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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131433
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】溶射装置及び溶射制御方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 4/00 20160101AFI20230914BHJP
   B05B 7/16 20060101ALI20230914BHJP
   B05B 12/12 20060101ALI20230914BHJP
   B05D 1/08 20060101ALI20230914BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
C23C4/00
B05B7/16
B05B12/12
B05D1/08
B05D3/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036190
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】横山 響
(72)【発明者】
【氏名】金田 教良
(72)【発明者】
【氏名】曾根 通介
(72)【発明者】
【氏名】平野 智資
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼原 剛
(72)【発明者】
【氏名】南部 貴俊
【テーマコード(参考)】
4D075
4F033
4F035
4K031
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AA37
4D075AA86
4D075BB34Y
4D075BB56Y
4D075BB93Y
4D075EB01
4F033QA01
4F033QB02Y
4F033QB04
4F033QB12Y
4F033QB13Y
4F033QB19
4F033QG05
4F033QG06
4F033QG14
4F033QG16
4F033QG19
4F033QG20
4F033QG21
4F033QG26
4F035AA03
4F035BB15
4F035BB16
4F035BB35
4K031DA01
4K031DA02
4K031DA04
4K031EA01
4K031EA03
4K031EA06
4K031EA10
4K031EA11
4K031EA12
(57)【要約】
【課題】溶射作業の煩雑さを低減し、作業の安全性が向上することができる溶射装置及び溶射制御方法を提供する。
【解決手段】一実施形態によると、材料を基材に溶射する溶射トーチを含む溶射機と、前記溶射機とともに使用される1つ以上の周辺機器と、前記溶射機と前記1つ以上の周辺機器とを一括して操作可能な集中制御盤と、を備える溶射装置が提供される。一実施形態によると、溶射機、前記溶射機とともに使用される1つ以上の周辺機器、及び集中制御盤を含む溶射装置によって実行される溶射制御方法であって、前記集中制御盤によって、前記溶射機と前記1つ以上の周辺機器とを一括して制御すること、を含む溶射制御方法が提供される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料を基材に溶射する溶射トーチを含む溶射機と、
前記溶射機とともに使用される1つ以上の周辺機器と、
前記溶射機と前記1つ以上の周辺機器とを一括して操作可能な集中制御盤と、
を備える、溶射装置。
【請求項2】
前記1つ以上の周辺機器は、前記溶射トーチを移動させる移動機、前記材料を供給する原料フィーダ、前記基材を固定して回転させる回転機、溶射ブース内の温度及び湿度を制御する温湿度調整機、前記溶射ブース内の温度及び湿度を検出する温湿度センサ、前記溶射ブース内の酸素濃度を検出する酸素濃度センサ、前記基材上の温度を検出する放射温度センサ、前記基材上を冷却するための冷却ガス供給機、及び前記溶射ブース内で発生した粉塵を収集する集塵機を含む群の中から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の溶射装置。
【請求項3】
前記集中制御盤は、前記溶射機と前記1つ以上の周辺機器とを一括して制御する制御部を備える、請求項1又は2に記載の溶射装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記温湿度センサの検出結果に基づいて、前記温湿度調整機を制御する、請求項3に記載の溶射装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記放射温度センサの検出結果に基づいて、前記冷却ガス供給機を制御する、請求項3又は4に記載の溶射装置。
【請求項6】
