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特開2023-131453観察システム及び観察システムのピント調節機構
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131453
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】観察システム及び観察システムのピント調節機構
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/04 20060101AFI20230914BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20230914BHJP
   G02B 21/36 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
G01N35/04 F
C12M1/34 D
G02B21/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036229
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】清川 達則
(72)【発明者】
【氏名】谷田 和貴
【テーマコード(参考)】
2G058
2H052
4B029
【Fターム(参考)】
2G058CC12
2G058CD12
2G058GA01
2H052AD06
2H052AF14
4B029AA07
4B029BB01
4B029FA15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明の課題は、観察対象物の観察において、観察対象物を観察可能な状態に調製する作業を迅速かつ容易とするとともに、観察作業効率及び観察精度の向上に係る操作を簡便かつ確実に行うことができる観察システム及び観察システムのピント調節機構を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、観察システムとしては、観察対象物の画像データを取得する撮像手段と、観察対象物を配置するシートと、シートに配置された複数の観察対象物を、撮像手段により連続的に観察する観察手段と、観察手段と連動し、撮像手段におけるピントを調節するピント調節機構とを備えるものを提供する。本発明によれば、シートに配置された観察対象物を撮像手段により連続的に観察するに当たり、観察手段側と連動したピント調節機構を設けることで、撮像手段側の受光部の位置調整によらず、ピント調節を行うことが可能となる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察対象物の画像データを取得する撮像手段と、
前記観察対象物を配置するシートと、
前記シートに配置された複数の観察対象物を、前記撮像手段により連続的に観察する観察手段と、
前記観察手段と連動し、前記撮像手段におけるピントを調節するピント調節機構と、を備えることを特徴とする、観察システム。
【請求項2】
前記ピント調節機構は、前記シートの張力を制御するシート張力制御手段を備えることを特徴とする、請求項1に記載の観察システム。
【請求項3】
前記ピント調節機構は、前記シートの位置を上下方向に調整するシート位置調整手段を備えることを特徴とする、請求項1に記載の観察システム。
【請求項4】
前記ピント調節機構は、前記観察対象物と前記撮像手段における受光部の距離を一定に保つ距離調整手段を備えることを特徴とする、請求項1に記載の観察システム。
【請求項5】
観察対象物の画像データを取得する撮像手段と、
前記観察対象物を配置するシートと、
前記シートに配置された複数の観察対象物を、前記撮像手段により連続的に観察する観察手段と、を備える観察システムのピント調節機構であって、
前記観察対象物と前記撮像手段における受光部の距離を一定に保つ距離調整手段を備えることを特徴とする、観察システムのピント調節機構。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察システム及び観察システムのピント調節機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報処理技術及び観察技術の向上により、大量のデータを取得、解析することが可能となっている。これに伴い、様々な観察対象物について観察データの取得、解析によるデータベース化を行い、データを有効活用することの重要性が高まっている。
【0003】
特に、顕微鏡観察による観察データの取得においては、観察対象物の形状に係る画像データの取得に加え、各種光学分析手段との組み合わせによる測定データ等を取得することも可能となっており、観察データとして活用可能な情報量は格段に増加している。
【0004】
各種観察データの取得及び解析に係る技術は向上している一方で、観察対象物を観察に適した状態とする試料(サンプル)調製については、手作業によるところが大きく、観察対象物の量が増加するとともに、観察対象物の試料化に係る人件費や時間の消費が多大となっている。観察データのデータベース化やデータの有効活用には、大量の観察対象物の観察に係る作業を迅速に行う必要があるため、観察対象物の試料調製に係る効率化が検討されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、観察対象物(生物学的標本)を自動処理する装置として、観察対象物が配置されたスライドを保持するスライドトレイ、スライドトレイの運搬装置、試薬供給する流体モジュール、自動カバーガラス装着処理装置を備えたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-92532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されるように、複数の観察対象物を迅速に観察するために、カバーガラス及びスライドガラスを用い、いわゆるプレパラートの作製を自動化することは知られている。
しかし、一般的にプレパラートの作製は、スライドガラスへの観察対象物の配置に始まり、試薬供給、カバーガラスの配置、顕微鏡ステージへの運搬など、試料調製の操作として煩雑な工程を必要とするものである。このため、特許文献1に記載されたプレパラート作製の自動化では、人件費の大幅な削減は可能となるが、プレパラートによる試料観察では、試料観察後、調製した試料を交換する必要があるなど、大量の試料調製や試料観察の効率化については課題が残るものとなる。
【0008】
また、近年の医療・生物学分野の技術の進展に伴い、観察対象物として細胞や微生物などを扱うことが増加している。このとき、死細胞や死滅した微生物ではなく、生細胞や生きた状態の微生物のような生体(以下、単に「生体」とも呼ぶ)を観察し、その観察データの取得が求められる傾向にある。
従来のプレパラートのような試料形態では、プレパラートを作製し、顕微鏡ステージに移動するまでの過程で、観察対象物の状態や位置が変わってしまうおそれがあることから、観察データを取得するまでの操作が更に煩雑になる上、正確な観察データの取得が困難であるという問題がある。また、生体を観察対象物とする場合においては、複数のウェル(穴)を有するマルチウェルプレートを用いた試料調製も知られているが、この場合、生体を固定することが難しく、観察が困難であるという課題がある。このため、従来の試料調製で用いられているプレパラートやマルチウェルプレートによらない、新たな観察技術が求められている。
【0009】
本発明者は、プレパラートやマルチウェルプレートによらない試料調製及び試料観察を可能とする観察システムとして、シート上に観察対象物を配置し、そのシートを移動させることで、試料調製及び試料観察を連続的に実施することを容易とし、大量の観察対象物の観察に係る作業効率をより一層高めることができる観察システムを既に見出している。
