(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131465
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】保持パッド、及び保持パッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
B24B 37/30 20120101AFI20230914BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230914BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20230914BHJP
C08G 18/44 20060101ALI20230914BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20230914BHJP
C08G 18/38 20060101ALI20230914BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20230914BHJP
【FI】
B24B37/30 C
H01L21/304 622G
C08G18/00 F
C08G18/44
C08G18/10
C08G18/38 014
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036248
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】立野 哲平
(72)【発明者】
【氏名】糸山 光紀
【テーマコード(参考)】
3C158
4J034
5F057
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】 (修正有)
【課題】耐久性及び耐熱性の両方に優れた保持パッドを提供することを目的とする。
【解決手段】被研磨物を保持するための保持面Pを有するシート112を備える保持パッド110であって、前記シートがポリウレタン樹脂を含み、前記ポリウレタン樹脂がポリオール成分とポリイソシアネート成分との反応生成物を含み、前記ポリオール成分が下記式(I)で表されるポリエーテルポリカーボネートジオールを含む、前記保持パッド:
(上記式(I)中、R
1は炭素数2~10の二価の炭化水素基であり、複数のR
1は同一であってもよく、又は異なるものであってもよく、nは2~30であり、mは1~20である。)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被研磨物を保持するための保持面を有するシートを備える保持パッドであって、
前記シートがポリウレタン樹脂を含み、前記ポリウレタン樹脂がポリオール成分とポリイソシアネート成分との反応生成物を含み、
前記ポリオール成分が下記式(I)で表されるポリエーテルポリカーボネートジオールを含む、前記保持パッド:
【化1】
(上記式(I)中、
R
1は炭素数2~10の二価の炭化水素基であり、複数のR
1は同一であってもよく、又は異なるものであってもよく、
nは2~30であり、
mは1~20である。)。
【請求項2】
前記シートが略球状の気泡を有する、請求項1に記載の保持パッド。
【請求項3】
前記シートの密度が0.3~0.9g/cm3である、請求項1又は2に記載の保持パッド。
【請求項4】
前記ポリエーテルポリカーボネートジオールの数平均分子量が1000~4000である、請求項1~3のいずれか1つに記載の保持パッド。
【請求項5】
前記ポリウレタン樹脂全体に対する前記ポリエーテルポリカーボネートジオールの含有量が20重量%以上である、請求項1~4のいずれか1つに記載の保持パッド。
【請求項6】
前記ポリエーテルポリカーボネートジオールがポリテトラメチレンエーテルグリコールに由来する構造単位を含む、請求項1~5のいずれか1つに記載の保持パッド。
【請求項7】
前記式(I)におけるR1が、エチレン、イソプロピレン、及びn-ブチレンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~6のいずれか1つに記載の保持パッド。
【請求項8】
前記ポリイソシアネート成分がトリレンジイソシアネートを含む、請求項1~7のいずれか1つに記載の保持パッド。
【請求項9】
前記ポリウレタン樹脂がイソシアネート末端ウレタンプレポリマー及び硬化剤を含む硬化性樹脂組成物の硬化物であり、前記イソシアネート末端ウレタンプレポリマーが、前記ポリオール成分とポリイソシアネート成分との反応生成物である、請求項1~8のいずれか1つに記載の保持パッド。
【請求項10】
前記硬化剤が3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタンを含む、請求項9に記載の保持パッド。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1つに記載の保持パッドの製造方法であって、前記シートをモールド法により成形する工程を含む、前記保持パッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持パッド及び保持パッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学材料、半導体ウエハ、ハードディスク基板、液晶用ガラス基板、半導体デバイス等は非常に精密な平坦性が要求される。このような各種材料の表面を平坦に研磨するために、研磨パッドを使用した研磨加工が行われている。一般的に、これらの被研磨物の研磨加工には、被研磨物を片面ずつ研磨加工する片面研磨機が使用されている。この片面研磨機では、被研磨物が保持用定盤に保持され、研磨用定盤に装着された研磨パッドで研磨加工される。研磨加工時には、研磨粒子を含む研磨液が循環されつつ供給される。
一般的に、片面研磨機を使用した研磨加工では、保持用定盤の凹凸や研磨加工中に発生する偏荷重を吸収し、被研磨物を保持用定盤に略平坦に保持する目的で、保持用定盤に保持パッドが装着されている。
