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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131467
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】水栓用分岐金具
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/02 20060101AFI20230914BHJP
   F16L 19/00 20060101ALI20230914BHJP
   F16L 41/02 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
E03C1/02
F16L19/00
F16L41/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036252
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000144072
【氏名又は名称】SANEI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 隆裕
【テーマコード(参考)】
2D060
3H014
3H019
【Fターム(参考)】
2D060BA10
2D060BB07
2D060BB09
2D060BC30
2D060BF09
3H014BA01
3H019BA04
(57)【要約】
【課題】施工性の向上と施工後の位置保持性能の向上とを図ることが可能な水栓用分岐金具を提供すること。
【解決手段】水栓用分岐金具1は、通水路を成す主管部21と、主管部21から分岐される分岐管部22と、分岐管部22の開口端部に管軸方向の配置が重なるように螺合される管継手3と、分岐管部22の外周部に螺合されるロックナット6と、を有する。ロックナット6は、分岐管部22に対するねじ送りにより管継手3に締め付けられることで管継手3を分岐管部22に締結する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通水路を成す主管部と、該主管部から分岐される分岐管部と、を有する水栓用分岐金具であって、
前記分岐管部の開口端部に管軸方向の配置が重なるように螺合される管継手と、
前記管継手と前記分岐管部との螺合された内外2重の螺合管部のうちの外側の螺合管部の外周部に螺合されるナットであって、前記管軸方向のねじ送りにより内側の螺合管部と一体を成す当接部位に締め付けられることで前記内側の螺合管部を前記外側の螺合管部に締結するロックナットと、を有する水栓用分岐金具。
【請求項2】
請求項1に記載の水栓用分岐金具であって、
前記内側の螺合管部が、前記管継手により構成され、前記外側の螺合管部が、前記分岐管部により構成される水栓用分岐金具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の水栓用分岐金具であって、
当該水栓用分岐金具が、前記分岐管部に前記管継手が回転式のエルボとしてユニット化されて、シンクの下方に設けられるキャビネットの内部において前記主管部が高さ方向に延びて前記分岐管部が前記高さ方向とは交差する方向に延びるように配設される分岐止水栓として構成される水栓用分岐金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水栓用分岐金具に関する。詳しくは、通水路を成す主管部と、主管部から分岐される分岐管部と、を有する水栓用分岐金具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、通水路を二手に分ける分岐金具が開示されている。この分岐金具は、湯水を給水栓へと導く主管部と、主管部から分岐されて湯水を他の水栓器具(食器洗浄機や浄水器)へと導く分岐管部と、を備える。分岐管部には、他の水栓器具との間を繋ぐ管継手が管軸回りに回転可能なように接続されている。それにより、管継手を施工現場の状況に合わせた向きに自由に変えて配管施工を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-210963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構成では、管継手が分岐管部に対して回転フリーに接続されている。そのため、施工後に管継手が外力の作用を受けて意図しない方向に回転し、他の水栓器具との間を繋ぐ接続配管に過大なテンションを掛けたりキンクを生じさせたりするおそれがある。