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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131525
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】治療支援装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/10 20160101AFI20230914BHJP
   A61B 17/3207 20060101ALI20230914BHJP
   A61B 17/22 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
A61B34/10
A61B17/3207
A61B17/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036347
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【弁理士】
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】多田 裕一
(72)【発明者】
【氏名】桑野 陽一郎
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160EE30
4C160MM33
4C160MM36
(57)【要約】
【課題】患者の病変部に応じて適切なデバイスや治療方法を自動で特定して術者の負担を低減できる治療支援装置を提供する。
【解決手段】血管内の病変部Lを切削する治療を支援する制御部111を備えた治療支援装置110であって、制御部111は、複数種類のデバイスの各々の名称および特徴情報を含むデバイス情報Aと、患者の病変部Lの情報を含む治療対象情報Bと、を受信する情報管理部114と、デバイス情報Aおよび治療対象情報Bから、治療対象情報Bに適するデバイスの種類を順位付ける算出部115と、情報を表示可能な表示部112へ順位付けた情報を送信する情報送信部116と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内の病変部を切削する治療を支援する演算を行う制御部を備えた治療支援装置であって、
前記制御部は、複数種類のデバイスの各々の名称および特徴情報を含むデバイス情報と、患者の病変部の情報を含む治療対象情報と、を受信する情報管理部と、
前記デバイス情報および前記治療対象情報から、前記治療対象情報に適する前記デバイスの種類を順位付ける算出部と、
情報を表示可能な表示部へ前記順位付けた情報を送信する情報送信部と、を有する治療支援装置。
【請求項2】
前記デバイス情報は、複数種類のアテレクトミーデバイスの各々の名称および特徴情報を含むアテレクトミーデバイス情報を含み、
前記算出部は、前記アテレクトミーデバイス情報および前記治療対象情報から、前記治療対象情報に適する前記アテレクトミーデバイスの種類を順位付ける請求項1に記載の治療支援装置。
【請求項3】
前記治療対象情報は、先に行った前記病変部の切削時および/または切削後の前記病変部の情報を含む請求項2に記載の治療支援装置。
【請求項4】
前記治療対象情報は、超音波による断面画像情報を含み、
前記算出部は、前記断面画像情報から前記病変部の硬さを算出し、算出された硬さが大きいほど、前記アテレクトミーデバイス情報としてモータの回転数が大きい又は切削部にダイヤモンドコーティングを付与されたアテレクトミーデバイスの順位を高く算出する請求項2または3に記載の治療支援装置。
【請求項5】
前記デバイス情報は、アテレクトミーデバイスの目的位置への到達を補助可能な複数種類のアクセスデバイスの各々の名称および特徴情報を含むアクセスデバイス情報を有し、
前記算出部は、前記アクセスデバイス情報および前記治療対象情報から、前記治療対象情報に適する前記アクセスデバイスの種類を順位付ける請求項1~4のいずれか1項に記載の治療支援装置。
【請求項6】
前記デバイス情報は、アテレクトミーデバイスによる切削後に使用可能な複数種類の治療デバイスの各々の名称および特徴情報を含む治療デバイス情報を含み、
前記算出部は、前記治療デバイス情報および前記治療対象情報から、前記治療対象情報に適する前記治療デバイスの種類を順位付ける請求項1~5のいずれか1項に記載の治療支援装置。
【請求項7】
前記算出部は、病変部を切削するアテレクトミーデバイスを駆動する駆動装置により前記アテレクトミーデバイスを把持する把持力を算出し、
前記提示部は、前記把持力を前記報知部へ送信する請求項1~6に記載の治療支援装置。
【請求項8】
血管内の病変部を切削する治療を支援する演算を行う制御部を備えた治療支援装置であって、

前記制御部は、複数種類の治療方法の各々の特徴情報を含む治療方法情報と、患者の病変部の情報を含む治療対象情報と、を受信する情報管理部と、
前記治療方法情報および前記治療対象情報から、前記治療対象情報に適する前記治療方法の種類を順位付ける算出部と、
情報を表示可能な表示部へ前記順位付けた情報を送信する情報送信部と、を有する治療支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体管腔の病変部を切削する治療を支援する治療支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、血管等の生体管腔から血栓等を切削するアテレクトミーデバイスが使用されている。アテレクトミーデバイスは、血管内のプラークや血栓などの病変部を切削する切削部を備えている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2017-521153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
