(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131403
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】酢酸セルロース組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/20 20060101AFI20230914BHJP
C08L 1/12 20060101ALI20230914BHJP
C08J 3/18 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
C08J3/20 Z CEP
C08L1/12
C08J3/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036146
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】521327471
【氏名又は名称】株式会社 ネクアス
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角谷 雅和
(72)【発明者】
【氏名】船谷 和宏
(72)【発明者】
【氏名】山本 登
(72)【発明者】
【氏名】角谷 知洋
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】北出 元博
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA02
4F070AB02
4F070AC43
4F070AC87
4F070AC88
4F070AE02
4F070AE03
4F070EA04
4F070FB07
4F070FC03
4F070FC05
4J002AB021
4J002EH046
4J002EH087
4J002FD026
4J002FD027
(57)【要約】
【課題】可塑剤の充填量を抑制しても、一般的な樹脂成形加工設備で成形するのに十分な加熱成形性を持ち、柔軟性に優れる酢酸セルロース組成物の製造技術を提供する。
【解決手段】酢酸セルロースの粒状体25と可塑剤26とを混合容器11で混合し混合体27を生成し、この混合体27を静置スペース20において常温で8時間以上静置し、混合体27を混練機30において粘性流動する温度に設定し混練する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸セルロースの粒状体と可塑剤とを混合し混合体を生成する工程と、前記混合体を常温で8時間以上静置する工程と、前記混合体を粘性流動する温度に設定し混練する工程と、を含む酢酸セルロース組成物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の酢酸セルロース組成物の製造方法において、
前記混合体は、混合容器において前記酢酸セルロースの粒状体を撹拌させながら、前記可塑剤を噴霧することで生成される酢酸セルロース組成物の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の酢酸セルロース組成物の製造方法において、
前記混合体に占める前記可塑剤の比率は10~30重量%の範囲となる酢酸セルロース組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の酢酸セルロース組成物の製造方法において、前記可塑剤は、トリアセチンとエポキシ系可塑剤又は前記トリアセチン、エポキシ系可塑剤、ポリエーテルエステル化合物及びアジピン酸エステル含有可塑剤を組み合わせたものである酢酸セルロース組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載の酢酸セルロース組成物の製造方法において、前記可塑剤は、非フタル酸系可塑剤とエポキシ系可塑剤又は非フタル酸系可塑剤、エポキシ系可塑剤、ポリエーテルエステル化合物及びアジピン酸エステル含有可塑剤を組み合わせたものである酢酸セルロース組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可塑剤が充填される酢酸セルロース組成物の製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
酢酸セルロースは、セルロースを無水酢酸でエステル化した半合成高分子であり、酢化度によって大きく2種類に分類される。一つ目は酢化度が59%以上の三酢酸セルロース(CTA)であり、二つ目は酢化度で50~59%程度の二酢酸セルロース(CDA)である。
【0003】
