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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013149
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】洗掘防止シート
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/32 20060101AFI20230119BHJP
   E02D 17/20 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
E02D27/32 Z
E02D17/20 103B
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021117111
(22)【出願日】2021-07-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000201490
【氏名又は名称】前田工繊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】石坂 修
(72)【発明者】
【氏名】新 正行
(72)【発明者】
【氏名】土橋 和敬
【テーマコード(参考)】
2D044
2D046
【Fターム(参考)】
2D044DB07
2D046DA05
(57)【要約】
【課題】水底に敷設することで杭状体の立設前に洗掘防止工を設置できることで、構造物設置工事の施工効率を向上可能な、洗掘防止シートを提供すること。
【解決手段】本発明の洗掘防止シート1は、水底に敷設し上方から杭状体A2を貫通させることで杭状体A2の基礎を洗掘から保護する洗掘防止シートであって、シート本体10と、シート本体10上の杭状体A2の貫通部分に設けた脆弱部20と、を備え、脆弱部20が、周辺部より杭状体A2の貫通が容易な構造からなることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水底に敷設し、上方から杭状体を貫通させることで、前記杭状体の基礎を洗掘から保護する、洗掘防止シートであって、
シート本体と、
前記シート本体上の前記杭状体の貫通部分に設けた脆弱部と、を備え、
前記脆弱部が、周辺部より前記杭状体の貫通が容易な構造からなることを特徴とする、
洗掘防止シート。
【請求項2】
前記脆弱部が、前記シート本体に設けた切込みであることを特徴とする、請求項1に記載の洗掘防止シート。
【請求項3】
前記脆弱部が、前記シート本体に設けた放射状の切込みであることを特徴とする、請求項1に記載の洗掘防止シート。
【請求項4】
前記切込みが、ミシン目からなることを特徴とする、請求項2又は3に記載の洗掘防止シート。
【請求項5】
前記脆弱部が、前記シート本体の両面を貫通する導入孔を有し、前記導入孔の最大幅が前記杭状体の直径より小さいことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の洗掘防止シート。
【請求項6】
前記シート本体が、前記杭状体の貫通部分に切込みを設けた複数の単シートの積層構造からなり、前記脆弱部が前記切込みの重ね合わせからなることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の洗掘防止シート。
【請求項7】
前記シート本体が、全面にわたって水の透過を許容しつつ砂の透過を遮蔽する透水性シートであることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の洗掘防止シート。
【請求項8】
前記シート本体が、織布又は不織布からなる繊維製シートであることを特徴とする、請求項7に記載の洗掘防止シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗掘防止シートに関し、特にモノパイル式の洋上風力発電施設等において、水底に立設した支柱の基礎の洗掘を防止する洗掘防止シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷の少ない再生可能エネルギーの供給源として、洋上風力発電施設が多数建設されている。
洋上風力発電施設には、着床式と浮体式があり、着床式には例えばモノパイル式、重力式、ジャケット式、トリポッド式等の種類が存在する。この内、モノパイル式の洋上風力発電施設は、海底に立設した支柱の上部にナセルやブレード等の上部構造を設置してなる。