患者の症状に合わせたアテレクトミーデバイスや治療方法の選択は、術者の経験に基づいて行われる。しかしながら、症状は患者により異なるため、最適なデバイスや治療方法を選択することは容易ではない。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、患者の病変部に応じて適切なデバイスや治療方法を自動で特定して術者の負担を低減できる治療支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明に係る治療支援装置は、血管内の病変部を切削する治療を支援する演算を行う制御部を備えた治療支援装置であって、前記制御部は、複数種類のデバイスの各々の名称および特徴情報を含むデバイス情報と、患者の病変部の情報を含む治療対象情報と、を受信する情報管理部と、前記デバイス情報および前記治療対象情報から、前記治療対象情報に適する前記デバイスの種類を順位付ける算出部と、情報を表示可能な表示部へ前記順位付けた情報を送信する情報送信部と、を有する。
【0007】
上記目的を達成する本発明に係る治療支援装置の他の態様は、血管内の病変部を切削する治療を支援する演算を行う制御部を備えた治療支援装置であって、前記制御部は、複数種類の治療方法の各々の特徴情報を含む治療方法情報と、患者の病変部の情報を含む治療対象情報と、を受信する情報管理部と、前記治療方法情報および前記治療対象情報から、前記治療対象情報に適する前記治療方法の種類を順位付ける算出部と、情報を表示可能な表示部へ前記順位付けた情報を送信する情報送信部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成した治療支援装置は、患者の病変部に応じて適切なデバイスの種類を自動で特定して表示部に表示させることができるため、術者の負担を低減できる。
【0009】
上記のように構成した治療支援装置の他の態様は、患者の病変部に応じて適切な治療方法の種類を自動で特定して表示部に表示させることができるため、術者の負担を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る治療支援装置を備えた医療システムの全体正面図である。
図2】アテレクトミーデバイスの先端部付近拡大断面図である。
図3】医療システムの構成図である。
図4】第1実施形態における制御部の動作を示すフローチャートである。
図5】推奨された複数のアテレクトミーデバイスを選択可能に表示した表示部の画面を示す図である。
図6】推奨された複数のアクセスデバイスを選択可能に表示した表示部の画面を示す図である。
図7】推奨された複数の治療デバイスを選択可能に表示した表示部の画面を示す図である。
図8】推奨された複数の治療方法を選択可能に表示した表示部の画面を示す図である。
図9】病変部の近くに切削部を配置した状態を示す断面図である。
図10】第2実施形態に係る治療支援装置の制御部の構成図である。
図11】第2実施形態における制御部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面における各部材の大きさや比率は、説明の都合上誇張され実際の大きさや比率とは異なる場合がある。
【0012】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る治療支援装置110は、血管内の物体を切削する治療に使用するアテレクトミーデバイス10を、複数種類から適切に支援を行う装置である。アテレクトミーデバイス10は、急性下肢虚血や深部静脈血栓症において、血管内に挿入され、血栓、プラーク、アテローム、石灰化病変等の病変部(物体)を破壊して排出するために用いられる。本明細書では、デバイスの血管に挿入する側を「先端側」、操作する側を「基端側」と称することとする。なお、破壊して排出する病変部は、必ずしも血栓、プラーク、アテローム、石灰化病変に限定されず、生体管腔内に存在し得る物体は、全て該当し得る。
【0013】
治療支援装置110は、図1~3に示すように、医療システム1の一部を構成している。医療システム1は、先端部に病変部を破壊する切削部30が配置されたアテレクトミーデバイス10と、アテレクトミーデバイス10の位置を調整する駆動装置100と、アテレクトミーデバイス10に関する情報を検出する検出部120と、治療支援装置110とを有している。
【0014】
アテレクトミーデバイス10は、基端側へ物体を通すことが可能な排出ルーメン21を備えた長尺なシャフト部20と、シャフト部20の先端部に配置される切削部30と、シャフト部20の基端部が連結される操作部40とを備えている。アテレクトミーデバイス10は、さらに、シャフト部20に設けられる駆動シャフト22を回転させる回転駆動部70と、シャフト部20に設けられる排出ルーメン21に連通する吸引駆動部80と、吸引駆動部80が吸引した廃液が排出される排出通路50と、排出通路50に連通して排出通路50を介して廃液を受け取る排液バッグ90とを有している。
【0015】
シャフト部20は、回転駆動部70により回転駆動される駆動シャフト22と、駆動シャフト22を回転可能に収容する外管23と、外管23の先端部の側面に固定される先端チューブ26とを備えている。
【0016】
