(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131337
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】発電システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04537 20160101AFI20230914BHJP
H02J 3/46 20060101ALI20230914BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20230914BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20230914BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20230914BHJP
【FI】
H01M8/04537
H02J3/46
H02J3/38 170
H01M8/04858
H01M8/04313
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036031
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】稻葉 貴則
【テーマコード(参考)】
5G066
5H127
【Fターム(参考)】
5G066HA15
5G066HB07
5H127AB02
5H127AB23
5H127AC07
5H127AC15
5H127BA02
5H127BA05
5H127DB69
5H127DC42
5H127DC45
5H127DC98
5H127GG03
5H127GG09
(57)【要約】
【課題】1秒未満から数秒のサイクルで瞬間的に負荷が変動する機器に発電電力を供給する場合であっても、発電効率の低下を抑制して運転できると共に、商用電力系統からの電力購入を抑制してそれによる経済的損失を抑制できる。
【解決手段】制御装置Sは、機器16の負荷に燃料電池装置10の発電電力を追従する負荷追従運転を実行している場合に、機器16の瞬間的な負荷変動である瞬間負荷変動が発生したと判定したときには、燃料電池装置10の発電電力を瞬間負荷変動における負荷の最小値に合わせた発電電力よりも高い発電電力である高設定発電電力に維持すると共に、燃料電池装置10にて発電された発電電力のうち機器にて消費されない余剰電力を余剰電力消費部13にて消費する出力低下抑制制御を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷変動を生じる機器へ発電電力を供給する燃料電池装置と、当該燃料電池装置の発電電力を制御する制御装置とを備えた発電システムであって、
前記機器の負荷を検知する負荷検知手段を備え、
前記制御装置は、前記機器の負荷に前記燃料電池装置の発電電力を追従する負荷追従運転を実行している場合に、前記機器の瞬間的な負荷変動である瞬間負荷変動が発生したと判定したときには、前記燃料電池装置の発電電力を前記瞬間負荷変動における負荷の最小値に合わせた発電電力よりも高い発電電力である高設定発電電力に維持すると共に、前記燃料電池装置にて発電された発電電力のうち前記機器にて消費されない余剰電力を余剰電力消費部にて消費する出力低下抑制制御を実行する発電システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記負荷追従運転を実行している状態において、前記機器の負荷が前記燃料電池装置の発電電力に対して所定の判定基準幅以上大きい場合、又は前記機器の負荷が前記燃料電池装置の発電電力に1以上の所定の判定基準値を積算した値以上大きい場合、前記瞬間負荷変動が発生したと判定する請求項1に記載の発電システム。
【請求項3】
前記制御装置は、所定の瞬間負荷変動判定期間において前記瞬間負荷変動の発生を判定するものであり、
