(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131505
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】立軸ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 29/66 20060101AFI20230914BHJP
F04D 13/00 20060101ALI20230914BHJP
F04D 29/60 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
F04D29/66 F
F04D13/00 A
F04D29/60 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036312
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】319007240
【氏名又は名称】株式会社日立インダストリアルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】沖原 崇
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA03
3H130AB13
3H130AB22
3H130AB50
3H130AC30
3H130BA09J
3H130DG02X
3H130EA07J
3H130EB01J
3H130EB04J
(57)【要約】
【課題】空気吸込渦の発生をより抑制できる立軸ポンプを提供する。
【解決手段】立軸ポンプは、羽根車を内部に収容する吸込ケーシング4の下流側の左右に、吸込ケーシング4に対向してそれぞれ配置された渦防止装置20を備えている。渦防止装置20は、第1の渦抑制板21と、主流方向17における第1の渦抑制板21の下流側に配置された第2の渦抑制板22とを有している。第2の渦抑制板22は、貫通部としての貫通孔25を下部に有している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根車を内部に収容する吸込ケーシングと、
前記吸込ケーシングを設置する吸込水槽内の流体の主流方向における前記吸込ケーシングの下流側の左右に、前記吸込ケーシングに対向してそれぞれ配置され、空気吸込渦の発生を抑制する渦防止装置と、を備え、
前記渦防止装置は、第1の渦抑制板と、前記主流方向における前記第1の渦抑制板の下流側に配置された第2の渦抑制板と、を有し、
前記第2の渦抑制板は、貫通孔および切欠きの少なくとも一方を含む貫通部を下部に有していることを特徴とする立軸ポンプ。
【請求項2】
前記第1の渦抑制板は、前記吸込ケーシングの中心軸から、前記第2の渦抑制板よりも離れて設置されていることを特徴とする請求項1に記載の立軸ポンプ。
【請求項3】
前記第1の渦抑制板は、前記中心軸を中心とした第1の半径を有する円弧面状の板であり、前記第2の渦抑制板は、前記中心軸を中心とした第2の半径を有する円弧面状の板であり、
前記第1の半径は、前記第2の半径よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の立軸ポンプ。
【請求項4】
前記第1の渦抑制板の前記主流方向における下流側の端部と、前記第2の渦抑制板の前記主流方向における上流側の端部とは、前記中心軸を中心とした円周方向位置において重なっていることを特徴とする請求項2に記載の立軸ポンプ。
【請求項5】
前記第2の渦抑制板は、前記貫通部の下方において内側に突出する凸構造を備えていることを特徴とする請求項1に記載の立軸ポンプ。
【請求項6】
前記凸構造は、内側に行くほど低くなるように傾斜する傾斜面を有することを特徴とする請求項5に記載の立軸ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立軸ポンプに関し、特に、空気吸込渦の発生を抑制する渦防止装置を備える立軸ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
自由表面を有する吸込水槽に設置される立軸ポンプ(以下、単に「ポンプ」ともいう)を使用する際に、吸込水槽における水位の変動やポンプの更新時における吐出し量増加等の仕様変更によって、吸込水槽内における流れ場が変化する結果、水面から、羽根車を内部に収容する吸込ケーシングの吸込口であるベルマウス付近に達する空気吸込渦が生じる場合がある。
