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特開2023-131461画像処理装置、画像処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131461
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20230914BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20230914BHJP
   G06T 7/11 20170101ALI20230914BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20230914BHJP
   G06V 10/22 20220101ALI20230914BHJP
   G06V 10/34 20220101ALI20230914BHJP
【FI】
A61B6/03 360J
A61B6/03 360Z
G06T1/00 290B
G06T7/11
G06T7/00 612
G06V10/22
G06V10/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036241
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】生清 雄太
(72)【発明者】
【氏名】山嵜 深
【テーマコード(参考)】
4C093
5B057
5L096
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093AA26
4C093CA18
4C093DA01
4C093FD05
4C093FF16
4C093FF17
4C093FF19
4C093FF20
4C093FF28
5B057AA09
5B057BA03
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB16
5B057CE04
5B057CE05
5B057CE06
5B057DA08
5B057DB02
5B057DB09
5B057DC40
5L096BA06
5L096BA13
5L096CA02
5L096EA02
5L096EA06
5L096FA02
5L096FA54
5L096GA10
5L096GA30
5L096GA55
5L096HA07
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】推論精度を向上させること。
【解決手段】実施形態に係る画像処理装置は、取得部と、第1の推論部と、補正部と、第2の推論部とを備える。取得部は、入力画像を取得する。第1の推論部は、前記入力画像に含まれる第1の領域に関する第1の領域画像を推論する。補正部は、前記第1の領域画像から、前記第1の領域を補正した補正画像を生成する。第2の推論部は、前記入力画像と前記補正画像とに基づいて、前記入力画像に含まれる第2の領域に関する推論を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像を取得する取得部と、
前記入力画像に含まれる第1の領域に関する第1の領域画像を推論する第1の推論部と、
前記第1の領域画像から、前記第1の領域を補正した補正画像を生成する補正部と、
前記入力画像と前記補正画像とに基づいて、前記入力画像に含まれる第2の領域に関する推論を行う第2の推論部と、
を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記補正部は、前記第1の領域画像から、前記第1の領域の形状または分布を補正した補正画像を生成する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記補正部が実行する補正処理は、前記第2の推論部における、前記第1の領域画像の推論誤差の影響を緩和する処理である、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記補正部が実行する補正処理は、前記第1の領域画像の形状または分布の曖昧さを増大させる処理である、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記補正部が実行する補正処理は、前記第1の領域画像を平滑化する処理である、請求項1~4のいずれか一つに記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記補正の処理にて使用される補正パラメータを取得する補正パラメータ取得部を更に備え、
前記補正部は、前記補正パラメータを用いて、前記補正画像を生成する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記補正の処理にて使用される補正パラメータを決定する補正パラメータ決定部を更に備え、
前記補正部は、前記補正パラメータを用いて、前記補正画像を生成する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記補正パラメータは、前記第2の推論部で使用される学習済みモデルに対応付けられた値である、請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記第1の推論部の行う推論に用いられる学習済みモデルの学習を行う学習部を更に備える、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記補正パラメータ決定部は、前記第1の領域を構成する画素数に基づいて、前記補正パラメータを決定する、請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記補正パラメータ決定部は、前記第1の領域を構成する複数の部分領域に応じて複数の前記補正パラメータを決定する、請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記補正パラメータ決定部は、前記第2の領域に関する推論の精度の事前確率に応じて、前記部分領域ごとの前記補正パラメータを決定する、請求項11に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記補正部が実行する補正処理は、前記第1の領域画像を膨張させる処理である、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記第1の領域は臓器であり、前記第2の領域は腫瘍又は病変である、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項15】
前記第2の推論部は、前記第2の領域の画像である第2の領域画像を推論する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項16】
前記第2の推論部は、前記第2の領域の存在有無に関して推論する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項17】
前記補正部は、前記第1の領域の境界を明確化する第1の補正を行ったのちに、前記第1の領域の境界をぼかす第2の補正を行って前記補正画像を生成する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項18】
入力画像を取得し、
