(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131567
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】検出システム、パラメータ更新方法、検出プログラム、検証サーバ、検証方法および検証プログラム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/12 20200101AFI20230914BHJP
【FI】
G01R31/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036405
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水出 隆
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 翔平
(72)【発明者】
【氏名】池田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】藤井 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】長 広明
(72)【発明者】
【氏名】中村 勇介
【テーマコード(参考)】
2G015
【Fターム(参考)】
2G015AA06
2G015BA00
2G015BA04
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、計測データに環境によって異なるノイズが含まれていても、部分放電を検出することができる検出システム、パラメータ更新方法、検出プログラム、検証サーバ、検証方法および検証プログラムを提供することである。
【解決手段】検出システムは、取得部と、加工部と、判定部と、更新部とを備える。取得部は、監視対象の電力機器に取り付けられたセンサから計測データを取得する。加工部は、電力機器に関連付けられたパラメータに基づいて計測データを加工する。判定部は、加工された計測データに基づいて監視対象に部分放電が生じているか否かを判定する。更新部は、過去に取得された計測データである複数の参照計測データのうち、部分放電が生じているか否かの判定結果が同じものに基づいて、パラメータを更新する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象の電力機器に取り付けられたセンサから計測データを取得する取得部と、
前記電力機器に関連付けられたパラメータに基づいて前記計測データを加工する加工部と、
加工された前記計測データに基づいて前記監視対象に部分放電が生じているか否かを判定する判定部と、
過去に取得された計測データである複数の参照計測データのうち、部分放電が生じているか否かの判定結果が同じものに基づいて、前記パラメータを更新する更新部と
を備える検出システム。
【請求項2】
前記監視対象に部分放電が生じていると判定された場合に、前記更新部は、加工された前記計測データと、過去に部分放電が生じていると判定された、加工された前記複数の参照計測データとに基づいて、前記パラメータを更新する
請求項1に記載の検出システム。
【請求項3】
前記監視対象に部分放電が生じていないと判定された場合に、前記更新部は、ノイズを含む前記計測データと、過去に部分放電が生じていないと判定されたノイズを含む前記複数の参照計測データとに基づいて、前記パラメータを更新する
請求項1または請求項2に記載の検出システム。
【請求項4】
前記更新部は、他の電力機器に係る前記複数の参照計測データに基づいて、前記パラメータを更新する
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の検出システム。
【請求項5】
前記更新部は、前記複数の参照計測データのうち、同じ周期に属するものに基づいて、前記パラメータを更新する
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の検出システム。
【請求項6】
前記複数の参照計測データに基づいて、前記計測データに対する部分放電が生じているか否かの判定結果を検証する検証部を備え、
前記更新部は、検証結果に基づいて前記パラメータを更新する
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の検出システム。
【請求項7】
