(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131512
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】掘削機械の表示装置
(51)【国際特許分類】
E21B 3/02 20060101AFI20230914BHJP
E21B 17/00 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
E21B3/02 Z
E21B17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036323
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】奥村 高好
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129BA16
2D129BB01
2D129DC05
2D129DC13
2D129EB08
(57)【要約】
【課題】簡単な構成でロッキングケリーバのロック位置を知ることが可能な掘削機械の表示装置を提供する。
【解決手段】回転駆動装置に装着される多段伸縮式のロッキングケリーバを備えた掘削機械に実装され、ロッキングケリーバの伸長動作に従って順次変化する各段同士の相対位置にてロック可能な状態であるか否かの表示を行う表示装置において、前記表示は、ロッキングケリーバの伸長量を表すバー表示28であって、掘削機械の運転席から目視可能な位置に配置され、バー表示28は、ロッキングケリーバの伸長動作に従って順々に増加する領域をロック可能な状態である位置に対応した伸長量を表す領域と、ロック不可能な状態である位置に対応した伸長量を表す領域とに区分した状態で、各領域に付与される表示色(赤色R、青色B、黄色Y)をそれぞれ異ならせている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースマシンに立設されるリーダと、該リーダに沿って昇降可能な回転駆動装置と、該回転駆動装置に装着される多段伸縮式のロッキングケリーバとを備えた掘削機械に実装され、前記ロッキングケリーバの伸長動作に従って順次変化する各段同士の相対位置にてロック可能な状態であるか否かの表示を行う表示装置において、
前記表示は、前記ロッキングケリーバの伸長量を表すバー表示であって、前記掘削機械の運転席から目視可能な位置に配置され、
前記バー表示は、前記ロッキングケリーバの伸長動作に従って順々に増加する領域を前記ロック可能な状態である位置に対応した伸長量を表す領域と、ロック不可能な状態である位置に対応した伸長量を表す領域とに区分した状態で、各領域に付与される表示色をそれぞれ異ならせていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記表示は、前記バー表示と同時に目視可能な位置に配置される状態表示を有し、
前記状態表示は、前記各段同士の相対位置に基づいて特定される1つのロック可能な状態である位置に対応し、該1つのロック可能な状態である位置の属するロッキングケリーバの段数を表す数字であることを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記状態表示は、前記バー表示とは独立した領域に表示され、該独立した領域に付与される表示色は、前記バー表示の順々に増加する領域に付与される表示色のうち、最も後順位の領域に付与される表示色と同一であることを特徴とする請求項2記載の表示装置。
【請求項4】
前記ロック可能な状態である位置に対応した伸長量を表す領域は、前記各段同士の相対位置の不整合を許容して拡大した領域が含まれ、該拡大した領域とその他の領域とに区分した状態で、各領域に付与される表示色をそれぞれ異ならせていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削機械の表示装置に関し、詳しくは、回転駆動されるロッキングケリーバを備えた掘削機械の表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、掘削機械の回転駆動装置に装着されるケリーバは、水平断面サイズの異なる複数本のケリーバ部材を伸縮可能に嵌合した多段伸縮式のものが用いられている。