溶射機、前記溶射機とともに使用される1つ以上の周辺機器、及び集中制御盤を含む溶射装置によって実行される溶射方法であって、
前記集中制御盤によって、前記溶射機と前記1つ以上の周辺機器とを一括して制御すること、
を含む、溶射制御方法。
【請求項7】
前記1つ以上の周辺機器は、前記溶射トーチを移動させる移動機、前記材料を供給する原料フィーダ、前記基材を固定して回転させる回転機、溶射ブース内の温度及び湿度を制御する温湿度調整機、前記溶射ブース内の温度及び湿度を検出する温湿度センサ、前記溶射ブース内の酸素濃度を検出する酸素濃度センサ、前記基材上の温度を検出する放射温度センサ、前記基材上を冷却するための冷却ガスを供給する冷却ガス供給機、及び前記溶射ブース内で発生した粉塵を収集する集塵機を含む群の中から選択される少なくとも1つを含む、請求項6に記載の溶射制御方法。
【請求項8】
前記集中制御盤は、前記溶射機と前記1つ以上の周辺機器とを一括して制御する制御部を備え、
前記集中制御盤が、溶射作業を開始する指示を受けると、
前記制御部が、前記温湿度センサの検出結果に基づいて、前記温湿度調整機を制御して前記溶射ブース内を所定の温度及び所定の湿度に維持し、
前記制御部が、前記放射温度センサの検出結果に基づいて、前記基材の表面温度が所定の温度以下になっているか否かを判定し、
前記判定の結果、前記基材の表面温度が所定の温度以下である場合、前記制御部が、前記溶射機を駆動させて、前記基材表面に前記材料を含む皮膜を形成すること、
を含む、請求項7に記載の溶射制御方法。
【請求項9】
前記皮膜の形成後、前記制御部が、前記放射温度センサの検出結果に基づいて、前記基材上に形成された前記皮膜の表面温度が所定の温度以下になるまで前記冷却ガス供給機を制御して前記皮膜に冷却ガスを供給すること、をさらに含む、請求項8に記載の溶射制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一実施形態は、溶射装置及び溶射制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属、セラミックなどの成膜材料を加熱して溶融させ、又は溶融に近い(半溶融)状態にし、溶融した、又は半溶融状態となった成膜材料を基材に吹き付けることによって、基材上に成膜材料の皮膜を形成する溶射装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平5-29092号候補
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
溶射工程では、成膜材料を基材上に溶射する溶射トーチを含む溶射装置に加え、溶射トーチを移動させるロボット、基材を固定して回転させる回転機、溶射ブース内の温度及び湿度を制御する送気装置、溶射ブース内の温度及び湿度を検出する温湿度計、酸素濃度を検出する酸素濃度計、製品の温度を検出する放射温度計などを含む1つ以上のセンサ、製品を冷却するための冷却装置、溶射ブース内で発生した粉塵を収集する集塵装置などを含む周辺装置を稼働させる。
【0005】
溶射装置、及びその周辺装置は、溶射作業に携わる作業員が現場において手動で操作する必要があった。そのため、溶射作業が煩雑になり、作業効率が低下するという問題があった。また、現場の作業員の安全性にも問題があった。
【0006】
本開示の実施形態の課題の一つは、溶射作業の煩雑さを低減し、作業の安全性が向上することができる溶射装置及び溶射制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態による溶射装置は、材料を基材に溶射する溶射トーチを含む溶射機と、前記溶射機とともに使用される1つ以上の周辺機器と、前記溶射機と前記1つ以上の周辺機器とを一括して操作可能な集中制御盤と、を備える。
【0008】
本開示の一実施形態による溶射制御方法は、溶射機、前記溶射機とともに使用される1つ以上の周辺機器、及び集中制御盤を含む溶射装置によって実行される溶射方法であって、前記集中制御盤によって、前記溶射機と前記1つ以上の周辺機器とを一括して制御すること、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一実施形態によると、溶射作業の煩雑さを低減し、作業の安全性が向上することができる溶射装置及び溶射制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態に係る溶射装置の構成を説明するための図である。
図2】一実施形態に係る集中制御盤の構成の一例を説明するためのブロック図である。
図3】一実施形態に係る溶射装置によって実行される溶射工程の一例を示すフロー図である。