複数の監視対象に対応して設けられ、前記加工部、前記判定部、及び前記更新部を備える複数の検出装置と、
前記検証部を備え、前記複数の監視対象とネットワークを介して接続される検証サーバと
を備える請求項6に記載の検出システム。
【請求項8】
監視対象の電力機器に取り付けられたセンサから計測データを取得するステップと、
前記電力機器に関連付けられたパラメータに基づいて前記計測データを加工するステップと、
加工された前記計測データに基づいて前記監視対象に部分放電が生じているか否かを判定するステップと、
過去に取得された複数の参照計測データのうち、部分放電が生じているか否かの判定結果が同じものに基づいて、前記パラメータを更新するステップと
を備えるパラメータ更新方法。
【請求項9】
コンピュータに、
監視対象の電力機器に取り付けられたセンサから計測データを取得するステップと、
前記電力機器に関連付けられたパラメータに基づいて前記計測データを加工するステップと、
加工された前記計測データに基づいて前記監視対象に部分放電が生じているか否かを判定するステップと、
過去に取得された複数の参照計測データのうち、部分放電が生じているか否かの判定結果が同じものに基づいて、前記パラメータを更新するステップと
を実行させるための検出プログラム。
【請求項10】
監視対象の電力機器に取り付けられたセンサによって計測された計測データと、前記計測データに基づく前記監視対象に部分放電が生じているか否かの判定結果を、検出装置から受信する受信部と、
過去に取得された複数の参照計測データのうち、部分放電が生じているか否かの判定結果が同じものに基づいて、前記計測データが前記複数の参照計測データから統計的に外れているか否かを判定する判定部と
を備える検証サーバ。
【請求項11】
監視対象の電力機器に取り付けられたセンサによって計測された計測データと、前記計測データに基づく前記監視対象に部分放電が生じているか否かの判定結果を、検出装置から受信するステップと、
過去に取得された複数の参照計測データのうち、部分放電が生じているか否かの判定結果が同じものに基づいて、前記計測データが前記複数の参照計測データから統計的に外れているか否かを判定するステップと
を備える検証方法。
【請求項12】
コンピュータに、
監視対象の電力機器に取り付けられたセンサによって計測された計測データと、前記計測データに基づく前記監視対象に部分放電が生じているか否かの判定結果を、検出装置から受信するステップと、
過去に取得された複数の参照計測データのうち、部分放電が生じているか否かの判定結果が同じものに基づいて、前記計測データが前記複数の参照計測データから統計的に外れているか否かを判定するステップと
を実行させるための検証プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は検出システム、パラメータ更新方法、検出プログラム、検証サーバ、検証方法および検証プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力機器の経年劣化によって、電力機器の表面や内部の絶縁体の絶縁性能が低下する。絶縁性能の低下が生じた箇所からは、部分放電(Partial Discharge, PD)が発生する。部分放電は、電力機器に取り付けたセンサ(例えばTEVセンサ)の計測データの解析によって検出される。一方で、センサの計測データには、電力機器の環境において発生するノイズが含まれる。このようなノイズは、電力機器が設けられる変電所などのサイトに固有のノイズを含むことがあり、一律に部分放電を判定することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、計測データに環境によって異なるノイズが含まれていても、部分放電を検出することができる検出システム、パラメータ更新方法、検出プログラム、検証サーバ、検証方法および検証プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態によれば、検出システムは、取得部と、加工部と、判定部と、更新部とを備える。取得部は、監視対象の電力機器に取り付けられたセンサから計測データを取得する。加工部は、電力機器に関連付けられたパラメータに基づいて計測データを加工する。判定部は、加工された計測データに基づいて監視対象に部分放電が生じているか否かを判定する。更新部は、過去に取得された計測データである複数の参照計測データのうち、部分放電が生じているか否かの判定結果が同じものに基づいて、パラメータを更新する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1の実施形態に係る検出システムの構成を示す概略図。
