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特開2023-131460低濃度炭酸ガスによる中性再生土製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131460
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】低濃度炭酸ガスによる中性再生土製造方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/00 20060101AFI20230914BHJP
   B09C 1/08 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
C02F11/00 C ZAB
B09C1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036240
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】512150532
【氏名又は名称】鈴木 孝行
(71)【出願人】
【識別番号】503226903
【氏名又は名称】domi環境株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522094989
【氏名又は名称】エコラボ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝行
(72)【発明者】
【氏名】定光 孝義
(72)【発明者】
【氏名】山内 裕元
(72)【発明者】
【氏名】守屋 勉
(72)【発明者】
【氏名】早野 公敏
【テーマコード(参考)】
4D004
4D059
【Fターム(参考)】
4D004AA41
4D004AC04
4D004BA02
4D004CA07
4D004CA35
4D004CB02
4D004CC01
4D004DA03
4D004DA12
4D059AA30
4D059BF13
4D059BG00
4D059BJ00
4D059BK09
4D059BK11
4D059BK30
4D059CC04
4D059DA37
4D059DA64
4D059EB05
4D059EB07
4D059EB11
4D059EB16
(57)【要約】
【課題】濃度10%以下の低濃度炭酸ガスを濃縮せず、pHが8.6以下の中性再生土を短時間で大量に製造することが可能な、低濃度炭酸ガスによる中性再生土製造方法を提供する。
【解決手段】建設汚泥または建設発生土にPS(ペーパースラッジ)灰系改質材を添加して混合し改質固化処理土を生成する改質固化工程、前記改質固化処理土をほぐして顆粒化させたほぐし造粒改質土を生成するほぐし造粒工程、前記ほぐし造粒改質土をふるいで分級した分級土を生成する分級工程、前記分級土をピット内で層状に敷設する敷設工程、濃度10%以下の低濃度炭酸ガスを前記ピットの底部に供給して前記分級土を中性化させる中性化工程、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設汚泥または建設発生土にPS(ペーパースラッジ)灰系改質材を添加して混合し改質固化処理土を生成する改質固化工程、
前記改質固化処理土をほぐして顆粒化させたほぐし造粒改質土を生成するほぐし造粒工程、
前記ほぐし造粒改質土をふるいで分級した分級土を生成する分級工程、
前記分級土をピット内で層状に敷設する敷設工程、
濃度10%以下の低濃度炭酸ガスを前記ピットの底部に供給して前記分級土を中性化させる中性化工程、
を含むことを特徴とする、低濃度炭酸ガスによる中性再生土製造方法。
【請求項2】
前記敷設工程は、前記分級土を粒度の大きい順に下から前記ピットに敷設することを特徴とする、請求項1記載の低濃度炭酸ガスによる中性再生土製造方法。
【請求項3】
前記敷設工程において最上層に敷設される前記分級土は、粒径が10mm未満であり、最下層に敷設される前記分級土は、粒径が40mm以上75mm未満であることを特徴とする、請求項2記載の低濃度炭酸ガスによる中性再生土製造方法。
【請求項4】
前記中性化工程は、
前記敷設工程において前記ピット内に敷設された前記分級土の体積をVと仮定した場合、
供給開始から0.1~1時間の間、前記低濃度炭酸ガスを5V~20Vの体積流量で供給する初期供給工程、
