(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131624
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】キャパシタ
(51)【国際特許分類】
H01G 11/24 20130101AFI20230914BHJP
H01G 11/36 20130101ALI20230914BHJP
H01G 11/60 20130101ALI20230914BHJP
H01G 11/62 20130101ALI20230914BHJP
【FI】
H01G11/24
H01G11/36
H01G11/60
H01G11/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036494
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲村 達也
(72)【発明者】
【氏名】江崎 賢一
(72)【発明者】
【氏名】尾花 良哲
(72)【発明者】
【氏名】信森 千穂
(72)【発明者】
【氏名】南浦 武史
【テーマコード(参考)】
5E078
【Fターム(参考)】
5E078AA01
5E078AB02
5E078AB06
5E078AB13
5E078BA04
5E078BA12
5E078BA13
5E078BA14
5E078BA15
5E078BA32
5E078BA44
5E078BA47
5E078BB26
5E078BB33
5E078CA06
5E078CA08
5E078DA06
5E078FA02
5E078FA03
5E078FA04
5E078FA05
5E078FA12
5E078FA13
5E078HA05
5E078HA12
(57)【要約】
【課題】エネルギー密度の高いキャパシタを提供する。
【解決手段】第1活物質を含む第1電極と、第2活物質を含む第2電極と、前記第1電極と第2電極との間に介在するセパレータと、電解液と、を備え、第1活物質および前記第2活物質のうち少なくとも前記第1活物質は、炭素材料を含み、炭素材料のラマンスペクトルにおいて、Gバンドに由来するピークAが観測され、ピークAの半値幅が50cm
-1以上であり、X線回折法(XRD)による炭素材料の回折プロファイルにおいて、2θ=26°付近に、(002)面に由来する回折ピークBが観測され、回折ピークBから導出される炭素材料の層間距離が0.330nm以上0.360nm以下であり、電解液は、イオン液体を含み、イオン液体は、複素芳香環を有するカチオンを含む、キャパシタ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1活物質を含む第1電極と、
第2活物質を含む第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に介在するセパレータと、
電解液と、を備え、
前記第1活物質および前記第2活物質のうち少なくとも前記第1活物質は、層構造を有する炭素材料を含み、
ラマン分光法による前記炭素材料のラマンスペクトルにおいて、Gバンドに由来するピークAが観測され、前記ピークAの半値幅が50cm-1以上であり、
X線回折法(XRD)による前記炭素材料の回折プロファイルにおいて、2θ=26°付近に、(002)面に由来する回折ピークBが観測され、
前記回折ピークBから導出される前記炭素材料の層間距離が0.330nm以上0.360nm以下であり、
前記電解液は、イオン液体を含み、
前記イオン液体は、複素芳香環を有するカチオンを含む、キャパシタ。
【請求項2】
前記炭素材料は、グラフェンを含む、請求項1に記載のキャパシタ。
【請求項3】
前記炭素材料は、還元型酸化グラフェンを含む、請求項2に記載のキャパシタ。
【請求項4】
4.0V以上の電圧を印加したときの前記第1活物質の質量当たりの静電容量が、300F/g以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載のキャパシタ。
【請求項5】
前記カチオンは、イミダゾリウムカチオンを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のキャパシタ。
【請求項6】
前記カチオンは、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオンを含む、請求項5に記載のキャパシタ。
【請求項7】
前記電解液は、前記イオン液体を80質量%以上含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のキャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャパシタに関し、特にグラフェンを電極材料に用いるキャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
グラフェンは、理論的な比表面積が約2600m2/gであり、かつ導電性を有するため、キャパシタ用電極材料として有望である。
【0003】