一方、この観察システムのように、シート上に配置した観察対象物に対する観察を行うに当たっては、装置稼働による発熱、空調のON/OFFや室温変化等、観察システム周辺の環境変動による影響を受け、撮像装置による観察時にピント位置のずれが生じることがある。一般に、撮像装置を用いた観察におけるピント調節としては、観察に用いる撮像装置側の受光部(レンズ)の位置操作によるものが知られているが、シート上に配置した観察対象物を連続的に観察する観察システムにおいては、受光部を手動で操作して適切なピント調節を行うことは困難であり、また、撮像装置に対し、いわゆるオートフォーカス機能を設けると、観察システム全体としての装置本体が大型化するという課題があり、観察作業効率及び観察精度の向上に係る操作であるピント調節に関し、より簡便な手段が求められている。
【0010】
本発明の課題は、観察対象物の観察において、観察対象物を観察可能な状態に調製する作業を迅速かつ容易とするとともに、観察作業効率及び観察精度の向上に係る操作を簡便かつ確実に行うことができる観察システム及び観察システムのピント調節機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、シート上に観察対象物を配置し、画像データを取得する撮像手段による連続的な観察を行うこと、及び、連続的な観察に係る手段と連動して撮像手段におけるピント調節を行うことにより、観察対象物の試料調製に係る作業を迅速かつ容易とするとともに、観察作業効率及び観察精度の向上に係る操作を簡便かつ確実に行うことが可能となることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の観察システム及び観察システムのピント調節機構である。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の観察システムは、観察対象物の画像データを取得する撮像手段と、観察対象物を配置するシートと、シートに配置された複数の観察対象物を、撮像手段により連続的に観察する観察手段と、観察手段と連動し、撮像手段におけるピントを調節するピント調節機構と、を備えるという特徴を有する。
本発明の観察システムは、シート上に観察対象物を配置した状態とし、その状態で観察を行うことで、カバーガラスとスライドガラスを用いたプレパラート作製によらない試料調製及び試料観察が可能となる。また、シートに配置された観察対象物を撮像手段により連続的に観察するに当たり、観察手段側と連動したピント調節機構を設けることで、撮像手段側の受光部の位置調整によらず、ピント調節を行うことが可能となる。これにより、観察対象物の観察において、観察対象物を観察可能な状態に調製する作業を迅速かつ容易とするとともに、観察対象物の連続観察における観察作業効率及び観察精度の向上に係る操作を簡便かつ確実に行うことが可能となる。
【0013】
また、本発明の観察システムの一実施態様としては、ピント調節機構は、シートの張力を制御するシート張力制御手段を備えるという特徴を有する。
シート上に配置された観察対象物の観察に当たり、観察システムの周辺環境の変化等により、シートに歪みや撓みが発生することがある。このシートの歪みや撓みが生じることで、撮像手段におけるピント位置にずれが生じてしまう。
一方、この特徴によれば、観察手段と連動して観察対象物を配置するシートの張力を制御することで、観察時におけるシートの歪みや撓みを直してシートの平滑化を行うことができ、ピント位置ずれを修正することができる。これにより、撮像手段の受光部を操作することなく、観察におけるピント調節を行うことが可能となる。
【0014】
また、本発明の観察システムの一実施態様としては、ピント調節機構は、シートの位置を上下方向に調整するシート位置調整手段を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、観察手段と連動して観察対象物を配置するシートの位置を上下方向に調整することで、シートの平滑化とともに、観察時におけるピント位置ずれを修正することができる。これにより、撮像手段の受光部を操作することなく、観察におけるピント調節を行うことが可能となる。
【0015】
また、本発明の観察システムの一実施態様としては、ピント調節機構は、観察対象物と撮像手段における受光部の距離を一定に保つ距離調整手段を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、観察手段と連動して観察対象物と撮像手段における受光部の距離を一定に保つことで、そもそもピント位置のずれを生じさせないように連続観察を行うことが可能となる。これにより、撮像手段の受光部を操作することなく、観察におけるピント調節を行うことが可能となる。
【0016】
また、上記課題を解決するための本発明の観察システムのピント調節機構としては、観察対象物の画像データを取得する撮像手段と、観察対象物を配置するシートと、シートに配置された複数の観察対象物を、撮像手段により連続的に観察する観察手段と、を備える観察システムのピント調節機構であって、観察対象物と撮像手段における受光部の距離を一定に保つ距離調整手段を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、シートに配置された観察対象物を撮像手段により連続的に観察する観察システムに対し、観察手段と連動して観察対象物と撮像手段における受光部の距離を一定に保つことで、そもそもピント位置ずれを生じさせないように連続観察を行うことが可能となる。これにより、観察対象物の観察において、観察対象物を観察可能な状態に調製する作業を迅速かつ容易とするとともに、撮像手段側の受光部の位置調整によらず、ピント調節を行うことが可能となり、観察対象物の連続観察における観察作業効率及び観察精度の向上に係る操作を簡便かつ確実に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、観察対象物の観察において、観察対象物を観察可能な状態に調製する作業を迅速かつ容易とするとともに、観察作業効率及び観察精度の向上に係る操作を簡便かつ確実に行うことができる観察システム及び観察システムのピント調節機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施態様における観察システムの概略説明図である。
図2】本発明の第1の実施態様における観察システムの別態様を示す概略説明図である。
図3】本発明の第2の実施態様における観察システムの概略説明図である。
図4】本発明の第3の実施態様における観察システムの概略説明図である。
図5】本発明の第3の実施態様における観察システムの別態様を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る観察システム及び観察システムのピント調節機構の実施態様を詳細に説明する。
なお、実施態様に記載する観察システム及び観察システムのピント調節機構については、本発明に係る観察システム及び観察システムのピント調節機構を説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。
【0020】
本発明の観察システムにおいて、観察対象である観察対象物は特に限定されず、様々な分野で観察による観察データの蓄積、解析が必要とされているものを観察対象物とすることができる。また、観察対象物の形態は、シート上に配置できるものであればよく、液体あるいは固体、または観察対象物を含む溶液の形態であってもよい。
