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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131633
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 15/06 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
B60C15/06 C
B60C15/06 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036507
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】遠島 葉
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BA03
3D131BA05
3D131BB03
3D131BC13
3D131BC31
3D131CA03
3D131KA06
(57)【要約】
【課題】 ビード耐久性能をさらに向上する。
【解決手段】 ビード部4を備えた空気入りタイヤ1である。ビード部4には、カーカスプライ6Aのタイヤ軸方向の外側に隣接する補強ゴム部10が配されている。補強ゴム部10は、内側ゴム層11と外側ゴム層12とを含んでいる。外側ゴム層12の外端eは、内側ゴム層11の外端11eよりもタイヤ半径方向外側に位置する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤであって、
ビードコアがそれぞれ埋設された一対のビード部と、前記ビードコアの間を延びるカーカスとを備え、
前記カーカスは、前記ビードコアの間を延びる本体部と、前記各ビードコアの回りをタイヤ軸方向の内側から外側に折り返されてタイヤ半径方向外側に延びる折返し部とを含むカーカスプライを含み、
前記一対のビード部の少なくとも一方には、前記折返し部のタイヤ軸方向の外側に隣接する補強ゴム部が配されており、
前記補強ゴム部は、内側ゴム層と、前記内側ゴム層のタイヤ軸方向の外側に隣接する外側ゴム層とを含み、
前記外側ゴム層のタイヤ半径方向の外端は、前記内側ゴム層のタイヤ半径方向の外端よりもタイヤ半径方向外側に位置する、
空気入りタイヤ。
【請求項2】
ビードベースラインから前記外側ゴム層の前記外端までの高さは、タイヤ断面高さの25%~75%である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記外側ゴム層のタイヤ半径方向の内端は、前記内側ゴム層のタイヤ半径方向の内端よりもタイヤ半径方向外側に位置する、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記内側ゴム層及び前記外側ゴム層は、シート状ゴム部材からなり、
前記補強ゴム部は、前記シート状ゴム部材が積層されている部分からなる第1部分を含み、
正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷の状態において、前記第1部分は、前記空気入りタイヤと前記正規リムとの接触位置のタイヤ半径方向の外端を通るタイヤ軸方向線上に位置する、請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記第1部分の中の最大厚さ部分が、前記タイヤ軸方向線上に位置する、請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記補強ゴム部は、前記シート状ゴム部材が積層されていない部分からなる第2部分を含み、
前記第1部分の厚さTaと前記第2部分の厚さTbとの差(Ta-Tb)は、1mm以上である、請求項4又は5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記第1部分の厚さTaは、前記第2部分の厚さTbの1.5~2.5倍である、請求項6に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記外側ゴム層の損失正接tanδ2は、前記内側ゴム層の損失正接tanδ1よりも大きい、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記外側ゴム層の複素弾性率E*2は、前記内側ゴム層の複素弾性率E*1の60%以上である、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記外側ゴム層の複素弾性率E*2は、前記内側ゴム層の複素弾性率E*1よりも大きい、請求項9に記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記外側ゴム層、及び、前記内側ゴム層は、それぞれ、一定の厚さである等厚さ部を含む、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ビード部に、ビードエーペックスゴムが配された空気入りタイヤが記載されている。