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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131625
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/02 20060101AFI20230914BHJP
   A47C 7/14 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
B60N2/02
A47C7/14 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036495
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】瀧谷 浩司
(72)【発明者】
【氏名】木村 明弘
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BD14
3B087BD19
3B087DB03
3B087DB04
(57)【要約】
【課題】 特許文献1に記載の発明に比べて、大きな荷重を受けることが可能なクッション長可変機能付き乗物用シートの一例を開示する。
【解決手段】 乗物用シートは、シートクッション3の前端側に配置され、当該シートクッション3の骨格を構成する金属製のフロントパネル7と、可動部3Aを変位可能とするスライド装置11であって、フロントパネル7に対してシート前後方向に変位可能な樹脂製のスライド部材12を有するスライド装置11と、フロントパネル7に対してシート前後方向に変位可能に連結され、スライド部材12と一体的に変位する金属製のブラケット14であって、可動部3Aに作用する荷重を当該フロントパネル7に伝達するためのブラケット14とを備える。これにより、大きな荷重を受けることが可能となる。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションの前端側に可動部を有し、クッション長を変更させることが可能な乗物用シートにおいて、
シートクッションの前端側に配置され、当該シートクッションの骨格を構成する金属製のフロントパネルと、
前記可動部を変位可能とするスライド装置であって、前記フロントパネルに対してシート前後方向に変位可能なスライド部材を有するスライド装置と、
前記フロントパネルに対してシート前後方向に変位可能に連結され、前記スライド部材と一体的に変位する金属製のブラケットであって、前記可動部に作用する荷重を当該フロントパネルに伝達するためのブラケットと
を備える乗物用シート。
【請求項2】
前記ブラケットの端部のうちシート前後方向端部における端部形状は、略U字状又は略L字状に構成されている請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記ブラケットのうち上下方向と略平行な部位を立ち上がり部としたとき、
前記立ち上がり部の前端側における上下方向寸法は、当該立ち上がり部の後端側における上下方向寸法より大きい請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記ブラケットのうち前記フロントパネルと対向する部位には、当該ブラケットの変位方向に延びる長円状の貫通穴が設けられ、かつ、当該貫通穴を貫通するボルトがフロントパネルに固定されており、
さらに、前記貫通穴の外縁のうち少なくとも長径方向と平行な部位には、前記フロントパネル側に延出したバーリング部が設けられている請求項2又は3に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記ブラケットと前記フロントパネルとの間には、当該フロントパネルに固定された樹脂製の支持部であって、当該ブラケットに滑り接触可能な支持部が配置されており、
前記支持部のうち前記ブラケットと直接的に面する部位には、当該ブラケットの変位方向に延びる溝が設けられている請求項1ないし4のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記ボルトの頭部と前記ブラケットとの間には、樹脂製のスペーサが配置されている請求項4に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クッション長を変更させることが可能な乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載のクッション長変更装置では、荷重を受ける部品が樹脂製である。このため、当該クッション長変更装置を備えた乗物用シートでは、大きな荷重を受けることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2020-531344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、上記点に鑑み、特許文献1に記載の発明に比べて、大きな荷重を受けることが可能な乗物用シートの一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
シートクッション(3)の前端側に可動部(3A)を有し、クッション長を変更させることが可能な乗物用シートは、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
