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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131470
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】角度センサ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
G01D5/245 M
G01D5/245 110L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036255
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】小松 雅弘
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA21
2F077JJ01
2F077JJ09
2F077JJ23
(57)【要約】
【課題】センサ回路の出力の増幅に伴うノイズを抑制し、角度を精度良く測定する。
【解決手段】角度センサは、磁気抵抗効果素子を含むセンサ回路であるブリッジ回路1aと、発生する磁界が回転軸Aを中心として回転する磁石3,4と、ブリッジ回路1aの出力電圧を検出する電圧検出部11と、検出された電圧に基づいて磁界の回転角度を算出する回転角度算出部12とを備える。磁界の回転面7が磁気抵抗効果素子の薄膜抵抗パターンが形成されたセンサ面6aと交差するように、ブリッジ回路1aと回転体2と磁石3,4とが配置される。ブリッジ回路1aの出力電圧がゼロとなる基準位置は、磁界の回転面7とセンサ面6aとの交線上になく、センサ面6a上での基準位置と交線との角度βが-90°≦β<-45°、または45°<β≦90°の範囲である。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気抵抗効果素子を含むセンサ回路と、
発生する磁界が回転軸を中心として回転するように構成された磁界発生部と、
前記センサ回路の出力電気信号を検出するように構成された出力電気信号検出部と、
前記出力電気信号検出部によって検出された出力電気信号に基づいて前記磁界の回転角度を算出するように構成された回転角度算出部とを備え、
前記磁界の回転面が前記磁気抵抗効果素子の薄膜抵抗パターンが形成されたセンサ面と交差するように、前記センサ回路と前記磁界発生部とが配置され、
前記センサ回路の出力電圧がゼロとなる基準位置が、前記磁界の回転面と前記センサ面との交線上になく、前記センサ面上での前記基準位置と前記交線との角度βが-90°≦β<-45°、または45°<β≦90°の範囲であることを特徴とする角度センサ。
【請求項2】
請求項1記載の角度センサにおいて、
前記回転角度算出部は、前記出力電気信号検出部によって検出された出力電気信号に基づいて前記センサ面上での前記磁界の回転角度θを算出し、前記回転角度θと、前記センサ面に対する前記磁界の回転面の傾斜角度αと、前記センサ面上での前記基準位置と前記交線との角度βとに基づいて、φ=tan-1{tan(θ-β)/cosα}+tan-1(tanβ/cosα)により前記回転面上での前記磁界の回転角度φを算出することを特徴とする角度センサ。
【請求項3】
請求項2記載の角度センサにおいて、
前記回転角度算出部は、前記センサ回路の出力電気信号と前記回転角度θとの関係を示す近似関数により、前記出力電気信号検出部によって検出された出力電気信号から前記回転角度θを算出することを特徴とする角度センサ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の角度センサにおいて、
前記回転角度によらず前記磁界が前記センサ回路の磁気抵抗効果素子に対して飽和している状態であることを特徴とする角度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気抵抗効果素子を用いた角度センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
タンク中の液体の液面の位置などを測定する液面計の一種にトルクチューブ式液面計が存在する。そのトルクチューブ式液面計は、トルクチューブの一端を固定し、トルクチューブの他端にアームを取り付けてフロートを吊るし、フロートが液面から受ける浮力に応じてトルクチューブが捩じれるのを角度センサにより検出することで、液位を測定する。
【0003】
