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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131517
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】ハロゲン化アルケンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/25 20060101AFI20230914BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20230914BHJP
   B01J 27/138 20060101ALI20230914BHJP
   B01J 27/12 20060101ALI20230914BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230914BHJP
【FI】
C07C17/25
C07C21/18
B01J27/138 Z
B01J27/12 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036333
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001100
【氏名又は名称】株式会社クレハ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真理
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 賢輔
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169BA01A
4G169BA02A
4G169BA03A
4G169BA03B
4G169BA07A
4G169BB08A
4G169BB08B
4G169BC08A
4G169BC09A
4G169BC09B
4G169BC10A
4G169BC10B
4G169BC15A
4G169BC16A
4G169BC16B
4G169BD05A
4G169BD15A
4G169BD15B
4G169CB35
4G169CB63
4G169DA06
4G169EB18Y
4G169EC14Y
4H006AA02
4H006AC13
4H006BA06
4H006BA09
4H006BA11
4H006BA30
4H006BA37
4H006BB61
4H006BC13
4H006EA03
4H039CA29
4H039CG20
(57)【要約】
【課題】簡便な方法で調製した触媒を使用して、高転化率および高選択率でハロゲン化アルケンを得る方法を実現する。
【解決手段】本発明のハロゲン化アルケンの製造方法は、特定の金属およびフッ素を含む第一の触媒と、ケイ素およびアルミニウムを含む第二の触媒と、フッ素原子を含む、炭素数が4以下であるハロゲン化アルカンと、を接触させて、ハロゲン化アルカンを脱フッ化水素させる工程を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ土類金属および周期表の第13族金属からなる群から選択される少なくとも一種の金属、ならびにフッ素を含む第一の触媒と、
ケイ素およびアルミニウムを含む第二の触媒と、
フッ素原子を含む、炭素数が4以下であるハロゲン化アルカンと、
を接触させて、前記ハロゲン化アルカンを脱フッ化水素させる工程を含み、
前記第一の触媒と前記第二の触媒との合計を100質量%とした場合に、前記第一の触媒は20質量%以上100質量%未満である、ハロゲン化アルケンの製造方法。
【請求項2】
前記第一の触媒がフッ化マグネシウムおよびフッ化カルシウムから選択される少なくとも一種の触媒である、請求項1に記載のハロゲン化アルケンの製造方法。
【請求項3】
前記第一の触媒がフッ化アルミニウムである、請求項1に記載のハロゲン化アルケンの製造方法。
【請求項4】
前記第二の触媒が酸化ケイ素および酸化アルミニウムを含む触媒である、請求項1~3のいずれか1項に記載のハロゲン化アルケンの製造方法。
【請求項5】
第二の触媒がアルミノケイ酸塩である、請求項1~3のいずれか1項に記載のハロゲン化アルケンの製造方法。
【請求項6】
