(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131343
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】電動車両用バッテリーケースおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20230914BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036045
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】石飛 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】大學 孝一
【テーマコード(参考)】
3D235
【Fターム(参考)】
3D235AA01
3D235BB02
3D235BB20
3D235CC14
3D235DD35
3D235EE63
3D235HH43
3D235HH55
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電動車両用バッテリーケースおよびその製造方法において、バスタブ状のトレイによってシール性を向上させるとともに、トレイを収容するフレームを熱損傷なく簡易に構成する。
【解決手段】電動車両用バッテリーケースは、複数の骨格部材111,112が接合部材114を介して接合され、車両上下方向から見て多角形枠状に構成され、内側に貫通孔THを画定するフレーム110と、バッテリーを収容し、フレームの貫通孔TH内に少なくとも部分的に配置されるバスタブ状のトレイ120とを備える。複数の骨格部材は、アルミ押出材である第1骨格部材および第2骨格部材を含んでいる。フレームでは、第1骨格部材および接合部材が機械的接合方法によって接合されることにより、かつ、第2骨格部材および接合部材が機械的接合方法によって接合されることにより、第1骨格部材および第2骨格部材が接合部材を介して間接的に接合されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の骨格部材が接合部材を介して接合され、車両上下方向から見て多角形枠状に構成され、内側に空間を画定するフレームと、
バッテリーを収容し、前記フレームの前記空間内に少なくとも部分的に配置されるバスタブ状のトレイと
を備え、
前記複数の骨格部材は、アルミ押出材である第1骨格部材および第2骨格部材を含み、
前記フレームでは、前記第1骨格部材および前記接合部材が機械的接合方法によって接合されることにより、かつ、前記第2骨格部材および前記接合部材が機械的接合方法によって接合されることにより、前記第1骨格部材および前記第2骨格部材が前記接合部材を介して間接的に接合されている、電動車両用バッテリーケース。
【請求項2】
前記機械的接合方法は、フロードリルスクリュ接合を含む、請求項1に記載の電動車両用バッテリーケース。
【請求項3】
前記トレイは、前記フレームに圧接されている、請求項1または請求項2に記載の電動車両用バッテリーケース。
【請求項4】
前記トレイの底壁から前記車両上下方向の上方に向かって少なくとも部分的に水平方向内側へ向かう負角が形成された負角部が設けられている、請求項3に記載の電動車両用バッテリーケース。
【請求項5】
前記接合部材は、前記車両上下方向から見て、前記フレームの内角部を湾曲形状にする湾曲面を有している、請求項3または請求項4に記載の電動車両用バッテリーケース。
【請求項6】
前記接合部材は、前記車両上下方向において、相対的に上方に配置される上側部材と、相対的に下方に配置される下側部材とを含み、
前記前記下側部材は、前記第1骨格部材および前記第2骨格部材と前記機械的接合方法によって接合され、
前記上側部材は、前記下側部材に嵌合して固定される、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電動車両用バッテリーケース。
【請求項7】
前記上側部材は、前記車両上下方向から見て、前記フレームの外面を構成する前記第1骨格部材および前記第2骨格部材の外面をそれぞれ支持するフランジ部を有している、請求項6に記載の電動車両用バッテリーケース。
【請求項8】
平板状の被成形部材と複数の骨格部材と接合部材とを準備し、前記複数の骨格部材は、アルミ押出材である第1骨格部材および第2骨格部材を含み、
前記第1骨格部材および前記接合部材が機械的接合方法によって接合されることにより、かつ、前記第2骨格部材および前記接合部材が機械的接合方法によって接合されることにより、前記第1骨格部材および前記第2骨格部材が前記接合部材を介して間接的に接合して車両上下方向から見て多角形枠状であって内側に空間を画定するフレームを構成し、
前記被成形部材を前記フレームに重ねて配置し、
前記フレームとは反対側から前記被成形部材に圧力を加え、前記フレームに前記被成形部材を押し付けて前記空間内で膨出させ、それによって前記被成形部材をバスタブ状のトレイに変形させるとともに、前記フレームに圧接する