駆動シャフト22は、切削部30に連結されて、回転力を切削部30に伝達する。駆動シャフト22は、柔軟で、かつ基端側から作用する回転の動力を先端側に伝達可能な特性を有する。駆動シャフト22は、切削された物体を基端側へ移動させるための排出ルーメン21が形成されている。駆動シャフト22は、外管23を貫通し、先端部に切削部30が固定されている。駆動シャフト22の基端部は、回転駆動部70に連結されている。駆動シャフト22は、先端に、排出ルーメン21が開口する先端開口部24を有している。先端開口部24は、切削して形成される吸引対象物である切削片が入り込む入口である。駆動シャフト22の基端部は、排出ルーメン21に吸引力を作用させる吸引駆動部80に連結される。なお、排出ルーメン21は、駆動シャフト22の内部ではなく、外管23と駆動シャフト22の間や、駆動シャフト22の内側に設けられる他の管体の内部に形成されてもよい。
【0017】
切削部30は、血栓、プラークや石灰化病変等の物体を切削して小さくする部材である。したがって、“切削”とは、接触する物体に力を作用させて、物体を小さくすることを意味する。切削における力の作用方法や、切削後の物体の形状や形態は、限定されない。切削部30は、上述した物体を切削できる強度を有している。切削部30は、駆動シャフト22の先端部に固定されている。切削部30は、駆動シャフト22よりも先端側へ突出する円筒である。切削部30は、中空であり、排出ルーメン21と連通してもよい。切削部30の先端は、鋭利な刃を備えている。なお、刃の形状は、特に限定されない。切削部30は、刃ではなく、微小な砥粒を多数有してもよい。
【0018】
回転駆動部70は、操作部40の内部に配置されて、駆動シャフト22を回転させる。回転駆動部70は、例えばモータである。回転駆動部70の回転速度は、特に限定されないが、例えば5,000~200,000rpmである。
【0019】
吸引駆動部80は、操作部40の内部に配置される。吸引駆動部80は、例えばポンプであり、駆動シャフト22の排出ルーメン21の基端部に連通し、排出ルーメン21に吸引力(陰圧)を作用させる。吸引駆動部80は、排出ルーメン21を介して吸引した排液を、下流側へ移動させて、排液バッグ90へ排出する。吸引駆動部80は、例えばペリスタルティックポンプであるが、ダイヤフラム式ポンプであってもよい。ペリスタルティックポンプは、回転する複数のローラによりチューブを部分的に潰し、潰した位置を移動させることで、チューブの内部の流体を移動させる。
【0020】
外管23は、可撓性を備える管体であり、駆動シャフト22を回転可能に収容する。外管23は、基端部が操作部40に固定されている。外管23は、先端部に、所定の角度で曲がる湾曲部を有してもよい。これにより、外管23を回転させることで、外管23の湾曲部よりも先端側の位置を変更でき、切削部30を除去する物体に接触しやすくできる。
【0021】
先端チューブ26は、可撓性を備える管体であり、外管23の先端部の外周面に固定されている。先端チューブ26は、内部にガイドワイヤWを挿入可能なガイドワイヤルーメン27を有している。外管23が回転すると、外管23に対する先端チューブ26の回転方向の位置が変化する。
【0022】
排出通路50は、吸引駆動部80と排液バッグ90の間に配置され、吸引駆動部80から排出される廃液を、排液バッグ90へ搬送する。排出通路50は、術者が内部の流れを目視できるように、透明または半透明であることが好ましい。
【0023】
駆動装置100は、シャフト部20を軸心方向Xに沿って移動させる軸心方向位置調整駆動部101と、シャフト部20を軸心方向Xを中心に回転させる回転方向位置調整駆動部102とを有している。
【0024】
軸心方向位置調整駆動部101は、アテレクトミーデバイス10の操作部40および/またはシャフト部20を把持して連結し、操作部40および/またはシャフト部20を軸心方向Xに沿って直線的に移動させる直動駆動機構を有している。直動駆動機構は、回転することで外周面に接するシャフト部20を移動させるローラを有してもよい。直動駆動機構は、制御部111により駆動を制御される。これにより、軸心方向位置調整駆動部101は、シャフト部20および切削部30を軸心方向Xに沿って移動させることができる。
【0025】
回転方向位置調整駆動部101は、アテレクトミーデバイス10の操作部40および/またはシャフト部20を把持して連結し、操作部40および/またはシャフト部20を軸心を中心に回転させる回転駆動機構を有している。回転駆動機構は、制御部111により駆動を制御される。これにより、回転方向位置調整駆動部101は、シャフト部20を軸心を中心に回転させることができる。なお、軸心方向位置調整駆動部101および回転方向位置調整駆動部102を有する駆動装置100は、3次元的に動作可能なロボットアーム等であってもよい。
【0026】
アテレクトミーデバイス10に関する情報を検出する検出部120は、回転検出部121、振動検出部122、電流検出部123、電圧検出部124、温度検出部127、力検出部125、画像検出部126および治療対象画検出部128を有している。
【0027】
切削部30の回転数が、アテレクトミーデバイス10や駆動装置100に設けられる回転検出部121により検出される。なお、回転検出部121は、切削部30の回転を直接検出するのではなく、駆動シャフト22または回転駆動部70の回転数を検出して、この結果から切削部30の回転数を特定してもよい。回転検出部121は、特に限定されないが、例えば光学式、磁気式等の回転計を適用できる。
【0028】
切削部30や回転駆動部70が発する音や振動が、アテレクトミーデバイス10や駆動装置100の切削部30や回転駆動部70の近傍に設けられる振動検出部122により検出される。振動検出部122は、特に限定されないが、例えば音を検出するマイクロホンや、振動を検出する加速度計等である。