図10は角度センサ100の構成を示す図である。角度センサ100は、回転体2に取り付けられた磁石3,4による磁界の回転角度を測定する。角度測定には、磁気抵抗効果素子やホール素子などを用いたセンサ回路1が使用される(特許文献1参照)。図10の5は磁石3,4による磁界の向きを示し、6はセンサ回路1の測定面を示している。一般的には、図10に示すようにセンサ回路1の測定面と磁界の回転面とが平行となるように設置される。
【0004】
上記のトルクチューブ式液面計に使用されている角度センサでは、検出素子として異方性磁気抵抗効果(AMR:Anisotropic Magneto Resistive effect)素子を使用し、AMR素子で構成されたブリッジ回路を磁界の回転面に対して平行に設置し、磁界の回転角度によってブリッジ回路の中点電位差が変化することを利用して角度を測定している。
【0005】
この角度センサの出力は、磁界が1回転する間に2周期となり、磁界の回転角度と角度センサの出力とが一意に対応するのは最大でもその半周期である。このため、角度センサは、90°以上の角度範囲を測定することができない。また、液面計の仕様にもよるが、測定対象であるトルクチューブのねじれ角はたかだか数度であるため、角度センサの出力変化が小さい。このため、電気的に信号を増幅する必要があるが、ゲインを大きくするとノイズ混入のおそれがあるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-104454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、センサ回路の出力の増幅に伴うノイズを抑制することができ、角度を精度良く測定することが可能な角度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の角度センサは、磁気抵抗効果素子を含むセンサ回路と、発生する磁界が回転軸を中心として回転するように構成された磁界発生部と、前記センサ回路の出力電気信号を検出するように構成された出力電気信号検出部と、前記出力電気信号検出部によって検出された出力電気信号に基づいて前記磁界の回転角度を算出するように構成された回転角度算出部とを備え、前記磁界の回転面が前記磁気抵抗効果素子の薄膜抵抗パターンが形成されたセンサ面と交差するように、前記センサ回路と前記磁界発生部とが配置され、前記センサ回路の出力電圧がゼロとなる基準位置が、前記磁界の回転面と前記センサ面との交線上になく、前記センサ面上での前記基準位置と前記交線との角度βが-90°≦β<-45°、または45°<β≦90°の範囲であることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の角度センサの1構成例において、前記回転角度算出部は、前記出力電気信号検出部によって検出された出力電気信号に基づいて前記センサ面上での前記磁界の回転角度θを算出し、前記回転角度θと、前記センサ面に対する前記磁界の回転面の傾斜角度αと、前記センサ面上での前記基準位置と前記交線との角度βとに基づいて、φ=tan-1{tan(θ-β)/cosα}+tan-1(tanβ/cosα)により前記回転面上での前記磁界の回転角度φを算出することを特徴とするものである。
また、本発明の角度センサの1構成例において、前記回転角度算出部は、前記センサ回路の出力電気信号と前記回転角度θとの関係を示す近似関数により、前記出力電気信号検出部によって検出された出力電気信号から前記回転角度θを算出することを特徴とするものである。
また、本発明の角度センサの1構成例は、前記回転角度によらず前記磁界が前記センサ回路の磁気抵抗効果素子に対して飽和している状態であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、磁界の回転面が磁気抵抗効果素子の薄膜抵抗パターンが形成されたセンサ面と交差するように、センサ回路と磁界発生部とを配置し、センサ回路の出力電気信号がゼロとなる基準位置と、磁界の回転面とセンサ面の交線との角度βを-90°≦β<-45°、または45°<β≦90°の範囲に設定することにより、磁界の回転面上の90度より狭い角度範囲をセンサ面上の90度の範囲に拡大することができるので、センサ回路の出力の増幅に伴うノイズを抑制することができ、角度を精度良く測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、従来の液面計の構成を示す図である。
図2図2は、AMR素子で構成されたブリッジ回路の回路図である。
図3図3は、本発明の実施例に係る液面計の構成を示す図である。
図4図4は、本発明の実施例に係る角度センサの構成を示す図である。
図5図5は、角度センサにおける回転体の回転に伴う磁石の軌道の例を示す図である。