【0003】
保持パッドとして、従来から特許文献1に記載されているような、湿式成膜法により形成された略涙形状の気泡を有するポリウレタン樹脂シートが知られている。また、特許文献2に記載されているような、乾式成型法(モールド法)により形成された略球状の気泡を有するポリウレタン樹脂シートを含む保持パッドも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6119049号
【特許文献2】特許第4775898号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、研磨効率向上のために、より過酷な研磨条件(高研磨圧、長時間の研磨、強酸性スラリーの使用など)での研磨が所望されており、サファイアやGaNなどの難削材の研磨ではその傾向が顕著である。このような過酷な研磨条件でも使用できるように、保持パッドには高い耐久性が求められる。
【0006】
上述の略球状の気泡を有するポリウレタン樹脂シートを含む保持パッドは、上述の略涙形状の気泡を有するポリウレタン樹脂シートを含む保持パッドに比べて、一般に高強度で耐久性があるため、上述のような過酷な研磨条件下での使用に適しているといえる。
また、保持パッドの保持面を水で濡らし、水の表面張力により当該保持面に被研磨物を吸着させる。研磨後に被研磨物を保持パッドの保持面から引き剥がす際に保持パッドの強度が弱いと保持パッドが壊れてしまうことがある。このような観点からも、高強度である上述の略球状の気泡を有するポリウレタン樹脂シートを含む保持パッドは有用であるといえる。
【0007】
また、保持パッドにより被研磨物を保持していても、研磨加工中に被研磨物の横ずれが生じてしまうことがある。そのような被研磨物の横ずれを抑制するために、保持パッドの保持面上に、被研磨物の外周を取り囲み被研磨物を収容できる保持穴が1つ以上のある枠材を貼り合わせることがある。このような枠材を保持パッドの保持面に固定する際や、保持パッドを保持用定盤に固定する際には、接着剤が使用される。上述のような過酷な条件下での研磨を行う場合、枠材と保持パッドの保持面との間及び/又は保持パッドと保持用定盤との間を強固に接着させるために、上記の接着剤として感熱型接着剤(ホットメルト)が使用されることがある。この感熱型接着剤を使用する際には、枠材や保持用定盤と共に保持パッドを60~140℃程度の温度条件下で熱プレスする工程が必須となるが、このような熱プレスの際に保持パッドに熱が加わる。熱プレス後に保持パッドに歪みが生じ平坦でなくなると、被研磨物の研磨に悪影響が出てしまう。そのため、保持パッドには耐熱性も求められる。
上述のように、略球状の気泡を有するポリウレタン樹脂シートを含む保持パッドは比較的強度が高い。一方で、当該保持パッドは反りが発生しやすい傾向があり、このような反りを防ぐ観点から、当該略球状の気泡を有するポリウレタン樹脂シートを含む保持パッドにおいては耐熱性の向上がより重要である。
【0008】
以上のように、耐久性及び耐熱性の両方に優れた保持パッドが望まれている。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、耐久性及び耐熱性の両方に優れた保持パッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究した結果、特定の構造を有するポリエーテルポリカーボネートジオールをポリウレタン樹脂の原料として使用することにより、上記課題を解決できることを知見し、本発明を完成するに至った。本発明の具体的態様は以下のとおりである。
【0011】
[1] 被研磨物を保持するための保持面を有するシートを備える保持パッドであって、
前記シートがポリウレタン樹脂を含み、前記ポリウレタン樹脂がポリオール成分とポリイソシアネート成分との反応生成物を含み、
前記ポリオール成分が下記式(I)で表されるポリエーテルポリカーボネートジオールを含む、前記保持パッド:
【化1】
(上記式(I)中、
R
1は炭素数2~10の二価の炭化水素基であり、複数のR
1は同一であってもよく、又は異なるものであってもよく、
nは2~30であり、
mは1~20である。)。
[2] 前記シートが略球状の気泡を有する、[1]に記載の保持パッド。
[3] 前記シートの密度が0.3~0.9g/cm
3である、[1]又は[2]に記載の保持パッド。
[4] 前記ポリエーテルポリカーボネートジオールの数平均分子量が1000~4000である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の保持パッド。
[5] 前記ポリウレタン樹脂全体に対する前記ポリエーテルポリカーボネートジオールの含有量が20重量%以上である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の保持パッド。
[6] 前記ポリエーテルポリカーボネートジオールがポリテトラメチレンエーテルグリコールに由来する構造単位を含む、[1]~[5]のいずれか1つに記載の保持パッド。
[7] 前記式(I)におけるR
1が、エチレン、イソプロピレン、及びn-ブチレンからなる群から選択される少なくとも1種である、[1]~[6]のいずれか1つに記載の保持パッド。
[8] 前記ポリイソシアネート成分がトリレンジイソシアネートを含む、[1]~[7]のいずれか1つに記載の保持パッド。
[9] 前記ポリウレタン樹脂がイソシアネート末端ウレタンプレポリマー及び硬化剤を含む硬化性樹脂組成物の硬化物であり、前記イソシアネート末端ウレタンプレポリマーが、前記ポリオール成分とポリイソシアネート成分との反応生成物である、[1]~[8]のいずれか1つに記載の保持パッド。
[10] 前記硬化剤が3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタンを含む、[9]に記載の保持パッド。
