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  • 特開-光量調節装置及び撮像装置 図1
  • 特開-光量調節装置及び撮像装置 図2
  • 特開-光量調節装置及び撮像装置 図3A
  • 特開-光量調節装置及び撮像装置 図3B
  • 特開-光量調節装置及び撮像装置 図3C
  • 特開-光量調節装置及び撮像装置 図4
  • 特開-光量調節装置及び撮像装置 図5
  • 特開-光量調節装置及び撮像装置 図6
  • 特開-光量調節装置及び撮像装置 図7
  • 特開-光量調節装置及び撮像装置 図8
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131549
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】光量調節装置及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 9/06 20210101AFI20230914BHJP
【FI】
G03B9/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036377
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中脇 慎也
【テーマコード(参考)】
2H080
【Fターム(参考)】
2H080AA36
2H080AA38
2H080AA63
2H080AA66
2H080AA78
(57)【要約】
【課題】小型化に有利な光量調節装置及び撮像装置を提供する。
【解決手段】光を通過させる開口を有するベース部材と、開口を絞る絞り羽根群と、係合部を介して係合する絞り羽根群を駆動する駆動リングと、駆動リングに設けられた被駆動部を介して、駆動リングに駆動力を伝達する駆動部と、を備え、駆動リングは、被駆動部と係合部との間に、円筒形状部を有する。
【選択図】 図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を通過させる開口を有するベース部材と、
前記開口を絞る絞り羽根群と、
係合部を介して係合する前記絞り羽根群を駆動する駆動リングと、
前記駆動リングに設けられた被駆動部を介して、前記駆動リングに駆動力を伝達する駆動部と、を備え、
前記駆動リングは、前記被駆動部と前記係合部との間に、円筒形状部を有することを特徴とする光量調節装置。
【請求項2】
前記ベース部材は、前記円筒形状部と摺接する第1の摺接部が設けられた第2の円筒形状部を有することを特徴とする請求項1に記載の光量調節装置。
【請求項3】
前記ベース部材は、光通過方向の異なる位置に、前記第1の摺接部とは異なる第2の摺接部を有することを特徴とする請求項2に記載の光量調節装置。
【請求項4】
前記駆動リングは、前記円筒形状部に、前記第1の摺接部と摺動する第1の係合環と、前記第2の摺接部と摺動する第2の係合環とを有することを特徴とする請求項3に記載の光量調節装置。
【請求項5】
前記第2の係合環は、前記第1の係合環よりも光通過方向に前記係合部から離れた位置に配置されており、前記第2の係合環の径が前記第1の係合環の径よりも小さいことを特徴とする請求項4に記載の光量調節装置。
【請求項6】
前記係合部は、カム溝であり、前記カム溝と前記円筒形状部が光通過方向において重なることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の光量調節装置。
【請求項7】
前記被駆動部は、ギアであり、
前記ギアと前記円筒形状部が光通過方向において重なることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の光量調節装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の光量調節装置と、
前記光量調節装置を通過した光を撮像する撮像素子と、
を備えることを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、絞り装置などの光量調節装置及びそれを備えた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カメラなどの撮像装置における光量調節装置としては、光路用の開口部を有する地板と、この地板に支持されて開口部を開閉するように動作する羽根と、地板に対して回動する駆動リングとを備えたものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のような光量調節装置では、駆動リングを回動駆動し、さらに回動する駆動リングにより羽根を移動させて、光路用の開口部を開閉する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-73383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、光量調節装置においては、実装対象となるカメラ等の撮像装置における実装スペースの削減や、低コスト化などの様々な要望から、更なる小型化が望まれている。