前記入力画像に含まれる第1の領域に関する第1の領域画像を推論し、
前記第1の領域画像から、前記第1の領域を補正した補正画像を生成し、
前記入力画像と前記補正画像とに基づいて、前記入力画像に含まれる第2の領域に関する推論を行う、画像処理方法。
【請求項19】
コンピュータに、
入力画像を取得し、
前記入力画像に含まれる第1の領域に関する第1の領域画像を推論し、
前記第1の領域画像から、前記第1の領域を補正した補正画像を生成し、
前記入力画像と前記補正画像とに基づいて、前記入力画像に含まれる第2の領域に関する推論を行う処理を実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、画像処理装置、画像処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
機械学習などにより医用画像から所定の領域を抽出する場合に、二段階抽出を行う場合がある。例えば、一段階目の抽出において注目物体に関連する領域を推論してから、二段階目の抽出において、目的の領域を高精度に推論する方法がある。例えば、膵癌領域を推論する場合、一段階目の抽出において画像中から膵臓領域を推論し、二段階目の抽出において、膵癌領域を推論する場合がある。これにより、探索・計算範囲を削減し、また機械学習における学習処理の複雑化を回避することができる。
【0003】
しかしながら、一段階目の抽出において、領域の欠損や境界の誤認識等により、誤差が生じた場合、この誤差が二段階目の抽出に影響し、目的の領域の抽出がうまくいかない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-39507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面の開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、推論精度を向上させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る画像処理装置は、取得部と、第1の推論部と、補正部と、第2の推論部とを備える。取得部は、入力画像を取得する。第1の推論部は、前記入力画像に含まれる第1の領域に関する第1の領域画像を推論する。補正部は、前記第1の領域画像から、前記第1の領域を補正した補正画像を生成する。第2の推論部は、前記入力画像と前記補正画像とに基づいて、前記入力画像に含まれる第2の領域に関する推論を行う。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る画像処理装置の構成の一例を表す図である。
図2図2は、実施形態に係る画像処理装置を含むX線CT装置の構成の一例を表す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る画像処理装置が行う処理の一例を示したフローチャートである。
図4図4は、第1の実施形態に係る画像処理装置が行う処理について説明した図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る画像処理装置が行う処理について説明した図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る画像処理装置が行う処理について説明した図である。
図7図7は、第1の実施形態に係る画像処理装置により行われた推論結果の一例を説明した図である。
図8図8は、第2の実施形態に係る画像処理装置が行う処理の一例を示したフローチャートである。
図9図9は、第3の実施形態に係る画像処理装置が行う処理の一例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、画像処理装置、画像処理方法及びプログラムの実施形態について詳細に説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
はじめに、図1及び図2を用いて、実施形態に係る医用画像処理装置及びX線CT装置の構成例について説明する。図1は、実施形態に係る医用画像処理装置100を示した図である。また、図2は、実施形態に係る医用画像処理装置100を組み込んだ医用画像診断装置の一例を示した図である。なお、図2においては、医用画像処理装置100を組み込んだ医用画像診断装置が、X線CT装置200である場合について説明している。ただし、実施形態は、医用画像診断装置がX線CT装置200である場合に限られず、医用画像診断装置は、例えば超音波診断装置、磁気共鳴イメージング装置、PET診断装置など、その他の医用画像診断装置であってもよい。また、実施形態に係る医用画像処理装置は、医用画像診断装置に組み込まれていない場合でもよく、医用画像処理装置として単独で機能してもよい。
【0010】
図1において、医用画像処理装置100は、メモリ132、入力装置134、ディスプレイ135、処理回路150を備える。処理回路150は、取得機能150a、第1の推論機能150b、補正機能150c、第2の推論機能150d、補正パラメータ取得機能150e、補正パラメータ決定機能150f、学習機能150g、設定機能150h、表示制御機能150i、受付機能150jを備える。
【0011】
実施形態では、取得機能150a、第1の推論機能150b、補正機能150c、第2の推論機能150d、補正パラメータ取得機能150e、補正パラメータ決定機能150f、学習機能150g、設定機能150h、表示制御機能150i、受付機能150jにて行われる各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ132へ記憶されている。処理回路150はプログラムをメモリ132から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路150は、処理回路150内に示された各機能を有することになる。
【0012】
なお、図1においては単一の処理回路150にて、取得機能150a、第1の推論機能150b、補正機能150c、第2の推論機能150d、補正パラメータ取得機能150e、補正パラメータ決定機能150f、学習機能150g、設定機能150h、表示制御機能150i、受付機能150jにて行われる処理機能が実現されるものとして説明するが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路150を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。換言すると、上述のそれぞれの機能がプログラムとして構成され、1つの処理回路150が各プログラムを実行する場合であってもよい。別の例として、特定の機能が専用の独立したプログラム実行回路に実装される場合であってもよい。なお、図1において、取得機能150a、第1の推論機能150b、補正機能150c、第2の推論機能150d、補正パラメータ取得機能150e、補正パラメータ決定機能150f、学習機能150g、設定機能150h、表示制御機能150i、受付機能150jは、それぞれ取得部、第1の推論部、補正部、第2の推論部、補正パラメータ取得部、補正パラメータ決定部、学習部、設定部、表示制御部、受付部の一例である。また、ディスプレイ135は、表示部の一例である。
【0013】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサはメモリ132に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0014】
