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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131339
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】球面用印判
(51)【国際特許分類】
   B41K 1/28 20060101AFI20230914BHJP
   B41K 1/50 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
B41K1/28
B41K1/50 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036034
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】390017891
【氏名又は名称】シヤチハタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】230117259
【弁護士】
【氏名又は名称】綿貫 敬典
(72)【発明者】
【氏名】大▲崎▼ 友也
(57)【要約】
【課題】捺印時に印字体にかかる荷重が適切に緩和され、凸球状面を有する被捺印部材に対して鮮明に捺印することができる球面用印判を提供すること。
【解決手段】凸球状面61を有する被捺印部材6に捺印可能な球面用印判であって、その印判頭部11は、凸球状面61を受ける凹球面部21が形成されたホルダーと、凹球面部21と対向するように前記ホルダーの端部に設けられた可撓性を有する印字体3とを備え、非捺印時において、印字体3の少なくとも中央部が凹球面部21と離間している構成とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸球状面を有する被捺印部材に捺印可能な球面用印判であって、
その印判頭部は、
前記凸球状面を受ける凹球面部が形成されたホルダーと、
前記凹球面部と対向するように前記ホルダーの端部に設けられた可撓性を有する印字体とを備え、
非捺印時において、前記印字体の少なくとも中央部が前記凹球面部と離間している球面用印判。
【請求項2】
前記印字体は枠体に張設された多孔質膜の印字体であり、前記印字体と前記凹球面部との間にインキ吸収体を備えた請求項1に記載の球面用印判。
【請求項3】
前記枠体は平面視略円形状の開口部を備え、前記印字体は前記開口部を覆うように張設されている請求項2に記載の球面用印判。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凸球状面を有する被捺印部材に捺印可能な球面用印判に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、凸球状面に捺印可能な印判が知られている。特許文献1には、凹球面部を有する印台と印面との間にバネ体が配置された西瓜専用印判が記載されている。この印判は、平面または凸球状面のいずれに対しても、印面がその表面形状に追従して変形し捺印可能なものである。
【0003】
また、特許文献2には、凹曲面状に湾曲した金属板を備えた本体と、前記金属板に隙間なく沿う形で緩衝材及び印字体が設けられた捺印具が記載されている。この捺印具は前記金属板を本体内側から外側へ向かって押圧可能な構成であり、湾曲した前記金属板及び印字体を下方に押しやって平面とすることができる。これにより、平坦なスタンプ台を用いて印面へインキを塗布した後、印字体を湾曲形状に戻して曲面に対する捺印を行うことができる。
【0004】
特許文献1記載の印判を用いて捺印する場合、球体形状の捺印対象物に対し、平坦な印面の略中央部分が最初に接触する。このため、印面の中央付近には荷重が最も強くかかるところ、さらに印字体の中央部直下に配置されたバネ体の圧縮に抗する力も加わり、印字体中央部の応力が緩和されにくい。むしろ、このバネ体が印字体裏側に接触する部分は印面全体に比べて面積が狭いため応力が大きくなってしまう。よって、印面の中央部と周縁部とに作用する荷重が均一とならず、印影にむらやずれが生じるおそれがある。
【0005】
また、特許文献2記載の捺印具では、印字体及び緩衝材が本体の凹状曲面に隙間なく沿うように配置されているために、捺印時に印面中心部にかかる押圧力が十分に緩和されず、印面中心部と両端部とにかかる荷重が不均一となるおそれがある。これにより、例えば両端部の印影が薄くならないように捺印具または捺印対象物を動かして捺印対象面と印面とを追従させる動作によって、中心部に過度の捺印圧力がかかりインクが過剰に吐出されて印影がにじむことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭03-12386号公報
【特許文献2】実開平07-11349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記した従来の問題点を解決し、捺印時に印字体にかかる荷重が適切に緩和され、凸球状面を有する被捺印部材に対して鮮明に捺印することができる球面用印判を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、凸球状面を有する被捺印部材に捺印可能な球面用印判であって、その印判頭部は、前記凸球状面を受ける凹球面部が形成されたホルダーと、前記凹球面部と対向するように前記ホルダーの端部に設けられた可撓性を有する印字体とを備え、非捺印時において、前記印字体の少なくとも中央部が前記凹球面部と離間している球面用印判とする。
【0009】
また、前記印字体は枠体に張設された多孔質膜の印字体であり、前記印字体と前記凹球面部との間にインキ吸収体を備えた構成とすることが好ましい。
【0010】
また、前記枠体は平面視略円形状の開口部を備え、前記印字体は前記開口部を覆うように張設されている構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、凸球状面を有する被捺印部材に対して鮮明に捺印することができる球面用印判を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の球面用印判を示す斜視図である。