前記制御装置は、前記瞬間負荷変動の発生を判定した前記瞬間負荷変動判定期間における高負荷の時間割合が多いほど、前記高設定発電電力を高く設定する請求項1又は2に記載の発電システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記瞬間負荷変動判定期間における前記瞬間負荷変動の最大値Hiと、前記瞬間負荷変動判定期間における前記瞬間負荷変動の最小値Loと、前記瞬間負荷変動判定期間における前記瞬間負荷変動の平均値Avとにより、以下の〔式1〕に基づいて、前記瞬間負荷変動判定期間における前記高負荷の時間割合Rthを推定する請求項3に記載の発電システム。
Rth=(Av-Lo)/(Hi-Lo) 〔式1〕
【請求項5】
前記制御装置は、前記瞬間負荷変動判定期間における前記高負荷の時間割合Rthに関し、現時点の直前の前記瞬間負荷変動判定期間における前記瞬間負荷変動に基づいて推定した前記高負荷の時間割合Rthに加え、過去の前記瞬間負荷変動判定期間における前記最大値Hiと前記最小値Loと前記平均値Av、又は当該過去の前記瞬間負荷変動判定期間における前記瞬間負荷変動に基づいて推定した前記高負荷の時間割合Rthを加味して推定する請求項4に記載の発電システム。
【請求項6】
前記機器及び前記燃料電池装置は、系統連系可能に構成されており、
前記制御装置は、前記系統連系時に、前記燃料電池装置の発電電力が逆潮流することを防止する逆潮流防止制御を実行する請求項1~5の何れか一項に記載の発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷変動を生じる機器へ発電電力を供給する燃料電池装置と、当該燃料電池装置の発電電力を制御する制御装置とを備えた発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、家庭内に設けられる負荷変動を生じる機器に対し、発電電力を供給する燃料電池装置と、当該燃料電池装置の発電電力を制御する制御装置とを備えた発電システムが知られている(特許文献1を参照)。
当該特許文献1に示す発電システムにおいて、逆潮流が防止されているときには、制御装置は、機器の負荷変動に追従する形で燃料電池装置の発電電力を変化させる負荷追従運転を実行して、家庭における商用電力系統からの購入電力を低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した発電システムにおいて、制御装置が燃料電池装置に負荷追従運転を実行させる場合であって、
図5に示すように、負荷が最大値Hiと最小値Loとの間で負荷変動が生じるときには、ΔLの負荷の低下に応じて、燃料電池装置の発電電力をΔLだけ低下させる制御(以下、制御1と略称する場合がある)が実行される場合がある。
ここで、燃料電池装置では、発電電力を低下させることは瞬時にできるものの、発電電力を増加させる際には、燃料となる水素の生成量を増加させる必要等があるため、徐々に増加させることしかできない。このため、比較的短い時間間隔で頻繁に負荷変動が生じる場合、上記制御1では、
図5に示すように、燃料電池装置の発電電力が零まで低下してしまい、頻繁な負荷変動の後には、一定期間、負荷と発電電力との間に乖離が生じるといった問題が生じる。
ここで、比較的短い時間間隔で頻繁に生じる負荷変動とは、1秒未満から数秒のサイクルで生じる負荷変動であり、このような負荷変動を生じる機器としては、トイレの便座・炊飯器・電気ストーブ等が挙げられる。
【0005】
一方、
図6に示すように、制御装置が燃料電池装置に負荷追従運転を実行させる場合であって、負荷が最大値Hiと最小値Loとの間で負荷変動が生じるときに、負荷の低下に応じて、燃料電池装置の発電電力を負荷の最小値Loに追従させる制御(以下、制御2と略称する場合がある)が実行される場合がある。当該制御2を実行している場合には、燃料電池装置の発電電力が零まで低下することはないものの、比較的短い時間間隔で頻繁に負荷変動が生じる場合、上記制御1と同様に、頻繁な負荷変動の後には、一定期間、負荷と発電電力との間に乖離が生じる。