前記低濃度炭酸ガスが前記ピット内に充満した後に前記低濃度炭酸ガスを8V~40Vの体積流量で供給する後期供給工程、
前記初期供給工程と前記後期供給工程の間に、前記低濃度炭酸ガスを80V~320Vの体積流量で供給する中期供給工程
を含み、
前記低濃度炭酸ガスの全供給時間は4~24時間であることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の低濃度炭酸ガスによる中性再生土製造方法。
【請求項5】
前記中性化工程の後、粒径が20mm未満の前記分級土をすき取るすき取り工程を含むことを特徴とする、請求項1~4の何れか一項に記載の低濃度炭酸ガスによる中性再生土製造方法。
【請求項6】
複数サイクルの中性化処理を経た、粒径が20mm以上の前記分級土を、該低濃度炭酸ガスによる中性再生土製造方法によって得られた中性再生土と混合することを特徴とする、請求項1~5の何れか一項に記載の低濃度炭酸ガスによる中性再生土製造方法。
【請求項7】
前記改質固化処理土は、pHが11以上の強アルカリ性を呈することを特徴とする、請求項1~6の何れか一項に記載の低濃度炭酸ガスによる中性再生土製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ性を呈する軟弱な建設汚泥を改質するとともに低濃度炭酸ガスを効率的に改質土壌に炭酸カルシウムとして固定し、中性の再生土を製造する方法を提供する、低濃度炭酸ガスによる中性再生土製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場で排出される建設汚泥は、セメントや石灰成分を含有するケースが多く、通常pHが11以上のアルカリ性を呈する。このような建設汚泥は、中間処理場に持ち込まれた後、生石灰やセメント系固化材を添加し、改質処理した上で再生土として再利用されたり、または最終処分場で埋立処分される。再生土として再利用される場合、pHが11を上回る強アルカリを呈することが多いため、利用用途が限られるという問題が指摘されている。
【0003】
このような問題に対処するため、発明者らはすでに、「再生土製造システムおよび製造方法」に関する特許(特許文献1参照)、および「二酸化炭素の固定化技術による中性再生土製造システムおよび製造方法」に関する特許(特許文献2参照)を取得している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6559644号公報
【特許文献2】特許第6975757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
今回の発明は、先願特許では解決されていないCO2濃度に関する課題の解決策を提案する。すなわち、上述の2つの特許発明ではアルカリ建設土壌に対して純度の高い(濃度95%以上)炭酸ガスを接触させることで中性再生土を製造する方法を考案したものであった。したがって、工場の煙突等から排出される比較的低濃度(濃度10%以下)のCO2では、効率的かつ実用レベルでの中性化が困難であるという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、濃度10%以下の低濃度炭酸ガスを濃縮せず、pHが8.6以下の中性再生土を短時間で大量に製造することが可能な、低濃度炭酸ガスによる中性再生土製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は下記の事項を包含する。
本発明の低濃度炭酸ガスによる中性再生土製造方法によれば、
建設汚泥または建設発生土にPS(ペーパースラッジ)灰系改質材を添加して混合し改質固化処理土を生成する改質固化工程、
前記改質固化処理土をほぐして顆粒化させたほぐし造粒改質土を生成するほぐし造粒工程、
前記ほぐし造粒改質土をふるいで分級した分級土を生成する分級工程、
前記分級土をピット内で層状に敷設する敷設工程、
濃度10%以下の低濃度炭酸ガスを前記ピットの底部に供給して前記分級土を中性化させる中性化工程、
を含むことを特徴とする。
【0008】
上述の工程を経ることにより、濃度10%以下の低濃度炭酸ガスを濃縮せず、pHが8.6以下の中性再生土を短時間で大量に製造することができる。
【0009】
また、本発明の低濃度炭酸ガスによる中性再生土製造方法によれば、
前記敷設工程は、前記分級土を粒度の大きい順に下から前記ピットに敷設することを特徴とする。
【0010】