この種のケリーバのうち、いわゆるロッキングケリーバでは、個々のケリーバ部材がその外周側において軸方向に延びる突起状のリブを備えており、このリブに切り欠き状の溝が所定間隔で複数設けられている。これに対して、ケリーバ部材の内周側先端部には、外周側のリブによって受けたトルク(回転駆動力)を次の段のケリーバ部材に伝達する駆動プレートが設けられている。そして、リブの溝に駆動プレートが嵌まり込んだ状態では、ケリーバ部材同士がロックされ、ケリーバの先端に取り付けた掘削具に対してトルク及び押込み力を効率よく伝達することが可能である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロッキングケリーバは、その構造上、ロック位置を目視できないことから、伸縮あるいは回転操作しながら、掘削深度の表示や機械の挙動を頼りにロック位置を探ることとなる。しかしながら、こうした運転操作は、オペレータの熟練度に左右されやすく、また、運転操作に一層集中する必要があることから、オペレータの負担も大きいものであった。
【0005】
そこで本発明は、簡単な構成でロッキングケリーバのロック位置を知ることが可能な掘削機械の表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の掘削機械の表示装置は、ベースマシンに立設されるリーダと、該リーダに沿って昇降可能な回転駆動装置と、該回転駆動装置に装着される多段伸縮式のロッキングケリーバとを備えた掘削機械に実装され、前記ロッキングケリーバの伸長動作に従って順次変化する各段同士の相対位置にてロック可能な状態であるか否かの表示を行う表示装置において、前記表示は、前記ロッキングケリーバの伸長量を表すバー表示であって、前記掘削機械の運転席から目視可能な位置に配置され、前記バー表示は、前記ロッキングケリーバの伸長動作に従って順々に増加する領域を前記ロック可能な状態である位置に対応した伸長量を表す領域と、ロック不可能な状態である位置に対応した伸長量を表す領域とに区分した状態で、各領域に付与される表示色をそれぞれ異ならせていることを特徴としている。
【0007】
また、前記表示は、前記バー表示と同時に目視可能な位置に配置される状態表示を有し、前記状態表示は、前記各段同士の相対位置に基づいて特定される1つのロック可能な状態である位置に対応し、該1つのロック可能な状態である位置の属するロッキングケリーバの段数を表す数字であることを特徴としている。
【0008】
さらに、前記状態表示は、前記バー表示とは独立した領域に表示され、該独立した領域に付与される表示色は、前記バー表示の順々に増加する領域に付与される表示色のうち、最も後順位の領域に付与される表示色と同一であることを特徴としている。
【0009】
加えて、前記ロック可能な状態である位置に対応した伸長量を表す領域は、前記各段同士の相対位置の不整合を許容して拡大した領域が含まれ、該拡大した領域とその他の領域とに区分した状態で、各領域に付与される表示色をそれぞれ異ならせていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ロッキングケリーバを備えた掘削機械に実装される表示装置が、ロッキングケリーバの伸長量を表すバー表示によってロック可能な状態であるか否かの表示を行い、ロッキングケリーバの伸長動作に従って順々に増加するバー表示の領域をロック可能な状態である位置に対応した伸長量を表す領域と、ロック不可能な状態である位置に対応した伸長量を表す領域とに区分した状態で、各領域に付与される表示色をそれぞれ異ならせているので、ロック可能な伸長状態になっているのかを視覚的に捉えることが可能となり、オペレータの技術に依存しない安定した施工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一形態例における表示装置が適用される掘削機械の側面図である。
【
図2】同じくロッキングケリーバのロック可能な伸長状態を示す図である。
【
図3】同じくロッキングケリーバの各段同士の相対位置(ケリーバ位置)と表示色とを関連付けたテーブルを模式的に示す図である。
【
図4】同じくロッキングケリーバの伸長動作に従って変化する表示の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至
図4は、本発明の一形態例における表示装置を掘削機械に適用した図である。掘削機械11は、