酢酸セルロースは、優れた物性、特に易加工性と高い光学的性質とを有するため、プラスチック、繊維、フィルム(例えば、写真用フィルムなど)等の分野で長年にわたり利用されてきた。また、酢酸セルロースは生分解性などを有するため、近年では、地球環境の観点からも脚光を浴びている。
【0004】
通常、酢酸セルロースの成形品は、溶媒に溶解した酢酸セルロース溶液を所望の形態に流動させた後、溶媒を蒸発などにより除去することで得られる。一方において、このような溶媒法でなく、可塑剤を充填するコンパウンド法により、加熱成形性を持たせ、一般的な方法で成形加工できる酢酸セルロースの開発も検討されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
酢酸セルロースは、一般に、剛性は高いが、MFR等で定義される溶融時の流動性が低く、引張伸度も15~20%程度の低さである。このような基本物性を持つ酢酸セルロースは、他の汎用的な石油系プラスチックと比較して、成形流動性や成形加工性に劣り、成形品の安定性や均一性の観点から改良が求められている。
【0007】
酢酸セルロースは、特にフィルム成形、シート成形、真空成形及びブロー成形への適用が困難で、それぞれの成形加工方法に適した流動性や引張伸度を具備させることが課題となっている。
【0008】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、様々な成形加工法に適用することができ、成形品の安定性や均一性に優れる酢酸セルロース組成物の製造技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る酢酸セルロース組成物の製造方法において、酢酸セルロースの粒状体と可塑剤とを混合し混合体を生成する工程と、前記混合体を常温で8時間以上静置する工程と、前記混合体を粘性流動する温度に設定し混練する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、様々な成形加工法に適用することができ、成形品の安定性や均一性に優れる酢酸セルロース組成物の製造技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る酢酸セルロース組成物の製造方法の実施形態を示すシステムの概略図。
【
図2】本発明に係る酢酸セルロース組成物の製造方法の実施形態を示すフローチャート。
【
図3】本実施形態の効果を確認した実施例を示すテーブル。
【
図4】本実施形態の効果を確認した実施例を示すテーブル。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る酢酸セルロース組成物の製造方法の実施形態を示すシステム10の概略図である。このようにシステム10は、酢酸セルロースの粒状体25と可塑剤26とを混合し混合体27を生成する混合容器11と、混合体27を常温で8時間以上静置する静置スペース20と、混合体27を粘性流動する温度に設定し混練する混練機30と、から構成されている。
【0013】
本実施形態では、混合体27を常温で8時間(より望ましくは12時間)以上静置することで、粉末状、液状、あるいはその混合物としての可塑剤26を、酢酸セルロースの粒状体25の深部まで浸透させることができる。これにより、混合体27を加熱混練した場合、可塑剤26を分離させることなく酢酸セルロースのマトリックス中に均一分散させることができる。この結果、成形加工方法に応じて流動性や引張伸度を最適化することができ、安定性や均一性に優れる酢酸セルロースの成形体を製造できる。
【0014】
酢酸セルロースの平均分子量は、1×104~100×104、好ましくは5×104~75×104、さらに好ましくは10×104~50×104程度であるが、特に制限はなく、用途に応じて選択できる。また酢酸セルロースの酢化度(結合酢酸%)は、52.0~62.5%の範囲から選択できる。好ましい酢酸セルロースの酢化度は、59%以下(例えば、52.0~58.0%)、特に54~56%(例えば、55%)程度である。
【0015】
酢酸セルロースの粒状体25は、供給容器15から混合容器11に供給される。この酢酸セルロースの粒状体25は、平均粒径が0.1mmから1.0mmの範囲にある粒状体であることが好ましい。この平均粒径が0.1mmよりも小さいと取り扱いが困難となり粒状体が舞い上がる等して作業性が低下してしまう。
【0016】
また、この最大粒径が1mmよりも大きいと、混合容器11に供給された酢酸セルロースの粒状体25の比表面積が小さくなり、粒状体25の表面を濡らすことができず可塑剤26が分離してしまう場合がある。しかし、本発明に適用される酢酸セルロースの粒状体25の平均粒径は、上述した範囲に限定されない。