【
図2】第1の実施形態の検出装置の機能構成を表す機能ブロック図。
【
図3】第1の実施形態に係る検証サーバの機能構成を表す機能ブロック図。
【
図4】第1の実施形態の検出装置の動作を表す機能ブロック図。
【
図5】第1の実施形態に係る検証サーバの動作を示すフローチャート。
【
図6】第1の実施形態に係る加工済データの分析処理を示すフローチャート。
【
図7】第1の実施形態に係る計測データの分析処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の検出システム、パラメータ更新方法、検出プログラム、検証サーバ、検証方法および検証プログラムを、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る検出システム1の構成を示す概略図である。
検出システム1は、変電所などの複数のサイトSに設置された電力機器Mの部分放電を
検出する。電力機器Mの例としては、ガス絶縁開閉装置、スイッチギヤ、キュービクルおよび配電盤、ならびに、それらを構成する遮断器、断路器、計器用変圧器、接地型計器用変圧器、および変流器などが挙げられる。その他にも、電力機器Mの例として、変圧器、ガス絶縁開閉装置、発電機、電動機、リアクトル等が挙げられる。電力機器Mは、外部から電源ケーブルを介して、高電圧および大電流を通電する。電力機器Mの中には、異常時には通電を遮断する機能を有するものもある。なお、電力機器Mには、接地極が接続された接地ケーブルが接続される。
【0008】
検出システム1は、複数のサイトSに設置された検出装置10と、検証サーバ20とを備える。複数の検出装置10と検証サーバ20とは、インターネットなどの広域ネットワークNを介して接続される。
【0009】
検出装置10は、電力機器Mごとに設置されたセンサ11と演算装置12とを備える。検出装置10は、電力機器Mの近傍に設けられる。センサ11は、電力機器Mの金属筐体表面や本体を流れる電磁波・音波・過渡接地電流・電磁波由来の電流等、電力機器Mの運転によって生じる波動を計測する。演算装置12は、センサ11の計測データに基づいて電力機器Mから発生した部分放電を検出する。計測データは、波動の波形を表す。演算装置12は、所定のパラメータに従って計測データの加工および部分放電の有無の判定を行う。パラメータは、例えば、検出閾値、マッチング閾値、測定周期などが挙げられる。演算装置12は、計測データと判定結果とを検証サーバ20に送信する。
【0010】
検証サーバ20は、複数のサイトSに設けられた検出装置10から、計測データと判定結果とを受信し、蓄積する。検証サーバ20は、蓄積された計測データに基づいて、検出装置10による部分放電の判定結果の正否を検証する。検証サーバ20は、検証結果を検出装置10に送信する。
【0011】
図2は、第1の実施形態の検出装置10の機能構成を表す機能ブロック図である。
センサ11は、金属製の電極を含んで構成される。センサ11は、電力機器Mの運転によって生じる波動を計測する。つまり、センサ11は、電力機器Mの運転によって生じる現象に応じて電気信号を生成する。センサ11が生成した電気信号は、センサ11または図示しないAD変換器によってAD変換され、計測データとして演算装置12に出力される。図示しないAD変換器は、演算装置12が備えるものであってよい。センサ11は、電力機器Mを収容する筐体や本体の表面に取り付けられる。電力機器Mごとに取り付けられたセンサ11は、検出装置10に信号線を介して接続される。センサ11の例としては、CT(Current Transformer)センサ、TEV(Transient Earth Voltage)センサ、AE(Acoustic Emission)センサ、アンテナ等の電力機器Mの運転に由来する波動を計測するセンサが挙げられる。第1の実施形態においては、センサ11としてTEVセンサを用いるものとする。
【0012】
演算装置12は、PC(Personal Computer)、スマートフォン、タブレットコンピュータ等の情報処理装置である。演算装置12は、センサ11からの計測データに基づいて、電力機器Mにおける部分放電の発生の有無を判定する。演算装置12は、取得部121、記憶部122、加工部123、判定部124、通信部125、更新部126、出力部127を備える。
【0013】
