(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131336
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】土壌改良方法、土壌改良システム、吸収性物品、及び土壌改良剤
(51)【国際特許分類】
C09K 17/18 20060101AFI20230914BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20230914BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20230914BHJP
A61F 13/511 20060101ALI20230914BHJP
A61L 15/26 20060101ALI20230914BHJP
C09K 17/32 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
C09K17/18 H
A61F13/15 120
A61F13/53 300
A61F13/511 300
A61L15/26 200
C09K17/32 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036030
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神野 文夫
(72)【発明者】
【氏名】徐 暁師
【テーマコード(参考)】
3B200
4H026
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BB03
3B200BB05
3B200BB17
3B200DB02
3B200DC02
3B200DC10
4H026AA07
4H026AA09
4H026AA10
4H026AB01
4H026AB03
(57)【要約】
【課題】本発明は、生分解性の素材を用いることに起因する製品価格の上昇を抑制可能にする技術を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の一側面に係る土壌改良方法は、着用者の排出液を吸収可能な吸収性物品を用いた土壌改良方法であって、吸水性ポリマー及び生分解性不織布を含む吸収性物品を事業者が生産する生産工程と、着用者が使用した使用済みの吸収性物品を回収する回収工程と、回収工程において、回収された使用済みの吸収性物品を、農地の土壌改良剤として営農者向けに事業者が転用する転用工程と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の排出液を吸収可能な吸収性物品を用いた土壌改良方法であって、
吸水性ポリマー及び生分解性不織布を含む吸収性物品を事業者が生産する生産工程と、
前記着用者が使用した使用済みの前記吸収性物品を回収する回収工程と、
前記吸収性物品を農地の土壌改良剤として営農者向けに前記事業者が転用する転用工程と、を有する、
土壌改良方法。
【請求項2】
前記回収工程においては、前記着用者が利用する医療・介護施設で用いられている前記事業者製の前記吸収性物品を回収する、
請求項1に記載の土壌改良方法。
【請求項3】
前記転用工程においては、前記吸収性物品を農地用の土壌の土壌改良剤として前記営農者へ販売する、
請求項1又は2に記載の土壌改良方法。
【請求項4】
前記転用工程においては、前記土壌改良剤を散布した前記土壌の少なくとも一部をさらに前記営農者へ販売する、
請求項3に記載の土壌改良方法。
【請求項5】
前記転用工程において、吸収性物品は、前記土壌において面積当たり10~1000g/m2の範囲となるように散布される、
請求項3又は4に記載の土壌改良方法。
【請求項6】
前記土壌には、動物または植物に由来する所定の有機物が含有される、
請求項3から5のうち何れか一項に記載の土壌改良方法。
【請求項7】
前記生産工程においては、非透水性のバックシートよりも肌面側に前記吸水性ポリマー及び前記生分解性不織布を配置した前記吸収性物品を前記事業者が生産し、
前記吸水性ポリマー及び前記生分解性不織布を前記バックシートから引き剥がすことにより、回収された使用済みの前記吸収性物品から前記吸水性ポリマー及び前記生分解性不織布を分離する分離工程を有する、
請求項1から6の何れか一項に記載の土壌改良方法。
【請求項8】
着用者の排出液を吸収可能な吸収性物品を用いた土壌改良システムであって、
吸水性ポリマー及び生分解性不織布を含む吸収性物品を事業者が生産する生産手段と、
前記着用者が使用した使用済みの前記吸収性物品を回収する回収手段と、
前記吸収性物品を、農地用の土壌の土壌改良剤として営農者向けに前記事業者が転用する転用手段と、を備える、
土壌改良システム。
【請求項9】
吸収性物品であって、
非透水性のバックシートと、
前記バックシートよりも肌面側に設けられ、着用者の排出液を吸収可能に設けられる吸水性ポリマーと、
前記バックシートよりも肌面側に設けられ、前記着用者の排出物が付着可能に設けられる生分解性不織布と、を備え、
前記吸水性ポリマーおよび前記生分解性不織布は、前記吸収性物品から分離可能である、
吸収性物品。
【請求項10】
着用者の排出液を吸収した吸水性ポリマーを有する吸収コアと、
前記着用者の排出物が付着した生分解性不織布と、を備える、
土壌改良剤。
【請求項11】
前記吸収コアは、パルプを更に有する、
請求項10に記載の土壌改良剤。
【請求項12】
前記パルプの含有率は、70%以下である、
請求項11に記載の土壌改良剤。
【請求項13】
前記生分解性不織布は、ポリ乳酸またはポリブチレンサクシネートを主成分とする繊維を含み、
前記生分解性不織布の繊維径は、0.1~50デニールである、
請求項10から12のうち何れか一項に記載の土壌改良剤。
【請求項14】
前記ポリ乳酸またはポリブチレンサクシネートを主成分とする繊維を含む領域の前記生分解性不織布の目付量は、5~100gsmである、
請求項13に記載の土壌改良剤。
【請求項15】