【0029】
回転駆動部70へ流れる電流値が、アテレクトミーデバイス10や駆動装置100に設けられる電流検出部123により検出される。電流検出部123は、例えば電流計である。
【0030】
回転駆動部70へ供給されるエネルギ量が、アテレクトミーデバイス10や駆動装置100に設けられる電流検出部123および電圧検出部124により検出される。電圧検出部124は、例えば電圧計である。また、上述のエネルギ量および回転数から、トルクを算出可能である。
【0031】
回転駆動部70の近傍の温度が、アテレクトミーデバイス10や駆動装置100の回転駆動部70の近傍に設けられる温度検出部127により検出される。温度検出部127は、例えば熱電対や赤外線温度センサ等である。
【0032】
アテレクトミーデバイス10が受ける反力や、アテレクトミーデバイス10と駆動装置100との間の摩擦抵抗値が、例えばアテレクトミーデバイス10や駆動装置100に設けられる力検出部125により検出される。力検出部125は、例えばゲージ式や圧電式のセンサである。
【0033】
アテレクトミーデバイス10と駆動装置100との間の摩擦抵抗値が、例えばアテレクトミーデバイス10や駆動装置100に設けられるゲージ式や圧電式等の力センサにより検出される。
【0034】
シャフト部20の変形が、例えばアテレクトミーデバイス10や駆動装置100に設けられてシャフト部20を撮影可能な画像検出部126により検出される。画像検出部126は、例えばカメラである。
【0035】
画像検出部126は、切断片の大きさや量を検出するために使用されてもよい。この場合、画像検出部126は、排出通路50や排液バッグ90の内部を外部から撮影できる位置に配置される。
【0036】
病変部を含む治療対象の画像情報が、治療対象画検出部128により検出される。治療対象画検出部128は、例えば血管内超音波(IVUS:Intravascular Ultrasound)、光干渉断層撮影(OCT:Optical Coherence Tomography)、カメラによる撮像、超音波画像診断(Ultrasound diagnostic imaging)、コンピュータ断層撮影(CT:computed tomography)、磁気共鳴画像診断(MRI:Magnetic Resonance Imaging)等により、2次元的または3次元的な画像情報を検出する。
【0037】
治療支援装置110は、記憶回路および演算回路を備えた制御部111を有している。記憶回路は、プログラムや、各種パラメータを格納する。演算回路は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、記憶回路からプログラムや各種パラメータを読み込み、演算処理を行うことができる。
【0038】
治療支援装置110は、さらに、術者が操作や各種設定を行えるように、情報を表示するためのモニター等の表示部112と、タッチパネル、キーボードおよび/またはマウス等の入力部113とを有している。治療支援装置110は、例えばコンピュータである。
【0039】
制御部111は、各種情報を受信して記憶し管理する情報管理部114と、適切なデバイスを算出する算出部115と、算出結果を表示部112へ送信して表示部112に表示させる情報送信部116とを有している。制御部111は、演算の少なくとも一部を通信ネットワークを介して接続される外部のサーバ装置を利用して、もしくは外部のサーバ装置を利用せずに演算可能である。
【0040】
情報管理部114で受信して管理する情報は、デバイス情報Aと、治療対象情報Bと、治療方法情報Cとを含む。デバイス情報は、アテレクトミーデバイス情報と、アクセスデバイス情報と、治療デバイス情報と、治療方法情報とを含んでいる。
【0041】
アテレクトミーデバイス情報は、複数種類のアテレクトミーデバイス10に関する情報を含んでいる。アテレクトミーデバイス情報は、各々の種類のアテレクトミーデバイス10の名称および特徴情報を含んでいる。なお、本明細書において、デバイスや方法の名称は、そのデバイスや方法の種類を特定できるものであれば特に限定されず、例えば製品名、型番、略称または識別子等であってもよい。特徴情報は、例えば寸法や性能等である。寸法は、例えば、アテレクトミーデバイス10の血管内に挿入可能な範囲の長軸方向に沿う有効長さ、切削部のコーティング有無(例えば、ダイヤモンドコーティング)、モータの回転数、シャフト部20の外径、切削部30の外径等である。性能は、例えば、切削対象となる病変部の性質(例えば、プラーク等の柔らかい病変部、石灰化した硬い病変部、柔らかい病変部と硬い病変部が混在する混合病変部等)、治療対象となる血管の位置、治療対象となる血管の内径等である。
【0042】
アクセスデバイス情報は、複数種類のアクセスデバイスに関する情報を含んでいる。アクセスデバイスは、アテレクトミーデバイス10の目的位置への到達を補助可能なデバイスであり、例えばガイドワイヤ、ガイディングシース、イントロデューサキット等である。アクセスデバイス情報は、各々の種類のアクセスデバイスの名称および特徴情報を含んでいる。特徴情報は、例えば寸法や性能等である。寸法は、例えば、血管内へ挿入可能な範囲の長軸方向に沿う有効長さ、外径、内径等である。性能は、例えば、治療対象となる血管、治療対象となる血管の内径等である。
【0043】