取得部121は、センサ11から計測データを取得する。
記憶部122は、計測データの加工および部分放電の有無の判定に用いるパラメータを記憶する。例えば、記憶部122は、計測データの増幅ゲイン、検出閾値、マッチング閾値、位相分解能、バンドパス周波数帯域などを記憶する。
加工部123は、記憶部122が記憶するパラメータに基づいて、取得部121が取得した計測データを、ノイズの除去や部分放電の有無の判定のために加工する。以下、加工された計測データを加工済データとも呼ぶ。加工部123による加工は、計測データからノイズを除去するデノイズ処理であってもよい。以下、本実施形態では、加工部123はデノイズ処理を行うものとして説明する。なお加工部123による加工の他の例としては、信号のゲイン調整、ゼロ点調整、位相検知などが挙げられる。
【0014】
判定部124は、記憶部122が記憶するパラメータに基づいて、加工部123が生成した加工済データに部分放電信号が含まれるか否かを判定する。判定部124は、加工済データに部分放電信号が含まれると判定した場合に、加工済データに基づいて部分放電の位相、放電電荷量、頻度を検出する。これにより判定部124は、加工済データを用いて電力機器Mの部分放電の有無を判定する。
例えば、センサ11がTEVセンサである場合、部分放電が発生するとき、一般には、センサ11により検出される表面電位信号において、数MHz~数10MHzの周波数帯域に主成分を持つ接地電流由来の低周波信号と、100MHz以上の周波数帯域に主成分を持つ電磁波由来の高周波信号とが同時に発生する。ここで、接地電流由来の低周波信号は、電力機器Mの接地母線を通じて伝搬され、接地フィールドにおける背景雑音(図中の破線)と競合するために検出感度は低い。一方、高周波信号は、接地フィールドの背景雑音に対して検出感度が高い。すなわち、低周波信号においてはS/N比が低く、高周波信号においてはS/Nが高くなる。そこで判定部124は、高周波信号と低周波信号とで振幅波形のマッチングを行い、閾値以上の電位差が同じタイミングで発生している箇所を検出することにより、部分放電の有無を判定することができる。また、判定部124は、加工済データのクラスタリングにより信号の位相特性を求め、これに基づいて加工済データが部分放電信号を含むか否かを判定してもよい。
【0015】
通信部125は、検証サーバ20に検証させるデータを送信し、検証結果を受信する。具体的には、通信部125は、部分放電の判定結果と、当該判定の根拠となった加工済データと、加工前の計測データと、計測データの加工に用いたパラメータ(記憶部122が記憶するパラメータ)を検証サーバ20に送信する。なお、部分放電がない場合、計測データにはノイズのみが含まれ、部分放電信号は含まれない。
【0016】
更新部126は、通信部125が受信した検証結果に基づいて、記憶部122が記憶するパラメータを更新する。検証結果は、例えばパラメータの更新の要否を示す。更新部126は、検証結果がパラメータの更新をすべきことを示す場合、加工済データにノイズが含まれないようにパラメータを更新する。
【0017】
出力部127は、判定部124による判定結果を出力する。例えば、出力部127は、判定結果を表示するための表示データを生成し、出力する。出力部127は、例えばインタフェースを介して接続されたタブレットなどの表示端末に表示データを出力してもよいし、広域ネットワークNを介して接続された端末に表示データを出力してもよい。
【0018】
図3は、第1の実施形態に係る検証サーバ20の機能構成を表す機能ブロック図である。
検証サーバ20は、通信部201、記憶部202、検証部203、第一分析部204、第二分析部205、記録部206を備える。
【0019】
通信部201は、広域ネットワークNを介して複数の検出装置10との通信を行う。
記憶部202は、複数のサイトSにおける複数の電力機器Mから収集した波形データを記憶する。記憶部202は、計測データおよび加工済データに関連付けて、当該信号の発生元の電力機器MのID、サイトSのID、計測時刻、および部分放電の判定結果を記憶する。また、記憶部202は、加工済データとして、実験室で得られた部分放電信号を記憶してよい。また、サイトSから収集されたデータについては、実験室で得られた部分放電信号との比較によって確度の高い(例えば、99%以上)もののみを記憶していてもよい。確度は、例えば、最大放電強度、強度分布、位相ごとの頻度の比較によって求めることができる。
【0020】