近年の医療・生物学の進展により、細胞や微生物などに係る観察データの蓄積、解析の重要性が増してきている。したがって、本発明の観察対象物としては、細胞や微生物など、医療・生物学的に観察データの収集が重要視されているものが挙げられる。特に、生細胞や生きた状態の微生物などの生体のように、従来のプレパラートによる試料調製では観察が困難であったものを観察対象物とすることが好ましい。また、本発明の観察対象物の他の例としては、金属や岩石等の粉体や固体薄片のほか、有機物・無機物の微粒子などが挙げられる。
なお、以下の実施態様においては、観察対象物として、生体を含む水溶液を用いるものについて主に説明するが、これに限定されるものではない。
【0021】
〔第1の実施態様〕
(観察システム)
図1は、本発明の第1の実施態様における観察システムの構造を示す概略説明図である。
本実施態様における観察システム1Aは、図1に示すように、第1のシート2aと、観察対象物Sを配置する配置手段3と、観察対象物Sの画像データを取得する撮像手段4と、複数の観察対象物Sを連続的に観察する観察手段5と、撮像手段4におけるピントを調節するピント調節機構6と、を備えるものである。なお、図1中、一点鎖線の矢印は、データの入出力及び制御が可能となるように接続されていることを示すものである。
【0022】
本実施態様における観察システム1Aは、配置手段3により、第1のシート2a上に観察対象物Sを配置した後、この状態で撮像手段4による画像データ取得を行うことで、観察対象物の観察を行うものである。すなわち、本実施態様における観察システム1Aは、従来のカバーガラスとスライドガラスからなるプレパラートに代えて、観察対象物Sを配置した第1のシート2aを試料とし、観察を行うものである。また、観察対象物を連続的に観察するために、第1のシート2aを移動させるシート移動機構50を含む観察手段5を設けることで、試料調製から試料観察までを一連の動作として行うことが可能となる。これにより、プレパラートを用いた従来の観察における試料の調製及び交換という作業が簡略化され、観察に係る作業効率を向上させることが可能となる。
【0023】
以下、観察システム1Aの各構成について、詳細に説明する。
【0024】
(第1のシート)
第1のシート2aは、観察対象物Sが配置され、観察対象物Sを支持するためのものである。
【0025】
第1のシート2aとしては、観察対象物Sを配置することができ、かつ撮像手段4による画像データ取得(観察)が可能なものであればよく、材質や形状については特に限定されない。
第1のシート2aの形状としては、後述する撮像手段4による観察視野が十分確保できる幅を有するものであればよい。また、第1のシート2aの形状としては、例えば、ロール状のフィルムとすることが挙げられる。これにより、後述する観察手段5(シート移動機構50)によるシートの移動を容易とすることができる。
【0026】
本実施態様における第1のシート2aの材質の例としては、光透過性を有し、水に対して不溶かつ水を透過しない材質であるものが挙げられる。また、有機溶媒に対する耐性があることがより好ましい。このような材質としては、樹脂フィルムやガラス製のフィルムなどが挙げられる。例えば、樹脂フィルムとして、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなど、市場における供給量が多く、安価な樹脂フィルムを用いることで、観察に係るランニングコストを低減することができる。なお、ポリエチレンフィルムは、テラヘルツ波の透過性が高いことが知られており、撮像手段4として電子線を用いる画像データ取得を行う際に、特に好適に用いることができる。
また、第1のシート2aとしては、光透過性に加え、自家蛍光や吸光が少ない材質であることがより好ましい。これにより、撮像手段4における画像データ取得に対する影響を抑制することができる。このような材質としては、例えば、シクロオレフィンフィルムなど、光の吸収が少ない樹脂フィルムや、ガラス製のフィルムを用いることが挙げられる。特に、ガラス製のフィルムは、光学観察に係るプレパラートの代替として好適に用いられる。なお、第1のシート2aにおける自家蛍光や吸光については、撮像手段4における画像データ取得時にバックグラウンドとして補正することで対応するものとしてもよい。
さらに、第1のシート2aとしては、各種滅菌処理(電子線滅菌、紫外線滅菌、加熱滅菌等)に対して耐性があるものが好ましい。これにより、観察対象物Sとして生体を用いる際、観察対象以外の菌や微生物の混入を抑制することが可能となる。また、観察対象物Sとして生体を用いる場合、第1のシート2aとしては酸素の透過/非透過性を選択あるいは付与するものとしてもよい。例えば、生体が嫌気性である場合、第1のシート2aとしては酸素の非透過性を有する材質を選択することが好ましい。一方、生体が好気性である場合、第1のシート2aとしては、酸素の透過性を有する材質を選択することが好ましい。これにより、観察作業時において、生体に対する酸素の影響を制御することが可能となる。
【0027】
また、第1のシート2aは、表面処理を行うものとしてもよい。表面処理の種類としては特に限定されない。
例えば、表面処理の一例としては、親水処理や撥水処理など、水に対する表面特性に係る処理を行うことが挙げられる。なお、水に対する表面特性とは、親水性/疎水性に係るもののほか、ぬれ特性、水の接触角に関するものを含んでいる。
このとき、親水処理や撥水処理をシート全体に行うものとしてもよいが、親水処理や撥水処理を行う箇所について一定のパターンを持たせるものが挙げられる。例えば、正方形、長方形、円形あるいは楕円状のパターンが一定間隔で並ぶように親水処理を行い、後述する配置手段3により、親水処理を行った箇所に対して水溶液からなる観察対象物Sを配置する。これにより、表面処理を行った箇所に観察対象物Sを安定して配置することが可能となる。
【0028】
また、表面処理の別の例としては、観察対象物Sを固定化するための物質を塗布することが挙げられる。例えば、観察対象物Sが生体である場合、第1のシート2aに塗布する物質としては、生体に対する抗体や、生体と結合するタンパク質、ペプチド、酵素、核酸、塩基、糖鎖、リン脂質、糖脂質などが挙げられる。これにより、表面処理を行った箇所に観察対象物Sを安定して配置することが可能となる。
さらに、表面処理の別の例としては、観察対象物Sを観察するための試薬を塗布することが挙げられる。このような試薬としては、例えば、染色試薬、蛍光試薬、各種プローブなどが挙げられる。これにより、表面処理を行った箇所における観察対象物Sについて、撮像手段4による観察が容易となり、観察に係る作業効率を向上させることが可能となる。
【0029】
また、第1のシート2aには、観察時における識別を容易にするための各種識別用情報を組み込むものとしてもよい。このような識別用情報としては、グリッドやスケールバー等、サイズに係る識別用情報や、所定間隔ごとに設けたマーカー、コード(ナンバリング、文字コード、バーコード等)などのガイド等、位置情報に係る識別用情報などが挙げられる。また、識別用情報を組み込む手段としては、第1のシート2aに識別用情報をあらかじめ印刷することや、手動により書き入れることなどが挙げられる。
【0030】
(配置手段)
配置手段3は、第1のシート2a上に観察対象物Sを配置するためのものである。
本実施態様の配置手段3は、観察対象物Sを配置することができるものであればよく、特に限定されない。なお、配置手段3は、観察対象物Sの形態(液体あるいは固体)に合わせたものを選択することが好ましい。
【0031】
配置手段3の具体的な例としては、図1に示すように、分注部30と、分注部30に観察対象物Sを供給する供給部31と、分注部30の角度や位置を制御する制御機構32とを備えるものが挙げられる。
【0032】
分注部30は、観察対象物Sが液体である場合に用いるものであり、観察対象物Sを第1のシート2a上に滴下、排出するものである。