治療デバイス情報は、複数種類の治療デバイスに関する情報を含んでいる。治療デバイスは、アテレクトミーデバイス10により病変部の少なくとも一部を切除された血管へ治療を施すことが可能なデバイスであり、例えばバルーンカテーテル、バルーンの表面に薬剤を被覆させたドラックコーテッドバルーンカテーテル、ステント留置用カテーテル、カッティングバルーンカテーテル等である。治療デバイス情報は、各々の種類の治療デバイスの名称および特徴情報を含んでいる。特徴情報は、例えば寸法や性能等である。寸法は、例えば、治療デバイスの血管内へ挿入可能な範囲の長軸方向に沿う有効長さ、拡張したバルーンやステントの外径、バルーンやステントの長軸方向の長さ、バルーンの拡張圧力、シャフトの外径、ガイドワイヤルーメンの内径等である。性能は、例えば、治療対象となる血管の位置、治療対象となる血管の内径、バルーンやステントの表面への薬剤の塗布の有無、薬剤の種類、切削対象となる病変部の性質(例えば、柔らかい病変部、硬い病変部、混合病変部等)等である。
【0044】
治療方法情報Cは、複数種類の治療方法に関する情報を含んでいる。治療方法情報は、各々の種類の治療方法の名称および特徴情報を含んでいる。特徴情報は、例えば、治療対象となる血管、治療対象となる血管の内径、使用可能なアテレクトミーデバイス10、使用可能なアクセスデバイス、使用可能な治療デバイス、病変部の性質(例えば、プラーク等の柔らかい病変部、石灰化した硬い病変部、柔らかい病変部と硬い病変部が混在する混合病変部等)等である。
【0045】
治療対象情報Bは、先に使用されたアテレクトミーデバイス10の情報、先に使用されたアテレクトミーデバイス10の切削時の情報、先の切削による病変部情報、治療対象画像情報、病変部の位置情報、先に使用されたアテレクトミーデバイス10の術者の評価情報、患者情報、およびその他の情報である。
【0046】
先に使用されたアテレクトミーデバイス10の切削時の情報は、先の切削時に検出部120により検出され、制御部111へ送信されて記憶されている。先の切削時の情報は、切削部30の回転数、切削部30のトルク、切削部30や回転駆動部70が発する音や振動、回転駆動部70へ流れる電流値、回転駆動部70へ供給されるエネルギ量、回転駆動部70の近傍の温度等である。
【0047】
先の切削による病変部の情報は、先の切削の完了後に画像検出部126や治療対象画検出部128等の検出部120により検出される。先の切削による病変部情報は、病変部を切削して形成された切削片の材質、切削片の形状、切削片の量、開存率等である。切削片の形状、切削片の量等は、画像検出部126により得られる画像情報から、公知の画像認識技術により算出される。そして、特定された切削片の形状が所定の方向へ細長いピール状である場合、制御部111は、病変部が柔らかい病変部または混合病変部であると特定できる。切削片の形状が粒子状である場合、制御部111は、病変部が硬い石灰化病変部であると特定できる。開存率は、治療対象画検出部128により得られる治療対象画像情報から、公知の画像認識技術により算出される。病変部の位置情報も、治療対象画検出部128により得られる治療対象画像情報から、公知の画像認識技術により算出される。
【0048】
治療対象画像情報は、例えば、超音波による断面画像情報であり、制御部111は、超音波エラストグラフィによって病変部等の硬さを算出可能である。算出される硬さは、一般的に、表示部112に表示される2次元画像において輝度により示される。
【0049】
患者情報は、例えば、患者の身長、体重、血圧、病歴(既往歴)、血液検査結果等である。
【0050】
その他の情報は、例えば、論文や学会情報から得られる手術の一連の情報(例えば、患者情報、病変位置、病変サイズ、病変状態、アクセスデバイス、アテレクトミーデバイス、治療デバイス等の情報)である。
【0051】
また、制御部111は、回転駆動部70、吸引駆動部80、軸心方向位置調整駆動部101および回転方向位置調整駆動部102の動作を制御して、切削を自動で行うことができる。
【0052】
次に、図4に示すフローチャートを参照しつつ、治療支援装置110の動作制御について説明する。
【0053】
治療支援装置110の制御部111は、アテレクトミーデバイス10を用いた治療を行う前に、情報管理部114により、デバイス情報A、治療対象情報Bおよび治療方法情報Cを受信して記憶する(S1)。
【0054】
次に、制御部111は、算出部115により、アテレクトミーデバイス情報および治療対象情報Bから、治療に使用可能なアテレクトミーデバイス10の種類を特定し、各々のアテレクトミーデバイス10の推奨度を算出して順位付けする(S2)。なお、治療に使用可能なアテレクトミーデバイス10の種類の特定は、各々のアテレクトミーデバイス10の特徴情報に含まれる使用条件(例えば、治療対象となる血管の位置、治療対象となる血管の内径など)を満たしているかにより行われる。推奨度の算出方法は、特に限定されないが、例えば、各々のアテレクトミーデバイス10の特徴情報に含まれる各項目が、治療対象情報Bから特定される治療対象の治療にどの程度適しているかを判別して点数化し、各項目の点数を合計した値が大きいほど、推奨度を高くすることができる。例えば、治療対象情報Bに含まれる治療対象画像情報が超音波による断面画像情報である場合に、制御部111は、超音波エラストグラフィによって病変部の硬さを算出する。そして、制御部111は、算出した病変部の硬さが大きいほど、アテレクトミーデバイス情報としてモータの回転数が大きい又は切削部にダイヤモンドコーティングを付与されたデバイスの推奨度を高くすることができる。また、各項目の点数化の一例として、例えば、ある種類のアテレクトミーデバイス10の特徴情報に含まれる治療対象となる血管の内径の範囲内に、より望ましい推奨血管内径範囲を設定し、治療対象情報Bから特定される血管内径が推奨血管内径範囲内であれば所定の高い点数を付与し、推奨血管内径範囲から離れるほど低い点数が付与するようにすることができる。このように、各項目に推奨する範囲を設定することで、各項目を点数化して推奨度を算出できる。なお、上述した推奨度を算出するアルゴリズムの例は、あくまで一例であり、アルゴリズムは特に限定されない。