図1に示すように、ケーシング掘削やアースドリル工法などの各種施工が可能な多目的掘削仕様機であって、クローラを備えた下部走行体12と、該下部走行体12上に旋回可能に設けられた上部旋回体13とで構成されたベースマシン14と、上部旋回体13の前部に立設したリーダ15と、該リーダ15を後方から支持する起伏シリンダ16とを備えている。また、上部旋回体13の前部には、リーダ15を起伏可能に支持するリーダサポート17が設けられ、上部旋回体13の前部上方には、配管を支持する配管支持部材18が設けられている。さらに、上部旋回体13の右側部には運転室19が、左側部にはエンジンや油圧源となる油圧ポンプを搭載した動力部20がそれぞれ設けられている。
【0013】
リーダ15は、断面が角筒状に形成された複数のリーダ部材を互いに連結したもので、リーダサポート17に設けられた車幅方向の支軸に回動可能に取り付けられている。リーダ15の上端部には、ロッキングケリーバ21を吊持するケリーロープ22などが巻掛けられるトップシーブ23が、リーダ15の前面にはロッキングケリーバ21を回転駆動する回転駆動装置の一例であるケリードライブ24及びロッキングケリーバ21のガイド装置25がそれぞれ装着されている。リーダ15の前面中央には、ラックピニオン式昇降装置の構成部品としてラックギヤ26が、両側面前端部には左右一対のガイドパイプ27,27が、リーダ15の全長にわたってそれぞれ連続的に設けられ、ケリードライブ24やガイド装置25の装着部となる。
【0014】
各リーダ部材は、隣接する部分において、リーダ15の断面形状に対応した連結フランジ同士を当接させて形成され、複数のボルト及びナットを使用して安定的に結合されている。各フランジ結合部は、連結フランジの形状や、ボルト孔のサイズ、配置ピッチなどを共通にした同一構造であり、ボルト及びナットを外してフランジ結合を解除することにより、図示は省略するが、各種工法に応じて、リーダ部材を多数で構成した長尺仕様と、リーダ部材を少数で構成した短尺仕様とに組み替え可能である。
【0015】
ケリードライブ24は、ロッキングケリーバ21を着脱可能に備えた装置本体24aを中心に構成され、リーダ15のガイドパイプ27,27に摺接する左右一対のガイドギブ24b,24bが後方に突出して設けられるとともに、ラックギヤ26に歯合する左右一対のピニオンを昇降用油圧モータ(図示せず)によって回転駆動することにより、リーダ15の前面に沿って昇降する。また、ケリードライブ24は、装置本体24a内の減速機構に接続される回転駆動用油圧モータ24cを備えている。
【0016】
ロッキングケリーバ21は、硬質地盤では強い押付け力の伝達が可能なロック手段を備えた周知のもので、多段筒状のケリーバ部材を内嵌した構造(例えば4段のテレスコピック構造)を有し、掘削深さに応じて伸縮するように形成されている。ロック手段は、図示は省略するが、隣り合うケリーバ部材同士に対で設けられたプレート構造からなる。プレート構造は、例えば、個々のケリーバ部材の外周側において軸方向に延びる突起状のリブからなり、このリブの上部側(基端部側)及び下部側(先端部側)の2箇所を部分的に切り欠いた嵌合凹部(溝)が設けられている。これに対して、ケリーバ部材の内周側下端部(先端部)には、外周側のリブによって受けたトルクを次の段のケリーバ部材に伝達する嵌合凸部(駆動プレート)が設けられている。そして、リブの嵌合凹部に嵌合凸部が嵌まり込んだ状態で、ケリーバ部材同士がロックされる。
【0017】
こうしたロック状態は、ロッキングケリーバ21の所定の伸縮・回転動作で作られ、嵌合凹凸部同士が軸方向・周方向に相対移動して互いに嵌まり合うことで、ロック機能を発揮する。また、上部側の嵌合凹部においてロックさせる場合、嵌合凹部の軸方向の隙間量(あそび)を大きくとる必要はなく、ケリーバ部材同士が伸びきった位置、つまり、構造上の限界位置でロック可能な状態が確定する。
【0018】
一方、下部側の嵌合凹部においてロックさせる場合、ロッキングケリーバ21を伸縮動作の途中で停止させる微妙な操作が求められることから、ある程度の隙間量が確保できれば好都合である。そのため、嵌合凹部の軸方向端部にガイド部(例えばテーパ形状)を設けるなどして軸方向の溝幅を拡大させ、たとえケリーバ部材同士の相対位置が厳格に整わなくとも、ガイド部が回転を得てロック可能な状態へと促す構造、すなわち、各段同士の相対位置の不整合を許容できる構造となっている。このような構造は、特許文献1の
