(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131456
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】被処理物搬送装置、被処理物搬送装置の運転方法及び被処理物搬送装置の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
C02F 11/00 20060101AFI20230914BHJP
B02C 25/00 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
C02F11/00 Z ZAB
B02C25/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036234
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】牧 和久
(72)【発明者】
【氏名】間々下 義広
【テーマコード(参考)】
4D059
4D067
【Fターム(参考)】
4D059AA30
4D059BK06
4D059BK11
4D059CB01
4D059CB27
4D059EB16
4D067FF04
4D067FF14
4D067FF15
4D067GA20
4D067GB03
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、水による被処理物の搬送において、破砕後の被処理物が撹拌時に絡まることなく、円滑な搬送を行うことができる被処理物搬送装置、被処理物搬送装置の運転方法及び被処理物搬送装置の制御プログラムを提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、水によって被処理物を搬送する搬送路と、搬送路内に配置され、被処理物を破砕する破砕部と、破砕部の後段に清水を供給する給水部と、を備え、給水部から供給される清水により、搬送路内に旋回流を発生させる被処理物搬送装置及びこの装置を用いた被処理物搬送方法を提供する。
この発明によれば、水による被処理物の搬送において、撹拌羽根を備えた撹拌機による機械撹拌ではなく、水流による撹拌を行うことが可能となる。これにより、破砕後の被処理物が撹拌羽根等に絡まることなく、効果的な撹拌及び円滑な搬送を行うことが可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水によって被処理物を搬送する搬送路と、
前記搬送路内に配置され、前記被処理物を破砕する破砕部と、
前記破砕部の稼働制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記搬送路におけるドレン排出操作中も前記破砕部を継続して稼働させることを特徴とする、被処理物搬送装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記搬送路におけるドレン排出操作終了時に、前記破砕部の稼働を停止することを特徴とする、請求項1に記載の被処理物搬送装置。
【請求項3】
被処理物搬送装置の運転方法であって、
前記被処理物搬送装置は、水によって被処理物を搬送する搬送路と、前記搬送路内に配置され、前記被処理物を破砕する破砕部と、を備え、
前記搬送路におけるドレン排出操作中も前記破砕部を継続して稼働させる運転制御ステップを含むことを特徴とする、被処理物搬送装置の運動方法。
【請求項4】
被処理物搬送装置の制御プログラムであって、
前記被処理物搬送装置は、水によって被処理物を搬送する搬送路と、前記搬送路内に配置され、前記被処理物を破砕する破砕部と、前記破砕部の稼働制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部に、前記搬送路におけるドレン排出操作中も前記破砕部を継続して稼働させる運転制御ステップを実行させることを特徴とする、被処理物搬送装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水による搬送を行う被処理物搬送装置、被処理物搬送装置の運転方法及び被処理物搬送装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、対象物(被処理物)の搬送手段としては、ベルトコンベヤのような駆動装置を用い、陸上を搬送するものが知られている。