[11] [1]~[10]のいずれか1つに記載の保持パッドの製造方法であって、前記シートをモールド法により成形する工程を含む、前記保持パッドの製造方法。
【0012】
(定義)
本願において、「X~Y」を用いて数値範囲を表す際は、その範囲は両端の数値であるX及びYを含むものとする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の保持パッドは、耐久性及び耐熱性の両方に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】
図2は、研磨加工時の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(作用)
本発明者らは、ウレタン樹脂を形成するポリオール成分と耐久性及び耐熱性との関係について鋭意研究した結果、予想外にも、ウレタン樹脂を形成するポリオール成分として、上述の式(I)で表されるポリエーテルポリカーボネートジオールを使用することにより、耐久性及び耐熱性の両方に優れる保持パッドが得られることを見出した。このような特性が得られる理由の詳細は明らかではないが、以下のように推察される。
【0016】
上述の式(I)で表されるポリエーテルポリカーボネートジオールは、カーボネート基を有するため、一般的に使用されているポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)に比べて結晶性が低いと考えられ、当該ポリエーテルポリカーボネートジオールから形成されるポリウレタン樹脂の結晶性も低くなると考えられる。保持パッドの保持面を形成するポリウレタン樹脂の結晶性が低くなると、元々の結晶性が低いため加熱しても結晶構造に起因する変化が少なく、熱プレスにより保持パッドに歪みが生じにくくなると推察される。さらに、保持パッドの保持面を形成するポリウレタン樹脂がエーテル基とカーボネート基の両方を有するため、それらの相乗作用により過酷な研磨条件でも使用できる高い耐久性が発揮されると推察される。
【0017】
以下、本願の保持パッド、及び保持パッドの製造方法について、説明する。
【0018】
1.保持パッド、保持パッドの製造方法
図1は、本実施形態に係る保持具の一例を示す模式断面図である。保持具100は、保持パッド110と、その保持パッド110上に設けられた枠材120とを備える。枠材120とシート112は接合されており、この例では、枠材120とシート112との接合は接着層122を介している。保持パッド110に含まれるシート112は、ポリウレタン樹脂を含み、保持具100における枠材120側に、被研磨物を保持するための保持面Pを有する。通常は、シート112の保持面Pと反対側の面に、保持具100を研磨装置の保持用定盤に固定するための接着層116、及び接着層116を異物等から保護するための離型紙114を有する。必要に応じて、シート112の保持面Pと反対側の面にクッション層や基材シートなどを積層してもよい。
【0019】
シート112は、ポリウレタン樹脂を含むマトリックスとそのマトリックスの間に存在する複数の孔とを有するものである。
【0020】
シート112の保持面Pには開気孔が存在していてもよい。開気孔を存在させるには、例えば、保持面Pに対してスライス処理やバフ処理等によってミラー層(スキン層)の研削処理を施せばよい。保持面Pに開気孔が存在すると、保持面Pと被研磨物との吸着力が低下し、被研磨物が自転しやすくなる結果、自転によって被研磨物の研磨均一性が向上する。
【0021】
シート112の厚さは特に限定されないが、0.4~2.5mmであると好ましく、0.8~2.0mmであるとより好ましい。シート112の厚さが上記下限値以上であることにより、被研磨物の損傷をより良好に抑制することができ、上記上限値以下であることにより、研磨加工の際のシート112内での剥離(破断)をより良好に抑制することができる。なお、シート112の厚さは、JIS K 6550(1994)に記載された測定方法に準拠して測定される。つまり、シート112の厚み方向に初荷重として1cm2当たり480g(湿式成膜法による略涙型気泡を有するシートの場合は100g)の荷重をかけた(負荷した)ときの厚さを測定する。
【0022】
保持具100において、保持パッド110の保持面P側には、研磨加工中に被研磨物が横ずれを起こして、研磨領域から飛び出すことを防止する(横ずれ範囲を規制する)枠材120が接合されている。枠材120は、従来の保持具に備えられるものであってもよく、例えば、ガラスエポキシ樹脂(ガラス繊維を含有するエポキシ樹脂)やフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂を主体とした材質からなるものである。枠材120の形状及び寸法は、被研磨物が研磨領域から飛び出さないようなものであれば特に限定されず、例えば、その外径がシート112と同じかやや小さくてもよく、内径が被研磨物よりやや大きく、リング状の形状を有する、すなわち保持穴を有していてもよい。
枠材120とシート112の保持面P側とを接合する接着層122には、例えば、感熱型接着剤(ホットメルト)を使用することができる。感熱型接着剤には、例えば、アクリル系、ニトリル系、ニトリルゴム系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリエステル系等の熱可塑性接着剤が用いられる。感熱型接着剤を枠材120とシート112の保持面P側との接合に使用する場合には、上述のように、シート112には熱プレスに耐えられる高い耐熱性が求められる。
【0023】
また、接着層116は、従来知られている保持具に用いられている接着剤又は粘着剤を含むものであってもよい。接着層116の材料としては、例えば、アクリル系、ニトリル系、ニトリルゴム系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリエステル系等の各種接着剤が挙げられる。
【0024】