また、メモリ132にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0015】
処理回路150は、取得機能150aにより、医用画像診断装置から様々な情報を取得する。また、処理回路150は、第1の推論機能150b、補正機能150c、第2の推論機能150d、補正パラメータ取得機能150e、補正パラメータ決定機能150f、設定機能150hにより、後述する種々の処理を行う。
【0016】
処理回路150は、学習機能150gにより、機械学習を行い、学習済みモデルを生成する。処理回路150は、表示制御機能150iにより、画像の生成、表示等を制御する。一例として、処理回路150は、表示制御機能150iにより、生成された様々な画像を、ディスプレイ135に表示させる。加えて、処理回路150は、表示制御機能150iにより、医用画像処理装置100がデータを取得する医用画像診断装置の全体制御を行ってもよい。
【0017】
処理回路150は、受付機能150jにより、例えば入力装置134を通じてユーザからの各種処理を受け付ける。
【0018】
なお、上述の機能は、一例を示したものに過ぎず、処理回路150は、ここに列挙したすべての機能を有することを要しない。
【0019】
メモリ132は、医用画像診断装置から取得したデータや、処理回路150によって生成された画像データ等を記憶する。例えば、メモリ132は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等である。
【0020】
入力装置134は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける。入力装置134は、例えば、マウスやトラックボール等のポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスである。ディスプレイ135は、表示制御機能150iを有する処理回路150による制御の下、撮像条件の入力を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)、処理回路150によって生成された画像等を表示する。ディスプレイ135は、例えば、液晶表示器等の表示デバイスである。
【0021】
図2は、本実施形態に係る医用画像処理装置100を組み込んだX線CT装置200の例を示している。
【0022】
例えば、図2に示すように、X線CT装置200は、架台装置10と、寝台装置30と、医用画像処理装置100とを備える。
【0023】
図2では、非チルト状態での回転フレーム13の回転軸又は寝台装置30の天板33の長手方向をZ軸方向と定義する。また、Z軸方向に直交し、床面に対し水平である軸方向をX軸方向と定義する。また、Z軸方向に直交し、床面に対し垂直である軸方向をY軸方向と定義する。
【0024】
架台装置10は、患者等である被検体PにX線を照射し、被検体Pを透過したX線を検出して、医用画像処理装置100に出力する装置である。具体的には、架台装置10は、X線管11と、X線検出器12と、回転フレーム13と、X線高電圧装置14と、制御装置15と、ウェッジ16と、X線絞り17と、DAS(Data Acquisition System)18とを備える。なお、図2では、図示の便宜上、X軸方向から見た架台装置10とZ軸方向から見た架台装置10とを示しているが、実際には、X線CT装置は一つの架台装置10を備えている。
【0025】
X線管11は、熱電子を発生する陰極(フィラメント)と、当該熱電子の衝突を受けてX線を発生する陽極(ターゲット)とを有する真空管である。具体的には、X線管11は、X線高電圧装置14からの高電圧の印加により、陰極から陽極に向けて熱電子を照射することによってX線を発生する。例えば、X線管11は、回転する陽極に熱電子を照射することによってX線を発生させる回転陽極型のX線管である。
【0026】
X線検出器12は、X線管11から照射されて被検体Pを通過したX線を検出する複数の検出素子を有し、各検出素子が、検出したX線の線量に応じた電気信号をDAS18へ出力する。具体的には、X線検出器12は、X線管11の焦点を中心とした円弧の周方向に沿ったチャネル方向に複数の検出素子が並べられた検出素子列を複数有し、各検出素子列がスライス方向(列方向、row方向とも呼ばれる)に複数配列された構造を有する。
【0027】
例えば、X線検出器12は、コリメータと、シンチレータアレイと、検出素子アレイとを有する間接変換型の検出器である。コリメータは、シンチレータアレイのX線入射側の面に配置されており、散乱X線を吸収するX線遮蔽板を有する。例えば、コリメータは、1次元コリメータ又は2次元コリメータである。なお、コリメータは、グリッドとも呼ばれる。シンチレータアレイは、検出素子アレイのX線入射側の面に配置されており、複数のシンチレータを有する。各シンチレータは、入射したX線の線量に応じた光子量の光を出力するシンチレータ結晶を有する。検出素子アレイは、複数の検出素子を有し、各検出素子が、シンチレータから出力される光の光量に応じた電気信号に変換する。例えば、検出素子アレイは、複数の検出素子が同一平面上で1次元(n行×1列)又は2次元(n行×m列)に配列されたサブアレイをチャネル方向及びスライス方向に複数並べて配置することによって構成される。また、例えば、検出素子は、フォトダイオード(Photo Diode:PD)や光電子増倍管(Photo Multiplier Tube:PMT)等の受光素子である。
【0028】
回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを回転軸(Z軸)回りに回転させる円環状のフレームである。具体的には、回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを対向支持した状態で、固定フレーム(図示は省略)に回転軸回りに回転可能に支持されている。そして、回転フレーム13は、制御装置15による制御によって回転軸回りに回転することで、X線管11とX線検出器12とを回転軸回りに回転させる。また、回転フレーム13は、X線管11及びX線検出器12に加えて、X線高電圧装置14及びDAS18をさらに備えて支持する。
【0029】
X線高電圧装置14は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧を発生する機能を有する高電圧発生装置と、X線管11が照射するX線出力に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であってもよい。なお、X線高電圧装置14は、架台装置10内で、回転フレーム13に設けられてもよいし、回転フレーム13を回転可能に支持する固定フレーム(図示は省略)に設けられてもよい。
【0030】
ウェッジ16は、X線管11から照射されたX線の線量を調節するためのフィルターである。具体的には、ウェッジ16は、X線管11から被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管11から照射されたX線を透過して減衰するフィルターである。例えば、ウェッジ16は、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したフィルターである。なお、ウェッジ16は、ウェッジフィルター(wedge filter)や、ボウタイフィルター(bow-tie filter)とも呼ばれる。
