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  • 特開-ハロゲン化アルケンの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131518
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】ハロゲン化アルケンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/25 20060101AFI20230914BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20230914BHJP
   B01J 23/02 20060101ALI20230914BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230914BHJP
【FI】
C07C17/25
C07C21/18
B01J23/02 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036334
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001100
【氏名又は名称】株式会社クレハ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真理
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 賢輔
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BC09A
4G169BC09B
4G169CB35
4G169CB63
4G169DA06
4G169EA01X
4G169EA01Y
4H006AA02
4H006AC13
4H006BA00
4H006BB61
4H006BC19
4H006EA03
4H039CA29
4H039CG20
(57)【要約】
【課題】安価な触媒を使用して、反応開始直後から高選択率でハロゲン化アルケンを得る方法を実現する。
【解決手段】本発明のハロゲン化アルケンの製造方法は、フッ素原子を含み炭素数が4以下であるハロゲン化アルカンと、石炭灰と、を接触させて、ハロゲン化アルカンを脱ハロゲン化水素させる工程を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素原子を含み炭素数が4以下であるハロゲン化アルカンと、
石炭灰と、を接触させて、前記ハロゲン化アルカンを脱ハロゲン化水素させる工程を含むことを
特徴とする、ハロゲン化アルケンの製造方法。
【請求項2】
前記石炭灰がフライアッシュである、請求項1に記載のハロゲン化アルケンの製造方法。
【請求項3】
前記石炭灰を供給した反応器に、前記ハロゲン化アルカンを通気させることにより前記石炭灰と前記ハロゲン化アルカンとを接触させるものであって、
前記ハロゲン化アルカンと前記石炭灰の接触時間は10g・s/mL以上150g・s/mL以下である、請求項1または2に記載のハロゲン化アルケンの製造方法。
【請求項4】
前記ハロゲン化アルカンは、下記一般式(1)で示される化合物である、請求項1~3のいずれか1項に記載のハロゲン化アルケンの製造方法。
【化1】
(一般式(1)中、
およびRは水素原子を示し、
はフッ素原子を示し、
は、水素原子、フッ素原子、または塩素原子を示し、
およびRは、フッ素原子、塩素原子、水素原子、または、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1以上2以下のアルカン基を示し、
かつR~Rの少なくとも1つはフッ素原子または塩素原子である。)
【請求項5】
脱ハロゲン化水素させる工程が脱フッ化水素工程である、請求項1~4のいずれか1項に記載のハロゲン化アルケンの製造方法。
【請求項6】
前記ハロゲン化アルカンが1,1,1-トリフルオロエタンである、請求項1~5のいずれか1項に記載のハロゲン化アルケンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン化アルケンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン化アルケンの製造方法として、複数のハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルカンから、ハロゲン化水素を脱離させる製造方法が知られている。例えば、特許文献1には、フルオロアルカンを金属触媒と接触させて、脱フッ化水素反応によってフルオロオレフィンを製造する方法が記載されている。また、特許文献2および特許文献3には、ハロゲン化ブタン化合物を活性炭と接触させて、脱ハロゲン化水素によってハロゲン化ブテン化合物を製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-196347号公報
【特許文献2】特開2021-6515号公報