なお、保持具100における、接着層116及び接着層122は、基材を備える両面テープ由来のものであってもよく、接着剤をシート状とした接着テープであってもよく、接着剤を塗布して形成されたものであってもよい。接着層116は離型紙114を有していてもよい。
【0025】
図2は、本実施形態の保持具100を用いた研磨加工の様子を説明するための模式断面図である。保持具100は、保持用定盤(図示せず。)と研磨用定盤(図示せず。)とに、被研磨物500及び研磨パッド510と共に挟まれて、その厚み方向に押圧力が加えられる。それと共に、研磨加工の際、保持用定盤及び研磨用定盤は、例えば、互いに異なる回転速度で同方向に回転する結果、
図2に示すように、研磨パッド510は、被研磨物500を研磨するように、保持具100及び保持具100により保持された被研磨物500に対して、平面方向(
図2中の矢印)に移動する。また、被研磨物500は、研磨加工中に、枠材120の内側で移動(自転)しながら研磨加工される。
【0026】
本発明の保持パッドは、被研磨物を保持するための保持面を有するシートを備え、
前記シートがポリウレタン樹脂を含み、前記ポリウレタン樹脂がポリオール成分とポリイソシアネート成分との反応生成物を含み、
前記ポリオール成分が下記式(I)で表されるポリエーテルポリカーボネートジオールを含む:
【化2】
(上記式(I)中、
R
1は炭素数2~10の二価の炭化水素基であり、複数のR
1は同一であってもよく、又は異なるものであってもよく、
nは2~30であり、
mは1~20である。)。
【0027】
保持パッドに使用するシートは、特に限定されないが、略球状の気泡を有することができる。本願において「略球状」とは、乾式成型法(モールド法)で成形される成形体に存在する通常の気泡形状(等方性があり、球状、楕円状、あるいはこれらに近い形状である)を意味する概念であり、湿式成膜法で成形される成形体に含まれる気泡形状(異方性があり、保持パッドの保持面から底部に向けて径が大きい略涙型構造を有する)とは明確に区別される。
【0028】
保持パッドに使用するシートの密度は、特に限定されないが、0.3~0.9g/cm3が好ましく、0.4~0.8g/cm3がより好ましく、0.4~0.7g/cm3が最も好ましい。当該シートの密度が0.3g/cm3以上であることで耐久性に優れ、また、0.9g/cm3以下であることでクッション性を確保できる。
【0029】
(ポリウレタン樹脂)
本発明において、シートに含まれるポリウレタン樹脂はポリオール成分とポリイソシアネート成分との反応生成物を含む。
【0030】
(ポリオール成分)
上述の式(I)で表されるポリエーテルポリカーボネートジオールは、高分子量ポリオールの1種である。
【0031】
上記ポリエーテルポリカーボネートジオールを表す上記式(I)中、R1は、炭素数2~10の二価の炭化水素基であり、R1の例としては、エチレン、n-プロピレン、イソプロピレン、n-ブチレン、イソブチレン、1,1-ジメチルエチレン、n-ペンチレン、2,2-ジメチルプロピレン、2-メチルブチレン、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせなどが挙げられ、特に、エチレン、イソプロピレン、及びn-ブチレンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。上記式(I)中、複数のR1は同一であってもよく、又は異なるものであってもよいが、同一であることが好ましい。なお、R1がn-ヘキセンなどの炭素数6以上となると、ポリエーテルポリカーボネートジオールの結晶性が高くなってしまい、得られる保持パッドの低温における柔軟性、伸び、及び屈曲性が悪化するため、好ましくないことがある。このような観点から、R1は、炭素数2~5の二価の炭化水素基が好ましい。
【0032】
上記式(I)中、nは、2~30であり、3~20であることが好ましく、3~15であることがより好ましい。
上記式(I)中、mは、1~20であり、1~10であることが好ましく、2~5であることがより好ましい。
【0033】
上記ポリエーテルポリカーボネートジオールは、ポリテトラメチレンエーテルグリコールに由来する構造単位を含むことが好ましい。当該ポリテトラメチレンエーテルグリコールに由来する構造単位の数平均分子量は、100~1500であることが好ましく、150~1000であることがより好ましく、200~850であることが最も好ましい。
【0034】
上記ポリエーテルポリカーボネートジオールがポリテトラメチレンエーテルグリコールに由来する構造単位を含む場合、当該ポリテトラメチレンエーテルグリコールに由来する構造単位は上記式(I)中の-(R1-O)n-で表される部分であることが好ましい。
【0035】
上記ポリエーテルポリカーボネートジオールの数平均分子量は、特に限定されないが、1000~4000であることが好ましく、1000~3000であることがより好ましく、1500~2500であることが最も好ましい。上記ポリエーテルポリカーボネートジオールの数平均分子量が1000以上であることにより、さらに耐熱性に優れ、また、4000以下であることにより、さらに耐久性に優れる。
【0036】
上記ポリテトラメチレンエーテルグリコールに由来する構造単位及び上記ポリエーテルポリカーボネートジオールの数平均分子量は、以下の条件にてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)に基づいてポリエチレングリコール/ポリエチレンオキシド(PEG/PEO)換算の分子量として測定することができる。
<測定条件>
カラム:Ohpak SB-802.5HQ(排除限界10000) +SB-803HQ(排除限界 100000)
移動相:5mM LiBr/DMF
流速: 0.3ml/min(26kg/cm2)
オーブン:60℃
検出器:RI 40℃
試料量:20μl
【0037】
ポリウレタン樹脂全体に対する上記ポリエーテルポリカーボネートジオールの含有量は、特に限定されないが、20重量%以上が好ましく、20~40重量%がより好ましく、25~30重量%が最も好ましい。当該含有量を20重量%以上とすることで、耐久性及び耐熱性をさらに向上させることができ、また、40重量%以下とすることで、クッション性が得られる。