前記ビードエーペックスゴムは、ビードコアのタイヤ半径方向の外面から延びる本体エーペックと、前記本体エーペックよりもタイヤ軸方向外側に配された外貼りエーペックとを含んでいる。この空気入りタイヤは、耐久性能を向上するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-93755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ビード部の耐久性能(以下、「ビード耐久性能」という。)を高めることが求められており、とりわけ、高荷重が負荷される小型トラック用のタイヤにおいては、高いニーズがあった。
【0005】
本開示は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、ビード耐久性能をさらに高めることができる空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、空気入りタイヤであって、ビードコアがそれぞれ埋設された一対のビード部と、前記ビードコアの間を延びるカーカスとを備え、前記カーカスは、前記ビードコアの間を延びる本体部と、前記各ビードコアの回りをタイヤ軸方向の内側から外側に折り返されてタイヤ半径方向外側に延びる折返し部とを含むカーカスプライを含み、前記一対のビード部の少なくとも一方には、前記折返し部のタイヤ軸方向の外側に隣接する補強ゴム部が配されており、前記補強ゴム部は、内側ゴム層と、前記内側ゴム層のタイヤ軸方向の外側に隣接する外側ゴム層とを含み、前記外側ゴム層のタイヤ半径方向の外端は、前記内側ゴム層のタイヤ半径方向の外端よりもタイヤ半径方向外側に位置する、空気入りタイヤである。
【発明の効果】
【0007】
本開示の空気入りタイヤは、上記の構成を採用することで、ビード耐久性能をさらに向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態のタイヤのタイヤ子午線断面図である。
図2図1のビード部の拡大図である。
図3】シート状ゴム部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」という場合がある。)1の正規状態におけるタイヤ回転軸(図示省略)を含むタイヤ子午線断面図である。本開示は、例えば、小型トラック(商用車を含む)のタイヤ1に用いられる。但し、本開示は、乗用車用や重荷重用のタイヤ1に用いられてもよい。
【0010】
ここで、「正規状態」とは、タイヤ1が正規リムRにリム組みされ、かつ、正規内圧に調整された無負荷の状態である。以下、特に言及しない場合、タイヤ1の各部の寸法等は、この正規状態で測定された値である。
【0011】
「正規リムR」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば"標準リム"、TRAであれば"Design Rim"、ETRTOであれば"Measuring Rim"である。
【0012】
前記「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば"最高空気圧"、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES"に記載の最大値、ETRTOであれば"INFLATION PRESSURE"である。
【0013】
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、ビードコア5がそれぞれ埋設された一対のビード部4、4と、ビードコア5、5間を延びるカーカス6とを備えている。
【0014】
カーカス6は、ビードコア5、5間を延びる本体部6aと、各ビードコア5の回りをタイヤ軸方向の内側から外側に折り返されてタイヤ半径方向外側に延びる折返し部6bとを含むカーカスプライ6Aを含んでいる。カーカス6は、本実施形態では、タイヤ半径方向の内外に配された、2枚のカーカスプライ6A、6Bを含んでいる。カーカス6は、例えば、1枚のカーカスプライ6Aで形成されていてもよい。
【0015】
