(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131457
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】被処理物搬送装置及び被処理物搬送方法
(51)【国際特許分類】
C02F 11/00 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
C02F11/00 Z ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036235
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】間々下 義広
(72)【発明者】
【氏名】牧 和久
【テーマコード(参考)】
4D059
【Fターム(参考)】
4D059AA30
4D059BK06
4D059BK11
4D059CB01
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、水による被処理物の搬送において、破砕後の被処理物が撹拌時に絡まることなく、円滑な搬送を行うことができる被処理物搬送装置及び被処理物搬送方法を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、水によって被処理物を搬送する搬送路と、搬送路内に配置され、被処理物を破砕する破砕部と、破砕部の後段に清水を供給する給水部と、を備え、給水部から供給される清水により、搬送路内に旋回流を発生させる被処理物搬送装置及びこの装置を用いた被処理物搬送方法を提供する。
この発明によれば、水による被処理物の搬送において、撹拌羽根を備えた撹拌機による機械撹拌ではなく、水流による撹拌を行うことが可能となる。これにより、破砕後の被処理物が撹拌羽根等に絡まることなく、効果的な撹拌及び円滑な搬送を行うことが可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水によって被処理物を搬送する搬送路と、
前記搬送路内に配置され、前記被処理物を破砕する破砕部と、
前記破砕部の後段に清水を供給する給水部と、を備え、
前記給水部から供給される清水により、前記搬送路内に旋回流を発生させることを特徴とする、被処理物搬送装置。
【請求項2】
前記搬送路は、前記被処理物を搬送する水を導入する導水部を有し、
前記給水部は、前記導水部から分岐した分岐管を備えることを特徴とする、請求項1に記載の被処理物搬送装置。
【請求項3】
前記給水部は、前記搬送路の排水部に向かう旋回流を発生させることを特徴とする、請求項1又は2に記載の被処理物搬送装置。
【請求項4】
水によって被処理物を搬送する搬送ステップと、
前記被処理物を破砕する破砕ステップと、
前記破砕ステップ後、破砕された被処理物と水の混合物に、清水を供給する給水ステップと、を備え、
前記給水ステップで供給される清水により、旋回流を発生させることを特徴とする、被処理物搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水による搬送を行う被処理物搬送装置及び被処理物搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、対象物(被処理物)の搬送手段としては、ベルトコンベヤのような駆動装置を用い、陸上を搬送するものが知られている。
例えば、下水処理場やポンプ場等の沈砂池設備において汚水中から除去されたし渣は、し渣処理設備に移送されて処理されるが、このとき、沈砂池設備により分離されたし渣はベルトコンベヤを用いて貯留ホッパに搬送していた。しかし、ベルトコンベヤを設置するための大きなスペースが必要となる上、し渣からの臭気や汚水の飛散等の作業環境に関する問題や、駆動装置の頻繁な清掃を必要とする等の維持管理に関する問題があった。
【0003】
このため、被処理物であるし渣を洗浄かつ移送する装置として、し渣の破砕、洗浄、配管移送を組み合わせた水による搬送装置(し渣搬送装置)が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、第1洗浄部、破砕部、第2洗浄部を一体構造の槽内に設け、ここに下水処理場から回収したし渣を投入し、し渣の破砕と洗浄を行った後に、破砕されたし渣と水の混合物を移送ポンプにより搬送するし渣搬送装置(し渣処理システム)が記載されている。また、特許文献1には、このし渣搬送装置により、し渣を確実に破砕洗浄し、衛生的に処理するとともに、装置の保守が容易になることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された被処理物搬送装置(し渣搬送装置)には、被処理物(し渣)を水によって搬送し、かつ被処理物の破砕を行った後、破砕後の被処理物と水の混合物を機械的に撹拌して洗浄を行うための撹拌羽根を備えた撹拌機が設けられている。