モノパイル式の洋上風力発電施設は、支柱によって水流に乱れが生ずることにより、支柱の基礎周辺に洗掘が発生する。これは最大で支柱の径の2倍もの深さに達するため、施設の安定性に深刻な影響を与える。
そこで従来技術では、支柱の基礎を捨石や石詰袋体等の洗掘防止工で被覆することで、基礎の洗掘を防いでいる。
洗掘防止工を含めたモノパイル式洋上風力発電施設の施工は、(A)海底への支柱の打設、(b)支柱基礎への洗掘防止工の設置、(c)支柱上部への上部構造の設置、の順で行われる(図8)。
この内、(A)支柱の打設と、(c)支柱上部への上部構造の設置には、自己昇降式作業台船(Self ElevAting PlAtform:SEP船)やクレーン船等の比較的大型の専用船を使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-138745号公報
【特許文献2】特開2007-92406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術には下記のような問題点がある。
<1>洗掘防止工では、支柱の基礎周辺に捨石等を積み上げるため、支柱の打設前には施工することができない。一方、支柱を打設すると、水流の乱れにより基礎の洗掘が急速に進むため、打設後は迅速に洗掘防止工を設置する必要がある。このため、複数基の洋上風力発電施設を建設する場合、支柱のみを連続して打設することができず、支柱の打設と洗掘防止工を1基ずつ施工しなければならない。よって、施工効率が非常に悪い。
<2>洗掘防止工には専用船は不要であるが、洗掘防止工の前工程である支柱の打設と、後工程である上部構造の設置に専用船を使用し、しかも支柱の打設と洗掘防止工を1基ずつ施工するため、洗掘防止工の施工時間を含めて専用船を施工海域に確保する必要がある。このため、専用船の傭船料や船舶損料が高額になり、施工コストが嵩む上、限られた台数の専用船を他の工事へ配船することができなくなる。
<3>洗掘防止工に捨石を用いる場合、捨石を薄層に設置し、敷均す必要があり施工に時間がかかる。このため、作業船の拘束期間が長期に及ぶ。また、捨石の設置時に支柱に損傷を与えるおそれがある。
<4>気象、海象等の要因により、支柱の打設後直ちに洗掘防止工の設置ができない場合、支柱の基礎周辺に洗掘が生じ、この洗掘部分を埋め戻すため捨石の分量が増加することで、施工コストが更に嵩む。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決可能な、洗掘防止シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の洗掘防止シートは、シート本体と、シート本体上の杭状体の貫通部分に設けた脆弱部と、を備え、脆弱部が、周辺部より杭状体の貫通が容易な構造からなることを特徴とする。
【0007】
本発明の洗掘防止シートは、脆弱部が、シート本体に設けた切込みであってもよい。
【0008】
本発明の洗掘防止シートは、脆弱部が、シート本体に設けた放射状の切込みであってもよい。
【0009】
本発明の洗掘防止シートは、切込みが、ミシン目からなっていてもよい。
【0010】
本発明の洗掘防止シートは、脆弱部が、シート本体の両面を貫通する導入孔を有し、導入孔の最大幅が杭状体の直径より小さくてもよい。
【0011】
本発明の洗掘防止シートは、シート本体が、杭状体の貫通部分に切込みを設けた複数の単シートの積層構造からなり、脆弱部が切込みの重ね合わせからなってもよい。
【0012】
本発明の洗掘防止シートは、シート本体が、全面にわたって水の透過を許容しつつ砂の透過を遮蔽する透水性シートであってもよい。
【0013】
本発明の洗掘防止シートは、シート本体が、織布又は不織布からなる繊維製シートであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の洗掘防止シートは、上述した構成により以下の効果のうち少なくとも1つを有する。
<1>支柱の打設前に水底に洗掘防止シートを敷設することで、支柱の立設に続けて洗掘防止工を行う必要がなくなる。従って、洗掘防止工の設置と支柱の打設とを1基ずつ行う必要がなく、洗掘防止シートの敷設と支柱の打設をそれぞれ連続して施工することができる。このため、全体の施工効率を向上させることができる。
<2>洗掘防止工の設置(洗掘防止シートの敷設)を先行し、その後に専用船を用いる立設工程と設置工程を続けて施工できる。このため、専用船の拘束時間が短く、傭船料や船舶損料が比較的安価である。また、専用船の拘束時間が短いため、専用船を他の工事へ配船して有効活用することができる。