【0017】
また酢酸セルロース組成物の基本物性や成形加工性をより好ましく調整するため、複数の品種の酢酸セルロースの粒状体25を混合して使用する場合もある。具体的には酢酸セルロースの粒状体25に、他のセルロースエステル(例えば、セルロースプロピオネート、セルロースブチレートなどの有機酸エステル、硝酸セルロース、硫酸セルロース、リン酸セルロースなどの無機酸エステル)等の粒状体25を複合させてもよい。
【0018】
混合体27に占める可塑剤26の比率は10~30重量%の範囲とする。比率が10重量%未満であると粒状体25における可塑剤26の浸透度にバラツキが生じやすくなり、また比率が30重量%を超えると静置スペース20における静置期間中に粒状体25と可塑剤26とが重力分離してしまう場合がある。
【0019】
可塑剤26としては、グリセリントリアセテート化合物(トリアセチン)、アジピン酸エステル含有化合物、アジピン酸ポリエステル含有化合物ポリエーテルエステル化合物、セバシン酸エステル化合物、エポキシ系エステル、安息香酸系エステル、トリメリット酸エステル、グリコールエステル化合物、酢酸エステル、二塩基酸エステル化合物、リン酸エステル化合物、フタル酸エステル化合物、樟脳、クエン酸エステル、ステアリン酸エステル、金属石鹸、ポリオール、ポリアルキレンオキサイド等が挙げられる。これらの中でも、アジピン酸エステル含有化合物、ポリエーテルエステル化合物、非フタル酸系化合物が好ましく、アジピン酸エステル含有化合物がより好ましい。
【0020】
アジピン酸エステル含有化合物(アジピン酸エステルを含む化合物)とは、アジピン酸エステル単独の化合物、又は、アジピン酸エステルと異なる化合物との混合物であることを示す。アジピン酸エステルとしては、アジピン酸ジエステル、アジピン酸ポリエステル等が挙げられる。
【0021】
非フタル酸系化合物としては、ベンジルブチルフタレート(BBP)、ビス(2エチルへキシル)フタレート(DEHP)、ディブチルフタレート(DBP)、ディイソブチルフタレート(DIBP)等が挙げられる。
【0022】
ポリエーテルエステル化合物は、その溶解度パラメータ(SP値)が、9.5以上9.9以下が好ましく、9.6以上9.8以下がより好ましい。溶解度パラメータ(SP値)を9.5以上9.9以下にすると、酢酸セルロース誘導体への分散性が向上する。
【0023】
また充填材として、セルロース繊維、セルロース粉末、CNF(カーボンナノファイバー)、木粉、コーヒー粕粉体、デンプン等の有機粉体、あるいは、カオリン、タルク、ケイソウ土、石英、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、アルミナ等の無機粉体を、最終製品に求められる性能に応じて用いる場合がある。
【0024】
さらに添加剤として、熱安定化剤として、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系熱安定剤、金属不活性化剤、イオウ系熱安定剤を用いたり、耐候性添加剤として例えば、液状紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤を用いたり、分散剤・滑剤として炭化水素系滑剤、脂肪酸、高級アルコール系滑剤、脂肪酸アミド系、金属石鹸系、エステル系等を用いたり、アンチブロッキング剤としてシリカ等を用いたり、その他に着色剤等を用いたりする場合がある。
【0025】
混合容器11は、供給容器15から供給された酢酸セルロースの粒状体25を撹拌させる回転体12と、撹拌される粒状体25に可塑剤26を噴霧する噴霧器16と、を有している。このように撹拌しながら噴霧することで、酢酸セルロースの粒状体25の表面を可塑剤26で一様に濡らすことができ、均一な混合体27を生成することができる。
【0026】
なお酢酸セルロースの粒状体25と可塑剤26との混合方法としては、上述した可塑剤26を噴霧しながら供給容器15から可塑剤26を逐次供給したり、回転体12の動作と静止との繰り返しを時間管理したりすることもできる。なお、可塑剤26の混合は、噴霧ではなくパイプ(図示略)から流下させるようにしてもよい。
【0027】
混合容器11は、特に制限されるものではなく、タンブラーミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー、ニーダなどの混合機を使用することができる。混合容器11における撹拌翼の回転数は、200rpm以上、好ましくは400rpm以上、より好ましくは500rpm以上の高速回転が実現されるものが好ましい。
【0028】