特許文献1は、2枚以上のグラフェンシートがカーボンナノチューブを介して平行に集積され、さらにこのグラフェンシート集積体が相互にカーボンナノチューブにより電気的及び機械的に3次元状に連結されたことを特徴とするグラフェンシートフィルムを提案している。このフィルムを電極に用いて、290.6F/gの容量が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のキャパシタは、リチウムイオン電池と比較した場合出力密度は高いものの、エネルギー密度は依然として低く、用途が限定されている。キャパシタの用途を拡大するためには、キャパシタのエネルギー密度を一層高めることが要望されている。
【0006】
キャパシタの動作電圧を高くするほど、より高いエネルギー密度が得られる。そこで、高電圧で動作する電解液と電極材料の組み合わせが探索されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記を鑑み、本発明の一側面は、第1活物質を含む第1電極と、第2活物質を含む第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在するセパレータと、電解液と、を備え、前記第1活物質および前記第2活物質のうち少なくとも前記第1活物質は、層構造を有する炭素材料を含み、ラマン分光法による前記炭素材料のラマンスペクトルにおいて、Gバンドに由来するピークAが観測され、前記ピークAの半値幅が50cm-1以上であり、X線回折法(XRD)による前記炭素材料の回折プロファイルにおいて、2θ=26°付近に、(002)面に由来する回折ピークBが観測され、前記回折ピークBから導出される前記炭素材料の層間距離が0.330nm以上0.360nm以下であり、前記電解液は、イオン液体を含み、前記イオン液体は、複素芳香環を有するカチオンを含む、キャパシタに関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エネルギー密度の高いキャパシタを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係るキャパシタの一部切り欠き斜視図である。
【
図2A】実施例1のキャパシタで用いた炭素材料のラマンスペクトルを示す。
【
図2B】比較例2のキャパシタで用いた炭素材料のラマンスペクトルを示す。
【
図2C】比較例3のキャパシタで用いた炭素材料のラマンスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、キャパシタとは、様々な蓄電機構を有するキャパシタを包含し、例えば、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等の蓄電機構を少なくとも部分的に有する蓄電デバイスを意味する。蓄電デバイスもしくはキャパシタは、一対の電極(キャパシタ用電極)と電解液とを備えている。電極は活物質を含む。
【0011】
活物質は、例えば、イオンをドープおよび脱ドープすることで容量を発現する。イオンの活物質へのドープとは、活物質へのイオンの吸着、活物質によるイオンの吸蔵、活物質とイオンとの化学的相互作用などを含む概念である。また、イオンの活物質からの脱ドープとは、活物質からのイオンの脱着、活物質からのイオンの放出、活物質とイオンとの化学的相互作用の解除などを含む概念である。ただし、ここでは、イオンの活物質へのドープとは、主に活物質へのイオンの吸着をいい、イオンの活物質からの脱ドープとは、主に活物質からのイオンの脱着をいう。活物質にイオンが吸着すると電気二重層が形成され、容量を発現する。すなわち、キャパシタ用電極は、主に分極性電極を意味するが、分極性電極の性質を有しつつファラデー反応も容量に寄与する電極であってもよい。
【0012】
本開示の一実施形態に係るキャパシタは、第1活物質を含む第1電極と、第2活物質を含む第2電極と、第1電極と第2電極との間に介在するセパレータと、電解液と、を備える。第1電極と第2電極とは、同じであってもよい。第1活物質および第2活物質のうち少なくとも第1活物質は、層構造を有する炭素材料を含む。すなわち、炭素材料は、炭素原子が平面内で六角形の網目を形成するように結合した層(一般に、グラフェン層またはグラフェンシートと呼ばれる)の積層構造を含む。炭素材料は、グラフェンを含んでもよい。
【0013】
グラフェンとは、炭素原子1個分の厚さを有するグラフェンシートを最小単位とするカーボン材料であり、通常は複数のグラフェンシートが積層された積層体を構成している。グラフェンシートとは、炭素原子1個分の厚さを有するsp2結合炭素で構成された集合体もしくは分子であり、シート状に広がるハニカム状の格子構造を有している。
【0014】
第1電極および第2電極のいずれか一方はキャパシタの正極であり、他方は負極である。本実施形態において、グラフェンの層構造を含む炭素材料は、正極側の活物質および負極側の活物質のいずれとしても用いられ得る。しかしながら、一実施形態において、上記炭素材料を活物質に含む電極(第1電極または第2電極)を負極として使用することで、飛躍的に容量が増大する。ここでは、第1電極および第2電極のうち少なくとも第1電極が上記炭素材料を活物質(第1活物質)に含む電極であるとして説明する。
【0015】
