(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131404
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】酢酸セルロース組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/20 20060101AFI20230914BHJP
C08L 1/12 20060101ALI20230914BHJP
C08J 3/18 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
C08J3/20 Z CEP
C08L1/12
C08J3/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036147
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】521327471
【氏名又は名称】株式会社 ネクアス
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角谷 雅和
(72)【発明者】
【氏名】船谷 和宏
(72)【発明者】
【氏名】山本 登
(72)【発明者】
【氏名】角谷 知洋
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】北出 元博
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA02
4F070AB02
4F070AC43
4F070AC47
4F070AC87
4F070AC88
4F070AE02
4F070AE03
4F070EA04
4F070FB07
4F070FC03
4F070FC05
4J002AB021
4J002EH046
4J002EH086
4J002EH087
4J002EP018
4J002FD026
4J002FD027
4J002FD178
(57)【要約】
【課題】金属部品に対する溶融体の固着抑制及び固着物の剥離性に優れる酢酸セルロース組成物の製造技術を提供する。
【解決手段】酢酸セルロースの粒状体25と可塑剤26とを混合し、この粒状体25及び可塑剤26の合計100重量部に対し滑剤21を0.1~2.0重量部の範囲で混合し、粒状体25・可塑剤26及び滑剤21の混合体27を粘性流動する温度に設定し混練する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸セルロースの粒状体と可塑剤とを混合する工程と、
前記粒状体及び前記可塑剤の合計100重量部に対し滑剤を0.1~2.0重量部の範囲で混合する工程と、
前記粒状体、前記可塑剤及び前記滑剤の混合体を粘性流動する温度に設定し混練する工程と、を含む酢酸セルロース組成物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の酢酸セルロース組成物の製造方法において、前記混合体は、混合容器において、前記酢酸セルロースの粒状体を撹拌しながら前記可塑剤を噴霧し前記滑剤を注入して生成される酢酸セルロース組成物の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の酢酸セルロース組成物の製造方法において、前記滑剤は、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド及びエルカ酸アミドから選択される一又は二以上の化合物である酢酸セルロース組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の酢酸セルロース組成物の製造方法において、
前記混合体に占める前記可塑剤の比率は10~30重量%の範囲となる酢酸セルロース組成物の製造方法。
【請求項5】
酢酸セルロース及び可塑剤の合計100重量部に対し、滑剤が0.1~2.0重量部の範囲で混合されている酢酸セルロース組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可塑剤が充填される酢酸セルロース組成物の製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
酢酸セルロースは、セルロースを無水酢酸でエステル化した半合成高分子であり、酢化度によって大きく2種類に分類される。一つ目は酢化度が59%以上の三酢酸セルロース(CTA)であり、二つ目は酢化度で50~59%程度の二酢酸セルロース(CDA)である。
【0003】
酢酸セルロースは、優れた物性、特に易加工性と高い光学的性質とを有するため、プラスチック、繊維、フィルム(例えば、写真用フィルムなど)等の分野で長年にわたり利用されてきた。また、酢酸セルロースは生分解性などを有するため、近年では、地球環境の観点からも脚光を浴びている。
【0004】