このような高速回転が実現されることで、混合容器11に加熱手段を設けなくても(もちろん加熱手段を設けてもよい)、運動エネルギーの摩擦熱により酢酸セルロースの粒状体25を昇温させることができる。このときの温度は、40℃~70℃、好ましくは50℃~60℃の範囲に調整する。これにより、可塑剤26の粘性を下げて濡れ性を向上させて、さらに満遍なくムラ無く酢酸セルロースの粒状体25に均一に混合させることができる。
【0029】
混合容器11から放出される混合体27は、複数のトレー28に小分けに収容されて静置スペース20に搬送される。静置スペース20は、混合体27から可塑剤26の揮発を抑制する意味で、気密性を備えたキャビネットであることが好ましい。そして、静置スペース20で規定時間だけ静置された混合体27はトレー28に収容されたまま、混練機30に向けて搬送される。
【0030】
なお、混合体27を収容したトレー28の搬送機器21,22は、ベルトコンベアを例示しているが、特に限定されない。混合体27を収容したトレー28の搬送作業は人員により実施してもよい。また製品品質のバラツキを減らすために混合体27が生成されてから混練機30に投入されるまでの静置時間は一定に規定されていることが望ましい。
【0031】
静置スペース20における混合体27の静置時間については、好ましくは12時間以上であるが、8時間以上であれば、可塑剤26の粒状体25への浸透が平衡状態に近づいたといえる。また静置時間の上限については、可塑剤26の酸化等の劣化の影響を避けるため48時間とする。静置スペース20における混合体27の管理は、滞留時間が一定になるよう、先入れ先出し(FIFO:First-in First-out)で、混練機30の運転計画に合わせて実施される。
【0032】
混練機30は、投入手段31と、駆動手段32と、混練手段33と、造粒手段35と、から構成されている。ここで混練手段33は、外側を構成するシリンダと、駆動手段32の駆動力でシリンダ内部を回転するスクリュー(図示略)とから構成されている。ここでシリンダ及びスクリューは、混合体27が粘性流動する120℃から250℃の範囲、または分解防止の観点から230℃以下の温度に設定されている。
【0033】
投入手段31には、静置スペース20から搬送された混合体27が投入される。そして、投入された混合体27は、シリンダの内部で軸回転するスクリューにより加熱混練され混練手段33の最下流から吐出する。そして吐出した混合体27の混練体は、造粒手段35において束状に分岐されて冷却凝固させた後にペレット状の酢酸セルロース組成物にカットされる。
【0034】
このペレット状の酢酸セルロース組成物は、図示略の成形加工機で再加熱して溶融させてから、金型に注入してバルク状の成形品としたり、延伸加工(例えばインフレーション法、カレンダー加工法、T-ダイ法、吹き込み法等)してフィルム状の成形品としたり、発泡させて発泡成形品としたりして、一般的な高分子成形品を製造するための原料となる。
【0035】
なお、
図1において混練機30として、一軸や多軸の押出器等の連続式のものを例示しているが、ニーダやバンバリミキサー等のバッチ式のものも採用することができる。混練機30は、混合体27が粘性流動する温度に密閉空間を調整して撹拌(混練)を実行することができるものであれば適宜採用される。
【0036】
図2のフローチャートに基づいて本発明の実施形態に係る酢酸セルロース組成物の製造方法を説明する(適宜、
図1参照)。まず、混合容器11で酢酸セルロースの粒状体25と可塑剤26とを混合し混合体27を生成する(S11)。次に、この混合体27を静置スペース20において常温で8時間以上静置する(S12)。そして、混合体27を混練機30に投入し粘性流動する温度に設定して混練する(S13)。この混錬体を冷却凝固させペレット状にカットした酢酸セルロース組成物を生成する(S14)。そして、このペレットを成形加工機で再加熱して溶融させてから金型等に注入して成形品を製造する(S15)。
【実施例0037】
図3及び
図4は本実施形態の効果を確認した実施例を示すテーブルである。可塑剤26として
図3ではトリアセチンを単独で用い、
図4ではトリアセチンとアジピン酸エステルを組み合わせて用いた実施例を示している。
【0038】
また
図3及び
図4で示される比較例1-3は粒状体25と可塑剤26を混合してから静置時間を置かずに混合体27を混練機30に投入しペレットを製造し、工業規格に準拠して作製した試験片による試験結果である。また
図3及び
図4で示される実施例1-4は静置時間が8時間たってから混練機30に混合体27を投入しペレットを製造し、工業規格に準拠して作製した試験片による試験結果である。
【0039】
なお、
図3及び
図4は、酢酸セルロース組成物の基本物性を左右する複数パラメータを同時に振ってその最適条件を探索する一連の膨大な試験結果から、一部抽出したデータである。