分注部30としては、液体の滴下、排出に適した構造を有するものであればよく、チップやシリンジなどが挙げられる。また、分注部30の材質は特に限定されず、観察対象物Sの性質等に応じて選択することができる。分注部30の材質としては、例えば、プラスチック、金属、ガラスなどが挙げられる。
【0033】
分注部30は、交換可能な構造であることが好ましい。これにより、観察対象物Sの種類や、観察に係る条件変更等に応じて分注部30を交換することができ、観察における他の観察対象物Sの混入などのコンタミネーションを抑制することが可能となる。また、コンタミネーションの抑制という観点からは、分注部30を洗浄可能とし、観察対象物Sの種類が変わるごとに洗浄することが挙げられる。
ここで、観察の作業効率を向上させるという観点からは、分注部30を交換可能とすることが好ましく、この際、分注部30として安価なプラスチック製のチップを用い、使い捨ての形で交換することが挙げられる。これにより、チップの交換のみという短時間の作業で次の観察対象物Sの配置を行うことが可能となるため、略連続した状態で観察を行うことが可能となる。一方、分注部30として金属やガラス製のチップあるいはシリンジを用いる場合、分注部30を洗浄する手段を設けることが好ましい。これにより、分注部30を繰り返し使用可能とすることができ、分注部30の交換にかかるコストを削減することができる。
【0034】
供給部31は、分注部30に観察対象物Sを供給するものである。
供給部31としては、分注部30に対して観察対象物Sを供給することができるものであればよく、具体的な構造については特に限定されない。
本実施態様における供給部31としては、例えば、図1に示すように、観察対象物Sを貯留する貯留部31aと、分注部30に観察対象物Sを供給するための供給ライン31b及びポンプ31cを備えるものが挙げられる。
【0035】
供給部31における貯留部31aは、観察対象物S(液体)を貯留することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、水槽、フラスコ、ビーカー、チューブなどが挙げられる。なお、観察対象物Sを含む溶液を貯留する場合、貯留部31aに撹拌機構を設けるものとしてもよい。これにより、溶液中における観察対象物Sの分散性を高め、観察対象物Sを含まない溶液のみが分注部30に供給されることを抑制することができる。
【0036】
供給ライン31b及びポンプ31cは、観察対象物S(液体)を移送することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、供給ライン31bとしては、樹脂や金属からなるチューブを用いることが挙げられる。また、ポンプ31cとしては、各種定量ポンプや、流量調節弁を設けたポンプなど、所定の容量を正確に供給することができるポンプを用いることが挙げられる。これにより、観察対象物Sの配置における条件設定が容易となるため、観察に係る作業効率を向上させることが可能となる。
【0037】
制御機構32は、分注部30の角度や位置を制御するためのものである。
制御機構32としては、分注部30に接続させた支持体と、支持体をXYZ軸及び回転軸に沿って駆動する駆動機構を備えるものが挙げられる。なお、駆動機構は手動で操作するものとしてもよく、数値入力による制御やプログラム等による自動制御を行う制御部を設けるものとしてもよい。これにより、第1のシート2aに対する分注部30の角度や位置を調整し、第1のシート2a上の任意の位置に観察対象物Sを配置することが可能となる。
【0038】
制御機構32による分注部30の位置制御に係る一例としては、分注部30の洗浄中及び洗浄直後、観察対象物Sの種類変更直後など、観察作業を一旦停止して再開する際において、分注部30を第1のシート2aから外れた位置に移動させ、分注部30内の液体を廃液として一定量を排出した後、分注部30を第1のシート2a上に移動させ、観察対象物Sの配置を行うこと等が挙げられる。これにより、観察に適さない廃液が第1のシート2a上に配置されることを防ぎ、観察に係る作業効率を向上させることが可能となる。
【0039】
配置手段3は、図1に示した構成に限定されるものではない。例えば、配置手段3を複数設けるものとしてもよい。配置手段3を複数設けた場合、配置手段3により第1のシート2a上に配置されるものは観察対象物Sだけではなく、観察対象物Sの観察に必要な試薬を配置するものとしてもよい。
例えば、観察対象物Sが生体を含む溶液である場合、生体の観察に広く用いられている染色試薬を配置手段3により配置することが挙げられる。また、配置手段3により観察対象物S以外に配置するものとしては、観察対象物Sの観察に必要な試薬(染色試薬)に限定されるものではなく、観察対象物Sに対する環境変化の影響を観察するための化学物質(試薬)などが挙げられる。例えば、観察対象物Sが生体を含む溶液である場合、塩濃度やpHの高い溶液を配置手段3により配置し、観察対象物Sと混合させることで、生体に対する塩濃度やpHの影響についての観察を行うものとすることができる。これにより、観察対象物Sに対する環境変化に伴う観察データについて、迅速かつ容易に取得することが可能となる。
【0040】
配置手段3の他の例としては、分注部30及び供給部31として、ピペットなどの分注器具を用い、手動により観察対象物Sの配置を行うものとしてもよい。特に、第1のシート2aの材質や表面処理条件の選択等、観察条件の設定を検討する場合のように、観察対象物Sの配置数が少ないときには有用な手段となる。また、配置手段3として、観察対象物Sの吸い上げから排出までの工程が自動化されたピペットもしくはシリンジポンプを用いるものとしてもよい。これにより、配置工程の自動化が容易となるため、観察に係る作業効率を向上させることが可能となる。また、制御機構32による位置制御を行うことで、観察対象物Sとして吸い上げる対象を切り替え、複数の観察対象物Sを自動かつ連続的に切り替えることが可能となる。
【0041】
また、配置手段3の他の例としては、分注部30の代わりに、ピンセットなどのピックアップ装置を備える分配部を設けることが挙げられる。これにより、観察対象物Sとして固体薄片を第1のシート2a上に配置することが可能となる。なお、分配部におけるピックアップ装置としては、観察対象物Sである固体薄片を掴んで持ち運ぶことができる構造であればよく、一般的なピンセットのように、固体薄片を挟み込む構造を有するものや、吸着ピンセットのように吸引構造を有するもの等が挙げられる。
【0042】
(撮像手段)
撮像手段4は、第1のシート2a上に配置された観察対象物Sの画像データを取得するためのものである。
撮像手段4としては、観察対象物Sの観察データとして、画像データを取得することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、観察対象物Sの形状に係る情報を得るための画像取得を行うものや、観察対象物Sと試薬の反応等に基づく光学的変化(色の変化や蛍光の有無等)や温度変化に係る情報を得るための画像取得を行うものが挙げられる。
本実施態様における撮像手段4としては、顕微鏡の構成を利用することが挙げられる。特に光学顕微鏡の構成を利用することが好ましい。これにより、観察対象物Sを拡大した画像を取得することができるため、取得した画像データを基に観察対象物Sの詳細な観察が可能となる。
【0043】
撮像手段4としては、光学顕微鏡による観察において一般的に用いられる対物レンズ40、反射鏡(光源)を備え、接眼レンズの代わりに画像取得装置41(CCDカメラ、CMOSカメラ等)を設けることで画像データの自動収集を可能とするものが挙げられる。これにより、画像データの取得、解析に係る作業効率を向上させることが可能となる。なお、図1には、撮像手段4の主な構成として対物レンズ40及び画像取得装置41を図示しており、他の構成については省略している。