ことを含む、電動車両用バッテリーケースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両用バッテリーケースおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車などの電動車両は、十分な航続距離を確保するために大容量のバッテリーを搭載する必要がある一方で広い車室が求められている。これらの要求を両立するため、多くの電気自動車では大容量のバッテリーをバッテリーケースに格納して車両の床下全面に搭載している。従って、電動車両用バッテリーケースには、路面などからの水の浸入を防止して電子部品の不具合を防止するための高いシール性が求められるとともに、内部のバッテリーを保護するために高い衝突強度が求められる。
【0003】
例えば、特許文献1には、金属板を冷間プレス成形によりバスタブ状に成形したトレイを用いることでシール性を向上させたバッテリーケースが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のバッテリーケースでは、バスタブ状のトレイによってシール性を向上させているが、トレイを収容するフレームを構成するために、縦骨とフロントビームとリヤビームとを溶接などの接合手段によって接合する必要がある。特に、接合手段として溶接を利用すると、製造工程が複雑化するだけなく熱損傷が生じるおそれがある。
【0006】
本発明は、電動車両用バッテリーケースおよびその製造方法において、バスタブ状のトレイによってシール性を向上させるとともに、トレイを収容するフレームを熱損傷なく簡易に構成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、複数の骨格部材が接合部材を介して接合され、車両上下方向から見て多角形枠状に構成され、内側に空間を画定するフレームと、バッテリーを収容し、前記フレームの前記空間内に少なくとも部分的に配置されるバスタブ状のトレイとを備え、前記複数の骨格部材は、アルミ押出材である第1骨格部材および第2骨格部材を含み、前記フレームでは、前記第1骨格部材および前記接合部材が機械的接合方法によって接合されることにより、かつ、前記第2骨格部材および前記接合部材が機械的接合方法によって接合されることにより、前記第1骨格部材および前記第2骨格部材が前記接合部材を介して間接的に接合されている、電動車両用バッテリーケースを提供する。
【0008】
この構成によれば、第1骨格部材および第2骨格部材が接合部材を介して機械的接合方法によって間接的に接合されるため、複雑な溶接を要しない。ここで、機械的接合方法は、溶接などの冶金的接合方法と異なり、力学的エネルギーを使った接合方法である。機械的接合方法は、例えば、ボルトおよびナット、並びにリベットなどを利用した接合方法を含む。また、上記の間接的に接合とは、第1骨格部材および第2骨格部材が、互いに直接接合されることなく、接合部材を介して接合されることをいう。従って、溶接などの熱を利用した接合方法を利用しないため、フレームの熱損傷を抑制できるとともにフレームを簡易に構成できる。さらに、第1骨格部材および第2骨格部材が接合部材を介して接合されることにより、接合部が外力によって変形することを抑制でき、バッテリーケース全体の剛性を向上できる。また、トレイがバスタブ状に形成されているため、トレイに継ぎ目も存在せず、路面などからの水の浸入を防止可能な高いシール性を確保できる。
【0009】
前記機械的接合方法は、フロードリルスクリュ接合を含んでもよい。
【0010】
この構成によれば、下穴なしに片側から結合することができ、簡易にフレームを構成できる。ここで、フロードリルスクリュ接合とは、先端の尖ったねじを高速回転させることによって部材を貫通し、次第に回転数を下げてねじを止め、2つの部材を締結させる手法である。フロードリルスクリュ接合は、溶接とは異なり、異種材料の接合を容易に実現できる利点がある。
【0011】
前記トレイは、前記フレームに圧接されてもよい。
【0012】
この構成によれば、溶接を要することなく、フレームとトレイとを簡易に一体化できる。
【0013】
前記トレイの底壁から前記車両上下方向の上方に向かって少なくとも部分的に水平方向内側へ向かう負角が形成された負角部が設けられてもよい。
【0014】
この構成によれば、トレイに対して上向きの力が付加された場合でも負角部がフレームに引っ掛かるため、トレイがフレームから外れることを抑制できる。即ち、トレイとフレームとの圧接が解かれることを抑制できる。
【0015】
前記接合部材は、前記車両上下方向から見て、前記フレームの内角部を湾曲形状にする湾曲面を有してもよい。
【0016】
この構成によれば、上記圧接の際にトレイはフレームの内角部において湾曲面に押し付けられる。仮に、内角部が直角の場合、トレイの角部が直角に変形しようとして応力が集中し、割れるおそれがある。しかし、上記構成のように内角部が湾曲面となっていることにより、上記圧接の際にトレイの角部は、湾曲面によって支持されるため、トレイの角部への応力の集中を抑制でき、トレイの割れを抑制できる。ここで、湾曲形状は、例えば円弧形状であってもよい。
【0017】
前記接合部材は、前記車両上下方向において、相対的に上方に配置される上側部材と、相対的に下方に配置される下側部材とを含み、前記前記下側部材は、前記第1骨格部材および前記第2骨格部材と前記機械的接合方法によって接合され、前記上側部材は、前記下側部材に嵌合して固定されてもよい。
【0018】
この構成によれば、接合部材が上下に分割されていることで、接合部材を製造する際の設計自由度が向上する。
【0019】
前記上側部材は、前記車両上下方向から見て、前記フレームの外面を構成する前記第1骨格部材および前記第2骨格部材の外面をそれぞれ支持するフランジ部を有してもよい。
【0020】