【0031】
X線絞り17は、ウェッジ16を透過したX線の照射範囲を絞り込むための鉛板等を含み、複数の鉛板等を組み合わせることによってスリットを形成している。
【0032】
DAS18は、X線検出器12の各検出素子から出力される電気信号に基づいて、検出データを生成する処理回路である。具体的には、DAS18は、X線検出器12の各検出素子から出力される電気信号を増幅し、増幅された電気信号をアナログ信号からデジタル信号に変換することによって、検出データを生成する。ここで、DAS18によって生成された検出データは、回転フレーム13に設けられた発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)を有する送信機から光通信によって架台装置10の非回転部分(例えば、支持フレーム等)に設けられたフォトダイオードを有する受信機に送信され、医用画像処理装置100へ転送される。なお、回転フレーム13から架台装置10の非回転部分への検出データの送信方法は、光通信に限らず、非接触型のデータ伝送であれば如何なる方式が採用されても構わない。
【0033】
制御装置15は、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構と、当該駆動機構を制御する処理回路とを有する。制御装置15は、医用画像処理装置100若しくは架台装置10に取り付けられた、入力インターフェースからの入力信号を受けて、架台装置10及び寝台装置30の動作制御を行う機能を有する。例えば、制御装置15は、入力信号を受けて回転フレーム13を回転させる制御や、架台装置10をチルトさせる制御、及び寝台装置30及び天板33を動作させる制御を行う。
【0034】
寝台装置30は、スキャン対象である被検体Pを載置、移動させる装置であり、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、支持フレーム34とを備える。基台31は、支持フレーム34を鉛直方向に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置32は、被検体Pが載置された天板33を天板33の長軸方向に移動するモータあるいはアクチュエータである。支持フレーム34の上面に設けられた天板33は、被検体Pが載置される板である。なお、寝台駆動装置32は、天板33に加え、支持フレーム34を天板33の長軸方向に移動してもよい。
【0035】
続いて、実施形態に係る背景について簡単に説明する。
【0036】
機械学習などにより医用画像から所定の領域を抽出する場合に、二段階抽出を行う場合がある。例えば、一段階目の抽出において注目物体に関連する領域を推論してから、二段階目の抽出において、目的の領域を高精度に推論する方法がある。例えば、膵癌領域を推論する場合、一段階目の抽出において画像中から膵臓領域を推論し、二段階目の抽出において、膵癌領域を推論する場合がある。これにより、探索・計算範囲を削減し、また学習の複雑化を回避することができる。
【0037】
しかしながら、一段階目の抽出において、領域の欠損や境界の誤認識等により、誤差が生じた場合、この誤差が二段階目の抽出に影響し、目的の領域の抽出がうまくいかない場合があった。
【0038】
実施形態に係る医用画像処理装置は、かかる背景に鑑みたものであって、実施形態に係る医用画像処理装置は、取得部と、第1の推論部と、補正部と、第2の推論部とを備える。取得部は、入力画像を取得する。第1の推論部は、入力画像に含まれる第1の領域に関する第1の領域画像を推論する。補正部は、第1の領域画像から、第1の領域を補正した補正画像を生成する。第2の推論部は、入力画像と補正画像とに基づいて、入力画像に含まれる第2の領域に関する推論を行う。
【0039】
これにより、一段階目の抽出における推論誤差の影響を緩和することができ、推論精度を向上させることができる。
【0040】
以下、かかる構成について、図3図8を用いて説明する。
【0041】
図3は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置100が行う処理の流れを示した図である。また、図4は、第1の実施形態に係る医用画像処理装置100が行う処理の全体像について説明した図である。
【0042】
ステップS100において、処理回路150は、取得機能150aにより、医用画像処理装置、外部データベース、記憶装置等から、入力画像を取得する。一例として、当該医用画像処理装置がX線CT装置200である場合、処理回路150は、取得機能150aにより、X線CT装置200から、CT画像を、図4に示される入力画像1として取得する。撮像対象が膵臓である場合、処理回路150は、取得機能150aにより、X線CT装置200より、例えば膵臓付近をクロップした3次元のCT画像を、入力画像1として取得する。また、別の例として、処理回路150は、取得機能150aにより、X線CT装置200より、例えば膵臓付近を撮像した原画像を、入力画像1として取得する。入力画像1は、例えば、スライス数をNとして、512×512×Nの画素を有する3次元CT画像である。
【0043】
また、入力画像1は、解像度変換や階調変換などの前処理が施された画像であってもよい。前処理として解像度変換を行った場合、入力画像1は、例えば160×96×128の画素を有する3次元CT画像である。
【0044】
以下の式(1)に、階調変換の一例が示されている。すなわち、処理回路150は、図示しない前処理機能により、前処理前のCT画像に対して、例えば以下の式(1)に示されるように、Window Level=60,Window Width=350 で表される濃度値レンジ(-115~+235HU)が,0.0~1.0 になるような階調変換を実行する。なお、これらの値は観察部位や対象、観察時相などによって異なる。
【0045】
【数1】
【0046】
ここで、I変換後、I変換前はそれぞれ階調変換後及び階調変換前のCT画像の信号強度であり、i、j、kは画素のインデックスであり、WL及びWWはそれぞれウィンドウレベル及びウィンドウ幅を表す。
【0047】
なお、ここでの階調変換は、階調変換後のデータが、例えば後述のステップS140において処理回路150が第2の推論機能150dにより第2の推論を行う際と同等の階調となるようなものであってもよい。これにより、処理回路150は効率的なデータ処理を行うことができる。
【0048】
続いて、ステップS110において、処理回路150は、取得機能150aにより、第1の推論及び第2の推論で用いる辞書を取得する。すなわち、処理回路150は、取得機能150aにより、後述する第1の推論及び第2の推論で用いるモデル構造やパラメータを取得する。ここで、処理回路150は、取得機能150aにより、モデル構造そのものを取得してもよいし、また、別の例として、モデル構造そのものは推論機能150c等により実装されていて処理回路150は取得機能150aによりパラメータのみを取得してもよい。第1の推論で用いるモデル構造及び第2の推論で用いるモデル構造及びパラメータは、一般に異なる。ここで、モデルとは、例えばCNN(Convolutional Neural Network)や決定木を用いるランダムフォレストなどに代表される、画像の輝度や輝度差、輝度分布などの特徴量等によって境界を決定できる推論器である。ステップS100で処理回路150が取得するモデル構造とは、CNNであれば畳み込みの回数やフィルターの数、各レイヤーのチャネル数やダウンサンプリングの回数、レイヤーの接続情報などであり、ランダムフォレストであれば、決定木の数やノードの位置、深さ情報などである。次に、ステップS100で処理回路150が取得するパラメータの例として、例えばモデル構造がCNNの場合はフィルターやバイアス値、モデル構造がランダムフォレスト(RF)の場合、決定木の分岐の閾値などが挙げられる。