<3>各工程を複数基連続して施工できるため、例えば気象、海象等の施工条件がよい時期に集中して被覆工程を完了させ、施工条件の悪い季節に上部構造物の組立等の陸上作業を行い、回復後に立設工程及び設置工程を行う、等の柔軟な施工が可能となる。
<4>洗掘防止シートを吊り込んで海底に敷設するだけで洗掘防止工を設置できるため、施工が容易で作業効率が非常に高い。また、捨石を利用しないため支柱を損傷させるおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る洗掘防止シートの説明図。
図2】洗掘防止シートの使用状態の説明図。
図3】シート本体及び脆弱部の説明図。
図4A】被覆工程の説明図。
図4B】立設工程の説明図。
図4C】設置工程の説明図。
図5】実施例2の説明図。
図6】実施例3の説明図(1)。
図7】実施例3の説明図(2)。
図8】従来技術の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の洗掘防止シートについて詳細に説明する。
【実施例0017】
[洗掘防止シート]
【0018】
<1>全体の構成(図1、2)
洗掘防止シート1は、杭状体A2の基礎周辺の洗掘を防止するためのシート体である。
洗掘防止シート1は、面状のシート本体10と、シート本体10の中央付近に設けた脆弱部20と、を少なくとも有する。
洗掘防止シート1は、水底に敷設し、脆弱部20内に上方から杭状体A2を貫通させることで、杭状体A2の基礎周辺を囲い込む。このようにして杭状体A2の打設と洗掘防止工を同時に行うことができる。
【0019】
<1.1>シート本体
シート本体10は、水底を被覆するシート材である。
本例ではシート本体10として、高強度ポリエステル繊維を多重織してなる、正方形の透水性シートを採用する。
ここで「透水性」とは、シート本体10の全面にわたって水の透過を許容しつつ砂の透過を遮蔽する性能をいい、シート本体10に砂の透過まで許容する程度の径の孔を設ける構造(「透過性」)を含まない。
本例ではシート本体10が透水性であるため、洗掘防止シート1にかかる揚圧力を低減して、洗掘防止シート1のめくれを防ぐことができる。また、シート本体10全体が水を透過するため、水流によるシート周辺部の局所的な洗掘を抑制することができる。
なお、シート本体10の素材は高強度ポリエステル繊維に限らず、例えばポリエステル繊維、ポリウレタン繊維等であってもよいが、十分な耐久性、引張強度、柔軟性、及び耐摩耗性を備えた素材を採用するのが望ましい。
また、シート本体10は多重織に限らず、平織織布、又は不織布であってもよいし、一枚物に限らず、例えば脆弱部20付近を周辺部と別部材とした構造や、複数のシート切片を連結した構造であってもよい。
ただしシート本体10は透水性シートに限らず、不透水性シート、透過性シート等であってもよい。更に、シート本体10の形状は正方形に限らず、長方形(図3(a))、円形(図3(b))、その他の多角形(図3(c))であってもよい。
【0020】
<1.2>脆弱部
脆弱部20は、杭状体A2を貫通させるための部分である。
脆弱部20は、シート本体10上の杭状体A2を貫通させる部分に設ける。本例ではシート本体10の中央付近に設ける。
本例では脆弱部20として、シート本体10の中央に刻設した8条の放射状の切込み20aを採用する。ただし切込み20aの形状はこれに限らず、例えば十字状の切込み(図3(d))、円形の部分切込み(図3(e))、V字状の切込み(図3(f))等であってもよい。
なお、切込み20aはミシン目であってもよい。この場合、シート本体10を敷設後、杭状体A2を打設するまでの期間が開いたとしても、ミシン目であれば切込み20aを少なくできるので、砂の吸出し防止効果をより高めることができる。
また、脆弱部20の構造は切込み20aに限らず、例えばシート本体10の中央に貫通窓(又は貫通孔)を設け、この貫通窓を周辺部より破れやすい不透水性又は透水性のシート材で塞いだ構造(図3(g)(h))であってもよい。
あるいは、シート本体10の中央部の厚みを周辺部より薄くした薄肉構造としてもよい。又は切込み20a、貫通窓、薄肉構造等を組み合わせてもよい(図3(i))。
要は、脆弱部20は、シート本体10上における周辺部より、杭状体A2を容易に貫通できる構成であればよい。
【0021】
<1.3>洗掘防止シートに脆弱部を設けた理由
本発明の洗掘防止シートは、シート本体10が脆弱部20を有する点に特徴を有する。
水底に敷設するシートが脆弱部を有さない場合、シートの貫通に大きな力を要するため施工の難度が上がり、施工性や施工精度が低下する。
また、杭状体によって押し込まれたシートが水底の砂を下向きに押圧することで、杭状体の周囲の砂が凹状に陥没し、杭状体の根入れ不足になるおそれがある。