【0003】
この空気吸込渦は、吸込水槽内の流体の水面付近の流れが吸込ケーシングを通り過ぎる際に、吸込ケーシングの下流側で剥離し、旋回する流れ(以下、「旋回流」ともいう)が生じるために発生することが多い。このような渦がポンプに吸い込まれると、過大な振動や性能低下等の支障をきたすおそれがあり、ポンプ損傷の要因ともなる。
【0004】
空気吸込渦の発生を防止するために、ポンプ吸込管30(吸込ケーシング)の下流側の左右に、防止板34(渦抑制板)をそれぞれ配置したポンプが開示されている(特許文献1の段落0006、
図11参照)。
【0005】
特許文献1記載のポンプは、ポンプ吸込管30の上流側からの流れがポンプ吸込管30と防止板34との間を通って下流側から流出することで、ポンプ吸込管30の下流側での旋回流の生成を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載のポンプでは、吸込水槽内の流速が大きくなる場合や吸込水槽の上流側に偏流が生じた場合に、ポンプ吸込管30(吸込ケーシング)の上流側からの流れが防止板34(渦抑制板)の外側中間部で剥離して、空気吸込渦の要因となる旋回流が生じるおそれがある。つまり、渦抑制板を設置することで、渦抑制板自体によって空気吸込渦が発生するおそれがある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、吸込水槽内の高流速化に伴う空気吸込渦の発生をより抑制できる立軸ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した目的を達成するために、本発明に係る立軸ポンプは、羽根車を内部に収容する吸込ケーシングと、空気吸込渦の発生を抑制する渦防止装置とを備えている。渦防止装置は、前記吸込ケーシングを設置する吸込水槽内の流体の主流方向における前記吸込ケーシングの下流側の左右に、前記吸込ケーシングに対向してそれぞれ配置されている。前記渦防止装置は、第1の渦抑制板と、前記主流方向における前記第1の渦抑制板の下流側に配置された第2の渦抑制板とを有している。前記第2の渦抑制板は、貫通孔および切欠きの少なくとも一方を含む貫通部を下部に有している。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、空気吸込渦の発生をより抑制できる立軸ポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る立軸ポンプの概略縦断面図である。
【
図2】本実施形態に係る渦防止装置の周辺を示す拡大側面図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿う断面図である。
【
図4】本実施形態に係る渦防止装置の周辺を示す拡大斜視図である。
【
図5】本実施形態に係る渦防止装置の周辺を上流側から見た正面図である。
【
図6】本実施形態に係る渦防止装置の周辺を下流側から見た背面図である。
【
図7】本実施形態に係る渦防止装置の周辺を右側方から見た側面図である。
【
図8】
図3のVIII-VIII線に沿う断面図である。
【
図9】1枚の渦抑制板から構成された渦防止装置の周辺の流れを模式的に示す平面図である。
【
図10】第1の渦抑制板と第2の渦抑制板とに分割されて構成された本実施形態の渦防止装置の周辺の流れを模式的に示す平面図である。
【
図11】第2の渦抑制板における貫通孔の周辺の流れを模式的に示す第2の渦抑制板の外側から見た斜視図である。
【
図12】第2の渦抑制板における貫通孔の周辺の流れを模式的に示す第2の渦抑制板の内側から見た斜視図である。
【
図13】変形例に係る渦防止装置の周辺を下流側から見た背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、以下に示す図面において、共通する部材や同種の部材については、同一の参照符号を付し、重複した説明を適宜省略する。また、部材のサイズおよび形状は、説明の便宜のため、変形または誇張して模式的に表す場合がある。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る立軸ポンプ100の概略縦断面図である。