このように、制御1、2の何れの負荷追従運転を実行している場合でも、負荷と発電電力に乖離が生じている間は、定格よりも大幅に小さい発電電力で運転することによる発電効率の低下を生じさせたり、負荷に対応した発電電力を発電できていないため、商用電力系統から電力を購入する必要が生じ、各家庭に本来必要のない経済的損失を生じさせたりすることがあり、改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、1秒未満から数秒のサイクルで瞬間的に負荷が変動する機器に発電電力を供給する場合であっても、発電効率の低下を抑制して運転できると共に、商用電力系統からの購入電力量を低減してそれによる経済的損失を抑制できる発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための発電システムは、負荷変動を生じる機器へ発電電力を供給する燃料電池装置と、当該燃料電池装置の発電電力を制御する制御装置とを備えた発電システムであって、その特徴構成は、
前記機器の負荷を検知する負荷検知手段を備え、
前記制御装置は、前記機器の負荷に前記燃料電池装置の発電電力を追従する負荷追従運転を実行している場合に、前記機器の瞬間的な負荷変動である瞬間負荷変動が発生したと判定したときには、前記燃料電池装置の発電電力を前記瞬間負荷変動における負荷の最小値に合わせた発電電力よりも高い発電電力である高設定発電電力に維持すると共に、前記燃料電池装置にて発電された発電電力のうち前記機器にて消費されない余剰電力を余剰電力消費部にて消費する出力低下抑制制御を実行する点にある。
【0008】
上記特徴構成によれば、制御装置が、機器の負荷に燃料電池装置の発電電力を追従する負荷追従運転を実行している場合に、機器の瞬間的な負荷変動である瞬間負荷変動が発生したと判定したときには、燃料電池装置の発電電力を瞬間負荷変動における負荷の最小値に合わせた発電電力よりも高い発電電力である高設定発電電力に維持すると共に、燃料電池装置にて発電された発電電力のうち機器にて消費されない余剰電力を余剰電力消費部にて消費する出力低下抑制制御を実行するから、瞬間的な負荷変動が継続するような場合であっても、燃料電池装置の発電電力が、大きく低下し過ぎることを防止できる。さらに、当該瞬間的な負荷変動の直後では、比較的高い発電電力である高設定発電電力から負荷に追従するから、負荷と発電電力との乖離幅を従来に比べ小さくして、商用電力系統からの購入電力量を抑制してそれによる経済的損失を抑制できる。
また、定格よりも大幅に小さい発電電力で燃料電池が運転されることを防止でき、発電効率の低下を抑制した運転を実現できる。
ここで、瞬間負荷変動とは、1秒未満から数秒のサイクルで生じる負荷変動であり、このような負荷変動を生じる機器としては、トイレの便座・炊飯器・電気ストーブ等が挙げられる。
【0009】
発電システムの更なる特徴構成は、
前記制御装置は、前記負荷追従運転を実行している状態において、前記機器の負荷が前記燃料電池装置の発電電力に対して所定の判定基準幅以上大きい場合、又は前記機器の負荷が前記燃料電池装置の発電電力に1以上の所定の判定基準値を積算した値以上大きい場合、前記瞬間負荷変動が発生したと判定する点にある。
【0010】
先に説明したように、燃料電池装置では、発電電力を低下させることは瞬時にできるものの、発電電力を増加させる際には、燃料となる水素の生成量を増加させる必要等があるため、徐々に増加させることしかできない。このため、比較的短い時間間隔で頻繁に負荷変動が生じる場合、即ち、瞬間負荷変動が生じる場合、従来技術として上述したように、燃料電池装置の発電電力は、負荷変動時の最小値か、それより低い値まで低下し、機器の負荷が燃料電池装置の発電電力に対して所定の判定基準幅以上大きくなる、又は機器の負荷が燃料電池装置の発電電力に1以上の所定の判定基準値を積算した値以上大きくなる。
そこで、発明者らは、この点を鑑みて、上記特徴構成の如く、制御装置が、負荷追従運転を実行している状態において、燃料電池装置の発電電力に対して機器の負荷が所定の判定基準幅以上大きい場合、又は前記機器の負荷が前記燃料電池装置の発電電力に1以上の所定の判定基準値を積算した値以上大きい場合、瞬間負荷変動が発生したと判定するよう構成することで、瞬間的負荷変動を直接計測できるような高精度な流量計(負荷計)を設けない構成であっても、瞬間的負荷変動の発生を判定するようにしたのである。