本実施態様における観察システム1Aにおいては、図1に示すように、対物レンズ40の下方に、観察手段5におけるシート移動機構50により保持された第1のシート2aを設置し、第1のシート2a上に配置された観察対象物Sの観察を行うため、一般的な光学顕微鏡におけるステージを設けることは必須ではない。
なお、図1においては、対物レンズ40が観察対象物Sの上方にある正立顕微鏡の構造を示しているが、これに限定されるものではなく、対物レンズ40が観察対象物Sの下方にある倒立顕微鏡の構造を利用するものとしてもよい。また、対物レンズ40を複数設け、複数方向から観察対象物Sの観察を行うものとしてもよい。
【0044】
対物レンズ40を介して得られた画像データは、必要に応じ整理、解析を行うことが好ましい。例えば、図1に示すように、画像取得装置41と接続され、得られた画像データの蓄積や解析を行うデータ演算部42を備えることが挙げられる。
このデータ演算部42は、データ記憶部やデータ解析部を設け、画像取得装置41からの画像データを入力することで必要な演算処理を行うCPU等のプロセッサを備える演算装置からなることが挙げられる。これにより、観察対象物Sに関する画像データに基づく観察データのデータベース化やデータの有効活用が可能となる。また、データ演算部42は、取得した画像データから適切なピント位置の検出を行うための演算処理を行う。これにより、後述するピント調節機構6により、迅速かつ的確なピント調節を行うことが容易となる。
【0045】
(観察手段)
観察手段5は、第1のシート2a上に配置された複数の観察対象物Sを、撮像手段4により連続的に観察するためのものである。より具体的には、観察手段5は、第1のシート2a上に配置された複数の観察対象物Sを、撮像手段4による画像データ取得が可能な位置に順次移送するためのものである。
観察手段5によって、従来のカバーガラスとスライドガラスからなるプレパラートに代えて、複数の観察対象物Sを配置した第1のシート2aを試料とし、試料調製から試料観察までを一連の動作として行うことが可能となる。これにより、プレパラートを用いた従来の観察における試料の調製及び交換という作業が簡略化され、複数の観察対象物Sを対象とした観察に係る作業効率を向上させることが可能となる。
【0046】
本実施態様における観察手段5としては、第1のシート2aを支持して移動させるシート移動機構50を備えることが挙げられる。
図1に示すように、シート移動機構50としては、第1のシート2aを巻き出して供給する巻出部51としての巻出ロール51aと、第1のシート2aを巻き取って回収する巻取部52としての巻取ロール52aを備えており、巻取部52(巻取ロール52a)を回転駆動させるための駆動部(不図示)が設けられているものが挙げられる。
【0047】
シート移動機構50は、シートの移動速度を調整する速度調整機能53を有することが好ましい。速度調整機能53としては、例えば、巻取部52の回転駆動に係る駆動部に対し、回転数の記録もしくは巻径の計測が可能であり、かつ回転数の制御が可能な回転駆動制御部53aを設けることが挙げられる。これにより、シートの巻き取り(回収)速度の調整が可能となり、シートの移動速度を調整することが可能となる。
【0048】
本実施態様におけるシート移動機構50は、シートの移動速度を調整する速度調整機能53と併せ、シートの移動と停止を制御する機能を有するものとしてもよい。例えば、巻取部52の回転駆動に係る駆動部に対し、第1のシート2aを一定距離あるいは一定時間移動させた後、一定時間停止させる制御を行うことが挙げられる。ここで、この制御は、回転駆動制御部53aによって行うものとしてもよく、別途制御部を設けるものとしてもよい。これにより、撮像手段4によって観察対象物Sの画像データ取得(観察)を行う際、観察対象物Sを断続的に移動させ、かつ観察対象物Sが静止状態にある中での観察を行うことができ、観察の精度を高めることが可能となる。
また、シート移動機構50におけるシート移動に係る制御の他の例としては、例えば、観察対象物Sの観察用の動作モードとしてシートの移動と停止を繰り返す動作や、観察対象物Sの配置用の動作モードとして一定速度でシートを移動する動作等のように、異なる動作モードを切り替えるようにすること等が挙げられる。これにより、撮像手段4における画像データ取得条件をより自由に設定できるとともに、観察対象物Sの配置をより正確に行うことができるようになる。
【0049】
(ピント調節機構)
ピント調節機構6は、観察手段5と連動し、撮像手段4におけるピントを調節するためのものである。
本実施態様におけるピント調節機構6としては、例えば、図1に示すように、第1のシート2aの張力制御のための張力制御手段61を設け、観察手段5と連動した第1のシート2aの張力制御を行うことにより、撮像手段4におけるピント位置を調節するものが挙げられる。
【0050】
第1のシート2a上に配置された観察対象物Sの観察に当たり、観察システム1Aの周辺環境の変化等により、第1のシート2aに歪みや撓みが発生することがある。この第1のシート2aの歪みや撓みが生じることで、撮像手段4におけるピント位置にずれが生じてしまう。
そこで、ピント調節機構6として張力制御手段61を設け、観察手段5と連動して第1のシート2aの張力制御を行うことで、観察時における第1のシート2aの歪みや撓みを直して第1のシート2aを平滑化させることができ、撮像手段4におけるピント位置のずれを修正することができる。これにより、撮像手段4を構成する受光部の位置調整等を行うことなく、画像データ取得(観察)におけるピント調節を行うことが可能となる。また、撮像手段4において受光部等の位置調整を伴うオートフォーカス機能を備えることに比べ、観察システム1A全体としての省スペース化が可能となる。
【0051】
本実施態様における張力制御手段61は、第1のシート2aの張力を適切に制御することができる機能を有するものであればよい。例えば、図1に示すように、撮像手段4におけるデータ演算部42からピント位置に係る情報を取得し、このピント位置に係る情報に基づき、巻取部52(巻取ロール52a)の回転駆動に係る駆動部に対する回転数の制御が可能な回転駆動制御部61aを設けることが挙げられる。これにより、観察対象物Sの画像データ取得に際し、撮像手段4において適切なピント位置を維持することができるよう、巻取部52の回転数を制御し、第1のシート2aの張力制御を行うことができる。
なお、図1では、巻取部52の回転駆動に係る駆動部に対し、回転駆動制御部53a及び回転駆動制御部61aを別体として設けるものを示しているが、一体化して設けるものとしてもよい。これにより、観察システム1Aとしての省スペース化が可能となる。
【0052】
張力制御手段61の他の例としては、巻出部51における回転駆動に係る駆動部や、巻出部51と分注部30の間にシート送り部としての回転駆動部を設置し、これらの駆動部に対して回転数の制御が可能な制御部を設け、データ演算部42から取得したピント位置に係る情報に基づき、回転数の制御を行うことなどが挙げられる。これにより、より高精密に張力制御を行うことができる。
また、張力制御手段61の他の例としては、第1のシート2aに対し、所定の張力を付与することができる張力制御機構を設けるものが挙げられる。このような張力制御機構としては、例えば、弾性体を用い、第1のシート2aに対して直接的あるいは間接的に負荷を与えるように配置することが挙げられる。このとき、用いる弾性体の種類や性能を適宜選択し、第1のシート2aに付与される負荷を調整することで、第1のシート2aの張力制御を行い、適切なピント位置を維持することができる。張力制御手段61として弾性体を用いた場合、回転駆動制御部61aの制御によらず、簡便かつ安価な手段により第1のシート2aに対して適切な張力制御を行うことが可能となる。
【0053】