この構成によれば、第1骨格部材および第2骨格部材がフランジ部によって支持されるため、接合部の変形を抑制できる。
【0021】
本発明の第2の態様は、平板状の被成形部材と複数の骨格部材と接合部材とを準備し、前記複数の骨格部材は、アルミ押出材である第1骨格部材および第2骨格部材を含み、前記第1骨格部材および前記接合部材が機械的接合方法によって接合されることにより、かつ、前記第2骨格部材および前記接合部材が機械的接合方法によって接合されることにより、前記第1骨格部材および前記第2骨格部材が前記接合部材を介して間接的に接合して車両上下方向から見て多角形枠状であって内側に空間を画定するフレームを構成し、前記被成形部材を前記フレームに重ねて配置し、前記フレームとは反対側から前記被成形部材に圧力を加え、前記フレームに前記被成形部材を押し付けて前記空間内で膨出させ、それによって前記被成形部材をバスタブ状のトレイに変形させるとともに、前記フレームに圧接することを含む、電動車両用バッテリーケースの製造方法を提供する。
【0022】
この方法によれば、第1骨格部材および第2骨格部材が接合部材を介して機械的接合方法によって間接的に接合されるため、複雑な溶接を要しない。従って、フレームの熱損傷を抑制できるとともにフレームを簡易に構成できる。さらに、第1骨格部材および第2骨格部材が接合部材を介して接合されることにより、接合部が外力によって変形することを抑制でき、バッテリーケース全体の剛性を向上できる。また、トレイがバスタブ状に形成されているため、トレイに継ぎ目も存在せず、路面などからの水の浸入を防止可能な高いシール性を確保できる。また、圧接によって、溶接を要することなく、フレームとトレイとを簡易に一体化できる。このとき、バスタブ状のトレイの成形と、トレイおよびフレームの圧接とを同時に行うことで、製造工程を簡略化できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、電動車両用バッテリーケースおよびその製造方法において、バスタブ状のトレイによってシール性を向上させるとともに、トレイを収容するフレームを熱損傷なく簡易に構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電動車両用バッテリーケースを搭載した電気自動車の側面図。
【
図7】被成形部材、第1骨格部材、第2骨格部材、および接合部材の斜視図
【
図8】バッテリーケースの製造方法を示す第1断面図。
【
図9】バッテリーケースの製造方法を示す第2断面図。
【
図10】バッテリーケースの製造方法を示す第3断面図。
【
図11】バッテリーケースの製造方法を示す第4断面図。
【
図14】閉鎖板の変形例を示すバッテリーケースの概略断面図。
【
図18】第2実施形態に係るバッテリーケースのフレームの斜視図。
【
図25】フレームおよびクロスメンバーの変形例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0026】
(第1実施形態)
図1を参照して、電動車両1は、バッテリー30から供給される電力によって不図示のモータを駆動させて走行する車両である。例えば、電動車両1は、電気自動車またはプラグインハイブリッド車等であり得る。車両の種類については、特に限定されず、乗用車、トラック、作業車、またはその他のモビリティ等であり得る。以下では、電動車両1として乗用車タイプの電気自動車の場合を例に挙げて説明する。
【0027】
電動車両1は、車体前部10に不図示のモータや高電圧機器等を搭載している。また、電動車両1は、車体中央部20の車室Rの床下の概ね全面にバッテリー30を格納した電動車両用バッテリーケース100(以下、単にバッテリーケース100ともいう。)を搭載している。なお、
図1中、電動車両1の前後方向をX方向で示し、上下方向をZ方向で示している。以降の図でも同表記とし、
図2以降で車幅方向をY方向で示す。
【0028】
図2を参照して、バッテリーケース100は、車幅方向においてロッカー部材200の内側に配置されている。ロッカー部材200は、電動車両1(
図1参照)の車幅方向両端下部において車両前後方向に延びている。ロッカー部材200は、複数枚の金属板が貼り合わされて形成されており、電動車両1の側方からの衝撃に対して車室Rおよびバッテリーケース100を保護する機能を有する。
【0029】
図2~4を合わせて参照して、バッテリーケース100は、貫通孔THを画定するフレーム110と、バスタブ状のトレイ120と、これらを上下から挟み込むように配置されるトップカバー130(
図2参照)およびアンダーカバー140(
図2参照)と、トレイ120の底壁122aに配置される閉鎖板123とを備える。ここで、貫通孔THは、本発明における空間の一例である。
【0030】
図5を合わせて参照して、フレーム110は、バッテリーケース100の骨格をなす部材である。フレーム110は、複数の骨格部材111,112が接合部材114を介して接合されることによって車両上下方向から見て多角形枠状(本実施形態では矩形枠状)に構成され、内側に貫通孔THを画定している。以降、フレーム110の内側とは、矩形枠状の中心側をいい、外側とはその反対側をいう。複数の骨格部材111,112は、2つの第1骨格部材111と、2つの第2骨格部材112とを含む。
【0031】