前記ハロゲン化アルカンは、下記一般式(1)で示される炭素数が4以下の化合物である、請求項1~5のいずれか1項に記載のハロゲン化アルケンの製造方法。
【化1】

(一般式(1)中、
はフッ素原子を示し、
は水素原子を示し、
およびRはそれぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子を示し、
およびRは、フッ素原子、水素原子、または、フッ素で置換されてもよい炭素数1以上2以下のアルカン基を示す。)
【請求項7】
が水素原子である、請求項6に記載のハロゲン化アルケンの製造方法。
【請求項8】
前記ハロゲン化アルカンが1,1,1-トリフルオロエタンである、請求項1~7のいずれか1項に記載のハロゲン化アルケンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン化アルケンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン化アルケンの製造方法として、複数のハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルカンから、ハロゲン化水素を脱離させる製造方法が知られている。例えば、特許文献1には、γ-アルミナを含む触媒を用いて、1,1,1-トリフルオロアルカンから1,1-ジフルオルアルケンを製造する方法が記載されている。また、特許文献2には、活性炭と、金属塩化物または硝酸塩と、を組み合わせた触媒によってハイドロフルオロオレフィンを得る方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3-115234号公報
【特許文献2】中国特許出願公開第109012676号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたジ1,1-ジフルオルアルケンの製造方法は、転化率が低いという課題がある。また、特許文献2に記載されたハイドロフルオロオレフィンの製造方法は、選択率および転化率が高い一方、使用する触媒の調製が煩雑であるという課題がある。そのため、調製が煩雑でない触媒を使用して、高選択率および高転化率を達成するハロゲン化アルケンの製造方法の開発が求められている。
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、簡便な方法で調製した触媒を使用して、高選択率および高転化率でハロゲン化アルケンを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、調製が簡便である特定の2種類の触媒を使用することによって、触媒活性が向上することを見出した。そして、高選択率および高転化率でハロゲン化アルケンを製造できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明の一態様に係るハロゲン化アルケンの製造方法は、アルカリ土類金属および周期表の第13族金属からなる群から選択される少なくとも一種の金属、ならびにフッ素を含む第一の触媒と、ケイ素およびアルミニウムを含む第二の触媒と、フッ素原子を含む、炭素数が4以下であるハロゲン化アルカンと、を接触させて、前記ハロゲン化アルカンを脱フッ化水素させる工程を含み、前記第一の触媒と前記第二の触媒との合計を100質量%とした場合に、前記第一の触媒は20質量%以上100質量%未満である、ハロゲン化アルケンの製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、簡便な方法で調製した触媒を使用して、高転化率および高選択率でハロゲン化アルケンを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0010】
本実施形態に係るハロゲン化アルケンの製造方法(以下、「本実施形態の製造方法」と示す場合がある)は、第一の触媒と、第二の触媒と、フッ素原子を含むハロゲン化アルカンと、を接触させて、ハロゲン化アルカンを脱フッ化水素する工程を含む。以下、当該工程を、「脱フッ化水素工程」と示す場合がある。また、「フッ素原子を含むハロゲン化アルカン」を「含フッ素ハロゲン化アルカン」と示す場合がある。本実施形態の製造方法によって製造されるフッ素原子を含むハロゲン化アルケンについては後述する。
【0011】
第一の触媒と第二の触媒と含フッ素ハロゲン化アルカンとを接触させることによって、フッ素原子を含むハロゲン化アルカンを脱フッ化水素反応させて、ハロゲン化アルケンが得られる。
