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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131477
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】水素製造船
(51)【国際特許分類】
   B63B 21/00 20060101AFI20230914BHJP
   B63B 35/00 20200101ALI20230914BHJP
   B63B 21/20 20060101ALI20230914BHJP
   B63B 21/30 20060101ALI20230914BHJP
   B63H 25/46 20060101ALI20230914BHJP
   B63H 3/00 20060101ALI20230914BHJP
   B63H 23/34 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
B63B21/00 B
B63B35/00 T
B63B21/20 B
B63B21/20 A
B63B21/30
B63H25/46
B63H3/00 Z
B63H23/34 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036262
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】591183544
【氏名又は名称】井村 覺
(74)【代理人】
【識別番号】100085165
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 康一
(72)【発明者】
【氏名】井村 覺
(57)【要約】      (修正有)
【課題】係留索だけで海底に係留される水素製造船を提供する。
【解決手段】表層海流により駆動される水車型プロペラ2と、この水車型プロペラで駆動される発電装置と、得られた電力により水素を得る水電気分解装置4と、船体を所定位置に留置するための係留索とを具え、この係留索は船底係留鎖6と、係留ロープ7と、表示ブイ8とを具え、船底係留鎖の一端は船底の船体浮力の総合的中心点9に固定され他端は係留ロープの一端に着脱可能に結合され、係留ロープの他端には船体を海底に係留するためのアンカー10を有し、係留ロープと船底係留鎖との結合部には前記表示ブイがロープ81を介して結合される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層海流エネルギーを利用した水素製造船であって、表層海流による駆動源と、この駆動源による発電装置と、発電装置からの電力により水素を得る水電気分解装置と、表層海流エネルギーを前記駆動源で採取するため船体を所定位置に留置するための係留索と、水素製造以外に使用する電力を得るための風車発電装置とを具え、前記駆動源は船体の両舷において進行方向の前後に各一対付設したプロペラ水車からなり、前記係留索は船底係留鎖と、係留ロープと、表示ブイとを具え、船底係留鎖の一端は 船底の船体浮力の総合的中心点に固定され他端は係留ロープの一端に着脱可能に結合され、係留ロープの他端には船体を海底に係留するためのアンカーを有しており、さらに係留ロープと船底係留鎖との結合部には前記表示ブイがロープを介して結合されてなり、水素製造船本体は、唯一前記係留索だけで海底に係留されていることを特徴とする水素製造船。
【請求項2】
請求項1記載の水素製造船において、船体位置制御機構を設け、この船体位置制御機構は、高圧水を産出する複数の高圧ポンプと、この高圧ポンプに対応する複数の高圧水噴出口と、高圧水の噴出を制御して船体の位置を自動的に補正する制御手段とで構成し、プロペラ水車と海流方向との位置関係を適正に保持することを特徴とする水素製造船。
【請求項3】
請求項1又は2記載の水素製造船において、前記係留ロープをカーボンファイバー繊維により形成して、水素製造船の海底への係留時に係留ロープの弛み度合いを縮減できるようにしたことを特徴とする水素製造船。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか記載の水素製造船において、前記プロペラ水車のブレードを交換可能として、地域毎の海流の速度に対応した仰角ピッチを有するブレードを選択できるようにしたことを特徴とする水素製造船。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか記載の水素製造船において、前記係留ロープは、互いに接続・分離自在な上部と下部からなっていて、分離時に下部の上端(アンカーと反対側端部)から補助アンカーを係合させて海底に着座させるようにしたことを特徴とする水素製造船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、海流エネルギーを電力に変換し、その電力を使用して水素ガスを製造し、又その電力を使用してバッテリー充電に供し、電力エネルギーを水素ガスとバッテリーの形態で保存し、水素ガスは水素燃料電池、又は水素エンジン等の燃料源として使用でき、更に電力をバッテリーの充電に使用し、同じく電力エネルギーをバッテリーの形態で保存して、無限ともいえるカーボンフリーなエネルギーを提供できる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