第1骨格部材111は、車両前後方向に直線状に延びるアルミ押出材である。第1骨格部材111は、概ね剛体としての剛性を有する。第1骨格部材111は、中空状である。第1骨格部材111の内部は、仕切壁111aによって車両上下方向に仕切られている。第1骨格部材111は、車両前後方向に垂直な断面において、車幅方向内側に段差面111dを有している。段差面111dは、車両上下方向の上側で貫通孔THを狭めるように段差形状を有している(
図5の右下破線円内参照)。
【0032】
また、第1骨格部材111は、車両上下方向から見て、車両前後方向の両端部において車幅方向から傾斜して切断されている。当該両端部は、接合部材114を介して第2骨格部材112と接合されている。
【0033】
第2骨格部材112は、車幅方向に直線状に延びるアルミ押出材である。第2骨格部材112は、概ね剛体としての剛性を有する。第2骨格部材112は、中空状である。第2骨格部材112の内部は、仕切壁112aによって車両上下方向に仕切られている。第2骨格部材112は、車両前後方向に垂直な断面において、車両前後方向内側に段差面112dを有している。段差面112dは、車両上下方向の上側で貫通孔THを狭めるように段差形状を有している(
図5の左下破線円内参照)。
【0034】
また、第2骨格部材112は、車両上下方向から見て、車幅方向の両端部において車両前後方向から傾斜して切断されている。当該両端部は、接合部材114を介して第1骨格部材111と接合されている。
【0035】
接合部材114は、直方体状の基部114aと、基部114aから突出した突出部114bとを有している。突出部114bは、4つの内側突出片114b1と、4つの内側突出片114b1よりも基部114aから大きく突出した4つの外側突出片114b2とを含んでいる。車両上下方向から見て、4つの外側突出片114b2は、4つの内側突出片114b1の車幅方向外側または車両前後方向外側に位置している。4つの内側突出片114b1および4つの外側突出片114b2は、第1骨格部材111および第2骨格部材112に挿入される。従って、第1骨格部材111、第2骨格部材112、および接合部材114が、フレーム110として組み立てられると、接合部材114は基部114aのみ視認でき、4つの内側突出片114b1および4つの外側突出片114b2は視認できない。
【0036】
第1骨格部材111および第2骨格部材112は、機械的接合方法によって接合部材114を介して間接的に接合される。機械的接合方法は、例えば、ボルトおよびナット、並びにリベットなどを利用した接合方法を含む。本実施形態では、接合部材114は、4つの外側突出片114b2において、第1骨格部材111および第2骨格部材112に対してフロードリルスクリュ接合される。フロードリルスクリュ接合は、機械的接合方法の一例である。
【0037】
フロードリルスクリュ接合では、先端の尖ったねじ(図示せず)を高速回転させることによって、第1骨格部材111の外壁と接合部材114の4つの外側突出片114b2とを貫通し、次第に回転数を下げてねじを止め、これらを締結する。同様に、先端の尖ったねじ(図示せず)を高速回転させることによって、第2骨格部材112の外壁と接合部材114の4つの外側突出片114b2とを貫通し、次第に回転数を下げてねじを止め、これらを締結する。フロードリルスクリュ接合は、下穴なしに片側から結合することができ、簡易にフレーム110を構成できる。また、溶接とは異なり、異種材料の接合を容易に実現できる利点がある。よって、第1骨格部材111および第2骨格部材112と、接合部材114とが異種材料であっても容易に接合できる。
【0038】
なお、本実施形態では、貫通孔THを画定するフレーム110を例に説明するが、フレーム110の形状は貫通形状に限定されない。例えば、フレーム110は、貫通形状に代えて凹形状を有してもよく、即ち底壁を有していてもよい。
【0039】
再び
図4を参照して、フレーム110には、3本のクロスメンバー113が取り付けられている。3本のクロスメンバー113は、貫通孔TH内において2つの第1骨格部材111を接続するように2つの第2骨格部材112と平行に等間隔で配置されている。3本のクロスメンバー113は、バッテリーケース100の強度を向上させる機能を有する。特に、3本のクロスメンバー113によって、電動車両1(
図1参照)の側方からの衝突に対しての強度を向上できる。なお、クロスメンバー113の態様は特に限定されず、大きさ、形状、配置、または本数等は任意に設定され得る。また、クロスメンバー113は、必須の構成ではなく、必要に応じて省略され得る。
【0040】
トレイ120は、バッテリー30を収容するバスタブ状の部材である。トレイ120は、例えばアルミニウム合金製の板材からなる。トレイ120は、外縁部において水平方向(X-Y方向)へ延びるフランジ121と、フランジ121と連続して凹形状を有する収容部122とを備える。収容部122は、バッテリー30を収容する部分であり、フレーム110の貫通孔TH内に部分的に配置される。収容部122は、底面を構成する底壁122aと、底壁122aの周囲に設けられて底壁122aとは反対側に開口部122dを画定する周壁122bとを有する。詳細を後述するが、周壁122bは、フレーム110に対して圧接されている。
【0041】
収容部122の底壁122aには、3本のクロスメンバー113に対して相補的な形状を有する3つの張出部122cが形成されている。3つの張出部122cは、底壁122aが部分的に上方へ張り出すとともに車幅方向に延びる部分である。底壁122aには、3つの張出部122cによって区切られた各領域において冷却液が流れる溝124がそれぞれ形成されている。詳細を後述するが、3つの張出部122cは、3本のクロスメンバー113に対して圧接されている。