例えば、下水処理場やポンプ場等の沈砂池設備において汚水中から除去されたし渣は、し渣処理設備に移送されて処理されるが、このとき、沈砂池設備により分離されたし渣はベルトコンベヤを用いて貯留ホッパに搬送していた。しかし、ベルトコンベヤを設置するための大きなスペースが必要となる上、し渣からの臭気や汚水の飛散等の作業環境に関する問題や、駆動装置の頻繁な清掃を必要とする等の維持管理に関する問題があった。
【0003】
このため、被処理物であるし渣を洗浄かつ移送する装置として、し渣の破砕、洗浄、配管移送を組み合わせた水による搬送装置(し渣搬送装置)が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、第1洗浄部、破砕部、第2洗浄部を一体構造の槽内に設け、ここに下水処理場から回収したし渣を投入し、し渣の破砕と洗浄を行った後に、破砕されたし渣と水の混合物を移送ポンプにより搬送するし渣搬送装置(し渣処理システム)が記載されている。また、特許文献1には、このし渣搬送装置により、し渣を確実に破砕洗浄し、衛生的に処理するとともに、装置の保守が容易になることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、被処理物搬送装置(し渣搬送装置)において被処理物(し渣)を水によって搬送し、かつ被処理物の破砕を行った後、破砕後の被処理物と水の混合物を移送ポンプにて搬送(系外に排出)することが記載されている。
一方、特許文献1には特に記載されていないが、一般的な被処理物搬送装置(し渣搬送装置)においては、運転終了時にドレンの排出口を介して被処理物搬送装置内に残存した混合物(ドレン)を系外に排出することも行われている。このとき、破砕機の運転を停止した状態でドレン排出操作を行うことが一般的である。
【0007】
しかし、一般的な被処理物搬送装置においてドレンの排出口を設ける箇所は、破砕機よりも後段であり、ドレン排出操作を行うことで、破砕機前段に残留した被処理物が停止した破砕機に向かって流入し、破砕機前段で堆積するという事象が生じる。このため、次の運転開始時において、堆積した大量の被処理物が破砕機に対して一度に噛み込み、過負荷を生じさせる懸念がある上、特に被処理物がし渣のように臭気対策を要するものである場合、ドレン排出操作後に破砕機前段に被処理物が残存すること自体が、周辺環境に与える影響が大きいという課題があった。
【0008】
本発明の課題は、水による被処理物の搬送において、ドレン排出操作後に被処理物が破砕機前段に堆積することなく、確実に系外に排出することができる被処理物搬送装置、被処理物搬送装置の運転方法及び被処理物搬送装置の制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、水による被処理物の搬送に際し、ドレン排出操作時においても破砕機を継続して稼働させることで、ドレン排出操作後に被処理物が残存することなく、確実に系外に排出することが可能になることを見出して本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の被処理物搬送装置、被処理物搬送装置の運転方法及び被処理物搬送装置の制御プログラムである。
【0010】
上記課題を解決するための本発明の被処理物搬送装置は、水によって被処理物を搬送する搬送路と、搬送路内に配置され、被処理物を破砕する破砕部と、破砕部の稼働制御を行う制御部と、を備え、制御部は、搬送路におけるドレン排出操作中も破砕部を継続して稼働させることを特徴とする。
この被処理物搬送装置によれば、水による被処理物の搬送において、搬送路内に設けた破砕部をドレン排出操作時も継続して稼働させることで、ドレン排出操作時に破砕部に流入してくる被処理物について破砕処理を行うことができ、破砕部前段に被処理物が堆積することを抑制することが可能となるとともに、破砕された被処理物を確実に系外に排出することが可能となる。また、これにより、次の運転開始時に破砕部に対して大量の被処理物が流入することがなく、過負荷の発生を抑制することが可能となる。
【0011】
また、本発明の被処理物搬送装置の一実施態様としては、搬送路におけるドレン排出操作終了時に、破砕部の稼働を停止するという特徴を有する。