我が国は、天然資源の乏しい国土において工業立国を目指し、現在では世界屈指の工業国となっている。 しかしながら、このことは、世界中から石油、石炭をはじめとする各種化石燃料や鉱物資源を買い求めて、その消費を繰り返しているのが現状である。 しかし、このようなことは明らかに地球規模の温暖化の要因であり、今や化石燃料エネルギーから持続可能な再生エネルギーへの転換が喫緊の課題となっている。
その対応策の一つとして、バイオマスジェット機関発電技術があるが、持続可能な総熱量には、限界があり、バイオマスだけでは、必要総量の数%程度に限界点が存在している。
【0003】
一方、視点を山から海へ転じると、無尽蔵のエネルギー資源が存在する。 それは、例えば、黒潮に代表される海流のエネルギーである。
この海流で発電すれば、大きな発電能力(MW),年間総発電量(数十~百テラWh)も大きくでき、再生可能エネルギーの有力な発電方式として期待される。
そこで、本願発明はこの超巨大エネルギーを活用する具体的技術を提供することを目的としている。
ところで、従来の潮海流発電実用化技術には大別して以下の2種類がある。
1つ目、は海底面(地面)固定据え付け型の潮流エネルギーを電力化する方法。(海底据え付け固定型海底送電線方式) である。
2つ目、は洋上多点固定係留型である。 これは、洋上浮体風車発電装置と同じ表層潮流型多点固定支持投錨浮体物係留方法であって、海底送電線方式が採用されている。 上記二つの工事工法は、潮流の停止時間の合い間を縫って施工する必要がある。 しかしながら、海流には潮止まり、 潮間そのものが無く、ただ永々悠々滔々と流れている。事実上千 m を超える海底に多数の定点投錨を行う技術は存在しない。
【0004】
従来、試みられた幾多の潮流発電方法等は、総て固定設置方式や多点固化定地係留方式や、基礎杭打ち込み海底固定化工法等々で、我が国の太平洋や日本海の外洋における海流エネルギーを採取しようとしても、経済性、工事技術の観点からも、そもそも架空絵空事の事案となってしまい、現実問題として実現不可能であるのが現状である。 すなわち、外洋性深海1~4千mの海洋面上の工事手段 は現実問題として実在しない。
本願発明の趣旨は、外洋の無尽蔵に近い海流エネルギー資源をその厳しい自然環境と 妥協共存しながら採集活用する技術であり、荒れ狂う海では操業することもなく、外洋の海底深くに係留された本願水素製造船は、急ぎ母港に帰還し、暴風雨の過ぎ去るのを待つ、退避型、自然調和型の技術である。
【0005】
すなわち、本発明は上記の何れにも属さないものであり、海流中において「投錨」一つで係留されている水素製造船であって、海流に抗して係留され、風に曝されて、表層海流のエネルギーを採取して発電変換し、更に水素転換する技術である。
そして、例えば、台風発生時には、係留ロープを解舫して、目印の発光、発信、警報謝音、を放する表示ブイ(浮 玉)のみ海面に残して母港に自力自走で帰還する。
【0006】
操業再開は台風の過ぎ去った洋上を母港から自力自走操船で目印である表示ブ イの処まで進み、船上の機器類を操作して表示ブイを引き上げ、係留ロープと船底係留鎖とを連結して、水素製造船を元の海面上に係留し、再び海流エネルギーによる発電を開始する。
【0007】
以上が本願発明に係る技術の背景であるが、具体的な文献としては、後述の特許文献1がある。 そしてこの、特許文献1に係る発明は、海中に設置されて、再生可能なクリーンなエネルギーである潮流又は海流を使用して発電できる発電装置Gを使用し、発生した電力を使ってその設置海域で、船内の水素ガス製造装置で安価に水素ガスを生産して目的地に海上輸送でき、又は多量の放電したバッテリーを安価に充電して目的地に効率的に輸送できるようにする。
【0008】
すなわち、 潮流を使用して発電する発電装置の近くの海上にフロート基地を設け、発電装置が発生した電力を、海中電力線ケーブルKでフロート基地まで配線し、同フロート基地の近くに停船した船にフロート基地の海上面に設けた送電線のコネクターに、船側に接続された空中電力線のコネクターを可動アーム装置によって接続して、船内で電力を使用して、水素製造装置で水の電気分解で水素ガスを発生し、これを加圧して水素ガス高圧容器に充填し、陸上に搬送することにより、潮流エネルギーを水素ガスとして利用するものである。したがって、たとえ発電装置と陸上との間に相当の距離があっても長い送電ケーブルは不要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2016-100970
