aの内壁との隙間に入り込んで標示部材20を掻き出すものや、外側から磁着部22に磁力(引力)を作用させて標示部材20を引っ張り出すものが例示される。
【0034】
標示部材20(標示部21及び磁着部22)の外周形状は、特に限定されないが、正方形(四回対称)や円形(無限対称)等、回転対称性が高い形状とすることが好ましい。これにより、標示部材20の向きが変わっても、標示部材20を凹部12aに嵌め込むことができる。また、標示部材20は、板状とすることが好ましい。これにより、標示面積をより広く確保しながらも、標示部材20を扱いやすくコンパクトなものとすることができる。第一実施形態の標示杭1においては、標示部材20を円板状としている(
図1参照)。これにより、面方向のどの方向を向いていても、標示部材20を凹部12aに嵌め込むことができ、併せて、標示部材20を扱いやすいコンパクトなものとすることができる。なお、標示部材20は、磁着部22の表面(下面)の面積が標示部21の表面(上面)の面積よりも小さい形状とすることもできる。これにより、標示部材20が凹部12aに導入しやすくなる。
【0035】
標示部材20のサイズは、特に限定されず、用途等に応じて適宜決定することができる。通常、面積が3~100cm2(直径としては約2~12cm)とされ、厚さ(標示部21及び磁着部22の合計の厚さ)が0.5~3cmとされる。
【0036】
標示部材20において、標示部21と磁着部22とを一体化させる方法は、特に限定されない。第一実施形態の標示杭1では、接着剤を用いて、標示部21と磁着部22とを接着している。これと併せて、標示部21と磁着部22とを係合させて、それらをより一層強固に合体させることも可能である。これにより、標示部21が磁着部22からはがれにくくなり、例えば標示部材20を凹部12aから取り外す際に標示部21のみが取り出されることを防ぐことができる。
【0037】
杭部材10の全体形状も、特に限定されず、例えば柱状又は棒状とすることができる。地面に打ち込みやすくするために、杭部材10の下端(先端)を先細り状(テーパー状)にしてもよい。第一実施形態の標示杭では、杭部材10の下端(先端)付近を四角錐状とし、その上端(基端)付近を四角柱状としている(
図1参照)。杭部材10のサイズも特に限定されず、通常、杭部材10の長さは、30~100cmの範囲内とされ、杭部材10の上端側断面積は、25~400cm
2(およそ5~20cm角)の範囲内とされる。
【0038】
電子デバイス30は、標示杭1を高機能化するためのものであり、電子回路を含む各種のICチップ等で構成される。電子デバイス30の機能や性能は、特に限定されず、標示杭1の設置場所や用途に応じて、適宜決定することができる。例えば、標示杭1を山肌や崖に設置する場合には、電子デバイス30として、GPS(Global Positioning System)発信機(位置特定手段)や加速度センサ(傾き計測手段)等を採用することができる。これにより、標示杭1の打ち込み位置や打ち込み角度の変化を検知することが可能となる。また、それらの変化を検知した際には、周囲に警報を発するようにすることができる。その結果、地滑りや崖崩れの兆候又は発生を把握することが可能となる。
【0039】
また、標示杭1を河川の岸辺に設置する場合には、電子デバイス30として、水検知センサを採用することができる。これにより、河川の水嵩が増して標示杭1が浸水した際には、そのことを検知することが可能となる。また、標示杭1の浸水を検知した際には、周囲に警報を発するようにすることができる。その結果、洪水の兆候又は発生を把握することが可能となる。
【0040】
警報を発する手段としては、発光手段(発光ダイオード等)や発音手段(スピーカ等)が例示される。また、標示杭1に、送信装置を組み込み、例えば遠隔のコンピュータ端末(例えばクラウドサーバ)に警報信号を送信することも可能である。
【0041】
電子デバイス30は、磁気によって誤動作するおそれがある。標示杭1は、磁気の発生源(磁着部22)を有しているため、この磁気から電子デバイス30を保護することが好ましい。具体的には、磁気を減衰させる(又は遮断する)材料(以下、磁気防止材料と呼ぶこととする。)で形成された部材を、被磁着部13と電子デバイス30との間に配することが好ましい。第一実施形態の標示杭1では、キャップ12を、磁気防止材料を混合した樹脂部材としている。ただし、磁気防止材料で形成した部材を、キャップ12とは別に、被磁着部13と電子デバイス30との間に配することも可能である。例えば、磁気防止材料を混合した樹脂シート(一般に磁気防止シートと呼ばれる。)を、キャップ12の裏面全面に貼り付けてもよい。あるいは、磁気防止シートを、凹部12aの底部と被磁着部13との間に挿入してもよい。磁気防止材料としては、例えば、パーマロイやフェライト、アルミニウム等が挙げられる。
【0042】