これにより、各層ごとに粒径が揃って粒径を分級しない場合よりも分級土間の空隙が大きくなり(分級土の乾燥密度が小さくなり)、通気性が上昇するため中性化時間を短縮化することができる。
【0011】
また、本発明の低濃度炭酸ガスによる中性再生土製造方法によれば、
前記敷設工程において最上層に敷設される前記分級土は、粒径が10mm未満であり、最下層に敷設される前記分級土は、粒径が40mm以上75mm未満であることを特徴とする。
【0012】
このように、粒径の粗い分級土を下層に敷設することにより、粒径の粗い分級土ほど中性化に要する時間が長くなるという中性化特性を利用し、下層ほどCO2の接触時間を長く確保することで中性化効率を向上させることができる。さらに、最上部に粒径の細かな改質土を敷設することで土層上部の密封度が増し、表層からのCO2の散逸を防ぐ蓋としての機能を果たすことができる。
【0013】
また、本発明の低濃度炭酸ガスによる中性再生土製造方法によれば、
前記中性化工程は、
前記敷設工程において前記ピット内に敷設された前記分級土の体積をVと仮定した場合、
供給開始から0.1~1時間の間、前記低濃度炭酸ガスを5V~20Vの体積流量で供給する初期供給工程、
前記低濃度炭酸ガスが前記ピット内に充満した後に前記低濃度炭酸ガスを8V~40Vの体積流量で供給する後期供給工程、
前記初期供給工程と前記後期供給工程の間に、前記低濃度炭酸ガスを80V~320Vの体積流量で供給する中期供給工程
を含み、
前記低濃度炭酸ガスの全供給時間は4~24時間であることを特徴とする。
【0014】
このように、低濃度炭酸ガスの供給量と分級土の接触時間を調整することにより、分級土の中性化を短期間かつ効率的に行うことができる。
【0015】
また、本発明の低濃度炭酸ガスによる中性再生土製造方法によれば、
前記中性化工程の後、粒径が20mm未満の前記分級土をすき取るすき取り工程を含むことを特徴とする。
【0016】
これにより、除去された分級土は、製品ストックヤードに移され、そのまま中性再生土として利用される。
【0017】
また、本発明の低濃度炭酸ガスによる中性再生土製造方法によれば、
複数サイクルの中性化処理を経た、粒径が20mm以上の前記分級土を、該低濃度炭酸ガスによる中性再生土製造方法によって得られた中性再生土と混合することを特徴とする。
【0018】
これにより、ピット内に受け入れた建設汚泥を余すことなく利用することができる。
【0019】
また、本発明の低濃度炭酸ガスによる中性再生土製造方法によれば、
前記改質固化処理土は、pHが11以上の強アルカリ性を呈することを特徴とする。
【0020】
すなわち、本発明によれば、このような強アルカリ性を呈する建設汚泥を中性化することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る発明によれば、濃度10%以下の低濃度炭酸ガスを濃縮せず、pHが8.6以下の中性再生土を短時間で大量に製造することが可能な、低濃度炭酸ガスによる中性再生土製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施の形態に係る分級土が層状に敷設され中性化されるピットを示す概要図である。
図2】分級土の試料を収容した供試体を静置するインキュベーターを示す概要図である。
図3】中性再生土の中性化完了時間とCO2濃度の関係を配合試料別に示すグラフである。
図4】アルカリ模擬汚泥の乾燥密度別の中性化時間を示すグラフである。
図5】中性再生土の中性化完了時間と粒径の関係を示すグラフである。
図6】カラム型による中性化・固定化試験の概念図である。
図7】二酸化炭素の流量と中性化時間の関係を示すグラフである。
図8】二酸化炭素の流量とその流入量に対する土壌への固定化率の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態に係る低濃度炭酸ガスによる中性再生土製造方法について説明する。まず、建設現場で排出された建設汚泥が中間処理施設に搬送される。ここで、中間処理施設に搬送される建設汚泥は、強アルカリ性を呈する産業廃棄物である。また、この建設汚泥のコーン指数(qc)は200kN/m2未満である。
【0024】
(ステップS1:改質固化工程)