張力制御手段61は、第1のシート2aにおける張力を把握した上で張力制御を行うものとしてもよい。例えば、巻出部51と巻取部52の中間に張力検知部を設けるものとしてもよい。これにより、第1のシート2aの張力制御をより精密に行うことができ、第1のシート2aの歪みや撓み等を低減し、ピント位置の維持及び観察の精度を高めることが可能となる。
【0054】
(観察システムの別態様)
本実施態様における観察システム1Aとしては、観察対象物Sを配置するシートとして第1のシート2aのみを備えるものに限定されない。
図2は、本発明の第1の実施態様における観察システムの別態様を示す概略説明図である。
本実施態様の観察システム1Aの別態様である観察システム1A′は、第1のシート2aと重ね合わせられる第2のシート2bを備えるものであり、撮像手段4は第1のシート2aと第2のシート2b間に固定された状態の観察対象物Sを観察するものである。なお、上述した図1に基づく観察システム1Aの構成と同じものについては説明を省略するとともに、図2において配置手段3の一部及び後述する制御手段Cについては図示を省略している。
【0055】
本実施態様における観察システム1A′は、配置手段3により、第1のシート2a上に観察対象物Sを配置した後、その上部から第2のシート2bを重ね合わせることで、第1のシート2aと第2のシート2bの間に観察対象物Sを固定し、この状態で撮像手段4による画像データ取得(観察)を行うものである。すなわち、従来のカバーガラスとスライドガラスからなるプレパラートに代えて、本実施態様における第1のシート2a及び第2のシート2bを重ね合わせたものを試料とし、観察を行うものである。また、観察手段5(シート移動機構50)によって第1のシート2a及び第2のシート2bを移動させることで、試料調製から試料観察までを一連の動作として行うことが可能となる。これにより、プレパラートを用いた従来の観察における試料の調製及び交換という作業が簡略化され、観察に係る作業効率を向上させることが可能となる。
【0056】
本実施態様の観察システム1A′における第2のシート2bは、観察対象物Sが配置された第1のシート2aと重ね合わせられるものであり、これにより、観察対象物Sを固定するものである。
【0057】
第2のシート2bは、第1のシート2aと同様の材質や形状を用いることができるものであり、詳細については特に限定されない。
【0058】
第1のシート2a及び第2のシート2bは、それぞれ同じ材質を用いるものとしてもよく、異なる材質を用いるものとしてもよい。また、第1のシート2a及び第2のシート2bは、それぞれのシートの厚みを同一としてもよく、異なるものとしてもよい。
【0059】
また、第1のシート2a及び第2のシート2bにおいて、表面処理を行う場合、第1のシート2a及び第2のシート2bのいずれか一方もしくは一部のシートについて、水に対する表面特性が異なるものとすることが好ましい。これにより、観察対象物Sを含む水溶液を第1のシート2a上に配置した後、第2のシート2bを重ね合わせた際、水溶液がシート間において適度に広がり、シート間の間隔を一定に保つことが容易となる。このため、観察対象物Sを安定して固定することが可能となるとともに、撮像手段4による画像データ取得に係る作業効率を向上させることが可能となる。
【0060】
本実施態様の観察システム1A′において、観察対象物Sが生体を含む溶液である場合、配置手段3を複数設け、生体の観察に広く用いられている染色試薬を配置手段3により配置することが好ましい。また、このとき、第1のシート2a上に配置された観察対象物Sに対し、直接染色試薬を供給するのではなく、第1のシート2aと第2のシート2bが重なることで、観察対象物Sと染色試薬が混合されるようにすることが好ましい。これにより、分注部30におけるコンタミネーションを抑制することが可能となる。例えば、第1のシート2a上に観察対象物Sと染色試薬を互いが接触しない程度に隣接して配置することや、観察対象物Sを配置する分注部30の角度と、染色試薬を配置する分注部30の角度を異なるものとし、第1のシート2a上と第2のシート2b上にそれぞれ観察対象物Sと染色試薬を配置することなどが挙げられる。
【0061】
配置手段3により、第1のシート2a上に観察対象物Sを配置した後、その上部から第2のシート2bを重ね合わせることで、第1のシート2aと第2のシート2bの間に観察対象物Sを固定することができる。なお、第1のシート2a及び第2のシート2bを重ね合わせる手段については特に限定されない。例えば、シート移動機構50を用い、第1のシート2a及び第2のシート2bを重ね合わせること等が挙げられる。これにより、試料調製に係る作業を自動化することが容易となる。
【0062】
本実施態様の観察システム1A′における撮像手段4は、第1のシート2a及び第2のシート2bの間に固定された観察対象物Sに係る画像データ取得を行うためのものであり、観察システム1Aにおいて説明したものと同様のものを用いることができる。
本実施態様における観察システム1A′においては、図2に示すように、対物レンズ40の下方に、シート移動機構50により保持された2枚のシート(第1のシート2a及び第2のシート2b)を設置し、2枚のシート間に固定された観察対象物Sの観察を行うため、観察システム1Aと同様に、一般的な光学顕微鏡におけるステージを設けることは必須ではない。
【0063】
本実施態様の観察システム1A′における観察手段5(シート移動機構50)は、第1のシート2a及び第2のシート2bを支持して移動させるためのものである。
シート移動機構50としては、図2に示すように、巻出部51及び巻取部52として、第1のシート2aを巻き出して供給する巻出ロール51aと、第1のシート2aを巻き取って回収する巻取ロール52aに加え、第2のシート2bを巻き出して供給する巻出ロール51bと、第2のシート2bを巻き取って回収する巻取ロール52bを備えており、巻取部52(巻取ロール52a、52b)を回転駆動させるための駆動部が設けられている(不図示)。なお、図2には、巻取部52として巻取ロール52a、52bを設けるものが記載されているが、これに限定されない。例えば、巻出部51(巻出ロール51a、51b)から巻き出された第1のシート2a及び第2のシート2bを、一つの巻取ロールで巻き取って回収するものとしてもよい。これにより、装置の構造を簡略化することが可能となる。
【0064】
観察手段5(シート移動機構50)としては、第1のシート2aと第2のシート2bを重ね合わせるための支持機構54として、上下移動が可能な複数の支持ローラ54aを設けることが好ましい。これにより、第1のシート2a及び第2のシート2bの移動を安定して行うことができる。また、支持機構54を設けることで、第1のシート2aと第2のシート2bの重ね合わせに係る位置調整の精度を高め、2枚のシート間距離の調整を容易に行うことが可能となる。なお、図2においては、支持機構54を第2のシート2b側に設けるものを示しているが、これに限定されるものではなく、第1のシート2a側に設けるものとしてもよく、第1のシート2a側及び第2のシート2b側の両方に設けるものとしてもよい。また、支持機構54を設ける箇所や個数についても特に限定されない。例えば、図2に示すように、撮像手段4における対物レンズ40に対し、シートの移動方向における上流側と下流側の両側、かつシート上方側(第2のシート2bの上方側)に支持機構54を設けるものとし、シートの安定した支持を可能とするものが挙げられるとしてもよい。他の例としては、支持機構54を、シート下方側(第1のシート2aの下方側)や、各シートにおいて観察対象物Sを配置する側に設けること等が挙げられる。また、支持機構54を設ける数を減らし、構造を簡略化するものとしてもよい。
【0065】