この特徴によれば、ドレン排出が終了するまで破砕部を稼働させることができ、破砕部前段に被処理物が堆積して残存することをより一層抑制することが可能となる。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の被処理物搬送装置の運転方法は、被処理物搬送装置の運転方法であって、被処理物搬送装置は、水によって被処理物を搬送する搬送路と、搬送路内に配置され、被処理物を破砕する破砕部と、を備え、搬送路におけるドレン排出操作中も破砕部を継続して稼働させる運転制御ステップを含むことを特徴とする。
この被処理物搬送装置の運転方法によれば、水による被処理物の搬送を行う被処理物搬送装置において、搬送路内に設けた破砕部をドレン排出操作時も継続して稼働させることで、ドレン排出操作時に破砕部に流入してくる被処理物について破砕処理を行うことができ、破砕部前段に被処理物が堆積することを抑制することが可能となるとともに、破砕された被処理物を確実に系外に排出することが可能となる。また、これにより、次の運転開始時に破砕部に対して大量の被処理物が流入することがなく、被処理物搬送装置の破砕部における過負荷の発生を抑制することが可能となる。
【0013】
上記課題を解決するための本発明の被処理物搬送装置の制御プログラムは、被処理物搬送装置の制御プログラムであって、被処理物搬送装置は、水によって被処理物を搬送する搬送路と、搬送路内に配置され、被処理物を破砕する破砕部と、破砕部の稼働制御を行う制御部と、を備え、制御部に、搬送路におけるドレン排出操作中も破砕部を継続して稼働させる運転制御ステップを実行させることを特徴とする。
この被処理物搬送装置の制御プログラムによれば、水による被処理物の搬送を行う被処理物搬送装置において、搬送路内に設けた破砕部をドレン排出操作時も継続して稼働させることで、ドレン排出操作時に破砕部に流入してくる被処理物について破砕処理を行うことができ、破砕部前段に被処理物が堆積することを抑制することが可能となるとともに、破砕された被処理物を確実に系外に排出することが可能となる。また、これにより、次の運転開始時に破砕部に対して大量の被処理物が流入することがなく、過負荷の発生を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、水による被処理物の搬送において、ドレン排出操作後に被処理物が破砕機前段に堆積することなく、確実に系外に排出することができる被処理物搬送装置、被処理物搬送装置の運転方法及び被処理物搬送装置の制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施態様における被処理物搬送装置の構造を示す概略説明図である。
【
図2】本発明の実施態様における被処理物搬送装置の制御部による運転制御に係るフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の被処理物搬送装置、被処理物搬送装置の運転方法及び被処理物搬送装置の制御プログラムは、水による被処理物の搬送に用いられる。ここで、搬送される被処理物については特に限定されない。例えば、搬送に際して臭気対策を行う必要のある被処理物や、搬送と洗浄を並行して行うことが求められる被処理物を搬送対象とすることが挙げられる。より具体的には、付着物のあるフィルムや、下水処理場やポンプ場等の沈砂池設備等で捕集、分離されたし渣を搬送対象とすることが挙げられる。
特に、本発明の被処理物搬送装置、被処理物搬送装置の運転方法及び被処理物搬送装置の制御プログラムは、下水処理場やポンプ場等の沈砂池設備等で捕集、分離されたし渣の搬送に好適に用いられる。以下の実施態様における説明では、搬送する被処理物として、主にし渣を例にとって説明するが、これに限定されるものではない。
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る被処理物搬送装置、被処理物搬送装置の運転方法及び被処理物搬送装置の制御プログラムの実施態様を詳細に説明する。なお、本発明の被処理物搬送方法及び被処理物搬送装置の制御プログラムについては、以下の被処理物搬送装置の構造及びの作動の説明に置き換えるものとする。また、実施態様に記載する被処理物搬送装置については、本発明に係る被処理物搬送装置を説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。