第1活物質をラマン分光法で分析すると、炭素材料のGバンドに由来するピークAが観測される。ここで、Gバンドは、グラフェン層内で六員環を構成する炭素原子間のsp2結合に由来するスペクトルであり、一般に、1580cm-1~1600cm-1の範囲にピーク位置を有する。
【0016】
炭素材料のラマンスペクトルにおいて、Gバンドに由来するピークAの半値幅は50cm-1以上であり、比較的ブロードなピークAが観測される。これは、グラフェン層内に含まれる欠陥等の影響により、炭素材料の結晶構造が理想的なグラフェンまたはグラファイト構造でないことを意味する。具体的には、例えば、グラフェン層内に酸素原子などの官能基が存在しており、グラフェン層内の炭素原子にsp2結合とsp3結合が混在していることを意味する。これにより、高電圧の印加によりグラフェン層間が広がり易く、カチオンおよびアニオンがグラフェン層間に挿入され易く、電気二重層の形成領域が拡大し易い。結果、50cm-1以上のGバンド半値幅を有する炭素材料を用いて、キャパシタの容量が飛躍的に増大する。
なお、ピークAの半値幅とは、半値全幅を意味する。
【0017】
炭素材料のラマンスペクトルには、Gバンドのほか、炭素原子間のsp3結合に由来するDバンド、および/またはアモルファスカーボンに起因するa-Cバンドが観察され得る。全体のラマンスペクトルから、Gバンドを分離し、半値幅を求める。
【0018】
ラマン分光は、例えば、HORIBA Jobin Yvon社製 LabRAM HR-800-UVを用いて行うことができる。He-Neレーザ光(波長633nm)を光源とし、金属片の上に置いた炭素材料の粉末を、測定波数が200cm-1~3700cm-1の範囲になるように、回折格子を断続的に動かしながら測定を実施する。
【0019】
高容量が得られ易い点で、Gバンドに由来するピークAの半値幅は、60cm-1以上であってもよく、65cm-1以上であってもよい。Gバンドに由来するピークAの半値幅は、100cm-1以下であってもよく、80cm-1以下であってもよい。
【0020】
一方で、X線回折法(XRD)による炭素材料の回折プロファイルには、2θ=26°付近に、(002)面に由来する回折ピークBが観測される。回折ピークBから、ブラッグの式を用いて導出される炭素材料の層間距離が0.330nm以上0.360nm以下である。これは、炭素材料において、グラフェンの六員環構造が面内で発達しているとともに、複数層のグラフェン層の積層構造が存在していることを意味する。これにより、カチオンおよびアニオンがグラフェン層間に挿入され易く、キャパシタの高容量化が容易に可能になる。炭素材料の層間距離は0.336nm超0.360nm以下であってもよく、0.336nm超0.350nm以下もしくは0.337nm以上0.350nm以下であってもよい。
【0021】
X線回折プロファイルの測定には、例えば、株式会社リガク製のRINT2000を用いることができる。X線源にCu-Kα線(λ=1.5418nm)を用い、2θ角の操作範囲を10°~60°、サンプリング幅を0.02°、スキャンスピードを2°/minとして測定を実施する。
【0022】
電解液は、イオン液体を含むことが好ましい。イオン液体としては、常温(25℃)および常圧(大気圧)下において液体状態で存在する塩化合物が好ましく用いられ得る。塩化合物を構成するカチオンとして、イミダゾリウム系カチオン、ピロリジニウム系カチオン、ピリジニウム系カチオン、ピペリジニウム系カチオン、アンモニウム系カチオン、ホスホニウム系カチオンなどが挙げられる。アニオンとしては、ハロゲン化物イオン(Cl-、Br-など)、テトラフルオロボレートイオン(BF4
-)、ヘキサフルオロホスフェートイオン(PF6
-)、ビス(フルオロスルホニル)イミドイオン((FSO2)2N-)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドイオン((CF3SO2)2N-)などが挙げられる。
【0023】
これらのカチオンのなかでも、複素芳香環を有するカチオンを用いることで、極めて高い容量を実現できる。この理由は現在解明中であるが、芳香族環に由来する非局在性のπ軌道は、グラフェンのπ軌道と結合し易く、特異的に安定な吸着状態を形成するためと考えられる。
【0024】
複素芳香環を有するカチオンは、イミダゾリウムカチオンであってもよい。イミダゾリウムカチオンは、イミダゾール骨格の水素の一部がアルキル基などで置換されたカチオンであってもよい。
【0025】
イミダゾリウムカチオンの例として、複素芳香環を有するカチオンは、1-C1-3アルキル-3-C1-3アルキルイミダゾリウムカチオンであってもよく、より具体的には、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオンを含んでもよい。カチオンの80モル%以上が1-C1-3アルキル-3-C1-3アルキルイミダゾリウムカチオンもしくは1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオンであってもよい。
【0026】
炭素材料は、還元型酸化グラフェンを含んでもよい。還元型酸化グラフェンは、酸化グラフェンを還元することで得られる。
【0027】