前記吸水性ポリマーの含有率は、5~70%である、
請求項10から14のうち何れか一項に記載の土壌改良剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌改良方法、土壌改良システム、吸収性物品、及び土壌改良剤に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ、尿パッド、生理用品等の吸収性物品が開発されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、環境保護の観点から、各種の製品に生分解性の素材を使用することが試みられている。しかしながら、生分解性の素材の採用は、従来の素材よりも原材料費の上昇を招く可能性がある。よって、例えば、着用者の排出液を吸収可能な吸収性物品のように、消費者から価格の抑制を常に求められる日用の消耗品においては、生分解性の素材を用いることによる価格の上昇を抑制する方策が求められる。
【0005】
そこで、本発明は、生分解性の素材を用いることに起因する製品価格の上昇を抑制可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では、し尿等が土壌に好適であることに着目し、着用者の排出液を吸収可能な吸収性物品に生分解性不織布を用いると共に、使用済みの吸収性物品を農地の土壌改良材として利用することにした。
【0007】
詳細には、本発明の一側面に係る土壌改良方法は、着用者の排出液を吸収可能な吸収性物品を用いた土壌改良方法であって、吸水性ポリマー及び生分解性不織布を含む吸収性物品を事業者が生産する生産工程と、前記着用者が使用した使用済みの前記吸収性物品を回収する回収工程と、前記吸収性物品を、農地の土壌改良剤として営農者向けに前記事業者が転用する転用工程と、を有する。
【0008】
上記一側面に係る土壌改良方法において、前記回収工程においては、前記着用者が利用する医療・介護施設で用いられている前記事業者製の前記吸収性物品を回収してもよい。
【0009】
上記一側面に係る土壌改良方法において、前記転用工程においては、前記吸収性物品を、農地用の土壌の土壌改良剤として前記営農者へ販売してもよい。
【0010】
上記一側面に係る土壌改良方法において、前記転用工程においては、前記土壌改良剤を散布した前記土壌の少なくとも一部をさらに前記営農者へ販売してもよい。
【0011】
上記一側面に係る土壌改良方法において、前記転用工程において、前記吸収性物品は、前記土壌において面積当たり10~1000g/m2の範囲となるように散布されてもよい。
【0012】
上記一側面に係る土壌改良方法において、前記土壌には、動物または植物に由来する所
定の有機物が含有されてもよい。
【0013】
上記一側面に係る土壌改良方法において、前記生産工程においては、非透水性のバックシートよりも肌面側に前記吸水性ポリマー及び前記生分解性不織布を配置した前記吸収性物品を前記事業者が生産し、前記吸水性ポリマー及び前記生分解性不織布を前記バックシートから引き剥がすことにより、回収された使用済みの前記吸収性物品から前記吸水性ポリマー及び前記生分解性不織布を分離する分離工程を有してもよい。
【0014】
また、本発明の一側面に係る土壌改良システムは、着用者の排出液を吸収可能な吸収性物品を用いた土壌改良システムであって、吸水性ポリマー及び生分解性不織布を含む吸収性物品を事業者が生産する生産手段と、前記着用者が使用した使用済みの前記吸収性物品を回収する回収手段と、前記吸収性物品を、農地用の土壌の土壌改良剤として営農者向けに前記事業者が転用する転用手段と、を備えてもよい。
【0015】
また、本発明の一側面に係る吸収性物品は、非透水性のバックシートと、前記バックシートよりも肌面側に設けられ、着用者の排出液を吸収可能に設けられる吸水性ポリマーと、前記バックシートよりも肌面側に設けられ、前記着用者の排出物が付着可能に設けられる生分解性不織布と、を備え、前記吸水性ポリマーおよび前記生分解性不織布は、前記吸収性物品から分離可能であってもよい。
【0016】
また、本発明の一側面に係る土壌改良剤は、着用者の排出液を吸収した吸水性ポリマーを有する吸収コアと、前記着用者の排出物が付着した生分解性不織布と、を備えてもよい。
【0017】
また、上記一側面に係る土壌改良剤において、前記吸収コアは、パルプを更に有してもよい。
【0018】
また、上記一側面に係る土壌改良剤において、前記パルプの含有率は、70%以下であってもよい。
【0019】
また、上記一側面に係る土壌改良剤において、前記生分解性不織布は、ポリ乳酸またはポリブチレンサクシネートを主成分とする繊維を含み、前記生分解性不織布の繊維径は、0.1~50デニールであってもよい。
【0020】
また、上記一側面に係る土壌改良剤において、前記ポリ乳酸またはポリブチレンサクシネートを主成分とする繊維を含む領域の前記生分解性不織布の目付量は、5~100gsmであってもよい。
【0021】
また、上記一側面に係る土壌改良剤において、前記吸水性ポリマーの含有率は、5~70%であってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、生分解性の素材を用いることに起因する製品価格の上昇を抑制可能にする技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、実施形態に係る土壌改良システムの概要を例示する。
【
図2】
図2は、実施形態に係るおむつの外観斜視図の一例である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るおむつの分解斜視図の一例である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るおむつの展開図の一例である。
【
図5】
図5は、着用済のおむつから切り離されたトップシートおよび吸収体の概要を例示する。
【
図6】
図6は、土壌改良剤が土壌に散布されて埋められることを説明した概要図の一例である。