【特許文献3】特開2021-138705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたフルオロオレフィンを製造する方法、並びに、特許文献2および3に記載されたハロゲン化ブテン化合物を製造する方法は、脱ハロゲン化水素反応の触媒として酸化クロムおよび酸化アルミニウム等の金属触媒、または活性炭が使用されており、触媒に係るコストが嵩むという問題がある。また金属触媒および活性炭はフッ素化することによってより強い活性を示すようになるが、フッ素化するために要するフッ素化剤の使用により、よりコストが嵩むという問題がある。
【0005】
さらに発明者らが検討を行った結果、触媒として酸化クロムおよび酸化アルミニウム等を用いると、脱ハロゲン化水素反応の開始直後における選択率が低くなることを見出した。脱ハロゲン化水素反応において、未反応のハロゲン化アルカンを回収し再び原料として反応系に戻すことができるが、選択率が低いと副生成物が製造されてしまうため、再利用するハロゲン化アルカンを得にくいといった問題も生じてくる。そのため、コスト低減の観点から、脱ハロゲン化水素反応の開始直後から選択率の高いハロゲン化アルケンの製造方法が求められている。
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、安価な触媒を使用して、反応開始直後から高選択率でハロゲン化アルケンを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、触媒として安価な石炭灰を使用することによって、反応開始直後から高選択率でハロゲン化アルケンを製造できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明の一態様に係るハロゲン化アルケンの製造方法は、フッ素原子を含み炭素数が4以下であるハロゲン化アルカンと、石炭灰と、を接触させて、前記ハロゲン化アルカンを脱ハロゲン化水素させる工程を含むことを特徴とする、ハロゲン化アルケンの製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、安価な触媒を使用して、反応開始直後から高選択率でハロゲン化アルケンを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例に係る反応時間に対する選択率の変化を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0012】
本実施形態に係るハロゲン化アルケンの製造方法(以下、「本実施形態の製造方法」と示す場合がある)は、触媒と、フッ素原子を含むハロゲン化アルカンと、を接触させて、ハロゲン化アルカンを脱ハロゲン化水素する工程を含む。以下、当該工程を、「脱ハロゲン化水素工程」と示す場合がある。また、「フッ素原子を含むハロゲン化アルカン」を「含フッ素ハロゲン化アルカン」と示す場合がある。本実施形態の製造方法によって製造されるフッ素原子を含むハロゲン化アルケンについては後述する。
【0013】
触媒と含フッ素ハロゲン化アルカンとを接触させることによって、フッ素原子を含むハロゲン化アルカンを脱ハロゲン化水素反応させて、ハロゲン化アルケンが得られる。脱ハロゲン化水素反応の例として、脱フッ化水素反応等が挙げられる。
【0014】
(触媒)
本実施形態の製造方法において用いられる触媒は、石炭灰である。石炭灰の例として、ボトムアッシュおよびフライアッシュが挙げられる。触媒は、ボトムアッシュおよびフライアッシュの何れかの石炭灰であってもよく、ボトムアッシュおよびフライアッシュの混合物であってもよい。より高い転化率を達成できる点で、触媒はフライアッシュであることが好ましい。
【0015】
(石炭灰)
石炭灰は、反応に用いる前に乾燥させてもよく、乾燥させなくてもよい。乾燥させる場合には、250℃程度で1時間乾燥させる。水分除去の観点から、減圧下もしくは不活性ガス気流下で乾燥させることが好ましい。
【0016】
石炭灰は、反応に用いる前に強熱により揮発性物質を除去してもよく、除去しなくてもよい。強熱する場合には、800℃程度で30分以上強熱させる。未燃炭素の除去の観点から、900℃以上で強熱させることが好ましい。
【0017】
フライアッシュは主に、ガラス相(非結晶質(Al―Si))、結晶質シリカ(SiO)、結晶質アルミノケイ酸塩(3Al・2SiO)、未燃炭素から構成される。また、フライアッシュは上記以外の化合物が含まれていてもよい。これらの化合物の含有比は特に限定されないが、反応効率および反応器の汚染抑制の観点から、未燃炭素の比率の指標を示す強熱減量は30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。
【0018】
フライアッシュは、直径または長径が0.2mm以下の球状または不定形の灰粒子である。これらの灰粒子の粒径は特に限定されないが、メディアン径(個数基準)が0.05mm以下の微粒子であることが好ましい。
【0019】
ボトムアッシュは、塊状石炭灰であり、反応効率の観点から破砕機などで破砕し、粒度調整したものを用いることが好ましい。
【0020】
本明細書において、「転化率」は、脱ハロゲン化水素工程において、反応器に供給される含フッ素ハロゲン化アルカンのモル量に対する、反応器出口からの流出ガスに含まれる含フッ素ハロゲン化アルカン以外の化合物の合計モル量の割合(モル%)を示す。また「選択率」は、脱ハロゲン化水素工程において、反応器出口からの流出ガスにおける含フッ素ハロゲン化アルカン以外の化合物の合計モル量に対する、当該流出ガスに含まれるハロゲン化アルケンのモル量の割合(モル%)を指す。