【0011】
発電システムの更なる特徴構成は、
前記制御装置は、所定の瞬間負荷変動判定期間において前記瞬間負荷変動の発生を判定するものであり、
前記制御装置は、前記瞬間負荷変動の発生を判定した前記瞬間負荷変動判定期間における高負荷の時間割合が多いほど、前記高設定発電電力を高く設定する点にある。
【0012】
瞬間負荷変動の発生を判定した瞬間負荷変動判定期間における高負荷の時間割合が多いほど、当該瞬間負荷変動が終了した後に、高負荷となる可能性が高くなる。
上記特徴構成によれば、瞬間負荷変動判定期間における高負荷の時間割合が多いほど、高設定発電電力を高く設定しているから、負荷変動が生じた場合やその直後において、発電電力を高負荷に比較的短時間で追従させることができる。
一方、瞬間負荷変動の発生を判定した瞬間負荷変動判定期間における高負荷の時間割合が低いときには、高設定発電電力が低く設定されるから、発電電力が負荷に対して必要以上に高くなることを防止できる。
【0013】
発電システムの更なる特徴構成は、
前記制御装置は、前記瞬間負荷変動判定期間における前記瞬間負荷変動の最大値Hiと、前記瞬間負荷変動判定期間における前記瞬間負荷変動の最小値Loと、前記瞬間負荷変動判定期間における前記瞬間負荷変動の平均値Avとにより、以下の〔式1〕に基づいて、前記瞬間負荷変動判定期間における前記高負荷の時間割合Rthを推定する点にある。
Rth=(Av-Lo)/(Hi-Lo) 〔式1〕
【0014】
上述したように、適切な高設定発電電力を設定するためには、瞬間負荷変動判定期間における高負荷の時間割合に基づいた設定を行うことが好ましい。
このためには、例えば、1秒未満から数秒のサイクルで生じる負荷変動を正確に検知するする高精度な流量計(負荷計)を備える必要があるが、現状は経済的な理由等によりこのような高精度な流量計が備えられない場合が多い。
上記特徴構成によれば、瞬間負荷変動判定期間における瞬間負荷変動の最大値Hi、最小値Lo、平均値Avから、上述の〔式1〕に基づいて、瞬間負荷変動判定期間における高負荷の時間割合を推定するから、高精度な流量計を備えない構成であっても、瞬間負荷変動判定期間における高負荷の時間割合を得て、当該値に基づいて、高設定発電電力を適切に設定できる。
【0015】
発電システムの更なる特徴構成は、
前記制御装置は、前記瞬間負荷変動判定期間における前記高負荷の時間割合Rthに関し、現時点の直前の前記瞬間負荷変動判定期間における前記瞬間負荷変動に基づいて推定した前記高負荷の時間割合Rthに加え、過去の前記瞬間負荷変動判定期間における前記最大値Hiと前記最小値Loと前記平均値Av、又は当該過去の前記瞬間負荷変動判定期間における前記瞬間負荷変動に基づいて推定した前記高負荷の時間割合Rthを加味して推定する点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、過去の瞬間負荷変動判定期間における瞬間負荷変動や、当該瞬間負荷変動に基づいて推定した高負荷の時間割合も加味しながら、高負荷の時間割合を推定するから、当該発電システムの設置環境等をより適切に反映した状態で、高負荷の時間割合を推定できると共に、当該高負荷の時間割合に基づく高設定発電電力を適切に設定できる。
【0017】
発電システムの更なる特徴構成は、
前記機器及び前記燃料電池装置は、系統連系可能に構成されており、
前記制御装置は、前記系統連系時に、逆潮流を防止するよう前記燃料電池装置の発電電力を制御する点にある。
【0018】
これまで説明してきた発電システムの作用効果は、逆潮流を防止するよう燃料電池装置の発電電力が制御される構成において良好に発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係る発電システムの概略構成図である。
【
図2】実施形態に係る発電システムの制御フロー図である。
【
図3】瞬間負荷変動判定期間における高負荷の時間割合を説明するための図である。
【
図4】高負荷の時間割合から高設定発電電力を設定するためのグラフ図である。
【
図5】従来の負荷追従運転をしている場合の燃料電池装置の発電電力を示すグラフ図である。
【