【
図7】
図7は、変形例に係る土壌改良システムの概要を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施形態の構成に限定されるものではない。
【0025】
[実施形態]
(土壌改良システム100の概要)
図1は、実施形態に係る土壌改良システム100の概要を例示する。
図1に示される土壌改良システム100では、メーカー30が生分解性樹脂を原料メーカー85から購入する。そして、メーカー30は、生分解性不織布を含むおむつ1の製造事業を営む。また、メーカー30は、医療・介護施設40において使用された使用済のおむつ1を回収する。そして、回収された使用済のおむつ1を利用することで土壌50の改良事業も営む。このような土壌改良システム100によれば、メーカー30は生分解性不織布の原材料費の少なくとも一部を土壌50の改良事業により回収可能となる。よって、メーカー30は、生分解性の素材を用いることに起因するおむつ1の価格の上昇を抑制できる。なお、メーカー30は、本開示の「事業者」の一例であり、土壌50の所有者は、本開示の「営農者」の一例である。
【0026】
(土壌改良システム100の構成例)
図2は、メーカー30によって製造されるおむつ1の外観斜視図の一例である。おむつ1は、例えば大人用のパンツ型使い捨ておむつ(以下、単に「おむつ」という)である。なお、おむつ1において、着用者の腹部に対向して配置される前身頃と背部に対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃(長手方向の一側)と後身頃(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が位置する。また、おむつ1が着用者に着用された状態において、着用者の肌に向かう側を肌面側とし、肌面側の反対側を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。おむつ1は、長手方向に沿った長さと、長手方向に直交する幅方向に沿った横幅とを有し、着用者の股下に装着される。また、本願で用いる方向に関する用語は、おむつ1が着用者に着用された状態において該着用者の前後左右に一致する方向を意味するものとする。例えば、本願で左右方向という場合、おむつ1の着用者に着用された状態において該着用者の左右に一致する方向を意味する。
【0027】
なお、本実施形態では、吸収性物品の一例として、着用者の腹囲が入る開口部と、着用者の左下肢及び右下肢が挿通される左右一対の開口部とを有する筒状構造のパンツ型使い捨ておむつを例示するが、本願でいう「吸収性物品」は、大人用のパンツ型使い捨ておむつに限定されるものでない。例えば、土壌改良システム100における医療・介護施設40が保育園である場合、本願でいう「吸収性物品」は、子供用のパンツ型使い捨ておむつであってもよい。また、着用者の股下(陰部)を前身頃から後身頃にかけて覆うシート状の部材の一端部付近に固定されたテープを、該シート状の部材の他端部付近に貼り付けることで筒状構造を形成するテープ型使い捨ておむつ等、腹囲と股下を包み得る各種形態の吸収性物品が含まれる。又は吸収性物品は、例えばおむつのトップシート上に敷かれて使用されるインナーパッドでもよい。
【0028】
図2に示されるようにおむつ1は、着用状態において着用者の陰部(股下)を覆う股下領域に対応する部位である股下領域1Bと、着用者の胴周りにおける前身頃に対応する部位であって着用者の腹部側を覆うための前身頃領域1Fと、着用者の胴周りにおける後身頃に対応する部位であって着用者の背部側を覆うための後身頃領域1Rとを有する。ここで、前身頃領域1Fは股下領域1Bの前側に位置し、後身頃領域1Rは股下領域1Bの後側に位置する。本実施形態におけるおむつ1は、パンツ型の使い捨ておむつであるため、前身頃領域1Fの左側の縁と後身頃領域1Rの左側の縁は互いに接合され、前身頃領域1Fの右側の縁と後身頃領域1Rの右側の縁は互いに接合されている。よって、おむつ1には、前身頃領域1Fの上側の縁と後身頃領域1Rの上側の縁とによって胴開口部2Tが形成されている。また、おむつ1には、上記接合が施されない股下領域1Bの左側の部位に左下肢開口部2Lが形成され、股下領域1Bの右側の部位に右下肢開口部2Rが形成されている。そして、おむつ1は、着用者の左下肢が左下肢開口部2Lに挿通され、着用者の右下肢が右下肢開口部2Rに挿通され、着用者の胴部が胴開口部2Tに入るように着用されると、前身頃領域1Fが着用者の腹部側に配置され、後身頃領域1Rが着用者の背部側に配置され、左下肢開口部2Lと右下肢開口部2Rが着用者の大腿部を取り巻く状態で着用者の身体に固定される。おむつ1がこのような形態で着用者の身体に固定されるので、着用者はおむつ1を着用した状態で自由に行動することができる。
【0029】
おむつ1には、液体を吸収して保持することができる、すなわち着用者の体液を吸収可能な吸収体が主に股下領域1B付近を中心に配置されている。また、おむつ1には、おむつ1と着用者の肌との間に液体の流出経路となる隙間が形成されるのを抑制するべく、着用者の左下肢の大腿部を取り巻く左下肢開口部2Lに立体ギャザー3BLが設けられ、着用者の右下肢の大腿部を取り巻く右下肢開口部2Rに立体ギャザー3BRが設けられ、着用者の腹囲を取り巻く部位にウェストギャザー3Rおよびタミーギャザー12が設けられている。また、着用者の脚の付け根を取り巻く位置には、レグギャザー3LL,3LRが設けられている。立体ギャザー3BL,3BR、ウェストギャザー3R、およびタミーギャザー12は、糸ゴムの弾性力で着用者の肌に密着する。また、レグギャザー3LL,3LRは、着用者の脚の付け根とおむつ1との間に隙間が生まれるのを防ぐ。よって、着用者の陰部から排出される排出液は、おむつ1から殆ど漏出することなくおむつ1の吸収体に吸収される。
【0030】