そこで、本発明は、施工性の向上と施工後の位置保持性能の向上とを図ることが可能な水栓用分岐金具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の水栓用分岐金具は、次の手段をとる。すなわち、本発明の第1の発明は、通水路を成す主管部と、該主管部から分岐される分岐管部と、を有する水栓用分岐金具であって、前記分岐管部の開口端部に管軸方向の配置が重なるように螺合される管継手と、前記管継手と前記分岐管部との螺合された内外2重の螺合管部のうちの外側の螺合管部の外周部に螺合されるナットであって、前記管軸方向のねじ送りにより内側の螺合管部と一体を成す当接部位に締め付けられることで前記内側の螺合管部を前記外側の螺合管部に締結するロックナットと、を有する水栓用分岐金具である。
【0006】
第1の発明によれば、管継手及び分岐管部のうちの一方に螺合されたロックナットを他方に締め付けたり緩めたりするだけの簡便な作業により、管継手の分岐管部に対する回転をロックしたり許容したりするよう切り替えることができる。また、管継手を螺合により分岐管部に対して傾ぎを生じにくいように組み付けることができる。したがって、例えば、管継手に他の接続配管を接続するなどの施工時には管継手を施工しやすい位置に回転させ、施工後に管継手を回転ロックして定位置に保持するといった切り替えを簡便に行うことができる。それにより、配管施工の施工性の向上と施工後の位置保持性能の向上とを図ることができる。
【0007】
本発明の第2の発明は、上記第1の発明において、前記内側の螺合管部が、前記管継手により構成され、前記外側の螺合管部が、前記分岐管部により構成される水栓用分岐金具である。
【0008】
第2の発明によれば、内側の螺合管部を構成する管継手に、ロックナットが締め付けられる当接部位や、外側の螺合管部との間をシールするOリング等のシール材を装着するための環状溝が形成されることとなる。したがって、分岐管部が主管部と一体成形された鋳物から成るような、複雑な切削加工を施しにくい構成とされても、比較的簡単に各構成部品の加工を行うことができる。
【0009】
本発明の第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、当該水栓用分岐金具が、前記分岐管部に前記管継手が回転式のエルボとしてユニット化されて、シンクの下方に設けられるキャビネットの内部において前記主管部が高さ方向に延びて前記分岐管部が前記高さ方向とは交差する方向に延びるように配設される分岐止水栓として構成される水栓用分岐金具である。
【0010】
第3の発明によれば、シンク下の狭いスペースにおいて、管継手を施工現場の状況に合わせた向きに自由に変えて、配管施工を簡便に行うことができる。また、施工後には、管継手を他の配管と干渉しても回転しない状態に保持することができる。したがって、他の配管との干渉を生じやすいシンク下の狭いスペースにおいて、管継手に接続される接続配管を適切に位置固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態に係る水栓用分岐金具の概略構成を表す斜視図である。
図2】管継手を分岐管部から外した分解斜視図である。
図3図2に対応する部分断面正面図である。
図4】管継手を分岐管部に螺合した状態を表す部分断面正面図である。
図5】ロックナットを管継手に締結した状態を表す部分断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0013】
《第1の実施形態》
(水栓用分岐金具1の概略構成)
始めに、本発明の第1の実施形態に係る水栓用分岐金具1の構成について、図1図5を用いて説明する。なお、以下の説明において、手前、奥、上、下、左、右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。各図中に示す方向は、それぞれ、本実施形態に係る水栓用分岐金具1を正面から見た方向となっている。以下の説明において、具体的な参照図を示さない場合、或いは参照図に該当する符号がない場合には、図1図5のいずれかの図を適宜参照するものとする。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る水栓用分岐金具1は、キッチンのシンク下のスペース、すなわち、シンクの下方に設けられる不図示のキャビネットの内部に配管施工される分岐止水栓として構成される。水栓用分岐金具1は、銅合金製の金具本体2と、金具本体2の分岐管部22に接続される銅合金製のエルボから成る管継手3と、を備える。
【0015】