図6】従来の負荷追従運転をしている場合の燃料電池装置の発電電力を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態に係る発電システム100は、1秒未満から数秒のサイクルで瞬間的に負荷が変動する機器に発電電力を供給する場合であっても、発電効率の低下を抑制して運転できると共に、商用電力系統からの購入電力量を低減してそれによる経済的損失を抑制できるものに関する。
【0021】
以下、
図1~
図4に基づいて、実施形態に係る発電システム100を説明する。
実施形態に係る発電システム100は、
図1に示すように、負荷変動を生じる負荷16(機器の一例)へ発電電力を供給する燃料電池装置10と、燃料電池装置10の発電電力を制御する制御装置S(燃料電池装置10の一部)とを備えたものである。
【0022】
燃料電池装置10は、天然ガス(都市ガス13A)を燃料として直流電力を直流出力ラインDC1へ出力する燃料電池本体11、燃料電池本体11の直流電力を所定の電気方式の出力電圧と周波数の交流電力に変換して交流出力ラインAC1へ出力するパワーコンディショナー12、燃料電池本体11の発電電力を制御する制御装置Sを備えて構成されている。
尚、当該燃料電池装置10は、燃料電池本体11の発電電力の一部を消費可能なヒーター13(余剰電力消費部の一例)が設けられており、当該ヒーター13は、当該ヒーター13での消費電力を制御するヒータ制御装置14を介して消費交流ラインAC4により交流出力ラインAC1に接続されている。制御装置Sは、ヒータ制御装置14に制御指令を送る形でヒーター13での消費電力を制御する。
当該実施形態では、パワーコンディショナー12が、燃料電池本体11の出力電圧を、一般家庭用に単相3線式正弦波出力の100V/200Vに変換して交流出力ラインAC1に出力し、負荷交流ラインAC2を介して負荷16に供給する。また、燃料電池装置10は、系統電源(商用交流電源)15と系統連系接続されており、負荷16は、系統電源15からも同じ電気方式の交流電力を受電する。従って、パワーコンディショナ-12は、系統電源15と系統連系する機能を有している。
更に、燃料電池装置10は、燃料電池本体11の排熱との熱交換により熱媒体(例えば水など)を加熱し、当該熱媒体を排熱利用給湯暖房ユニット(図示せず)へ供給する熱電併給装置として機能する。ちなみに、排熱利用給湯暖房ユニットは、図示はしていないが、貯湯槽、補助熱源機、電気ヒータ、熱交換器等からなり、燃料電池装置10から熱供給を受けて、家庭内の浴槽、浴室、台所等への給湯、及び、各室の暖房用の循環給湯を行うように構成されている。しかし、その具体的な構成は本発明の本旨と直接関係無いので、詳細な説明は割愛する。
【0023】
以上の構成の他、燃料電池装置10の制御に使用する負荷電力を監視するため、燃料電池本体11の出力端である交流出力ラインAC1上に第2電流計(カレントトランス)CT2(負荷検知手段の一例)、及び、燃料電池本体11の出力電力と系統電源15の系統電力との合流部より系統電源15側の系統交流ラインAC3上に第1電流計(カレントトランス)CT1(負荷検知手段の一例)を備えて、燃料電池装置10の出力電力Pxと系統電源15の系統電力Pyを夫々個別に計測し、その合計より負荷16で消費される負荷電力Pzが導出可能な構成となっている。
尚、図示していないが、交流出力ラインAC1及び系統交流ラインAC3上の電圧値は、互いに等しいものとして計測可能であり、夫々出力電力Px、系統電力Pyの計測に用いられる。
【0024】
尚、燃料電池装置10を
図1に示すように系統連系させる場合、系統連系ガイドラインに準拠した単独運転防止装置、及び保護継電器を系統保護のために具備する必要があり、例えば、系統停電検出と同時に解列動作する所定の保護継電器を燃料電池装置10のパワーコンディショナー12と系統電源15の間に設ける必要がある。しかしながら、当該保護継電器は、燃料電池装置10内にあっても構わず、本実施形態では、本発明の本旨と関係ないので図示を省略している。
因みに、当該実施形態に係る発電システム100では、制御装置Sは、燃料電池装置10から系統電源15への逆潮流を防止するよう、燃料電池装置10の発電電力及びヒーター13の消費電力を制御(逆潮流防止制御)している。