図3は、実施形態に係るおむつ1の分解斜視図である。おむつ1は、カバーシート4とインナーカバーシート5とを有する。カバーシート4とインナーカバーシート5は、貼り合わされておむつ1の外表面を形成する略砂時計形状(瓢箪形状)のシートであり、前身頃領域1F側の端部と後身頃領域1R側の端部以外は同形状である。着用者に着用された状態において、カバーシート4は着用者の非肌面側、インナーカバーシート5は着用者側に積層されている。カバーシート4とインナーカバーシート5の間には、ウェストギャザー3R、タミーギャザー12、およびレグギャザー3LL,3LRを形成するための糸ゴムが設けられている。なお、糸ゴムに代えて帯状のゴム等の伸縮部材を適宜選択できる。糸ゴムを構成する材料として、生分解性エラストマー、例えば分子鎖中にアルキル側鎖を有するポリカプロラクトン系共重合ポリオール、ポリ(エチレン-プロピレン)共重合ポリオール、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、および、1,3-プロパンジオールの各成分を特定の配合比で配合した熱可塑性ポリウレタンエラストマーなどを使用することが好ましい。
【0031】
カバーシート4とインナーカバーシート5は、例えば、排出物の漏れを抑制するために、液不透過性の熱可塑性樹脂からなる不織布をその材料として用いることができる。ここで、液不透過性の熱可塑性樹脂としては、例えばポリ乳酸(PLA)やポリブチレンサクシネート(PBS)など生分解性樹脂を主成分として含む樹脂等が例示できる。
【0032】
また、おむつ1は、カバーシート4とインナーカバーシート5の着用者側の面において順に積層されるバックシート6と、吸収体8と、トップシート9とを有する。バックシート6は、着用者の前身頃から股下を経由して後身頃へ届く長さを長手方向に有し、当該長手方向に対し直交する幅方向に所定の横幅を有する略直方体のシートである。吸収体8、トップシート9は、何れもバックシート6と同様に略長方形の外観を有するシート状の部材であり、長手方向がバックシート6の長手方向と一致する状態で、バックシート6に対して順に積層されている。バックシート6は、排出物の漏れを抑制するために液不透過性の熱可塑性樹脂、例えばポリ乳酸(PLA)やポリブチレンサクシネート(PBS)などを材料として形成されたシートである。また、トップシート9は、吸収体8の吸水面を被覆するように着用者の肌面側に配置され、ポリ乳酸(PLA)やポリブチレンサクシネート(PBS)など生分解性樹脂を主成分として含む繊維を素材とするシート状の部材である。なお、前記不織布繊維の繊維径は、例えば0.1~50デニール程度である。また、トップシート9の目付量は、5~100gsm程度である。このようなトップシート9は、その一部又は全部において液透過性を有する。そのため、おむつ1が着用された状態において、着用者から排出された液体は、着用者の肌に接触し得るトップシート9を通って吸収体8に浸入し、そこで吸収される。液透過性のシートとしては、例えば、織布、不織布、多孔質フィルムが挙げられる。また、トップシート9は親水性を有していてもよい。
【0033】
吸収体8は、1又は複数のマットからなる吸収コア8cと、吸収コア8cを包み込むコアラップシート7とを有する。なお、本実施形態では、
図3に示されるように吸収コア8cは上層吸収マット8aと下層吸収マット8bを有する。吸収コア8cは、パルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリ乳酸(PLA)やポリブチレンサクシネート(PBS)など生分解性樹脂を主成分として含む合成繊維に親水化処理を施した短繊維の隙間に、水を吸収し保持することのできる架橋構造を持つ親水性のポリマーであるSAP(高吸収性重合体:Super Absorbent
Polymer)等の粒状の吸収性樹脂(高分子吸収材)を保持させた構造を有する。吸収コア8cは、着用者から排出された液体を吸収すると、短繊維内の隙間に保持された吸収性樹脂を膨潤させて該液体を短繊維内に保持する。なお、吸収コア8cにおけるSAPの含有率は、例えば5~70%である。また、吸収コア8cにパルプ繊維が含まれる場合、パルプ繊維の含有率は例えば70%以下とされてもよい。本実施形態では、上層吸収マット8aは、中央部付近が括れた略砂時計型である。吸収コア8cは、目的に応じた適宜の形状を採ることができる。吸収コア8cの形状としては、例えば、矩形状、楕円形状、その他各種の形状が挙げられる。なお、SAPは、本開示の「吸水性ポリマー」の一例である。
【0034】
コアラップシート7は、薄い液透過性のシートであり、吸収コア8cをコアラップシート7で包むことにより、上述の吸収コア8cのSAPが他の構造に混入しにくくなる。また、吸収コア8cの型崩れが抑制される。コアラップシート7は、一例としてはティッシュペーパー、ポリ乳酸(PLA)やポリブチレンサクシネート(PBS)など生分解性樹脂を主成分として含む繊維を素材とするシート状の部材などを用いることができる。また、コアラップシート7は、1枚のシートでもよいが、着用者の肌側に配置された上側シートと、着用者の非肌面側に配置され、吸収コア8cの側面と肌面側に回り込む下側シートの2枚のシートで構成されていてもよい。コアラップシート7が2枚のシートで構成されている場合、上側シートの幅方向端部が他のシート(例えば、後述するサイドシート10L,10R、バックシート6、トップシート9)に包まれる構造になっていてもよい。なお、吸収体8はバックシート6とトップシート9に包まれており、これらのシートによっても型崩れを抑制できるため、コアラップシート7を設けないこともできる。
【0035】
バックシート6、吸収体8、およびトップシート9は、何れも前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにまで延在する。よって、バックシート6、吸収体8、およびトップシート9
を積層して着用者の陰部(股下)を覆うと、バックシート6、吸収体8、およびトップシート9の各長手方向の両端部は、着用者の腹側と背側に位置する状態となる。すなわち、着用者の陰部は、着用者の腹側から背側まで吸収体8に覆われる状態となる。したがって、着用者が腹を下へ向けた姿勢と背を下へ向けた姿勢の何れの姿勢で液体を体外へ排出しても、排出された液体はトップシート9を介して吸収体8に接触することになる。