また、水栓用分岐金具1は、金具本体2の通水路を成す主管部21の流量調節を行う回転操作式の上ハンドル4と、金具本体2の分岐管部22の流量調節を行う回転操作式の下ハンドル5と、を備える。また、水栓用分岐金具1は、管継手3の分岐管部22に対する回転をロックすることが可能なロックナット6を更に備える。水栓用分岐金具1は、上記金具本体2と管継手3と上ハンドル4と下ハンドル5とロックナット6とが1つに組み付けられて施工現場へと持ち運ばれる、ユニット化された構成とされる。
【0016】
水栓用分岐金具1は、その金具本体2の図示下側の開口端部21Aに、キャビネットの床下から延び出る給水配管P1が接続されるように配管施工される。それにより、水栓用分岐金具1は、図示下側の給水配管P1から湯または水(以下、湯水)の給水を受ける構成とされる。
【0017】
また、水栓用分岐金具1は、その金具本体2の図示上側の開口端部21Bに、接続配管P2を介して不図示の給水栓が接続されるように配管施工される。それにより、水栓用分岐金具1は、図示下側の給水配管P1から給水された湯水を接続配管P2を介して不図示の給水栓へと流す構成とされる。
【0018】
また、水栓用分岐金具1は、その分岐管部22に接続された管継手3に、別の接続配管P3を介して不図示の他の水栓器具(食器洗浄機や浄水器)が接続されるように配管施工される。それにより、水栓用分岐金具1は、図示下側の給水配管P1から給水された湯水を管継手3から別の接続配管P3を介して不図示の他の水栓器具へも分岐して流す構成とされる。
【0019】
図2図4に示すように、管継手3は、分岐管部22の図示左側の開口端部22A内に図示左側から螺合されて接続される。そして、上記螺合の後、管継手3は、図5に示すように、分岐管部22の外周部に螺合されたロックナット6が管軸方向に押し当てられるように締め付けられることで、ロックナット6を介して分岐管部22に締結される。
【0020】
上記締結により、管継手3の分岐管部22に対する回転がロックされる。また、図4に示すように、上記ロックナット6の管継手3に対する締め付け状態を緩めることにより、管継手3の分岐管部22に対する回転ロックが解除される。それにより、管継手3の分岐管部22に対する回転が許容される状態となり、管継手3の分岐管部22に対する捩じ込み位置、すなわち管継手3の向きを適宜自由に調節することが可能となる。
【0021】
また、管継手3の分岐管部22に対する捩じ込み位置を所望の位置に調節した後、ロックナット6を管継手3に締め付けることで、管継手3をその調節した所望の向きにロックすることができる。このように、水栓用分岐金具1は、ロックナット6を管継手3に締め付けたり緩めたりすることで、管継手3の分岐管部22に対する回転をロックしたり許容したりするように切り替えることが可能なダブルナット構造を備える。
【0022】
図1に示すように、水栓用分岐金具1は、上記のように管継手3が予め分岐管部22にユニット化された構成とされることで、シンク下の狭いスペースで管継手3を分岐管部22に接続するといった作業が不要な構成とされる。なおかつ、管継手3にロックナット6を締め付ける前の状態では、エルボから成る管継手3の向きを施工現場の状況に合わせた向きに自由に変えることができる。したがって、シンク下の狭いスペースにおいて、管継手3に別の接続配管P3を接続する作業を簡便に行うことができる。
【0023】
また、管継手3に接続配管P3を接続した後、ロックナット6を管継手3に締め付けることで、管継手3の分岐管部22に対する向きを所望の向きにロックすることができる。したがって、管継手3を接続配管P3の配索経路に適した向きに固定することができる。その結果、一連の配管施工後には、管継手3及び管継手3に接続される接続配管P3を、シンク下の狭いスペースに配索される他の配管(不図示)と干渉しても回転しない状態に保持することができる。
【0024】
(各部の構成)
以下、水栓用分岐金具1の各部の具体的な構成について説明する。図1に示すように、金具本体2は、図示上下方向に延びる縦向きの通水路を成す円管形状の主管部21と、主管部21の経路途中から図示左向きに通水路を分岐する円管形状の分岐管部22と、を有する。金具本体2は、鋳造により主管部21と分岐管部22とが一体成形された鋳物から成る。主管部21は、図示下側の開口端部21Aと図示上側の開口端部21Bとの間を真っ直ぐ繋ぐように延びる縦向きの通水路を成す。
【0025】
分岐管部22は、主管部21から図示左向きに直交して延びるように分岐される横向きの通水路を成す。図2図3に示すように、分岐管部22は、その図示左側の開口端部22Aに向かって延びる管部が、内部に管継手3を螺合させることが可能な螺合管部22Bとして形成される。ここで、螺合管部22Bが、本発明の「外側の螺合管部」に相当する。螺合管部22Bの外周部には、管軸方向に螺旋状に延びる形にねじ切りされた雄ねじB1が形成されている。