通常、酢酸セルロースの成形品は、溶媒に溶解した酢酸セルロース溶液を所望の形態に流動させた後、溶媒を蒸発などにより除去することで得られる。一方において、このような溶媒法でなく、可塑剤を充填するコンパウンド法により、加熱成形性を持たせ、一般的な方法で成形加工できる酢酸セルロースの開発も検討されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
酢酸セルロース組成物の成形加工は、初期段階で安定していても、時間経過とともに不安定になる場合がある。具体的には、連続的に成形加工していくと、酢酸セルロース組成物が、成形加工機のシリンダー、スクリュー、ダイスなどに固着し始める。そうなると、固着物は成形時間と共に成長し、溶融体の流動を阻害し、成形加工品の生産の安定性及び均一性の維持を困難にする課題がある。
【0007】
さらに、酢酸セルロース組成物の溶融体は、成形加工機の金属部品にいったん固着すると、簡単には剥離しなくなる。そうなると、成形品の構成樹脂の種類交換に伴う清掃に、多大な時間を要する課題がある。これら課題は、成形品の加工段階のみでなく、ペレットの製造段階でも同様に発生する。ペレットを製造する二軸押出機のスクリュー、バレル、ストランド用ダイスなどにも固着が生じ、長期的な安定生産を阻害し、清掃に多大な時間を割く必要があった。
【0008】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、金属部品に対する溶融体の固着抑制及び固着物の剥離性に優れる酢酸セルロース組成物の製造技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る酢酸セルロース組成物の製造方法は、酢酸セルロースの粒状体と可塑剤とを混合する工程と、前記粒状体及び前記可塑剤の合計100重量部に対し滑剤を0.1~2.0重量部の範囲で混合する工程と、前記粒状体、前記可塑剤及び前記滑剤の混合体を粘性流動する温度に設定し混練する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、金属部品に対する溶融体の固着抑制及び固着物の剥離性に優れる酢酸セルロース組成物の製造技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る酢酸セルロース組成物の製造システムの概略図。
【
図2】本発明に係る酢酸セルロース組成物の製造方法の実施形態を示すフローチャート。
【
図3】(A)(B)本実施形態の効果を確認した実施例を示すテーブル。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る酢酸セルロース組成物の製造システム10の概略図である。このように製造システム10は、酢酸セルロースの粒状体25と可塑剤26とを混合し、この粒状体25及び可塑剤26の合計100重量部に対し滑剤21を0.1~2.0重量部の範囲で混合する混合容器11と、粒状体25、可塑剤26及び滑剤21の混合体27を粘性流動する温度に設定し混練する混練機30と、から構成されている。
【0013】
本実施形態では、上述したように滑剤21が配合されることで、混練機30を連続的に駆動し続けても、混合体27からペレットを安定的に製造し続けることができる。つまり、混練機30のスクリュー、バレル、ストランド用ダイス等への混合体27の溶融体の固着が抑制される。さらに、混練機30で製造したペレットを再溶融し成形加工品を製造する際も、成形加工機のシリンダー、スクリュー、ダイスなどへの溶融体の固着が抑制される。
【0014】
仮に溶融体が固着したとしても、その成長の途中で剥離するので、溶融体の流動は阻害されることなく、成形加工品の生産の安定性及び均一性が維持される。このように、ペレットの製造段階及び成形品の加工段階においても、長期的な安定生産が達成され、清掃にかける時間も削減することができる。
【0015】
酢酸セルロースの平均分子量は、1×104~100×104、好ましくは5×104~75×104、さらに好ましくは10×104~50×104程度であるが、特に制限はなく、用途に応じて選択できる。また酢酸セルロースの酢化度(結合酢酸%)は、52.0~62.5%の範囲から選択できる。好ましい酢酸セルロースの酢化度は、59%以下(例えば、52.0~58.0%)、特に54~56%(例えば、55%)程度である。
【0016】
酢酸セルロースの粒状体25は、供給容器15から混合容器11に供給される。この酢酸セルロースの粒状体25は、平均粒径が0.1mmから1.0mmの範囲にある粒状体であることが好ましい。この平均粒径が0.1mmよりも小さいと取り扱いが困難となり粒状体が舞い上がる等して作業性が低下してしまう。
【0017】
また、この最大粒径が1mmよりも大きいと、混合容器11に供給された酢酸セルロースの粒状体25の比表面積が小さくなり、粒状体25の表面を濡らすことができず可塑剤26が分離してしまう場合がある。しかし、本発明に適用される酢酸セルロースの粒状体25の平均粒径は、上述した範囲に限定されない。
【0018】