【0036】
また、おむつ1は、上述した立体ギャザー3BL,3BRを形成するための細長い帯状のサイドシート10L,10Rを有する。サイドシート10L,10Rは、トップシート9の長辺の部分に設けられる。そして、サイドシート10L,10Rには糸ゴム10L1,10R1が長手方向に沿って接着されている。よって、カバーシート4の、前身頃領域1Fの左側の縁となる縁4F4と、後身頃領域1Rの左側の縁となる縁4R4とが互いに接合され、且つ、カバーシート4の、前身頃領域1Fの右側の縁となる縁4F5と、後身頃領域1Rの右側の縁となる縁4R5とが互いに接合されることにより、
図2に示したような完成状態のおむつ1になると、サイドシート10L,10Rは、糸ゴム10L1,10R1の収縮力で長手方向に引き寄せられて折り返し線10L2,10R2に沿ってトップシート9から立ち上がる。その結果、左下肢開口部2L及び右下肢開口部2Rからの液体の流出を防ぐ立体ギャザー3BL,3BRが形成される。なお、縁4F4及び縁4R4、縁4F5及び縁4R5の接合方法は特に限定されないが、例えば、ヒートシール、高周波シール、超音波シール等によって行うことができる。サイドシート10L、10Rはポリ乳酸(PLA)やポリブチレンサクシネート(PBS)など生分解性樹脂を主成分として含む繊維を素材とするシート状の部材などを用いることができる。
【0037】
更に、おむつ1は、バックシート6、吸収体8、トップシート9、サイドシート10L,10Rを挟んで、カバーシート4の前身頃領域1Fにおいて着用者側の面に積層されるエンドシート11Fと、カバーシート4の後身頃領域1Rにおいて着用者側の面に積層されるエンドシート11Rとを有する。エンドシート11F,11Rは、トップシート9の長手方向における一端側においてカバーシート4に重ねられる短冊状のシートである。エンドシート11F,11Rは非透水性の不織布であり、主におむつ1の胴回り当接部分においてカバーシート4を補強する。また、エンドシート11F,11Rは、バックシート6、吸収体8、トップシート9、サイドシート10L、10Rにより形成される積層体より肌面側に配置され、積層体の端が肌面に直接触れて着用者に違和感を与えるのを防ぐ。エンドシート11F,11Rは、ポリ乳酸(PLA)やポリブチレンサクシネート(PBS)など生分解性樹脂を主成分として含む繊維を素材とするシート状の部材などを用いることができる。
【0038】
図4は、実施形態に係るおむつ1を展開し、伸長した状態を模式的に示した図である。
図4(A)は、展開及び伸長した状態のおむつ1を左側から見た場合の内部構造を模式的に示している。
図4(B)は、展開及び伸長した状態のおむつ1の平面図を模式的に示している。なお、
図4(B)では、サイドシート10L,10Rおよびエンドシート11F,11Rの図示は省略する。カバーシート4は、
図3に記載の折り返し線4FF、4RFにおいて一端側が折り返されている。上述したウェストギャザー3Rは、カバーシート4の前身頃領域に糸ゴム(糸状のゴム)4F1、4F2が接着され、カバーシート4の後身頃領域に糸ゴム(糸状のゴム)4R1、4R2が接着されることで形成される。
【0039】
また、糸ゴム4F1,4F2は、折り返されると前身頃領域1Fの上側の縁を形成することになる折り返し線4FF(
図3参照)沿いに、折り返し線4FF側から糸ゴム4F1、糸ゴム4F2の順に設けられている。糸ゴム4R1,4R2も、糸ゴム4F1,4F2と同様、折り返されると後身頃領域1Rの上側の縁を形成することになる折り返し線4RF沿いに、折り返し線4RF側から糸ゴム4R1、糸ゴム4R2の順に設けられている。
【0040】
このため、糸ゴム4F1,4F2は、伸縮方向となる胴回り方向がおむつ1の左右方向となる向きでカバーシート4に設けられることになる。また、糸ゴム4R1,4R2は、伸縮方向となる長手方向がおむつ1の左右方向となる向きでカバーシート4に設けられることになる。よって、縁4F4と縁4R4(
図3参照)が互いに接合され、縁4F5と縁4R5が互いに接合されると、糸ゴム4F1,4F2と糸ゴム4R1,4R2は、胴開口部2Tに沿って周回する実質的に環状の伸縮部材を形成し、胴開口部2Tを胴周り方向に収縮させる機能を発揮する。すなわち、糸ゴム4F1,4F2と糸ゴム4R1,4R2は、収縮力を発揮しておむつ1を着用者に密着させ、おむつ1と着用者の腹囲との間に隙間が形成されるのを防ぐ。なお、糸ゴム4F2,糸ゴム4R2は、その股下領域1B側の一部において、吸収体8と重畳する。
【0041】
糸ゴム4F1,4R1は、
図2に示した前身頃領域1F,後身頃領域1Rの上側の縁となる部分に沿って左右方向に延在するように設けられている。糸ゴム4F2,4R2は、所定の間隔を空けて平行に設けられている。糸ゴム4F1,4R1は、おむつ1が着用された状態において、着用者の腹囲を糸ゴム4F2,4R2よりも上側で比較的強く締め付ける。糸ゴム4F1,4R1は、おむつ1を着用者に密着させて着用位置がずれるのを防止し、腹部や背部から排出液が漏出するのを防ぐ機能を担う。糸ゴム4F2,4R2は、糸ゴム4F1,4R1の収縮力に起因する着用者への圧迫感を緩和する。
【0042】
更に、カバーシート4には糸ゴム4F3と糸ゴム4R3が接着されている。糸ゴム4F3,糸ゴム4R3は、カバーシート4のうち糸ゴム4F2,4R2よりも股下領域1B側の領域に設けられる伸縮部材である。ただし、糸ゴム4F3,4R3は、カバーシート4の左端から右端まで途切れることなく接着される他の糸ゴムとは異なり、股下領域1Bの方向に湾曲して配置され、砂時計型の吸収コア8cの括れ部分で、コアラップシート7の一部と重畳している。このように構成することで、糸ゴム4F3,4R3を、レグギャザー3LL,3LRとして機能させることができる。
【0043】