【0021】
(含フッ素ハロゲン化アルカン)
含フッ素ハロゲン化アルカンは、炭素数が4以下であるハロゲン化アルカンである。含フッ素ハロゲン化アルカンは炭素数が2であってもよく、炭素数が3であってもよい。含フッ素ハロゲン化アルカンに含まれるハロゲン原子の数は2以上であり、フッ素原子の数が1以上含まれることが好ましい。
【0022】
含フッ素ハロゲン化アルカンは、下記一般式(1)で示される化合物である。
【化1】
一般式(1)中、RおよびRは水素原子を示し、Rはフッ素原子を示し、Rは水素原子、フッ素原子または塩素原子を示し、RおよびRは、フッ素原子、塩素原子、水素原子、または、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1以上2以下のアルカン基を示す。また、R~Rの少なくとも1つはフッ素原子または塩素原子である。
【0023】
含フッ素ハロゲン化アルカンとして、例えば、1,1-ジフルオロエタン、1,2-ジフルオロエタン、1,1,1-トリフルオロエタン、1,1,2-トリフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロプロパン、1,1,1-トリフルオロプロパン、1,1,3-トリフルオロプロパン、1,1,2-トリフルオロプロパン、1,1,1,3-テトラフルオロプロパン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,1,1,2,2,3,3-ヘプタフルオロプロパン、1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、1,1,2-トリフルオロブタン、1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン、1-クロロ-2,2-ジフルオロエタン、1,2-ジクロロ―1,1-ジフルオロエタン等が挙げられる。
【0024】
(脱ハロゲン化水素工程の詳細および各条件)
脱ハロゲン化水素工程においては、触媒と含フッ素ハロゲン化アルカンとを接触させて、前記含フッ素ハロゲン化アルカンを脱ハロゲン化させる。例えば、反応系に触媒を供給後、含フッ素ハロゲン化アルカンを当該反応系に供給することによって、当該触媒と含フッ素ハロゲン化アルカンとを接触させてもよい。一例として、本実施形態の脱ハロゲン化水素工程では、石炭灰を供給した反応器に、含フッ素ハロゲン化アルカンを通気させることにより石炭灰と含フッ素ハロゲン化アルカンとを接触させる。
【0025】
上記反応系内の温度の下限は、より高い転化率を達成できる点で、400℃以上が好ましく、450℃以上がより好ましい。また、当該反応系内の温度の上限は、副生成物の生成を抑制する点で、600℃以下が好ましく、550℃以下がより好ましい。
【0026】
脱ハロゲン化水素工程において、不活性ガス雰囲気下、触媒と含フッ素ハロゲン化アルカンとを接触させてもよい。不活性ガスとして、例えば、窒素ガス、ヘリウムおよびアルゴン等が挙げられる。
【0027】
上記反応系内における、含フッ素ハロゲン化アルカンと触媒の接触時間(W/F)[W:触媒の重量(g)、F:ハロゲン化アルカンの流量(mL/s)]は、1g・s/mL以上であることが好ましく、10g・s/mL以上であることが好ましい。また、200g・s/mL以下であることが好ましく、150g・s/mL以下であることがより好ましい。接触時間が上記範囲内であると、より高い選択率を達成することができる。
【0028】
上記反応系で使用する反応器の材質としては、鉄、ニッケル、クロム、モリブテン、これらを主成分とする合金等が挙げられる。
【0029】
上記反応器内の圧力は、より効率的に脱ハロゲン化水素反応を進行させて高い選択率でハロゲン化アルケンを得ることができる点から、常圧以上2MPa・G以下であることが好ましく、常圧以上1MPa・G以下であることがより好ましく、常圧以上0.5MPa・G以下であることがさらに好ましい。
【0030】
上述の通り、触媒と含フッ素ハロゲン化アルカンとを接触させることによって、含フッ素ハロゲン化アルカンが脱ハロゲン化水素反応して、ハロゲン化アルケンが得られる。
【0031】
(ハロゲン化アルケン)
本実施形態の製造方法によって製造されるハロゲン化アルケンは、フッ素原子を含むハロゲン化アルケンである。ハロゲン化アルケンの例として、フッ化ビニル(VF)、フッ化ビニリデン(VDF、1,1-ジフルオロエチレン)、1,1,2-トリフルオロエチレン等が挙げられる。
【0032】
本実施形態の製造方法のもっとも好ましい態様の1つは、触媒と1,1,1-トリフルオロエタンとを接触させて、1,1,1-トリフルオロエタンを脱ハロゲン化水素させる工程を含む、VDFの製造方法である。
【0033】
〔まとめ〕
本実施形態に係るハロゲン化アルケンの製造方法は、フッ素原子を含み炭素数が4以下であるハロゲン化アルカンと、石炭灰と、を接触させて、前記ハロゲン化アルカンを脱ハロゲン化水素させる工程を含む。
【0034】
本実施形態に係るハロゲン化アルケンの製造方法において、前記石炭灰がフライアッシュであってもよい。
【0035】