図3及び
図4では、静置時間(8時間)の有無のパラメータと可塑剤26(トリアセチン、アジピン酸エステル)の充填量のパラメータとを同時に振った試験結果が示されている。
【0040】
ここでは、酢酸セルロース組成物の基本物性に対する静置時間(8時間)の有無の寄与度に着目する。特に、MFRの試験結果について比較例と実施例とを対比すると、可塑剤26よりも、静置時間の有無に関するパラメータの寄与が、基本物性に有意差をもたらしているといえる。
【0041】
(試験片の製造)
使用した酢酸セルロースの粒状体25は酢化度55%の市販の製品である。
図3に示すように、比較例1-2及び実施例1-2において、酢酸セルロースの粒状体25との混合体27に占める可塑剤26(トリアセチン)の比率は、21,25,27,30重量%である。そして、
図4に示すように、比較例3及び実施例3-4において、混合体27に占める可塑剤26(トリアセチン+アジピン酸エステル)の比率も、25,27,30重量%であり、このうちアジピン酸エステルが占める比率は全て10重量%と固定されている。さらに添加剤の配合量が、フェノール系の酸化防止剤0.3重量部、フォスファイト系の酸化防止剤0.3重量部、エポキシ系可塑剤0.5重量部となっている。
【0042】
具体的に混合体27の生成は、500rpm/minに設定した高速ミキサーを混合容器11として、可塑剤26を噴霧しながら酢酸セルロースの粒状体25を撹拌して混合する。さらに120rpm/minに設定した低速ミキサーであるリボンブレンダーを用いて混合体27に添加剤(酸化防止剤等)を混合した。そして、実施例1-4については、混合体27をトレー28に収容し気密な状態で、常温(25℃)で8時間静置してから混錬機30に投入した。比較例1-3については、混合体27を生成してから30分以内に混錬機30に投入した。
【0043】
混錬機30は、台湾メーカーCKF社製、CK70HT(スクリュー径70mm、L/D=44)を用いた。スクリュー回転数の設定は300~600rpmであり、成形加工温度を200-220℃とした。
【0044】
そして、混錬機30から吐出した混練体をペレットに成形し冷却した後に、射出成形機で再加熱し溶融させてから金型に注入して、各種の基本性能(MFR,曲げ弾性率,引張強度,衝撃強度)を試験するための試験片を作成した。なお、作成した試験片を観察すると、比較例1-3に対し、実施例1-4における透明性が優れていた。
【0045】
(シートの成形加工)
比較例及び実施例の混合体27で成形したペレットをさらにシートに成形加工した結果について説明する。ペレットを投入する成形機は、田邊プラスチック機械株式会社製の単層シートフィルム成形機であり、スクリュー直径を55mm、ダイス幅を500mm、ダイス形状をコートハンガーダイスに設定した。そして、成形条件として、成形温度が220~225℃、吐出量が30Kg/Hr、フィルム幅が350mmで厚みが300μmのシート形状とし、巻き取り速度を1~2m/minとした。
【0046】
比較例のペレットから成形されたシートは、成形機のコートハンガーダイスからの材料吐出が不安定であった。得られたシートは、製品として、表面外観が悪く、不均一な流動性に起因するムラがあった。この原因は、MFRが低く、引張伸度も低いことに起因する、シート成形時の流動性、形状追随性の低劣さによると考えられる。
【0047】
これに対し実施例のペレットから成形されたシートは、成形性が大幅に向上し、安定して連続成形が可能となった。さらにシートの肉厚の均一性も向上した。フィルム厚みは、100~500μmの範囲において任意に設定が可能で、透明性に優れ、ロール巻も可能であった。なお、成形機にペレットを投入する際に、耐候性添加剤、耐熱性添加剤、アンチブロッキング剤、着色顔料も同時に投入したが、シートの成形性に問題を与え無いことも確認した。
【0048】
(インフレーションフィルム成形加工)
比較例及び実施例の混合体27で成形したペレットをさらにインフレーションフィルム成形加工した結果について説明する。ペレットを投入する成形機は、株式会社プラコー社製の単層インフレーションフィルム成形機であり、スクリュー直径を50mm、円形ダイス幅を100mmに設定した。そして、成形条件として、成形温度が220~225℃、ブロー比;1.5-2.0、フィルム幅が400mmで厚みが100μmのフィルム形状とし、巻き取り速度を2~5m/minとした。
【0049】
比較例のペレットから成形しようとしたインフレーションフィルムは、成形機の円形ダイスからの材料吐出が不安定であったため、バブル形成が出来ず、成形不可であった。この原因は、MFRが低く、引張伸度も低いことに起因する、インフレーションフィルム成形時の流動性、形状追随性の低劣さによると考えられる。