検証部203は、記憶部202が記憶する部分放電を表す複数の波形データと、受信した加工済データとを比較することで、当該加工済データが表す波形が部分放電の波形と類似しているか否かを判定する。例えば、記憶部202が記憶する加工済データのうち、部分放電があると判定されたものの確率分布を表す確率密度関数を生成し、受信した加工済データを当該確率密度関数に代入して得られた確率に基づいて、部分放電の波形との類似度を算出する。検証部203は、例えば類似度が所定の閾値以上である場合に、加工済データが表す波形が部分放電の波形と類似していると判定する。例えば、検証部203は、複数の加工済データを用いて、混合ガウスモデルなどの教師なし学習手法により確率密度関数を得ることができる。また、他の実施形態においては、記憶部202に記録されたデータを学習用データセットとし、ニューラルネットワークモデルなどの教師あり学習手法によって得られた判別関数に、受信した加工済データを入力することで得られた部分放電を含む確率に基づいて、部分放電の波形との類似度を算出してもよい。この場合、判別関数は、加工済データを入力サンプルとし、判定結果を出力サンプルとするに基づいて、加工済データが入力された場合に、部分放電信号を含む確率を出力するように学習される。
【0021】
第一分析部204は、部分放電がないと判定され、かつ部分放電の波形と類似していると判定された加工済データについて、記憶部202が記憶する他の加工済データに基づいてパラメータの更新の要否を判定する。
第二分析部205は、部分放電があると判定され、かつ部分放電の波形と類似していないと判定された計測データについて、記憶部202が記憶する他の計測データに基づいてパラメータの更新の要否を判定する。
【0022】
記録部206は、第一分析部204または第二分析部205によってパラメータの更新の必要がないと判定された場合に、計測データおよび加工済データを、信号の発生元の電力機器MのID、サイトSのID、計測時刻、および部分放電の判定結果に関連付けて記憶部202に記録する。
【0023】
図4は、第1の実施形態の検出装置10の動作を表す機能ブロック図である。検出装置10は、記憶部202が記憶する測定周期ごとに、以下に示す検出処理を実行する。検出装置10の取得部121は、センサ11から監視対象の電力機器Mの計測データを取得する(ステップS1)。計測データは、記憶部202が記憶するサイクル数分の期間に係る波形を示す。次に、加工部123は、記憶部122が記憶するバンドパス周波数帯域に従って計測データをフィルタリングし、N周期の計測データの平均値を得ることで、加工済データを生成する(ステップS2)。
【0024】
次に、判定部124は、記憶部122が記憶するパラメータに基づいて、加工部123が生成した加工済データに部分放電信号が含まれるか否かを判定する(ステップS3)。具体的には、判定部124は、高周波信号と低周波信号とのそれぞれについて、記憶部122が記憶する検出閾値を超える部分を抽出し、検出閾値を超えるタイミングのマッチング数が記憶部122が記憶するマッチング閾値以上である場合に、部分放電が有ると判定する。
【0025】
通信部125は、検証サーバ20に、ステップS1で取得した計測データと、ステップS2で得られた加工済データと、ステップS3による部分放電の判定結果と、記憶部122が記憶するパラメータと、サイトSのIDと電力機器MのIDとを送信する(ステップS4)。その後、通信部125は、検証サーバ20から検証結果を受信する(ステップS5)。更新部126は、ステップS5で受信した検証結果に基づいて、記憶部122が記憶するパラメータを更新する(ステップS6)。具体的には、検証サーバ20から受信した検証結果において、低周波側のパラメータの更新が必要であることを示す場合、更新部126は、低周波側のバンドパス周波数を狭めてもよいし、また低周波側の検出閾値を上げてもよい。また、検証サーバ20から受信した検証結果において、高周波側のパラメータの更新が必要であることを示す場合、更新部126は、高周波側の検出閾値を下げてもよい。
【0026】
出力部127は、ステップS3の判定結果と、ステップS5で受信した検証結果とを表示させるための表示データを生成し、ディスプレイに出力する(ステップS7)。
【0027】
なお、ステップS5で受信した検証結果がパラメータの更新を求めるものである場合に、加工部123および判定部124がステップS1で取得した計測データについて、ステップS6で更新されたパラメータを用いて改めて加工し、部分放電の有無の判定を行ってもよい。この場合、判定部124は、1回目の判定において、加工済データにノイズが残ったために判定が適切でなかった場合に、判定しなおすことができる。