図5に記載された各ケリーバのリブの溝(テーパ形状)からも見てとれる。
【0019】
ところで、ロッキングケリーバ21は、その構造上、ロック位置を目視できないことから、伸縮あるいは回転操作しながら、掘削深度の表示や機械の挙動を頼りにロック位置を探ることとなる。しかしながら、こうした運転操作は、オペレータの熟練度に左右されやすく、また、運転操作に一層集中する必要があることから、オペレータの負担も大きいものである。そこで掘削機械11には、ロッキングケリーバ21のロック位置を知ることが可能な表示装置が備えられている。
【0020】
表示装置は、既存の施工管理装置に追加的に組み込まれる形で実装され、ロッキングケリーバ21の伸縮動作に従って順次変化する各段同士の相対位置にてロック可能な状態であるか否かの表示を行う。この表示は、運転席から目視可能な位置に配置されるもので、例えば、運転室19内に設置されたディスプレイの表示画面の一部として構成され、
図4に示すように、縦方向のバー表示からなる。
【0021】
ここで、バー表示の理解を容易にするために、ロッキングケリーバ21の伸長動作に従って順次到達するロック可能な伸長量(各段同士の相対位置)と表示色との関係を、
図2及び
図3を参照しながら説明する。
図2の最も右側の状態は、4段式ロッキングケリーバ21の全縮長状態(
図1の状態に相当)を示している。この状態を基準として、つまり、ケリードライブ24に直接固定されるアウタケリーバ部材(第4部材)の高さ位置を基準として、
図2の左側に向けて段階的に示すように、隣り合うケリーバ部材同士を外側から順に下方へスライドさせながら、サードケリーバ部材(第3部材)、セカンドケリーバ部材(第2部材)、インナケリーバ部材(第1部材)と露出させて伸ばしたものである。そして、
図2の最も左側の状態は、ロッキングケリーバ21を全伸長させる直前の状態を示している。
【0022】
また、
図2に示される各段階の伸長状態は、ロック可能な上部側及び下部側の2箇所の位置にそれぞれ対応して表され、さらには、該当箇所ごとにロック可能な伸長量の上限位置及び下限位置にそれぞれ対応して表されている。こうしたロッキングケリーバ21の各段同士の相対位置は、バー表示の領域に付与される各種表示色と関連付けられ、制御プログラムを実行する際の参照用テーブルとして表示装置の記憶部に記憶されている。
【0023】
図3は、参照するテーブルを模式的に示している。フィールドの数字は、ロッキングケリーバ21の全体の伸長量(ケリーバ位置)Lを表すもので、それぞれの値が、バー表示の領域を増減させる切替え点となる。そして伸長量Lは、連続する切替え点間の範囲ごとに分割され、これらの範囲と各種表示色との関連付けがなされている。
【0024】
例えば、伸長量L=0mm~2985mmの範囲は、全縮長状態からサードケリーバ部材の下部側ロック位置に向かう状態であるから、ロック不可能な状態である位置に対応したロック不可能伸長量範囲として特定され、赤色Rが関連付けられている。
【0025】
伸長量L=2985mm~3085mmの範囲は、サードケリーバ部材の下部側ロック位置にて、ロック可能な伸長量の上限位置と下限位置との間に到達した状態であるから、ロック可能な状態である位置に対応したロック可能伸長量範囲として特定され、青色Bが関連付けられている。
【0026】
伸長量L=3085mm~3185mmの範囲は、サードケリーバ部材の下部側ロック位置に対して、ロック手段のガイド部でロック可能な状態へと促すことができるから、サードケリーバ部材とアウタケリーバ部材との相対位置の不整合を許容して拡大した許容範囲として特定され、黄色Yが関連付けられている。
【0027】
そして、伸長量L=3185mm~5985mmの範囲は、サードケリーバ部材の上部側ロック位置に向かう状態であるから、ロック不可能な状態である位置に対応したロック不可能伸長量範囲として特定され、赤色Rが関連付けられている。こうして、順次変化する各段同士の相対位置において、ロック不可能伸長量範囲には赤色Rが、ロック可能伸長量範囲には青色Bが、許容範囲には黄色Yが、それぞれ関連付けられている。
【0028】