【0006】
すなわち、当該構成要件は、シートクッション(3)の前端側に配置され、当該シートクッション(3)の骨格を構成する金属製のフロントパネル(7)と、可動部(3A)を変位可能とするスライド装置(11)であって、フロントパネル(7)に対してシート前後方向に変位可能なスライド部材(12)を有するスライド装置(11)と、フロントパネル(7)に対してシート前後方向に変位可能に連結され、スライド部材(12)と一体的に変位する金属製のブラケット(14)であって、可動部(3A)に作用する荷重を当該フロントパネル(7)に伝達するためのブラケット(14)とである。
【0007】
これにより、当該乗物用シートでは、可動部(3A)に作用する荷重を金属製のブラケット(14)にて受け、かつ、その受けた荷重が金属製のフロントパネル(7)に伝達される。したがって、当該乗物用シートは、特許文献1に記載の発明に比べて、大きな荷重を受けることが可能となる。
【0008】
なお、当該乗物用シートは、例えば、以下の構成であってもよい。
【0009】
すなわち、ブラケット(14)の端部のうちシート前後方向端部における端部形状は、略U字状又は略L字状に構成されていることが望ましい。
【0010】
また、ブラケット(14)のうち上下方向と略平行な部位を立ち上がり部(14B、14C)としたとき、立ち上がり部(14B、14C)の前端側における上下方向寸法(H1)は、当該立ち上がり部(14B、14C)の後端側における上下方向寸法(H2)より大きいことが望ましい。
【0011】
これにより、クッション長が短くなったとき、つまりブラケット(14)が格納されたときに、ブラケット(14)と他の部材と干渉してしまうことが抑制される。延いては、当該乗物用シートでは、上下方向の荷重に対する必要な曲げ剛性(=断面二次モーメント)が確保されるとともに、他の部材との干渉が回避され得る。
【0012】
また、ブラケット(14)のうちフロントパネル(7)と対向する部位には、当該ブラケットの変位方向に延びる長円状の貫通穴(14D)が設けられ、かつ、当該貫通穴(14D)を貫通するボルト(15)がフロントパネル(7)に固定されており、さらに、貫通穴(14D)の外縁のうち少なくとも長径方向と平行な部位には、フロントパネル(7)側に延出したバーリング部(14E)が設けられていることが望ましい。
【0013】
これにより、ブラケット(14)の上下方向の荷重に対する断面二次モーメントが大きくなるので、ブラケット(14)の曲げ剛性が大きくなる。
【0014】
また、ブラケット(14)とフロントパネル(7)との間には、当該フロントパネル(7)に固定された樹脂製の支持部(13A)であって、当該ブラケット(14)に滑り接触可能な支持部(13A)が配置されており、支持部(13A)のうちブラケット(14)と直接的に面する部位には、当該ブラケット(14)の変位方向に延びる溝(13E)が設けられていることが望ましい。
【0015】
これにより、ブラケット(14)と支持部(13A)との接触面積が大きくなることが抑制されるので、ブラケット(14)と支持部(13A)との摺動抵抗の増大が抑制され得る。
【0016】
さらに、ボルト(15)の頭部(15A)とブラケット(14)との間には、樹脂製のスペーサ(16)が配置されていることが望ましい。これにより、ブラケット(14)とボルト(15)との摺動抵抗の増大が抑制され得る。
【0017】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る乗物用シートを示す図である。
図2】第1実施形態に係るクッション長変更装置を示す図であって、クッション長が最も小さくなった状態を示す図である。
図3】第1実施形態に係るクッション長変更装置を示す図であって、クッション長が最も大きくなった状態を示す図である。
図4】第1実施形態に係るクッション長変更装置の分解斜視図である。
図5】第1実施形態に係るクッション長変更装置の一部の構成を示す図である。
図6】第1実施形態に係るクッション長変更装置の一部の構成を示す図である。
図7】第1実施形態に係るクッション長変更装置の一部の構成を示す図である。
図8】第1実施形態に係るスライド部材を示す図である。
図9】第1実施形態に係るブラケットを示す図である。
図10】第1実施形態に係るクッション長変更装置の一部の構成を示す図である。
図11】第1実施形態に係るクッション長変更装置の一部の構成を示す図である。
図12】第1実施形態に係るブラケットを示す図である。
図13】第1実施形態に係るスペーサを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0020】
本実施形態は、車両等の乗物に搭載されるシート(以下、乗物用シートという。)に本開示に係る乗物用シートが適用された例である。各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び部材又は部位の形状等を理解し易くするために記載されたものである。
【0021】
したがって、当該乗物用シートは、各図に付された方向に限定されない。各図に示された方向は、本実施形態に係る乗物用シートが車両に組み付けられた状態における方向である。斜線が付された図は、必ずしも断面図を示さない。