図4】一実施形態に係る溶射装置によって実行される溶射工程の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似の要素には、同一の符号(又は数字の後にa、b、A、Bなど)を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。さらに各要素に対する「第1」、「第2」と付記された文字は、各要素を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限りそれ以上の意味を有しない。
【0012】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
【0013】
本明細書において、ある部材又は領域が他の部材又は領域の「上に(又は下に)」あるとする場合、特段の限定がない限りこれは他の部材又は領域の直上(又は直下)にある場合のみでなく他の部材又は領域の上方(又は下方)にある場合を含み、すなわち、他の部材又は領域の上方(又は下方)において間に別の構成要素が含まれている場合も含む。
【0014】
また、本明細書において「αはA、B又はCを含む」、「αはA,B及びCのいずれかを含む」、「αはA,B及びCからなる群から選択される一つを含む」、といった表現は、特に明示が無い限り、αはA乃至Cの複数の組み合わせを含む場合を排除しない。さらに、これらの表現は、αが他の要素を含む場合も排除しない。
【0015】
<溶射装置>
以下、図面を参照して本開示の一実施形態に係る溶射装置10について説明する。
【0016】
図1は、本開示の一実施形態に係る溶射装置10の構成を説明するための図である。溶射装置10は、集中制御盤101、溶射機103、及び周辺機器から構成される。周辺機器は、移動機105、ガス供給機108、冷却ガス供給機109、ワーク(基材)111を含む回転機113、第1センサ115、及び第2センサ117を含む。周辺機器は、温湿度調整機121及び集塵機123を含んでもよい。本実施形態において、溶射機103は、溶射トーチ102、溶射制御機106、原料フィーダ107、及びガス供給機108から構成される。
【0017】
本実施形態において、溶射機103の少なくとも一部、移動機105、冷却ガス供給機109、回転機113、第1センサ115、及び第2センサ117は、溶射工程が実行される溶射ブース119内に設けられる。温湿度調整機121は、溶射ブース119内につながる送気ダクト122を有する。集塵機123は、溶射ブース119内につながる排気ダクト124を有する。また、溶射装置10は、溶射ブース119の内外に作業員Wが出入り可能な安全扉125を備える。
【0018】
集中制御盤101は、溶射ブース119外に設置される。集中制御盤101は、溶射装置10の各構成を一括して操作可能にする。即ち、集中制御盤101は、溶射機103、移動機105、冷却ガス供給機109、回転機113、第1センサ115、第2センサ117、温湿度調整機121、及び集塵機123の動作を一括して制御する。集中制御盤101は、作業員Wの入力操作を受けて、溶射装置10の各構成の動作を制御して、溶射ブース119内で溶射工程を実行する。集中制御盤101は、安全扉125の開閉を制御してもよい。
【0019】
図2は、本実施形態に係る集中制御盤101の構成の一例を説明するためのブロック図である。集中制御盤101は、制御部201、記憶部203、操作部205、通信部207、及び表示部209を備えてもよい。制御部201、記憶部203、操作部205、通信部207、及び表示部209は、バス211によって互いに接続されている。
【0020】
制御部201は、CPUなどの演算処理回路を含む。制御部201は、記憶部203に記憶された制御プログラムをCPUにより実行して、溶射装置10の動作を制御して、溶射装置10による溶射工程を実現する。換言すると、制御部201は、溶射装置10を構成する、溶射機103、移動機105、冷却ガス供給機109、回転機113、第1センサ115、第2センサ117、温湿度調整機121、及び集塵機123の動作を集中制御する。
【0021】
記憶部203は、ROM、RAM、ハードディスク等の記憶装置である。記憶部203は、溶射装置10による溶射工程を実現するための制御プログラムを記憶する。制御プログラムは、磁気記録媒体、光記録媒体、光磁気記録媒体、半導体メモリなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶した状態で提供されてもよい。この場合には、集中制御盤101は、記録媒体を読み取る装置を備えていればよい。また、記憶部203は、溶射装置10を構成する、溶射機103、移動機105、冷却ガス供給機109、回転機113、第1センサ115、第2センサ117、温湿度調整機121、及び集塵機123の設定など記憶してもよい。制御プログラム、溶射装置10の各構成の設定は、インターネット等のネットワーク経由でダウンロードされてもよい。
【0022】