図2】実施形態の印判頭部の斜視図である。
図3】実施形態の印判頭部の分解斜視図である。
図4】実施形態の印判頭部の断面図である。なお、捺印動作の開始時点において被捺印部材と印面とが接した状態を示している。
図5図4に示す状態からさらに被捺印部材が印字体を押圧し、応力緩和空間が小さくなっている状態を示す断面図である。
図6図5に示す状態からさらに被捺印部材が印字体を押圧し、インキ吸収体の裏面の略全体がホルダーの凹球面部に接した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に発明を実施するための形態を示す。本発明の球面用印判1は、ボールなどの凸球状面を有する被捺印部材の表面に捺印可能な印判である。図1に示されるように、実施形態の球面用印判1は、印字体3及び蓋枠体4を備えた印判頭部11と、印判頭部11が嵌合された持ち手7と、印字体3及び蓋枠部4を覆うことが可能なキャップ71とを備えている。なお、印判頭部11を把持する手段としては持ち手7に限定されず、他の形状であってもよい。また、捺印方法は手に持って行うことに限定されず、印判頭部11が機械装置等に取り付けられた球面用印判1であってもよい。
【0014】
印判頭部11について説明する。図2に示されるように、実施形態の印判頭部11は、ホルダー2と、可撓性を有する印字体3とを備えている。実施形態の印字体3は外側に印面31が形成された多孔質膜の印字体であって、ホルダー2の端部に配置されている。
【0015】
また、実施形態の印判頭部11は、ホルダー2に嵌合可能な枠状の蓋である蓋枠部4を備え、蓋枠部4の上面には平面視略円形の開口部41が形成されている。印字体3はこの開口部41を覆うように蓋枠部4に張設されている。実施形態のホルダー2及び蓋枠部4は合成樹脂で成形されているが、材質はこれに限定されない。
【0016】
図3に示されるように、実施形態のホルダー2は全体が略円筒形状であって、図中上側には中央がくぼんだ球面である凹球面部21が形成されている。凹球面部21は、捺印対象の凸球状面を受けるものであり、凹球面部21が前記凸球状面の曲率半径と略同じ曲率半径の円弧形状を有するように形成されていることが好ましい。印字体3は、凹球面部21と対向するようにしてホルダー2の図中上側の端部に配置される。
【0017】
また、本実施形態では、印字体3と凹球面部21との間に平面視円形のインキ吸収体5が配置されている。この例のインキ吸収体5はポリビニルホルマール樹脂の発泡体で成形されており、含浸されたインキを貯蔵することができるものである。前述したように印字体3は多孔質膜であるため、インキ吸収体5に含浸されたインキを吸い上げて印面31に供給することができる。
【0018】
なお、インキ吸収体5を設けず、スタンプ台等を用いて印面31にインキを塗布して捺印する構成であってもよい。インキ吸収体5を備えない印判頭部11の場合、インキ吸収体5の代わりに捺印時の押圧力を吸収できるクッション性のスポンジ体を設けることが好ましいが、必ずしもこのようなスポンジ体を設けなくてもよい。
【0019】
実施形態の印判頭部11の捺印時の挙動について、図4図6に示されるように、被捺印部材6の凸球状面61に捺印する場合を例に説明する。なお、この例の被捺印部材6は野球用ボールであり、凸球状面61は野球用ボールの任意の外表面である。
【0020】
図4に示されるように、実施形態の印判頭部11は、捺印動作の開始時点において印字体3の少なくとも中央部が凹球面部21と離間し、印字体3と凹球面部21との間に応力緩和空間Sが形成されている。
【0021】
持ち手7を手で持ち、印面31を凸球状面61に押し付ける捺印動作を行うと、図4に示されるように、まず凸球状面61の頂点62が印字体3の略中央部に当接する。これに続いて、図5に示されるように、被捺印部材6が印字体3及びインキ吸収体5を押し下げてたわませ、応力緩和空間Sを小さくしながら図中下向きに移動する。このように、印字体3と凹球面部21との間に応力緩和空間Sが設けられていると、被捺印部材6から受ける荷重を膜状の印字体3のたわみによって受けることができる。
【0022】
これにより、インキ吸収体5の裏面の略全体が凹球面部21に突き当たるまでの間、被捺印部材6からの押圧力を逃がすことができ、印字体3の中央部に応力が偏ることを抑制することができる。このとき、本実施形態のように、印字体3がその全周にわたって外向きに引っ張られて張設される構成であれば、印字体3が被捺印部材6からの圧力を受けた際に、全方向に均一にたわむことができるため好ましい。
【0023】
さらに被捺印部材6を図中下向きに押す荷重が加えられると、図6に示されるように、インキ吸収体5の裏面の略全体が凹球面部21に突き当たってインキ吸収体5が圧縮され、印字体3の略全体が被捺印部材6の凸球状面61に密着し、凸球状面61に印影が形成される。
【0024】
このように、実施形態の球面用印判1を用いれば、印字体3の略全体が被捺印部材6の凸球状面61に密着した状態となるまでの間の応力が緩和され、印字体3が全体にわたって均一に押圧されるので、印字体3の中央部と周縁部とにおける荷重の偏りを抑制して鮮明な印影を形成することが可能となる。このため、捺印時に印字体3にかかる荷重が適切に緩和され、凸球状面61を有する被捺印部材6に対して鮮明に捺印することができる球面用印判1を提供することが可能となる。
【0025】
なお、本実施形態のように印字体3と凹球面部21との間にインキ吸収体5のようなクッション性を有する部材を備えた構成とすれば、上記した荷重の緩和に加えクッション効果によりさらに鮮明な印影を得やすくなる。
【0026】
以上、実施形態を例に挙げて本発明について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 球面用印判
11 印判頭部
2 ホルダー
21 凹球面部
3 印字体
31 印面
4 蓋枠部
5 インキ吸収体
6 非捺印部材
61 凸球状面
62 頂点
7 持ち手
71 キャップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6