酸化グラフェン(以下、「GO」とも称する。)は、グラフェンシートに酸素含有基が結合した構造を有する。酸素含有基は、主にグラフェンシート積層体のエッジ面に結合していると考えられる。酸素含有基は、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基等の親水性基である。酸化グラフェン(GO)は、一般に水等の極性溶媒に対する分散性を有する。酸化グラフェン(GO)は、sp3結合炭素を含むため、一般に絶縁性を有する。
【0028】
酸化グラフェン(GO)を還元することで、酸素含有基が除去され、還元型酸化グラフェン(以下、「rGO」とも称する。)が得られる。還元型酸化グラフェン(rGO)は、導電性を有するグラフェン類縁体である。還元型酸化グラフェンには、還元工程で除去されなかった酸素含有基が含まれ得る。還元条件を制御し、還元型酸化グラフェンに残存する酸素含有基の量を制御することによって、Gバンドに由来するピークAの半値幅が50cm-1以上であって、層間距離が0.330nm以上0.360nm以下の炭素材料が実現され得る。加えて、酸素含有基により、グラフェンシートの平面構造に歪みが生じ、層構造の乱れや、シートの折れ曲がりにより三次元構造が形成され得る。これにより、カチオンおよびアニオンが吸着可能な実効的な表面積が増大し、極めて高い容量を実現できる。
【0029】
一般的なグラフェンは、通常、平坦なシート状の形態を有している。一方、本実施形態のキャパシタに用いられるグラフェンは、平坦なシート状ではなく、層構造の乱れ(もしくは層間距離の乱れ)を有する(もしくは、三次元構造を有する)様々な形態のグラフェンシート積層体であってもよい。三次元構造を有するグラフェン(グラフェンシート積層体)を活物質に用いることで、キャパシタの容量が飛躍的に増大する。
【0030】
三次元構造とは、主に、フレーク状の粒子内に形成されたミクロな三次元構造(すなわち微細構造)を意味する。三次元構造を有することで、平坦なシート状のグラフェンに比べてグラフェンシート同士の重なりが顕著に抑制され、グラフェンの大きな表面積を有効に活用し得るようになる。三次元構造を有するグラフェンシート積層体の主面(主に002面(ベーサル面))には、複数の隆起部もしくは複数の窪み部(すなわち、襞)が形成されている。このような三次元構造により、グラフェンシート間の距離が適切に制御され、グラフェンシート同士の重なりが効果的に低減され得る。
【0031】
三次元構造は、襞を有するグラフェンシートが屈曲した折れ曲がり構造を含み得る。屈曲部分を介して、一枚のグラフェンシートがシートの面に交差する方向に折り重なって、積層体が形成され得る。折れ曲がり構造における屈曲部分の曲率半径は、例えば10~1000nmの範囲である。襞の間隔は、例えば10~100nmの範囲である。
【0032】
三次元構造における折れ曲がり構造は、屈曲部分の間のシート部分において、例えば、縮れ構造もしくは折りたたみ構造を含む。このとき、個々のグラフェンシート積層体は、自身が微細な多孔質構造(microporous structure)を有し得る。よって、積層体の表面近傍におけるイオンの拡散がより良好になる。縮れ構造や折りたたみ構造(すなわち、襞部分)の存在は、グラフェンシート積層体の電子顕微鏡(SEM、TEM等)写真により確認することができる。
【0033】
縮れ構造とは、例えば、ランダムに形成された複数の襞(ひだ)状の隆起部と窪み部とを有する構造であればよい。また、折りたたみ構造とは、一枚のグラフェンシート積層体が部分的に複数回折りたたまれた折りたたみ部を有する構造であり、縮れ構造の範疇に含まれる。折りたたみ部に形成される隆起部の高さもしくは窪み部の深さは、その構造を有するグラフェンシート積層体のカーボン部分の厚みよりも大きくてよく、カーボン部分の厚みの2倍以上であってもよい。
【0034】
本開示の一実施形態に係るキャパシタによれば、具体的に、4.0V以上の電圧を印加したときの活物質の質量当たりの静電容量が300F/g以上となるキャパシタを実現できる。活物質の質量当たりの静電容量が400F/g以上、500F/g以上、800F/g以上、もしくは1000F/g以上のキャパシタも実現可能である。なお、4.0V以上の電圧を印加したときの活物質の質量当たりの静電容量が300F/g以上であるとは、キャパシタを4.0V以上の電圧で充電後放電したときの静電容量が、ある電圧範囲において、300F/g以上となる電圧範囲が存在することをいう。静電容量が300F/g以上となる電圧範囲については、4.0V以上である限り、特に限定されない。4.0V以上の電圧範囲で静電容量が300F/g以上であり、且つ、4.0V未満のある電圧範囲においても静電容量が300F/g以上であってもよい。
【0035】
グラフェンシート積層体の平均積層数は、例えば10層以下であり、5層以下であってもよい。グラフェンシート積層体は、炭素原子1個分の厚さを有する最小単位のグラフェンシート(すなわち単層シート)に近づくほど望ましい。
【0036】