この場合、破砕された被処理物(し渣)が再度集まって撹拌羽根に絡みつき、撹拌機の過負荷を生じさせることや、集まった被処理物が塊状になり、搬送装置から排出されるときに排出部の閉塞(管の閉塞やポンプの閉塞)を引き起こすという問題が生じている。
【0007】
本発明の課題は、水による被処理物の搬送において、破砕後の被処理物が撹拌時に絡まることなく、円滑な搬送を行うことができる被処理物搬送装置及び被処理物搬送方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、水による被処理物の搬送に際し、破砕された被処理物と水の混合物に対し、撹拌羽根を備えた撹拌機による機械撹拌ではなく、水流による撹拌を行うことにより、破砕後の被処理物が撹拌羽根等に絡まることなく、効果的な撹拌及び円滑な搬送を行うことが可能になることを見出して本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の被処理物搬送装置及び被処理物搬送方法である。
【0009】
上記課題を解決するための本発明の被処理物搬送装置は、水によって被処理物を搬送する搬送路と、搬送路内に配置され、被処理物を破砕する破砕部と、破砕部の後段に清水を供給する給水部と、を備え、給水部から供給される清水により、搬送路内に旋回流を発生させることを特徴とする。
この被処理物搬送装置によれば、水による被処理物の搬送において、搬送路内に設けた破砕部で破砕された被処理物と水との混合物に対して清水を給水し、清水による旋回流を発生させることで、撹拌羽根を備えた撹拌機による機械撹拌ではなく、水流による撹拌を行うことが可能となる。これにより、破砕後の被処理物が撹拌羽根等に絡まることなく、効果的な撹拌及び円滑な搬送を行うことが可能となる。
【0010】
また、本発明の被処理物搬送装置の一実施態様としては、搬送路は、被処理物を搬送する水を導入する導水部を有し、給水部は、導水部から分岐した分岐管を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、被処理物を搬送するための水と、撹拌のための旋回流を発生させる水の供給源を一にすることができる。これにより、装置を大規模化することなく、水流による撹拌を行うことが可能となる。
【0011】
また、本発明の被処理物搬送装置の一実施態様としては、給水部は、搬送路の排水部に向かう旋回流を発生させるという特徴を有する。
この特徴によれば、水流による撹拌とともに、搬送路から次工程に移送する際の排水操作において、旋回流による排出促進が起こり、より円滑な搬送を行うことが可能となる。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の被処理物搬送方法は、水によって被処理物を搬送する搬送ステップと、被処理物を破砕する破砕ステップと、破砕ステップ後、破砕された被処理物と水の混合物に、清水を供給する給水ステップと、を備え、給水ステップで供給される清水により、旋回流を発生させることを特徴とする。
この被処理物搬送方法によれば、水による被処理物の搬送において破砕された被処理物と水との混合物に対して清水を給水し、清水による旋回流を発生させることで、撹拌羽根を備えた撹拌機による機械撹拌ではなく、水流による撹拌を行うことが可能となる。これにより、破砕後の被処理物が撹拌羽根等に絡まることなく、効果的な撹拌及び円滑な搬送を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水による被処理物の搬送において、破砕後の被処理物が撹拌時に絡まることなく、円滑な搬送を行うことができる被処理物搬送装置及び被処理物搬送方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施態様の被処理物搬送装置の構造を示す概略説明図である。
【
図2】本発明の第2の実施態様の被処理物搬送装置の構造を示す概略説明図である。
【
図3】本発明の第3の実施態様の被処理物搬送装置の構造を示す概略説明図である。
【