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記文献に係る従来技術は、装置が複雑かつ重厚長大となり建造コストに難点がある一方、この高価な装置は単に海底に係留する構成のため悪天候に対する対策も講じられていないため、往々にして風波に抗しがたく、台風などに遭遇すれば破壊、沈没するおそれもある。 また、潮流、海流の流れ方向と水車との位置関係を正しく保持する手段も講じられていないため、発電効率が悪いという問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、表層海流エネルギーを利用した水素製造船であって、表層海流によ
る駆動源と、この駆動源による発電装置と、発電装置からの電力により水素を得る水
電気分解装置と、表層海流エネルギーを前記駆動源で採取するため船体を所定位
置に留置するための係留索と、水素製造以外に使用する電力を得るための風車発
電装置とを具え、前記駆動源は船体の両舷において進行方向の前後に各一対付設
したプロペラ水車からなり、前記係留索は船底係留鎖と、係留ロープと、表示ブイとを
具え、船底係留鎖の一端は 船底の船体浮力の総合的中心点に固定され他端は係
留ロープの一端に着脱可能に結合され、係留ロープの他端には船体を海底に係留す
るためのアンカーを有しており、さらに係留ロープと船底係留鎖との結合部には前記
表示ブイがロープを介して結合されてなり、水素製造船本体は、唯一前記係留索の
みにより海底に係留されている構成を有する水素製造船を提供して、上記課題を解
決する。
【0012】
本願発明はまた、上記0011記載の水素製造船において、船体位置制御機構を設け、この船体位置制御機構は、高圧水を産出する複数の高圧ポンプと、この高圧ポンプに対応する複数の高圧水噴出口と、高圧水の噴出を制御して船体の位置を自動的に補正する制御手段とで構成し、プロペラ水車と海流方向との位置関係を適正に保持できる水素製造船を提供して、従来の課題を解決する。
【0013】
さらに、本願発明は、上記段落0011又は0012記載の水素製造船において、前記係留ロープをカーボンファイバー繊維により形成し、係留時における係留ロープの海中における弛度を適正に保持し、そして又は船底の船体浮力の総合的中心点から海底に垂下する直線と船体の係留時の係留ロープとのなす角度を適正に保持し、プロペラ水車が海流エネルギーを効率よく捕捉できる水素製造船を提供する。
【0014】
また、上記段落0011ないし0013いずれか記載の水素製造船において、前記プロペラ水車のブレードを交換可能として、季節毎の海流の速度に対応した仰角ピッチを有するブレードを選択できるようにし、季節毎の海流速度に応じてブレードを交換することにより敢えて高価、複雑なピッチ可変機構を用意しなくても、海流速度に応じた適正な対応を可能にした水素製造船を実現する。
【発明の効果】
【0015】
本願発明は、上記構成により、海流エネルギーを効果的に採取できるという効果を
奏する。 陸地の近くを流れ、月の満ち欠けで水流の速度が激変する潮流に比べ、海
流は月の満ち欠けなどによる速度変化が殆どなく、その規模も、例えば黒潮などは本
流の流れで幅約75km、深さ500m,流速3~5ノットに達する巨大な存在である。し
たがって、このような海流のエネルギーを効率よく採取することは至難であった。
それは、言うまでもなく海流が陸地から離れ外洋と言われる地点にあることに起因し、エネルギー採取のための構造物の構築をほとんど不可能にしていたからである。
海流に係る困難な条件の中で、本願発明は前記の構成により海流エネルギーの効果的な採取が可能になっている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本願発明一実施例に係る水素製造船の要部を示す平面図である。
図2図1に示す水素製造船の要部を示す側面図である。
図3図2に示す水素製造船の海流中における海底への係留状態ならびに係留ロープの揺動による船体位置変化を示す側面図である。
図4】係留下にあり稼働中の水素製造船に対する横風の影響を示す平面図である。
図5】追加アンカー装着作業の説明図である。
図6】係留ロープの船側端を開放する作業の準備状態を示す説明図である。
図7】船底係留鎖と係留ロープの連結部分を船上に捕捉した状態の説明図である。
図8】船底係留鎖と係留ロープの結合を解除し、係留ロープの端部に表示ブイを連結して海中に投じる作業を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本願発明に係る水素製造船は、舷側の左右において、船体の前後方向に各2基のプロペラ水車が海流の流れに正 対した状態に取り付けられている。 そして、そのプロペラ水車は右回りと左回りとなるようにプロペラ水車のブレード翼形のヒネリ角度が180度 正反対に形成されており、笠羽増速歯車で左右のギヤーが貫通型シャフトに&#32363;がっている。
貫通シャフトには増速用サイレンサー(平歯)チエンスプロケットが取り付けられていてその先端には交流直巻き電動機(オルタネー ター型)がサイレントチエンで&#32363;がっている。 この電動機は、界磁コイルに流す電流制御により発電機としてあるいは電動機としての機能が瞬時に切り替えることが出来る。
【0018】
本願水素製造船は、船外への電力の供給は一切することなく、また、船外からの受 電も一切不要な構成であり、船内で発電された電力は、船内での水素製造、照明等の船内消費、と自己の船体姿勢・位置制御用や、母港への帰還用バッテリーへの充電用にのみ充当される。