【0018】
〔実施態様〕
(被処理物搬送装置)
図1は、本発明の実施態様における被処理物搬送装置1の構造を示す概略説明図である。
本実施態様に係る被処理物搬送装置1は、
図1に示すように、搬送路2と、破砕部3と、制御部4を備える。また、本実施態様に係る被処理物搬送装置1は、搬送路2内の被処理物を系外に搬送するための移送部5を備える。
ここで、本実施態様に係る被処理物搬送装置1としては、沈砂池設備から除去されたし渣を搬送対象である被処理物としたものを例にとり、以下説明を行う。なお、
図1中の矢印は水の流れを示すものであり、一点鎖線の矢印は、制御可能あるいは入力可能に接続されていることを示している。
【0019】
本実施態様に係る被処理物搬送装置1は、被処理物(し渣S)及び水W0を搬送路2に投入し、搬送路2内に設けられた破砕部3でし渣Sを破砕した後、搬送路2の下流側に接続されている移送部5により、破砕部3で破砕されたし渣と水の混合物(以下、「混合水M」と呼ぶ)を配管移送するものである。
以下、本実施態様における被処理物搬送装置1の各構成について説明する。
【0020】
搬送路2は、し渣Sと水W0を混合し、搬送するためのものであり、所定の水位まで水が貯められている水路型の槽からなるものが挙げられる。また、搬送路2は、し渣Sと水W0を投入する投入部20を備え、破砕部3に向かって水の流れが形成されている。この水の流れにより、し渣Sを破砕部3に搬送することができる。そして、破砕部3で破砕されたし渣Sは、最下流側に設けられた移送部5から系外に排出される。また、
図1に示すように、搬送路2には、移送部5とは別に、搬送路2内の混合水Mを排出するためのドレン排出部21が設けられている。
【0021】
搬送路2に設けられる投入部20は、沈砂池設備から除去されたし渣Sと、し渣Sをスラリー化するための水W0を、搬送路2内に投入するものである。本実施態様において、し渣S及び水W0の投入手段並びに投入部20の構造については特に限定されない。例えば、被処理物搬送装置1の前段にし渣Sと水W0を混合する混合部(不図示)を設け、混合部を介してし渣S及び水W0を同じ箇所から投入するものを投入部20とすることや、被処理物搬送装置1に対してし渣Sを投入する箇所と水W0を導入する箇所をそれぞれ独立して設けたものを総じて投入部20とし、搬送路2内の上流側でし渣Sと水W0を混合するものなどが挙げられる。また、投入部20には、し渣Sと水W0の流入量を制御する制御装置を備えるものであってもよい。これにより、被処理物搬送装置1内のし渣Sの状態(量・質)に応じて投入する流入量を変えることができ、被処理物搬送装置1における処理に適した状態(量・質)とすることが容易となる。
また、投入部20から投入される水W0については特に限定されず、上水、用水、処理水などが挙げられる。水の調達に係るコストを鑑みると、下水処理場などの処理施設から排出される処理水を活用することが特に好ましい。
【0022】
搬送路2に設けられるドレン排出部21は、破砕されたし渣と水の混合水Mを、搬送路2外に排出するものである。本実施態様において、ドレン排出部21の構造については特に限定されない。本実施態様におけるドレン排出部21の具体例としては、例えば、
図1に示すように、開閉弁21aを備えた配管21bからなるものが挙げられる。
【0023】
搬送路2内で水の流れを形成するための手段としては、特に制限されず、例えば、搬送路2内に水を流通させるためにポンプを用いることや、搬送路2において上流側から下流側に高低差を設けて位置エネルギーを利用する構造を形成することなどが挙げられる。なお、本実施態様においては、
図1に示すように、搬送路2において上流側から下流側(
図1における投入部20からドレン排出部21方向)に高低差を設けるものとしている。
【0024】
搬送路2に水位計WGを設け、観測した水位に応じた対応を行うものとしてもよい。また、このとき、水位計WGを設置する箇所は特に限定されない。