図4】本発明の第4の実施態様の被処理物搬送装置の構造を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の被処理物搬送装置及び被処理物搬送方法は、水による被処理物の搬送に用いられる。ここで、搬送される被処理物については特に限定されない。例えば、搬送に際して臭気対策を行う必要のある被処理物や、搬送と洗浄を並行して行うことが求められる被処理物を搬送対象とすることが挙げられる。
特に、本発明の被処理物搬送装置及び被処理物搬送方法は、下水処理場やポンプ場等の沈砂池設備等で捕集、分離されたし渣の搬送に好適に用いられる。以下の実施態様における説明では、搬送する被処理物として、主にし渣を例にとって説明するが、これに限定されるものではない。
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る被処理物搬送装置及び被処理物搬送方法の実施態様を詳細に説明する。なお、本発明の被処理物搬送方法については、以下の被処理物搬送装置の構造及びの作動の説明に置き換えるものとする。また、実施態様に記載する被処理物搬送装置については、本発明に係る被処理物搬送装置を説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。
【0017】
〔第1の実施態様〕
図1は、本発明の第1の実施態様における被処理物搬送装置1Aの構造を示す概略説明図である。
本実施態様に係る被処理物搬送装置1Aは、
図1に示すように、搬送路2と、破砕部3と、給水部4を備える。また、本実施態様に係る被処理物搬送装置1Aは、沈砂池設備から除去されたし渣を搬送対象である被処理物としたものを例にとり、以下説明を行う。なお、
図1中の矢印は水の流れを示すものである。
【0018】
本実施態様に係る被処理物搬送装置1Aは、被処理物(し渣S)及び水W0を搬送路2に投入し、搬送路2内に設けられた破砕部3でし渣Sを破砕した後、破砕部3の後段に設けられた給水部4により供給された清水W1により破砕部3後段で旋回流を発生させることで、破砕されたし渣と水の混合物(以下、「混合水M」と呼ぶ)の撹拌を行うものである。
以下、本実施態様における被処理物搬送装置1Aの各構成について説明する。
【0019】
搬送路2は、し渣Sと水W0を混合し、搬送する搬送ステップを行うためのものであり、所定の水位まで水が貯められている水路型の槽からなるものが挙げられる。また、搬送路2は、し渣Sと水W0を投入する投入部20を備え、破砕部3に向かって水の流れが形成されている。この水の流れにより、し渣Sを破砕部3に搬送することができる。そして、破砕部3で破砕されたし渣Sは、最下流側に設けられた排出部21から系外に排出される。
【0020】
搬送路2に設けられる投入部20は、沈砂池設備から除去されたし渣Sと、し渣Sをスラリー化するための水W0を、搬送路2内に投入するものである。本実施態様において、し渣S及び水W0の投入手段並びに投入部20の構造については特に限定されない。例えば、被処理物搬送装置1Aの前段にし渣Sと水W0を混合する混合部(不図示)を設け、混合部を介してし渣S及び水W0を同じ箇所から投入するものを投入部20とすることや、被処理物搬送装置1Aに対してし渣Sを投入する箇所と水W0を導入する箇所をそれぞれ独立して設けたものを総じて投入部20とし、搬送路2内の上流側でし渣Sと水W0を混合するものなどが挙げられる。また、投入部20には、し渣Sと水W0の流入量を制御する制御装置を備えるものであってもよい。これにより、被処理物搬送装置1A内のし渣Sの状態(量・質)に応じて投入する流入量を変えることができ、被処理物搬送装置1Aにおける処理に適した状態(量・質)とすることが容易となる。
また、投入部20から投入される水W0については特に限定されず、上水、用水、処理水などが挙げられる。水の調達に係るコストを鑑みると、下水処理場などの処理施設から排出される処理水を活用することが特に好ましい。
【0021】
搬送路2に設けられる排出部21は、破砕されたし渣と水の混合水Mを、搬送路2外に排出するものである。本実施態様において、排出部21の構造については特に限定されない。例えば、開閉弁を備えた排水管(いわゆるドレン)からなるものや、移送ポンプ(ジェットポンプ等)を用いた配管移送を行うものなどが挙げられる。
【0022】
搬送路2内で水の流れを形成するための手段としては、特に制限されず、例えば、搬送路2内に水を流通させるためにポンプを用いることや、搬送路2において上流側から下流側に高低差を設けて位置エネルギーを利用する構造を形成することなどが挙げられる。なお、本実施態様においては、
図1に示すように、搬送路2において上流側から下流側(
図1における投入部20から排出部21方向)に高低差を設けるものとしている。