ここで、中間処理施設に持ち込まれたアルカリ性の建設汚泥は、そのまま放置しておけばやがては固化する。しかしながら、中間処理施設のスペースの制約上、そのまま長期間放置(養生)しておくことができない。よって、強アルカリを呈する固化材を追添加して改質し、速やかにハンドリングできるように処置するのが一般的である。この場合、固化材の追添加によりpHは12以上になるケースも見受けられる。
【0025】
本発明では、かかる従来技術をそのまま適用し、建設汚泥の改質固化を行う。すなわち、中間処理施設の改質固化処理エリア(不図示)において、建設汚泥にアルカリ性改良材を添加して改質固化する。アルカリ性改良材としては、PS(ペーパースラッジ)灰系吸水性改質材を用いる。
【0026】
なお、後述の実施例1で説明するように、試験を実施した結果、PS灰系改質材を添加することで建設汚泥の中性化時間が大幅に短縮できることが見出されたため、本発明において、アルカリ性改良材としてPS灰系性改質材を使用することが必須条件である。
【0027】
なお、PS灰系改質材の添加量は建設汚泥の含水状態にもよるが、通常は建設汚泥中の固体成分に対する質量比で5~30%の範囲であり、10~20%であればより好適である。PS灰系改質材を20%以上添加した建設汚泥では、CO2による中和反応後の水の生成に伴う再泥化が起きないことが室内実験で確認されている。また、PS灰系性改質材を添加した後の建設汚泥(以下、改質固化処理土と呼ぶ。)のpHの値については限定されない。
【0028】
かかる改質固化工程において、建設汚泥にアルカリ固化材を添加することにより、軟弱な建設汚泥が確実に改質固化され、半固体状の改質固化処理土が生成される。
【0029】
(ステップS2:ほぐし造粒工程)
半固体状となった土塊状の改質固化処理土は、水和反応が進行中であり、そのまま放置すれば土塊状のまま固結してしまう。このため、半固体状となった改質固化処理土をほぐし造粒技術(たとえば、特開2015-127050号公報参照)を用いて解砕し、顆粒化する。
【0030】
ここで、ほぐし造粒の適否の判定は、コーン指数試験方法(JIS A 1228)によって行う。通常、改質固化処理土のコーン指数が100kN/m2以上ならばほぐし造粒は可能であるが、より顆粒化した建設汚泥(以下、ほぐし造粒改質土という。)をほぐし造粒で製造するには、改質固化処理土のコーン指数が400kN/m2以上1800kN/m2未満であることが好ましい。なお、ほぐし造粒処理に用いる機械(ほぐし造粒手段)は、バックホウでもよいが、解砕機能を有する土質改良機(プラント)のような解砕機が好適である。
【0031】
かかるほぐし造粒工程において得られたほぐし造粒改質土は、顆粒化されているため、粒子の表面積が増加し、空気や炭酸ガスに接触しやすい状態ができるとともに、適度な粒度に調整されている。
【0032】
具体的には、PS灰系改質材が改質固化処理土に添加されているため顆粒化が促進され、ほぐし造粒改質土の大半の粒径は40mm以下になる。
ここで、実際のプラントでほぐし造粒改質土を生成した場合、概算値として、粒径40mm以上75mm未満のほぐし造粒改質土が10%、粒径40~20mmのほぐし造粒改質土が約10%、粒径20~10mmのほぐし造粒改質土が約40%、粒径10mm以下のほぐし造粒改質土が約40%の割合で発生することが確認されている。
【0033】
また、ほぐし造粒改質土は、表面積が増えた分、乾燥しやすい状態になっている。これと同時に、空気中の二酸化炭素と反応して、pHが低減しやすい状態にもなっている。
【0034】
(ステップS3:分級工程)
次に、ほぐし造粒改質土をふるいにかけて分級する。具体的には、40mm、20mm、10mmのふるいを用意し、ほぐし造粒改質土を粒径40mm以上75mm未満の分級土(以下、40mmオーバー材という)、粒径40未満20mm以上の分級土(以下、40~20mm材という)、粒径20未満10mm以上の分級土(以下、20~10mm材という)、粒径10mm未満の分級土(以下、10mmアンダー材という)の4種類の粒度の異なる分級土に分級する。ふるい機としては、振動ふるいが好適である。
【0035】
(ステップS4:敷設工程)
図1は、実施の形態に係る分級土が投入されるピットを示す概要図である。図1(a)に示すように、ピット2は、地面に形成された矩形状の空間である。ピット2の底部には、耐熱性のパイプなどで形成された、炭酸ガスを供給するための流入管4が予め埋設されている。なお、流入管4の地上の端部には、炭酸ガスを流入管4に供給するためのブロワー8が接続されている。
【0036】