本実施態様の観察システム1A′におけるピント調節機構6である張力制御手段61は、第1のシート2a及び第2のシート2bのいずれか一方あるいは両方の張力を適切に制御することができる機能を有するものである。例えば、図2に示すように、撮像手段4におけるデータ演算部42からピント位置に係る情報を取得し、このピント位置に係る情報に基づき、巻取部52(巻取ロール52a、52b)の回転駆動に係る駆動部に対する回転数の制御が可能な回転駆動制御部61bを設けることが挙げられる。これにより、観察対象物Sの画像データ取得に際し、撮像手段4において適切なピント位置を維持することができるよう、巻取部52(巻取ロール52a、52b)の回転数を制御し、第1のシート2a及び/又は第2のシート2bの張力制御を行うことができる。
また、本実施態様における観察システム1A′は、観察対象物Sを第1のシート2a及び第2のシート2bの間に固定するものであるため、シートごとに独立した張力制御を行うよりも、2つのシート間で連動した張力制御を行うことが好ましい。このため、より高精密な張力制御を行うために、図2に示すように、巻出部51(巻出ロール51a、51b)にも回転駆動に係る駆動部を設け、回転駆動制御部61bがこれらの駆動部に対しても回転数の制御を可能とするように接続することが好ましい。これにより、ピント調節の精度を高めることが可能となる。
【0066】
本実施態様における観察システム1A及び観察システム1A′は、シート上に観察対象物Sを配置した状態とし、その状態で観察を行うことで、カバーガラスとスライドガラスを用いたプレパラート作製によらない試料調製及び試料観察が可能となる。また、シートに配置された観察対象物を撮像手段により連続的に観察するに当たり、観察手段側と連動したピント調節機構を設けることで、撮像手段側の受光部の位置調整によらず、ピント調節を行うことが可能となる。
これにより、観察対象物の観察において、観察対象物を観察可能な状態に調製する作業を迅速かつ容易とするとともに、観察対象物の連続観察における観察作業効率及び観察精度の向上に係る操作を簡便かつ確実に行うことが可能となる。
【0067】
なお、本実施態様における観察システム1A及び観察システム1A′には、観察対象物Sの画像データ取得を行う撮像手段4と併せて、観察に係る作業効率及び観察精度を向上させるための各種手段及び機構を設けるものとしてもよい。
例えば、観察対象物Sの観察データ取得手段の一つとして、観察対象物Sに対する各種分析に基づく情報を得るための光学分析手段、放射線分析手段、磁場分析手段、電子線回折手段などを更に設けることが挙げられる。
【0068】
また、本実施態様における観察システム1A及び観察システム1A′には、配置手段3、撮像手段4、観察手段5(シート移動機構50)及びピント調節機構6における各種動作の調整を行う制御手段Cを設けることが好ましい。より具体的には、図1に示すように、配置手段3、撮像手段4、観察手段5(シート移動機構50)及びピント調節機構6に接続され、データの入出力及び制御を可能とする制御部C1を設けることが挙げられる。制御部C1は、各種手段ごとに設けるものとしてよいが、図1に示すように、1つの制御部C1に複数の手段を接続し、総合的に制御可能とすることが好ましい。これにより、各種動作の調整及び調整に係る操作を簡便かつ効率的に行うことが可能となる。
ここで、制御部C1における制御対象となる動作の一例としては、撮像手段4の操作に係る動作、撮像手段4による画像データの取得及び保存に係る動作、撮像手段4における画像データの解析結果に係るデータを基に、配置手段3の供給部31や制御機構32の駆動制御による、観察対象物Sのシート(第1のシート2a)への配置動作のほか、観察手段5(シート移動機構50)におけるシートの移動速度制御やシートの移動・停止等、シートの水平移動に直接的に関連する動作、及び、ピント調節機構6(張力制御手段61)によるシートの張力制御等、ピント位置の維持に関連する動作のようなシート動作などが挙げられる。また、各種手段ごとにおける個別の動作だけではなく、各種手段における動作を複数組み合わせることによる動作も制御対象とすることが好ましい。例えば、シート移動機構50によりシートの移動を停止したタイミングに合わせて、撮像手段4による画像データの取得を行うといった一連の動作を制御することや、複数の観察対象物Sに対し、観察対象物Sごとに、配置手段3、撮像手段4、観察手段5(シート移動機構50)及びピント調節機構6に係る一連の動作を制御することなどが挙げられる。これにより、観察システム1A(又は観察システム1A′)として取得する観察データの精度向上や、観察に係る作業効率を向上させることが可能となる。
【0069】
〔第2の実施態様〕
図3は、本発明の第2の実施態様における観察システムを示す概略説明図である。
第2の実施態様に係る観察システム1Bは、第1の実施態様における観察システム1A′において、ピント調節機構6としての張力制御手段61に代えて、シートの位置を上下方向に調整するシート位置調整手段62を備えるものである。なお、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
【0070】
本実施態様における観察システム1Bは、図3に示すように、ピント調節機構6として第1のシート2a及び/又は第2のシート2bを上下方向に移動させるシート位置調整手段62を設け、撮像手段4に対してシートの位置を調整することで、シートの平滑化とともに、適切なピント位置を維持するものである。
シート位置調整手段62としては、例えば、第1のシート2aと第2のシート2bを重ね合わせるために設けられる支持機構54を利用することが挙げられる。
上述したように、第1のシート2a及び第2のシート2bを安定して移動させるために、上下移動が可能な複数の支持ローラ54aが設けられる。よって、シート位置調整手段62として、撮像手段4におけるデータ演算部42からピント位置に係る情報を取得し、このピント位置に係る情報に基づき、この支持ローラ54aの上下移動機構に対する位置制御が可能な駆動制御部62aを設けることが挙げられる。これにより、観察対象物Sの画像データ取得に際し、撮像手段4において適切なピント位置を維持することができるよう、支持機構54の位置を制御し、シート(図3では第2のシート2b)の位置調整を行うことができる。
なお、図3においては、支持機構54を第2のシート2b側に設けるものを示しているが、これに限定されるものではなく、第1のシート2a側に設けるものとしてもよく、第1のシート2a側及び第2のシート2b側の両方に設けるものとしてもよい。また、支持機構54を設ける箇所や個数についても特に限定されない。
このとき、シート位置調整手段62については、支持機構54によるシート位置の上下移動を行うことができればよい。したがって、シート位置調整手段62は、支持機構54の個数に合わせて設けるものとしてもよく、一部の支持機構54に対して設けるものとしてもよい。
【0071】
また、支持機構54には、上下移動機構に加え、シートの移動速度を調整する機能を備えるものとしてもよい。例えば、支持ローラ54aの回転数あるいは回転速度を計測する計測部及び支持ローラ54aの回転駆動が制御可能な回転駆動制御部を設けることが挙げられる。第1のシート2a及び第2のシート2bは支持ローラ54aの回転駆動に伴って移動する。このため、速度調整機能53以外に、支持ローラ54aの回転駆動を制御することによっても、シートの移動速度を調整することが可能となる。
【0072】
本実施態様における観察システム1Bは、第1のシート2a及び第2のシート2bを備えるものに限定されない。
例えば、第1の実施態様における観察システム1Aのように、第1のシート2aのみを備えるものについても、第1のシート2aを支持する機能を備え、上下移動可能な支持機構を設け、シート位置調整手段62によって同様の位置制御を行い、適切なピント位置を維持することが可能である。
【0073】
〔第3の実施態様〕
図4は、本発明の第3の実施態様における観察システムを示す概略説明図である。