ここで、制御装置Sは、「負荷」、「負荷-所定値」、又は「負荷×1未満の所定値」を目標値として発電電力を負荷に追従させる負荷追従運転として、
図5に示すように、負荷が最大値Hiと最小値Loとの間で負荷変動が生じるときには、ΔLの負荷の低下に応じて、燃料電池装置10の発電電力をΔLだけ低下させる制御を実行する。
または、制御装置Sは、「負荷」、「負荷-所定値」、又は「負荷×1未満の所定値」を目標値として発電電力を負荷に追従させる負荷追従運転として、負荷が最大値Hiと最小値Loとの間で負荷変動が生じるときに、負荷の低下に応じて、燃料電池装置10の発電電力を負荷の最小値Loに追従させる制御(以下、制御2と略称する場合がある)を実行する。
【0025】
さて、当該実施形態に係る発電システム100では、瞬間的な負荷変動が連続して発生した場合に、燃料電池装置10での発電電力が負荷に対して大幅に低下した状態が継続して、発電効率が低下することを防止するため、以下の如く構成されている。
即ち、制御装置Sは、負荷16に燃料電池装置10の発電電力を追従する負荷追従運転を実行している場合に、負荷16の瞬間的な負荷変動である瞬間負荷変動が発生したと判定したときには、燃料電池装置10の発電電力を瞬間負荷変動における負荷の最小値に合わせた発電電力よりも高い発電電力である高設定発電電力に維持すると共に、燃料電池装置10にて発電された発電電力のうち負荷16にて消費されない余剰電力をヒーター13にて消費する出力低下抑制制御を実行する。
【0026】
ここで、燃料電池装置10の発電電力とは、燃料電池本体11にて発電される発電電力を意味するものとする。更に、負荷追従運転とは、例えば、
図5に示すように、燃料電池装置10の発電電力を負荷に追従させる運転を意味するものとし、負荷の低下が生じたときには瞬間的に負荷の低下幅ΔLと同量だけ発電電力を低下させ、負荷の上昇が生じたときには当該負荷と発電電力とが等しくなるように徐々に発電電力を増加させる運転を意味するものとする。尚、当該実施形態に係る負荷追従運転は、
図6に示すように、燃料電池本体11の発電電力の最低値を負荷の最小値と略同等とする運転も含むものとする。
【0027】
尚、瞬間負荷変動とは、1秒未満から数秒のサイクルで生じる負荷変動であり、このような負荷変動を生じる機器としては、トイレの便座・炊飯器・電気ストーブ等が挙げられる。
また、家庭用の発電システム100において、上記第1電流計CT1及び第2電流計CT2は、経済性の観点から、それ自体で1秒未満から数秒のサイクルで生じる負荷変動を検知する高精度なものを設けることが難しいため、制御装置Sは、以下の制御にて、瞬間的負荷変動の発生を判定している。
即ち、制御装置Sは、負荷追従運転を実行している状態において、燃料電池装置10の発電電力に対して負荷16としての機器の負荷が所定の判定基準幅以上大きい場合、瞬間負荷変動が発生したと判定する。ここで、所定の判定基準幅とは、例えば、発電システム100が家庭用の場合、50W以上700W以下の幅を意味するものとする。
尚、当該判定は、発電システム100が家庭内に設けられている状況において、家庭内の電力負荷が燃料電池装置10の最大発電電力以下の場合で、燃料電池装置10の発電電力が、発電を抑制する発電抑制制御に至っていないことを前提条件に実行される。
【0028】
次に、出力低下抑制制御における高設定発電電力の設定方法を説明する。
制御装置Sは、
図3、4に示すように、所定の瞬間負荷変動判定期間Tsにおいて瞬間負荷変動の発生を判定するものであり、瞬間負荷変動の発生を判定した瞬間負荷変動判定期間Tsにおける高負荷の時間割合Rthが多いほど、高設定発電電力を高く設定する。
より詳細には、制御装置Sは、瞬間負荷変動判定期間Tsにおける瞬間負荷変動の最大値Hiと、瞬間負荷変動判定期間Tsにおける瞬間負荷変動の最小値Loと、瞬間負荷変動判定期間における瞬間負荷変動の平均値Avとにより、以下の〔式1〕に基づいて、瞬間負荷変動判定期間Tsにおける高負荷の時間割合Rthを推定する。
【0029】
Rth=(Av-Lo)/(Hi-Lo) 〔式1〕