一対のビード部4の少なくとも一方には、折返し部6bのタイヤ軸方向の外側に隣接する補強ゴム部10が配されている。補強ゴム部10は、ビード部4の剛性を高めて、走行時の撓みを抑制してビード耐久性能を向上する。補強ゴム部10は、本実施形態では、各ビード部4に配されている。補強ゴム部10は、例えば、内のカーカスプライ6Aの折返し部6bのタイヤ軸方向の外側に隣接している。
【0016】
補強ゴム部10は、内側ゴム層11と、内側ゴム層11のタイヤ軸方向の外側に配された外側ゴム層12とを含んでいる。なお、補強ゴム部10は、内側ゴム層11と外側ゴム層12との間に配される1枚以上の中間ゴム層(図示省略)を含んでもよい。
【0017】
外側ゴム層12のタイヤ半径方向の外端12eは、内側ゴム層11のタイヤ半径方向の外端11eよりもタイヤ半径方向の外側に位置している。このような外側ゴム層12は、ビード部4の剛性をさらに高めて、ビード耐久性能を向上する。また、外側ゴム層12は、内側ゴム層11の外端11eと、後述するサイドウォールゴム3G又はクリンチゴム4Gとが接触することを抑制し、補強ゴム部10と各ゴム3G、4Gとで形成される段差部の数を小さくして、ベアの発生を抑制する。さらに、内側ゴム層11の外端11eと、外側ゴム層12の外端12eとの2カ所でカーカスプライ6Aと接触することになるので、カーカスプライ6Aへの歪の集中が緩和されて、カーカスプライ6Aのルースが抑制される。したがって、本開示のタイヤ1は、ビード耐久性能をさらに向上することができる。
【0018】
本実施形態のビード部4には、ビードエーペックスゴム8とサイドウォールゴム3Gとクリンチゴム4Gとが配されている。ビードエーペックスゴム8は、ビードコア5からタイヤ半径方向の外側に延びている。クリンチゴム4Gは、補強ゴム部10のタイヤ軸方向の外側に配されている。サイドウォールゴム3Gは、クリンチゴム4Gのタイヤ半径方向の外側に隣接している。サイドウォールゴム3G及びクリンチゴム4Gは、例えば、タイヤ1の外表面を形成する。
【0019】
ビードベースラインBLから外側ゴム層12の外端12eまでの高さH1は、タイヤ断面高さHの25%以上が望ましく、50%以上がさらに望ましく、75%以下が望ましい。高さH1がタイヤ断面高さHの25%以上であるので、走行時の荷重負荷に対して高い横剛性を維持することができる。高さH1がタイヤ断面高さHの75%以下であるので、バットレス部Bでの外側ゴム層12の外端12eでの歪みが抑えられて、損傷が抑制される。
【0020】
本明細書では、「タイヤ断面高さH」は、ビードベースラインBLからタイヤ半径方向の最外側位置までのタイヤ半径方向の距離である。また、「ビードベースラインBL」は、タイヤが基づく規格で定まるリム径(JATMA参照)位置を通るタイヤ軸方向線である。
【0021】
外側ゴム層12の外端12eは、本実施形態では、内のカーカスプライ6Aの折返し部6bのタイヤ半径方向の外端6tよりもタイヤ半径方向の内側に位置している。これにより、外側ゴム層12に生ずる段差が抑えられ、損傷が抑制されるという効果が期待される。
【0022】
外側ゴム層12のタイヤ半径方向の内端12iは、内側ゴム層11のタイヤ半径方向の内端11iとタイヤ半径方向に位置ずれしている。これにより、内端11i、12iでのカーカスプライ6Aへの歪の集中が抑制される。
【0023】
ビードベースラインBLから内側ゴム層11の外端11eまでの高さH2は、タイヤ断面高さHの25%以上が望ましく、30%以上がさらに望ましく、60%以下が望ましく、55%以下がさらに望ましい。高さH2がタイヤ断面高さHの25%以上であるので、走行時の荷重負荷に対して高い横剛性を維持することができる。高さH2がタイヤ断面高さHの60%以下であるので、ビード部4の剛性が過度の高まることが抑制される。
【0024】
外側ゴム層12の外端12eと内側ゴム層11のタイヤ半径方向の外端11eとの間のタイヤ半径方向の第1距離(H1-H2)は、タイヤ断面高さHの10%以上が望ましく、15%以上がより望ましく、30%以下が望ましく、25%以下がより望ましい。これにより、各外端11e、12eで生じる歪が適度に分散されるとともに、補強ゴム部10による横剛性の向上効果が高く発揮される。
【0025】
図2は、ビード部4の拡大図である。図2に示されるように、外側ゴム層12の内端12iは、ビードコア5の外端5eよりもタイヤ半径方向の外側に位置している。これにより、ビードコア5付近の剛性が過度に高くなることが抑制されて、リム組の嵌合性の低下が抑制される。内側ゴム層11の内端11iは、ビードコア5の外端5eよりもタイヤ半径方向の内側に位置している。これにより、ビード部4の横剛性が高く維持される。このように、外側ゴム層12の内端12iは、本実施形態では、内側ゴム層11の内端11iよりもタイヤ半径方向外側に位置する。外側ゴム層12の内端12iは、例えば、ビードエーペックスゴム8とタイヤ半径方向で重複している。