したがって、船外と連結される電力ケーブル等の機器は不用である。 海流エネルギーによる電力で水素を製造し、ボンベに充填して、これを所要の場所に運びこの水素を活用する。 このように、海中送電線などの類は一切必要としない。
【0019】
また、潮流にくらべて、海流には潮間潮止まりがそもそも存在しない。月の出入り、潮の満ち引きその物の影響は極めて希薄である。 したがって、海流利用にあっては、潮流の場合と異なり、潮間の時間帯を利用する工法が全く使うことができない。
陸地、離島の地上岸辺から数km~数十km離れた地点に海流 (黒潮本流や対馬海流)の本体流は悠然滔々と流れている。 この海流を前にして、従来は大がかりな基礎工事や海底埋設物(海底電力ケーブル敷設埋設工事等)が必須とされ、その施工工事費や設備資材が高額化してしまい結果的に実施可能性と経済性に鑑みて、従来は、海流エネルギーを利用することは困難であった。
【0020】
現実問題として、1000mを超える外洋での深海底工事実用化は不可能で あるばかりか台風や高波の場合設備その物や人命まで損なうこともあり得る。 本願に係る水素製造船は、固定式装置ではなく、移動係留式、仮設式、の発電装置と搭載されている水素発生装置により、海流エネルギーによる電力で水素を製造し、これを種々利用する。 そして、船体は、アンカーと係留ロープとで海底に低コストかつ安全な工法により海底に固定され効率よく海流エネルギーを獲得することができる。 さらに言えば、船上に設けている自己作業場所と設備を使い、カーボンファイバー製アンカーロープの脱着を行い、自船自力走行で母港に帰還し、天候不順時の退避や船体その他機器の補 修等、を母港ドックにて行える点に大きな利点を有している。
【0021】
本願に係る水素製造船は、設計仕様を自力自走帰還路距離は数10km~100km未満値、また自走速度は海 流速度の凡そ2~3倍速の最速毎時5~10ノットまでとなすことが可能である。
そして、「1~10MW」程度の発電能力を有する水素製造船には、多数の設置最適場所が日本の全土周辺近海に多数 実在するし、その資源量の総量総和値は日本国総てのエネルギー需要 を賄っても余る量が無尽蔵に存在していると言っても過言ではない。 ところで、そのような場所は、一方では、好漁場であったり、高頻度航行路の真只中、 にある場合が多々存在する事も事実である。 しかしながら、本願に係る水素製造船は、これらの場所でも、例えば漁期外にのみ稼働させる、あるいは航路 外において仮設する、もしくは昼間のみ操業し夜間は照光発信ブイのみ残して撤収帰港する等々、多様な稼働形態が可能である。
【0022】
従来の潮力発電や、海流発電装置の多くは、海底に多くの設備工事が不可欠である。 このような工事は、多くの海底施工事費用が発生し、発 電で得られる生涯利益総額を優に越える場合が多々発生し、企画立案の段階で実施化に失敗し、それゆえ事業化を断念する事例が無数あった。
本願発明は、それら海底の複雑な工事類が事実上存在しない海流エネルギー利用技術を提供する。 本願発明は、洋上における投錨工事は必要であるが、海中や海底での一切の作業工事が不要である。 そもそも、外洋千m以上の深い海では事実上従来公知技術では、全く対処し難いと言える。
また、本願の水素製造船は、自船上に軽小形の追加投錨装置を有していて、とくに錨巻上げ装 置は持たないが、追加用の軽アンカー投入を自船で容易に行える特徴を有している。 すなわち、稼働中に海流流速が増し、係留中に錨ともども流されるおそれが、発生した様な場合には、自船作業でアンカー能力の増強が必要になるが追加の軽アンカーを投入することで事態に容易に対処できる。
【0023】
外洋超深海での水素製造船係留の場合、数km長の 係留ロープは実用的に製作可能でも 、2 桁kmを越えるとなると、非現実 的であり、これが海流エネルギーの適正な採取阻害の原因となる。
この状態で最も困難なのは、ウネリ(波浪)による水素製造船本体のピッチング現象と、その発電性能低下回避対策である。 すなわち、プロペラ型水車 のトルク変換性能は水平回転軸芯が水流方向えの正面正対性を最重 要な変化要素として働く。変芯すると発電性能が極度に悪化する性 質がある為にこの同一同期一芯上に置く、それの維持確保が発電効率におおきな影響を及ぼす。
【0024】
本願に係る水素製造船は、1本の係留ロープで海底に固定する構成であるが、この1本の係留ロープ投錨法で係留された船体には、海流に押し流される水平方向の力(抗力)と錨から船体までの繋ぎ止める力(傾斜係留角 度)でつり合い停船状態で浮かんでいる。
引き戻す係留ロープの分力{傾斜角度垂直分力=錨沈み力(錨の重さー錨体積)}が船体の浮 力中心部位の係留ピンに加わり本船を沈める方向に引っ張る。
この力のつり合いの元でプロペラ水車軸は回生制動状態で発電機を回し発電する。 かくして、水平分力成分が垂直成分分力の2倍以上ある状態が理想的で等比状態が限界値となる。
【0025】