【0055】
次に、制御部111は、図5に示すように、情報送信部116により、表示部112に選択可能な複数種類のアテレクトミーデバイス10の名称を推奨度とともに表示させる(S3)。表示部112には、各々のアテレクトミーデバイス10の写真や図が表示されてもよい。また、表示部112には、各々のアテレクトミーデバイス10の特徴情報が表示されてもよい。表示部112には、病変部の位置が図示されるとともに、病変部の石灰化状態の程度が、棒グラフで表示されてもよい。さらに、表示部112は、先に行われた切削に使用されたアテレクトミーデバイス10の種類を示す名称、先の切削の結果、その結果の原因等を表示してもよい。原因の記載は、例えば、治療対象情報Bに含まれている切削を行った術者により記録された評価である。
【0056】
術者は、入力部113を使用して、表示部112から1つのアテレクトミーデバイス10を選択して決定する。制御部111は、1つのアテレクトミーデバイス10が選択されると(S4)、選択されたアテレクトミーデバイス情報、アクセスデバイス情報および治療対象情報Bから、治療に使用可能なアクセスデバイスの種類を特定し、各々のアクセスデバイスの推奨度を算出して順位付けする(S5)。なお、アクセスデバイスの推奨度の算出は、前述したアテレクトミーデバイス10の推奨度の算出と同様のアルゴリズムで行われても、異なるアルゴリズムで行われてもよい。
【0057】
次に、制御部111は、図6に示すように、情報送信部116により、表示部112に選択されたアテレクトミーデバイス10の名称を表示させるとともに、選択可能な複数種類のアクセスデバイスの名称を推奨度とともに表示させる(S6)。表示部112には、各々のアクセスデバイスの写真や図が表示されてもよい。また、表示部112には、各々のアクセスデバイスの特徴情報が表示されてもよい。
【0058】
術者は、入力部113を使用して、表示部112から1つのアクセスデバイスを選択して決定する。制御部111は、1つのアクセスデバイスが選択されると(S7)、選択されたアクセスデバイス情報、アテレクトミーデバイス情報、治療デバイス情報および治療対象情報Bから、治療に使用可能な治療デバイスの種類を特定し、各々の治療デバイスの推奨度を算出して順位付けする(S8)。なお、治療デバイスの推奨度の算出は、前述したアテレクトミーデバイス10の推奨度の算出と同様のアルゴリズムで行われても、異なるアルゴリズムで行われてもよい。
【0059】
次に、制御部111は、図7に示すように、情報送信部116により、表示部112に選択されたアテレクトミーデバイス10およびアクセスデバイスの名称を表示させるとともに、選択可能な複数種類の治療デバイスの名称を推奨度とともに表示させる(S9)。表示部112には、各々の治療デバイスの写真や図が表示されてもよい。また、表示部112には、各々の治療デバイスの特徴情報が表示されてもよい。
【0060】
術者は、入力部113を使用して、表示部112から1つの治療デバイスを選択して決定する。制御部111は、1つの治療デバイスが選択されると(S10)、選択された治療デバイス情報、アクセスデバイス情報、アテレクトミーデバイス情報、治療対象情報Bおよび治療方法情報Cから、治療に使用可能な治療方法の種類を特定し、各々の治療方法の推奨度を算出して順位付けする(S11)。なお、治療方法の推奨度の算出は、前述したアテレクトミーデバイス10の推奨度の算出と同様のアルゴリズムで行われても、異なるアルゴリズムで行われてもよい。
【0061】
次に、制御部111は、図8に示すように、情報送信部116により、表示部112に選択されたアテレクトミーデバイス10、アクセスデバイスおよび治療デバイスの名称を表示させるとともに、選択可能な複数種類の治療方法の名称を推奨度とともに表示させる(S12)。表示部112には、各々の治療方法の特徴情報が図や文章により表示されてもよい。また、表示部112に表示される治療方法に関する情報は、治療方法を特定できれるのであれば、治療方法の名称を含まなくてもよい。
【0062】
術者は、入力部113を使用して、表示部112から1つの治療方法を選択して決定する。制御部111は、1つの治療方法が選択されると(S13)、選択されたアテレクトミーデバイス10、アクセスデバイス、治療デバイスおよび治療方法を、表示部112に表示させる(S14)。これにより、治療支援装置110における各デバイスおよび治療方法の選択のための動作制御が終了する。この後に、術者は、選択したアテレクトミーデバイス10、アクセスデバイス、治療デバイスおよび治療方法により、病変部Lの切削を行う。制御部111は、回転駆動部70、吸引駆動部80、軸心方向位置調整駆動部101および回転方向位置調整駆動部102の動作を制御して、検出部120により情報を検出して記録しつつ、図9に示すように、切削部30により病変部Lの切削を行うことができる。
【0063】
以上のように、第1実施形態に係る治療支援装置110は、血管内の病変部Lを切削する治療を支援する制御部111を備えた治療支援装置110であって、制御部111は、複数種類のデバイスの各々の名称および特徴情報を含むデバイス情報Aと、患者の病変部Lの情報を含む治療対象情報Bと、を受信する情報管理部114と、デバイス情報Aおよび治療対象情報Bから、治療対象情報Bに適するデバイスの種類を順位付ける算出部115と、情報を表示可能な表示部112へ順位付けた情報を送信する情報送信部116と、を有する。
【0064】