次に、図1(b)に示すように、ピット2の中に40mmオーバー材10、40~20mm材12、20~10mm材14、10mmアンダー材16の順に緩詰の状態で分級土が敷設される。
【0037】
このように、ほぐし造粒改質土を分級し、粒度の大きい順に下から緩詰の状態でピット2に敷設することにより、分級土における炭酸ガスの通気性を上昇させることができる。すなわち、分級土は、各層ごとに粒径が揃っているので、粒径を分級しない場合よりも分級土間の空隙が大きくなり(分級土の乾燥密度が小さくなり)、通気性が上昇するため中性化時間の短縮化につながる。
【0038】
また、粒径が大きい分級土ほど、通気性がよくなることも一般的に知られた事実である(粘土よりも砂の、そして砂よりも礫の通気性が良い)。そこで、粗い粒径の材料を下層に、細かい粒径の材料を上層に敷設すると下層ほど通気性のよい土層空間を作り出すことができる。その結果、下層に敷設された流入管からの強制的なCO2の圧入(特許第6975757号公報参照)が不要となる。併せて、粒径の粗い分級土を下層に敷設することにより、粒径の粗い分級土ほど中性化に要する時間が長くなるという中性化特性を利用し、下層ほどCO2の接触時間を長く確保することで中性化効率を向上させることができる。さらに、最上部に粒径の細かな改質土を敷設することで土層上部の密封度が増し、表層からのCO2の散逸を防ぐ蓋としての機能を果たすことができる。
【0039】
(ステップS5:中性化工程)
この状態において、ブロワー8を駆動し、図1(c)に示すように、流入管4に濃度10%以下の低濃度炭酸ガス(もちろん、濃度10%以上の炭酸ガスでもよい。)を供給する。
【0040】
ここで、上述の敷設工程(ステップS4)においてピット2内に敷設された分級土の体積をVと仮定した場合、初期の段階(供給開始から0.1~1時間後)では、低濃度炭酸ガスが5V~20Vの体積流量で緩やかに供給されるようにブロワー8の圧力を絞り(初期供給工程)、その後ブロワー8の圧力を高め低濃度炭酸ガスの供給量を次第に強めて80V~320Vの体積流量で供給し(中期供給工程)、低濃度炭酸ガスがピット2内に充満したら再びブロワー8の圧力を絞って低濃度炭酸ガスが10V~40Vの体積流量で供給されるようにする(後期供給工程)。なお、低濃度炭酸ガスがピット2内に充満したことについては、検知装置によって検知し、自動的にブロワー8に圧力を絞る指示を与えてもよい。
【0041】
低濃度炭酸ガスがピット2内に充満した後、所定の時間が経過したらブロワー8をオフにし、低濃度炭酸ガスの供給を停止する。なお、供給開始から停止までの時間は4~24時間程度である。このため、分級土の中性化に要する時間もまた概ね4~24時間程度となる。
【0042】
このように、低濃度炭酸ガスの供給量と分級土の接触時間を調整することにより、分級土の中性化を短期間かつ効率的に行うことができる。
【0043】
また、空気よりも重い低濃度炭酸ガスをピット2の底部に埋設された流入管4から供給することにより、低濃度炭酸ガスがピット2内に徐々に堆積され、満遍なく低濃度炭酸がピット2内に行き渡る。このため、低濃度炭酸ガスが上層まで供給された時点で下層から上層まで同時に中性化が完了する。
【0044】
(ステップS6:すき取り工程)
次に、低濃度炭酸ガスの供給を停止し、ピット2から10mmアンダー材16と20~10mm材14をすき取り、除去する。除去された分級土は、製品ストックヤードに移され、そのまま中性再生土として利用される。
【0045】
なお、下層に残った中性化率の低い40~20mm材12については、次回以降のサイクルの中性化処理(ステップS4:敷設工程、ステップS5:中性化工程)で繰り返し利用され、引き続き中性化される。最終的に中性化された40~20mm材12は、解砕機により20mm未満に解砕した上で、ステップS6:すき取り工程ですき取られた10mmアンダー材16と20~10mm材14と混合して中性再生土として利用される。
【0046】
なお、最下層に位置する40mmオーバー材10は発生量もわずかであるため通気層としてそのまま継続して利用される。このように一定期間継続的に利用することでpHが8.6以下に低下する。そして、最終的には解砕機により、20mm未満に解砕することで中性再生土として利用される。
【0047】
したがって、先願技術(特許第6975757号公報参照)のように単粒砕石を別途購入する必要がなるなるとともに、粒径の大きい分級土の再生利用が可能となる。