【0023】
搬送路2に水位計WGを設け、観測した水位に応じた対応を行うものとしてもよい。また、このとき、水位計WGを設置する箇所は特に限定されない。
例えば、水位計WGを搬送路2の上流側に設け、水位が所定値より増加した場合には、投入部20からのし渣S及び水W0の投入の停止や、搬送路2の上部からオーバーフローさせる構造を設けて排水を行うという対応が行われる。また、水位が所定値より低下した場合、し渣Sの搬送を継続する際には、投入部20からの流入量増加という対応が行われる。これにより、搬送路2内でし渣Sの搬送に必要な水量が維持されるため、安定的なし渣Sの搬送を実現することができる。
別の例としては、
図1に示すように、水位計WGを搬送路2の下流側に設け、排出部21からの混合水Mの排出(又は配管移送)に係るパラメータの一つとして水位を利用すること等が挙げられる。
【0024】
破砕部3は、被処理物(し渣S)を破砕する破砕ステップを行うために使用されるものである。し渣Sを破砕することにより、搬送路2内のし渣Sの搬送をより促進することができる。また、し渣Sを破砕することにより、し渣Sの洗浄効率を高めることもできる。
【0025】
破砕部3としては、破砕機31を用いることが挙げられる。破砕機31としては、どのような形式のものを使用してもよく、例えば、駆動軸に複数の破砕刃を備えた二軸破砕機等を用いればよい。本実施態様においては、破砕機31を搬送路2の内部に設置することから、駆動軸を立設する縦型の二軸破砕機が特に好ましい。
また、破砕機31の設置に関しては、搬送路2中の水の流れ方向に対して傾斜させることが好ましい。より具体的には、搬送路2の設置位置の底面に対して縦型の二軸破砕機の駆動軸を傾斜して立設することが特に好ましい。これにより、破砕機31の上流側にし渣Sが滞留することを抑制して、破砕機31へし渣Sを容易に流入させることができる。その結果、し渣Sの破砕をより促進することができる。
【0026】
破砕されたし渣と水の混合水Mは、排出部21を介して系外に排出される。このとき、混合水M中のし渣含有量に偏りが存在すると、排出部21の閉塞を生じさせるおそれがあるため、破砕されたし渣と水の混合水Mを均一化して排出することが望ましい。
【0027】
混合水Mの均一化を行う手段としては、混合水Mを撹拌する手段を設けることが挙げられる。これにより、混合水Mの均一化に加え、破砕後のし渣洗浄を促進することができる。
ここで、し渣Sは、下水や汚水等に含まれる金属類やプラスチック類、下着、雑巾、脱脂綿等の繊維類等であり、特に繊維類を含むことにより、撹拌羽根を備えた撹拌機による機械撹拌では、これらのし渣Sが破砕後に再度集まったり、撹拌羽根に絡みつくなどして、撹拌機の過負荷や排出部21の閉塞を発生させることがある。そのため、機械撹拌によらない撹拌手段を設けることが求められる。
【0028】
給水部4は、破砕部3の後段に清水W1を供給する給水ステップを行うものであって、供給した清水W1により搬送路2内に旋回流を発生させるためのものである。これにより、機械撹拌によらず、破砕されたし渣と水の混合水Mを撹拌することが可能となる。
給水部4は、破砕部3の後段に清水W1を供給し、旋回流を発生させることができるものであればよく、特に限定されない。本実施態様における給水部4の一例として、例えば、
図1に示すように、給水管41と、流量調整手段42と、給水源43とを備えるものが挙げられる。
【0029】
給水管41は、搬送路2内に清水W1を給水する配水管であり、この給水管41の開口部41aは破砕部3の後段(下流側)に当たる搬送路2側に配置されている。そして、開口部41aを介して給水された清水W1は、搬送路2内で旋回流を発生させることで混合水Mを撹拌する。
また、給水管41は、開口部41aが搬送路2の側壁に設けられるものであってもよく、搬送路2内部に給水管41の一部が延伸され、開口部41aが搬送路2内に配置されるものとしてもよい。
【0030】
流量調整手段42は、給水管41から供給する清水W1の流量を調整することができるものであればよく、例えば、流量調整弁などが挙げられる。流量調整手段42を用いて清水供給量を調整することにより、発生させる旋回流のサイズや速度を調整することができ、必要な撹拌強度を得ることが容易となる。
【0031】
給水管41から供給する清水W1は、破砕部3の後段で旋回流を発生させるものであるが、破砕後の被処理物(し渣S)の洗浄に適した水質のものを用いることが好ましい。このような清水W1の給水源43としては、上水、用水、処理水を供給することができるものが挙げられる。より具体的には、上水道や水処理施設などが挙げられる。