【0042】
図6を参照して、個々の溝124は、平面視において蛇腹状に形成されている。個々の溝124の一端には冷却液が流入する入口124aが設けられ、他端には冷却液が流出する出口124bが設けられている。また、溝124の断面形状は半円状である(
図2参照)。
なお、溝124の平面視形状や断面形状は、特に限定されず、任意の形状であり得る。
【0043】
図2および
図4を合わせて参照して、3つの張出部122cによって区切られた底壁122aの各領域には、対応する形状の閉鎖板123が上方から配置および接合されている。閉鎖板123によって溝124が閉じられ、冷却液が流れる冷却液流路124Aが画定される。
【0044】
閉鎖板123上には、バッテリー30(
図2参照)が配置される。冷却液流路124Aを流れる冷却液は、閉鎖板123を介してバッテリー30を冷却する。閉鎖板123は、冷却効率を向上させるために熱伝導率の高いアルミニウム板などであり得る。
【0045】
閉鎖板123をトレイ120に接合する際には、接着材または熱融着(例えばレーザ熱融着)などの接合方法が使用され得る。好ましくは、FSW(Friction Stir Welding)が使用される。FSWは、固相状態での接合であるため、通常の溶接とは異なり、ブローホールを生じさせることもなく、シール性に優れる。冷却性能を向上させるために、閉鎖板123の厚みを例えば2mm以下(例えば1mm程度)としてもよい。
【0046】
図3を再び参照して、トレイ120とフレーム110が組み合わされた状態では、トレイ120のフランジ121がフレーム110の上面に載置されるとともに、トレイ120の収容部122がフレーム110の貫通孔TH内に配置される。このとき、張出部122cがクロスメンバー113を部分的に被覆するように配置される。
図4では、説明のために仮想的に分解図を示しているが、トレイ120はフレーム110および3本のクロスメンバー113に対して圧接されることにより、
図3のように組み合わされた状態で一体化されている。
【0047】
図2を再び参照して、トレイ120の収容部122にはバッテリー30が配置される。収容部122がバッテリー30の上方からトップカバー130によって密閉されることで、バッテリー30がバッテリーケース100に格納される。当該密閉構造によって、バッテリーケース100の外部からの水の浸入が防止される。特に、トレイ120がバスタブ状に形成されているため、トレイ120に継ぎ目も存在せず、路面などからの水の浸入を防止可能な高いシール性を確保できる。また、バッテリーケース100の内部の圧力調整用の安全弁が設けられてもよい。
【0048】
図2の例では、トップカバー130およびトレイ120は、フレーム110に対してねじで共締めされて固定されている。トップカバー130の上方には、車室Rの床面を構成するフロアパネル300と、車室Rにおいて車幅方向に延びるフロアクロスメンバー400とが配置されている。また、トレイ120の下方には、アンダーカバー140が配置されている。アンダーカバー140は、フレーム110およびクロスメンバー113それぞれにねじ止めされ、トレイ120を下方から支持している。
【0049】
図7~11を参照して、上記構成を有するバッテリーケース100の製造方法を説明する。
【0050】
図7を参照して、平板状の被成形部材120と、第1骨格部材111と、第2骨格部材112と、接合部材114とを準備する。そして、接合部材114を介して第1骨格部材111と第2骨格部材112とを接合して車両上下方向から見て矩形枠状であって内側に貫通孔THを画定するフレーム110を構成する(
図4参照)。
【0051】
図8を参照して、被成形部材120をフレーム110に重ねて台55上に配置する。台55の上面には、後述するようにトレイ120に溝124を成形するために溝124と対応した形状の凹部55aが形成されている。なお、被成形部材とトレイに対して同じ参照符号120を使用するが、これは、成形前の状態が被成形部材であり、成形後の状態がトレイであることを意味する。
【0052】
次いで、
図9,10を参照して、フレーム110とは反対側(即ち上方側)から被成形部材120に圧力を加え、フレーム110に被成形部材120を押し付けて貫通孔TH内で膨出させ、それによって被成形部材120をバスタブ状のトレイ120に変形させるとともにフレーム110に圧接する。このとき、被成形部材120は、3本のクロスメンバー113にも圧接される。その結果、トレイ120、フレーム110、および3本のクロスメンバー113が一体化される。
【0053】
本実施形態では、被成形部材120に対する加圧は、弾性体を利用した圧力成形法(ゴムバルジ法)によって行われる。圧力成形法は、気体または液体の圧力によって部材を成形する方法のことをいう。本実施形態では、ゴムバルジ法において、液体の圧力を利用して弾性変形可能な液圧伝達弾性体50を使用する。液圧伝達弾性体50は、例えば水または油などの液体が入った金属製のチャンバーの下面のみが弾性膜で塞がれている構造を有するものであり得る。そのような液圧伝達弾性体50は、液体の圧力を調整することにより、弾性膜が変形し、液体が被成形部材120と直接接触することなく成形を行うことができる。
【0054】