【0030】
例えば、Av=550W、Hi=650W、Lo=400Wの場合、Rthは0.6(60%)となる。
瞬間負荷変動の発生を判定した瞬間負荷変動判定期間Tsにおける高負荷の時間割合Rthが多いほど、瞬間負荷変動が終了した後に、高負荷となる可能性が高くなる。このため、高設定発電電力は、瞬間負荷変動判定期間Tsにおける高負荷の時間割合Rthに基づいた設定を行っておくことで、瞬間負荷変動が終了した後に、発電電力を負荷へ円滑に追従させることができる。
ただし、瞬間負荷変動判定期間Tsにおける高負荷の時間割合Rthを算出するためには、例えば、1秒未満から数秒のサイクルで生じる負荷変動を正確に検知する高精度な流量計(負荷計)を備える必要があるが、現状は経済的な理由等によりこのような高精度な流量計を備えられない場合が多い。
そこで、瞬間負荷変動判定期間Tsにおける瞬間負荷変動の最大値Hi、最小値Lo、平均値Avから、上述の〔式1〕に基づいて、瞬間負荷変動判定期間Tsにおける高負荷の時間割合Rthを推定することで、高精度な流量計を備えない構成であっても、瞬間負荷変動判定期間Tsにおける高負荷の時間割合Rthを得て、当該値に基づいて、高設定発電電力を適切に設定する。
【0031】
尚、制御装置Sは、現時点の直前における瞬間負荷変動判定期間Tsよりも過去にて取得された種々の値に基づいて、高負荷の時間割合Rthを推定することもできる。
例えば、制御装置Sは、
図3に示すように、現時点の直前における瞬間負荷変動判定期間Tsを含む期間Kにて推定された高負荷の時間割合Rthに基づいて、高設定発電電力を設定することができるのであるが、例えば、期間Kよりも前の過去の期間(
図3で、K-1、K-2、K-3・・・)における瞬間負荷変動判定期間Tsにて推定された高負荷の時間割合Rthを加味して、高設定発電電力を設定するよう構成しても構わない。
【0032】
例えば、複数の瞬間負荷変動判定期間Tsでの夫々の高負荷の時間割合Rthを学習しておき、現時点に近いほど高い影響度を持つように加重平均した値に基づいて、高設定発電電力を設定しても構わない。また、単純に、複数の瞬間負荷変動判定期間Tsでの夫々の高負荷の時間割合Rthの平均値に基づいて、高設定発電電力を設定しても構わない。
【0033】
ここで、制御装置Sは、
図4に示すように、推定された高負荷の時間割合Rthと高設定発電電力との関係を示すグラフ(例えば、
図4でf1、f2、f3)又はマップを記憶しており、高負荷の時間割合Rthから、推定に用いた瞬間負荷変動判定期間Tsにおける負荷の最大値Hiと負荷の最小値Loとの間での高設定発電電力を決定する。上記グラフは、発電効率等を加味して適宜決定されるが、高負荷の時間割合Rthが高いほど高設定発電電力が高くなる関係を有するものである。
尚、
図4のf1、f2、f3は、高負荷の時間割合Rthと高設定発電電力との関係として、正の相関を持つグラフである。
【0034】
図2に基づいて、当該実施形態に係る発電システム100の制御フローを説明する。
制御装置Sは、燃料電池装置10の発電が開始されると、負荷16の負荷に燃料電池装置10の発電電力を追従させる負荷追従運転を実行する(#01)。
【0035】
次に、制御装置Sは、瞬間的な負荷変動発生条件が満足しているか、即ち、負荷追従運転を実行している状態において、燃料電池装置10の発電電力に対して負荷16としての機器の負荷が所定の判定基準幅以上大きいか否かを判定し、大きい場合(#02でYes)、#03のステップへ移行し、大きくない場合(#02でNo)、#01の負荷追従運転を継続する。尚、当該#02の判定は、上述した前提条件が満たされる場合に実行する
。
ここで、前提条件とは、上述したように、発電システム100が家庭内に設けられている状況において、家庭内の電力負荷が燃料電池装置10の最大発電電力以下の場合で、燃料電池装置10の発電電力が、発電を抑制する発電抑制制御に至っていないことを意味する。
【0036】
#02でYesの場合、制御装置Sは、〔式1〕に基づいて、瞬間負荷変動判定期間Tsにおける高負荷の時間割合Rthを推定し(#03)、高負荷の時間割合Rthに基づいて、