本願発明において、係留ロープを強くて軽い新素材であるカーボンファイバー製で構成することが必要となる。 軽くて、細く、強い張力と海水に長時間曝しても変化しない素材が係留ロープに必須である。 この係留ロープに、実尺値の数値を挙げれば、500tの耐張力のロープの重さ(地上空気中)で1t/km以内で水中のその値は0。 したがって、外形は、直径で5~8cm以内値となる。海水の中で使用する為に浮かぶ事も無く、沈む事もない、軽さと重さ(浮力)のバランスが本願発明の実用上枢要である。
【0026】
前述したように、大洋の海流と沿岸接岸部位に流れる潮流とはそもそも根本的な差異がある。1つは流れが止まる事(弱まる潮間)があるのが潮流で月の引力、潮の満ち引き、で大きく変速変動するのが潮流の性質である。
一方、日の出、月の出入り、に全く関係なく只気圧配置や風向きの強弱で多少変動するのが表層海流の性質であり、殆ど流速に変化はなく 、定点では通年定速の流れを持つ。 しかし、特に熱帯低気圧の発生達時 には超遠方からの長周期波(ウネリ=波浪)の影響を極端に受ける のが海流エネルギー採取手段なのである。
このウネリが上記した プロペラ水車回転軸芯と海流軸芯とのズレ(ピッチングずれ、ローリングずれ)を生じて、発電効率が極端に悪くなる。
【0027】
したがって、熱帯低気圧(台風)の発生と同時に大なり小なりの影響を受け、外洋操業中の水素製造船は、この時点で母港への帰還実行することになる。
なお、付言すれば、再生可能エネルギー(グリーンエネルギー資源)の中で、海流エネルギーは以下の特筆すべき特徴を有している。
1: 昼夜、無風、無光、等一切に関係無く大量(無尽蔵)に近い数量で存在する事(常在性のグリーン エネルギーである)
2: 稼働率と安定性に関して再生可能エネルギー資源類内では突出 した値を有する。24時間365日連続運転可ただし、熱帯低気 圧接近時等退避行動等で、その実稼働250日×24時間、程度と仮定する。これは再生可能自然エネルギー類内でも突出した性能をもつ高い常在性と安定性の電力であるがそう受電不可能な深海性外洋に存在する。 したがって、生産性(装置規模比)では太陽光発電の凡そ5倍強が算 出できる。 風力発電との比較では10~25倍値で一切の補助熱源材不要な高品質の特出した良質の自然再生可能持続的資源である。
3:平均的本船体規模は1~10Mw が現時点では妥当な装置規模といえる。
【0028】
次に、熱帯性低気圧(台風)発生時には、その規模、進路の把握とその他の状況判断は水素製造船のベース港よりの指示指令で昼日中に決行される。(夜間作業 は極力回避すべき)
この作業工程は、
1:発電の停止
2:水電気分解水素発生装置の停止
3:充電済みバッテリーから発電機側に直交流インバーター変換器を介して回生発電機時回転数の約2倍数の回転周波数動力用電力を供給する。
4:発電船はプロペラシャフトを介して発電時回転数の2倍速で回転し海流速を追い越す速度で船体後方部に漕ぐ。 (流水中の船体を更に漕ぐ事)
5:本船体は前進し本船係留用カーボンファイバー製ロープは弛む。
6: 弛む事を確認してから舳先取り付けの係留ブイ補助ロープ補助巻き上げ機を介して巻き上げ る。
7: 船体浮力中心部より船体舳先切り離しカム付きリングで 船体舳先に巻き上げた接続冠を固定する。
8: 係留ロープ接続冠 を舳先上部クレーン装置で引き上げ切り放し冠の接続部を緩めて切り外す。
9:クレーンを巻き下げてブイ係留ロープ巻き上げ機に 係留ロープの荷重が掛かればクレーンハッカーを外す。
10:ブイを投げ込みブイ巻き上げ機を逆回転させて総てを海中に放置する。
11: この状態6,7,8,9,10まではプロペラ水車軸の高速回転と後部高圧水噴射口からの噴射反力と、の微速調整で微妙な静止定点停船状態維持時間を確保する事にあるが解綱後は一時の間プロペラ水車の回転を停止する。
つまり海流に流が回される事も無く海流を櫂いて推力を得る事もない状態を数分間つくる。つまり 海流にそのまま任せる流される時間を数分間維持すると海中に投げ込んだ2つの目印(浮玉)ブイからは4~6百m離れる。
【0029】
そして、そこから、改めてプロペラ水車を高速回転して帰港の途に就く。(時速2~ 5ノット÷数分間=2~6百m) この最終の工程が重用な理由は係留端標識ブイ直下の係留ロープやブイ引き上げロープ端冠類は定点解除解綱地点に海流中に漂う状態 で浮遊していて、特に船首部両脇のプロペラ水車のブレード翼に絡まる事故防止が目的なのである。
【0030】
以上、前記工程(1~11)完了までに要する時間は1時間弱程度で自力自走船の距離は近距離(10km)地点操業場所では1~2時 間程度で母港に帰還する。
本願発明において、水素製造船は、船橋部、屋上位置にプロペラ型風車発電機 を搭載していて補助動力源として、或いは、非常動力源用として稼働させるようになっている。 そして、風車の獲得するエネルギーで数十kmの自走自力が可能なように設計するのが望ましい。 外洋風力資源状況はこの海流資源採取地点と合致する事が多々存在 し資源として無視する必要はなく限りなく双方を併用採取すると良い。
但し、折り畳み方式でマスト部中心に2枚翼形方式装置を旋回展開 して、船上に水平展開作業後は格納収納が出来る構造とするのが望ましい。
【0031】