図8,9を参照して、本実施形態では、フレーム110、被成形部材120、および液圧伝達弾性体50を台55上にこの順で重ねて配置し、液圧伝達弾性体50を介して被成形部材120を加圧してフレーム110に押し付ける。好ましくは、ゴムバルジ法による被成形部材120の加圧は、被成形部材120を加熱して軟化させた状態で行われる。この場合、被成形部材120の軟化により、トレイ120の成形時の割れを抑制できる。
【0055】
また、台55の上面には、トレイ120に溝124を成形できるように溝124と対応した形状の凹部55aが形成されている。そのため、液圧伝達弾性体50による加圧に伴って、トレイ120の底壁122aには溝124(
図5参照)が成形される。即ち、本実施形態では、被成形部材120をバスタブ状のトレイ120に成形するとともにトレイ120の収容部122の底壁122aに溝124を成形する。詳細を図示しないが、溝124の成形に加えて、バッテリー30を位置決めするための突起をトレイ120に成形してもよい。
【0056】
図10を参照して、被成形部材120がバスタブ状のトレイ120に変形した後に加圧力を解放すると、液圧伝達弾性体50が自然状態の形状に復元する。従って、トレイ120の内部から液圧伝達弾性体50を容易に取り除くことができる。液圧伝達弾性体50を取り除いた後、
図2に示すように閉鎖板123やアンダーカバー140を接合して、バッテリー30を収納した後、トップカバー130を接合することでバッテリーパックが構成される。なお、ここでは、バッテリー30を収納する容器のことをバッテリーケース100といい、バッテリーケース100にバッテリー30や制御機器を収納して機能する状態にしたものをバッテリーパックという。
【0057】
本実施形態では、フレーム110は、上部110aの肉厚が他の部分よりも厚く設定されている。フレーム110の上部110aは、上記成形によって力を受けやすい部分であり、当該部分の肉厚を厚くすることで意図しない変形を防止している。また、フレーム110の上部110aの内側には、R形状(角の丸い形状)が付与されている。このR形状によって上記成形において被成形部材120の内側への材料流入を促すようにしている。ただし、押出材などの設計上、フレーム110の上部110aの内側以外にも小さなR形状が付けられることがある。図示においては、そのような小さなR形状は省略するものとする。
【0058】
本実施形態では、被成形部材120をバスタブ状のトレイ120に成形する際、負角成形が行われる。ここで、負角とは、金型を用いた成形分野においてよく使用される用語であり、成形部材における金型の抜き角がゼロ未満(マイナス)であることを示す。本実施形態では、液圧伝達弾性体50からの加圧によってトレイ120がフレーム110の段差面111d,112dに押し付けられ、トレイ120の底壁122aから車両上下方向の上方に向かって水平方向内側へ向かう負角が形成された負角部122eがトレイ120に設けられる。換言すれば、負角部122eが、段差面111d,112dによって構成される窪み部Pに入り込むように構成される。また、このような窪み部Pは3本のクロスメンバー113にも設けられてもよい。このように、フレーム110に窪み部Pを設けることによって、トレイ120に負角部122eを形成する負角成形を容易かつ確実に実行できる。
【0059】
次に、
図11を参照して、上記のように成形された溝124を閉じるようにトレイ120の底壁122aに閉鎖板123を配置および接合する。閉鎖板123は、トレイ120の収容部122に上方から配置され、例えばFSWによって接合される。このようにして、閉鎖板123と溝124によって、冷却液が流れる冷却液流路124Aが画定される。
【0060】
また、負角成形の変形例を
図12,13に示す。
図12の例では、フレーム110の内側の段差面111dの車両上下方向の中央部に窪み部Pが設けられている。
図13の例では、上記段差面111dに代えて、傾斜面111eが設けられている。即ち、フレーム110の内側の傾斜面111eが上方に向かうにつれて貫通孔THを狭めるように傾斜して設けられている。
【0061】
また、閉鎖板123の変形例として
図14に示すように閉鎖板123に凹凸形状を付与してもよい。前述の構成では、平坦な表面を有する閉鎖板123を例示しているが、冷却液流路124Aの流路面積を拡大するように溝124の形状に合わせて上向きの凸形状(下向きの凹形状)を閉鎖板123に付与してもよい。
図14の例では、溝124の半円形状と上下対称な半円形状を閉鎖板123に付与している。このようにして、冷却液流路124Aの流路面積を拡大することで、冷却液の流量を増加でき、冷却性能を向上できる。
【0062】
以上のようなバッテリーケース100およびその製造方法によれば、以下の作用効果を奏する。
【0063】
第1骨格部材111および第2骨格部材112が接合部材114を介して機械的接合方法によって間接的に接合されるため、複雑な溶接を要しない。従って、フレーム110の熱損傷を抑制できるとともにフレーム110を簡易に構成できる。さらに、第1骨格部材111および第2骨格部材112が接合部材114を介して接合されることにより、接合部が外力によって変形することを抑制でき、バッテリーケース100の全体の剛性を向上できる。また、トレイ120がバスタブ状に形成されているため、トレイ120に継ぎ目も存在せず、路面などからの水の浸入を防止可能な高いシール性を確保できる。
【0064】
また、フレーム110とトレイ120とを圧接しているため、溶接を要することなく、フレーム110とトレイ120とを簡易に一体化できる。このとき、バスタブ状のトレイの成形と、トレイおよびフレームの圧接とを同時に行うことで、製造工程を簡略化できる。