この実施の形態に係る発明によれば、コーン指数800kN/m2以上、かつ濃度10%以下の低濃度炭酸ガスを濃縮せず、pHが8.6以下の中性再生土を24時間以内という短時間で大量に製造することが可能な、低濃度炭酸ガスによる中性再生土製造方法を提供することができる。
【0048】
また、低濃度炭酸ガスを加圧せず、緩やかに供給することで、CO2の固定効率を高めるとともにピット2外への散逸を最小限に抑えることができる。さらに、ピット2内に受け入れた建設汚泥を余すことなく利用することができる。
【0049】
なお、先願の発明(特許第6975757号公報参照)では高圧の空気と共に純度100%に近い高濃度炭酸ガスをピット底部から供給することで、最大土層厚3m程度(1ピットで約150m3)まで再生土を中性化することが可能であるとした。しかし、実際には土層厚1.5mまでが実用レベルであった。これに対してこの実施の形態に係る発明では、炭酸ガスの濃度が従来の10分の1以下であるにもかかわらず、3m以上の土層厚の建設汚泥を中性化することが可能である。
【0050】
以下、従来の方法と比較して以下の効果が期待できる。
(1)低コストの技術である。従来の技術は、炭酸ガスを濃縮するなどして純度を高めた工業用炭酸ガスを購入して利用する中性化方法を提案したものである。これに対して、本発明では濃度の低い低濃度炭酸ガスをそのまま中性化に利用することができる。例えば、石油精製プラントから排出される排気ガス中の炭酸ガス濃度は10%程度と言われており、こうした排ガス中のCO2を濃縮することなく直接利用することができれば、大幅なコストダウンにつながる。さらに、CO2を圧入するための装置や動力も不要になるので、従来技術に比べて低コストでの中性化が実現できる。
【0051】
(2)カーボンニュートラルに貢献する技術である。
工場から排出される炭酸ガスは、温室効果ガスとして地球温暖化の原因の一つに挙げられている。その炭酸ガスを再生土の中性化に利用することで、CO2が炭酸塩として土に固定されるため、カーボンリサイクル技術の一つになる。さらに、分級土に低濃度炭酸ガスを効率的かつ大量に固定することで、カーボンニュートラル(場合によってはカーボンネガティブ)につながり、脱炭素社会の実現に向けた社会貢献に強く結びつく。
【0052】
(3)建設汚泥の再利用率が高まる。
現在利用用途が限られているアルカリ建設汚泥を高品質の中性再生土に改質することで幅広い地盤材料としてのみならず植生基盤材としても利用することができる。また、これまで利用されずに廃棄してきた粒径20mmオーバーの再生土も中性再生土として利用することができるので、建設汚泥の再利用率の向上が期待できる。
【0053】
(4)特別な機械を必要としないので汎用性が高い。
先願特許(特許第6975757号)と比較して追加する機械は、分級するための分級機(振動ふるい等)と顆粒化した粗粒状の改質土を解砕する解砕機のみであるため、汎用の機械を適用することで中性再生土の製造が可能である。
【0054】
(5)再生土は中性かつ高品質である
再生土は、pH=5.8~8.6の中性を示し、コーン指数は800kN/m2以上を確保する。さらに、容易には再泥化しない高品質な再生土に仕上げることができる。
【0055】
なお、本実施形態の発明においては、建設汚泥を中性化して中性再生土を製造する場合を例示しているが、本発明は、建設汚泥に代えて、建設工事に伴い副次的に発生する建設発生土を用いた場合にも適用できる。
【0056】
なお、本発明では、低濃度CO2による再生土の中性化を達成するために10%以下の低濃度炭酸ガスを反応させる中性化試験を実施した結果、以下に示す新たな知見が得られた(詳細は実施例に示す)。
1)PS灰系改質材の添加量を増やすと、中性化時間が飛躍的に短くなる。
2)乾燥密度が小さい(間隙が大きい)改質土ほど、中性化時間が短くなる。
3)粒径の細かい改質土ほど、中性化時間が短くなる。
4)CO2濃度が10%以下でも、上記1)~3)の条件を揃えれば24時間以内(最短で数時間)の接触時間で中性化する。
5)CO2の流量が小さいほど中性化時間は長くなるが、CO2固定化率は大きくなる。
以上の知見が、本発明において上述のステップS1~6の工程を必要とすることとなった根拠である。
【実施例0057】
次に、実施の形態に係る発明を用いて行った実験の実施例について説明する。
[実施例1] PS灰系改質材の中性化促進効果