【0026】
外側ゴム層12の内端12iと内側ゴム層11の内端11iとの間のタイヤ半径方向の第2距離Hbは、例えば、第1距離(H1-H2)の5%以上が望ましく、7%以上がより望ましく、15%以下が望ましく、13%以下がより望ましい。これにより、ビードコア5付近の剛性を効果的に高めることができる。
【0027】
外側ゴム層12の損失正接tanδ2は、内側ゴム層11の損失正接tanδ1よりも大きいのが望ましい。このような外側ゴム層12は、大きな剛性を有し、歪の抑制効果や横剛性の向上効果を発揮する。また、内側ゴム層11は、外側ゴム層12に比してヒステリシスロスが小さいので、その発熱量が抑えられる。これにより、外側ゴム層12の熱がカーカスプライ6Aに伝達されるのを内側ゴム層11が抑制されるとともに、内側ゴム層11とカーカスプライ6Aとの剥離が抑制される。したがって、ビード耐久性能が大きく向上する。
【0028】
上述の作用を効果的に発揮するために、外側ゴム層12の損失正接tanδ2は、例えば、0.12以上が望ましく、0.14以上がさらに望ましく、0.25以下が望ましく、0.20以下がさらに望ましい。内側ゴム層11の損失正接tanδ1は、例えば、外側ゴム層12の損失正接tanδ2の60%以上が望ましく、65%以上がさらに望ましく、90%以下が望ましく、85%以下がさらに望ましい。
【0029】
本明細書では、損失正接tanδ及び後述する複素弾性率E*は、JISK6394「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-動的性質の求め方-一般指針」の規定に準拠して、粘弾性スペクトロメーターを用い、以下に示される条件下で測定された値である。
初期歪:10%
振幅:±2%
周波数:10Hz
変形モード:引張
温度:70℃
粘弾性スペクトロメーター:GABO社製「イプレクサー(登録商標)」
【0030】
外側ゴム層12の複素弾性率E*2は、内側ゴム層11の複素弾性率E*1の60%以上であるのが望ましい。これにより、タイヤ軸方向の外側に配される外側ゴム層12の横剛性が高く維持され、高荷重条件下での歪みが抑制されるので、ビード耐久性能が向上する。外側ゴム層12の複素弾性率E*2が内側ゴム層11の複素弾性率E*1よりも過度に大きいと、外側ゴム層12の外端12eや内端12iでの剛性段差が大きくなり、かえって、ビード耐久性能が低下するおそれがある。このため、外側ゴム層12の複素弾性率E*2は、内側ゴム層11の複素弾性率E*1よりも大きいのがさらに望ましく、複素弾性率E*1の200%以下が望ましく、190%以下がさらに望ましい。特に限定されるものではないが、外側ゴム層12の複素弾性率E*2は、60MPa以上が望ましく、80MPa以上がさらに望ましく、140MPa以下が望ましく、120MPa以下がさらに望ましい。
【0031】
内側ゴム層11及び外側ゴム層12は、例えば、シート状ゴム部材13(図3に示す)からなる。シート状ゴム部材13は、例えば、周知のゴム押出機より押し出されたシート原反(図示省略)を切断することによって得られる。このようなシート状ゴム部材13は、多種のタイヤサイズの補強ゴム部10の製造を容易にして、その汎用性を高める。図3は、各シート状ゴム部材13の斜視図である。図3に示されるように、シート状ゴム部材13は、本実施形態では、内側ゴム層11を形成するための第1シート状ゴム部材13aと、外側ゴム層12を形成するための第2シート状ゴム部材13bとを含んでいる。補強ゴム部10は、本実施形態では、これらシート状ゴム部材13a、13bがタイヤ軸方向に積層されて形成される。各シート状ゴム部材13が加硫されて、内側ゴム層11及び外側ゴム層12に形成される。
【0032】
図2に示されるように、内側ゴム層11及び外側ゴム層12は、例えば、一定の厚さとなる等厚さ部14と、内側ゴム層11又は外側ゴム層12の外端11e、12e、又は、内端11i、12iに向かって厚さが小さくなる縮厚さ部15とを有している。縮厚さ部15は、剛性段差を緩和してビード耐久性能を高めるのに役立つ。本明細書では、前記「一定の厚さ」は、タイヤ半径方向において、0.2mm/mm以下で厚さの変化する部分である。縮厚さ部15の長さLcは、例えば、3~5mm以下であるのが望ましい。
【0033】