また酢酸セルロース組成物の基本物性や成形加工性をより好ましく調整するため、複数の品種の酢酸セルロースの粒状体25を混合して使用する場合もある。具体的には酢酸セルロースの粒状体25に、他のセルロースエステル(例えば、セルロースプロピオネート、セルロースブチレートなどの有機酸エステル、硝酸セルロース、硫酸セルロース、リン酸セルロースなどの無機酸エステル)等の粒状体25を複合させてもよい。
【0019】
混合体27に占める可塑剤26の比率は10~30重量%の範囲とする。なお可塑剤26の性状として粉末状、液状、あるいはその混合物が有り得る。その比率が10重量%未満であると粒状体25における可塑剤26の浸透度にバラツキが生じやすくなり、また比率が30重量%を超えると静置スペース20における静置期間中に粒状体25と可塑剤26とが重力分離してしまう場合がある。
【0020】
可塑剤26としては、グリセリントリアセテート化合物(トリアセチン)、アジピン酸エステル含有化合物、アジピン酸ポリエステル含有化合物ポリエーテルエステル化合物、セバシン酸エステル化合物、エポキシ系エステル、安息香酸系エステル、トリメリット酸エステル、グリコールエステル化合物、酢酸エステル、二塩基酸エステル化合物、リン酸エステル化合物、フタル酸エステル化合物、樟脳、クエン酸エステル、ステアリン酸エステル、金属石鹸、ポリオール、ポリアルキレンオキサイド等が挙げられる。これらの中でも、アジピン酸エステル含有化合物、ポリエーテルエステル化合物、非フタル酸系化合物が好ましく、アジピン酸エステル含有化合物がより好ましい。
【0021】
アジピン酸エステル含有化合物(アジピン酸エステルを含む化合物)とは、アジピン酸エステル単独の化合物、又は、アジピン酸エステルと異なる化合物との混合物であることを示す。アジピン酸エステルとしては、アジピン酸ジエステル、アジピン酸ポリエステル等が挙げられる。
【0022】
非フタル酸系化合物としては、ベンジルブチルフタレート(BBP)、ビス(2エチルへキシル)フタレート(DEHP)、ディブチルフタレート(DBP)、ディイソブチルフタレート(DIBP)等が挙げられる。
【0023】
ポリエーテルエステル化合物は、その溶解度パラメータ(SP値)が、9.5以上9.9以下が好ましく、9.6以上9.8以下がより好ましい。溶解度パラメータ(SP値)を9.5以上9.9以下にすると、酢酸セルロース誘導体への分散性が向上する。
【0024】
滑剤21は、特に、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド及びエルカ酸アミドから選択される一又は二以上の脂肪酸アミドが好適に用いられる。さらに滑剤21は、酢酸セルロースの粒状体25及び可塑剤26の合計100重量部に対し、0.1~2.0重量部の範囲より好ましくは0.2~1.0重量部の範囲で混合される。これら化合物は、スクリュー、シリンダー、ダイス等の金属部品との剥離性、成形加工後の成形加工機の清掃の容易さの観点から滑剤21として優れた効果を発揮する。
【0025】
滑剤21としては、上記した脂肪酸アミドに限定されず、広く脂肪族アミド系、炭化水素系、脂肪酸系、高級アルコール系、金属石鹸系、エステル系等の化合物を適用できる。
【0026】
脂肪族アミド系の化合物としては、上記した脂肪酸アミド以外に、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドといったアルキレン脂肪酸アミドが挙げられる。これら脂肪族アミドには、モノアミド、置換アミド、ビスアミドがあり、いずれも適用できる。
【0027】
また、脂肪酸アミドとしては、上記したステアリン酸アミド、オレイン酸アミド及びエルカ酸アミド以外に、ラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド等が挙げられる。
【0028】
炭化水素系の化合物としては、流動パラフィン、パラフィンワックス、合成ポリエチレンワックス等が挙げられる。脂肪酸系、高級アルコール系の化合物としては、ステアリン酸やステアリルアルコールなどが挙げられる。
【0029】
金属石鹸系の化合物としては、ステアリン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムといったステアリン酸金属塩が挙げられる。エステル系の化合物としては、アルコールの脂肪酸エステルである、ステアリン酸モノグリセリドやステアリルステアレート、硬化油などが挙げられる。
【0030】
さらに添加剤として、熱安定化剤として、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系熱安定剤、金属不活性化剤、イオウ系熱安定剤を用いたり、耐候性添加剤として例えば、液状紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤を用いたり、分散剤・滑剤として炭化水素系滑剤、脂肪酸、高級アルコール系滑剤、脂肪酸アミド系、金属石鹸系、エステル系等を用いたり、アンチブロッキング剤としてシリカ等を用いたり、その他に着色剤等を用いたりする場合がある。
【0031】