平均積層数は、X線回折プロファイルの002面(ベーサル面)に帰属される回折ピークから算出される面間距離(d002)から推算される(例えば、日本物理学会2015年秋季大会 概要集p1014)。或いは、グラフェンの電子顕微鏡(SEM等)写真から得られる推定値であればよい。例えば、グラフェンのSEM写真のスケールと、グラフェンシートの002面(ベーサル面)の面間距離からグラフェンシートの積層数を推定できる。例えば、任意の20個のグラフェンシート積層体を選択し、それぞれの積層数を推定し、最大側から5番目までの数値と、最小側から5番目までの数値とを省き、中間の10個の数値の平均値を平均積層数とすればよい。
【0037】
グラフェンシート同士の層間距離(すなわち、ベーサル面間距離)は、ランダムに変化していてもよい。層間距離のランダムな変化は、グラフェンシート積層体の結晶性が低いことを意味する。積層体における積層構造の乱れが大きいほど、層間距離の変化も顕著になる。
【0038】
グラフェンのX線回折プロファイルは、通常、002面に帰属される回折ピークBを有する。グラフェンシート同士の重なりが大きく、グラフェンの結晶性が高くなるほど、回折ピークBはシャープになる。
【0039】
一方、グラフェンが三次元構造を有する場合、回折ピークBはブロードになり、複数のピークに波形分離できるようになる。回折ピークBよりも高角側には、アモルファス相に帰属されるハローパターンが観測されてもよい。
【0040】
X線回折プロファイルから算出されるグラフェンの002面の面間距離d002は、0.330nm以上0.360nm以下である。d002は、2θ=26.38°付近の領域に観測される回折ピークを波形分離し、各成分についてd002を算出し、その平均として算出される。グラフェンの002面の距離d002は、0.340nm(3.40Å)以上がより好ましい。
【0041】
電解液の粘度を調整し、出力特性を高めるために、イオン液体に溶媒を混合し、電解液として用いてもよい。溶媒としては、イオン液体と均一に混ざり合う限りにおいて、キャパシタの電解液として従来用いられている溶媒(非水溶媒)を用いることができる。
【0042】
非水溶媒としては、高沸点溶媒が好ましい。例えば、γ-ブチロラクトンなどのラクトン類、プロピレンカーボネートなどのカーボネート類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの多価アルコール類、スルホランなどの環状スルホン類、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどのアミド類、酢酸メチルなどのエステル類、1,4-ジオキサンなどのエーテル類、メチルエチルケトンなどのケトン類、ホルムアルデヒドなどを用いることができる。
【0043】
電解液がイオン液体以外の溶媒を含む場合、電解液の全体に占めるイオン液体の割合は、80質量%以上もしくは90質量%以上であってもよい。
【0044】
上記の三次元構造を有するグラフェンを活物質に用いて、キャパシタ用電極としての第1電極および/または第2電極が製造される。キャパシタ用電極には、結着剤を含ませてもよい。結着剤は、上記三次元構造を有するグラフェンを電極層に成形する際に、グラフェン同士の結合や、グラフェンと集電体との結合を補助する役割を有する。
【0045】
以下に、本開示の一実施形態に係る炭素材料の製造方法および炭素材料を用いたキャパシタ用電極の製造方法について、炭素材料として還元型酸化グラフェンを用いる場合を例として説明する。
【0046】
≪グラフェンの製造方法≫
(i)分散液調製工程
まず、酸化グラフェンを含む水分散液を調製する。水分散液には、酸化グラフェンおよび水以外に、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の分散剤等を含ませてもよい。酸化グラフェンは、例えば、グラファイトの酸化を経由してグラファイトから単層または多層の状態で剥離生成されることができる。
【0047】
グラファイトの酸化は、例えば、水中で酸化剤を用いて行い得る。酸化剤には、硫酸、過マンガン酸カリウム、クロム酸、重クロム酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、過酸化物、過硫酸塩、有機過酸などを用い得る。水には水溶性溶媒を添加してもよい。水溶性溶媒としては、アルコール類、アセトンなどのケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類などが例示できる。水中での酸化反応により、酸化グラフェンの水分散液が生成する。
【0048】
酸化グラフェンの酸素含有率は、例えば10~60質量%であればよく、20~50質量%でもよく、30~50質量%でもよい。
【0049】
(ii)還元工程
次に、酸化グラフェンを含む水分散液中で酸化グラフェンを還元することにより、還元型酸化グラフェンを生成させる(第1還元工程)。還元方法としては、例えば水熱処理が好ましい。例えば、水分散液をオートクレーブに封入して水熱処理することにより、ゲル状生成物を生成させればよい。水熱処理の温度は、例えば、150℃以上、好ましくは170℃以上、200℃以下でもよい。
【0050】