なお、本願の水素製造船の船尾には、補給船等の船体の連結接舷装置が設けられている。 この連結接舷装置は、船尾において船幅いっぱいに形成し防舷材を周設した凹部と伸縮自在なアームを旋回させる油圧装置とからなって、アームから繰り出されるロープにより接舷しようとする船体を引き寄せる。
【実施例0032】
さらに、本願発明の実施例を図面にしたがって説明する。
図1は、本願発明一実施例に係る水素製造船の要部を示す平面図であり、図2は、図1に示す水素製造船の要部を示す側面図である。
図において、1は、水素製造船であり、表層海流面において所定箇所に留置されて
いて、表層海流を動力源とする駆動源と、この駆動源による発電装置とを具えている。 すなわち、2は駆動源としてのプロペラ水車であり、船体の両舷において進行方向
(海流の流れ方向Kに正対する方向)の前後に各一対付設されている。 3は、発電
装置で、この実施例では、電動機兼用発電機が搭載されている。 また、図2におけ
る4は、発電装置からの電力により水素を製造する水電気分解装置であり、5は海水
から真水を製造する膜式の純水製造装置である。製造された水素はボンベに充填保
管され所要の場所に搬送され種々の用途に供される。
6は、船底係留鎖で、その端部は船体1の船底における浮力の総合的中心部9に
他端は係留ロープ7に連結リング71を介して繋がれている。 8,8は表示ブイであり、それぞれブイロープ81,81により前記連結リング71に結ばれている。 なお、図2
において、20は水素製造以外の用途、すなわち水素製造船1の航走用の動力、船
上の諸種の動力源、照明などの電力を生産するための風力発電装置であり、羽根を
畳んだ状態を示てる。
【0033】
表層海流エネルギーを駆動源としての前記プロペラ水車2で採取するため、船体を
所定位置に留置するため係留索が設けられており、この係留索は、図2における船底係留鎖6と、係留ロープ7と、一対の表示ブイ8,8とを具え、図2に示すように、前記船底係留鎖6の一端は 船底の船体浮力の総合的中心点9(図2)に固定され、他端は係留ロープ7の一端に着脱可能に結合され、係留ロープ7の他端には船体を海底に係留するためのアンカー10が連結されている。 なお、この実施例で、前記係留ロープ7は、カーボンファイバーにより形成されていて、水素製造船1の海底への係留時に係留ロープ7の弛み度合いを低減できるようにしている。
【0034】
また、水素製造船1は、プロペラ水車2が海流に常時正対できるように、船体位置制御機構を具えており、この船体位置制御機構は、高圧水を産出する複数の高圧ポンプ(不図示)と、この高圧ポンプに対応して船体外周面に設けられた複数の高圧水噴出口(不図示)と、高圧水の噴出を制御して船体の位置を自動的に補正する制御手段(不図示)とで構成し、プロペラ水車2と海流方向との位置関係を適正に保持するようになっている。
【0035】
前述したように、発電装置3は、この実施例では、電動機兼用発電機を使用して
いるが、これは交流直巻き型の発電機で(回生制動時の電車モーターと同じ動作原
理機能で発電する)ある。 また、この発電機に交流インバーターを介してバッテリー
より直流電源を供給すれば、プロペラ水車2は高速周波数回転するから、海流の流
る速度を追い越して海水を後方に送り出す事が出来る。 すなわち、この時発電機
は交流直巻き電動機として動作している。 そして、この状態は、ごく普通の電動モー
タ駆動のスクリュー軸推進装置と何ら変らない推進力を得て船体は海流速度を越え
て前進する
【0036】

また、船体後方に取り付けてある船体位置制御機構を構成する高圧ポンプと高圧水噴出口を作動させて、微妙な微速前進 や海流速度と同期させてのホバーリング状態での位置決め動作運転ができる。
【0037】
この実施例では、前述したように大きい回転翼面積を有するプロペラ水車2が左舷と右舷の前後において、海流中に没するように、すなわちプロペラが海流に正対するように計 4 基設けられている。
このプロペラには、係留ロープ7により船体が引き止(留置)められている場合、 プロペラ翼には海流が衝突し回転軸を介して回転ト ルクが発生する。 回転軸には左舷側プロペラ翼と右舷側プロペラ翼のヒネリが逆に作られているため、左右プロペラの間に架設される貫通回転シャフトは同 一方向に回るようになっている。
【0038】
また、この実施例に係る水素製造船において、前記プロペラ水車2のブレードは交換可能になっていて、地域毎の海流の速度に対応した仰角ピッチを有するブレードを選択できるようにてある。 すなわち、このプロペラ翼は回転ハブ一体型の 鋳鋼製造ではなくプロペラ翼ブレードのみステンレス鋼製材の3次 元切削加仕上げ品で構成している。 プロペラの可変速ピッチ 機構は機構が複雑で高額であるが、海流中で使用する限り変速ピッチ機構を使用する頻度はそれほど多くはない。
したがって、実際には数種類のピッチのブレードを必要時にのみ海流速度に最適なブレード(翼の仰角ピッチ角度の違う物)に交換していけばより合理的である。
つまり、時々刻々と変化する潮流では無く、常に一定速度で流れる海流を対象とする本願発明の場合、地域ごとあるいは季節毎に最適のピッチ翼のプロペラに交換して最適性能が望める利点がある。
【0039】