また、電子デバイス30の動作に及ぼす磁気の影響を小さくするために、電子デバイス30を、被磁着部13からある程度離して配置することが好ましい。具体的には、電子デバイス30と被磁着部13との間の距離は、3cm以上あることが好ましい。一方、電子デバイス30を磁着部22から離して配置する場合には、収容部11aを深くする必要があるところ、深い収容部11aの作製には手間を要する。このため、電子デバイス30と被磁着部13との間の距離は、それほど大きくないことが好ましく、例えば30cm以下であることが好ましい。
【0043】
2.第二実施形態
図3は、第二実施形態の標示杭1を示した斜視図である。第二実施形態の標示杭1は、標示部材20の構造を除いて、第一実施形態のものと略同じ構造になっている。第二実施形態の説明で特に言及しない構成(杭部材10等)については、第一実施形態と略同様の構成を採用することができるものとする。
【0044】
第一実施形態の標示杭1(
図1,2)では、標示部材20の標示部21を平板状としていた。これに対して、第二実施形態の標示杭1(
図3)では、標示部材20の標示部21を旗状(支柱部21a及び標示旗部21bを備えたもの)としている。具体的には、平板状の磁着部22に支柱部21aを立設し、その支柱部21aに標示旗部21bを取り付けている。標示部材20をこのような構造とすることで、標示杭1が打ち込まれた場所を遠方からでも容易に見つけることができる。また、標示旗部21bに杭関連情報が標示されている場合には、遠方からでもその内容を把握することができる。なお、標示部21は、標示旗部21bを設けずに、支柱部21aのみ(一般に測量ポールと称されるもの)とすることもできる。
【0045】
3.第三実施形態
図4は、第三実施形態の標示杭1を示した斜視図である。第三実施形態の標示杭1は、標示部材20の取り付け位置を除いて、第一実施形態のものと略同じ構造になっている。第三実施形態の説明で特に言及しない構成については、第一実施形態と略同様の構成を採用することができるものとする。
【0046】
第一実施形態の標示杭1では、標示部材20の取り付け位置を杭部材10の上面としていた。これに対して、第三実施形態の標示杭1では、標示部材20の取り付け位置を杭部材10の側面としている。具体的には、キャップ12の側面に凹部12aを設け、その凹部12aに標示部材20を嵌め込んでいる。標示部材20の磁着部22が、凹部12aの内部の被磁着部13(
図2参照)に磁着することで、標示部材20が凹部12aから簡単に外れない(落ちない)ようになっている。なお、標示部材20を、キャップ12の側面ではなく、杭本体11の側面に取り付けられるようにしてもよい。
【0047】
標示部材20の取り付け位置は、用途等に応じて適宜決定することができる。例えば、標示杭1の上面だけ地面から露出させて使用する場合には、標示部材20の取り付け位置を杭部材10の上面とすればよい。また、標示杭1を標柱として利用する場合(標示杭1の上部の大部分を地面から露出させて使用する場合)には、標示部材20の取り付け位置を杭部材10の側面にすることもできる。
【0048】
4.第四実施形態
図5は、第四実施形態の標示杭1を示した斜視図である。第四実施形態の標示杭1は、杭部材10の構造を除いて、第一実施形態のものと略同じ構造になっている。第四実施形態の説明で特に言及しない構成(特に標示部材20)については、第一実施形態と略同様の構成を採用することができるものとする。
【0049】
第一実施形態の標示杭1では、杭部材10を太い柱状としていたのに対して、第四実施形態の標示杭1では、杭部材10を細長い形状としている。また、第一実施形態の標示杭1では、杭部材10を杭本体11とキャップ12とで構成していたのに対し、第四実施形態の標示杭1では、杭部材10を単一の打ち込み部材15としている。
【0050】
打ち込み部材15は、地中に埋設される胴部15aと、ハンマー等で叩きやすい形状とされた頭部15bとを備えている。胴部15aの長さは特に限定されないが、通常、5cm~20cmの範囲とされる。頭部15bの形状も特に限定されないが、通常、直径3cm程度の円板状とされる。頭部15bの上面には、標示部材20を嵌め込むための凹部12aを設けている。
【0051】
打ち込み部材15は、磁着部22(永久磁石)に引き寄せられる材料で形成される。第四実施形態の標示杭1では、打ち込み部材15を、鋼鉄製としている。鋼鉄製とされた打ち込み部材15は剛性が高く、変形しにくいため、コンクリートやアスファルト等で舗装された地面にも比較的容易に設置する(打ち込む)ことが可能である。なお、打ち込み部材15は、磁着部22(永久磁石)にくっつきにくい材料で形成してもよい。この場合には、別途、被磁着部13(
図2参照)を設ける必要がある。
【符号の説明】
【0052】
1 標示杭
10 杭部材
11 杭本体
11a 収容部
12 キャップ
12a 凹部
13 被磁着部
15 打ち込み部材
15a 胴部
15b (凹状)頭部
20 標示部材
21 標示部(平板タイプ)
21a 支柱部(旗タイプ)
21b 標示旗部(旗タイプ)
22 磁着部
30 電子デバイス