カバーシート4は、折り返し線4FF、4RFで折り返されて糸ゴム4F1,糸ゴム4R1の配置領域まで延在し、その折り返された部分で糸ゴム4F1、糸ゴム4R1の配置領域を補強している。エンドシート11F,11Rは、折り返し線4FF、4RFで折り返されたカバーシート4が延在していない糸ゴム4F2、糸ゴム4R2の配置領域に設けられ糸ゴム4F2、糸ゴム4R2の配置領域を補強している。
【0044】
なお、本願においてシートが重なる状態とは、重ね合わされるシート同士が互いに全面的に接触する状態で重なる形態に限定されるものでなく、シートの一部分同士が重なる形態を含む概念である。例えば、エンドシート11Fは、バックシート6の長手方向における一端側の一部分が、カバーシート4の一部分に触れる状態で重ねられる。おむつ1は、吸収体8を間に挟んだバックシート6及びトップシート9の他、カバーシート4、エンドシート11F,11R、インナーカバーシート5、サイドシート10L,10Rが積み重なって形成されているため、これら複数のシートを積み重ねた積層体を有していると言える。
【0045】
また、おむつ1のトップシート9には、縁に沿うようにミシン目が設けられている。そして、このようなミシン目が破断され、破断されたミシン目により囲まれるトップシート9を肌面側に移動させることで、トップシート9およびトップシート9に接着された吸収体8(コアラップシート7および吸収コア8c)を、一体となってバックシート6から剥離することができる。
【0046】
なお、トップシート9に使用される生分解性不織布は、例えば特開2021-70874号公報に記載される不織布作製装置により作製可能である。すなわち、原料樹脂として
生分解性樹脂の一例であるポリ乳酸樹脂あるいはポリブチレンサクシネート樹脂を不織布作製装置のホッパに供給することで生分解性樹脂繊維を素材とするトップシート9が形成される(本開示の「生産工程」の一例)。
【0047】
また、医療・介護施設40では、多数の入居者90がおむつを着用して生活している。そのため、定期的に大量のおむつを外部のメーカーから購入している。
【0048】
また、土壌50は営農者が所有している。土壌50には、例えば藁、籾殻、樹皮、および牛等の動物の糞(本開示の「動物または植物に由来する所定の有機物」の一例)を堆積させた後に土と攪拌して腐熟させた状態である。なお、このような土壌50には、例えば汚泥および魚類の臓器は含まれない。そして、このような土壌50に着用済のおむつ1のバックシート6から剥離されたトップシート9および吸収体8が埋められることになる(詳細は後述する)。
【0049】
また、園芸用品店60では、土壌に植えられた作物の生長を促進可能な肥料80が消費者70向けに販売される。なお、消費者70は、例えば営農者であってもよいし、自宅に肥料80を撒くことのできる庭を所有する個人であってもよい。
【0050】
(土壌改良システム100の使用例)
次に上記のような土壌改良システム100の使用例の概要を例示する。まず、メーカー30がポリ乳酸樹脂を原料メーカー85から購入する。そして、メーカー30は、ポリ乳酸樹脂を原料として生分解性のトップシート9を製造する。また、メーカー30は、他の部材も製造し、おむつ1を完成させる。そして、製造されたおむつ1は医療・介護施設40に販売される。
【0051】
医療・介護施設40には、おむつ1がメーカー30から定期的に配達される。そして、着用者である入居者が
図2に示されるようなおむつ1を着用する。そして、所定期間経過後におむつ1を脱いで新しいおむつ1に履き替える。このような場合、使用済のおむつ1のトップシート9には着用者から排泄された尿および便が付着している。換言すると、トップシート9には着用者の排出物が付着可能である。ここで、トップシート9の目付量は、5~100gsm程度である。よって、尿または水様便に含まれる水分(以降排出液という)は、コアラップシート7側へ浸透する。
【0052】
また、コアラップシート7に浸透した排出液は、吸収コア8cに含まれるSAPに到達する。ここで、SAPの含有率は5~70%程度であるため、到達した排出液はSAPによって保持される。
【0053】
このような使用済のおむつ1は、メーカー30によって回収される(本開示の「回収工程」の一例)。そして、回収されたおむつ1は、そのまま土壌改良剤20として使用してもよいし、メーカー30の工場においてトップシート9および吸収体8がバックシート6から切り離して使用してもよい。なお、メーカー30による使用済のおむつ1の回収は、例えばメーカー30が医療・介護施設40に新品のおむつ1を配達する場合になされてもよいし、医療・介護施設40において使用済のおむつ1が所定数溜まった場合になされてもよい。
【0054】
図5は、着用済のおむつ1のバックシート6から切り離されたトップシート9および吸収体8の概要を例示する。トップシート9には上述したように縁に沿うようにミシン目が設けられている。よって、トップシート9のミシン目を破断することでおむつ1のバックシート6からトップシート9、吸収体8、サイドシート10L、10R、およびエンドシート11F、11Rを切り離すことができる。さらにサイドシート10L、10R、およ
びエンドシート11F、11Rは、トップシート9および吸収体8から引き剥がすことができる。換言すれば、トップシート9および吸収体8と、おむつの各構造は分離可能である。このようにして、
図5に示されるように便が付着したトップシート9ならびに排出液がSAPによって保持されている吸収体8をおむつ1のバックシート6から切り離した状態とすることができる(本開示の「分離工程」の一例)。そして、バックシート6から切り離されたトップシート9および吸収体8は、トップシート9が内側となるように筒状に巻かれる。このようなおむつ1のバックシート6から切り離されたトップシート9および吸収体8は、販売用の土壌改良剤20とされる。なお、バックシート6からトップシート9および吸収体8を切り離す工程は、所定の機器により自動化される。
【0055】
メーカー30は、このような土壌改良剤20を例えば営農者に販売する。メーカー30は、土壌改良剤20を購入した営農者の土壌50に土壌改良剤20を輸送して散布する。