【0012】
(第一の触媒)
第一の触媒は、アルカリ土類金属および周期表の第13族金属からなる群から選択される少なくとも一種の金属、ならびにフッ素を含む触媒である。より高い選択率を達成できる点では、第一の触媒は、アルカリ土類金属およびフッ素を含む触媒であることが好ましく、アルカリ土類金属のフッ化物であることがより好ましく、フッ化マグネシウムまたはフッ化カルシウムであることがさらに好ましい。より高い転化率を達成できる点では、第一の触媒は周期表の第13族金属およびフッ素を含む触媒であることが好ましく、周期表の第13族金属のフッ化物であることがより好ましく、フッ化アルミニウムであることがさらに好ましい。第一の触媒は1種であってもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0013】
本明細書において、「転化率」は、脱フッ化水素工程において、反応器に供給される含フッ素ハロゲン化アルカンのモル量に対する、反応器出口からの流出ガスに含まれる含フッ素ハロゲン化アルカン以外の化合物の合計モル量の割合(モル%)を示す。また「選択率」は、脱フッ化水素工程において、反応器出口からの流出ガスにおける含フッ素ハロゲン化アルカン以外の化合物の合計モル量に対する、当該流出ガスに含まれるハロゲン化アルケンのモル量の割合(モル%)を指す。
【0014】
(第二の触媒)
第二の触媒は、第一の触媒の共存下で含フッ素ハロゲン化アルカンに接触させることで、当該含フッ素ハロゲン化アルカンの脱フッ化水素反応をより助長するはたらきを有する。
【0015】
第二の触媒は、ケイ素およびアルミニウムを含む触媒である。第二の触媒中におけるケイ素およびアルミニウムの形態は特に限定されない。例えば、アルミノケイ酸塩のようにケイ素とアルミニウムが同一構造内に存在していてもよく、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合物のように各々存在していてもよい。
【0016】
ケイ素とアルミニウムが同一構造内に存在する場合には、ケイ素とアルミニウムは酸素を介して結合した構造を有する化合物であることが好ましく、具体的には、アルミノケイ酸塩であることが好ましく、多孔質結晶性アルミノケイ酸塩であることがより好ましい。熱安定性の観点からは、シリカとアルミナを含む複合酸化物、石炭灰のフライアッシュ、ボトムアッシュがより好ましい。
【0017】
高転化率を達成できる点では、第二の触媒に含まれるアルミニウムに対するケイ素のモル比(Si/Al比)は、含まれるAlの酸強度の点から、1を超えることが好ましく、5以上がより好ましく、10以上がさらに好ましい。上限値は特に制限されないが、1000以下が好ましく、100以下がより好ましく、50以下がさらに好ましい。
【0018】
上記多孔質結晶性アルミノケイ酸塩は、多孔質構造を有することで比表面積が増大し、反応効率が向上することが一般的に知られている。反応効率向上の観点から、第二触媒の細孔径は、0Åよりも大きく100Å以下が好ましく、0Åよりも大きく70Å以下がより好ましく、0Åよりも大きく50Å以下がさらに好ましい。
【0019】
第二の触媒の形状は特に限定されず、例えば直径2~5mm程度の球形のもの、直径および高さが2~5mm程度の円柱のような形状に成形されたもの、メディアン径(個数基準)が100μm以下の粉末状のものが挙げられる。第二の触媒と含フッ素ハロゲン化アルカンとの接触が気相で行われる場合、第二の触媒はメディアン径(個数基準)が100μm以下の粉末状のものが好ましい。
【0020】
第二の触媒は、反応に用いる前に乾燥させてもよく、乾燥させなくてもよい。乾燥させる場合には、250℃程度で1時間以上乾燥させる。水分除去効率の観点から、減圧下もしくは不活性ガス気流下で乾燥させることが好ましい。
【0021】
(含フッ素ハロゲン化アルカン)
含フッ素ハロゲン化アルカンは、炭素数が4以下であるハロゲン化アルカンである。含フッ素ハロゲン化アルカンは炭素数が2であってもよく、炭素数が3であってもよい。含フッ素ハロゲン化アルカンに含まれるフッ素原子の数は2以上である。
【0022】
含フッ素ハロゲン化アルカンは、下記一般式(1)で示される化合物である。
【化1】