【0065】
また、トレイ120に対して上向きの力が付加された場合でも負角部122eがフレーム110に引っ掛かるため、トレイ120がフレーム110から外れることを抑制できる。即ち、トレイ120とフレーム110との圧接が解かれることを抑制できる。
【0066】
なお、フレーム110の形状は、上記実施形態のものに限定されない。例えば、
図15に示すように、第1骨格部材111の段差面111dの上部に複数の溝111fが形成されてもよい。同様に、第2骨格部材112の段差面112dの上部に複数の溝112fが形成されてもよい。複数の溝111f,112fにより、フレーム110とトレイ120との圧接がより強固になり得る。
【0067】
また、接合部材の形状についても上記実施形態のものに限定されない。例えば、
図16,17に示すように、突出部114bは、車両上下方向から見て概ねU字形を有する4つの突出片114b3を有してもよい。また、接合部材114は、車両上下方向から見て、フレーム110の内角部110bを湾曲形状にする湾曲面114cを有してもよい。湾曲面114cは、第1骨格部材111の段差面111dと、第2骨格部材112の段差面112dとを滑らかに繋いでいる。例えば、湾曲面114cは、車両上下方向から見て円弧形状であってもよい。
【0068】
また、湾曲面114cは、車両上下方向から見てフレーム110の内側へ膨出した形状を有しているため、基部114aの上部に湾曲面114cを形成することで、前述のようにトレイ120の負角成形を行うことができる。これにより、圧接の際には、トレイ120はフレーム110の内角部110bにおいて湾曲面114cに押し付けられる。仮に、内角部110bが直角の場合、トレイ120の角部が直角に変形しようとして応力が集中し、割れるおそれがある。しかし、内角部110bが湾曲面114cとなっていることにより、圧接の際にトレイ120の角部は、湾曲面114cによって支持されるため、トレイ120の角部への応力の集中を抑制でき、トレイ120の割れを抑制できる。
【0069】
(第2実施形態)
図18,19に示す第2実施形態は、第1骨格部材111と第2骨格部材112と接合部材114とに関する構成が第1実施形態とは異なる。これらに関する構成以外は、第1実施形態やその変形例と実質的に同じである。従って、第1実施形態やその変形例にて示した部分については説明を省略する場合がある。
【0070】
本実施形態では、第1骨格部材111の車両前後方向の両端部が車両前後方向に対して垂直に切断されている。同様に、第2骨格部材112の車幅方向の両端部が車幅方向に対して垂直に切断されている。従って、第1実施形態に比べて、第1骨格部材111と第2骨格部材112とを容易に製造できる。
【0071】
本実施形態の接合部材114では、基部114aが環状扇形の柱状である。基部114aは、フレーム110の内側に位置する面と外側に位置する面とがそれぞれ湾曲面114d,114eとなっている。従って、車両上下方向から見ると、フレーム110の内形および外形は、角丸四角形となっている。また、突出部114bは、4つの突出片114b4を有している。接合部材114は、4つの突出片114b4において第1骨格部材111と第2骨格部材112とに対して機械的接合方法によって接合されている。
【0072】
本実施形態のバッテリーケース100の製造方法は、第1実施形態と実質的に同じである。
【0073】
以上のような構成を有するバッテリーケース100およびその製造方法による作用効果についても第1実施形態と実質的に同一である。
【0074】
図20を参照して、接合部材114の第1変形例について説明する。
【0075】
図20に示す第1変形例の接合部材114では、第2実施形態のものに対して上カバー114fが設けられている。4つの突出片114b4のそれぞれの形状は、車両上下方向から見て概ねU字形を有している。
【0076】
本変形例によれば、接合部材114の設計自由度を向上させることができ、薄肉軽量化を容易に実現できる。また、接合部材114を押出材で形成する場合、押し出された形状から仕切壁111aに対応する部分のみを切削するだけで簡易に製品形状を形成できるため、切削加工量を少なくできる。
【0077】
また、
図21,22を参照して、接合部材114の第2変形例について説明する。
【0078】
図21,22に示す第2変形例では、接合部材114は、上側部材115と、上側部材115の下側に配置される下側部材116とを有している。
【0079】
上側部材115および下側部材116は、ともに概ね環状扇形柱状である。従って、上側部材115において、フレーム110の内側に位置する面と外側に位置する面とがそれぞれ湾曲面115a,115bとなっている。同様に下側部材116においてもフレーム110の内側に位置する面と外側に位置する面とがそれぞれ湾曲面116a,116bとなっている。特に、上側部材115の湾曲面115aは、第1骨格部材111の段差面111dと第2骨格部材112の段差面112dとを滑らかに繋いでいる。また、下側部材116の湾曲面116bには、上側部材115の位置決め用の突起部116cが形成されている。
【0080】
上側部材115の下面には、下側部材116と相補的な形状の凹部115cが設けられている。凹部115cに下側部材116が配置されることにより、上側部材115および下側部材116が嵌合する。嵌合状態では、上側部材115の湾曲面115aが下側部材の湾曲面116aよりもフレーム110の内側に位置する。従って、前述の負角成形が可能となっている。