【0049】
続いて、ステップS120において、処理回路150は、第1の推論機能150bにより、第1の領域を推論する。すなわち、処理回路150は、第1の推論機能150bにより、図4に示されるように、入力画像1に対して第1の推論であるステップS120の処理を行い、入力画像1に含まれる第1の領域に関する第1の領域画像3を推論する。ここで、第1の領域画像3とは、例えば、入力画像1から、第1の領域を抽出するための画像である領域マスク画像である。例えば、第1の領域画像3は、第1の領域に対して値が1となり、その他の領域に対して値が0となるような二値化処理が実行された画像である。
【0050】
すなわち、処理回路150は、第1の推論機能150bにより、入力画像1に基づいて、第1の領域を抽出するための画像である領域マスク画像を、第1の領域画像3として推論する。第1の領域とは、検出対象である第2の領域の探索範囲を絞り込む情報となる。
【0051】
ここで、例えば第2の推論の目的が、膵癌の領域を抽出することにある場合、すなわち検出対象である第2の領域が膵癌の領域である場合、第1の領域は、例えば膵臓の領域である。また、第1の領域画像3は、例えば膵臓の領域のマスク領域を3次元的に示した推論膵臓マスク画像である。膵臓の領域のマスク領域である第1の領域は、検出対象である膵癌の領域である第2の領域を絞り込むために有用な領域となる。
【0052】
なお、第1の領域は、第2の領域を含まないことが既知である領域を含んでもよい。一例として、第2の領域が膵癌の領域である場合、膵臓領域の特定に寄与する可能性がある領域であって、膵臓以外の領域、例えば十二指腸、脾臓、胃等の領域を含む領域を、処理回路150は、第1の推論機能150bにより、第1の領域として推定し、第1の領域画像3を推論してもよい。すなわち、膵臓以外の領域は膵癌を含まないが、膵癌を特定するために有用となる場合もありうるので、実施形態によっては、処理回路150は、これらの領域についても第1の領域に含めてもよい。
【0053】
ステップS120の具体的な処理として、処理回路150は、第1の推論機能150bにより、入力画像1から、例えば3次元CNNの学習済みモデルを用いてもよい。処理回路150は、第1の推論機能150bにより、入力画像1から、例えば、U-net等のEncoder-Decoder形式のネットワークモデルを用いて、第1の領域画像3を推論する。この場合、一般にEncoder側では入力画像が徐々に縮小し、画像特徴が抽出されるとともに、Decoder側では、抽出された画像特徴から、所望の領域画像が生成される。なお、学習済みモデルの実行前に、処理回路150は、学習機能150gにより、第1の推論に用いられる学習済みモデルの学習をあらかじめ実行している。
【0054】
なお、入力画像1が3次元画像である場合には、処理回路150は、第1の推論機能150bにより、U-netをベースとした3次元CNNを用いてもよいが、実施形態は、入力画像1が3次元画像である場合に限られない。入力画像1が2次元画像である場合でも、処理回路150は、第1の推論機能150bにより、同様の処理を行うことにより、第1の領域画像3を推論することができる。
【0055】
続いて、ステップS130において、処理回路150は、補正機能150cにより、ステップS120で推論した第1の領域を補正した補正画像を生成する。図4に示されるように、処理回路150は、補正機能150cにより、第1の領域画像3に対して、ステップS130の処理を行い、第1の領域を補正した補正画像4を生成する。一例として、処理回路150は、補正機能150cにより、第1の領域画像3から、第1の領域の形状または分布を補正した補正画像4を生成する。
【0056】
一例として、処理回路150は、補正機能150cにより、第1の領域画像3をぼかす処理、すなわち第1の領域画像3の形状または分布の曖昧さを増大させる処理をステップS130において行い、補正画像4を生成する。例えば、図5に示されているように、処理回路150は、補正機能150cにより、ステップS120で推論した膵臓マスク画像である第1の領域画像3に対してぼかし処理を行い、3次元の補正膵臓マスク画像を補正画像4として生成する。
【0057】
ここで、ステップS130において処理回路150が例えばぼかし処理等を行って補正画像4を生成する意味を説明すると、CNNなど勾配法を用いる機械学習では、入力画像以外の付加情報を与えると、付加情報に大きく依存する方向に学習が進む。従って、例えば図4において、入力画像1と第1の領域画像3とを基に、膵癌の領域の画像であるマスク画像5を生成しようとすると、第1の領域画像3の情報に大きく依存した形で当該学習が行われる傾向にある。しかしながら、正しい膵臓の領域を表した画像である正解画像2と、第1の領域画像3とは、一般に異なる。例えば、第1の領域画像3と正解画像2とを比較すると、第1の領域画像3においては膵臓の領域が一部欠落している。このような状況で、正解画像2とは異なる第1の領域画像3の情報に過度に依存した学習が行われると、結果として出力されるマスク画像5の品質が低下することになる。
【0058】
従って、ステップS130において、処理回路150は補正機能150cにより、第1の領域画像3に対してあえてぼかし処理を行い、補正画像4を生成する。ここで、入力画像1と補正画像4とを基にマスク画像5を生成すると、補正画像4は第1の領域画像3と比較して曖昧さが残る。従来の2値によるマスク画像では、第1の領域の境界位置の画素値が不連続となる。また、CNNの学習では、一般に正解画像と出力画像の差分を取り、差分を減らす方向に学習が進むため、境界が明瞭な位置で大きな差分が発生する。従って、学習時に境界上で過度な勾配が発生する可能性があり、境界領域を強く認識することに繋がり、結果的に学習が不安定化する恐れがある。しかしながら、ぼかし処理を施した補正画像4を利用した場合、第1の領域の境界位置の画素値が滑らかな連続値となるため過度な勾配が抑制されることが期待される。従って、マスク画像5の生成の過程で、付加情報はある程度利用されるものの、大まかに探索範囲を絞るといった程度の利用のされ方にとどまる。この結果、第1の領域画像3の誤差がマスク画像5の品質に影響しにくくなり、マスク画像5の品質が安定する。加えて、ステップS120で行われる補正処理は、付加情報の領域拡張にもなるため、欠損部のデータを補完する役割をも有する。
【0059】
従って、このような目的で、ステップS130において、処理回路150は補正機能150cにより、第1の領域を補正した補正画像4を生成する。
【0060】
続いて、ステップS130におけるぼかし処理の詳細について述べる。一例として、処理回路150は、補正機能150cにより、ガウシアンフィルタを第1の領域画像3に対して適用することによりぼかし処理を行い、補正画像4を生成する。
【0061】
具体的には、処理回路150は、例えば以下の式(2)で与えられるガウシアンフィルタを用いてぼかし処理を行い、補正画像4を生成する。
【0062】
【数2】
【0063】