【0006】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、小型化に有利な光量調節装置及び撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係わる光量調節装置は、光を通過させる開口を有するベース部材と、前記開口を絞る絞り羽根群と、係合部を介して係合する前記絞り羽根群を駆動する駆動リングと、前記駆動リングに設けられた被駆動部を介して、前記駆動リングに駆動力を伝達する駆動部と、を備え、前記駆動リングは、前記被駆動部と前記係合部との間に、円筒形状部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、小型化に有利な光量調節装置及び撮像装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態1に係る絞り装置の分解斜視図。
図2】実施形態1の絞り装置に用いられる保持基板の斜視図。
図3A】実施形態1の絞り装置に用いられる駆動リングの斜視図。
図3B】実施形態1の絞り装置に用いられる駆動リングの断面図。
図3C】実施形態1の絞り装置に用いられる駆動リングの平面図。
図4】実施形態1における保持基板に対する駆動リングの組込の様子を示す図。
図5】駆動リングの組み込み時の部分拡大図。
図6】実施形態1の絞り装置に用いられる絞り羽根の斜視図。
図7】実施形態1の絞り装置に用いられる開口形成部材の斜視図。
図8】実施形態1の絞り装置を搭載した撮像装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
<実施形態1>
図1は、本発明の光量調節装置の実施形態1である絞り装置100の構成を示す分解斜視図である。
【0012】
図1において、保持基板102は、中央に開口部が形成されており、絞り装置100のベースとなる円筒形状の部材(ベース部材)である。図2は、保持基板102の斜視図である。保持基板102には、後述する開口形成部材106に対する駆動リング103の回動位置を規定する第1の係合突起102aと第2の係合突起102bが形成されている。また、保持基板102には、複数の絞り羽根(羽根群)105が係合する複数の係合ピン102cが配置されている。本実施形態では、保持基板102は、例えば樹脂成形により作成される。保持基板102には、駆動部101が取り付けられる。駆動部101には、駆動源として、例えばステッピングモータ、ガルバノモータなどが用いられる。駆動部101の回転軸101aに、ピニオン104が取り付けられる。
【0013】
図3Aは、駆動リング103の斜視図である。駆動リング103は、光通過経路の少なくとも一部を構成する貫通孔103fを有し、光が通過する経路(光通過経路)を取り囲むような環状の部材(円筒形状部)から形成され、光通過経路の周囲で回動する。この駆動リング103には、後述する絞り羽根105が係合する。駆動リング103は、駆動リング103の回動に伴って、絞り羽根105を光通過経路に対して出入りするように動作させる。つまり、駆動リング103は、絞り羽根105を駆動するための部材(動力伝達部材)となる。
【0014】
この駆動リング103は、基部103aと、カム溝(係合部)103bと、駆動部101からの駆動力を受ける被駆動部103cとを有する。駆動リング103は、さらに保持基板102の第1の係合突起102aに摺接する第1の係合環103dと、保持基板102の第2の係合突起102bに摺接する第2の係合環103eとを有する。基部103aを実質的に一様な厚みとすることで、駆動リング103が回転するときに、空気抵抗の影響を受けにくくすることができる。そのため、作動負荷を低減でき、高速応答性、静音性を向上させることができる。
【0015】
また、駆動リング103の基部103aは、片面あるいは両面に表面処理が施されている。表面処理としては、例えば、摺動塗装、帯電防止処理、反射防止処理などが挙げられる。摺動塗装を施すことで、駆動リング103と摺動する部品である保持基板102、後述する開口形成部材106との摩擦を低減することができ、駆動部101の消費電力を削減することが可能となる。また、反射防止処理をすることで、光量調節装置100内に進入した光の反射を抑え、レンズ鏡筒内に光量調節装置100が組み込まれた際の、ゴースト、フレア等の発生を抑制することができる。
【0016】