【0022】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示された乗物用シートは、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素、並びに図示された構造部位を備える。
【0023】
(第1実施形態)
<1.乗物用シートの概要>
乗物用シート1は、図1に示されるように、シートクッション3及びシートバック5等を少なくとも備える。シートクッション3は着席者の臀部を支持するための部位である。シートバック5は着席者の背部を支持するための部位である。
【0024】
当該シートクッション3の前端側には、可動部3Aが設けられている。可動部3Aは、シート前後方向に変位可能な部位である。着席者は、可動部3Aを変位させることにより、クッション長、つまりシートクッション3の前端位置を変更することが可能である。
【0025】
可動部3Aは、クッション長変更装置10(図2参照)、パッド等のクッション材(図示せず。)及び表皮部(図示せず。)等を有して構成されている。クッション長変更装置10は、図3に示されるように、金属製のフロントパネル7に装着されている。
【0026】
フロントパネル7は、クッションフレームの一部を構成する部材である。クッションフレームは、シートクッション3の骨格を構成する部材である。当該クッションフレームは、2本のサイドフレーム7A及びフロントパネル7等を有して構成されている。
【0027】
2本のサイドフレーム7Aそれぞれは、シート幅方向一端側及び他端側に配置された状態でシート前後方向に延びる金属製の部材である。フロントパネル7は、各サイドフレーム7Aの前端側を連結するようにシート幅方向に拡がるパネル状の部材である。
【0028】
<2.クッション長変更装置>
<2.1 クッション長変更装置の概要>
クッション長変更装置10は、図4に示されるように、スライド装置11、ブラケット14、当該ブラケット14と同数のボルト15、当該ボルト15と同数のスペーサ16、可動パネル17、サイドパネル18及び受けブラケット7A等を少なくとも有して構成されている。
【0029】
なお、本実施形態に係るブラケット14及びサイドパネル18は、図3に示されるように、シート幅方向一端側及び他端側それぞれに1つ設けられている。したがって、本実施形態に係るボルト15及びスペーサ16もそれぞれ2つ設けられている。
【0030】
可動パネル17及びサイドパネル18は、可動部3Aの前端側形状を構成するシェル構造体である。クッション材及び表皮部は、可動パネル17及びサイドパネル18の表面に配置される。
【0031】
受けブラケット7Aは、フロントパネル7に固定されてシートクッション3に作用する下向き荷重をフロントパネル7に伝達する。クッション材及び表皮部は、受けブラケット7Aの上面に配置される。なお、可動パネル17、サイドパネル18及び受けブラケット7Aは、金属製である。
【0032】
<2.1 スライド装置等について>
スライド装置11は、可動部3Aをシート前後方向に変位可能とするための機構である。当該スライド装置11は、図5に示されるように、スライド部材12、ベース部材13及びロック機構19等を有して構成されている。
【0033】
<ベース部材、スライド部材>
ベース部材13は、図6に示されるように、フロントパネル7に固定され樹脂製の部材である。当該ベース部材13には、支持部13A及びレール部13B等が設けられている。
【0034】
なお、支持部13A及びレール部13Bは、ブラケット14と同数だけ設けられている。そして、ベース部材13は、支持部13A及びレール部13Bと共に樹脂にて一体成形されている。
【0035】
支持部13Aは、ブラケット14と滑り接触(以下、摺接ともいう。)可能な状態で当該ブラケット14を支持する部位である。レール部13Bは、シート前後方向に延びるとともに、スライド部材12と摺接可能に接触した状態で当該スライド部材12を支持する部位である。
【0036】
なお、レール部13Bは、図7に示されるように、延び方向と直交する断面の形状が略L字状に構成されている。スライド部材12には、図8に示されるように、嵌合溝部12Aが設けられている。
【0037】
嵌合溝部12Aは、レール部13Bと摺接可能に嵌合する溝部である。具体的には、当該嵌合溝部12Aは、レール部13Bの水平部13C(図7参照)を上下方向両側から挟み込む2つの壁部、及び水平部13Cをシート幅向両側から挟み込む2つの壁部等を有している。
【0038】
スライド部材12は、フロントパネル7に対してシート前後方向、つまりレール部13Bの延び方向に変位可能な樹脂製の部材である。そして、当該スライド部材12には、可動パネル17が固定されている。なお、サイドパネル18は、可動パネル17に固定されている。
【0039】
<ロック機構>
ロック機構19は、スライド部材12をベース部材13、つまりフロントパネル7に対してスライド可能とする場合とスライド不可する場合とを切り替えるための機構である。
【0040】
当該ロック機構19は、図5に示されるように、ロックレバー19A、操作部19B、保持バネ19C及びアシストバネ(図示せず。)等を有して構成されている。アシストバネは、スライド部材12をベース部材13に対してシート前方を移動させる弾性力を発揮する。
【0041】
ロックレバー19Aは、ベース部材13に設けられた複数の凹部13D(図6参照)と係合する位置(以下、係合位置という。)と当該係合が解除された位置(以下、解除位置という。)との間で変位可能である。