上記のように構成した治療支援装置110は、患者の病変部Lに応じて適切なデバイスの種類を自動で特定して表示部112に表示させることができるため、術者の負担を低減できる。
【0065】
デバイス情報は、複数種類のアテレクトミーデバイス10の各々の名称および特徴情報を含むアテレクトミーデバイス情報を含み、算出部115は、アテレクトミーデバイス情報および治療対象情報Bから、治療対象情報Bに適するアテレクトミーデバイス10の種類を順位付ける。これにより、治療支援装置110は、患者の病変部Lに応じて適切なアテレクトミーデバイス10の種類を自動で特定して表示部112に表示させることができる。
【0066】
治療対象情報Bは、先に行った病変部Lの切削時および/または切削後の病変部Lの情報を含む。これにより、先に行ったアテレクトミーデバイス10による切削が不十分であった場合に、先に行った切削の結果を考慮して、適切なアテレクトミーデバイス10の種類を自動的に表示できる。
【0067】
治療対象情報Bは、超音波による断面画像情報を含み、算出部115は、断面画像情報から病変部Lの硬さを算出し、算出された硬さが大きいほど、アテレクトミーデバイス情報としてモータの回転数が大きい又は切削部30にダイヤモンドコーティングを付与されたアテレクトミーデバイスの順位を高く算出する。これにより、治療支援装置110は、患者の病変部Lの硬さに応じて適切なアテレクトミーデバイス10の種類を自動で特定できる。
【0068】
デバイス情報は、アテレクトミーデバイス10の目的位置への到達を補助可能な複数種類のアクセスデバイスの各々の名称および特徴情報を含むアクセスデバイス情報を有し、算出部115は、アクセスデバイス情報および治療対象情報Bから、治療対象情報Bに適するアクセスデバイスの種類を順位付ける。これにより、治療支援装置110は、患者の病変部Lに応じて適切なアクセスデバイスの種類を自動で特定して表示部112に表示させることができる。
【0069】
デバイス情報は、アテレクトミーデバイス10による切削後に使用可能な複数種類の治療デバイスの各々の名称および特徴情報を含む治療デバイス情報を含み、算出部115は、治療デバイス情報および治療対象情報Bから、治療対象情報Bに適する治療デバイスの種類を順位付ける。これにより、治療支援装置110は、患者の病変部Lに応じて適切な治療デバイスの種類を自動で特定して表示部112に表示させることができる。
【0070】
算出部115は、病変部Lを切削するアテレクトミーデバイス10を駆動する駆動装置100によりアテレクトミーデバイス10を把持する把持力を算出し、情報送信部116は、把持力を表示部112へ送信してもよい。これにより、表示部112は、選択されたアテレクトミーデバイス10に適する把持力を表示できる。このため、治療支援装置110は、アテレクトミーデバイス10の種類に応じて適切な把持力を自動で特定して表示部112に表示させることができる。
【0071】
また、本実施形態に係る治療支援装置110は、血管内の病変部Lを切削する治療を支援する制御部111を備えた治療支援装置110であって、制御部111は、複数種類の治療方法の各々の特徴情報を含む治療方法情報と、患者の病変部Lの情報を含む治療対象情報Bと、を受信する情報管理部114と、治療方法情報および治療対象情報Bから、治療対象情報Bに適する治療方法の種類を順位付ける算出部115と、情報を表示可能な表示部112へ順位付けた情報を送信する情報送信部116と、を有する。
【0072】
上記のように構成した治療支援装置110は、患者の病変部Lに応じて適切な治療方法の種類を自動で特定して表示部112に表示させることができるため、術者の負担を低減できる。
【0073】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る治療支援装置110は、図10に示すように、制御部110に機械学習を行う学習器130、機械学習の演算を行うための専用サーバーに接続する通信部140を含む点で、第1実施形態と異なる。
【0074】
機械学習のアルゴリズムは、一般的に、教師あり学習、教師なし学習、強化学習等に分類される。教師あり学習のアルゴリズムでは、入力データと結果データとのセットが与えられ、それに基づき機械学習が行われる。教師なし学習のアルゴリズムでは、入力データのみが大量に与えられ、それに基づき機械学習が行われる。強化学習のアルゴリズムは、アルゴリズムが出力した解(本実施形態における、使用可能なデバイスや治療方法の種類、各々のデバイスや治療方法の推奨度)に基づいて環境(本実施形態における、治療対象情報B)を変化させ、出力した解がどの程度正しいのかの報酬に基づいて、解に修正を加える。本実施形態では、機械学習として強化学習を行う場合を説明する。なお、本発明において、強化学習以外の機械学習が使用されてもよい。
【0075】
学習器130は、状態観測部131と、学習部132と、決定部133とを有している。学習器130は、強化学習におけるエージェントに該当する。学習器130は、制御部110に含まれるが、例えば第1実施形態に係る治療支援装置110に接続可能な外部装置であってもよい。
【0076】
状態観測部131は、環境の状態を検出する。状態観測部131は、治療対象情報Bと、選択条件D(使用可能なデバイスや治療方法の種類、および各々のデバイスや治療方法の推奨度)とを含む状態変数を観測する。状態観測部131は、治療対象情報Bと選択条件Dを、関連付けて記憶する。
【0077】
学習部132は、報酬の条件を設定する報酬設定部134と、報酬を算出する報酬算出部135と、関数を更新する更新部136と、更新部136が学習した結果を記憶する記憶部137とを有している。
【0078】