操作部205は、操作パネル、操作ボタン、タッチパネルなどの装置であり、入力された操作に応じた信号を制御部201に出力する。溶射作業に従事する作業員Wは、操作部205を介して溶射装置10の動作を制御する。作業員Wは、操作部205を介して、溶射装置10によって実行される溶射工程の開始、及び停止を指示することができる。また、作業員Wは、操作部205を介して溶射装置10を構成する、溶射機103、移動機105、冷却ガス供給機109、回転機113、第1センサ115、第2センサ117、温湿度調整機121、及び集塵機123の設定などを適宜変更することができる。
【0023】
通信部207は、制御部201の制御に基づいて、溶射装置10の各構成、即ち、溶射機103、移動機105、冷却ガス供給機109、回転機113、第1センサ115、第2センサ117、温湿度調整機121、及び集塵機123との通信を行う。通信は、有線による通信であってもよく、無線による通信であってもよい。尚、記憶部203の機能は、通信部207によって通信可能な外部装置で実現されてもよい。
【0024】
表示部209は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示装置であり、制御部201による制御に基づいて作業員Wに対し、制御部201による制御に基づいた画面が表示される。例えば、表示部209には、溶射機103、移動機105、冷却ガス供給機109、回転機113、第1センサ115、第2センサ117、温湿度調整機121、及び集塵機123の設定状態や運転状態、第1センサ115、及び第2センサ117の検出結果が表示されてもよい。
【0025】
図1を参照して、溶射装置10の説明に戻る。溶射機103は、後述する移動機105に連結される溶射トーチ102を含む。溶射トーチ102は、溶射制御機106に基づいて、原料フィーダ107から供給される溶射材料とガス供給機108から供給されたガスとを噴射する。溶射機103による溶射は、フレーム溶射、及び高速フレーム溶射を含むガス式溶射であってもよく、アーク溶射、及びプラズマ溶射を含む電気式溶射であってもよい。溶射トーチ102は、溶射材料をガス又は電気(アーク又はプラズマ)により溶融若しくは半溶融させて溶射粒子を生成する。溶射トーチ102は、生成した溶射粒子を圧縮空気などのガスにより加速させて、回転機113のワーク111上に吹き付けて、ワーク111の表面上に溶射粒子の皮膜を形成する。
【0026】
移動機105は、制御部201の制御に基づいて、溶射トーチ102を移動させる。移動機105は、例えば、産業用ロボットであってもよい。具体的には、移動機105は、6軸又は7軸の垂直多関節ロボットであってもよい。移動機105は、制御部201の制御に基づいて、溶射トーチ102の前後上下左右方向への移動、回転機113のワーク111の表面に対する溶射トーチ102の角度などを制御する。例えば、溶射機103による溶射工程が開始されると、移動機105は、溶射トーチ102が回転機113のワーク111に近接する距離まで近づくよう溶射トーチ102を移動させ、溶射トーチ102をワーク111の表面に対して所定の角度に傾けてもよい。また、溶射工程が終了すると、移動機105は、溶射トーチ102が回転機113から離れるよう移動させてもよい。
【0027】
溶射制御機106は、集中制御盤101の制御部201による制御に基づいて、原料フィーダ107から溶射トーチ102に供給される溶射材料の供給量を調整する。同様に、溶射制御機106は、集中制御盤101の制御部201による制御に基づいて、ガス供給機108から供給される作動ガスの供給量を調整して、作動ガスを溶射トーチ102に供給する。一実施形態において、集中制御盤101の制御部201によって、直接原料フィーダ107から溶射トーチ102に供給される溶射材料の供給量が調整されてもよい。同様に、一実施形態において、集中制御盤101の制御部201によって、直接ガス供給機108から供給される作業ガスの供給量が調整されてもよい。
【0028】
原料フィーダ107は、溶射制御機106による制御に基づいて、溶射材料を所定の流量で溶射トーチ102に供給する。溶射材料は、金属、セラミック、ポリマー、サーメットなどの複合材料であってもよい。本実施形態において、原料フィーダ107は、溶射ブース119内に設置されている例を説明しているが、原料フィーダ107の少なくとも一部は、溶射ブース119外に配置されてもよい。原料フィーダ107から溶射トーチ102に供給される溶射材料の供給量は、集中制御盤101の制御部201によって直接制御されてもよい。
【0029】
ガス供給機108は、溶射制御機106による制御に基づいて、作動ガスを所定の流量で溶射制御機106を介して溶射トーチ102に供給する。溶射機103による溶射がガス式溶射の場合、作動ガスは、酸素(O)及びアセチレンを含む混合ガスであってもよい。また、溶射機103による溶射が電気式溶射である場合、作動ガスは、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、窒素(N)、水素(H)などのガスであってもよい。ガス供給機108から供給される作動ガスの供給量は、集中制御盤101の制御部201によって直接制御されてもよい。