図1に示すように、立軸ポンプ100は、例えば排水機場の水路1(吸込水槽)に設置されるものである。
【0014】
立軸ポンプ100は、鉛直方向に沿う回転軸2と、回転軸2の下端に取り付けられる羽根車(インペラ)3と、羽根車3を内部に収容する吸込ケーシング4とを備えている。吸込ケーシング4は、水路1の底盤12、水路1の左右の側壁面15および水路1の下流側壁面16と所定の間隔をおいて設置されている。
【0015】
吸込ケーシング4は、ケーシングライナ41と、ベルマウス(吸込口)42と、ボウル部43とを備えている。ケーシングライナ41は、羽根車3のシュラウド側に配置されている。ベルマウス42は、ケーシングライナ41の下側に配置されている。ボウル部43は、ケーシングライナ41の上側に配置されている。ここでは、立軸ポンプ100において、羽根車3から回転軸2に対して斜め方向に流体を吐き出す斜流ポンプが使用されている。
【0016】
また、立軸ポンプ100は、揚水管5と、吐出しベンド6と、原動機7とを備えている。揚水管5は、吸込ケーシング4の上側に接続されるとともに回転軸2が挿通され、流体を鉛直上向きに流す。吐出しベンド6は、揚水管5の上側に接続され、揚水管5から送られる流体の流れを水平方向へ変化させる。原動機7は、吐出しベンド6の上方に突出する回転軸2の上端部に接続されており、回転軸2を回転駆動するモータ等である。
【0017】
吐出しベンド6の揚水管5とは反対側の端部には、排水管8が接続される。立軸ポンプ100は、吸込み端部側から取付け用孔10に挿通されて、吐出しベンド6に設けられたフランジ9がポンプ設置床11に支持されるようにして、水路1に設置されている。
【0018】
そして、原動機7の駆動によって回転軸2を介して羽根車3が回転されると、ベルマウス42から流入した水は昇圧され、吸込ケーシング4を通り、揚水管5、吐出しベンド6および排水管8を介して放水路(図示せず)へ排出されるようになっている。
【0019】
本実施形態の立軸ポンプ100は、水面からベルマウス付近に達する空気吸込渦の発生を抑制する渦防止装置20を備えている。
【0020】
図2は、本実施形態に係る渦防止装置20の周辺を示す拡大側面図である。
図3は、
図2のIII-III線に沿う断面図である。
図4は、本実施形態に係る渦防止装置20の周辺を示す拡大斜視図である。
図5は、本実施形態に係る渦防止装置20の周辺を上流側から見た正面図である。
図6は、本実施形態に係る渦防止装置20の周辺を下流側から見た背面図、すなわち
図2のAから見た図である。
図7は、本実施形態に係る渦防止装置20の周辺を右側方から見た側面図である。
図8は、
図3のVIII-VIII線に沿う断面図である。なお、
図3および
図8では、吸込ケーシング4および揚水管5の内部の構成は、省略してある。
【0021】
図2~
図4に示すように、渦防止装置20は、吸込ケーシング4を設置する水路1内の流体の主流方向17における吸込ケーシング4の下流側の左右(
図3参照)に、吸込ケーシング4に対向してそれぞれ配置されている。渦防止装置20は、吸込ケーシング4の径方向外側に、吸込ケーシング4とは間隔をおいて配置されている。
【0022】
渦防止装置20は、第1の渦抑制板21と、第2の渦抑制板22とを有している。第2の渦抑制板22は、主流方向17における第1の渦抑制板21の下流側に配置されている。第1の渦抑制板21は、吸込ケーシング4の中心軸CLから、第2の渦抑制板22よりも離れて設置されている。第1の渦抑制板21および第2の渦抑制板22は、それぞれ上下方向の長さが一致する板である。
【0023】
図4に示すように、第1の渦抑制板21は、第1の渦抑制板21の内面に基端部が固定された支持板31,31を介して、吸込ケーシング4または揚水管5に取り付けられている。第2の渦抑制板22は、第2の渦抑制板22の内面に基端部が固定された支持板32,32を介して、吸込ケーシング4または揚水管5に取り付けられている。ここでは、上側の支持板31,32の先端部は、揚水管5の下端に設けられたフランジ51に溶接等によって固定されている。また、下側の支持板31,32の先端部は、ボウル部43の下端に設けられたフランジ44に溶接等によって固定されている。
【0024】
なお、支持板31,32の先端部の固定箇所は、吸込ケーシング4または揚水管5におけるいずれの箇所であってもよく、適宜変更可能である。また、第1の渦抑制板21および第2の渦抑制板22の幅寸法、厚さ寸法は適宜変更可能であり、上下方向の長さ寸法は、立軸ポンプ100の使用時における吸込対象水の最高水位及び最低水位を考慮して決められる。