ここで、上記含有量の基準となるポリウレタン樹脂の重量は、ポリウレタン樹脂の原料となる各成分の重量の合計として算出することができる。例えば、ポリウレタン樹脂がイソシアネート末端ウレタンプレポリマー、硬化剤、分散剤(活性水素基を有する)、及び発泡剤(活性水素基を有する)を含む硬化性樹脂組成物の硬化物である場合、ポリウレタン樹脂の重量は、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーの重量(原料とであるポリオール成分の重量とポリイソシアネート成分の重量との合計)、硬化剤の重量、分散剤の重量、及び発泡剤の重量の合計として算出することができる。NCO及び活性水素などの官能基を有さず、ポリウレタン樹脂中に取り込まれない成分の重量は、ポリウレタン樹脂の重量には加えない。
【0038】
ポリウレタン樹脂に含まれる、上記ポリエーテルポリカーボネートジオール以外のポリオール成分としては、低分子量ポリオール、上記ポリエーテルポリカーボネートジオール以外の高分子量ポリオール、又はそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態において、低分子量ポリオールとは数平均分子量が30~300であるポリオールであり、高分子量ポリオールとは数平均分子量が300を超えるポリオールである。上記低分子量ポリオール及び上記ポリエーテルポリカーボネートジオール以外の高分子量ポリオールの数平均分子量は、上記ポリテトラメチレンエーテルグリコールに由来する構造単位及び上記ポリエーテルポリカーボネートジオールの数平均分子量において示したものと同様の方法により、測定することができる。
【0039】
上記低分子量ポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせが挙げられ、この中でもジエチレングリコールが好ましい。
【0040】
上記ポリエーテルポリカーボネートジオール以外の高分子量ポリオールとしては、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリエーテルポリオール;
エチレングリコールとアジピン酸との反応物やブチレングリコールとアジピン酸との反応物等のポリエステルポリオール;
ポリカーボネートポリオール;
ポリカプロラクトンポリオール;
又はこれらのうちの2種以上の組み合わせ;が挙げられる。
いくつかの実施形態において、高分子量ポリオールがポリエーテルポリオールをさらに含むことが好ましい。
【0041】
ポリウレタン樹脂全体に対する、低分子量ポリオールの含有量は、反応制御、及び硬度や弾性などの物性制御の観点より、0~20重量%、1~15重量%、又は2~10重量%とすることができる。または、上記低分子量ポリオールの含有量を0重量%(低分子量ポリオールを含まない)とすることもできる。本願において、「含まない」とは、ある成分を意図的に添加しないことを意味し、不純物として含まれることを排除するものではない。ポリウレタン樹脂が低分子量ポリオールを含まない場合、ポリウレタン樹脂全体に対する低分子量ポリオールの含有量は、0.1重量%以下、又は0.01重量%以下とすることができる。
【0042】
ポリウレタン樹脂全体に対する、上記ポリエーテルポリカーボネートジオール以外の高分子量ポリオールの含有量は、特に限定されないが、5~50重量%、10~40重量%、又は15~30重量%とすることができる。
また、上記高分子量ポリオールを、上記ポリエーテルポリカーボネートジオールからなるものとすることもできる。
【0043】
ポリウレタン樹脂全体に対する、上記ポリイソシアネート成分の含有量は、特に限定されないが、15~50重量%、20~40重量%、又は25~30重量%とすることができる。
【0044】
(ポリイソシアネート成分)
ポリウレタン樹脂に含まれるポリイソシアネート成分としては、
m-フェニレンジイソシアネート、
p-フェニレンジイソシアネート、
2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、
2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、
ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、
ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、
4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)、
3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニルジイソシアネート、
3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、
キシリレン-1,4-ジイソシアネート、
4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、
トリメチレンジイソシアネート、
ヘキサメチレンジイソシアネート、
プロピレン-1,2-ジイソシアネート、
ブチレン-1,2-ジイソシアネート、
シクロヘキシレン-1,2-ジイソシアネート、
シクロヘキシレン-1,4-ジイソシアネート、
p-フェニレンジイソチオシアネート、
キシリレン-1,4-ジイソチオシアネート、
エチリジンジイソチオシアネート、
又はこれらのうちの2種以上組み合わせが挙げられる。
この中でも、得られる保持パッドの機械的強度等の観点から、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)等のトリレンジイソシアネートを使用することが好ましい。
【0045】