【0030】
冷却ガス供給機109は、制御部201の制御に基づいて、冷却用ガスを所定の流量で回転機113のワーク111に供給する。冷却用ガスは、窒素(N)ガスやアルゴン(Ar)ガスであってもよい。冷却ガス供給機109から供給される冷却用ガスは、ワーク111の表面に形成された溶射膜を冷却する。
【0031】
回転機113は、ワーク111を含む。回転機113は、制御部201の制御に基づいて、ワーク111を所定の速度で回転させる。また、回転機113は、制御部201の制御に基づいて、ワーク111を所定の角度に傾けて回転させることもできる。ワーク111の表面上には、溶射トーチ102から噴射された溶射材料により溶射膜が形成される。
【0032】
第1センサ115は、制御部201の制御に基づいて、ワーク111の表面温度を測定する。第1センサ115は、例えば、放射温度センサであってもよい。第1センサ115は、測定した基材の表面温度を制御部201に伝達する。制御部201は、第1センサ115から取得したワーク111の表面温度に基づいて、ワーク111の表面が所定の温度まで下がるよう、冷却ガス供給機109から冷却用ガスをワーク111の表面に供給されるよう制御する。
【0033】
第2センサ117は、制御部201の制御に基づいて、溶射ブース119内の温度及び湿度を測定する。第2センサ117は、温湿度センサであってもよい。第2センサ117は、測定した溶射ブース119内の温度及び湿度を制御部201に伝達する。制御部201は、第2センサ117から取得した溶射ブース119内の温度及び湿度に基づいて、溶射ブース119内を所定の温度及び湿度に保つために、温湿度調整機121を制御する。
【0034】
温湿度調整機121は、制御部201の制御に基づいて、溶射ブース119内の温度及び湿度を調節する。
【0035】
集塵機123は、制御部201の制御に基づいて、溶射ブース119内で発生した粉塵を回収する。集塵機123は、回収した粉塵を排気ダクト124を通して溶射ブース119外に排出する。粉塵は、例えば、成膜に寄与しなかった溶射材料である。また、粉塵は、溶射の際に溶融されて、その後の冷却により再凝固した溶射材料であってもよい。
【0036】
安全扉125は、作業員Wを溶射ブース119内外に出入り可能にする。安全扉125のインターロックは、制御部201によって制御される。
【0037】
集中制御盤101は、以上に説明した、溶射装置10の各構成を一括して制御する。図示はしていないが、溶射装置10は、溶射装置10の各構成に電源を供給する電源装置を含んでもよい。この場合、集中制御盤101は、電源装置の駆動を制御することができる。
【0038】
図示はしていないが、溶射装置10は、溶射ブース119内に空気を送風するコンプレッサを含んでもよい。コンプレッサは、溶射ブース119内で発生した粉塵が集塵機123によって効率的に回収されるよう、溶射ブース119内に送風する。この場合、集中制御盤101は、コンプレッサの駆動及びその送気量を制御することができる。
【0039】
また、図示はしていないが、溶射装置10は、溶射ブース119内の酸素濃度を検出する酸素濃度センサを含んでもよい。
【0040】
以上に説明したように、本実施形態では、集中制御盤101により、溶射装置10の各構成の動作を一括して制御する。これにより、溶射作業の煩雑さを低減し、作業の安全性を向上させることができる。また、基材上に成膜される溶射材料の皮膜の品質を安定化させ、製品の信頼性を向上させることができる。
【0041】
<溶射工程>
本実施形態に係る溶射装置10によって実行される溶射工程のフローを説明する。図3及び図4は、本実施形態に係る溶射装置10によって実行される溶射工程の一例を示すフロー図である。
【0042】
溶射作業に従事する作業員Wは、集中制御盤101の操作部205を介して溶射装置10による溶射工程の開始を指示する。溶射工程が開始されると、集中制御盤101の制御部201は、安全扉125をロックし(S301)、溶射工程中の溶射ブース119内に人が立ち入れないようにする。制御部201は、安全扉125がロックされているかを確認し(S302)、正常にロックされていない場合(S302;No)、S301の処理に戻る。
【0043】
安全扉125が正常にロックされている場合(S302;Yes)、制御部201は、移動機105の動作を確認する(S303)。移動機105の動作が正常でない場合、(S303;No)、作業員Wは、操作部205を介して移動機105の設定を確認して、所望の設定に変更する(S304)。
【0044】