【0028】
図5は、第1の実施形態に係る検証サーバ20の動作を示すフローチャートである。
通信部201は、広域ネットワークNを介して検出装置10から計測データ、加工済データ、部分放電の判定結果、計測データの加工に用いたパラメータ、サイトSのIDおよび電力機器MのIDを受信する(ステップS21)。検証部203は、受信した判定結果が、部分放電があることを示すか否かを判定する(ステップS22)。
【0029】
判定結果が部分放電がないことを示す場合(ステップS22:NO)、検証部203は、部分放電の誤検出の有無を検証する。検証部203は、記憶部202が記憶する加工済データのうち、部分放電があると判定されたものの分布と、受信した加工済データとを比較し、受信した加工済データが部分放電の波形と類似しているか否かを判定する(ステップS23)。検証部203は、加工済データが表す波形が部分放電の波形と類似していないと判定した場合(ステップS23:NO)、検出装置10による部分放電の判定結果が正しいと判断する。この場合、記録部206は、ステップS1で受信したデータを記憶部202に記録する(ステップS24)。このとき、記録部206は、ステップS1で受信したデータと記憶部が記憶する部分放電に係る加工済データとを比較し、部分放電信号を表す確度が所定値以上である場合に、記憶部202に記録するものであってよい。そして通信部201は、パラメータの更新が不要であることを示す検証結果を検出装置10に送信する(ステップS25)。
【0030】
他方、検証部203は、加工済データが表す波形が部分放電の波形と類似していると判定した場合(ステップS23:YES)、第一分析部204は、部分放電の判定結果が誤っている可能性があると判断する。このことは、加工済データに部分放電を表す信号が含まれているにも関わらず、これを検出できなかった可能性があることを示す。第一分析部204は、後述する加工済データの分析を行う(ステップS26)。そして、通信部201は、検証結果を検出装置10に送信する(ステップS24)。
【0031】
判定結果が部分放電があることを示す場合(ステップS22:YES)、検証部203は、部分放電の誤検出の有無を検証する。検証部203は、記憶部202が記憶する加工済データのうち、部分放電があると判定されたものの分布と、受信した加工済データとを比較し、受信した加工済データが部分放電の波形と類似しているか否かを判定する(ステップS27)。検証部203は、加工済データが表す波形が部分放電の波形と類似していると判定した場合(ステップS27:YES)、検出装置10による部分放電の判定結果が正しいと判断する。この場合、記録部206は、ステップS1で受信したデータを記録部206に記録する(ステップS28)。そして、通信部201は、パラメータの更新が不要であることを示す検証結果を検出装置10に送信する(ステップS24)。
【0032】
他方、検証部203は、加工済データが表す波形が部分放電の波形と類似していないと判定した場合(ステップS26:NO)、第二分析部205は、部分放電の判定結果が誤っている可能性があると判断する。このことは、加工済データに部分放電を表す信号が含まれているにも関わらず、これを検出できなかった可能性があることを示す。第一分析部204は、後述する計測データの分析を行う(ステップS29)。そして、通信部201は、検証結果を検出装置10に送信する(ステップS24)。
【0033】
図6は、第1の実施形態に係る加工済データの分析処理を示すフローチャートである。第一分析部204は、ステップS1で受信した加工済データの振幅の最大値が所定の振幅閾値以上であるか否かを判定する(ステップS41)。また第一分析部204は、ステップS1で受信した加工済データの振幅の最大値と平均値の差が所定の偏差閾値以上であるか否かを判定する(ステップS42)。振幅閾値および偏差閾値は、例えば記憶部202が記憶する他の部分放電を表す加工済データに基づく統計処理によって求められたものであってよい。
【0034】
第一分析部204は、ステップS1で受信した判定結果が、同じサイトSの他の電力機器Mの判定結果と一致するか否かを判定する(ステップS43)。また第一分析部204は、ステップS1で受信した加工済データと、他のサイトSの電力機器Mの加工済データとが類似するか否かを判定する(ステップS44)。第一分析部204は、検証部203と同様の手法で類似か否かを判定してよい。同じサイトSの他の電力機器Mと判定結果が同一であるということや、異なるサイトSの電力機器Mと加工済データが類似しないということは、加工済データに含まれる信号が、サイトSに特有のノイズである可能性があることを示す。