例えば、水位計WGを搬送路2の上流側に設け、水位が所定値より増加した場合には、投入部20からのし渣S及び水W0の投入の停止や、搬送路2の上部からオーバーフローさせる構造を設けて排水を行うという対応が行われる。また、水位が所定値より低下した場合、し渣Sの搬送を継続する際には、投入部20からの流入量増加という対応が行われる。これにより、搬送路2内でし渣Sの搬送に必要な水量が維持されるため、安定的なし渣Sの搬送を実現することができる。
別の例としては、
図1に示すように、水位計WGを搬送路2の下流側に設け、後述する移送部5におけるポンプ52の駆動を制御するパラメータの一つとして水位を利用すること等が挙げられる。
【0025】
また、搬送路2には、搬送路2内を洗浄するための洗浄手段を設けるものとしてもよい(不図示)。洗浄手段としては、例えば、搬送路2の水路及び破砕部3に対して洗浄水を供給するものが挙げられる。これにより、後述するドレン排出操作時において、搬送路2内の洗浄を行うとともに、搬送路2内の混合水Mの円滑な排出を促進することが可能となる。
【0026】
破砕部3は、被処理物(し渣S)を破砕する破砕ステップを行うために使用されるものである。し渣Sを破砕することにより、搬送路2内のし渣Sの搬送をより促進することができる。
ここで、し渣Sは、下水や汚水等に含まれる金属類やプラスチック類、下着、雑巾、脱脂綿等の繊維類等であり、そのままの状態で搬送路2を介した搬送を行うと、後段機器(後述する移送部5におけるポンプ等)に絡みつき、機器の故障の原因となることがある。そのため、し渣Sに対して破砕部3による破砕処理を行うことにより、後段機器の故障等を防止することが可能となる。また、し渣Sを破砕することにより、し渣Sの洗浄効率を高めることもできる。
【0027】
破砕部3としては、破砕機31を用いることが挙げられる。破砕機31としては、どのような形式のものを使用してもよく、例えば、駆動部32によって回転駆動する駆動軸に複数の破砕刃を備えた二軸破砕機等を用いればよい。本実施態様においては、破砕機31を搬送路2の内部に設置することから、駆動軸を立設する縦型の二軸破砕機が特に好ましい。
また、破砕機31の設置に関しては、搬送路2中の水の流れ方向に対して傾斜させることが好ましい。より具体的には、搬送路2の設置位置の底面に対して縦型の二軸破砕機の駆動軸を傾斜して立設することが特に好ましい。これにより、破砕機31の上流側にし渣Sが滞留することを抑制して、破砕機31へし渣Sを容易に流入させることができる。その結果、し渣Sの破砕をより促進することができる。
【0028】
移送部5は、破砕部3で破砕されたし渣と水の混合物である混合水Mを配管移送するものであり、搬送路2の下流側に接続されている。移送部5は、
図1に示すように、吸入管51と、ポンプ52と、吐出管53とを備えるものが挙げられる。
【0029】
吸入管51は、搬送路2側に設けられ、ポンプ52と連結されている。吸入管51の配置は特に限定されない。例えば、
図1に示すように、搬送路2の上方から底面に向かって吸入管51の端部(開口部51a)が開口するように配置することが挙げられる。このとき、吸入管51の管径に基づき、開口部51aと搬送路2の底面との距離を設定するものとしてもよい。これにより、移送部5による配管移送において、し渣Sによる吸入管51の閉塞を抑制することや、し渣Sが搬送路2底面に残存することを抑制することが可能となる。
また、吸入管51の配置に係る別態様としては、吸入管51を搬送路2の最下流の側面に設けるものが挙げられる。これにより、移送部5により混合水Mの配管移送を開始した際に、搬送路2内の水の流れを吸入管51の開口部に向けて収束しやすくなるため、混合水Mの搬送をより促進することが可能となる。
【0030】
ポンプ52は、搬送路2内の混合水Mを吸入管51及び吐出管53を介して配管移送するためのものである。ポンプ52としては、流体の移送を可能とするものであればよく、渦流ポンプやジェットポンプなどが挙げられる。なお、移送する流体が気液混合状態あるいは気体のみの状態になっても、ポンプの過熱、損傷が生じないという観点から、本実施態様におけるポンプ52としてはジェットポンプを用いることが好ましい。
【0031】
吐出管53は、被処理物搬送装置1の外側に延伸し、ポンプ52と連結されている。なお、吐出管53の後段には、混合水Mとして排出された被処理物(し渣S)を処理するための各種処理装置を設けるものとしてもよい。
【0032】
ここで、吐出管53の後段に設ける各種処理装置の一例としては、分離機、脱水機などが挙げられる。