【0032】
給水管41(開口部41a)の配置位置は、清水W1による旋回流を発生させることができるものであればよく、特に限定されない。本実施態様としては、例えば、
図1に示すように、搬送路2における破砕部3の下流側、かつ水面近傍に開口部41aを設け、水面から底面に向かって下方向の旋回流が生じるように清水W1を供給することが挙げられる。
これにより、破砕部3の後段で、撹拌効率を低下させることなく混合水Mを撹拌して均一化することが可能となる。また、破砕されたし渣が塊状になることを抑制できるため、混合水Mの排出において、排出部21の閉塞(管の閉塞又は移送ポンプの閉塞)が生じることを抑制することが可能となる。
【0033】
また、このとき、給水部4から発生させる旋回流が、搬送路2の排水部21に向かうように開口部41aの開口方向を調整することが好ましい。これにより、旋回流による撹拌とともに、搬送路2から排水部21を介して次工程に移送する際の排水操作において、旋回流による排出促進が起こり、より円滑な搬送を行うことが可能となる。
【0034】
以上のように、本実施態様における被処理物搬送装置により、水による被処理物の搬送において、搬送路内に設けた破砕部で破砕された被処理物と水との混合物に対して清水を給水し、清水による旋回流を発生させることで、撹拌羽根を備えた撹拌機による機械撹拌ではなく、水流による撹拌を行うことが可能となる。これにより、破砕後の被処理物が撹拌羽根等に絡まることなく、効果的な撹拌及び円滑な搬送を行うことが可能となる。
【0035】
〔第2の実施態様〕
図2は、本発明の第2の実施態様の被処理物搬送装置1Bの構造を示す概略説明図である。
本実施態様に係る被処理物搬送装置1Bは、
図2に示すように、第1の実施態様の被処理物搬送装置1Aにおける給水部4から供給される清水W1により発生する旋回流の向きが異なるものである。
なお、本実施態様における被処理物搬送装置1Bの構成のうち、第1の実施態様の被処理物搬送装置1Aの構成と同じものについては、説明を省略する。また、水位計WGについては、図示及び説明を省略する。
【0036】
本実施態様における給水管41(開口部41a)の配置位置は、
図2に示すように、搬送路2における破砕部3の下流側、かつ底面近傍に開口部41aを設け、開口部41aを介して供給された清水W1が一度底面に向かった後、底面に反射して、底面から水面に向かって上方向の旋回流が生じるように清水W1を供給することが挙げられる。
これにより、破砕部3の後段で、混合水Mに含まれる破砕されたし渣Sが搬送路2内に堆積することを抑制し、混合水Mの均一化をより一層図ることが可能となる。また、破砕されたし渣が機械撹拌時のように塊状になることを抑制するとともに、堆積による凝集化も抑制できるため、混合水Mの排出において、排出部21の閉塞(管の閉塞又は移送ポンプの閉塞)が生じることをより一層抑制することが可能となる。
【0037】
〔第3の実施態様〕
図3は、本発明の第3の実施態様の被処理物搬送装置1Cの構造を示す概略説明図である。なお、
図3(A)は側面図、
図3(B)は上方から見たときの平面図を示すものである。
本実施態様に係る被処理物搬送装置1Cは、
図3に示すように、第2の実施態様の被処理物搬送装置1Bにおける給水部4から供給される清水W1により発生する旋回流の向きと同じ旋回流を発生させるとともに、開口部41aがより排出部21側に近接したものである。
なお、本実施態様における被処理物搬送装置1Cの構成のうち、第2の実施態様の被処理物搬送装置1Bの構成と同じものについては、説明を省略する。また、水位計WGについては、図示及び説明を省略する。
【0038】
本実施態様における給水管41(開口部41a)の配置位置は、
図3(A)に示すように、破砕部3の下流側の搬送路2端部の上部から搬送路2内に挿入し、かつ搬送路2底面側に延伸して排出部21の始点箇所と対向する位置に開口部41aを設け、開口部41aを介して供給された清水W1が排出部21に向かうとともに、搬送路2の底面及び側壁に反射して、底面から水面に向かって上方向の旋回流が生じるように清水W1を供給することが挙げられる。
また、このとき、
図3(B)に示すように、搬送路2端部から給水管41を挿入する箇所と、開口部41aの開口方向(あるいは排出部21の始点箇所)は、搬送路2底面からの同一垂直線上にないものとすることが挙げられる。