【0035】
第一分析部204は、加工済データの振幅の最大値が振幅閾値以上であり(ステップS41:YES)、加工済データの振幅の最大値と平均値の差が偏差閾値以上であり(ステップS42:YES)、判定結果が同じサイトSの他の電力機器Mの判定結果と一致し(ステップS43:YES)、かつ加工済データが他のサイトSの加工済データと類似しない場合(ステップS44:NO)に、高周波信号に係るパラメータを変更する必要があると判定する(ステップS45)。つまり、第一分析部204は、当該加工済データに部分放電が含まれる可能性があるため、同様の加工済データから部分放電を検出できるようにパラメータを変更すべきと判定する。
【0036】
第一分析部204は、加工済データの振幅の最大値が振幅閾値未満である場合(ステップS41:NO)、加工済データの振幅の最大値と平均値の差が偏差閾値未満である場合(ステップS42:NO)、判定結果が同じサイトSの他の電力機器Mの判定結果と一致しない場合(ステップS43:NO)、または加工済データが他のサイトSの加工済データと類似する場合(ステップS44:YES)に、高周波信号に係るパラメータを変更する必要がないと判定する(ステップS45)。つまり、第一分析部204は、当該加工済データに表れる信号がノイズである可能性が高いため、パラメータを維持してもよいと判定する。
【0037】
図7は、第1の実施形態に係る計測データの分析処理を示すフローチャートである。分析対象となる計測データについて、検出装置10は部分放電がないと判定している。したがって、当該計測データには、ノイズのみが表れているはずである。
【0038】
第二分析部205は、ステップS1で受信した計測データと、記憶部202が記憶する同じ電力機器Mについての計測データのうち、同じ月に計測されたものと類似しているか否かを判定する(ステップS61)。第二分析部205は、ステップS1で受信した計測データと、記憶部202が記憶する同じ電力機器Mについての計測データのうち、同じ曜日に計測されたものと類似しているか否かを判定する(ステップS62)。第二分析部205は、ステップS1で受信した計測データと、記憶部202が記憶する同じ電力機器Mについての計測データのうち、同じ時間帯に計測されたものと類似しているか否かを判定する(ステップS63)。つまり、第二分析部205は、計測データに表れるノイズが所定の条件下で頻出するものであるか否かを判定する。所定の条件下で頻出するノイズが含まれる場合、サイトSの環境が変化し、除去すべきノイズが増えた可能性がある。
【0039】
第二分析部205は、ステップS1で受信した計測データに表れるノイズが電源周期における異常ノイズであるか否かを判定する(ステップS64)。部分放電信号は、電源周期に同期して発生するため、電源周期におけるノイズが混入すると誤判定を招きやすくなる。
【0040】
第二分析部205は、受信した計測データが、同じ月に計測された計測データ、同じ曜日に計測された計測データ、または同じ時間帯に計測された計測データと類似している場合、または電源周期における異常ノイズを含む場合に、低周波信号に係るパラメータを変更する必要があると判定する(ステップS65)。
【0041】
他方、第二分析部205は、受信した計測データが、同じ月に計測された計測データ、同じ曜日に計測された計測データ、および同じ時間帯に計測された計測データの何れに対しても特異的であり、かつ電源周期における異常ノイズを含まない場合に、低周波信号に係るパラメータを変更する必要がないと判定する(ステップS66)。
【0042】
このように、第1の実施形態に係る検出システム1は、以下のようにノイズ除去に係るパラメータを更新する。取得部121は、監視対象の電力機器Mに取り付けられたセンサ11から計測データを取得する。加工部123は、電力機器Mに関連付けられたパラメータに基づいて計測データのノイズを除去する。判定部124は、加工済データに基づいて監視対象に部分放電が生じているか否かを判定する。更新部126は、過去に取得された複数の参照計測データのうち、部分放電が生じているか否かの判定結果が同じものに基づいて、ノイズ除去に係るパラメータを更新する。このように、検出システム1は、過去に取得された複数の参照計測データを用いてパラメータを更新することで、環境によって異なるノイズを除去し、部分放電を検出することができる。