初期含水比w=1.0wLの青粘土(液性限界wL=40.7%、塑性限界wP=23.7%)に、高炉セメントB種を乾燥質量比で3%、6%添加し、模擬汚泥を作製した。セメント3%添加のものについては、さらにPS灰系改質材を青粘土の乾燥質量に対し0~20%添加し、各試料を作製した。作製した試料は5日間密閉養生し、PS灰系改質材を添加していない試料については、ふるいを用いて9.5mm以上の土粒子を取り除いた。
【0058】
作製した各試料を直径82mmのプラスチックカップに層厚30mmになるよう緩詰めしたものを供試体とした。各試料について10個の供試体を作製し、図2に示すようなインキュベーター内に静置し、CO2濃度の異なる条件下で養生することで中性化を行った。本試験では、任意の経過時間で供試体を1個ずつインキュベーター内から取り出し、地盤工学会基準に基づき、pH測定した。なお、本実験ではpH=8.6を下回った時点を中性化完了とみなし、中性化完了時間tNと定義した。
【0059】
図3は中性化完了時間tNとCO2濃度の関係を作製した配合試料別に示したものである。いずれの配合条件においても、CO2濃度が低くなるとtNが長くなる傾向にある。ただし、PS灰系改質材を10%または20%添加したケースでは添加しないケースに比べて劇的に中性化完了時間が短くなっている。また、CO2濃度が2~10%の範囲では、PS灰系改質材を添加したすべてケースで中性化完了時間が24時間以内となっている。以上のことから、PS灰系改質材を添加することが低濃度CO2ガスによる中性化において極めて有効であることが判明した。
【0060】
[実施例2] 密度の影響
w=1.0wLの青粘土に、高炉セメントB種とPS灰系改質材それぞれ乾燥質量比で3%、20%添加しアルカリ模擬汚泥を作製した。その模擬汚泥を直径82mmのカップにh=30mmまで詰め方を変えて作製した供試体(乾燥密度ρd=0.74、0.93、1.16g/cm3)をCO2濃度10%でインキュベーター養生し中性化した。各密度について約10個の供試体を準備し、中性化中に順次取り出してpHを測定した。その結果を図4に示す。
乾燥密度ρdの小さいケースほど、中性化する時間が短くなっており、間隙を大きくすることで通気性を良くするほど、CO2による中性化の効率が高まることが本試験で確認された。
【0061】
[実施例3] 粒径の影響
初期含水比w=約30,40,50%の笠岡粘土(比較的ねばりのある粘土、液性限界wL=60.4%、塑性限界wP=26.0%)に高炉セメントB種とPS灰系改質材それぞれ乾燥質量比で3%、10%添加しアルカリ汚泥を作製した。その試料を解きほぐしてふるいで分級し、各ふるい通過分の試料を用いて、CO2濃度10%でインキュベーター養生し中性化した。図5に結果を示す。粒径の小さな改質土ほど中性化完了に要する時間tNが短くなることが確認された。
【0062】
[実施例4] CO2の流量の影響
w=1.0wLの青粘土に、高炉セメントB種とPS灰系改質材それぞれ乾燥質量比で3%、20%添加しアルカリ汚泥を作製した。この汚泥を用いて、φ=100mm、h=127mmの1Lの供試体(乾燥密度ρd=0.75~0.77g/cm3)に濃度10%のCO2ガスを流量Q=0.5、1.0、1.5L/minで透過させ、中性化を実施した(図6参照)。試験では流入出で計測したCO2濃度比Cout/Cinから、中性化時間や固定したCO2量も評価した。流量Qが大きくなると、Cout/Cin=1.0に到達する中性化時間tEONが短くなることが図7でわかる。また、流入CO2に対するCO2固定化率F(%)を求め、FをQに対して整理したものを図8に示す。Qの増加に伴い、CO2固定化率Fが低下することが判明した。
【0063】
したがって、中和時間を早めるためには、CO2の流量を大きくすることが良く、一方でCO2の土壌への固定化率を上げるたけには流量を小さくすることが重要であり、炊飯と同じ要領で、流量加減を調節することでCO2によるアルカリ土壌を効率的に中和することができる。
【0064】
以上の実施例から、強アルカリ建設汚泥でも確実にpHを低下させるとともに高品質の中性再生土の製造が可能であることを確認した。
【符号の説明】
【0065】
2 ピット
4 流入管
8 ブロワー
10 40mmオーバー材
12 40~20mm材
14 20~10mm材
16 10mmアンダー材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8