ここで、式(2)は3次元フィルターであり、x、y、zは、フィルターにおけるフィルター中心からの位置を表し、σはフィルターのぼかし量を表すパラメータであり、f(x、y、z)は、位置がx、y及びzにおけるフィルターの各要素値を表す。
【0064】
ここで、例えばぼかし量σが3の場合を考えると、フィルターは正規分布の3σ区間を利用するため、当該ガウシアンフィルタのサイズNは、N=3×σ×2+1、すなわち、フィルターの中心点から左右3σ区間に広がるフィルターとなる。すなわち、ぼかし量σ=3の場合、ガウシアンフィルタは、注目画素から、前後左右上下の各9画素に対して、その要素値が式(2)で与えられるフィルターとなる。処理回路150は、第1の領域画像3の各要素点に対して、式(2)で与えられる、フィルタサイズがN×N×Nのガウシアンフィルタを適用し、適用した結果を加算することにより、補正画像4を生成する。
【0065】
なお、上述の例では、ぼかし量σ=3として説明したが、実施例はこれに限られず、処理回路150は、補正機能150cにより、ぼかし量σの値を、σ=3と異なる値として補正画像4を生成してもよい。また、x,y及びzの各軸方向のぼかし量は必ずしも同一である必要はなく、軸方向毎に異なるぼかし量を用いて補正画像4を生成しても良い。
【0066】
また、ガウシアンフィルタの次元は、上述の3次元フィルターに限られず、例えば2次元フィルターや、1次元フィルターであってもよい。2次元フィルターの場合、処理回路150は、例えば以下の式(3)で示される2次元ガウシアンフィルタを用いて補正画像4を生成する。
【0067】
【数3】
【0068】
なお、フィルターの次元は、第1の領域画像3の次元と一致しなくてもよい。一例として、処理回路150は、補正機能150cにより、3次元画像である第1の領域画像3に対して、1次元ガウシアンフィルタを、x、y、zの各方向にそれぞれ順に適用することにより補正画像4を生成してもよい。
【0069】
これらの補正処理は、後述する第2の推論機能150dによる、第1の領域画像3の推論誤差の影響を緩和する処理となる。
【0070】
続いて、ステップS140において、処理回路150は、第2の推論機能150dにより、入力画像に含まれる第2の領域の画像である第2の領域画像を推論する。すなわち、処理回路150は、第2の推論機能150dにより、第2の推論を行う。
【0071】
一例として、図4及び図6に示されているように、処理回路150は、第2の推論機能150dにより、入力画像1と、ステップS130において生成された補正画像4とに対してステップS140の処理を行い、学習済みモデルに基づいて、入力画像1に含まれる第2の領域に関する推論を行い、推論結果として例えばマスク画像5を生成する。
【0072】
一例として、第1の領域が膵臓の領域であり、第2の領域が膵癌の領域である場合、処理回路150は、第2の推論機能150dにより、X線CT画像である入力画像1と、ステップS130において生成された膵臓領域補正マスクである補正画像4とを学習済みモデルに入力することにより、入力画像1に含まれる第2の領域である膵癌領域を推論する。例えば、処理回路150は、第2の推論機能150dにより、例えばEncoder-Decoder構造を含む所定のニューラルネットワークにより構成された学習済みモデルにより、入力画像1と補正画像4とから、入力画像1に含まれる第2の領域である膵癌領域を推論する。
【0073】
一例として、例えば、処理回路150は、第2の推論機能150dにより、膵癌領域と推論される画素を1、膵癌領域でないと推論される画素を0として、入力画像1と補正画像4とから、データが0か1かで2値化された2値化画像であるマスク画像5を生成する。
【0074】
続いて、ステップS150において、処理回路150は、表示制御機能150iにより、ステップS140において行った推論の結果得られたデータを、表示部としてのディスプレイ135に表示させる。
【0075】
一例として、処理回路150は、表示制御機能150iにより、ステップS140で生成された2値化画像であるマスク画像5を、表示部としてのディスプレイ135に表示させる。
【0076】
図7に、実施形態に係る医用画像処理装置100が行った推論結果の一例が示されている。画像6cはCT画像であり、膵臓9を含む領域である。実施形態のステップS130の補正処理なしの場合と補正処理ありの場合とで、膵癌領域の抽出が行われた。画像6aは、ステップS130の補正処理なしの場合において、膵癌領域の抽出を行った画像である。領域8が、低確率で膵癌である領域として抽出され、膵癌の抽出は成功しなかった。一方、画像6bは、ステップS130の補正処理ありの場合において、膵癌領域の抽出を行ったものである。領域8が、低確率で膵癌である領域として抽出されたのに加え、領域7が、高確率で膵癌である領域として抽出され、膵癌の抽出に成功した。
【0077】
以上のように、第1の実施形態では、処理回路150が、第1の推論機能150bにより、入力画像に含まれる第1の領域に関する第1の領域画像を推論したのち、補正機能150cにより、第1の領域画像から、第1の領域を補正した補正画像を生成し、第2の推論機能150dにより、入力画像と補正画像とに基づいて、入力画像に含まれる第2の領域に関する推論を行う。これにより、二段階推論における一段階目の推論の誤差の影響を緩和することができ、推論精度が向上する。
【0078】
(第1の実施形態の第1の変形例)
実施形態は上述の例に限られない。上述の実施例では、ステップS120において処理回路150が第1の推論機能150bにより推論する第1の領域画像3が、二値化画像である場合について説明したが、実施形態はこれに限られない。一例として、ステップS120において処理回路150は、第1の推論機能150bにより、各画素が、膵臓領域である確率を表す値を示す尤度画像を、第1の領域画像3として推論してもよい。
【0079】
また、ステップS140において、処理回路150は、第2の推論機能150dにより、各画素が、膵癌領域である確率を表す値を示す尤度画像を、マスク画像5として生成してもよい。この場合、マスク画像5の各要素は、0から1までの間の連続値をとることになる。なお、実施形態はこれに限られず、マスク画像5の各要素は、0から1までの間の値以外であってもよい。
【0080】
また、ステップS150において、処理回路150は、表示制御機能150iにより、ステップS140で生成された尤度画像であるマスク画像5に対して2値化処理を行ったのち、2値化処理後のデータを、表示部としてのディスプレイ135に表示させてもよい。例えば、処理回路150は、表示制御機能150iにより、閾値を0.5として、尤度画像であるマスク画像5において、閾値以上の画素値を1、閾値未満の画素値を0として2値化処理を行い、2値化処理後の画像を表示部としてのディスプレイ135に表示させる。
【0081】
(第1の実施形態の第2の変形例)
また、ステップS130において、処理回路150は、補正機能150cにより、第1の領域画像3を膨張させる処理を行って補正画像4を生成してもよい。一例として、処理回路150は、補正機能150cにより、例えば公知の処理であるモルフォロジ(morphology)処理を行って、第1の領域画像3である膵臓マスク画像を生成する。
【0082】