いくつかの実施形態において、ポリウレタン樹脂は、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー及び硬化剤を含む硬化性樹脂組成物の硬化物とすることができ、この場合、当該イソシアネート末端ウレタンプレポリマーが上述のポリオール成分とポリイソシアネート成分との反応生成物となる。
【0046】
イソシアネート末端ウレタンプレポリマーのNCO当量(g/eq)としては、反応制御や硬度の観点から、800未満が好ましく、350~700がより好ましく、400~600が最も好ましい。
【0047】
イソシアネート末端ウレタンプレポリマー全体に対する、上記ポリエーテルポリカーボネートジオールの含有量は、特に限定されないが、15~75重量%、20~65重量%、又は25~60重量%とすることができる。
【0048】
イソシアネート末端ウレタンプレポリマー全体に対する、低分子量ポリオールの含有量は、特に限定されないが、0~20重量%、2~15重量%、又は3~10重量%とすることができる。または、上記低分子量ポリオールの含有量を0重量%(低分子量ポリオールを含まない)とすることもできる。イソシアネート末端ウレタンプレポリマーが低分子量ポリオールを含まない場合、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー全体に対する低分子量ポリオールの含有量は、0.1重量%以下、又は0.01重量%以下とすることができる。
【0049】
イソシアネート末端ウレタンプレポリマー全体に対する、上記ポリエーテルポリカーボネートジオール以外の高分子量ポリオールの含有量は、特に限定されないが、10~75重量%、15~65重量%、又は20~60重量%とすることができる。
また、上記高分子量ポリオールを、上記ポリエーテルポリカーボネートジオールからなるものとすることもできる。
【0050】
イソシアネート末端ウレタンプレポリマー全体に対する、上記ポリイソシアネート成分の含有量は、特に限定されないが、20~50重量%、25~45重量%、又は30~40重量%とすることができる。
【0051】
(硬化剤)
上述の硬化性樹脂組成物に含まれる硬化剤としては、例えば、以下に説明するアミン系硬化剤が挙げられる。
アミン系硬化剤を構成するポリアミンとしては、例えば、ジアミンが挙げられ、これには、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルキレンジアミン;イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミンなどの脂肪族環を有するジアミン;3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(別名:メチレンビス-o-クロロアニリン)(以下、MOCAと略記する。)などの芳香族環を有するジアミン;2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の水酸基を有するジアミン、特にヒドロキシアルキルアルキレンジアミン;又はこれらのうちの2種以上の組み合わせが挙げられる。また、3官能のトリアミン化合物、4官能以上のポリアミン化合物も使用可能である。
【0052】
特に好ましい硬化剤は、上述したMOCAであり、硬化剤をMOCAからなるものとすることもできる。このMOCAの化学構造は、以下のとおりである。
【0053】
【0054】
イソシアネート末端ウレタンプレポリマーのNCOのモル数に対する、硬化剤の活性水素のモル数及びその他の成分(活性水素基を有する)の活性水素のモル数の合計の比率(活性水素のモル数/NCOのモル数)が、好ましくは0.7~1.1、より好ましくは0.75~1.05、最も好ましくは0.8~1.00となるように、硬化剤全体の量を調整することができる。
【0055】
(その他の成分)
その他に当業界で一般的に使用される発泡剤(水、微小中空球体、不活性ガスなど)、染料、顔料、整泡剤、酸化防止剤、撥水剤、触媒など公知の添加剤を上述の硬化性樹脂組成物に添加しても良い。
【0056】
保持パッドに含まれるシートの20℃における引張破断強度の下限は、特に限定されないが、1.00kg/mm2以上、1.10kg/mm2以上、又は1.20kg/mm2以上とすることができる。20℃における引張破断強度の上限は特に限定されないが、2.00kg/mm2以下、1.80kg/mm2以下、又は1.60kg/mm2以下とすることができる。上記の下限及び上限は、任意に組み合わせることができる。
保持パッドに含まれるシートの70℃における引張破断強度の下限は、特に限定されないが、1.20kg/mm2以上、1.30kg/mm2以上、又は1.35kg/mm2以上とすることができる。70℃における引張破断強度の上限は特に限定されないが、2.30kg/mm2以下、2.10kg/mm2以下、又は1.90kg/mm2以下とすることができる。上記の下限及び上限は、任意に組み合わせることができる。
研磨開始直後、保持パッドは室温(20℃程度)の雰囲気下で動作され、研磨終期には研磨により発生した熱により加熱され、保持パッドは70℃程度の雰囲気下に置かれる。20℃又は70℃における引張破断強度は、このような研磨開始直後及び研磨終期の雰囲気下における耐久性を考慮して測定される評価項目である。20℃又は70℃における引張破断強度は、後述の[実施例]の(評価方法)「(2)引張破断強度」に記載の方法及び条件に基づいて測定することができる。
【0057】
保持パッドに含まれるシートの熱プレス後の歪みの上限は、特に限定されないが、3.6mm以下、3.3mm以下、又は3.1mm以下とすることができる。熱プレス後の歪みの下限は特に限定されないが、0.5mm以上、0.8mm以上、又は1.0mm以上とすることができる。上記の下限及び上限は、任意に組み合わせることができる。
熱プレス後の歪みは、後述の[実施例]の(評価方法)「(3)熱プレス後の歪み」に記載の方法及び条件に基づいて測定することができる。
【0058】
(保持パッドの製造方法)
いくつかの実施形態において、保持パッドは、特に限定されないが、上述のシートをモールド法により成形する工程を含む方法により製造することができる。