図6図6は、本発明の実施例に係る角度センサにおける回転体の回転に伴う磁石の軌道を示す図である。
図7図7は、センサ面に対する磁界の回転面の傾斜角度と、磁界の回転面とセンサ面との交線に対する、センサ面上での基準位置の角度と、測定可能な回転角度の範囲との関係を示す図である。
図8図8は、センサ面に対する磁界の回転面の傾斜角度と、磁界の回転面とセンサ面との交線に対する、センサ面上での基準位置の角度と、測定可能な回転角度の範囲との関係を示す図である。
図9図9は、本発明の実施例に係る角度センサを実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
図10図10は、従来の角度センサの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[従来例]
まず、本発明の実施例について説明する前に、従来の液面計と角度センサについて詳細に説明する。従来の液面計の構成を図1に示す。液面計は、角度センサ100と、トルクチューブ101と、測定対象の液体106の液面に浮かぶフロート102と、トルクアーム103と、トルクロッド104とから構成される。
【0013】
トルクチューブ101は、図示しないトルクチューブハウジングによって角度センサ100側の端が固定されている。トルクチューブ101の他端には、ナイフエッジ支点105で支持されたトルクアーム103が取り付けられている。トルクアーム103の先端にはフロート102が吊り下げられている。設置時にはフロート102の自重によってトルクチューブ101がねじられた状態で使用される。
【0014】
液体106の液位に比例して発生する浮力は、フロート102が吊り下げられているトルクアーム103を介して伝わり、ねじり応力を発生する。トルクロッド104は、トルクアーム103と連結され、浮力による曲げモーメントがトルクチューブ101の剛性によるばね力と釣り合うまで回転する。トルクロッド104の先端には角度センサ100の回転体2が固定されており、回転体2に取り付けられた磁石3,4による磁界の回転角度を角度センサ100で測定することで、液位を測定することができる。
【0015】
磁界によって電気抵抗が変化するAMR素子で構成されたセンサ回路であるブリッジ回路1aを図2に示す。ブリッジ回路1aは、第1のAMR素子10-1と第2のAMR素子10-2とを直列に接続した第1の直列回路10-5と、第3のAMR素子10-3と第4のAMR素子10-4とを直列に接続した第2の直列回路10-6とを並列に接続したものである。
【0016】
図2の両向き矢印で示すように、向かい合うAMR素子10-1と10-4の感磁方向(抵抗値が最小になる磁界の方向)が同一であり、向かい合うAMR素子10-2と10-3の感磁方向が同一である。また、隣り合うAMR素子の感磁方向は直交する。
【0017】
角度センサの磁石による磁界の回転面と、4つのAMR素子10-1~10-4の薄膜抵抗パターンが形成されたセンサ面(AMR素子10-1~10-4の感磁方向と平行な面であり、図2の紙面と平行な面)とが平行な場合、図示しない電源からブリッジ回路1aに一定の電流Iを流すと、出力電気信号である中点電位差(第1の直列回路10-5の中点と第2の直列回路10-6の中点との電位差)V(θ)は、磁界の回転角度θによって式(1)のようになる。
【0018】
【数1】
【0019】
式(1)から中点電位差V(θ)は、振幅がV0で、磁界が1回転する間に2周期となる周期関数となる。磁界の回転角度θは、中点電位差V(θ)から式(2)のように求まる。
【0020】
【数2】
【0021】
半周期を超えると、中点電位差V(θ)に対し回転角度θが一意に決まらなくなるため、従来の角度センサの角度測定範囲は90度以内となる。
【0022】
[実施例]
図3は本発明の実施例に係る液面計の構成を示す図、図4は本発明の実施例に係る角度センサの構成を示す図であり、図1図10と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施例では、図3図4に示すように0度より大、90度より小の傾斜角度範囲で、磁界の回転面7がAMR素子10-1~10-4の薄膜抵抗パターンが形成されたセンサ面6aと交差するように、角度センサ100aのブリッジ回路1a(センサ回路)と回転体2と磁石3,4(磁界発生部)とを配置する。磁石3,4は、トルクロッド104の先端に固定された回転体2に取り付けられ、回転体2の回転に伴って回転軸Aを中心として回転する。回転軸Aの延長線は、図2に示す菱形(正方形)のブリッジ回路1aの中心を通る。
【0023】