【0025】
また、
図5~
図8に示すように、第2の渦抑制板22は、流れが内側から外側へ通過する貫通部としての貫通孔25を該第2の渦抑制板22の下部に有している。貫通孔25は、例えば、吸込ケーシング4の中心軸CLに沿う方向に長い、すなわち軸方向縦長の孔である。ここでは、貫通孔25は、左右の第2の渦抑制板22の各々に3つずつ設けられているが、設置個数は特に限定されない。また、貫通孔25は、第2の渦抑制板22の下部にのみ設けられており、第1の渦抑制板21には設けられていない。具体的には、貫通孔25は、第2の渦抑制板22の下端から第2の渦抑制板22の上下方向の長さ寸法の1/3以内の領域、好ましくは1/4以内の領域のみに設けられている。ここでは、貫通孔25は、下側の支持板32の下方に設けられている。この貫通孔25の機能については後述する。
【0026】
さらに、第2の渦抑制板22は、貫通孔25の下方において内側に突出する凸構造27を備えている。凸構造27は、吸込ケーシング4の中心軸CL(
図2~
図4参照)を含む平面(鉛直面)で切断した場合の断面形状が直角三角形を呈しており、第2の渦抑制板22の内側に周方向に沿って延在している。凸構造27は、内側に行くほど低くなるように傾斜する傾斜面28を有している。凸構造27は、例えば第2の渦抑制板22とは別体として形成されて溶接等の固着手段によって第2の渦抑制板22に固定されるが、これに限定されるものではなく、第2の渦抑制板22と一体成形されてもよい。この凸構造27の機能については後述する。
【0027】
図3に示すように、第1の渦抑制板21は、中心軸CLを中心とした第1の半径R1(
図3参照)を有する円弧面状の板である。また、第2の渦抑制板22は、中心軸CLを中心とした第2の半径R2(
図3参照)を有する円弧面状の板である。ここでは、第1の渦抑制板21および第2の渦抑制板22は、同じ厚さの板で形成されている。第1の半径R1は、内半径で示されており、第2の半径R2は、外半径で示されている。第1の半径R1は、第2の半径R2よりも大きく設定されている。
【0028】
第1の渦抑制板21の主流方向17における下流側の端部23と、第2の渦抑制板22の主流方向17における上流側の端部24とは、中心軸CLを中心とした円周方向位置において重なっている。すなわち、中心軸CL上の位置から見て、第1の渦抑制板21と第2の渦抑制板22との間に、円周方向の隙間が存在しない。
【0029】
次に、前記のように構成された立軸ポンプ100の作用について説明する。
図1に示すように、水路1内の吸込対象水の水位がベルマウス42の下端を上回り(
図1の水位L1参照)、ベルマウス42が十分に没水した状態では、立軸ポンプ100が起動すると、羽根車3の回転により、水がベルマウス42から吸い込まれて昇圧され、吸込ケーシング4を通り、揚水管5、吐出しベンド6を経て排水管8へ送られる。
【0030】
ここで、立軸ポンプ100が仮に渦防止装置20を備えていない場合、水路1内の流体の水面付近の流れが吸込ケーシング4を通り過ぎる際に、吸込ケーシング4の下流側で剥離して旋回流が生じることがある。この場合、水面から吸込ケーシング4のベルマウス42付近に達する空気吸込渦が生じるおそれがある。
しかし、本実施形態では、吸込ケーシング4の主流方向17における上流側からの流れが、吸込ケーシング4と渦防止装置20との間を通って下流側から流出する。これにより、吸込ケーシング4の下流側での旋回流の生成が抑制され、空気吸込渦の発生を抑制できる。
【0031】
次に、
図9~
図12を参照して、渦防止装置20のさらなる作用について説明する。
図9は、1枚の渦抑制板36から構成された渦防止装置35の周辺の流れを模式的に示す平面図である。
図10は、第1の渦抑制板21と第2の渦抑制板22とに分割されて構成された本実施形態の渦防止装置20の周辺の流れを模式的に示す平面図である。
図11は、第2の渦抑制板22における貫通孔25の周辺の流れを模式的に示す第2の渦抑制板22の外側から見た斜視図である。
図12は、第2の渦抑制板22における貫通孔25の周辺の流れを模式的に示す第2の渦抑制板22の内側から見た斜視図である。
【0032】