【0059】
保持パッドに使用するシートは、特に限定されないが、一般に知られたモールド成形、スラブ成形等の製造法より作成できる。まずは、それらの製造法によりポリウレタンのブロックを形成し、ブロックをスライス等によりシート状とし、ポリウレタン樹脂から形成されるシートを成形し、基材などに貼り合わせることによって保持パッドとして製造できる。あるいは基材上に直接シートを成形して保持パッドとして製造できる。
【0060】
シートに含まれるポリウレタン樹脂の製造は、プレポリマー法、ワンショット法のどちらでも可能であるが、反応を制御する観点からプレポリマー法が好ましい。
上記ポリウレタン樹脂の製造は、イソシアネート基含有化合物を含む第1成分、及び活性水素基含有化合物を含む第2成分を混合して硬化させるものである。プレポリマー法では、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーがイソシアネート基含有化合物となり、鎖延長剤(硬化剤)が活性水素基含有化合物となる。ワンショット法では、イソシアネート成分がイソシアネート基含有化合物となり、鎖延長剤及びポリオール成分が活性水素基含有化合物となる。
【0061】
プレポリマー法を用いる場合、保持パッドに使用するシートは、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー及び硬化剤を含む硬化性樹脂組成物を調製し、当該硬化性樹脂組成物を硬化させることによって成形できる。
硬化性樹脂組成物は、例えば、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを含むA液と、硬化剤成分を含むB液とを混合して調製する2液型の組成物とすることもできる。それ以外の成分はA液に入れても、B液に入れてもよいが、不具合が生じる場合はさらに複数の液に分割して3液以上の液を混合して構成される組成物とすることができる。
【0062】
保持パッドに使用するシートは、発泡ポリウレタン樹脂から構成することができる。発泡ポリウレタン樹脂は、機械的発泡法、化学的発泡法等により製造することができる。
また、発泡ポリウレタン樹脂における発泡は、微小中空球体を含む発泡剤をポリウレタン樹脂中に分散させて行うことができる。当該発泡剤を使用したプレポリマー法を採用する場合、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー、硬化剤、及び発泡剤を含む硬化性樹脂組成物を調製し、当該硬化性樹脂組成物を発泡硬化させることによって成形することができる。
【実施例0063】
本発明を以下の例により実験的に説明するが、以下の説明は、本発明の範囲が以下の例に限定して解釈されることを意図するものではない。
【0064】
(材料)
後述の実施例1~5及び比較例1で使用した材料を以下に列挙する。
【0065】
・ポリエーテルポリカーボネートジオール(イソシアネート末端ウレタンプレポリマーの原料として使用)
PEPCD(1)・・・数平均分子量250のポリテトラメチレンエーテルグリコールに由来する構造単位を含み、数平均分子量が1000であるポリエーテルポリカーボネートジオール(上述の式(I)において、複数のR1がいずれもn-ブチレンであり、nが3.2、mが2.8であるポリエーテルポリカーボネートジオールに相当する。下記の表1に詳細を示す。)
PEPCD(2)~(5)・・・それぞれポリエーテルポリカーボネートジオール(2)~(5)(上記PEPCD(1)と同様に、下記の表1に詳細を示す。)
【0066】
・イソシアネート末端ウレタンプレポリマー:
プレポリマー(1)~(5)・・・下記の表2に詳細を示す。
表2に示す各成分の数値は、ウレタンプレポリマー全体を1000重量部とした場合の各成分の重量部を意味する。
例えば、表2に示すプレポリマー(1)は、ポリイソシアネート成分として、2,4-トリレンジイソシアネートを350重量部含み、高分子量ポリオール成分として、上述のPEPCD(1)を386重量部及び数平均分子量が650であるポリテトラメチレンエーテルグリコールを237重量部、並びに低分子量ポリオール成分として、ジエチレングリコールを27重量部含む、NCO当量500のウレタンプレポリマーである。プレポリマー(1)全体に対して、2,4-トリレンジイソシアネート、PEPCD(1)、数平均分子量が650であるポリテトラメチレンエーテルグリコール、及びジエチレングリコールの含有量は、それぞれ35.0重量%、38.6重量%、23.7重量%、及び2.7重量%となる。
【0067】
【0068】
【0069】
・硬化剤:
MOCA・・・3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(別名:メチレンビス-o-クロロアニリン)(MOCA)(活性水素当量=133.5)
【0070】
・添加剤:
分散剤・・・数平均分子量650のポリテトラメチレングリコール(活性水素当量=325)
発泡剤・・・水(活性水素当量=9)
整泡剤・・・SH-193(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)
触媒・・・トヨキャットET(東ソー株式会社製)
【0071】
(実施例1)
表2に示すように、A成分としてプレポリマー(1)を1000g、B成分として硬化剤であるMOCAを207g、それぞれ準備し、さらにC成分として分散剤を48g、発泡剤を0.95g、整泡剤を0.95g、触媒を0.48g、準備した。なお、各成分の比率を示すためにg表示として記載しているが、ブロックの大きさに応じて必要な重量(部)を準備すれば良い。以下同様にg(部)表記で記載する。
A成分、B成分、及びC成分を各々混合・撹拌し減圧脱泡した。脱泡した各成分を混合機に供給し、A成分、B成分、及びC成分の混合液を得た。なお、得られたA成分、B成分、及びC成分の混合液における、A成分のプレポリマーのNCOのモル数に対する、B成分のMOCAの活性水素のモル数、C成分の分散剤の活性水素のモル数、及びC成分の発泡剤の活性水素のモル数の合計の比率(活性水素のモル数の合計/NCOのモル数)は0.9である。