さらに、杭状体を強力に押し込んで貫通させることで、シート材の裂け目が大きくなり、杭状体の外周と裂け目の間から砂が吸い出されやすくなる。
一方、シートの中央に最初から貫通孔を設けておけば、シートを押し込んで貫通する必要はなくなるが、シートの被覆から杭状体の立設までの間に、貫通孔を通じてシート下方の砂が吸い出される。
特に水流によってシートが揺動してポンプ状に機能することによって、貫通孔から多量の砂が流失するおそれがある。
これに対し、本発明の洗掘防止シートは、シート本体10に杭状体A2の貫通を容易にする脆弱部20を設けることで、施工性及び施工精度の向上と吸出し防止とを両立させることができる。
【0022】
[施工方法]
<1>全体の構成
引き続き、本発明の洗掘防止シート1を用いた構造物Aの施工方法について例示する。本例の施工方法は、被覆工程S1と、立設工程S2と、設置工程S3と、からなる。
【0023】
<1.1>構造物
本例の構造物Aは、水底から立設する杭状体A2と、杭状体A2の上部に設置する上部構造A1と、を備える構造物である。
本例では構造物Aが、タワーやナセル、ブレード等からなる上部構造A1と、鋼管杭状体やコンクリート杭状体からなる杭状体A2の組合せからなる、モノパイル式の洋上風力発電設備である例について説明する。
ただし構造物Aは洋上風力発電設備に限らず、桟橋や橋梁等であってもよい。
【0024】
<2>被覆工程(図4A
被覆工程S1では、構造物Aの設置場所の水底を洗掘防止シート1で被覆する。被覆工程S1は、例えば以下のように施工する。
クレーン付き台船のクレーンを用いて、洗掘防止シート1を海底に吊り込み、設置場所に敷設する。
本発明の洗掘防止シート1は、海底に敷設するだけで洗掘防止工を設置できるため、潜水士による肉体労働を不要とでき、施工効率が非常に高い。また、捨石によって杭状体A2を損傷させるおそれがない。
更に、洗掘防止工である被覆工程S1を、立設工程S2の前に行うため、専用船を被覆工程S1の作業時間の間待機させる必要がない。このため、専用船の拘束時間を短縮して施工コストを節減できる上、台数が限られた専用船を他の工事に有効利用することができる。
【0025】
<3>立設工程(図4B
立設工程S2では、杭状体A2を海底に立設する。立設工程S2は、例えば以下のように施工する。
SEP船のクレーンによって、杭状体A2を海中に吊り込み、杭状体A2の下端部を、洗掘防止シート1の脆弱部20に位置合わせして当接させる。
バイブロハンマによって杭状体A2の頭部に振動を与えることで、杭状体A2の下端部を洗掘防止シート1の脆弱部20に貫通させて海底に貫入する。
なお、杭状体A2の立設はバイブロハンマに限らず、油圧ハンマによる打設や先端ビットを付設した杭状体A2による回転圧入等によってもよい。
本例では脆弱部20が放射状の切込み20aであるため、脆弱部20の貫通によって、脆弱部20の三角形状の切片が杭状体A2と共に海底の砂の中に押し込まれて杭状体A2の外周に密着する。これによって、杭状体A2の外周と脆弱部20の隙間からの砂の流失を防ぐことができる。
杭状体A2の立設後、杭状体A2の頭部に上部構造A1と連結するためのジョイントスリーブを連結する。
本発明の洗掘防止シート1を用いることで、洗掘防止工である被覆工程S1を立設工程S2前に施工できるため、従来技術のように杭状体A2の立設から洗掘防止工の設置までの間の洗掘が発生しない。
このため、洗掘を防止するために、杭状体の打設と洗掘防止工の設置を1基ずつ行う必要がなく、複数の杭状体A2の打設を連続して行うことができる。
【0026】
<4>設置工程(図4C
設置工程S3では、杭状体A2の上部に上部構造A1を設置する。設置工程S3は、例えば以下のように施工する。
SEP船のクレーンによって、杭状体A2頭部のジョイントスリーブ内に上部構造A1のタワーを鉛直に吊り込み、隙間にグラウト充填して固定する。
続いてタワーの頭部にハブ及びナセルを固定し、ナセルにブレードを取付ける。
上部構造A1はこの他、ハブ、ナセル、ブレードを予め地組してユニット化し、このユニットを一括してタワー上に固定して組み立ててもよい。
【実施例0027】
[脆弱部に導入孔を設けた例]
本例では、脆弱部20の中央に、シート本体10の両面を貫通する導入孔20bを設ける(図5(a))。
本例では導入孔20bを円孔とする
導入孔20bの最大幅(円孔であれば直径)Wは、杭状体A2の直径Dより小さい。
脆弱部20に導入孔20bを設けることで、杭状体A2の打設時に砂の中に押し込まれる脆弱部20の切片の長さを短くして、杭状体A2周辺の砂の押し込みを軽減することができる。