また、別の例として、ステップS130において、処理回路150は、補正機能150cにより、第1の領域画像3に対して公知の処理である領域拡張法(region growing)により処理を行って、第1の領域画像3から補正画像4を生成してもよい。この場合、処理回路150は、補正機能150cにより、例えば第1の領域画像3の中心を起点として領域拡張法を用いて、第1の領域画像3から補正画像4を生成してもよい。
【0083】
また、別の例として、処理回路150は、補正機能150cにより、第1の領域画像3を平滑化する処理を行って補正画像4を生成してもよい。
【0084】
(第1の実施形態の第3の変形例)
第1の実施形態では、ステップS130において、処理回路150は、補正機能150cにより、第1の領域画像3に対してぼかす処理を行って補正画像4を生成する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限られない。実施形態においては、例えば、処理回路150は、補正機能150cにより、ステップS130の処理の前に、第1の領域画像3に対して第1の領域の境界を明確化する第1の補正を行ったのちに、ステップS130の処理を行い第1の領域の境界をぼかす第2の補正を行って補正画像4を生成してもよい。
【0085】
ここで、第1の領域の境界を明確化する第1の補正とは、例えば第1の領域の輪郭付近に対して領域補正を行う方法が挙げられる。ここで、領域補正の方法としては、例えばグラフカットセグメンテーションなどの画像処理が挙げられる。グラフカットセグメンテーションとは、前景シードと背景シードに基づいてグラフを構築し、設計したエネルギー関数を最小化することで領域を分割する手法である。また、例えば、第1の領域の境界を明確化する方法として、第1の領域の輪郭付近に対して領域補正を行ってもよい。
【0086】
また、別の例として、ステップS130の処理が終了後、処理回路150は、補正機能150cにより、補正画像4に対して、2値化、小領域除去などのノイズ除去等を後処理として更に行ってもよい。例えば、第2の推論機能150dによって生成された第2の領域において、各画素を連結し、最大連結領域のみを取り出してもよいし、領域から体積・面積などを計算し、所定値以下の領域を削除してもよい。また、生成される第2の領域画像の辺縁部やそれに繋がる領域を除去してもよい。
【0087】
(第1の実施形態の第4の変形例)
ステップS140において、処理回路150は、第2の推論機能150dにより、第2の領域の画像を推論する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限られない。一例として、ステップS140において、すでに述べたステップS140の処理に加えて、あるいはステップS140の処理に代えて、処理回路150は、第2の推論機能150dにより、第2の領域の存在有無について推論してもよい。すなわち、処理回路150は、第2の推論機能150dにより、推論の結果として、入力画像1の中に第2の領域が含まれていれば1を、入力画像1の中に第2の領域が含まれている場合は0を出力する。
【0088】
また、別の例として、ステップS140において、処理回路150は、第2の推論機能150dにより、推論の結果として、入力画像1の中に第2の領域が含まれている確率を出力してもよい。
【0089】
また、ステップS120において、処理回路150は、膵臓領域の画像である第1の領域画像3の生成に加えて、例えば、第1の領域を囲むバウンディングボックスの生成処理や、第1の領域をクロップする処理を行うことにより、第1の領域の推論を行ってもよい。
【0090】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、ステップS130において処理回路150が補正機能150cにより補正画像を生成する処理において使用されるパラメータについては、入力画像1によらず固定したものを使用していた。しかしながら、実施形態はこれに限られない。第2の実施形態においては、処理回路150は、入力画像1に応じて、補正画像を生成する処理において使用されるパラメータの変更を行う。
【0091】
図8に、第2の実施形態における医用画像処理装置100が行う処理の流れを示すフローチャートが示されている。ここで、ステップS125及びステップS130以外の処理については、第1の実施形態と共通の処理であるので、繰り返しての処理については割愛する。
【0092】
ステップS125において、処理回路150は、補正パラメータ取得機能150eにより、ステップS130において補正画像4を生成する際に使用させる補正パラメータを取得する、または補正パラメータ決定機能150fにより、当該補正パラメータを決定する。
【0093】
ここで、補正パラメータの例としては、例えば第1の実施形態においてすでに説明した、ガウシアンフィルタにおけるぼかし量σが挙げられる。
【0094】
処理回路150が補正パラメータ取得機能150eにより補正パラメータを取得する場合、処理回路150は、補正パラメータ取得機能150eにより、例えばメモリ132、入力装置134または外部の記憶装置等から、当該補正パラメータを取得する。例えば、処理回路150は、補正パラメータ取得機能150eにより、メモリ132、入力装置134または外部の記憶装置等から、当該補正パラメータを取得する。
【0095】
また、別の例として、処理回路150が補正パラメータ決定機能150fにより補正パラメータを決定する場合、処理回路150は、補正パラメータ決定機能150fにより、ステップS120で推論された第1の領域の大きさに応じて、補正パラメータの値を決定する。
【0096】
例えば、処理回路150は、補正パラメータ決定機能150fにより、第1の領域である膵臓領域の体積に応じて、補正パラメータであるガウシアンフィルタのぼかし量σの値を決定する。ここで、第1の領域である膵臓領域の体積は、第1の領域を構成する画素数に基づいて算出することができるから、処理回路150は、補正パラメータ決定機能150fにより、第1の領域を構成する画素数に基づいて、補正パラメータであるガウシアンフィルタのぼかし量σを決定する。
【0097】
一例として、入力画像1のサイズが同じである場合、第1の領域の大きさである膵臓の体積が小さいほど、膵臓領域の全画素数が少なくなり、膵臓領域の画素欠損の影響が大きくなる。従って、処理回路150は、補正パラメータ決定機能150fにより、膵臓の体積が小さいほど、ガウシアンフィルタのぼかし量σ'が大きくなるように補正パラメータを決定する。これにより、補正画像4が第1の領域画像3と比較して広がりをもった画像となり、ステップS140において行われる推論の誤差の影響を緩和することができる。
【0098】
例えば、処理回路150は、補正パラメータ決定機能150fにより、以下の式(4)で定めるガウシアンフィルタのぼかし量σ’の値を、補正パラメータの値として決定する。
【0099】
【数4】
【0100】
ここで、Vは対象データセットの膵臓体積であり、Vmaxは、データセットの中での膵臓体積の最大値、Vminはデータセットの中での膵臓体積の最小値であり、σmaxはぼかし量の設定値の最大値、σminはぼかし量の設定値の最小値である。例えばV=70cm3、Vmax=120cm3、Vmin=20cm3、σmax=4、σmin=2の場合、σ’=3となる。
【0101】
また、別の例として、処理回路150は、補正パラメータ決定機能150fにより、推定膵臓マスクである第1の領域画像3における領域欠損の大きさの上限値(領域欠損をカバーすると考えられる値)に基づいて、ぼかし量σの値を決定してもよい。領域欠損の大きさは、例えば実際の領域境界である正解画像2と、第1の領域画像3とを比較することにより算出することができる。