また充填材として、セルロース繊維、セルロース粉末、CNF(カーボンナノファイバー)、木粉、コーヒー粕粉体、デンプン等の有機粉体、あるいは、カオリン、タルク、ケイソウ土、石英、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、アルミナ等の無機粉体を、最終製品に求められる性能に応じて用いる場合がある。
【0032】
混合容器11は、供給容器15から供給された酢酸セルロースの粒状体25を撹拌させる回転体12と、撹拌される粒状体25に可塑剤26を噴霧する噴霧器16と、滑剤21を注入する注入器22と、を有している。なお、粒状体25、可塑剤26及び滑剤21は、予め定められた分量が混合容器11に投入される。そして、混合容器11では、粒状体25を撹拌しながら可塑剤25を噴霧する。そして注入器22は、粒状体25及び可塑剤26の合計100重量部に対し0.1~2.0重量部の範囲にある予め定められた分量の滑剤21を混合容器11に注入する。
【0033】
なお滑剤21の注入方法としては、可塑剤26の噴霧期間中に断続的に注入したり、可塑剤26を全量噴霧してから回転体12の動作をそのまま継続して注入したり、可塑剤26と混合してから注入したりすることができる。なお、可塑剤26の混合は、噴霧ではなくパイプ(図示略)から流下させるようにしてもよい。このように滑剤21の注入することで、酢酸セルロースの粒状体25の表面に対し、可塑剤26とともに滑剤21を一様に分散させることができる。
【0034】
なお図示において、滑剤21の注入器22は、可塑剤26の噴霧器16と粒状体25の供給容器15が設置される混合容器11に一緒に設置されている。しかし、このような形態に限定されず、注入器22は、図示される混合容器11とは別の専用の混合容器(図示略)に、その他の添加剤の注入器(図示略)とともに設置される場合もある。この場合、専用の混合容器(図示略)の動作条件を調整し、滑剤21の分散性を最適化できる。
【0035】
混合容器11は、特に制限されるものではなく、タンブラーミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー、ニーダなどの混合機を使用することができる。混合容器11における撹拌翼の回転数は、200rpm以上、好ましくは400rpm以上、より好ましくは500rpm以上の高速回転が実現されるものが好ましい。
【0036】
このような高速回転が実現されることで、混合容器11に加熱手段を設けなくても(もちろん加熱手段を設けてもよい)、運動エネルギーの摩擦熱により酢酸セルロースの粒状体25を昇温させることができる。このときの温度は、40℃~70℃、好ましくは50℃~60℃の範囲に調整する。これにより、可塑剤26の粘性を下げて濡れ性を向上させて、酢酸セルロースの粒状体25の表面に、滑剤21を満遍なくムラ無く均一に分散させることができる。
【0037】
混練機30は、投入手段31と、駆動手段32と、混練手段33と、造粒手段35と、から構成されている。ここで混練手段33は、外側を構成するシリンダーと、駆動手段32の駆動力でシリンダー内部を回転するスクリュー(図示略)とから構成されている。ここでシリンダー及びスクリューは、混合体27が粘性流動する120℃から250℃の範囲、または分解防止の観点から230℃以下の温度に設定されている。
【0038】
投入手段31には、静置スペース20から搬送された混合体27が投入される。そして、投入された混合体27は、シリンダーの内部で軸回転するスクリューにより加熱混練され混練手段33の最下流から吐出する。そして吐出した混合体27の混練体は、造粒手段35において束状に分岐されて冷却凝固させた後にペレット状の酢酸セルロース組成物にカットされる。
【0039】
このペレット状の酢酸セルロース組成物は、図示略の成形加工機で再加熱して溶融させてから、金型に注入してバルク状の成形品としたり、押出成形加工(例えばインフレーション法、カレンダー加工法、T-ダイ法、吹き込み法等)してフィルム状の成形品としたり、発泡させて発泡成形品としたりして、一般的な高分子成形品を製造するための原料となる。
【0040】
なお、
図1において混練機30として、一軸や多軸の押出器等の連続式のものを例示しているが、ニーダやバンバリミキサー等のバッチ式のものも採用することができる。混練機30は、混合体27が粘性流動する温度に密閉空間を調整して撹拌(混練)を実行することができるものであれば適宜採用される。
【0041】
図2のフローチャートに基づいて本発明の実施形態に係る酢酸セルロース組成物の製造方法を説明する(適宜、
図1参照)。まず、混合容器11で酢酸セルロースの粒状体25と粉末状、液状、あるいはこれらの混合物の性状を持つ可塑剤26とを混合する(S11)。次に、この粒状体25及び可塑剤26の合計100重量部に対し滑剤21を0.1~2.0重量部の範囲で混合する(S12)。
【0042】
そして、粒状体25、可塑剤26及び滑剤21の混合体27を混練機30に投入し粘性流動する温度に設定して混練する(S13)。この混錬体を冷却凝固させペレット状にカットした酢酸セルロース組成物を生成する(S14)。そして、このペレットを成形加工機で再加熱して溶融させてから金型等に注入して成形品を製造する(S15)。