図9に示すように、1枚の渦抑制板36が使用される場合、吸込ケーシング4の主流方向17における上流側からの流れは、渦抑制板36の外側を通る流れと、渦抑制板36の内側を通る流れとに分かれる。立軸ポンプの更新の際にその仕様が変更され、吸込水槽内の流速が大きくなる場合、渦抑制板36の外側を通る流れは、渦抑制板36の外側中間部で剥離して、空気吸込渦の要因となる旋回流37が生じてしまうことがある。ここで、外側とは中心軸CLを中心とした半径方向の外側であり、内側とは中心軸CLを中心とした半径方向の内側である。
【0033】
一方、
図10~
図12に示す渦防止装置20が使用される場合、大きい第1の半径R1を有する第1の渦抑制板21と、小さい第2の半径R2を有する第2の渦抑制板22との間には、中心軸CLを中心とした半径方向の隙間が生じる。このため、第1の渦抑制板21の内側を通る流れの一部が、半径方向の隙間を通って、第2の渦抑制板22の外側を通過する。これにより、渦防止装置20の外側中間部での旋回流(
図9の旋回流37参照)の生成が抑制され、空気吸込渦の発生を抑制できる。
【0034】
また、第2の渦抑制板22が貫通孔25を下部に有していることで、貫通孔25を内側から外側に通過する貫通流38が発生する。例えば、水位が
図1の水位L1よりもさらに
図11の低水位LWLまで低下したとき、第1の渦抑制板21と第2の渦抑制板22との間の隙間からの流れ39だけでは空気吸込渦発生の抑制が十分でない場合がある。この場合、第2の渦抑制板22の外側において、第1の渦抑制板21と第2の渦抑制板22との間の隙間からの流れ39に対して、貫通孔25を通過する貫通流38を合流させることができる。このように第2の渦抑制板22の下部に設けられた貫通孔25によって、旋回流の生成がより効果的に抑制され、空気吸込渦発生の抑制がより強化される。
【0035】
さらに、本実施例では、貫通孔25の下方における内側に、凸構造27が設置されている。第1の渦抑制板21の内側(中心軸CL側)を通過した流れのうち、第1の渦抑制板21と第2の渦抑制板22との間の隙間に流入しなかった流れは、凸構造27の傾斜面28にガイドされて貫通孔25の方へ導かれる。その結果、第1の渦抑制板21と第2の渦抑制板22との間の隙間からの流れ39に対して、貫通流38をより多く合流させることができる。
【0036】
前記したように本実施形態に係る立軸ポンプ100は、羽根車3を内部に収容する吸込ケーシング4の下流側の左右に、吸込ケーシング4に対向してそれぞれ配置された渦防止装置20を備えている。渦防止装置20は、第1の渦抑制板21と、主流方向17における第1の渦抑制板21の下流側に配置された第2の渦抑制板22とを有している。第2の渦抑制板22は、貫通部としての貫通孔25を下部に有している。
【0037】
このような本実施形態では、上流側からの流れが吸込ケーシング4と渦防止装置20との間を通って下流側から流出することで、吸込ケーシング4の下流側での旋回流の生成が抑制される。
また、第1の渦抑制板21の内側を通る流れの一部が、第1の渦抑制板21と第2の渦抑制板22との間の隙間を通って、第2の渦抑制板22の外側を通過することで、渦防止装置20の外側中間部での旋回流の生成が抑制される。
さらに、第2の渦抑制板22の外側において、第1の渦抑制板21と第2の渦抑制板22との間の隙間からの流れ39に対して、貫通孔25を通過する貫通流38を合流させることができる。このため、旋回流の生成がより効果的に抑制され、空気吸込渦発生の抑制がより強化される。
したがって、本実施形態によれば、空気吸込渦の発生をより抑制できる立軸ポンプ100を提供することができる。
【0038】
なお、本実施形態では、渦防止装置20は、主流方向17において第1の渦抑制板21と第2の渦抑制板22とに2分割されているが、これに限定されるものではなく、3つ以上に分割されていてもよい。
【0039】
また、本実施形態では、第1の渦抑制板21は、吸込ケーシング4の中心軸CLから、第2の渦抑制板22よりも離れて設置されている。この構成では、第1の渦抑制板21の内側を通る流れの一部が、第1の渦抑制板21と第2の渦抑制板22との間の中心軸CLを中心とした半径方向の隙間を通って、第2の渦抑制板22の外側を通過しやすくなる。これにより、渦防止装置20の外側中間部での旋回流の生成がより抑制される。
【0040】