これにより、破砕部3の後段で、旋回流による撹拌によって、混合水Mに含まれる破砕されたし渣Sが搬送路2内に堆積することを抑制し、混合水Mの均一化をより一層図ることが可能となるとともに、開口部41aの開口方向を搬送路2の排水部21に対向するように設けることで、搬送路2から排水部21を介して次工程に移送する際の排水操作において排出促進が起こり、より円滑な搬送を行うことが可能となる。また、破砕されたし渣が機械撹拌時のように塊状になることを抑制するとともに、堆積による凝集化も抑制できるため、混合水Mの排出において、排出部21の閉塞(管の閉塞又は移送ポンプの閉塞)が生じることをより一層抑制することが可能となる。
【0039】
〔第4の実施態様〕
図4は、本発明の第4の実施態様の被処理物搬送装置1Dの構造を示す概略説明図である。
本実施態様に係る被処理物搬送装置1Dは、
図4に示すように、第1の実施態様の被処理物搬送装置1Aにおける搬送路2の投入部20として、水W0を導入する導水部22を独立して設け、さらに、給水部4として導水部22から分岐した分岐管44を備えるものである。
なお、本実施態様における被処理物搬送装置1Dの構成のうち、第1の実施態様の被処理物搬送装置1Aの構成と同じものについては、説明を省略する。また、水位計WGについては、図示及び説明を省略する。
【0040】
被処理物を搬送するための水W0と、給水部4から供給する清水W1とは、いずれも求められる水質条件が近いことから、同じ水質のものを用いることができる。
本実施態様においては、
図4に示すように、被処理物(し渣S)を搬送するために用いる水W0を搬送路2に導入する導水部22を設けるとともに、この導水部22から分岐する分岐管44を、給水管41に代えて設けることで、水W0と清水W1について同じ水源を利用することができる。これにより、給水部4から供給する清水W1の給水源43に係る構成を省略した装置構造とすることができる。
【0041】
導水部22は、水W0を搬送路2の上流側に導入するためのものであり、水W0の水源となり得るもの(上水道、水処理施設等)と搬送路2の上流を接続する配管22aを備えるものが挙げられる。
また、分岐管44は、搬送路2の上流に導入される水W0の一部を、搬送路2の下流(破砕部3の後段)に供給される水(清水W1)として供給するよう、導水部22から分岐できるものであればよく、例えば、導水部22の配管22aを分岐させる箇所に開閉弁などの切替手段を設けるものとしてもよい。また、分岐管44に、第1の実施態様における流量調整手段42を備え、破砕部3の後段に供給する清水W1の流量調整とともに、水W0から分岐する水量を調整するものとしてもよい。
なお、本実施態様における給水部4の構造としては、第1の実施態様における給水部4の給水管41及び開口部41aに係る構造に代えて、第2の実施態様又は第3の実施態様に示す給水部4の給水管41及び開口部41aに係る構造を用いるものとしてもよい。
【0042】
以上のように、本実施態様における被処理物搬送装置1Dでは、被処理物を搬送するための水と、撹拌のための旋回流を発生させる水の供給源を一にすることができる。また、装置を大規模化することなく、水流による撹拌を行うことが可能となる。
【0043】
なお、上述した実施態様は被処理物搬送装置及び被処理物搬送方法の一例を示すものである。本発明に係る被処理物搬送装置及び被処理物搬送方法は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る被処理物搬送装置及び被処理物搬送方法を変形してもよい。
【0044】
例えば、本実施態様の搬送路の側壁及び/又は底部に、供給部から供給する清水の水流方向を調整する構造体(整流板)を設けるものとしてもよい。これにより、清水による旋回流を所望する方向に向けて発生させることが容易となり、混合水の撹拌効率や混合水の円滑な搬送をより確実に行うことができる。
【0045】
また、本実施態様における給水部内を搬送路内の混合水が逆流しないよう、給水管に逆止弁を設けることとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の被処理物搬送装置及び被処理物搬送方法は、水による被処理物の搬送に利用することができる。特に、下水処理場やポンプ場等の沈砂池設備等で捕集、分離されたし渣の搬送に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0047】
1A,1B,1C,1D 被処理物搬送装置、2 搬送路、20 投入部、21 排出部、22 導水部、22a 配管、3 破砕部、31 破砕機、4 給水部、41 給水管、41a 開口部、42 流量調整手段、43 給水源、44 分岐管、M 混合水、S し渣、W0 水、W1 清水、WG 水位計