【実施例0043】
図3は本実施形態の効果を確認した実施例を示すテーブルである。
図3(A)は可塑剤26として
図3ではトリアセチンを単独で用い、
図3(B)ではトリアセチンとアジピン酸エステルを組み合わせて用いた実施例を示している。
【0044】
また
図3(A)(B)で示される比較例1-2は粒状体25に滑剤21が未混合のもので、実施例1-9はステアリン酸アミド、オレイン酸アミド及びエルカ酸アミドから選択される滑剤21を混合したものである。
【0045】
使用した酢酸セルロースの粒状体25は酢化度55%の市販の製品である。混合体27の生成は、500rpm/minに設定した高速ミキサーを混合容器11として、可塑剤26を噴霧しながら酢酸セルロースの粒状体25を撹拌して混合する。さらに120rpm/minに設定した低速ミキサーであるリボンブレンダーを用いて滑剤21及び酸化防止剤を混合した。
【0046】
混錬機30は、台湾メーカーCKF社製、CK70HT(スクリュー径70mm、L/D=44)を用いた。スクリュー回転数の設定は300~600rpmであり、成形加工温度を200-220℃とした。
【0047】
そして、混錬機30から吐出した混練体をペレットに成形し冷却した後に、射出成形機で再加熱し溶融させて試験片を作成し、各種の基本物性(MFR,曲げ弾性率,引張強度,衝撃強度)を試験した。その結果、滑剤21の有無で分類される比較例と実施例の間に、基本物性の有意差は認められなかった。
【0048】
(シートの成形加工)
比較例及び実施例の混合体27で成形したペレットをさらにシートに成形加工する条件について説明する。ペレットを投入する成形加工機は、田邊プラスチック機械株式会社製の単層シートフィルム成形機であり、スクリュー直径を55mm、ダイス幅を500mm、ダイス形状をコートハンガーダイスに設定した。そして、成形条件として、成形温度が220~225℃、吐出量が30Kg/Hr、フィルム幅が350mmで厚みが300μmのシート形状とし、巻き取り速度を1~2m/minとした。
【0049】
(インフレーションフィルム成形加工)
比較例及び実施例の混合体27で成形したペレットをさらにインフレーションフィルム成形加工する条件について説明する。ペレットを投入する成形加工機は、株式会社プラコー社製の単層インフレーションフィルム成形機であり、スクリュー直径を50mm、円形ダイス幅を100mmに設定した。そして、成形条件として、成形温度が220~225℃、ブロー比;1.5-2.0、フィルム幅が400mmで厚みが100μmのフィルム形状とし、巻き取り速度を2~5m/minとした。
【0050】
(中空成形加工)
比較例及び実施例の混合体27で成形したペレットをさらに中空成形加工する条件について説明する。ペレットを投入する成形加工機は、株式会社プラコー社製のアキューム式の単層ブロー成形機であり、スクリュー直径を75mm、電動/油圧ハイブリッド式で、製品金型を250mlの薬品ボトルに設定した。そして、成形条件として、成形温度が220~225℃、吐出量が30Kg/Hrとした。
【0051】
(射出成形加工)
比較例及び実施例の混合体27で成形したペレットをさらに射出成形加工する条件について説明する。ペレットを投入する成形加工機は、株式会社ソディック製の電動射出成形機であり、スクリュー直径を50mm、製品金型としてトレー形状製品(200W×400L×12mmH 肉厚1.5mm)を設定した。そして、成形条件として、成形温度を220~225℃とした。
【0052】
(3Dプリンティング)
比較例及び実施例の混合体27で成形したペレットをさらに3Dプリンティングする条件について説明する。ペレットを投入する成形加工機は、株式会社キャノン製の3D成形機であり、熱溶解積層法を採用した。そしてフィラメント成形機を用いて、1.75mm径のまたフィラメントを作成した。そして、成形条件として、成形温度を220~225℃、プリントヘッド温度を80~105℃、プリントスピードを50mm/sとした。
【0053】
上述した「シートの成形加工」「インフレーションフィルム成形加工」「中空成形加工」「射出成形加工」「3Dプリンティング」のいずれにおいても、比較例1,2では、成形性が、初期段階で安定していても、時間経過とともに不安定になった。この成形性を再生するため、酢酸セルロース組成物の固着物を除去する清掃を頻繁に行う必要があった。
【0054】
一方において、実施例1-9では、初期段階からしばらく時間が経過しても成形性は安定を維持していた。成形品の製造を終了した後に、成形加工機を観察すると、わずかに存在する固着物は簡単に剥離し、清掃を短時間ですますことができた。
10…製造システム、11…混合容器、12…回転体、15…供給容器、16…噴霧器、21…滑剤、22…注入器、25…酢酸セルロースの粒状体(粒状体)、26…可塑剤、27…混合体、30…混練機、31…投入手段、32…駆動手段、33…混練手段、35…造粒手段。