一般式(1)中、Rはフッ素原子を示し、Rは水素原子を示し、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子を示し、RおよびRは、フッ素原子、水素原子、または、フッ素で置換されてもよい炭素数1以上2以下のアルカン基を示す。
【0023】
含フッ素ハロゲン化アルカンは、脱フッ化水素させる工程の効率向上の点から、Rは水素原子であることが好ましく、Rはフッ素原子であってRは水素原子であることがより好ましい。
【0024】
含フッ素ハロゲン化アルカンとして、例えば、1,1-ジフルオロエタン、1,2-ジフルオロエタン、1,1,1-トリフルオロエタン、1,1,2-トリフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロプロパン、1,1,1-トリフルオロプロパン、1,1,3-トリフルオロプロパン、1,1,2-トリフルオロプロパン、1,1,1,3-テトラフルオロプロパン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,1,1,2,2,3,3-ヘプタフルオロプロパン、1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、1,1,2-トリフルオロブタン、等が挙げられる。
【0025】
(脱フッ化水素工程の詳細および各条件)
脱フッ化水素工程においては、第一の触媒と第二の触媒と含フッ素ハロゲン化アルカンとを接触させて、前記含フッ素ハロゲン化アルカンを脱フッ化水素させる。例えば、反応系に第一の触媒と第二の触媒との混合触媒を供給後、含フッ素ハロゲン化アルカンを当該反応系に供給することによって、当該混合触媒と含フッ素ハロゲン化アルカンとを接触させてもよい。
【0026】
脱フッ化水素工程において、使用する第一の触媒と第二の触媒の合計を100質量%とした場合に、第一の触媒は20質量%以上100質量%未満であり、第一の触媒が30質量%以下100質量%未満であることが好ましい。使用する第一の触媒と第二の触媒の比率が上記範囲内であると、より高い選択率および転化率を達成することができる。
【0027】
上記反応系内の温度の下限は、より高い転化率を達成できる点で、400℃以上が好ましく、450℃以上がより好ましい。また、当該反応系内の温度の上限は、副生成物の生成を抑制する点で、600℃以下が好ましく、550℃以下がより好ましい。
【0028】
脱フッ化水素工程において、不活性ガス雰囲気下、第一の触媒と第二の触媒と含フッ素ハロゲン化アルカンとを接触させてもよい。不活性ガスとして、例えば、窒素ガス、ヘリウムおよびアルゴン等が挙げられる。
【0029】
上記反応系内における、含フッ素ハロゲン化アルカンと第一の触媒および第二の触媒の接触時間(W/F)[W:触媒の重量(g)、F:ハロゲン化アルカンの流量(mL/s)]は、1g・s/mL以上であることが好ましく、10g・s/mL以上であることが好ましい。また、300g・s/mL以下であることが好ましく、200g・s/mL以下であることがより好ましい。接触時間が上記範囲内であると、より高い選択率及び転化率を達成することができる。
【0030】
上記反応系で使用する反応器の材質としては、鉄、ニッケル、クロム、モリブテン、これらを主成分とする合金等が挙げられる。
【0031】
上記反応器内の圧力は、より効率的に脱フッ化水素反応を進行させて高い転化率・選択率でハロゲン化アルケンを得ることができる点から、常圧以上2MPa・G以下であることが好ましく、常圧以上1MPa・G以下であることがより好ましく、常圧以上0.5MPa・G以下であることがさらに好ましい。
【0032】
上述の通り、第一の触媒と第二の触媒と含フッ素ハロゲン化アルカンとを接触させることによって、含フッ素ハロゲン化アルカンが脱フッ化水素反応して、ハロゲン化アルケンが得られる。第一の触媒と第二の触媒とを混合(接触)させることによって触媒活性が向上する。
【0033】
(ハロゲン化アルケン)
本実施形態の製造方法によって製造されるハロゲン化アルケンは、フッ素原子を含むハロゲン化アルケンである。ハロゲン化アルケンの例として、フッ化ビニル(VF)、フッ化ビニリデン(VDF、1,1-ジフルオロエチレン)、1,1,2-トリフルオロエチレン等が挙げられる。
【0034】
本実施形態の製造方法のもっとも好ましい態様の1つは、第一の触媒と第二の触媒と1,1,1-トリフルオロエタンとを接触させて、1,1,1-トリフルオロエタンを脱フッ化水素させる工程を含む、VDFの製造方法である。