【0081】
本変形例では、上側部材115は、第1骨格部111および第2骨格部材112には挿入されず接合もされない。下側部材116は、両端部において第1骨格部材111と第2骨格部材112とに挿入され、機械的接合方法によってこれらと接合される。従って、上側部材115は、凹部115cにて下側部材116と嵌合することにより、位置が固定される。
【0082】
本変形例によれば、接合部材114が上下に分割されていることで、接合部材114を製造する際の設計自由度が向上する。
【0083】
また、
図23,24を参照して、接合部材114の第3変形例について説明する。
【0084】
図23,24に示す第3変形例では、上記第2変形例と同様に、接合部材114は、上側部材115と、下側部材116とを有している。また、上側部材115および下側部材116は、第2変形例の構成に加えてさらに以下を有している。
【0085】
上側部材115は、車両上下方向から見て、フレーム110の外面を構成する第1骨格部材111および第2骨格部材112の外面をそれぞれ支持するフランジ部115dを有している。また、上側部材115は、湾曲面115aがフレーム110の内側に突出するように構成されている。即ち、湾曲面115aは、第2変形例のように第1骨格部材111の段差面111dと第2骨格部材112の段差面112dとを滑らかに繋いでいるのではなく、それらに比べてフレーム110の内側に位置している。従って、当該湾曲面115aを構成する部分と、フランジ部115dとによって、第1骨格部材111の端部と、第2骨格部材112の端部とを咥え込むように構成されている。換言すれば、上側部材115は、第2変形例と異なり、第1骨格部材111および第2骨格部材112と嵌合する形状を有している。
【0086】
下側部材116は、上側部材115と同様に湾曲面116aがフレーム110の内側に突出するように構成されている。ただし、上側部材115の湾曲面115aは、下側部材116の湾曲面116aよりもフレーム110の内側に位置しているため、当該部分において負角成形が可能となっている。
【0087】
本変形例においても、上側部材115は、第1骨格部材111および第2骨格部材112には挿入されないが、これらと嵌合する。従って、上側部材115は、第1骨格部材111と第2骨格部材112と下側部材116と嵌合することにより、位置が固定される。なお、下側部材116は、第2変形例と同様に、両端部において第1骨格部材111と第2骨格部材112とに挿入され、機械的接合方法によってこれらと接合される。
【0088】
本変形例によれば、第1骨格部材111および第2骨格部材112がフランジ部115dによって支持されるため、接合部の変形を抑制できる。
【0089】
また、
図25を参照して、上記第1,第2実施形態におけるフレーム110および3本のクロスメンバー113に対して、車両前後方向に延びるクロスメンバー117が設けられてもよい。
【0090】
クロスメンバー117は、貫通孔TH内において2つの第2骨格部材112を接続するように2つの第1骨格部材111と平行に配置されている。クロスメンバー117は、3つのクロスメンバー113と直交して配置されており、バッテリーケース100の強度を向上させる機能を有する。特に、3本のクロスメンバー113との接合によって、電動車両1(
図1参照)の前後方向からの衝突に対しての強度を向上できる。なお、クロスメンバー117の態様は特に限定されず、大きさ、形状、配置、または本数等は任意に設定され得る。また、クロスメンバー117は、必須の構成ではなく、必要に応じて省略され得る。
【0091】
以上より、本発明の具体的な実施形態およびその変形例について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、個々の実施形態や変形例の内容を適宜組み合わせたものを、この発明の一実施形態としてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 電動車両
10 車体前部
20 車体中央部
30 バッテリー
50 液圧伝達弾性体
55 台
55a 凹部
100 電動車両用バッテリーケース(バッテリーケース)
110 フレーム
110a 上部
110b 内角部
111 第1骨格部材(骨格部材)
111a 仕切壁
111d 段差面
111e 傾斜面
111f 溝
112 第2骨格部材(骨格部材)
112a 仕切壁
112d 段差面
112f 溝
113 クロスメンバー
114 接合部材
114a 基部
114b 突出部
114b1 内側突出片
114b2 外側突出片
114b3,114b4 突出片
114c,114d,114e 湾曲面
114f 上カバー
115 上側部材
115a,115b 湾曲面
115c 凹部
115d フランジ部
116 下側部材
116a,116b 湾曲面
116c 突起部
117 クロスメンバー
120 トレイ(被成形部材)
121 フランジ
122 収容部
122a 底壁
122b 周壁
122b1 角部
122c 張出部
122d 開口部
122e 負角部
123 閉鎖板
124 溝
124a 入口
124A 冷却液流路
124b 出口
130 トップカバー
140 アンダーカバー
200 ロッカー部材
300 フロアパネル
400 フロアクロスメンバー
P 窪み部