補強ゴム部10は、シート状ゴム部材13(図3に示す)が積層されている部分からなる第1部分17と、シート状ゴム部材13が積層されていない部分からなる第2部分18とを含んでいる。第1部分17は、本実施形態では、内側ゴム層11と外側ゴム層12とが積層されている部分で形成される。第2部分18は、本実施形態では、内側ゴム層11のみで形成される内側第2部分18aと、外側ゴム層12のみで形成され、かつ、内側第2部分18aよりもタイヤ半径方向の外側に配される外側第2部分18bとを含んでいる。本実施形態では、内側第2部分18aと外側第2部分18bとの間に、第1部分17が位置している。
【0034】
第1部分17は、最大厚さ部分17aを含んでいる。最大厚さ部分17aは、例えば、内側ゴム層11の等厚さ部14と外側ゴム層12の等厚さ部14とが重ねられて形成される。内側ゴム層11の縮厚さ部15と外側ゴム層12の等厚さ部14とが重ねられる部分19a、及び、外側ゴム層12の縮厚さ部15と内側ゴム層11の等厚さ部14とが重ねられる部分19bは、最大厚さ部分17aに含まれない。
【0035】
正規状態において、第1部分17は、タイヤ1と正規リムRとの接触位置のタイヤ半径方向の外端21を通るタイヤ軸方向線K上に位置するのが望ましい。外端21は、車両走行時、大きな曲げ荷重が作用する箇所である。このような外端21と同じタイヤ半径方向の位置に第1部分17を配することにより、外端21での変形が抑制されて、ビード耐久性能が一層向上する。この作用をより効果的に発揮させるために、第1部分17の中の最大厚さ部分17aがタイヤ軸方向線K上に位置するのが望ましい。
【0036】
第1部分17の厚さTaと第2部分18の厚さTbとの差(Ta-Tb)は、1mm以上であるのが望ましい。差(Ta-Tb)が1mm以上であるので、第1部分17の剛性が大きくなり、耐久性が向上する。差(Ta-Tb)が過度に大きい場合、第1部分17の剛性が大きくなりすぎ、例えば、乗心地性能が悪化するおそれがある。このような観点より、差(Ta-Tb)は3.5mm以下が望ましく、3.0mm以下がさらに望ましい。第1部分17の厚さTaは、最大厚さ部分17aの厚さである。第2部分18の厚さTbは、内側ゴム層11の等厚さ部14の厚さである。第2部分18の厚さTbは、例えば、外側ゴム層12の等厚さ部14の厚さであってもよい。
【0037】
上述の作用を効果的に発揮させるために、第1部分17の厚さTaは、第2部分18の厚さTbの1.5倍以上が望ましく、1.8倍以上がさらに望ましく、2.5倍以下が望ましく、2.3倍以下がさらに望ましい。
【0038】
内側ゴム層11の厚さT1及び外側ゴム層12の厚さT2は、0.5mm以上が望ましく、0.8mm以上がさらに望ましく、2.0mm以下が望ましく、1.5mm以下がさらに望ましい。
【0039】
ビードエーペックスゴム8は、例えば、タイヤ子午線断面において、三角形状に形成されている。特に限定されるものではないが、ビードエーペックスゴム8のタイヤ半径方向の外端8eのタイヤ半径方向の高さ位置には、内側ゴム層11及び外側ゴム層12が配されている。ビードエーペックスゴム8の外端8eのタイヤ半径方向の高さ位置には、本実施形態では、最大厚さ部分17aが配されている。
【0040】
ビードエーペックスゴム8の複素弾性率E*3は、例えば、内側ゴム層11の複素弾性率E*1よりも小さいのが望ましい。ビードエーペックスゴム8の複素弾性率E*3は、例えば、外側ゴム層12の複素弾性率E*2よりも小さいのが望ましい。
【0041】
図1に示されるように、サイドウォールゴム3G及びクリンチゴム4Gの複素弾性率E*は、いずれも内側ゴム層11の複素弾性率E*1よりも小さい。これにより、基本的な乗心地性能が発揮される。サイドウォールゴム3Gの複素弾性率E*bは、内側ゴム層11の複素弾性率E*1の5%以上が望ましく、10%以上がさらに望ましく、50%以下が望ましく、40%以下がさらに望ましい。クリンチゴム4Gの複素弾性率E*cは、内側ゴム層11の複素弾性率E*1の10%以上が望ましく、20%以上がさらに望ましく、70%以下が望ましく、60%以下がさらに望ましい。
【0042】
以上、本開示の一実施形態が詳細に説明されたが、本開示は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例0043】
図1の基本構造を有する空気入りタイヤが、表1の仕様に基づき試作された。そして、各テストタイヤのビード耐久性能及び操縦安定性能についてテストがされた。各テストタイヤの共通仕様、及び、テスト方法は、以下の通りである。
比較例1の内側ゴム層のtanδ1:0.10
比較例1の内側ゴム層のE*1:20MPa