AMR素子10-1~10-4の出力は、磁気飽和状態では磁石3,4との距離によらず不変で、磁界の角度のみに依存する。したがって、図4のようにセンサ面6aに対して磁界の回転面7が傾く場合、測定範囲中で磁石3,4が最もAMR素子10-1~10-4から離れる位置でもAMR素子10-1~10-4が磁気飽和状態となるだけの磁界強度を保っていれば、磁石3,4の回転軌道による距離の変化を考慮しなくて良い。
【0024】
回転体2の回転に伴って磁石3,4は、磁界の回転面7の面内において真円の軌道を描く。ここで、磁界の回転角度をφ、磁界の回転面7とセンサ面6aとのなす角をα(0<α<90度)、センサ面6a上での磁界の回転角度をθとすると、上述のとおり磁石3,4との距離を考慮する必要が無いため、磁石3,4の回転を真円ではなく楕円軌道として考えることができる。具体的には、磁石3,4の軌道は、磁石3,4の回転半径をRとすると、短径R、長径R/cosαとなる図5の楕円8の軌道として考えることができる。
【0025】
図5より、式(3)~式(6)が得られる。
cosφ=cosθ ・・・(3)
sinφ=sinθ/cosα ・・・(4)
tanφ=sinφ/cosφ=(sinθ/cosα)/cosθ
=tanθ/cosα ・・・(5)
φ=tan-1(tanθ/cosα) ・・・(6)
【0026】
ここで、式(7)より、式(8)が得られる。
【0027】
【数3】
【0028】
【数4】
【0029】
また、sin2θ=V(θ)/V0なので、V(θ)/V0=xとおくと、式(9)が得られる。
【0030】
【数5】
【0031】
したがって、ブリッジ回路1aの出力電気信号から磁界の回転角度φを求めることができる。ここで、-45°≦θ≦45°の90°の範囲に対応する磁界の回転角度φの範囲が、センサ面6aに対する磁界の回転面7の傾斜角度αによってどのように変化するかを考える。このθの範囲で-1≦sin2θ≦1となり、磁界の回転角度φはθが45°のとき最大値φmaxをとり、θが-45°のとき最小値φminをとる。
【0032】
【数6】
【0033】
【数7】
【0034】
最大値φmaxと最小値φminとの差、すなわち測定可能な磁界の回転角度φの範囲Δφは式(12)のようになる。
【0035】
【数8】
【0036】
傾斜角度α=0°のとき、φ=θのため、測定可能な磁界の回転角度φの範囲Δφ=90°である。傾斜角度α=±90°のとき、磁界の回転角度φは、θの値によらないため測定不可である。
【0037】
図5の例では、ブリッジ回路1aの出力電気信号である中点電位差V(θ)がゼロとなる方向(基準位置)が、磁界の回転面7(図5の軌道8の面)とセンサ面6aとの交線(図5のL)と一致するようにブリッジ回路1aと回転体2と磁石3,4とを配置していた。図2図5では基準位置をθ0で示している。図2の例では、基準位置θ0は、AMR素子10-2,10-3の感磁方向と平行で、AMR素子10-1,10-4の感磁方向と直交する方向である。
【0038】
これに対して、本実施例では、磁界の回転面7がセンサ面6aと平行でなく、かつブリッジ回路1aの基準位置θ0が磁界の回転面7とセンサ面6aとの交線L上にない場合について説明する。上記と同様に回転軸Aの延長線はブリッジ回路1aの中心を通るが、ここでは図6に示すように、ブリッジ回路1aの基準位置θ0が、センサ面6a上で交線Lに対して角度βだけずれ、磁界の回転面上で交線Lに対して角度ψだけずれる場合を考える。
【0039】
式(6)でφ→φ-ψ、θ→θ-βと置き替えると、式(13)が得られる。
【0040】
【数9】
【0041】
また、角度ψとβの間にも、式(14)のような関係が成り立つ。
【0042】
【数10】
【0043】
式(13)に式(14)を代入すると、磁界の回転角度φは式(15)のようになる。
【0044】
【数11】
【0045】
式(15)の右辺を整理してxを使って表すと、式(16)のようになる。
【0046】
【数12】
【0047】
-45°≦θ≦45°の範囲で測定可能な磁界の回転角度φの範囲Δφは、センサ面6aに対する磁界の回転面7の傾斜角度αと、磁界の回転面とセンサ面6aとの交線Lに対する、センサ面6a上での基準位置θ0の角度βとによって変化する。角度α、βがそれぞれ-90°≦α≦90°、-90°≦β≦90°の範囲内の値で、回転角度θが-45°から45°まで90度変化するときの回転角度φの最大値をφmax、最小値をφminとし、測定可能な回転角度φの範囲Δφをφmax-φminとする。図7は、角度α、βと、測定可能な回転角度φの範囲Δφとの関係を示す図である。ただし、図7では、α<0、β<45の範囲は省略している。また、図7の700は測定不可の条件範囲を示している。
【0048】