図4に示すグラフ図等に基づいて高設定発電電力を導出し(#04)、導出した高設定発電電力に基づいて出力低下抑制制御を実行する(#05)。
即ち、出力低下抑制制御において、制御装置Sは、燃料電池装置10の発電電力を瞬間負荷変動における負荷の最小値に合わせた発電電力よりも高い発電電力である高設定発電電力に維持すると共に、瞬間的に負荷が低負荷となった場合には、燃料電池装置10にて発電された発電電力のうち負荷16にて消費されない余剰電力をヒーター13にて消費する形で、逆潮流が生じないように制御する。
【0037】
当該出力低下抑制制御を実行しているときに、制御装置Sは、再度、瞬間的な負荷変動発生条件が満足しているかを判定する(#06)。即ち、制御装置Sは、負荷追従運転を実行している状態において、燃料電池装置10の発電電力に対して負荷16としての機器の負荷が所定の判定基準幅以上大きいか否かを判定し、大きい場合(#06でYes)、出力低下抑制制御を継続し(#07)、大きくない場合(#06でNo)、#01の負荷追従運転へ移行する。
【0038】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態に係る発電システム100においては、瞬間的な負荷変動を生じる負荷16(機器の一例)が存在するか否かを検知する装置として、電力を計測するデータロガー(高精度に電力量を監視する装置)を備えていても構わない。
制御装置Sは、データロガーが瞬間的な負荷変動を生じる負荷16が負荷交流ラインAC2に接続されたことを検知している場合に、出力低下抑制制御における負荷16の瞬間負荷変動の発生の判定をするように構成しても構わない。
即ち、制御装置Sは、データロガーが瞬間的な負荷変動を生じる負荷16が負荷交流ラインAC2に接続されたことを検知していない場合は、負荷16の瞬間負荷変動の発生の判定を実行しないよう構成しても構わない。
【0039】
(2)上記実施形態では、制御装置Sは、負荷追従運転を実行している状態において、燃料電池装置10の発電電力に対して負荷16としての機器の負荷が所定の判定基準幅(例えば50W以上700W以下の値)以上大きい場合、瞬間負荷変動が発生したと判定した。
他の制御例として、制御装置Sは、負荷追従運転を実行している状態において、機器としての負荷16の負荷が燃料電池装置10の発電電力に1以上の所定の判定基準値を積算した値以上大きい場合、瞬間負荷変動が発生したと判定しても構わない。
【0040】
(3)上記実施形態では、制御装置Sは、
図3に示すように、現時点の直前における瞬間負荷変動判定期間Tsを含む期間Kにて推定された高負荷の時間割合Rthに基づいて、高設定発電電力を設定することができるのであるが、例えば、期間Kよりも前の過去の期間(
図3で、K-1、K-2、K-3・・・)における瞬間負荷変動判定期間Tsにて推定された高負荷の時間割合Rthを加味して、高設定発電電力を設定する構成例を示した。
他の構成例として、制御装置Sは、現時点の直前における瞬間負荷変動判定期間Tsを含む期間Kにて推定された高負荷の時間割合Rthの算出に際し、過去の瞬間負荷変動判定期間Tsにおける最大値Hiと最小値Loと平均値Av、を加味して推定しても構わない。
【0041】
(4)尚、高設定発電電力は、上記瞬間負荷変動が発生したと判定された瞬間負荷変動判定期間Tsの直前の発電電力を設定しても構わない。
【0042】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の発電システムは、1秒未満から数秒のサイクルで瞬間的に負荷が変動する機器に発電電力を供給する場合であっても、発電効率の低下を抑制して運転できると共に、商用電力系統からの購入電力量を低減してそれによる経済的損失を抑制できる発電システムとして、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 :燃料電池装置
13 :ヒーター
15 :系統電源
16 :負荷
100 :発電システム
CT1 :第1電流計
CT2 :第2電流計
Hi :最大値
Lo :最小値
Rth :時間割合
S :制御装置
Ts :瞬間負荷変動判定期間