【0026】
雄ねじB1は、螺合管部22Bの外周部における管軸方向の途中箇所から図示左側の開口端部22Aにかけて連続的に形成されている。上記雄ねじB1には、ロックナット6が図示左側の開口端部22Aから螺合される。図3に示すように、ロックナット6は、雄ねじB1に沿って螺合管部22Bの外周部上を図示右側へと捩じ込まれることで、螺合管部22Bの開口端部22Aから図示右側に完全に入り込む位置まで移動できるようになっている。
【0027】
すなわち、ロックナット6は、雄ねじB1に沿って図示右側へと捩じ込まれることで、螺合管部22Bの開口端部22Aから図示左側に食み出なくなる位置まで図示右側へと捩じ込めるようになっている。ロックナット6は、六角ナットから成り、対応する六角レンチ等の汎用の工具を用いて、雄ねじB1に対するねじ送りの作業を簡便に行えるようになっている。
【0028】
また、螺合管部22Bの内周部には、管軸方向に螺旋状に延びる形にねじ切りされた雌ねじB2が形成されている。雌ねじB2は、螺合管部22Bの開口端部22Aから図示右側に入り込んだ管軸方向の途中箇所から基端(図示右端)の近傍箇所にかけて連続的に形成されている。雌ねじB2には、後述する管継手3の螺合管部31Aが図示左側の開口端部22Aから螺合される(図4参照)。ここで、管継手3の螺合管部31Aが、本発明の「内側の螺合管部」に相当する。
【0029】
図3に示すように、螺合管部22Bの内周部の雌ねじB2が形成されない開口端部22Aの近傍箇所は、雌ねじB2の内径よりもひとまわり大きな同心円状の平滑な環状面を成す一般面B3として形成される。この一般面B3は、図4に示すように、管継手3の螺合管部31Aが雌ねじB2に螺合された際に、螺合管部31Aの外周部に装着されたOリングRが管周方向の全域に亘って密着した状態に押し付けられるシール面として機能する。
【0030】
図2図3に示すように、管継手3は、図示左右方向に真っ直ぐ延びる段付き円管形状の本体管部31と、本体管部31の外周部に形成された接続口31Bに接続される円管形状の接続管部32と、を有する。管継手3は、上記本体管部31と接続管部32との接続により、L字型の配管継手を成すエルボとしてユニット化される構成とされる。
【0031】
具体的には、管継手3は、接続管部32が本体管部31の図示上側に開口する接続口31Bに図示上側から螺合されることで、互いの管路が内部で連通するように一体的に接続される。この接続により、管継手3は、本体管部31の図示右側の開口端部と接続管部32の図示上側の開口端部とが互いに連通するL字型の管路を成すように組まれる。本体管部31は、その図示左側の端部が閉塞された有底の円管形状とされる。
【0032】
本体管部31は、その図示右端側の円管部分が、図示左端側の円管部分よりもひとまわり小さな同心状の円管形状を成す螺合管部31Aとして形成される。螺合管部31Aの外周部には、管軸方向に螺旋状に延びる形にねじ切りされた雄ねじA1が形成されている。雄ねじA1は、螺合管部31Aの外周部における管軸方向の途中箇所から図示右側の開口端部にかけて連続的に形成されている。
【0033】
螺合管部31Aは、分岐管部22の螺合管部22Bの管内に図示左側の開口端部22Aから管軸方向に差し込まれて螺合される。具体的には、図4に示すように、螺合管部31Aは、その外周部に形成された雄ねじA1が、分岐管部22の螺合管部22Bの内周部に形成された雌ねじB2に捩じ込まれることで、互いの管路が内部で連通するように螺合される。この螺合により、管継手3は、分岐管部22に対して軸の傾ぎを生じにくいように組み付けられる。
【0034】
図2図3に示すように、螺合管部31Aの外周部における雄ねじA1の形成領域から図示左側に外れた管軸方向の中間部には、管周方向に環状に延びる形に窪んだ環状溝A2が形成されている。この環状溝A2には、ゴム製のOリングRが嵌め込まれて装着される。
【0035】
螺合管部31Aの外周部の環状溝A2より図示左側の基端部A3は、分岐管部22の一般面B3の内径よりも僅かに小さい略同一の外径を有する同心円状の平滑な環状面に形成されている。図4に示すように、螺合管部31Aは、分岐管部22の螺合管部22Bの管内に螺合されることで、OリングRが分岐管部22の一般面B3に密着した状態にセットされると共に、基端部A3が一般面B3に緩やかに嵌合した状態にセットされる。
【0036】