また、本実施形態では、第1の渦抑制板21は、中心軸CLを中心とした第1の半径R1を有する円弧面状の板であり、第2の渦抑制板22は、中心軸CLを中心とした第2の半径R2を有する円弧面状の板である。そして、第1の半径R1は、第2の半径R2よりも大きく設定されている。この構成では、第1の渦抑制板21の内側を通って第2の渦抑制板22の外側を通過する流れを含め、渦防止装置20周辺の流れがより滑らかになる。
【0041】
また、本実施形態では、第1の渦抑制板21の下流側の端部23と、第2の渦抑制板22の上流側の端部24とは、中心軸CLを中心とした円周方向位置において重なっている。この構成では、第1の渦抑制板21と第2の渦抑制板22との間に、円周方向の隙間がなくなる。このため、第1の渦抑制板21の内側を通る流れの一部をより確実に第2の渦抑制板22の外側を通過させることができ、渦防止装置20の外側中間部での旋回流の生成がより抑制される。
【0042】
また、本実施形態では、第2の渦抑制板22は、貫通孔25の下方において内側に突出する凸構造27を備えている。この構成では、第1の渦抑制板21の内側を通過した流れのうち、第1の渦抑制板21と第2の渦抑制板22との間の隙間に流入しなかった流れは、凸構造27にガイドされて貫通孔25の方へ導かれる。その結果、第1の渦抑制板21と第2の渦抑制板22との間の隙間からの流れ39に対して貫通流38をより多く合流させることができる。このため、旋回流の生成がさらに抑制され、渦発生の抑制効果をさらに強めることができる。
【0043】
また、本実施形態では、凸構造27は、内側に行くほど低くなるように傾斜する傾斜面28を有している。この構成では、第1の渦抑制板21の内側を通過した流れのうち、第1の渦抑制板21と第2の渦抑制板22との間の隙間に流入しなかった流れは、凸構造27の傾斜面28にガイドされて貫通孔25の方へより導かれる。
【0044】
以上、本発明について実施形態に基づいて説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0045】
例えば、前記した実施形態では、第2の渦抑制板22は、流れが通過する貫通部として貫通孔25のみを該第2の渦抑制板22の下部に有しているが、これに限定されるものではない。
図13は、変形例に係る渦防止装置20の周辺を下流側から見た背面図である。
図13に示す変形例では、第2の渦抑制板22は、貫通孔25および切欠き26の両方を含む貫通部を該第2の渦抑制板22の下部に有している。この変形例によっても、前記した実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、第2の渦抑制板22は、貫通部として切欠き26のみを該第2の渦抑制板22の下部に有する構成とされてもよい。すなわち、第2の渦抑制板22は、貫通孔および切欠きの少なくとも一方を含む貫通部を該第2の渦抑制板22の下部に有していればよい。
【0046】
また、貫通孔25の形状は、前記した実施形態では軸方向縦長の長円であるが、これに限定されるものではなく、例えば、円形、楕円、四角形、横長のスリット形状等であってもよい。切欠き26の形状は、前記した実施形態では軸方向縦長の半長円であるが、これに限定されるものではなく、例えば、半円形、半楕円、四角形、横長のスリット形状等であってもよい。
また、凸構造27は、前記した実施形態では断面形状が直角三角形を呈しているが、これに限定されるものではなく、例えば、二等辺三角形、台形、半円形、半楕円形等であってもよい。また、傾斜面28は、前記した実施形態では平面であるが、曲面であってもよい。
また、第1の渦抑制板21および第2の渦抑制板22は、前記した実施形態では円弧面状の板であるが、これに限定されるものではなく、楕円面等の任意の曲面状の板、あるいは平面状の板であってもよい。
また、本発明の立軸ポンプは、前記した実施形態では羽根車3から吐き出される流れが回転軸2を軸とする円すい面内にある斜流ポンプに適用される場合について説明したが、これに限定されるものではない。本発明の立軸ポンプは、例えば、羽根車3から吐き出される流れが回転軸2と同心の円筒面内にある軸流ポンプにも適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 水路(吸込水槽)
3 羽根車
4 吸込ケーシング
17 主流方向
20 渦防止装置
21 第1の渦抑制板
22 第2の渦抑制板
23 端部
24 端部
25 貫通孔(貫通部)
26 切欠き(貫通部)
27 凸構造
28 傾斜面
100 立軸ポンプ
R1 第1の半径
R2 第2の半径
CL 中心軸