ここで、ロッキングケリーバ21の伸長量Lは、ケリーロープ22の移動量(巻上・巻下)と、ケリードライブ24の移動量(上昇・下降)との関係で求められることから、これらの検出は、施工管理装置が取得する動作センサ(例えばロータリエンコーダ)からの信号をもらえば済む。そして、ロッキングケリーバ21の全縮長状態を検出する位置センサ(例えば近接スイッチ)を追加して設けるだけで、上述のテーブルを参照した演算処理を行うことが可能である。
【0029】
位置センサは、全縮長状態で吊るしたロッキングケリーバ21をケリードライブ24に装着する際、アウタケリーバ部材が装置本体24aに預けられた瞬間を初期状態(ゼロ)として検出する。そして、表示装置の制御プログラムを実行させて伸長量Lの演算処理が開始される。これと逆に、ケリードライブ24からロッキングケリーバ21を外せば、そのタイミングで演算処理が終了する。
【0030】
演算処理が開始されると、伸長量(ケリーバ位置)Lは、ケリーロープ22の移動量(巻き出し量)L2と、ケリードライブ24の移動量(下降量)L3とに基づいて、L=L2-L3の式から求められる。そして、伸長量Lが得られることで、テーブルを参照して、バー表示の増減の度合いや表示色などの要素が確定される。
【0031】
以下では、ロッキングケリーバ21の伸長動作に従って増加するバー表示の表示態様を、
図4を参照しながら説明する。まず、表示は、バー表示(バー表示ランプ)28と、該バー表示28とは独立して配置された状態表示(状態表示ランプ)29とからなり、全体として、ロッキングケリーバ21の伸縮方向に整合した縦方向に配置されている。
【0032】
バー表示は、
図4(a)に示すように、ロッキングケリーバ21の伸長動作に従って上から下へと順々に増加する領域を、ロック不可能伸長量範囲、ロック可能伸長量範囲、許容範囲のそれぞれに対応可能な連続する複数の矩形状の領域に区分されている。このように区分された領域の縁取り線は、上下隣り合う横線の間隔が一定であることによって、複数の横線が、物差しの目盛りのような視覚的効果を生み出し、その内側領域には、白色あるいは背景色が付与されている。一方、状態表示29は、バー表示28と同時に目視可能な位置、つまり、すぐ上に整列配置されるとともに、バー表示28の一マス分(単位増加分)を抜き出した形を有し、縁取り線の内側領域には、バー表示28と同様に白色あるいは背景色が付与されている。
【0033】
初期状態にて表示装置が演算処理を開始すると、ロッキングケリーバ21の伸長動作に従ってバー表示28を機能させる。このとき、状態表示29に対して、各段同士の相対位置に基づいて特定される1つのロック可能な状態である位置に対応させた表示を行う。具体的には、
図4(b)に示すように、1つのロック可能な状態である位置、すなわち、サードケリーバ部材であることを示す数字「3」と、その下部側ロック位置であることを示すアルファベット「L」とを組み合わせた文字列「3L」を表示させる。
【0034】
また、状態表示29の領域に付与される表示色は、バー表示28の順々に増加する領域に付与される表示色のうち、最も後順位の領域に付与される表示色と同一とされる。具体的には、
図4(b)のような、バー表示28に付与される表示色が赤色Rのみの単数色表示では、例外なくその赤色Rが付与されることとなるが、
図4(c)に示すように、バー表示28の領域が増加して、付与される表示色が赤色Rと青色Bの複数色表示になった場合、後順位(最下段)の領域に付与される青色Bが付与される。
【0035】
ここから、バー表示28の領域が更に増加して、
図4(d)に示すように、付与される表示色が赤色R、青色B、黄色Yの複数色表示になった場合、最も後順位の領域に付与される黄色Yが付与され、
図4(e)に示すように、付与される表示色が赤色R、青色B、黄色Y、赤色Rの複数色表示になった場合、最も後順位の領域に付与される赤色Rが付与される。
【0036】
こうして、
図4(f)に示すように、バー表示28の全ての領域に表示色が付与されると、ロッキングケリーバ21は、サードケリーバ部材の上部側ロック位置に向かう段階へと進み、バー表示28の状態を、
図4(b)の状態に変化させると同時に、状態表示29の領域に対して赤色Rを付与し、サードケリーバ部材であることを示す数字「3」と、その上部側ロック位置であることを示すアルファベット「U」とを組み合わせた文字列「3U」を表示させる。以降も同様にして、バー表示28を一定パターンの周期で変化させ、これに従って状態表示29を、「3U」からセカンドケリーバ部材の下部側ロック位置であることを示す文字列「2L」、「2L」からセカンドケリーバ部材の上部側ロック位置であることを示す文字列「2U」、「2U」からインナケリーバ部材の下部側ロック位置であることを示す文字列「1L」、「1L」からインナケリーバ部材の上部側ロック位置であることを示す文字列「1U」と、表示を順々に変化させていく。