図7によれば、センサ面6aに対する磁界の回転面7の傾斜角度α=0°のときは、角度βによらず、測定可能な回転角度φの範囲Δφ=90°となる。β<-45°、β>45°の範囲では、Δφ<90°となり、回転角度θよりも狭くなる。例えばβ=90°、α=86°の場合、測定可能な回転角度φの範囲Δφ=7.98である。この回転角度φの範囲Δφは、センサ面6a上では-45°≦θ≦45°の範囲に対応するので、角度範囲を約11.3倍に拡大していると言える。
【0049】
すなわち、磁界の回転角度φの変化が小さい場合でも、センサ面6a上では回転角度θの変化が大きくなるので、回転角度φの変化に対するブリッジ回路1aの中点電位差V(θ)の変化を大きくすることができる。その結果、本実施例では、ブリッジ回路1aの中点電位差V(θ)を大きく増幅する必要がなくなるので、中点電位差V(θ)の増幅に伴うノイズを抑制することができ、磁界の回転角度φを精度よく測定することが可能になる。
【0050】
図7を-90°≦β≦90°に拡大した図を図8に示す。ただし、図8では、-90°≦β<-45°、45°<β≦90°の範囲の詳細な記載を省略している。式(16)から、図8は傾斜角度α=0に関して対称となる。一方、式(16)中にsin2βがあるので、φmax、φminは角度βの正負で異なるが、Δφ=φmax-φminを示す図8は、β=0に関して対称となる。
【0051】
なお、-45°≦β≦45°の範囲で、傾斜角度αが概ね65°以上(または-65°以下)になると、角度βの値によっては回転角度φが不連続となる。不連続とは、回転角度φが途中で180°ずれることを言う。図8では、800が不連続点を含む範囲を示している。
本実施例では、-90°≦β<-45°、または45°<β≦90°の範囲で使用するため、不連続点が問題になることはない。
【0052】
図4に示す本実施例の電源13は、ブリッジ回路1aに一定の電流Iを供給する。電圧検出部11は、ブリッジ回路1aの中点電位差V(θ)を検出する。電圧検出部(出力電気信号検出部)11は、検出した中点電位差V(θ)を増幅する増幅器(不図示)を備えている。本実施例では回転角度φの変化に対する中点電位差V(θ)の変化を大きくすることができるので、従来の液面計に使用される角度センサと比較して増幅器のゲインを小さくすることができる。
【0053】
本実施例の回転角度算出部12は、電圧検出部11によって検出された中点電位差V(θ)に基づいて、センサ面6a上での磁界の回転角度θを算出し、回転角度θと既知の角度α,βとに基づいて、式(15)により磁界の回転角度φ(回転体2およびトルクロッド104の回転角度)を算出する。この際、回転角度算出部12は、予め登録されている、中点電位差V(θ)と磁界の回転角度θとの関係を示す近似関数を用いて、中点電位差V(θ)から磁界の回転角度θを算出すればよい。
【0054】
なお、上記実施例ではブリッジ回路1aの中点電位差V(θ)に基づいて、センサ面6a上での磁界の回転角度θを算出するようにしたが、これに代えて、ブリッジ回路1aに定電圧を与え、ブリッジ回路1aを流れる電流値A(θ)に基づいて、センサ面6a上での磁界の回転角度θを算出するように構成することも可能である。
また、図3では液面計を例に挙げて説明しているが、本実施例の角度センサ100aは液面計以外にも適用可能であることは言うまでもない。
【0055】
本実施例で説明した回転角度算出部12は、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置および外部とのインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピュータの構成例を図9に示す。コンピュータは、CPU200と、記憶装置201と、インタフェース装置(I/F)202とを備えている。I/F202には、電圧検出部11のハードウェア等が接続される。CPU200は、記憶装置201に格納されたプログラムに従って本実施例で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、回転角度を測定する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1a…ブリッジ回路、2…回転体、3,4…磁石、10-1~10-4…AMR素子、11…電圧検出部(出力電気信号検出部)、12…回転角度算出部、13…電源、100a…角度センサ、101…トルクチューブ、102…フロート、103…トルクアーム、104…トルクロッド、105…ナイフエッジ支点。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10