なお、本例の場合、洗掘防止シート1による水底の被覆から杭状体A2の立設までの間に、導入孔20bから砂が吸い出されるのを防ぐため、導入孔20bの上部を仮設的に適宜の素材のシートやフィルムで被覆するとよい。
導入孔20bは、円孔に限らず、八角形(図5(b))その他の多角形状の孔であってもよい。また、円孔又は多角形状の導入孔20bに、切込み20aを組み合わせてもよい(図5(c)(d))。図5(c)は、渦巻状の切込み20aと円孔の導入孔20bの組み合わせ、図5(d)は、放射状の切込み20aと八角形状の導入孔20bの組み合わせである。
【実施例0028】
[積層構造とした例]
本例では、シート本体10が、積層した複数の単シート10aの重ね合わせからなる(図6)。
シート本体10を単シート10aの重ね合わせからなる積層構造とすることで、洗掘防止シート1の耐用年数を高めると共に、杭状体A2の貫通後、脆弱部20における杭状体A2の貫通部周辺からの砂の吸出しを低減させることができる。
また、各単シート10aに単一方向の切込み20aを設け、複数の単シート10aの切込み20aを重ねることで放射状の脆弱部20を構成することもできる。
詳細には、例えば3枚の単シート10aを組み合わせ、上段の単シート10aの切込み20aを斜め第1方向の切込みとし、中段の単シート10aの切込み20aを斜め第1方向と直交する斜め第2方向の切込みとし、下段の単シート10aの切込み20aを斜め第1方向及び斜め第2方向に挟まれる縦方向の切込みとすることで、積層構造全体として放射状切込みの脆弱部を構成する。
この例の場合、各単シート10aの切込み20aの方向が異なり交差するため、砂が複数層の切込み20aの間を連通しにくく、杭状体A2の貫通部周辺からの砂の吸出し防止効果が更に高くなる。
ただし積層構造は上記に限らず、例えば、直交する切込み20aを有する2枚の単シート10aの組み合わせ(図7(a))、十字型の切込み20aを有する3枚の単シート10aの組み合わせ(図7(b))、V字型の切込み20aと十字型の切込み20aを有する3枚の単シート10aの組み合わせ(図7(c))、等であってもよい。
また、各単シート10aの脆弱部20に、実施例2の導入孔20bを設けてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 洗掘防止シート
10 シート本体
10a 単シート
20 脆弱部
20a 切込み
20b 導入孔
A 構造物
A1 上部構造
A2 杭状体
S1 被覆工程
S2 立設工程
S3 設置工程
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2021-12-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水底に敷設し、上方から鋼管杭を貫通させることで、水底に貫入して立設した前記鋼管杭の基礎を洗掘から保護する、洗掘防止シートであって、
シート本体と、
前記シート本体上の前記鋼管杭の貫通部分に設けた脆弱部であって、前記鋼管杭の貫通によって押し破られることで、その破れ端の少なくとも一部を水底に埋入可能な脆弱部と、を備え、
前記脆弱部が、周辺部より前記鋼管杭の貫通が容易な構造からなることを特徴とする、
洗掘防止シート。
【請求項2】
前記脆弱部が、前記シート本体に設けた切込みであることを特徴とする、請求項1に記載の洗掘防止シート。
【請求項3】
前記脆弱部が、前記シート本体に設けた放射状の切込みであることを特徴とする、請求項1に記載の洗掘防止シート。
【請求項4】
前記切込みが、ミシン目からなることを特徴とする、請求項2又は3に記載の洗掘防止シート。
【請求項5】
前記脆弱部が、前記シート本体の両面を貫通する導入孔を有し、前記導入孔の最大幅が前記鋼管杭の直径より小さいことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の洗掘防止シート。
【請求項6】
前記シート本体が、前記鋼管杭の貫通部分に切込みを設けた複数の単シートの積層構造からなり、前記脆弱部が前記切込みの重ね合わせからなることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の洗掘防止シート。
【請求項7】
前記シート本体が、全面にわたって水の透過を許容しつつ砂の透過を遮蔽する透水性シートであることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の洗掘防止シート。
【請求項8】
前記シート本体が、織布又は不織布からなる繊維製シートであることを特徴とする、請求項7に記載の洗掘防止シート。