【0037】
このように、本発明によれば、ロッキングケリーバ21を備えた掘削機械11に実装される表示装置が、ロッキングケリーバ21の伸長量Lを表すバー表示28によってロック可能な状態であるか否かの表示を行い、ロッキングケリーバ21の伸長動作に従って順々に増加するバー表示28の領域をロック可能な状態である位置に対応した伸長量Lを表す領域と、ロック不可能な状態である位置に対応した伸長量Lを表す領域とに区分した状態で、各領域に付与される表示色(赤色R、青色B、黄色Y)をそれぞれ異ならせているので、ロック可能な伸長状態になっているのかを視覚的に捉えることが可能となり、オペレータの技術に依存しない安定した施工を行うことができる。
【0038】
また、バー表示28と同時に目視可能な位置に配置される状態表示29を有し、この状態表示29が、各段同士の相対位置に基づいて特定される1つのロック可能な状態である位置に対応し、該1つのロック可能な状態である位置の属するロッキングケリーバ21の段数を表す数字であるため、ロックを行おうとする段数が表示から一目瞭然となる。そして、同一ケリーバ部材においてロック位置を増加させた場合でも、この数字に所定のアルファベットや記号などを付加するだけで、ロック位置を容易に判別できることから拡張性にも優れている。
【0039】
さらに、状態表示29が、バー表示28とは独立した領域に表示され、該独立した領域に付与される表示色が、バー表示28の順々に増加する領域に付与される表示色のうち、最も後順位の領域に付与される表示色と同一であるため、オペレータは、状態表示29のみに注目すれば伸長状態を把握することができ、必要なロック操作が行えるようになる。一方で、ロック可能な状態である位置に対する前後関係、すなわち、手前であるのか行き過ぎているのかという位置関係において、例えば、
図4(b)及び
図4(e)のいずれの状態においても、バー表示28を参酌すれば、
図4(b)の状態では、伸長方向に運転操作を行えばロック位置に近づくこと、
図4(e)の状態では、縮小方向に運転操作を行えばロック位置に近づくことをそれぞれ区別して認識できることから、伸長状態に応じた的確な運転操作に資するものである。
【0040】
加えて、ロック可能な状態である位置に対応した伸長量Lを表す領域が、各段同士の相対位置の不整合を許容して拡大した領域を含み、該拡大した領域とその他の領域とに区分した状態で、各領域に付与される表示色(青色B、黄色Y)をそれぞれ異ならせているので、ロッキングケリーバ21に備わるロック手段のガイド構造(従来構造)との整合性のとれた表示となり、オペレータの操作感覚に合致した満足のいく表示が達成される。
【0041】
なお、本発明は、前記形態例に限定されるものではなく、制御プログラムは、既存の施工管理装置にアドオンして機能させるシンプルな構成であればよく、ロッキングケリーバの仕様に応じて参照する値などを適宜変更することができる。また、表示色は任意であり、必要に応じて横向きの表示としてもよく、表示画面の全体構成を考慮しながら、バー表示や状態表示の配置を調整することができる。さらに、実施例ではバー表示を1つのロック可能な状態である位置に対応させてコンパクトに表したが、これに限られず、例えば、
図3に模式的に表したテーブル構成をそのままバー表示とすることができる。これらの表示は、別途に設置した表示画面に表示させたり、画面以外の場所、例えば、運転席の壁、窓ガラスなどに投影手段を用いて表示させたりしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
11…掘削機械、12…下部走行体、13…上部旋回体、14…ベースマシン、15…リーダ、16…起伏シリンダ、17…リーダサポート、18…配管支持部材、19…運転室、20…動力部、21…ロッキングケリーバ、22…ケリーロープ、23…トップシーブ、24…回転駆動装置(ケリードライブ)、24a…装置本体、24b…ガイドギブ、24c…回転駆動用油圧モータ、25…ガイド装置、26…ラックギヤ、27…ガイドパイプ、28…バー表示(バー表示ランプ)、29…状態表示(状態表示ランプ)