さらに、この実施例に係る水素製造船において、前記係留ロープ7は、互いに接続・分離自在な上部と下部からなっていて、分離時に下部の上端(アンカーと反対側端部)から補助アンカーを係合させて海底に着座させるようにして、状況に応じた安定的なアンカー係留を実現している。
【0040】
また、図1図2に示すように、前記船底係留鎖6は、総合的中心点9から船底前部を回り込んで船首舳先頂フック11に至る長さを有していて、係留ロープ7端の連結リング71に繋がっている。 この係留ロープ7端の連結リング71には、前記表示ブイ8,8が係留ロープ7を船体から解放し、次に引 上げる時の為に、その目印になるよう正、福、各々別々のブイロープ81,81により前記連結リング71に結ばれている。
【0041】
ところで、この操業時の概算的張力を内海流型本装置(発電能力最大値1MW型想定)の場合を例に執ると約400t(安全率加味)以上の張力 に耐える構造を要する。(4機のプロペラ型水車タービンブレード には合計値約160t以上の係留張力が必要)(海流速度3~8ノ ット/時最大値想定の場合)
これは、無論ロープや鎖、ワイヤー端冠や接続金物等一切の重さと海流抗力を加算した弛度と波浪による船体の上下動共振現象を、係留ロープ7最先端のアンカー10により海底の一地点の投錨点に固定されて いる。 従って、このアンカー10の重さは自浮力を差し引いた重さとして水平角 度30度の場合でも80トン以上の重量を要す事になる。 これは角度が増す毎にサインカーブ状に増加し45度では180トンを超す重さを要する。(各種安全率加味した場合)
【0042】
本願発明において、プロペラ型水車2の翼回転面に海流回転トルク発生させ効率よく回るには、プロペラ軸芯は、海流)流れ軸、(流れる方 向)に常に平行して、その同軸芯上に同期した船体姿勢を保っていなければ、発生する回転トルクが変動し発電機(図1における3)の発電 効率が極度に悪化する性質がある。
したがって、常にプロぺラ型水車2の受流面は海流方向軸芯ベクトルに正対した位置でのコントロールを要求さ れる。 海流方向軸とプロペラシャフト 軸は常に同一同期軸線上に置く必要性がある。その為 、船体の縦軸水平線は、船首と船尾を結ぶ水平線上に置く事が常に求められ、船首・船尾を結ぶ線(喫水線)も出来る限り水平線状を維持することが 望ましい。場合により移動水型バランスタンクの搭載を要求される場合も多々出来てくる。
【0043】
つまり船体の縦方向の揺れ、横方向の揺れ、偏芯沈み、首振り現象を嫌うのである。 なかでも船体その物の水平維持が最も重要であるからに他ならない。
ここで、投錨点が理想的投錨地点、すなわち、船体~海底までの長さ(深さ)と不本位な投錨地点即ち(図3のアンカー10)の位置の比較に於いて、この現象の困難性をみてみると、海底面までの浅い海でその2倍以上の遠方地点の投錨であると、水 平線と投錨点のなす角度は3 0度未満となるが、海底まで深い場合、事実上深さの2倍地点の投錨は不可能になる。
外洋深海(黒潮本流本州最接近地点は25~50km沖)で水深は約4kmの平均深さがある。 従ってその理想的ロープ長は下記公式 √5×8=2、236×4で実質8、45km長となる。
【0044】
現在の実現可能素材や実施工法ではこれが限界値でこれ以上の深度の場合本船による海流エネルギーは実質上の採取は出来ないと考えられる。
つまりロープ長が制約を受けてその角度は30度を優に超えた状態 の操業形態が多発する事となる。
係留ロープ7には投錨点近くの深海では海流速度変化が度々発生するのである。つまり深海の場合、陸地接触状態の水流 は陸地の抵抗を常に受けている為流れが遅く、上層表層部海流程早く流れる性質がある。
その為、深海部から表層部に至る係留ロープ7は複雑な張力の変化が生じ弛緩を繰り返繰り返す。
【0045】
つまり、係留ロープ7その物に張力としての 方位方方向性ベクトルが無く重力(弛度)と海流摩擦によるロープの垂直方向張力による揺れ動作のみが増幅される状態が生じる。 従来の鋼素材製品(鎖やワイヤーロープ)では自重が海水より 非常に重く、それに対してその弛度は大きく成って 釣り合うが、上記した深層海流や表層海流の少しの変化で船体位置は、大きく前進した位置、中間位置と後退し位置と変動する。
この現象が係留素材自重による共振増幅現象であり、従来素材ではこの瞑想浮遊現象回避は不可能であった。
弛度による現象回避方法の究極は素材自重の海水との同等化に一番の有効性がある。鋼素材でそれを行う場合浮力のある素材でそれを 取り巻く手法があるが深海まで届く長さの場合その表面積と外形体積が上記した深層海流と表層海流の流れの抵抗差を受け流されて、そ れこそ、自在に操れる工事手法が無いのである。つまり太くなり重くなり可動性に乏しくなり実用化が出来ていなかった。
【0046】
したがって、弛度を極端に少なくするには、細くて軽い(対海水比重近似値 化)が究極の最適係留ロープ素材の必須要件要素で、炭素カーボンファイバー材が現在のところ最適材である。 弛度 による共振追値状態が生じると、プロペラ水車タービンブレード面上の通過水流に変化が生じ、回ったり止まったり を繰り返すピッチング現象が発生する。
この船体水車回転速度の変化をピッチング現象時の発電操業と呼び補正制御修正を行いながらの操業操船技術となる。更に単純な力学上の船体係留ロープと投錨地点までのベクトルが船体その物に重大な悪影響を齎す。