第3の実施態様に係る観察システム1Cは、第1の実施態様における観察システム1A′におけるピント調節機構6としての張力制御手段61に代えて、観察対象物Sと撮像手段4における受光部40aの距離を一定に保つ距離調整手段63を備えるものである。なお、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
【0074】
本実施態様における観察システム1Cは、第1のシート2aに配置した観察対象物Sと、撮像手段4における受光部40aの距離を一定に保つことで、ピント位置自体を固定して画像データの取得を行うものである。これにより、そもそもピント位置のずれを生じさせないように連続観察を行うことが可能となる。
【0075】
本実施態様におけるピント調節機構6である距離調整手段63としては、第1のシート2a及び第2のシート2bの間に配置した観察対象物Sと、撮像手段4における受光部40aの間の距離が一定に保たれるものであればよい。
例えば、距離調整手段63の一例としては、図4に示すように、第2のシート2bと撮像手段4における受光部40a(対物レンズ40の先端)との間に位置決めの治具63aを設けることが挙げられる。
治具63aは、撮像手段4による撮像視野(対物レンズ40による観察視野)を確保できる空間を有する構造体とすることが挙げられる。より具体的には、中心に空洞を有する円筒状部材や円錐台状部材からなる構造体が挙げられる。
また、治具63aの他の例としては、少なくとも中心部にガラス等の光透過性物質が埋設された構造体が挙げられる。
【0076】
治具63aを受光部40aと第2のシート2bの間に配置する。このとき、治具63aの高さが、観察対象物Sの画像データ取得に対する撮像手段4の適切なピント位置に相当するように設定することで、観察手段5による観察時において、ピント位置のずれが生じることなく、連続的に観察することが可能となる。
【0077】
治具63aの配置手段は、特に限定されない。例えば、受光部40aと第2のシート2bの間に治具63aを静置するものとしてもよいが、受光部40a(対物レンズ40)に装着することができるような構造を治具63aに設けることがより好ましい。これにより、観察手段5による連続観察において治具63a自体の位置がより確実に固定されるため、観察対象物Sと撮像手段4における受光部40aの間の距離を安定して一定に保つことが可能となる。
【0078】
なお、本実施態様における治具63aの構成は、本発明に係る観察システムのピント調節機構として独立したものとすることができる。このピント調節機構は、シートに配置された観察対象物を撮像手段により連続的に観察する既設の観察システムに適用することができる。これにより、観察対象物の観察において、観察対象物を観察可能な状態に調製する作業を迅速かつ容易とするとともに、撮像手段側の受光部の位置調整によらず、ピント調節を行うことが可能となり、観察対象物の連続観察における観察作業効率及び観察精度の向上に係る操作を簡便かつ確実に行うことが可能となる。
【0079】
また、距離調整手段63の他の例としては、治具63aを用いずに、撮像手段4の受光部40aと観察対象物Sとの距離を略ゼロ距離とすることが挙げられる。
図5は、本発明の第3の実施態様における観察システムの別態様を示す概略説明図である。
本実施態様の観察システム1Cの別態様である観察システム1C′は、撮像手段4として光学顕微鏡ではなく、レンズ(対物レンズ40)を介さないイメージセンサ(顕微イメージャ、撮像素子)を用いるものである。撮像手段4の画像取得装置41としてイメージセンサを用いることで、受光部40aの直上(図5では直下)がピント位置となる。このため、第2のシート2bの上方から撮像手段4の受光部40aが第2のシート2bに接するように配置することで、撮像手段4の受光部40aと観察対象物Sとの距離を略ゼロ距離とし、観察手段5による観察時において、ピント位置のずれが生じることなく、連続的に観察することが可能となる。
なお、図5に示した観察システム1C′では、観察対象物Sは第1のシート2a及び第2のシート2bの間に固定されたものを示しているが、これに限定されるものではない。例えば、第1のシート2aのみを用い、第1のシート2aの下方から撮像手段4の受光部40aが第1のシート2aに接するように配置することで、撮像手段4の受光部40aと観察対象物Sとの距離を略ゼロ距離とするものとしてもよい。
【0080】
なお、上述した実施態様は、観察システム及び観察システムのピント調節機構の一例を示すものである。本発明に係る観察システム及び観察システムのピント調節機構は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る観察システム及び観察システムのピント調節機構を変形してもよい。
【0081】
例えば、本実施態様における観察システムは、撮像手段4及び観察手段5による観察後、観察対象物Sを回収する回収手段を備えるものとしてもよい。なお、回収手段としては、観察対象物Sを回収することができるものであればよく、特に限定されない。
回収手段の一例としては、第1のシート2a及び第2のシート2bを剥離した後、シートの間に固定されていた観察対象物Sを取り出す手段を備えることが挙げられる。また、回収手段の他の例としては、第1のシート2a及び第2のシート2bの間に観察対象物Sが固定された状態で、シートを切り取る手段を備えることが挙げられる。
観察後の観察対象物Sを回収することで、観察データと併せて、観察対象物Sを標本として保存することが可能となる。特に、生体などのように観察対象物Sそのものの希少性が高い、あるいは標本としての価値が高いものについて回収することが可能となる。さらに、回収した観察対象物Sは、観察データによるデータベースを補完する試料とすることや、観察対象物S自体を再利用すること等に活用できる。
【0082】
また、本実施態様の観察システムにおけるシートの供給・回収について、第1のシート2a及び第2のシート2bを巻き出して供給する巻出部51としての巻出ロール51a、51bと、第1のシート2a及び第2のシート2bを巻き取って回収する巻取部52としての巻取ロール52a、52bを備えること以外のシートの供給・回収機構を設けるものとしてもよい。
このようなシートの供給・回収機構の例としては、シートの供給や回収に係る機能をケーシングに収容したカートリッジ式とすることが挙げられる。シートの供給・回収に係る機構をカートリッジ式とすることで、シートの交換や保管が容易となる。また、シートがケーシング内にあることにより、観察時やシートの移動時において、供給前あるいは回収後のシートに対する異物混入・付着を抑制することが容易となる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の観察システム及び観察システムのピント調節機構は、各種観察対象物の観察に利用することができる。特に、生体を観察対象物とする観察において、好適に利用されるものである。
【符号の説明】
【0084】
1A,1A′,1B,1C,1C′ 観察システム、2a 第1のシート、2b 第2のシート、3 配置手段、30 分注部、31 供給部、31a 貯留部、31b 供給ライン、31c ポンプ、32 制御機構、4 撮像手段、40 対物レンズ、40a 受光部、41 画像取得装置、42 データ演算部、5 観察手段、50 シート移動機構、51 巻出部、51a,51b 巻出ロール、52 巻取部、52a,52b 巻取ロール、53 速度調整機能、53a 回転駆動制御部、54 支持機構、54a 支持ローラ、6 ピント調節機構、61 張力制御手段、61a,61b 回転駆動制御部、62 シート位置調整手段、62a 駆動制御部、63 距離調整手段、63a 治具、C 制御手段、C1 制御部、S 観察対象物
図1
図2
図3
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図5