報酬設定部134は、報酬の条件を設定する。報酬設定部134により設定される報酬条件は、例えば、治療対象情報Bの安定度、各々の処置(治療)にかかる時間、処置(治療)の品質、エネルギ消費量、デバイスや治療方法の推奨度と術者に実際に選択されたデバイスや治療方法の種類との対応度等によって決まる。例えば治療対象情報Bが安定(治療対象情報Bの変動が小さい)と判断される場合に報酬が増加し、そうでない場合に報酬が減少する。また、処置にかかる時間が長い場合に報酬が減少し、短い場合に報酬が増加する。また、処置の品質が向上する場合に報酬が増加し、低下する場合に報酬が減少する。また、術者に実際に選択されたデバイスや治療方法の種類の推奨度が高い場合に報酬が増加し、そうでない場合に報酬が減少する。このような判定を行うために、それぞれのデータを取得する手段が設けられ、それぞれについて個別の閾値などが予め設定されているものとする。処置にかかる時間は、制御部110によって特定でき、エネルギ消費量は、電流検出部123および電圧検出部124から特定できる。処置の品質は、例えば、画像検出部126で得られる画像から算出することができる。デバイスや治療方法の推奨度と術者に実際に選択されたデバイスや治療方法の種類との対応度は、制御部110によって特定できる。
【0079】
報酬算出部135は、状態観測部131により観測された少なくとも1つの治療対象情報Bおよび報酬条件に基づいて報酬を計算する。
【0080】
更新部136は、報酬算出部135により算出された報酬に基づいて、現在の状態変数から、選択条件Dを決定する関数を更新する。関数は、例えば行動価値関数である。
【0081】
決定部133は、価値の高い行動の選択を学習する。決定部133は、学習部132の学習結果に基づいて、現在の状態変数から、少なくとも一つの選択条件Dと、この選択条件Dの最適な修正量とを決定する。
【0082】
通信部140は、ネットワークを介して専用サーバーに接続可能である。これにより、制御部110は、機械学習における負荷の高い演算処理の少なくとも一部を、ネットワークを介して専用サーバーにより行うことができる。したがって、専用サーバーに接続可能な各々の製品(医療システム1や治療支援装置110)の制御部110は、最適な行動価値関数や状態変数を算出する演算処理をネットワークを介して専用サーバーで行い、演算結果をネットワークを介して受け取って、最適に更新される。
【0083】
学習器130の処理は、図11に示すように、本治療支援装置110による病変部Lの治療が行われる毎に実施される(S15)。学習器130は、各々の選択条件Dにおける報酬額を報酬算出部135により算出し、報酬額が大きくなるように、更新部136により行動価値関数を更新する。行動価値関数の更新は、例えば、Q学習において使用される公知の更新式により行うことができる。これにより、学習器130は、病変部Lを切削するために、少なくとも一つの選択条件Dを更新する。
【0084】
そして、切削を行う手技毎に、機械学習の処理が繰返し行われることにより、行動価値関数の信頼度が高められる。信頼性の高い行動価値関数を使用することで、例えばQ学習において使用されるQ値が高くなるように少なくとも1つの選択条件Dをより最適にすることができる。したがって、切削を行う際に、信頼性を高められた行動価値関数を使用して、検出された物理量Aから最適な選択条件Dを自動的に生成して、表示部112に選択可能に表示させることができる。なお、更新部136による行動価値関数の更新は、切削を行う手技毎ではなく、手技の最中に行われてもよい。
【0085】
第2実施形態において、制御部110は、少なくとも1つの治療対象情報Bおよび少なくとも1つの選択条件Dを有する状態変数に基づいて、少なくとも1つの選択条件Dを決定する関数を更新することによって、少なくとも1つの選択条件Dを決定することを学習する学習部132を有し、学習部132は、状態変数に基づいて、少なくとも1つの選択条件Dを決定した結果に対する報酬を算出する報酬算出部135と、報酬算出部135により算出された報酬に基づいて関数を更新する更新部136と、を有し、更新部136による関数の更新を繰り返すことによって報酬を最も多く得られる少なくとも1つの選択条件Dを学習する。このため、医療システム1は、機械学習の処理を繰返し行うことにより、選択条件Dを決定する関数の信頼度を高めることができる。そして、選択条件Dを決定する信頼度の高い関数に基づいて、少なくとも1つの選択条件Dをより最適にすることができる。
【0086】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、切削部30は、回転体ではなく、例えば軸心方向Xに沿って移動することで切削する構造や、レーザーを照射する部材でもよい。また、上述の実施形態において、アテレクトミーデバイス10の順付け、アクセスデバイスの順位付け、治療デバイスの順位付け、および治療方法の順位付けを全て行っているが、これらの少なくとも1つが行われてもよく、行われる順番が異なってもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 医療システム
10 アテレクトミーデバイス
20 シャフト部
30 切削部
120 検出部
110 治療支援装置
114 情報管理部
116 情報送信部
111 制御部
112 表示部
113 入力部
115 算出部
130 学習器
131 状態観測部
132 学習部
133 決定部
134 報酬設定部
135 報酬算出部
136 更新部
A デバイス情報
B 治療対象情報
C 治療方法情報
D 選択条件
L 病変部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11