【0102】
また、補正パラメータの例としては、上述のガウシアンフィルタのぼかし量σに限られず、処理回路150は、補正パラメータ決定機能150fにより、フィルタサイズやカーネル値を、補正パラメータとして決定してもよい。
【0103】
なお、処理回路150が補正パラメータ決定機能150fによりステップS125において決定する補正パラメータは、ステップS140において第2の推論機能150dにより第2の推論に使用される学習済みモデルに対応付けられた値であってもよい。もっとも、この場合、かかる補正パラメータは、第2の推論に使用される学習済みモデルにおいて使用される値を完全に一致する必要はなく、多少の差異はあってもよい。
【0104】
このように、ステップS125において設定された補正パラメータは、ステップS130において処理回路150が補正機能150cにより補正画像4を生成されるのに使用させる。
【0105】
ステップS130において、処理回路150は、第1の実施形態と同様に、補正機能150cにより、補正画像4を生成してもよい。加えて、第2の実施形態では、例えば補正パラメータの値が特定の値の場合、更なる補正処理を行ってもよい。一例として、処理回路150は、補正機能150cにより、膵臓の体積が所定の閾値を下回る場合、ぼかし処理に加えて、第1の領域画像3を膨張させる膨張処理を追加的に行ってもよい。
【0106】
このように、第2の実施形態においては、処理回路150は、ステップS130において行う補正処理に用いられるパラメータの値を調整することができる。これにより、推論精度を向上することができる。
【0107】
(第3の実施形態)
第2の実施形態においては、第1の領域画像3に応じて、処理回路150が補正パラメータ決定機能150f等により、ステップS130において補正処理に用いられる補正パラメータ値を決定する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限られない。第3の実施形態では、処理回路150は、第1の領域のうち、場所に応じて、補正処理に用いられるパラメータを決定する。換言すると、処理回路150は、補正パラメータ決定機能150fにより、第1の領域を構成する複数の部分領域に応じて複数の補正パラメータを決定する。
【0108】
図9を用いて、第3の実施形態において処理回路150が行う処理の流れについて説明する。ステップS122以外の処理については、図3または図8においてすでに説明した、第1の実施形態または第2の実施形態と同様の処理であるので、繰り返しての説明は省略する。
【0109】
ステップS122において、処理回路150は、設定機能150hにより、第1の領域に対して、複数の部分領域を設定する。
【0110】
一例として、第1の領域が膵臓領域である場合、処理回路150は、設定機能150hにより、第1の領域である膵臓領域を、複数の部分領域に分割する。例えば、処理回路150は、設定機能150hにより、第1の領域である膵臓領域を、膵頭領域・膵体領域・膵尾領域の3つの部分領域に分割する。膵頭領域は十二指腸に繋がる領域であり、解剖学的には、膵頭部と膵体部の境界は上腸間膜静脈・門脈左側縁となる。また、膵尾部は、脾臓に接する領域であり、大動脈の左側縁が、膵体部と膵尾部の境界となる。
【0111】
一例として、処理回路150は、設定機能150hにより、例えば第1の領域画像3である膵臓マスク画像のうち、アキシャル面における横方向からみたときの左半分を膵頭領域と、残り半分の領域のうち右側の70%の領域を膵尾領域と、残りの領域を膵体領域と設定する。また、別の例として、処理回路150は、設定機能150hにより、CT画像から血管を抽出することにより、複数の部分領域を抽出してもよい。また、別の例として、処理回路150は、設定機能150hにより、第1の領域画像3を単純に3分割することにより、複数の部分領域を設定してもよい。
【0112】
続いて、ステップS125において、処理回路150は、補正パラメータ決定機能150fにより、第1の領域を構成する複数の部分領域に応じて複数の補正パラメータを決定する。
【0113】
例えば、一般に、膵癌の75%は膵頭部に存在し、膵癌は正常な領域とテクスチャが異なる。また、膵頭側は鉤状になっており複雑であるため、膵臓領域推論における膵頭部に推論誤差が発生しやすい。したがって、処理回路150は、補正パラメータ決定機能150fにより、膵頭領域のぼかし量を、膵体領域および膵尾領域のぼかし量より大きくするように、補正パラメータを決定する。このように、ステップS130において、処理回路150は、補正機能150cにより、複数の部分領域に応じて定められた補正パラメータに基づいて、補正処理を行う。
【0114】
以上、第3の実施形態では、処理回路150は、補正パラメータ決定機能150fにより、領域ごとに補正パラメータを決定する。これにより、処理回路150は、きめ細かな補正処理を行うことができ、画質が向上する。
【0115】
(第3の実施形態の変形例)
実施形態は、上述の例に限られない。一例として、ステップS125において、処理回路150は、補正パラメータ決定機能150fにより、部分領域ごとの、第2の領域に関する推論の精度の大きさに応じて、補正パラメータを決定してもよい。換言すると、ステップS125において、処理回路150は、補正パラメータ決定機能150fにより、第2の領域に関する推論の精度の事前確率に応じて、部分領域ごとの補正パラメータを決定してもよい。
【0116】
一例として、処理回路150は、補正パラメータ決定機能150fにより、部分領域それぞれの、ステップS140における第2の領域に関する推論の精度の推定値(事前確率)に、一定のぼかし量σを掛け合わせた値を、部分領域ごとの補正パラメータとして決定する。すなわち、処理回路150は、補正パラメータ決定機能150fにより、膵頭領域・膵体領域・膵尾領域それぞれの、ステップS140における第2の領域に関する推論の精度を示す分散値に、一定のぼかし量σを掛け合わせた値を、部分領域ごとの補正パラメータとして決定する。これにより、推定の精度が悪い、すなわち分散が大きいと期待される部分領域についてはぼかし量を大きくし、推定の精度が良い、すなわち分散が小さいと期待される部分領域についてはぼかし量を小さくすることにより、各部分領域の推定精度に応じた補正を行うことができる。
【0117】
また、別の例として、処理回路150は、部分領域ごとに、四分位範囲を計算し、四分位範囲の所定の値、例えば、範囲の1.5倍以上に存在する値を超えた外れ値の分散を計算することで、補正パラメータであるぼかし量σを決定してもよい。
【0118】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、推論精度を向上させることができる。
【0119】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0120】
150 処理回路
150a 取得機能
150b 第1の推論機能
150c 補正機能
150d 第2の推論機能
150e 補正パラメータ取得機能
150f 補正パラメータ決定機能
150g 学習機能
150h 設定機能
150i 表示制御機能
150j 受付機能
図1
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図3
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図9