水熱処理だけでも、三次元構造を有する還元型酸化グラフェンを得ることは可能であるが、還元を更に進行させるために、ゲル状生成物を還元剤と接触させてもよい(第2還元工程)。還元剤としては、例えば、金属ヒドリド類、ボロヒドリド類、ボラン類、ヒドラジンもしくはヒドラジド類、アスコルビン酸類、チオグリコール酸類、システイン類、亜硫酸類、チオ硫酸類、亜ジチオン酸類などが例示できる。例えば、アスコルビン酸ナトリウムのような水溶性の還元剤を含む水溶液にゲル状生成物を浸漬すればよい。水溶液の温度は、例えば20~110℃であればよく、40~100℃でもよく、50~100℃でもよい。還元剤の使用量は、還元剤の種類、第1カーボン原料(酸化グラフェン)の酸素含有量、ゲル状生成物量などに応じて適宜調整すればよい。
【0051】
その後、ゲル状生成物を凍結乾燥(フリーズドライ)させてもよい。凍結乾燥によれば、グラフェンの三次元構造が高度に維持された状態の乾燥ゲル(キセロゲル)を得ることができる。凍結乾燥は、例えば-50℃~0℃、好ましくは-50℃~-20℃で、100Pa以下、更には1Pa以下の減圧下で行えばよい。
【0052】
次に、乾燥ゲルを非酸化性雰囲気中で熱還元し、残留する官能基を脱離させる(第3還元工程)。
【0053】
非酸化性雰囲気は、減圧雰囲気(例えば0.1MPa以下(好ましくは10Pa以下))、還元雰囲気(例えば0.01MPa以下の水素雰囲気)、不活性ガス雰囲気(例えばN2、Ar、Ne、Heなどの流通雰囲気)などであってもよい。
【0054】
非酸化性雰囲気中での加熱温度は、700℃以上であって、800℃以上でもよく、900℃以上でもよく、1000℃以上でもよく、1200℃以上でもよい。ただし、還元型酸化グラフェンの酸素含有率の低減には限界があり、生産コストを考慮すると、非酸化性雰囲気中での加熱温度は、1800℃以下でもよく、1400℃以下でもよく、1200℃以下でもよい。温度範囲を規定する場合、これらの上限と下限は任意に組み合わせてよい。温度範囲は、例えば、1000℃~1800℃でもよい。
【0055】
非酸化性雰囲気中での加熱時間は、加熱条件、処理されるカーボン量によって適宜選択されるが、例えば、0.1~5時間程度であってもよい。
【0056】
熱還元後の乾燥ゲルを粉砕し、還元型酸化グラフェンの粉末(rGO粉末)を得る。
上記方法により、三次元構造を有するグラフェン(還元型酸化グラフェン)が製造される。製造されたグラフェンを用いて、例えば、以下の方法でキャパシタ用電極を製造できる。
【0057】
≪キャパシタ用電極の製造方法≫
(iii)電極化工程
例えば、rGO粉末を結着剤とともに水等の分散媒に分散させてスラリーを調製する。得られたスラリーを導電性基材(集電体)に塗布し、塗膜を乾燥することで、集電体に担持された電極層が形成され、キャパシタ用電極が得られる。その後、電極層を圧延してもよい。
【0058】
結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP)等のフッ素樹脂、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリビニルアセテート等の水溶性樹脂等を用い得る。
【0059】
電極層は、上述の特徴を有する炭素材料以外に、例えば活性炭のような他の活物質を含んでもよい。また、電極層は、カーボンナノチューブ(CNT)などの炭素繊維、カーボンブラック、黒鉛などの炭素粒子を含んでもよい。ただし、高容量と高い信頼性とを両立する観点から、上述の特徴を有する炭素材料(例えば、グラフェン)が電極層の50質量%以上を構成することが望ましく、65質量%以上を構成することがより好ましい。
【0060】
集電体には、金属箔、金属多孔体などを用い得る。集電体の材質としては、アルミニウム、銅、ニッケル、鉄、ステンレス、白金等を用い得る。これらの金属を主成分とする合金を用いてもよい。金属箔は、プレーン箔でもよいが、エッチング等により粗面化を施した箔、プラズマ処理を施した箔等であってもよい。金属多孔体は、例えば三次元網目構造を有する。
【0061】
金属多孔体の単位面積あたりの質量は、例えば500g/m2以下でもよく、150g/m2以下でもよい。金属多孔体の空隙率は、例えば80体積%~98体積%であればよく、90体積%~98体積%でもよい。
【0062】
金属多孔体の空隙の平均孔径は、例えば50μm以上、1000μm以下であればよく、400μm以上、900μm以下でもよく、450μm以上、850μm以下でもよい。
【0063】
≪キャパシタ≫
次に、上記キャパシタ用電極を第1電極および第2電極として備えるキャパシタの一例について説明する。
図1は、キャパシタ10の一部切り欠き斜視図である。
【0064】
図示例のキャパシタ10は、捲回型のキャパシタ素子1を具備する。キャパシタ素子1は、それぞれシート状の第1電極2と第2電極3とをセパレータ4を介して捲回して構成されている。第1電極2および第2電極3は、それぞれ金属製の第1集電体、第2集電体と、その表面に担持された第1電極層、第2電極層を有し、イオンを吸着および脱着することで容量を発現する。第1、第2集電体には、例えば、アルミニウム箔が用いられる。集電体の表面は、エッチングなどの手法によって粗面化してもよい。セパレータ4には、例えば、セルロースを主成分とする不織布が用いられる。第1電極2および第2電極3には、それぞれ引出部材としてリード線5a、5bが接続されている。キャパシタ素子1は、電解液(図示なし)とともに円筒型の外装ケース6に収容されている。外装ケース6の材質は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、鉄、真鍮などの金属であればよい。外装ケース6の開口は、封口部材7によって封止されている。リード線5a、5bは、封口部材7を貫通するように外部に導出されている。封口部材7には、例えば、ブチルゴムなどのゴム材が用いられる。