【0050】
これに対し実施例のペレットから成形されたインフレーションフィルムは、バブルの安定性が大幅に向上し、安定して連続成形が可能となった。さらにフィルムの肉厚の均一性も向上した。フィルム厚みは、30~150μmの範囲において任意に設定が可能で、透明性に優れ、ロール巻も可能であった。なお、成形機にペレットを投入する際に、耐候性添加剤、耐熱性添加剤、アンチブロッキング剤、着色顔料も同時に投入したが、インフレーションフィルムの成形性に問題を与え無いことも確認した。
【0051】
(中空成形加工)
比較例及び実施例の混合体27で成形したペレットをさらに中空成形加工した結果について説明する。ペレットを投入する成形機は、株式会社プラコー社製のアキューム式の単層ブロー成形機であり、スクリュー直径を75mm、電動/油圧ハイブリッド式で、製品金型を250mlの薬品ボトルに設定した。そして、成形条件として、成形温度が220~225℃、吐出量が30Kg/Hrとした。ブロー成形においては、ペレットの溶融体が、押出スクリューによってヘッド方向に押出され、リング状に空いたヘッドの出口を経由して円筒状に膨張し金型に挿入される。この膨張前の予備成形状態はパリソンと呼ぶ。
【0052】
比較例のペレットからブロー成形された中空成形品は、ブロー成形機の円形ダイスからの材料吐出が不安定であった。得られた中空成形品は、パリソン形成が不均一であるため、無理やり成形すると厚みムラが目立った。このため、小型ボトル成形には、対応できないといえる。この原因は、MFRが低く、引張伸度も低いことに起因する、ブロー成形時の流動性、パリソン形成に伴う形状追随性の低劣さによると考えられる。
【0053】
これに対し実施例のペレットから成形された中空成形品は、ブロー成形機からの溶融体吐出・パリソン形成の安定性が大幅に向上し、金型内での空気圧入によるボトルの成形性が大幅に向上し、安定して連続成形が可能となり、透明性も向上した。小型ブロー製品についても、外観の平滑性、製品肉厚の均一性も向上した。
【0054】
なお、押出ブロー成形、射出ブロー成形、多層ブロー成形、3次元ブロー成形のいずれのブロー成形においても、比較例のペレットよりも実施例のペレットにおいて、良好な結果が得られる。さらに、株式会社プラコー製の他のブロー成形機を用いて、5リットルの大型ボトルを試作成型したところ、問題なく成型可能であることも確認した。また、ブロー成形機にペレットを投入する際に、着色顔料も同時に投入しても、成形性に問題を与え無いことも確認した。
【0055】
(射出成形加工)
比較例及び実施例の混合体27で成形したペレットをさらに射出成形加工した結果について説明する。ペレットを投入する成形機は、株式会社ソディック製の電動射出成形機であり、スクリュー直径を50mm、製品金型としてトレー形状製品(200W×400L×12mmH 肉厚1.5mm)を設定した。そして、成形条件として、成形温度を220~225℃とした。
【0056】
比較例のペレットから成形された射出成形品は、射出成形機の先端ノズルからの溶融体の吐出が不安定であった。このため無理やり成形しても、製品外観は不均一で、厚みムラが目立ち、製品として出荷するのは不適切といえる。この原因は、MFRが低く、引張伸度も低いことに起因する、射出成形時の流動性、金型に対する形状追随性の低劣さによると考えられる。
【0057】
これに対し実施例のペレットから成形された射出成形品は、射出成形機の先端ノズルからの溶融体吐出の安定性が大幅に向上し、連続成形が可能となり、外観の平滑性・製品肉厚の均一性が向上し、さらに透明性も向上した。
【0058】
(3Dプリンティング)
比較例及び実施例の混合体27で成形したペレットをさらに3Dプリンティングした結果について説明する。ペレットを投入する成形機は、株式会社キャノン製の3D成形機であり、熱溶解積層法を採用した。そしてフィラメント成形機を用いて、1.75mm径のまたフィラメントを作成した。そして、成形条件として、成形温度を220~225℃、プリントヘッド温度を80~105℃、プリントスピードを50mm/sとした。
【0059】
比較例のペレットを用いた場合は、フィラメントを作成することができなかった。これに対し実施例のペレットを用いた場合は、フィラメント成型、3Dプリンティング成型のいずれも問題なく、さらに優れた透明性を持つ。
10…製造システム、11…混合容器、12…回転体、15…供給容器、16…噴霧器、20…静置スペース、21,22…搬送機器、25…酢酸セルロースの粒状体(粒状体)、26…可塑剤、27…混合体、28…トレー、30…混練機、31…投入手段、32…駆動手段、33…混練手段、35…造粒手段。