図6は、土壌改良剤20が土壌50に散布されて埋められることを説明した概要図の一例である。なお、土壌改良剤20の輸送は、トップシート9が内側となるように筒状に畳まれた状態で実施される。そして、
図6に示されるように土壌改良剤20は、藁、籾殻、樹皮、および牛等の動物の糞が含まれる土壌50に散布され埋められる(本開示の「転用工程」の一例)。よって、トップシート9の生分解は、付着した便に含まれる細菌、または土壌50に含まれる微生物によって促進される。なお、土壌改良剤20の散布は、所定の散布装置によって自動的に散布される。また、土壌改良剤20は、営農者に限らず自宅の庭の土壌改良を希望する個人に販売してもよい。
【0056】
また、トップシート9に含まれるポリ乳酸繊維の繊維径は、0.1~50デニール程度と細繊化されている。このように繊維径が細繊化されていることからもトップシート9の生分解は促進される。また、吸収コア8cにパルプが含まれる場合、パルプも微生物により分解される。また、藁、籾殻、および樹皮等の植物由来の有機物、ならびにトップシート9に付着した便や牛等の動物の糞も微生物により分解される。
【0057】
また、土壌改良剤20は、土壌50における密度が土地面積当たり10~1000g/m2となるように散布され埋められる。そして、散布された土壌改良剤20に含まれるSAPの含有率は、5~70%程度である。よって、土壌50の保湿効果は向上する。よって、土壌50に含まれる微生物の活動は活発化する。よって、土壌改良剤20は、土壌50の農地用の改良剤としての機能が向上する。また、微生物の活動の活発化によりトップシート9の生分解も促進される。
【0058】
また、土壌改良剤20が埋められた土壌50においては、藁、籾殻、および樹皮等の植物由来の有機物、ならびにトップシート9に付着した便や、土壌50に埋められた牛等の動物の糞は、活発化した微生物により植物が吸収しやすい物質に分解される。そこで、メーカー30は、土壌改良剤20が埋められてから所定期間経過後に土壌50の一部を販売用の肥料80として袋詰めにする。そして、メーカー30は、例えば園芸用品店60に袋詰めにされた肥料80を販売する。そして、肥料80を購入した園芸用品店60では、肥料80が消費者70向けに販売される。
【0059】
なお、土壌改良システム100は、メーカー30が有している中央処理装置および主記憶装置、補助記憶装置、送受信装置を備えたコンピュータにより制御されてよい。当該制御は、具体的には、補助記憶装置に記憶された土壌改良システム100を実現するためのプログラムが主記憶装置に読み込まれ、中央処理装置により実行されることで実現できる。コンピュータは、主記憶装置に読み込まれたプログラムを中央処理装置が実行することで、メーカー30のおむつ1製造装置を制御し、おむつ1の製造を管理する。なお、土壌管理システム100を管理するコンピュータに加えておむつ1の製造工程を管理するコンピュータが別途存在し、土壌管理システム100を管理するコンピュータが当該製造工程
を管理するコンピュータを制御する構成とすることもできる。
【0060】
土壌管理システム100を管理するコンピュータは、例えば、医療・介護施設40の使用済みおむつの量をセンサにより計測して、通信手段を介して送受信装置に入力し、適切な時期に回収作業を行い、新しいおむつを配送するように指示を出す。更に具体的には、コンピュータは、医療・介護施設40の使用済みおむつ収集箱内部のおむつの量を計測しているセンサと、有線または無線LAN、携帯電話回線等を用いた、インターネット経由またはプライベートネットワーク経由の通信手段を用いて一定頻度で通信している。補助記憶装置から読み出されて主記憶装置に展開されたプログラムは、センサにより計測されたおむつの量を判定しており、使用済みおむつ1の量が一定を超えた場合に、回収指示を出す。なお、医療・介護施設40に在庫している使用前のおむつ1の量をセンサにより計測し、使用前のおむつ1の量が一定以下になった場合に、新品のおむつを配達する指示を行い、配達の際に回収を行うこととしてよい。なお、回収時期および配達時期を、センサ計測情報や医療・介護施設40の規模から予め学習された学習モデルにより予測し、予測に従って配達および回収を行うようにすることもできる。
【0061】
また、土壌50に画像センサや土壌センサを設け、これを、通信手段を介して、土壌管理システム100を管理するコンピュータが管理することもできる。コンピュータは、当該センサから得られる情報により、土壌改良剤20が、植物が吸収しやすい物質に十分に分解されているかどうかを判断する。具体的には、土壌センサによる栄養分等の数値情報の他、画像センサから得られる画像を既知の手法により画像解析することにより得られる、トップシート9や吸収コア8cがその形を保っているかどうかの情報などにより分解度合いを判断する。分解については、土壌50の周囲の気温や降水量などの環境要因により左右されるため、上述のセンサ情報に加えてこれらの情報を予め学習させた学習モデルをコンピュータに搭載し、営農可能時期を予測してもよい。これらの方法により得られた情報を営農者に提供することにより、営農者は、土壌50が営農に適した状態となっているかどうかを判断できる。また、メーカー30が、土壌改良剤20が埋められてから所定期間経過後に、土壌50を肥料80として販売する場合には、コンピュータは、土壌改良剤20が十分に分解されて、肥料80として袋詰めできるかどうかを上述の手法により判断または予測し、指示を出力する。このように、土壌管理システム100を管理するコンピュータを用いて、メーカー30は、おむつ1を営農者向けに転用することができる。
【0062】
[作用・効果]