【0065】
電極層は、活物質を必須成分として含み、結着剤、導電助剤などを任意成分として含み得る。活物質は、既に述べた特徴を有する炭素材料を含む。電極層は、例えば、活物質、結着剤(例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC))などを水とともに混練機で練合して得られるスラリーを集電体の表面に塗布し、塗膜を乾燥し、圧延することで得られる。
【0066】
上記実施形態では、捲回型キャパシタについて説明したが、本発明の適用範囲は上記に限定されず、他構造のキャパシタ、例えば、積層型あるいはコイン型のキャパシタにも適用し得る。
【0067】
以下、実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0068】
<実施例1>
過マンガン酸カリウムを酸化剤に用いてグラファイトを水中で酸化させ、酸化グラフェンを得た。酸化グラフェンを1質量%含む水分散液を180℃で6時間、水熱処理して、ゲル状生成物を得た(第1還元工程)。
【0069】
引き続き、ゲル状生成物を還元剤であるアスコルビン酸ナトリウム水溶液(アスコルビン酸ナトリウム濃度1.0mol/L)に浸漬し、100℃に加熱して2時間保持し、カーボンを十分に還元した(第2還元工程)。
【0070】
その後、ゲル状生成物を-20℃で100Paの減圧下で凍結乾燥(フリーズドライ)させて、キセロゲルを得た。続いて、次に、キセロゲルを窒素流通下で、1200℃で、2時間加熱する熱処理を行った(第3還元工程)。熱処理後のキセロゲルを粉砕する処理を40秒間施し、還元型酸化グラフェンである炭素材料の粉末(粒径4~6μm、比表面積200m2/g)を得た。
【0071】
得られた炭素材料について、ラマン分光を行い、ラマンスペクトルにおけるGバンドの半値幅を求めた。また、X線回折法による回折プロファイルから(002)面に由来する回折ピークを特定し、回折ピークにおける回折角2θから(002)面の面間距離d002を求めた。結果を表1に示す。
【0072】
炭素材料の粉末100質量部と、結着剤であるCMC10質量部とを、適量の水に分散させてスラリーを調製した。得られたスラリーを厚み30μmのAl箔からなる集電体に塗布し、塗膜を110℃で真空乾燥し、圧延して、電極層を形成し、キャパシタ用電極を得た。
【0073】
一対のキャパシタ電極を準備し、20mm×20mmの正方形状に打ち抜いた。キャパシタ電極のそれぞれにリード線を接続し、セルロース製不織布のセパレータを挟んで電極層の塗工面同士が対向するようにキャパシタ電極を重ね合わせ、積層型のキャパシタ素子を得た。キャパシタ素子を電解液とともにAlラミネート製の外装ケースに収容し、封口部材で封口して、実施例1のキャパシタA1を完成させた。その後、2.5Vを印加しながら、60℃で6時間エージング処理を行った。
【0074】
キャパシタA1の電解液としては、イオン液体である1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(EMIBF
4)を用いた。下記に、EMIBF
4の化学式を示す。
【化1】
【0075】
<実施例2>
実施例1において、熱処理後のキセロゲルを粉砕する時間を300秒に変更し、炭素材料の粉末を得た。
これ以外については実施例1と同様にして、一対のキャパシタ電極を作製し、実施例2のキャパシタA2を得た。
【0076】
<実施例3>
炭素材料として、粒径分布8~10μmで、比表面積が400m2/gの還元型酸化グラフェンを準備した。このグラフェンを炭素材料として用いたこと以外は、実施例1と同様にして、一対のキャパシタ電極を作製し、実施例3のキャパシタA3を得た。
【0077】
<実施例4>
炭素材料として、粒径分布4~6μmで、比表面積が100~300m2/gの還元型酸化グラフェンを準備した。このグラフェンを炭素材料として用いたこと以外は、実施例1と同様にして、一対のキャパシタ電極を作製し、実施例4のキャパシタA4を得た。
なお、実施例4で用いたグラフェンは、粒径分布および比表面積が実施例1および2で用いたグラフェンと同程度であるが、グラフェンシート間の三次元構造が異なる。実施例1および2で用いたグラフェンは、襞を有するグラフェンシートが屈曲した折れ曲がり構造を含み、折れ曲がり構造における屈曲部分の曲率半径が10~1000nmの範囲にあり、襞の間隔が10~100nmの範囲にある。実施例4で用いたグラフェンは、屈曲部分の曲率半径および襞の間隔が上記範囲を満たさない。
【0078】
<実施例5>
炭素材料として、粒径分布4~6μmで、比表面積が400m2/gの還元型酸化グラフェンを準備した。このグラフェンを炭素材料として用いたこと以外は、実施例1と同様にして、一対のキャパシタ電極を作製し、実施例5のキャパシタA5を得た。