分離機は、混合水Mを破砕されたし渣Sと分離水に分離するためのものである。分離機は、固液分離するための装置であればどのようなものでもよく、例えばドラム型の濾過装置や、遠心分離装置等が挙げられる。なお、分離水は、沈砂池設備に返送してもよく、本実施態様における投入部20へ返送し、し渣Sをスラリー化する水W0として利用するものであってもよい。
また、脱水機は、分離機で固液分離されたし渣Sを脱水するためのものである。脱水機は、固体から水分を除くための装置であればどのようなものでもよく、例えばスクリュープレス式、ロータリープレス式、ベルトプレス式などが挙げられる。
【0033】
一方、被処理物搬送装置1の運転終了時(投入部20からのし渣S及び水W0の供給停止時)においては、搬送路2内の混合水Mは、移送部5による配管移送ではなく、ドレン排出部21を介して系外に排出される。
このとき、従来の技術においては、破砕部3における破砕機31の運転を停止した状態でドレン排出操作を行うことが一般的である。
【0034】
しかし、
図1に示すように、ドレン排出部21は、破砕機31よりも後段の搬送路2に設けられていることから、ドレン排出操作を行うことにより、搬送路2内の水の流れがドレン排出部21に向かって収束する。このとき、破砕機31前段に残留した被処理物(し渣S)は、この水の流れによって運転を停止した破砕機31に向かって流入し、破砕機31前段で堆積するという事象が生じる。このため、従来の技術では、次の運転開始時において、堆積した大量の被処理物(し渣S)が破砕機31に対して一度に噛み込み、過負荷を生じさせるという懸念があった。また、特に被処理物がし渣Sのように臭気対策を要するものである場合、ドレン排出操作後に破砕機31前段にし渣Sが残存すること自体が、周辺環境に与える影響が大きいという問題があった。
そのため、ドレン排出操作時における被処理物搬送装置1の運転制御を適切に行う必要がある。
【0035】
制御部4は、搬送路2から混合水Mをドレンとして排出する際に、破砕部3の稼働を制御する運転制御ステップを行うためのものである。
制御部4は、破砕部3に対し、配線等により直接接続されるものであってもよく、無線等の通信技術を介して間接的に接続されるものであってもよい。
本実施態様における制御部4は、ドレン排出部21の操作状態を判断する判断部41と、破砕部3の稼働状態を制御する運転制御部42とを備えている。
【0036】
判断部41は、ドレン排出部21におけるドレンの排出状況を判断するものであり、この判断結果を破砕部3の稼働を制御する基準とするものである。判断部41による判断手段としては、ドレン排出部21の開閉弁21aの開閉状態に係る情報を取得する手段や、ドレン排出部21におけるドレンの排出状況を作業者により直接入力する手段などが挙げられる。また、投入部20におけるし渣Sや水W0の投入状況に係る情報を取得する手段を設け、ドレン排出操作を行うタイミングを計ることを判断結果として扱うものとしてもよい。
【0037】
運転制御部42は、破砕部3の稼働状態を制御するものであり、具体的には破砕機31の駆動部32(モーター等)の駆動・停止の制御を行うものである。
【0038】
以下、制御部4による破砕部3の稼働制御に係る実施態様として、特にドレン排出時に係る破砕部3の好適な稼働制御について例示して説明する。なお、以下の説明におけるフローチャートについては実施態様の例示に過ぎず、これに限定されるものではない。
【0039】
図2は、制御部4による破砕部3の稼働制御に係るフローチャートを示すものである。
まず、ドレン排出操作を行う前の通常運転としては、被処理物搬送装置1に対し、被処理物(し渣S)と水W0とを投入部20から投入し、破砕部3を駆動させてし渣Sの破砕処理を行い、混合水Mとする。この混合水Mは、破砕部3後段側の搬送路2を通って、移送部5によって系外に配管移送される。
そして、所定時間の経過後、あるいは搬送対象となる被処理物(し渣S)の搬送が不要となったタイミングで、投入部20によるし渣S及び水W0の供給を停止し、移送部5による配管移送も停止することで、被処理物搬送装置1の通常運転を終了する。
【0040】
被処理物搬送装置1の通常運転停止後、搬送路2及び破砕部3(破砕機31)の洗浄のために、洗浄手段を介して洗浄水を搬送路2の水路及び破砕部3に供給して洗浄操作を開始する。なお、この洗浄操作は省略可能な操作である。