それにより、螺合管部31Aは、分岐管部22の螺合管部22Bに対して、管軸方向の配置が重なるように螺合されて、OリングRにより水密、かつ、雄ねじA1の螺合と基端部A3の緩やかな嵌合とにより軸の傾ぎが生じにくいように接続される。また、分岐管部22の管内流路とOリングRによるシール面との間に雄ねじA1と雌ねじB2との螺合構造が介在することから、分岐管部22の管内流路からOリングRのシール面に異物が入り込みにくい。上記螺合管部31Aは、その基端部A3の基端(図示左端)からフランジ状に張り出す本体管部31の段差面31Cが分岐管部22の開口端部22Aと当接する位置まで、分岐管部22の螺合管部22Bに捩じ込めるようになっている。
【0037】
管継手3は、上記螺合管部31Aの分岐管部22に対する捩じ込み位置を所望の位置に調節した後、図5に示すように、ロックナット6が図示左側へ捩じ込まれるように締め付けられることで、その段差面31Cにロックナット6が管軸方向に押し当てられる。それにより、管継手3の段差面31Cとロックナット6との間に互いに管軸方向に反発し合う力が作用する。
【0038】
この反発力により、ロックナット6が分岐管部22の雄ねじB1に図示右側へと押圧する押圧力を作用させる。また、管継手3の雄ねじA1が分岐管部22の雌ねじB2に図示左側へと押圧する押圧力を作用させる。その結果、管継手3の雄ねじA1と分岐管部22の雌ねじB2との間に強い摺動摩擦力が掛けられて、管継手3の分岐管部22に対する回転がロックされる。ここで、段差面31Cが、本発明の「当接部位」に相当する。
【0039】
ロックナット6を分岐管部22の雄ねじB1に図示右側へと捩じ込むねじの向きと、管継手3の螺合管部31Aの雄ねじA1を分岐管部22の雌ねじB2に図示右側へと捩じ込むねじの向きとは、互いに同一となる時計回り方向に設定されている。しかし、分岐管部22の雄ねじB1のピッチは、分岐管部22の雌ねじB2のピッチよりも2倍程度大きく設定されている。このような構成とされることで、ロックナット6を管継手3に締め付けた際に、管継手3がロックナット6と一体となって分岐管部22から図示左側へと外れる方向に回されにくくなっている。
【0040】
(水栓用分岐金具1の使用方法)
続いて、水栓用分岐金具1の配管施工方法について説明する。図1に示すように、水栓用分岐金具1は、前述したように、各構成部品が予め1つに組み付けられてユニット化された状態として施工現場へと持ち運ばれる。その際、ロックナット6は、管継手3に対する締め付けがされていない状態とされる。なお、ロックナット6は、管継手3の外れ止めのために予め緩く締め付けられた状態とされていても良い。
【0041】
次に、施工現場において、水栓用分岐金具1の下側の開口端部21Aに給水配管P1を接続する。その後、上側の開口端部21Bへの接続配管P2の接続と、分岐管部22に接続された管継手3への接続配管P3の接続と、を行う。その際、エルボから成る管継手3の向きを施工現場の状況に合わせた向きに自由に変えることができる。したがって、管継手3に接続配管P3を接続する作業を簡便に行うことができる。
【0042】
そして、管継手3に接続配管P3を接続した後、管継手3の向きを接続配管P3の配索経路に適した向きに調節し、ロックナット6を管継手3に締め付ける。それにより、管継手3を接続配管P3の配索経路に適した向きに固定することができる。なお、水栓用分岐金具1は、給水用或いは給湯用のどちらの給水経路に配管施工される構成であっても良い。また、水栓用分岐金具1は、施工現場の状況に合わせて、分岐管部22が主管部21から右方、後方、或いは前方に延びる向きとなるように配管施工される構成であっても良い。
【0043】
以上をまとめると、第1の実施形態に係る水栓用分岐金具1は、次のような構成となっている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0044】
すなわち、水栓用分岐金具(1)は、通水路を成す主管部(21)と、主管部(21)から分岐される分岐管部(22)と、を有する水栓用分岐金具(1)である。水栓用分岐金具(1)は、管継手(3)と、ロックナット(6)と、を有する。管継手(3)は、分岐管部(22)の開口端部(22A)に管軸方向の配置が重なるように螺合される。
【0045】
ロックナット(6)は、管継手(3)と分岐管部(22)との螺合された内外2重の螺合管部(31A,22B)のうちの外側の螺合管部(22B)の外周部に螺合されるナットであって、管軸方向のねじ送りにより内側の螺合管部(31A)と一体を成す当接部位(31C)に締め付けられることで内側の螺合管部(31A)を外側の螺合管部(22B)に締結する。
【0046】
このように、管継手(3)及び分岐管部(22)のうちの一方に螺合されたロックナット(6)を他方に締め付けたり緩めたりするだけの簡便な作業により、管継手(3)の分岐管部(22)に対する回転をロックしたり許容したりするよう切り替えることができる。また、管継手(3)を螺合により分岐管部(22)に対して傾ぎを生じにくいように組み付けることができる。