また、駆動リング103は、ギア部が形成された被駆動部103cを有する。この被駆動部103cは、中間ギア107を介してピニオン104と噛み合っている。駆動部101で発生した回転力がピニオン104から被駆動部103cに伝達され、これにより駆動リング103が回転駆動される。
【0017】
なお、本実施形態では、駆動部101の回転力を中間ギア107を介してピニオン104から駆動リング103に伝えているが、中間ギアを用いず回転力を直接伝えてもよく、ピニオンの代わりに駆動レバーを使用してもよい。駆動レバーを使用する場合、駆動リング103の被駆動部は、カム溝あるいは、被駆動ピン等で構成される。
【0018】
駆動リング103の被駆動部103cと中間ギア107のギアの噛み合いでは、噛み合い量を最小限にし、噛み合い面積を小さくしているため、ギア同士のかみ合い音が小さい。また、ピニオン104と駆動リング103の質量差が大きいため、ピニオン104と被駆動部103cの間にバックラッシュがあっても、ギアの噛み合い音、反転音等が小さくなる。
【0019】
なお、駆動リング103の基部103aは、実質的に均一な厚みであり、無駄な凹凸や穴がないため、絞り羽根105が開閉作動中に駆動リング103とひっかかるような作動不良を防止できる。
【0020】
また、図3A及びその断面図である図3Bに示すように、駆動リング103には第1の係合環103d及び第2の係合環103eが形成されている。第1の係合環103dと第2の係合環103eが、円筒形状部103gを形成している。この第1の係合環103dと第2の係合環103eが、保持基板102の第1の係合突起102aと第2の係合突起102bと係合することにより、駆動リング103が保持基板102に対して回動可能に保持される。また、駆動リング103の第1の係合環103dは、第2の係合環103eよりも外径が大きく形成されている。
【0021】
なお、本実施形態では、保持基板102に係合突起を形成し、駆動リング103に係合環を形成しているが、保持基板102に係合環を形成し、駆動リング103に係合突起を形成するようにしてもよい。
【0022】
また、駆動リング103には、カム溝103bが形成されている。このカム溝103bは、絞り羽根105のカムピン105bと係合する。これにより、駆動リング103の回動に伴って絞り羽根105が光通過経路に対して出入りする。
【0023】
次に、図3Cを用いて、駆動リング103のカム溝103bと係合環103dの位置関係について説明する。前述した通り、保持基板102の第1の係合突起102aと摺接するように、駆動リング103の第1の係合環103dが設けられているが、これらの摺接部分はカム溝103bに対して光通過方向においてズレた位置に設定されている。そうすることによって、カム溝103bと係合環103dは、光通過方向に見たときに、半径方向に重なるように設定できるようになる。つまり、係合環103dの径を小さくすることができ、小型化に有利な構造にすることができる。
【0024】
さらに、図3Cに示すように、被駆動部103cと係合環103dとを、光通過方向に見たときに半径方向に重なる位置に設定することで、駆動リング103の外形の拡大を抑えることができ、小型化に有利な構造にすることができる。
【0025】
ここで、保持基板102が駆動リング103を回動可能に保持する構成について、もう少し詳しく説明する。
【0026】
図4に示す通り、保持基板102の第1の係合突起102aと駆動リング103の第1の係合環103dとの摺接部を第1の摺接部、保持基板の第2の係合突起102bと駆動リング103の第2の係合環103eとの摺接部を第2の摺接部とする。本実施形態では、第1の摺接部よりも第2の摺接部の径を小さく設定する。これにより、図5に示すように、駆動リング103を保持基板102へ組み込む際に、駆動リング103の第2の係合環103eと保持基板102の第1の係合突起102aとが接触しにくくなり、キズや打痕を防止しつつスムースに組み込むことができる。つまり、2か所以上の摺接部を有する構造において、組込方向前方側の摺接部の径を組込方向後方側の摺接部の径よりも小さく設定するのが好ましい。
【0027】
なお、本実施形態では、駆動リング103に係合環を設け、保持基板102に係合突起を設ける構造としたが、関係が逆でも同様の効果が得られる。さらに本実施形態では、摺接部を2か所としたが、3か所以上でも摺接部の径の関係を同様に構成することにより同様の効果が得られる。
【0028】
また、本実施形態では、図2に示すように、保持基板102の第1の係合突起102aと第2の係合突起102bを円周方向に位相を変えて配置する。これにより、保持基板102を成形するための可動側金型もしくは固定側金型のいずれか一方に、双方の係合突起を形成した金型構造とすることができる。そうすることで、双方の係合突起の相対的な同軸度が保たれ、高精度に駆動リング103を回動可能に保持することができる。