医療・介護施設40において使用された使用済のおむつ1のトップシート9には着用者の便が付着している。よって、メーカー30は、このようなトップシート9および吸収体8を回収し、土壌改良剤20として販売することで利益を得ることができる。土壌改良剤20を土壌50に埋めることで堆肥化させることができるからである。また、土壌改良剤20に含まれる吸収体8には着用者の尿が保持されている。よって、土壌改良剤20が埋められた土壌50において、土壌50の保湿効果は向上する。このような保湿効果の向上は土壌改良機能を向上させる。このような理由からもメーカー30が土壌改良剤20を販売することで利益を得ることができるといえる。つまり、メーカー30は、このように使用済のおむつ1を回収して土壌改良剤20として営農者に販売することで、営農者から生分解性のトップシート9の原材料費の少なくとも一部を回収できる。よって、上記のような土壌改良システム100によれば、メーカー30は医療・介護施設40等で日常的に使用されるおむつ1の価格を抑制できる。
【0063】
また、土壌改良剤20が埋められてから所定期間経過した土壌50の一部を肥料80として園芸用品店60を介して消費者70に販売している。よって、メーカー30は、園芸用品店60からも生分解性のトップシート9の原材料費の少なくとも一部を回収できる。このような仕組みからもメーカー30はおむつ1の価格を抑制できる。
【0064】
また、上記のような土壌改良システム100によれば、土壌改良剤20が埋められた土壌50において、トップシート9に付着した便に含まれる微生物によりトップシート9自身の生分解が促進される。また、土壌50において吸収体8に保持された尿により土壌50の保湿効果が向上することによっても、微生物の活動が活発化することでトップシート9の生分解が促進される。よって、コンポスト環境を整備することなくトップシート9の生分解は容易に短縮化される。よって、土壌50の一部を肥料80として販売するまでの期間は短縮化される。よって、生分解性のトップシート9の原材料費の回収は短縮化される。よって、メーカー30がおむつ1を低価格で販売開始した場合であっても、メーカー30の収益を圧迫する可能性は低減される。
【0065】
また、上記のような土壌改良システム100によれば、土壌改良剤20は便が付着したトップシート9が内側になるように筒状に畳まれる。よって、便をトップシート9および吸収体8により包んだ状態で輸送し、土壌50に埋めることができる。よって、輸送中に便が外部に付着することは防止されるため衛生的である。また、輸送中に便が外部に付着することで土壌改良剤20に含まれる便の量が減少することは抑制される。よって、土壌改良剤としての機能低下は抑制される。
【0066】
[変形例]
図7は、変形例に係る土壌改良システム100Aの概要を例示する。変形例に係る土壌改良システム100Aでは、実施形態に係る土壌改良システム100と同様のシステムである。しかしながら、変形例に係る土壌改良システム100Aでは、メーカー30Aがおむつ1を、日用品販売店65を介して消費者70Aに販売する。そして、消費者70Aが着用した使用済のおむつ1は、メーカー30Aによって回収される。なお、使用済のおむつ1は、例えばコンビニエンスストア等に常設される回収ボックスに消費者70Aにより投函され、回収車により定期的に回収ボックス内から使用済のおむつ1が回収されてもよい。そして、メーカー30Aの工場において、実施形態に係る土壌改良システム100と同様におむつ1から排出された尿や便などが付着したトップシート9および吸収体8がバックシート6から切り離され、土壌改良剤20とされる。このような土壌改良システム100Aによっても実施形態と同様の効果を奏する。
【0067】
なお、土壌改良システム100Aも、メーカー30Aが有している中央処理装置および主記憶装置、補助記憶装置、送受信装置を備えたコンピュータにより制御されてよい。当該制御は、具体的には、補助記憶装置に記憶された土壌改良システム100Aを実現するためのプログラムが主記憶装置に読み込まれ、中央処理装置により実行されることで実現できる。本変形例では、回収ボックスにセンサが設けられており、おむつ1の蓄積情報を、通信手段を介してコンピュータの送受信装置に送信する。使用済みのおむつ1が回収ボックスに十分に蓄積した場合、コンピュータは当該回収ボックスからのおむつ1の回収指示を出す。また、コンピュータに、売上データから推測されるその地域のおむつ1の需要者の数、また過去の回収ボックスへのおむつ1の蓄積傾向から学習を行った学習モデルを備え、上述のセンサ情報に加えて、またはこれに代えて、当該学習モデルの予測結果により適時回収指示を行うようにしてよい。その他のコンピュータの動作は、上述の実施形態と同様である。
【0068】
[その他変形例]
土壌改良剤20の土壌50における密度は上記に記載された例に限定されない。また、土壌50には、藁、籾殻、樹皮、および牛等の動物の糞等が含まれていなくともよい。また、土壌改良剤20に含まれる吸収コア8cは、コアラップシート7に覆われていなくともよい。また、トップシート9の目付量は上記に記載された例に限定されない。また、SAPの含有率は上記に記載された例に限定されない。
【0069】
上述した種々の実施形態および変形例に記載される事項は可能な限り組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0070】
1:おむつ
1B: 股下領域
1F: 前身頃領域
1R: 後身頃領域
2L: 左下肢開口部
2R: 右下肢開口部
2T: 胴開口部
3BL、3BR: 立体ギャザー
3LL: レグギャザー
3R: ウェストギャザー
4: カバーシート
4F1、4F2、4F3: 糸ゴム
4F4、4F5: 縁
4FF、4RF: 折り返し線
4R1、4R2、4R3: 糸ゴム
4R4、4R5: 縁
5: インナーカバーシート
6: バックシート
7: コアラップシート
8: 吸収体
8a: 上層吸収マット
8b: 下層吸収マット
8c: 吸収コア
9: トップシート
10L、10R: サイドシート
10L1、10R1: 糸ゴム
10L2、10R2: 折り返し線
11F、11R: エンドシート
12: タミーギャザー
20: 土壌改良剤
30、30A:メーカー
40:医療・介護施設
50: 土壌
60:園芸用品店
65:日用品販売店
70、70A:消費者
80:肥料
85:原料メーカー
90:入居者
100、100A: 土壌改良システム