【0079】
<比較例1>
炭素材料として、グラファイトを物理剥離して得られたグラフェン(XG Sciences社製 xGnP C-750)を準備した。このグラフェンを炭素材料として用いたこと以外は、実施例1と同様にして、一対のキャパシタ電極を作製し、比較例1のキャパシタB1を得た。
【0080】
<比較例2>
炭素材料として、グラファイトを物理剥離して得られたグラフェン(Tiwan Graphene Company製 Gi-PW-F010)を準備した。このグラフェンを炭素材料として用いたこと以外は、実施例1と同様にして、一対のキャパシタ電極を作製し、比較例2のキャパシタB2を得た。
【0081】
<比較例3>
炭素材料として、活性炭(比表面積1760m2/g)を用いた。この場合、炭素材料(活性炭)のX線回折プロファイルには、(002)面に由来する回折ピークは観察されなかった。
これ以外については、実施例1と同様にして、一対のキャパシタ電極を作製し、比較例3のキャパシタB3を得た。
【0082】
<比較例4>
キャパシタの作製において、電解液として、イオン液体であるジエチルメチル(2-メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレート(DEMEBF4)を用いた。
これ以外については、実施例1と同様にして、比較例4のキャパシタB4を作製した。
【0083】
<評価1>
各キャパシタA1~A5、B1~B4の容量を下記の方法で評価した。
【0084】
製造後のキャパシタを、4.6Vまで、セル活物質重量(正極活物質質量と負極活物質量の合計)に対して1A/gの電流で定電流充電した。その後、4.6Vで8分間、定電圧充電を行った。
【0085】
定電圧充電終了後、セル活物質重量に対して0.1~1A/gの電流で、0Vまで定電流放電を行った。放電時において電圧が2.1Vから0.1Vに低下するまでの電圧変化の傾きから、容量を算出した。容量は、放電時の定電流値をI(A)、電圧が2.1Vから0.1Vに低下するまでの放電時間をt(sec)として下記式にて算出される。
容量(F)=It/(2.1-0.1)
【0086】
キャパシタA1~A5については、放電時の電圧の時間変化を測定すると、電圧が2.2V辺りで電圧変化が緩やかに(傾きの絶対値が小さく)なった後電圧変化が急に(傾きの絶対値が大きく)なり、変曲点を有する放電曲線が測定された。このため、キャパシタ容量を比較するにあたって、2.2V以上の電圧印加で充放電サイクルを行う場合であっても、変曲点通過後の2.1V以下の領域における放電曲線の傾きから容量を算出している。
【0087】
算出された容量から、正負極容量(正負極活物質質量)が同じとして単極容量を算出し、4.6V印加時の、正負極活物質質量1g当たりの単極容量(F/g)を評価した。
【0088】
表1に、キャパシタA1~A5、B1~B4の単極容量(F/g)の評価結果を示す。表1には、各キャパシタで用いた炭素材料における、ラマンスペクトルのGバンドの半値幅、および、X線回折プロファイルから求められる面間距離d002が、併せて示されている。
【0089】
また、
図2A~
図2Cに、キャパシタA1、B2、B3で用いた炭素材料のラマンスペクトルを示す。各ラマンスペクトルにおいて、1580cm
-1付近に存在するピークがGバンドである。Gバンドより低エネルギー側に、1270~1450cm-1の範囲に存在するピークはDバンドと呼ばれ、グラフェン層内の欠陥の存在を反映している。
【0090】
表1より、ラマンスペクトルにおけるGバンドの半値幅が50cm-1以上であり且つX線回折プロファイルから求められる面間距離d002が0.330nm以上0.360nm以下である炭素材料を活物質に用い、複素芳香環を有するカチオンを含むイオン液体を電解液に用いたキャパシタA1~A5では、極めて高い単極容量を実現できた。
【0091】
キャパシタB4では、キャパシタA1と同じ炭素材料を活物質に用いているが、電解液として、イオン液体のカチオンに複素芳香環を有していない。この場合、キャパシタB4の単極容量はキャパシタA1と比べて格段に低く、高い単極容量を実現できなかった。
【0092】
【0093】
<評価2>
単極容量の算出において、定電流充電および定電圧充電を行うときの電圧を、4.6Vから4.0V、4.2V、4.3V、および4.4Vに、それぞれ変更した。
これ以外については、評価1と同様にして単極容量を算出し、4.0V、4.2V、4.3V、および4.4Vをそれぞれ印加した時の、正負極活物質質量1g当たりの単極容量(F/g)を評価した。
【0094】
表2に、キャパシタA1について、4.0V、4.2V、4.3V、および4.4Vを印加した時の単極容量(F/g)の評価結果を示す。表2より、4.0V以上の電圧を印加した場合に、高容量を実現できる。
【0095】
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明によれば、エネルギー密度の高いキャパシタが得られる。
【符号の説明】
【0097】
1:キャパシタ素子、2:第1電極、3:第2電極、4:セパレータ、5a:第1リード線、5b:第2リード線、6:外装ケース、7:封口部材、10:キャパシタ