【0029】
図6は、絞り羽根105の斜視図である。駆動穴105aとカムピン105bが羽根部105cに設けられている。絞り羽根105は、例えば、樹脂成形により、羽根部105cと駆動穴105aとカムピン105bが一体で作成される。あるいは、PETシート材等をプレス加工して作成してもよいし、樹脂成形等で作成してもよい。
【0030】
また、本実施形態では、絞り羽根105を6枚としているが、絞り羽根105の枚数は、2枚以上であれば何枚でもよい。なお、本実施形態では、絞り羽根105を例示して説明したが、その他のシャッタ羽根、あるいは光学フィルタを有する羽根など各種の用途に適した羽根の構成としてもよい。なお、光が通過する部分の最大開口は、開口形成部材106又は保持基板102の開口部で規定してもよいし、複数の絞り羽根105の内径によって規定してもよい。
【0031】
また、遮光処理されたシート部材により羽根部105cを作成し、カムピン105bは、樹脂成形で作成し、羽根部105cに接着、溶着、アウトサート成形などで一体化させてもよい。また、カムピン105bを金属ピンで形成し、羽根部105cに接着、溶着、カシメ等で一体化させてもよい。
【0032】
また、本実施形態では、絞り羽根105に駆動穴105aを設け、保持基板102に係合ピン102cを設ける構造としたが、絞り羽根105に駆動ピンを設け、保持基板102に係合穴を設ける構造としてもよい。
【0033】
このように、絞り羽根105の回転中心軸となる駆動穴105aは、保持基板102の係合ピン102cと係合する。また、絞り羽根105のカムピン105bは、駆動リング103のカム溝103bに係合する。ピニオン104が回転し、駆動リング103の被駆動部103cに駆動力が伝達され、駆動リング103が回転する。駆動リング103が回転すると、駆動リング103のカム溝103bから絞り羽根105のカムピン105bに駆動力が与えられ、絞り羽根105が駆動される。カム溝103bによって、絞り羽根105は、保持基板102の開口部の内外を出入りする。複数の絞り羽根105により、絞り形状が調整され、光が通過する量を調整することが可能になる。
【0034】
図7は、開口形成部材106の斜視図である。開口形成部材106には、穴部106aが形成され、この穴部106aが保持基板102の係合ピン102cの先端に嵌合し、絞り羽根105を押さえる。
【0035】
<実施形態2>
図8は、実施形態1で説明した絞り装置を搭載した撮像装置としての、一眼レフカメラ用の交換レンズ221、及びその交換レンズが装着されるカメラ本体の内部構成を示している。
【0036】
交換レンズ221の鏡筒内には、変倍レンズ232、光路を絞る第1または第2の実施形態の絞り装置100、およびフォーカスレンズ229を含む撮影光学系が収容されている。
【0037】
CCDセンサやCMOSセンサ等の光電変換素子により構成される撮像素子225はカメラ本体内に配置され、交換レンズ221により形成された被写体像を光電変換して電気信号を出力する。絞り装置100の絞り開口を変化させたり不図示のNDフィルタを進退させたりすることにより、撮像素子225上に形成される被写体像の明るさ(つまりは撮像素子225に到達する光量)を適正に設定することができる。
【0038】
撮像素子225から出力された電気信号は、画像処理回路226においてデジタル信号に変換されるとともに、種々の画像処理を施される。これにより、画像信号が生成される。
【0039】
ユーザは、ズームリング231を回転操作することにより、変倍レンズ232を移動させて変倍(ズーミング)を行わせることが出来る。コントローラ222は、画像信号のコントラストを検出し、そのコントラストに応じてフォーカスモータ228を制御し、フォーカスレンズ229を移動させてオートフォーカスを行う。あるいは、コントローラ222は、不図示の位相差検出方式を用いた焦点検出手段の検出信号に基づいて、フォーカスモータ228を制御し、フォーカスレンズ229を移動させてオートフォーカスを行ってもよい。
【0040】
さらに、コントローラ222は、不図示の測光手段の測光値あるいは画像信号に基づいて、絞り装置100の駆動部101を制御し、光量を調節する。これにより、撮影時のボケやゴーストを自然な形状にすることができ、高画質の画像を記録することができる。
【0041】
なお、本発明は、上述した一眼レフカメラに限定されず、レンズ一体型のデジタルカメラ、ビデオカメラ等の光学機器にも広く適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
101 駆動部
102 保持基板
103 駆動リング
104 ピニオン
105 絞り羽根
106 開口形成部材
107 中間ギア
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8