本実施形態に係るハロゲン化アルケンの製造方法において、前記石炭灰を供給した反応器に、前記ハロゲン化アルカンを通気させることにより前記石炭灰と前記ハロゲン化アルカンとを接触させるものであって、前記ハロゲン化アルカンと前記石炭灰の接触時間は10g・s/mL以上150g・s/mL以下であってもよい。
【0036】
本実施形態に係るハロゲン化アルケンの製造方法において、前記ハロゲン化アルカンは、下記一般式(1)で示される化合物であってもよい。
【化2】
(一般式(1)中、RおよびRは水素原子を示し、Rはフッ素原子を示し、Rは、水素原子、フッ素原子、または塩素原子を示し、RおよびRは、フッ素原子、塩素原子、水素原子、または、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1以上2以下のアルカン基を示し、かつR~Rの少なくとも1つはフッ素原子または塩素原子である。)
【0037】
本実施形態に係るハロゲン化アルケンの製造方法において、前記脱ハロゲン化水素させる工程は脱フッ化水素工程であってもよい。
【0038】
本実施形態に係るハロゲン化アルケンの製造方法において、前記ハロゲン化アルカンが1,1,1-トリフルオロエタンであってもよい。
【0039】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明の以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。
【実施例0040】
(実施例1)
触媒としてフライアッシュを1g使用した。触媒を反応管(SUS製、外径:1/2インチ)に供給した。反応管を500℃に昇温させ、窒素雰囲気下、窒素と1,1,1-トリフルオロエタン(R143a)との混合ガス(窒素:R143a=95:5)を20mL/分で20分通気して反応させてVDFを製造した(触媒とR143aとの接触時間は23g・s/mL)。得られたVDFはガス捕集袋によって回収した。
【0041】
(実施例2)
触媒の量を5gに変更し、触媒とR143aとの接触時間を114g・s/mLに変更した以外は、実施例1と同様にして、VDFを製造した。
【0042】
(実施例3)
反応管の昇温温度を600℃に変更し、触媒とR143aとの接触時間を101g・s/mLに変更した以外は、実施例2と同様にして、VDFを製造した。
【0043】
(実施例4)
触媒としてボトムアッシュを3g使用し触媒とR143aとの接触時間を60g・s/mLに変更した以外は、実施例1と同様にして、VDFを製造した。
【0044】
(実施例5)
触媒としてボトムアッシュを3g使用した以外は、実施例3と同様にして、VDFを製造した。
【0045】
(比較例1)
触媒をSiO/Al(シリカアルミナ)に変更した以外は、実施例1と同様にして、VDFを製造した。
【0046】
(比較例2)
触媒をゼオライトに変更した以外は、実施例1と同様にして、VDFを製造した。
【0047】
(比較例3)
触媒をCrF xHOに変更し、触媒とR143aとの接触時間を14g・s/mLに変更した以外は、実施例1と同様にして、VDFを製造した。
【0048】
(比較例4)
触媒をAlFに変更した以外は、比較例3と同様にして、VDFを製造した。
【0049】
(評価例)
各実施例および比較例について、窒素とR143aとの混合ガスを通気し、ガス捕集袋に回収された気体成分を、ガスクロマトグラフィで分析した。ガスクロマトグラフィのカラムはアジレント・テクノロジー社製、CP-Pora PLOT Q(登録商標)を使用した。
【0050】
実施例および比較例で使用した触媒、反応条件(接触条件)、および製造したVDFの評価結果を表1~3および図1に示す。
【0051】
表1~3中、R143a転化率(X)は、下記式(A)から求めた。
X=100×(Xa-Xb)/Xa・・・(A)
式(A)中、Xaは、反応器に供給される含フッ素ハロゲン化アルカンのモル量を示す。また、Xbは、反応器出口からの流出ガスに含まれる含フッ素ハロゲン化アルカンのモル量を示す。
【0052】
また、選択率Y(%)は、下式(B)から求めた。
Y=100×Ya/(Xa-Xb)・・・(B)
式(B)中、XaおよびXbは上述の定義の通りである。Yaは、反応器出口からの流出ガスに含まれるハロゲン化アルケンのモル量である。
【0053】
反応器出口からの流出ガスに含まれる含フッ素ハロゲン化アルカンのモル量(Xb)およびハロゲン化アルケンのモル量(Ya)は、反応器出口からの流出ガスをガスクロマトグラフィで分析した結果から算出した。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
表1、2に示すように、触媒として、安価な石炭灰を使用することによって、高選択率かつ低コストでハロゲン化アルケンを得ることができた。
【0058】
また、図1に示すように、触媒として、石炭灰を使用することによって、反応時間10分後の時点で約100%の選択率を示し、さらに60分後もその高い選択率を維持することができた。これにより、副生成物がほとんど生じないため、未反応のハロゲン化アルカンを回収し、再び原料として使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の製造方法によって得られるハロゲン化アルケンを重合して得られるポリマーは、電気・電子分野、石油ガス分野および自動車分野等、幅広い分野において利用できる。
図1