【0047】
すなわち、本船を引き止める力は、45度下方~伝わる錨の重さで支えられたロープの張力であるが、この力は船体が海流によって後方へ押し流す力と、船体の浮力により引き上げる力の合力によって釣り合う結果、 単純に船に加わる力(係留ロープ7固定点)で 船体浮力総合的中心9に船体のローリング点(横揺れ)、船体のピッチング点(船体の縦揺れ)に耐えるよう直交する2軸直交を有するピ ン構造の総合的船体浮力の総合的中心部9に係留ロープ7はで取り付けられている。 この中心部9以外に本願に係る係留ロープ7のみによる係留は極めて難しい。
【0048】
この総合的中心部9にこれだけの力が集中し、角度が大きくなれば ある時点で係留本来の水平軸へのベクトル方向性を失うことになる。つまり、船体はふらつき、指向性の定まらない係留状態となる。 これは、本願水素製造船のプロペラ型水車発電機には最も避けるべき状況である。 そして、外洋海面上では、強い季節風や気圧配置 毎に、風向きや風の強弱が変化して船体を左右前後に吹き流そうとする力が生じる。
例えば、図4に示すように、横風Yにより船体1は海流Kの流れ方向から左右に偏位してしまう。このため。海流方向とプロペラ軸芯にズレが 生じプロペラからのトルク発生量が減じて発電機出力の大幅低下が生じる。
【0049】
このため、本願発明では、前述のように、プロペラ水車2が海流に常時正対できるように船体位置制御機構を具えており、この船体位置制御機構は、高圧水を産出する複数の高圧ポンプ(不図示)と、この高圧ポンプに対応して船体外周面に設けられた複数の高圧水噴出口(不図示)と、高圧水の噴出を制御して船体の位置を自動的に補正する制御手段(不図示)とで構成し、プロペラ水車2と海流方向との位置関係を適正に保持するようになっている。 すなわち、自船体位 置情報取得システム(GPS)、各種センサー類を具えた船体位置制御機構は、高圧水を産出する複数の高圧ポンプと、この高圧ポンプに対応する複数の高圧水噴出口と、高圧水の噴出を制御して船体の位置を自動的に補正する制御手段とで構成し、プロペラ水車と海流方向との位置関係を適正に保持できるようにしている。
【0050】
このように、本願の水素製造船は精機器類を搭載しているから、月単位、年単位、の定期的なメンテナンスが必須要であるので、定期的に自力自走して母港(ドッ ク)帰還が自在に行える構造にしている。本船には超低速大径軸を有する水封シャフトが外洋に正対して4か所も取り付いているので 其の交換メンテナンスの為にもドック機能を有する母港帰還は必須要件要素でもある。 なお、台風時等の避難帰港作業については前述した。
【0051】
この実施例において、水素製造船1は、必要に応じて補助アンカーを追加して海底に着座させられるようになっている。 すなわち、前記係留ロープ7は、互いに接続・分離自在な上部と下部からなっていて、分離時に下部の上端(アンカーと反対側端部)から補助アンカーを係合させて海底に着座させるように構成されている。
図5は、追加アンカー装着作業の説明図である。 図1,2に示す表示ブイ8,8を引き上げ、これらを収納するとともに船底係留鎖6の端部を船上に係止し係留ロープ7を分離する。 リール12によりさらに係留ロープ7を巻き上げると係留ロープ7の上部と下部をとの連結リング13が現れる。 次いで、連結リング13を開錠して開放部分から、貫通孔に補助アンカー14を係留ロープ7の下部に係合して海底に着座させる。
【0052】
メンテナンス、天候上の必要などから、水素製造船を洋上から基地へ回航する作業については、前述した。 すなわち、図6ないし図8に示すように、船底係留鎖6を所定位置に収容し、係留ロープ7の端部に繋がれた表示ブイ8,8を洋上に浮遊させる。 図6は、水素製造船1が所定の海流上で海底に係留されている状態の説明図である。 図において、船底係留鎖6、ブイロープ81,81、係留ロープ7のそれぞれの端部は、小連結リング61、連結リング71等によりたがいに連結されている。
【0053】
水素製造船1の回航のため、海底への係留を解除するときは、図7に示すように、前記連結リング71を船上に引き上げて、船底係留鎖6の端部を切り離して所定位置に係止する。 次いで、図8に示すように、表示ブイ8,8を海中に投入すると、表示ブイ8,8は海面S上に浮上する。 この表示ブイ8,8は、ブイロープ81,81により係留ロープ7の海面側端に連結リング71を介して係合している。 したがって、係留ロープ7端を海上で見出すには表示ブイ8,8を探し出せばよい。 表示ブイ8,8には探知の便に供するために、光、電波その他の信号を発信するようにしておけば表示ブイの探知は、さらに容易になる。 このようにして、水素製造船1は海上において原位置に復帰し、迅速に水素製造に着手できるようになる。
【符号の説明】
【0054】
1 水素製造船
2 水車型プロペラ
3 発電装置
6 船底係留鎖
7 係留ロープ
71 連結リング
8 表示ブイ
81 ブイロープ
9 浮力総合中心部
10 アンカー
K 海流の流れ方向
F 海面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8