【0035】
〔まとめ〕
本実施形態に係るハロゲン化アルケンの製造方法は、アルカリ土類金属および周期表の第13族金属からなる群から選択される少なくとも一種の金属、ならびにフッ素を含む第一の触媒と、ケイ素およびアルミニウムを含む第二の触媒と、フッ素原子を含む、炭素数が4以下であるハロゲン化アルカンと、を接触させて、前記ハロゲン化アルカンを脱フッ化水素させる工程を含み、前記第一の触媒と前記第二の触媒との合計を100質量%とした場合に、前記第一の触媒は20質量%以上100質量%未満である。
【0036】
本実施形態に係るハロゲン化アルケンの製造方法において、前記第一の触媒がフッ化マグネシウムおよびフッ化カルシウムから選択される少なくとも一種の触媒であってもよい。
【0037】
本実施形態に係るハロゲン化アルケンの製造方法において、前記第一の触媒がフッ化アルミニウムであってもよい。
【0038】
本実施形態に係るハロゲン化アルケンの製造方法において、前記第二の触媒が酸化ケイ素および酸化アルミニウムを含む触媒であってもよい。
【0039】
本実施形態に係るハロゲン化アルケンの製造方法において、前記第二の触媒がアルミノケイ酸塩であってもよい。
【0040】
本実施形態に係るハロゲン化アルケンの製造方法において、前記ハロゲン化アルカンは、下記一般式(1)で示される炭素数が4以下の化合物であってもよい。
【化2】

(一般式(1)中、Rはフッ素原子を示し、Rは水素原子を示し、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子を示し、RおよびRは、フッ素原子、水素原子、または、フッ素で置換されてもよい炭素数1以上2以下のアルカン基を示す。)
【0041】
本実施形態に係るハロゲン化アルケンの製造方法において、上記一般式(1)中、Rは水素原子であってもよい。
【0042】
本実施形態に係るハロゲン化アルケンの製造方法において、前記ハロゲン化アルカンが1,1,1-トリフルオロエタンであってもよい。
【0043】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明の以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。
【実施例0044】
(実施例1)
第一の触媒としてMgF(フッ化マグネシウム)を1.0g使用した。第二の触媒としてシリカとアルミナを含む複合酸化物(Si/Al比=5.8、平均細孔径41Å、平均粒径8μm)を0.05g使用した。第一の触媒と第二の触媒とを混合して得られた混合触媒を反応管(SUS製、外径:1/2インチ)に供給した。反応管を500℃に昇温させ、窒素雰囲気下、窒素と1,1,1-トリフルオロエタン(R143a)との混合ガス(窒素:R143a=95:5)を20mL/分で60分通気して反応させてVDFを製造した(混合触媒とR143aとの接触時間は24g・s/mL)。得られたVDFはガス捕集袋によって回収した。
【0045】
(実施例2)
第二の触媒の量を0.1gに変更し、混合触媒とR143aとの接触時間を25g・s/mLに変更した以外は、実施例1と同様にして、VDFを製造した。
【0046】
(実施例3)
第一の触媒の量を0.7gおよび第二の触媒の量を0.3gに変更し、混合触媒とR143aとの接触時間を23g・s/mLに変更した以外は、実施例1と同様にして、VDFを製造した。
【0047】
(実施例4)
第一の触媒の量を0.5g、第二の触媒の量を0.5gおよび通気時間を80分に変更し、混合触媒とR143aとの接触時間を23g・s/mLに変更した以外は、実施例1と同様にして、VDFを製造した。
【0048】
(実施例5)
第一の触媒の量を0.3g、第二の触媒の量を0.7gおよび通気時間を80分に変更し、混合触媒とR143aとの接触時間を23g・s/mLに変更した以外は、実施例1と同様にして、VDFを製造した。
【0049】
(実施例6)
窒素とR143aとの混合ガスの流量を10mL/minに変更し、混合触媒とR143aとの接触時間を50g・s/mLに変更した以外は、実施例2と同様にして、VDFを製造した。
【0050】
(実施例7)
第二の触媒の量を0.1gに変更し、反応管の昇温温度を550℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、VDFを製造した。