【0042】
操作部19Bは、着席者等により操作される部位であって、ロックレバー19Aを変位させる操作力が入力される部位である。保持バネ19Cは、ロックレバー19Aを係合位置に保持する弾性力を発揮する弾性体である。
【0043】
したがって、操作部19Bに操作力が入力されると、ロックレバー19Aが解除位置となり、アシストバネにより可動部3Aがシート前方側に変位する。そして、操作力が消失すると、ロックレバー19Aが係合位置となる。
【0044】
<2.2 ブラケット等について>
各ブラケット14は、図5に示されるように、フロントパネル7に対してシート前後方向に変位可能に連結された金属製の部材である。そして、各ブラケット14は、スライド部材12と一体的に変位するとともに、可動部3Aに作用する荷重をフロントパネル7に伝達する。
【0045】
各ブラケット14は、図9に示されるように、基板部14A及び2つの立ち上がり部14B、14C等を有している。基板部14Aは、フロントパネル7と間接的に対向する部位である。当該基板部14Aには、長円状の貫通穴14Dが設けられている。
【0046】
貫通穴14Dの長径方向は、ブラケット14の変位方向、つまりシート前後方向に一致している。そして、ボルト15は、貫通穴14Dを貫通してフロントパネル7に固定されている(図10参照)。
【0047】
さらに、図10に示されるように、貫通穴14Dの外縁のうち少なくとも長径方向と平行な部位14Fには、バーリング部14Eが設けられている。バーリング部14Eは、当該外縁からフロントパネル7側に延出した突条である。
【0048】
バーリング部14Eの延出方向先端は、図11に示されるように、フロントパネル7と空隙を介して離間している。なお、本実施形態に係るバーリング部14Eは、バーリング加工により基板部14Aに一体成形されたものである。
【0049】
基板部14Aの下面、つまり基板部14Aのうちフロントパネル7と対向する面は、図11に示されるように、支持部13Aと摺接可能に接触している。なお、本実施形態に係る各ブラケット14は、2つの支持部13Aに接触している。
【0050】
各支持部13Aは、ブラケット14の変位方向に延びる突条状の部位である。そして、各支持部13Aのうちブラケット14と直接的に面する部位には溝13Eが設けられている。それら溝13Eは、ブラケット14の変位方向と平行に延びている。
【0051】
各立ち上がり部14B、14Cは、図9に示されるように、上下方向と略平行な壁部を構成する。換言すれば、各立ち上がり部14B、14Cは、基板部14Aと略直交する壁部を構成する。立ち上がり部14B、14Cの前端側における上下方向寸法H1(図12参照)は、立ち上がり部14B、14Cの後端側における上下方向寸法H2(図12参照)より大きい。
【0052】
そして、立ち上がり部14Bは、基板部14Aのシート幅方向一端側に設けられている。立ち上がり部14Cは、基板部14Aのシート幅方向他端側に設けられている。このため、ブラケット14の端部のうちシート前後方向端部における端部形状は、略U字状又は略コの字状となる。
【0053】
各立ち上がり部14B、14Cの上端には、水平方向に拡がるフランジ部14Gが設けられている。可動パネル17の下面は、フランジ部14Gの上面に溶接にて固定されている。このため、スライド部材12、2つのブラケット14及び可動パネル17は、一体的にシート前後方向に変位する。
【0054】
図10に示されるように、スペーサ16は、各ボルト15の頭部15Aと各基板部14Aとの間に配置されている。当該スペーサ16は樹脂製である。なお、スペーサ16は、図13に示されるように、筒部16A、フランジ16B、リング部16C及び連結部16D等を有して構成されている。
【0055】
筒部16Aは、ボルト15の首下部分を囲む略円筒状の部位である。フランジ16Bは、筒部16Aの上端から略水平方向に拡がる鍔状の部位である。リング部16Cは、フランジ16Bの外縁を囲む環状の部位である。
【0056】
連結部16Dは、リング部16Cとフランジ16Bの外縁と繋ぐ湾曲した部位である。そして、部16A、フランジ16B、リング部16C及び連結部16Dは、樹脂にて一体成形されている。
【0057】
<2.3 クッション長変更装置の作動>
操作部19Bに操作力が入力されると、ロックレバー19Aが解除位置となり、アシストバネにより可動部3Aがシート前方側に変位する。このため、各ブラケット14は、可動パネル17を介してスライド部材12と一体的にシート前方側にスライド変位する。
【0058】
このとき、各ブラケット14は、ボルト15の首下部分(本実施形態では、筒部16A)と貫通穴14Dの外縁のうち長径方向と平行な部位14F(本実施形態では、バーリング部14E)とが摺接しながら変位する。
【0059】
そして、操作部19Bへの操作力が消失すると、ロックレバー19Aが係合位置となるため、可動部3Aの変位が規制される。なお、可動部3Aをシート後方側に変位させる場合には、着席者は、ロックレバー19Aを解除位置とした状態で、可動部3Aをシート後方側に向けて押圧する必要がある。
【0060】
<3.本実施形態に係る乗物用シート(特に、クッション長変更装置)の特徴>