【0047】
したがって、例えば、管継手(3)に他の接続配管(P3)を接続するなどの施工時には管継手(3)を施工しやすい位置に回転させ、施工後に管継手(3)を回転ロックして定位置に保持するといった切り替えを簡便に行うことができる。それにより、配管施工の施工性の向上と施工後の位置保持性能の向上とを図ることができる。
【0048】
また、内側の螺合管部(31A)が、管継手(3)により構成され、外側の螺合管部(22B)が、分岐管部(22)により構成される。上記構成によれば、内側の螺合管部(31A)を構成する管継手(3)に、ロックナット(6)が締め付けられる当接部位(31C)や、外側の螺合管部(22B)との間をシールするOリング(R)等のシール材を装着するための環状溝(A2)が形成されることとなる。したがって、分岐管部(22)が主管部(21)と一体成形された鋳物から成るような、複雑な切削加工を施しにくい構成とされても、比較的簡単に各構成部品の加工を行うことができる。
【0049】
また、水栓用分岐金具(1)が、分岐管部(22)に管継手(3)が回転式のエルボとしてユニット化されて、シンクの下方に設けられるキャビネットの内部において主管部(21)が高さ方向に延びて分岐管部(22)が高さ方向とは交差する方向に延びるように配設される分岐止水栓として構成される。
【0050】
上記構成によれば、シンク下の狭いスペースにおいて、管継手(3)を施工現場の状況に合わせた向きに自由に変えて、配管施工を簡便に行うことができる。また、施工後には、管継手(3)を他の配管と干渉しても回転しない状態に保持することができる。したがって、他の配管との干渉を生じやすいシンク下の狭いスペースにおいて、管継手(3)に接続される接続配管(P3)を適切に位置固定することができる。
【0051】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、以下に示す様々な形態で実施することができるものである。
【0052】
1.本発明の水栓用分岐金具は、キッチンのシンク下のスペースの他、洗面化粧台下のスペースや浴室その他のスペースに配管施工されるものであっても良い。また、水栓用分岐金具は、床下から来る配管に接続されるいわゆるストレート型の分岐止水栓の他、壁側から来る配管に接続されて向きを変えて給水を行ういわゆるアングル型の分岐止水栓として構成されるものであっても良い。また、水栓用分岐金具は、止水機能を備えない単なる分岐配管として構成されるものであっても良い。
【0053】
2.管継手は、エルボの他、分岐管部と他の接続配管とを真っ直ぐ接続するソケットであっても良い。また、管継手は、分岐管部から分岐された流路を更に分岐するいわゆるチーズ(T字管)から成るものであっても良い。
【0054】
3.管継手と分岐管部とは、互いに螺合される内外2重の螺合管部のうちの外側の螺合管部が管継手により構成され、内側の螺合管部が分岐管部により構成されるものであっても良い。その場合には、ロックナットが、外側の螺合管部である管継手に螺合され、内側の螺合管部である分岐管部に締め付けられることで管継手の分岐管部に対する回転をロックする構成となる。
【0055】
4.ロックナットが締め付けられる当接部位は、内側の螺合管部と一体を成す管継手又は分岐管部に管周方向の全域に亘って環状に形成される部位の他、管周方向の一部に部分的に形成される部位や管周方向に断続的に複数並んで形成される部位であっても良い。
【0056】
5.ロックナットを外側の螺合管部に捩じ込むねじの向きと、管継手の螺合管部の分岐管部の螺合管部に捩じ込むねじの向きとは、互いに逆ねじの関係となるように設定されていても良い。また、これらのねじの向きに関わらず、ロックナットを外側の螺合管部に捩じ込むねじのピッチと、管継手の螺合管部の分岐管部の螺合管部に捩じ込むねじのピッチとは、互いに同一のピッチに設定されていても良い。ロックナットは、六角ナットの他、蝶ナット等の工具を使用せず手で締めたり緩めたりできるナットから成るものであっても良い。
【0057】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0058】
1…水栓用分岐金具、2…金具本体、3…管継手、4…上ハンドル、5…下ハンドル、6…ロックナット、21…主管部、21A…開口端部、21B…開口端部、22…分岐管部、22A…開口端部、22B…螺合管部(外側の螺合管部)、B1…雄ねじ、B2…雌ねじ、B3…一般面、31…本体管部、31A…螺合管部(内側の螺合管部)、A1…雄ねじ、A2…環状溝、A3…基端部、31B…接続口、31C…段差面(当接部位)、32…接続管部、R…Oリング、P1…給水配管、P2…接続配管、P3…接続配管
図1
図2
図3
図4
図5