得られたA成分、B成分、及びC成分の混合液を80℃に加熱した型枠(850mm×850mmの正方形の形状)に注型し、30分間、80℃にて一次硬化させた。形成された樹脂発泡体を型枠から抜き出し、オーブンにて120℃で4時間、二次硬化した。得られた樹脂発泡体を厚さ方向にわたって0.4mm厚にスライスしてウレタンシートを作成し、当該シートを保持パッドとした。当該シートは略球状の気泡を有していることが確認できた。
上述のように、基準となるポリウレタン樹脂の重量をポリウレタン樹脂の原料となる各モノマー成分の重量の合計とした上で、ポリウレタン樹脂全体に対するポリエーテルポリカーボネートジオールの含有量を算出すると、表2に示すように30.7重量%となる。
【0072】
(実施例2~5、比較例1)
表2に示すように、A成分として、実施例1のプレポリマー(1)1000gに代えて、プレポリマー(2)~(6)1000gをそれぞれ使用した以外は、実施例1と同様にして、ウレタンシートを作成し、実施例2~5及び比較例1それぞれの保持パッドを得た。これらのシートはいずれも略球状の気泡を有していることが確認できた。
なお、実施例2~5及び比較例1のいずれにおいても、A成分、B成分、及びC成分の混合液における、A成分のプレポリマーのNCOのモル数に対する、B成分のMOCAの活性水素のモル数、C成分の分散剤の活性水素のモル数、及びC成分の発泡剤の活性水素のモル数の合計の比率(活性水素のモル数の合計/NCOのモル数)は、0.9である。また、実施例2~5及び比較例1それぞれについて、実施例1と同様に、ポリウレタン樹脂全体に対するポリエーテルポリカーボネートジオールの含有量を算出すると、表2に示す値となる。
【0073】
(評価方法)
実施例1~5及び比較例1それぞれのウレタンシート(保持パッド)について、以下の(1)密度、(2)引張破断強度、及び(3)熱プレス後の歪みの各評価を行った。結果を表3に示す。
【0074】
(1)密度
ウレタンシートの密度(g/cm3)について、日本工業規格(JIS K 6505)に準拠し、ウレタンシートから10cm×10cmの試料片を切り出し、その質量を測定し、上記サイズから求めた体積と上記質量から、弾性樹脂発泡体の密度(かさ密度)(g/cm3)を算出した。
【0075】
(2)引張破断強度
ウレタンシートを日本工業規格(JIS K 6550)で規定するダンベル形状に打ち抜き、測定試料を得た。当該測定試料の両端部を引張測定機(テンシロン万能試験機「RTC-1210」、エイ・アンド・デイ社製)の上下のエアチャックにはさみ、引張速度100mm/min、初期つかみ間隔50mmで測定を開始し、測定値がピーク(破断)に達した値を強力(最大荷重)として得た。当該測定を3回行い、引張破断強度(kgf/mm2)=強力(最大荷重)(kgf)/(厚さ(mm)×試料巾(10mm))の式に基づいて引張破断強度を算出し、さらにその平均値を算出し引張破断強度(kgf/mm2)を得た。引張破断強度は、実際の研磨時における摩擦熱等を想定して、20℃及び70℃で24時間以上保温した各測定試料を、温度を維持したままそれぞれ実施した。
測定時の温度:20℃及び70℃のいずれにおいても、引張破断強度が高いほど、保持パッドとした際の耐久性に優れるといえる。
【0076】
(3)熱プレス後の歪み
ウレタンシートを直径150mmの円形に加工し試料片(0.4mm厚)を作成した。そして、試料片の一方の面(保持面と反対側の面に相当)に、両面テープ(442JS、3M社製、基材の片面に感熱型接着剤層を有し、もう1つの片面に感圧型接着剤層を有する)の感熱型接着剤層を仮接着させ、試料片からはみ出た余分な両面テープを切除した。両面テープを仮接着させた試験片について、熱プレス機を使用して、温度:125℃、圧力:70g/cm2の条件で、35秒間、熱プレスを行った。熱プレス後の試験片を、両面テープ側の面を下にして平坦な面に温度:20℃の条件下で10分間静置し、静置後の試験片に関して、歪みにより最も浮き上がった部分の平坦な面からの高さを測定した。
熱プレス後の歪みが少ないほど、保持パッドとした際の耐熱性に優れるといえる。
【0077】
【0078】
実施例1~5は、式(I)で表されるポリエーテルポリカーボネートジオールを使用した保持パッドに関する。一方、比較例1は、上記ポリエーテルポリカーボネートジオールを使用しなかった保持パッドに関する。
【0079】
表3の結果より、実施例1~5の保持パッドは、20℃又は70℃における引張破断強度が1.00kg/mm2以上となり耐久性に優れ、かつ熱プレス後の歪みが3.6mm以下となり耐熱性に優れることがわかった。特に、使用したポリエーテルポリカーボネートジオール数平均分子量が1000~4000の数値範囲内である実施例1~3の保持パッドは、20℃における引張破断強度が1.20kg/mm2以上、かつ70℃における引張破断強度が1.35kg/mm2以上となり耐久性に特に優れ、また、熱プレス後の歪みが3.0mm以下となり耐熱性に特に優れることがわかった。
一方、比較例1の保持パッドは、熱プレス後の歪みが大きく耐熱性に劣ることがわかった。
【0080】
また、実施例1~5及び比較例1それぞれのウレタンシート(保持パッド)について、以下の(4)研磨装置への貼り付け試験の評価も行った。
上記「(3)熱プレス後の歪み」の評価後の各試験片について、研磨装置(荏原製作所社製 F-REX300X)の保持用定盤に対して、各試験片の両面テープ側の感圧型接着剤層が保持用定盤に接するようにして、貼り付けた。その結果、反り(歪み)の小さい実施例1~5の試験片は問題なく保持用定盤に固定できた。一方、比較例1の試験片は反り・歪みが著しいため、両面テープと保持用定盤との間に空気が噛み保持用定盤に適切に固定できず、保持パッドとして不適格であった。
【0081】
以上より、式(I)で表されるポリエーテルポリカーボネートジオールを使用したポリウレタン樹脂を含む保持パッドは、耐久性及び耐熱性のいずれも優れることがわかった。