本実施形態に係る乗物用シート1では、可動部3Aに作用する荷重を金属製の各ブラケット14にて受け、かつ、その受けた荷重が金属製のフロントパネル7に伝達される。したがって、当該乗物用シート1は、特許文献1に記載の発明に比べて、大きな上下方向の荷重を受けることが可能となる。
【0061】
本実施形態に係る各ブラケット14では、立ち上がり部14B、14Cの前端側における上下方向寸法H1は、当該立ち上がり部14B、14Cの後端側における上下方向寸法H2より大きい。
【0062】
これにより、クッション長が短くなったとき、つまり各ブラケット14の後端側が受けブラケット7Aの下方側に位置して当該ブラケット14が格納されたときに(図2参照)、ブラケット14と受けブラケット7Aと干渉してしまうことが抑制される。
【0063】
延いては、当該乗物用シート1では、ブラケット14において、上下方向の荷重に対する必要な断面二次モーメントが確保されるとともに、ブラケット14と受けブラケット7Aとの干渉が回避され得る。
【0064】
各ブラケット14の貫通穴14Dの外縁のうち少なくとも長径方向と平行な部位14Fには、フロントパネル7側に延出したバーリング部14Eが設けられている。これにより、ブラケット14の上下方向の荷重に対する断面二次モーメントが大きくなるので、ブラケット14の曲げ剛性が大きくなる。
【0065】
各ブラケット14とフロントパネル7との間には、当該フロントパネル7に固定された樹脂製の支持部13Aが設けられ、当該支持部13Aのうちブラケット14と直接的に面する部位には、当該ブラケット14の変位方向に延びる溝13Eが設けられている。
【0066】
これにより、各ブラケット14と対応する支持部13Aとの接触面積が大きくなることが抑制されるので、各ブラケット14と対応する支持部13Aとの摺動抵抗の増大が抑制され得る。
【0067】
さらに、各ボルト15の頭部15Aと対応するブラケット14との間には、樹脂製のスペーサ16が配置されている。これにより、ブラケット14とボルト15との摺動抵抗の増大が抑制され得る。
【0068】
(その他の実施形態)
上述の実施形態に係るクッション長変更装置は、手動方式であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、電動モータ等のアクチュエータにて可動部3Aを変位させる構成であってもよい。
【0069】
上述の実施形態に係るブラケット14は、略U字断面形状を有する構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、略L字断面形状を有するブラケット14であってもよい。
【0070】
上述の実施形態に係るスライド部材12及びベース部材13は樹脂製であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、スライド部材12及びベース部材13のうち少なくとも一方を金属製又は金属がインサート成形により一体化された樹脂製であってよい。
【0071】
上述の実施形態では、スライド部材12とブラケット14とが別部材であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えばブラケット14がインサート成形によりスライド部材12に一体化された構成であってもよい。
【0072】
上述の実施形態に係るブラケット14では、バーリング部14Eが設けられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、バーリング部14Eが廃止されたブラケット14であってもよい。
【0073】
上述の実施形態に係る各ブラケット14では、上下方向寸法H1が上下方向寸法H2より大きい構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、上下方向寸法H1と上下方向寸法H2とが同一寸法である構成、又は上下方向寸法H1が上下方向寸法H2より小さい寸法であってもよい。
【0074】
上述の実施形態では、車両に本開示に係る乗物用シートを適用した。しかし、本明細書に開示された発明の適用はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、鉄道車両、船舶及び航空機等の乗物に用いられるシート、並びに劇場や家庭用等に用いられる据え置き型シートにも適用できる。
【0075】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0076】
1… 乗物用シート 3…シートクッション 3A… 可動部
5… シートバック 7…フロントパネル 7A… 受けブラケット
10… クッション長変更装置 11…スライド装置
12… スライド部材 12A…嵌合溝部 13… ベース部材
13A… 支持部 13B…レール部 13C… 水平部
13D… 凹部 13E…溝 14… ブラケット 14A… 基板部
14B、14C… 立ち上がり部 14D…貫通穴
14E… バーリング部 14G…フランジ部
15… ボルト 16…スペーサ 17… 可動パネル
18… サイドパネル 19…ロック機構 19A… ロックレバー
19B… 操作部 19C…保持バネ
図1
図2
図3
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図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13