表のtanδ1、tanδ2は、比較例1のtanδ1を100とする指数で示される。
表のE*1、E*2は、比較例1のE*1を100とする指数で示される。
【0044】
<ビード耐久性能>
各試供タイヤを下記の条件でドラム試験機上を走行させ、ビード部に損傷が発生するまでの走行距離が測定された。結果は、比較例1の走行距離を100とする指数で表示される。数値が大きいほど良好である。
リムサイズ:6.0J
内圧:220kPa
縦荷重:19.84kN
走行速度:20km/h
【0045】
<操縦安定性能>
各テストタイヤが下記テスト車両の全輪に装着された。テストドライバーが、前記テスト車両を乾燥アスファルト路面のテストコースにて高速走行させた。このときの安定性や操作性に基づく操縦安定性能がテストドライバーの官能により評価された。結果は、実施例1を100とする評点で示される。数値が大きい程、優れている。
車両:排気量2000ccの小型トラック
【0046】
【表1】
【0047】
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例のタイヤに比して、ビード耐久性能が向上していることが理解される。また、実施例のタイヤは、操縦安定性能が維持されていることが理解される。
【0048】
[付記]
本開示は以下の態様を含む。
【0049】
[本開示1]
空気入りタイヤであって、
ビードコアがそれぞれ埋設された一対のビード部と、前記ビードコアの間を延びるカーカスとを備え、
前記カーカスは、前記ビードコアの間を延びる本体部と、前記各ビードコアの回りをタイヤ軸方向の内側から外側に折り返されてタイヤ半径方向外側に延びる折返し部とを含むカーカスプライを含み、
前記一対のビード部の少なくとも一方には、前記折返し部のタイヤ軸方向の外側に隣接する補強ゴム部が配されており、
前記補強ゴム部は、内側ゴム層と、前記内側ゴム層のタイヤ軸方向の外側に隣接する外側ゴム層とを含み、
前記外側ゴム層のタイヤ半径方向の外端は、前記内側ゴム層のタイヤ半径方向の外端よりもタイヤ半径方向外側に位置する、
空気入りタイヤ。
[本開示2]
ビードベースラインから前記外側ゴム層の前記外端までの高さは、タイヤ断面高さの25%~75%である、本開示1に記載の空気入りタイヤ。
[本開示3]
前記外側ゴム層のタイヤ半径方向の内端は、前記内側ゴム層のタイヤ半径方向の内端よりもタイヤ半径方向外側に位置する、本開示1又は2に記載の空気入りタイヤ。
[本開示4]
前記内側ゴム層及び前記外側ゴム層は、シート状ゴム部材からなり、
前記補強ゴム部は、前記シート状ゴム部材が積層されている部分からなる第1部分を含み、
正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷の状態において、前記第1部分は、前記空気入りタイヤと前記正規リムとの接触位置のタイヤ半径方向の外端を通るタイヤ軸方向線上に位置する、本開示3に記載の空気入りタイヤ。
[本開示5]
前記第1部分の中の最大厚さ部分が、前記タイヤ軸方向線上に位置する、本開示4に記載の空気入りタイヤ。
[本開示6]
前記補強ゴム部は、前記シート状ゴム部材が積層されていない部分からなる第2部分を含み、
前記第1部分の厚さTaと前記第2部分の厚さTbとの差(Ta-Tb)は、1mm以上である、本開示4又は5に記載の空気入りタイヤ。
[本開示7]
前記第1部分の厚さTaは、前記第2部分の厚さTbの1.5~2.5倍である、本開示6に記載の空気入りタイヤ。
[本開示8]
前記外側ゴム層の損失正接tanδ2は、前記内側ゴム層の損失正接tanδ1よりも大きい、本開示1ないし7のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
[本開示9]
前記外側ゴム層の複素弾性率E*2は、前記内側ゴム層の複素弾性率E*1の60%以上である、本開示1ないし8のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
[本開示10]
前記外側ゴム層の複素弾性率E*2は、前記内側ゴム層の複素弾性率E*1よりも大きい、本開示9に記載の空気入りタイヤ。
[本開示11]
前記外側ゴム層、及び、前記内側ゴム層は、それぞれ、一定の厚さである等厚さ部を含む、本開示1ないし10のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【符号の説明】
【0050】
1 空気入りタイヤ
4 ビード部
6A カーカスプライ
10 補強ゴム部
11 内側ゴム層
11e 内側ゴム層の外端
12 外側ゴム層
12e 外側ゴム層の外端
図1
図2
図3