【0043】
また、第1の実施形態に係る検出システム1は、広域ネットワークNを介して複数の検出装置10に接続された検証サーバ20が、複数の電力機器Mにおける参照計測データを用いてパラメータの更新の要否を検証する。これにより、検出システム1は、サイトSを超えて収集された部分放電に関するデータを用いてパラメータを更新することができる。
【0044】
なお、第1の実施形態に係る検出システム1は、サイトSに設けられた検出装置10が部分放電の有無の検出を行うが、これに限られない。たとえば、他の実施形態に係る検出システム1は、部分放電の有無を判定する判定部124の機能を検証サーバ20が持っていてもよい。この場合、検出装置10は部分放電の有無を判定せずに、計測データと加工済データとを検証サーバ20に送信する。また検証サーバ20は、
図5に示すステップS2において、判定部124による判定処理を行う。また他の実施形態においては、検出装置10と検証サーバ20の双方で判定処理を行ってもよい。
また他の実施形態においては、検出装置10が検証サーバ20の検証部203の機能を有していてもよい。この場合、検出装置10は、同じサイトSにおける参照計測データを用いて検証を行うことができる。
【0045】
また、第1の実施形態に係る検出システム1は、
図6、7に示す方法でパラメータの更新の要否を判定するが、これに限られない。例えば、
図6に示す処理ではステップS41およびステップS42で加工済みデータの振幅の最大値と偏差とを用いて分析を行うが、これに限られず、第一分析部204は、ピーク周波数やSN比などの波形の他の特徴を用いて分析してもよい。また、
図6に示すフローチャートでは、ステップS41、ステップS42、ステップS43およびステップS44の条件の何れか1つでも満たさない場合に、変更が不要と判定するが、これに限られない。例えば、第一分析部204は、ステップS41、ステップS42、ステップS43およびステップS44の条件の何れか1つにおいて顕著に閾値を超える場合に、他の条件に関わらず変更が必要と判定してもよい。
【0046】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、過去に取得された複数の参照計測データを用いてパラメータを更新することにより、環境によって異なるノイズを除去し、部分放電を検出することができる。
【0047】
検出装置10の演算装置12および検証サーバ20は、それぞれコンピュータによって実現される。演算装置12のコンピュータは、バスで接続されたプロセッサ、メモリ、補助記憶装置などを備え、検出プログラムを実行することによって取得部121、記憶部122、加工部123、判定部124、通信部125、更新部126、出力部127を備える装置として機能する。
検証サーバ20のコンピュータは、検証プログラムを実行することによって通信部201、記憶部202、検証部203、第一分析部204、第二分析部205、記録部206を備える装置として機能する。
プロセッサの例としては、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、マイクロプロセッサなどが挙げられる。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えば磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
なお、演算装置12または検証サーバ20の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)等のカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を用いて実現されてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。このような集積回路も、プロセッサの一例に含まれる。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0049】
1…検出システム 10…検出装置 11…センサ 12…演算装置 121…取得部 122…記憶部 123…加工部 124…判定部 125…通信部 126…更新部 127…出力部 20…検証サーバ 201…通信部 202…記憶部 203…検証部 204…第一分析部 205…第二分析部 206…記録部 M…電力機器 N…広域ネットワーク S…サイト