移動機105の設定が正常である、つまり、移動機105の設定が所望の設定である場合(S303;Yes)、制御部201は、集塵機123を駆動させる。(S305)。その後、制御部201は、温湿度調整機121を駆動させる(S306)。制御部201は、第2センサ117によって測定された、溶射ブース119内の温度及び湿度に基づいて、温湿度調整機121によって溶射ブース119内を所定の温度、及び所定の湿度に維持する。
【0045】
続けて、制御部201は、溶射機103を駆動させる(S307)。この際、溶射制御機106を介してガス供給機108から作動ガスの供給も開始される。次に、制御部201は、回転機113を駆動させる(S308)。回転機113が駆動されると、ワーク111が所定速度で、又は所定の角度及び所定の速度で回転を開始する。
【0046】
尚、集塵機123の駆動(S305)から回転機113の駆動(S308)までの各処理は、実行される順番が入れ替わってもよく、同時に実行されてもよい。
【0047】
制御部201は、次に、冷却ガス供給機109からワーク111への冷却用ガスの供給を開始する(S309)。
【0048】
制御部201は、第1センサ115によって測定された、ワーク111の表面、即ち、溶射材料による皮膜形成面の温度を取得し、基材の表面が所定の温度以下であるか否か判定する(S310)。ワーク111の表面が所定の温度超の場合(S310;No)、制御部201は、ワーク111の表面が所定の温度以下になるまで、S310の処理を繰り返す。
【0049】
基材の表面が所定の温度以下の場合(S310;Yes)、制御部201は、溶射制御機106を介して原料フィーダ107から溶射トーチ102への溶射材料の供給を開始する(S311)。次に、移動機105によって溶射トーチ102を所定の位置まで移動させて、ワーク111の表面に溶射材料を噴射し、溶射を開始する(S312)。ここで、所定の位置とは、溶射トーチ102が回転機113のワーク111に近接する位置であり。また、制御部201は、移動機105によって溶射トーチ102をワーク111の表面に対して所定の角度に傾けてもよい。溶射によって、ワーク111の表面上に溶射材料の所定の膜厚の皮膜が形成される。
【0050】
基材表面上に所定の膜厚で皮膜が形成されると、制御部201は、移動機105によって溶射トーチ102を回転機113のワーク111から離れるように移動させて溶射を停止させる(S313)。
【0051】
制御部201は、溶射制御機106を介して原料フィーダ107から溶射トーチ102への溶射材料の供給を停止する(S314)。次に、制御部201は、溶射機103の駆動を停止させる(S315)。この際、溶射制御機106を介してガス供給機108からの作動ガスの供給も停止される。
【0052】
制御部201は、第1センサ115によって測定された、ワーク111の表面、即ち、溶射材料による皮膜表面の温度を取得し、皮膜表面が所定の温度以下であるか否か判定する(S316)。皮膜表面が所定の温度超の場合(S316;No)、制御部201は、皮膜表面が所定の温度以下になるまで、S316の処理を繰り返す。
【0053】
皮膜表面が所定の温度以下になると(S316;Yes)、制御部201は、冷却ガス供給機109から溶射機103への冷却用ガスの供給を停止する(S317)。
【0054】
その後、制御部201は、回転機113の駆動を停止させる(S318)。
【0055】
その後、制御部201は、温湿度調整機121の駆動を停止させ(S319)、集塵機123の駆動を停止させる(S320)。温湿度調整機121の駆動停止(S319)と集塵機123の駆動停止(S320)は、実行される順番が入れ替わってもよく、同時に実行されてもよい。
【0056】
最後に、制御部201は、安全扉125のロックを解除し(S321)、溶射装置10による溶射工程を終了する。
【0057】
以上に説明したように、溶射装置10によって実行される溶射工程は、集中制御盤101によって一括して制御される。これにより、溶射作業の煩雑さを低減し、作業の安全性を向上させることができる。また、基材上に成膜される溶射材料の皮膜の品質を安定化させ、製品の信頼性を向上させることができる。
【0058】
以上に説明した本開示の実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発
明の範囲に含まれる。
【0059】
また、上述した実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと理解される。
【符号の説明】
【0060】
10:溶射装置、101:集中制御盤、102:溶射トーチ、103:溶射機、105:移動機、107:原料フィーダ、108:ガス供給機、109:冷却ガス供給機、111:ワーク、113:回転機、115:第1センサ、117:第2センサ、119:溶射ブース、121:温湿度調整機、123:集塵機、125:安全扉、201:制御部、203:記憶部、205:操作部、207:通信部、209:表示部
図1
図2
図3
図4