【0051】
(実施例8)
第一の触媒をAlF(フッ化アルミニウム)に変更し、混合触媒とR143aとの接触時間を25g・s/mLに変更した以外は、実施例2と同様にして、VDFを製造した。
【0052】
(実施例9)
第一の触媒として、CaF(フッ化カルシウム)を0.8g使用した。第二の触媒としてシリカとアルミナを含む複合酸化物(実施例1と同じ)を0.2g使用した。第一の触媒と第二の触媒とを混合して得られた混合触媒を実施例1と同じ反応管に供給した。反応管を550℃に昇温させ、窒素雰囲気下、実施例1と同様に、窒素と1,1,1-トリフルオロエタン(R143a)との混合ガスを20mL/分で60分通気して反応させてVDFを製造した(混合触媒とR143aとの接触時間は21g・s/mL)。得られたVDFはガス捕集袋によって回収した。
【0053】
(実施例10)
第二の触媒としてフライアッシュ(石炭灰)を0.1gおよび通気時間を20分に変更し、混合触媒とR143aとの接触時間を25g・s/mLに変更した以外は、実施例1と同様にしてVDFを製造した。
【0054】
(比較例1)
第二の触媒を使用せず、混合触媒とR143aとの接触時間を23g・s/mLに変更した以外は、実施例1と同様にして、VDFを製造した。
【0055】
(比較例2)
第一の触媒を使用せず、第二の触媒の量を1.0gとした以外は、比較例1と同様にして、VDFを製造した。
【0056】
(比較例3)
第一の触媒をCrF(フッ化クロム)に変更した以外は、比較例1と同様にして、VDFを製造した。
【0057】
(比較例4)
第一の触媒をFeF(フッ化鉄)に変更した以外は、比較例1と同様にして、VDFを製造した。
【0058】
(比較例5)
第一の触媒をAlFに変更した以外は、比較例1と同様にして、VDFを製造した。
【0059】
(比較例6)
第一の触媒をCaFに変更した以外は、比較例1と同様にして、VDFを製造した。
【0060】
(比較例7)
第一の触媒をCrFに変更した以外は、実施例2と同様にして、VDFを製造した。
【0061】
(比較例8)
第一の触媒をFeFに変更した以外は、実施例2と同様にして、VDFを製造した。
【0062】
(比較例9)
第一の触媒を0.1g、第二の触媒を0.9gとし、混合触媒とR143aとの接触時間を23g・s/mLに変更した以外は、実施例1と同様にして、VDFを製造した。
【0063】
(評価例)
各実施例および比較例について、窒素とR143aとの混合ガスを通気し、ガス捕集袋に回収された気体成分を、ガスクロマトグラフィで分析した。ガスクロマトグラフィのカラムはアジレント・テクノロジー社製、CP-Pora PLOT Q(登録商標)を使用した。
【0064】
実施例および比較例で使用した触媒、反応条件(接触条件)、および製造したVDFの評価結果を表1~6に示す。
【0065】
表1~6中、R143a転化率(X)は、下記式(A)から求めた。
X=100×(Xa-Xb)/Xa・・・(A)
式(A)中、Xaは、反応器に供給される含フッ素ハロゲン化アルカンのモル量を示す。また、Xbは、反応器出口からの流出ガスに含まれる含フッ素ハロゲン化アルカンのモル量を示す。
【0066】
また、選択率Y(%)は、下式(B)から求めた。
Y=100×Ya/(Xa-Xb)・・・(B)
式(B)中、XaおよびXbは上述の定義の通りである。Yaは、反応器出口からの流出ガスに含まれるハロゲン化アルケンのモル量である。
【0067】
反応器出口からの流出ガスに含まれる含フッ素ハロゲン化アルカンのモル量(Xb)およびハロゲン化アルケンのモル量(Ya)は、反応器出口からの流出ガスをガスクロマトグラフィで分析した結果から算出した。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】
【表5】
【0073】
【表6】
【0074】
表1~6に示すように、触媒として、アルカリ土類金属または周期表の第13族金属およびフッ素を含む第一の触媒と、ケイ素およびアルミニウムを含む第二の触媒とを使用することによって、高選択率および高転化率で、ハロゲン化アルケンを得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の製造方法によって得られるハロゲン化アルケンを重合して得られるポリマーは、電気・電子分野、石油ガス分野および自動車分野等、幅広い分野において利用できる。