そして、ドレン排出部21の開閉弁21aを開放し、搬送路2内の混合水Mをドレンとして排出する(ドレン排出操作開始)。
洗浄操作及びドレン排出操作開始に係る各操作を行う間、制御部4によって破砕部3の稼働は継続する。このとき、ドレン排出により搬送路2内の水位が低下していくに従い、搬送路2内の水流速度が上がり、破砕部3前段に残存する被処理物(し渣S)は破砕部3に向かって速やかに移動していく。このため、破砕部3の稼働を継続することで、搬送路2内に残存したし渣Sがより確実に破砕され、洗浄水とともにドレン排出部21に向かって排出されていく。
これにより、破砕部3前段に被処理物(し渣S)が堆積することを抑制することが可能となるとともに、破砕された被処理物(し渣S)を確実に系外に排出することが可能となる。
【0041】
そして、所定時間経過後、洗浄水の供給を止め、洗浄操作を停止する。
さらに、所定時間経過後、ドレン排出部21の開閉弁21を閉とし、ドレン排出を停止する(ドレン排出操作終了)。
このとき、制御部4は判断部41によってドレン排出操作が終了したことを判断してから、運転制御部42によって破砕部3の稼働を停止する。ドレン排出操作終了後も破砕部3が稼働することで、破砕部3前段に被処理物が堆積して残存することをより一層抑制することが可能となる。
破砕部3の稼働を停止することで、被処理物搬送装置1としての運転が完全に終了することになる。
そして、所定時間経過後、あるいは搬送対象の搬送が必要となった時点で、次の運転(通常運転)を開始する。
なお、ドレン排出操作終了後、破砕部3の稼働を停止する前に、次の運転開始に備え、搬送路2内に搬送用の水を供給する水供給操作を行うものとしてもよい。この操作は省略可能な操作である。
【0042】
上述した制御部4による運転制御は、作業員の手動操作を含むものであってもよいが、作業員の労力を低減する観点からは、自動制御可能とすることが好ましい。
具体的には、判断部41及び運転制御部42として、例えば、データ取得及び判断、並びに、破砕部3の駆動・停止に係る制御信号発信に必要なプログラムをCPU等のプロセッサにより実行する計算装置を用い、自動制御可能とすることが挙げられる。ここで、判断部41及び運転制御部42を作動させるプログラムは、本発明における運転制御プログラムに相当する。
【0043】
以上のように、本実施態様における被処理物搬送装置及び被処理物搬送装置の運転方法並びに被処理物搬送装置の制御プログラムにより、水による被処理物の搬送において、搬送路内に設けた破砕部をドレン排出操作時も継続して稼働させることで、ドレン排出操作時に破砕部に流入してくる被処理物について破砕処理を行うことができ、破砕部前段に被処理物が堆積することを抑制することが可能となるとともに、破砕された被処理物を確実に系外に排出することが可能となる。また、これにより、次の運転開始時に破砕部に対して大量の被処理物が流入することがなく、過負荷の発生を抑制することが可能となる。
【0044】
なお、上述した実施態様は被処理物搬送装置、被処理物搬送装置の運転方法及び被処理物搬送装置の制御プログラムの一例を示すものである。本発明に係る被処理物搬送装置、被処理物搬送装置の運転方法及び被処理物搬送装置の制御プログラムは、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る被処理物搬送装置、被処理物搬送装置の運転方法及び被処理物搬送装置の制御プログラムを変形してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の被処理物搬送装置、被処理物搬送装置の運転方法及び被処理物搬送装置の制御プログラムは、水による被処理物の搬送に利用することができる。特に、下水処理場やポンプ場等の沈砂池設備等で捕集、分離されたし渣の搬送に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0046】
1 被処理物搬送装置、2 搬送路、20 投入部、21 ドレン排出部、21a 開閉弁、21b 配管、3 破砕部、31 破砕機、4 制御部、41 判断部、42 運転制御部、5 移送部、51 吸入管、52 ポンプ、53 吐出管、M 混合水、S し渣、W0 水、WG 水位計