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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013164
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】板材加工装置
(51)【国際特許分類】
   B26D 5/00 20060101AFI20230119BHJP
   B26D 3/00 20060101ALI20230119BHJP
   B26D 7/26 20060101ALI20230119BHJP
   B26D 7/08 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
B26D5/00 F
B26D3/00 601C
B26D7/26
B26D7/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021117145
(22)【出願日】2021-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】390017385
【氏名又は名称】宮川工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155549
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 敏之
(72)【発明者】
【氏名】小原 好和
【テーマコード(参考)】
3C021
3C024
【Fターム(参考)】
3C021JA04
3C021JA09
3C024AA02
3C024AA07
(57)【要約】
【課題】 良質な構造部材を効率良く製造することが可能な板材加工装置を提供する。
【解決手段】 板材13に対して切込動作を開始する場合、切断部材11の本体部32に対して当該本体部32の厚み方向における両側に切断部材制限部12aが位置した状態で板材13の上側から切込動作を開始し、第1移動機構24aによって切断部材11を移動させて板材13の切り込み量を増大する場合において、切断部材制限部12aは、第2移動機構24bによって板材13の一面側に配置された状態を維持可能に構成されている。このため、板材13に接触している箇所と、上側固定部材28aに固定している箇所との間で切断部材11が圧縮させられる力により変形する事態を回避することができる。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の厚みを有するようにして形成された板材を、薄板状に形成された切断部材によって切断する加工が可能な板材加工装置であって、
前記切断部材によって前記板材が切断される場合に前記板材が配置される板材配置部に対して当該板材の厚み方向の一面側に設けられ、前記切断部材が取り付けられる取付部と、
当該取付部を介して前記切断部材を、前記板材の厚み方向に移動可能とする第1移動機構と、
前記板材配置部を基準とした場合に前記取付部側に配置可能に設けられ、前記切断部材の一部に対して当該一部の厚み方向における両側に位置して当該一部の変位を制限可能な取付部側制限部材と、
その取付部側制限部材を、前記板材の厚み方向において前記切断部材に対して相対的に移動可能とする第2移動機構と、を備え、
前記切断部材は、略一定の厚みを有するように形成された本体部と、前記板材を切断可能な刃先と、前記本体部から前記刃先にわたって厚みが減少するように形成された傾斜部とを有し、
前記切断部材の本体部に対して当該本体部の厚み方向における両側に前記取付部側制限部材が位置した状態で、前記板材配置部に配置される板材の一面側から当該板材に対して切込動作を開始し、
前記第1移動機構によって前記切断部材を移動させて前記板材の切り込み量を増大する場合において、前記取付部側制限部材は、前記第2移動機構によって前記板材の一面側に配置された状態を維持可能に構成されていることを特徴とする板材加工装置。
【請求項2】
前記切断部材は、前記板材の厚み方向に交差して前記板材が連続する連続方向に前記板材を切断する状況において、前記板材に対して前記切断部材が相対的に進行する第1方向側の縁部分には前記刃先が前記板材の厚みの範囲内における全区間にわたって設けられ、前記第1方向側とは逆の第2方向側の縁部分には前記刃先が前記板材の厚みの範囲内において設けられない形状とされ、
前記取付部側制限部材は、前記切断部材に対して前記第2方向側に位置する基部と、前記切断部材の本体部に対して当該本体部の厚み方向における両側に位置する制限部とを有し、前記基部と前記制限部とが1つの部品として一体化されて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の板材加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材を切断する加工が可能な板材加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物を構成する部品(構造部材)を製造するために、薄板状に形成された切断部材によって板材を加工する板材加工装置を利用する構成が知られている。例えば、住宅を構成する壁や床部分に用いる構造部材として、断熱性を有する発泡樹脂製の断熱材を用いる場合があり、この断熱材を必要な大きさに加工するために板材加工装置が利用される。そして、板材加工装置として、位置決めされた状態の板材に対して板材の厚み方向に切断部材を移動して板材に切り込みを生成可能とすることで、効率良く構造部材を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-053730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、板材の厚み方向に切断部材を移動して板材に切り込みを生成する場合には、切断部材には、板材からの反力により変形しない程度の剛性が必要となり、その分、切断部材の厚みを大きく設定する必要がある。一方、切断部材の厚みを大きく設定すると、位置決めされた状態の板材に対して切断部材が無理に進入する力が大きくなり、切断部材によって板材の切断面の表面部分を削りとってしまったり、切断面の表面に起伏が生じてしまう等の問題が生じる可能性がある。すなわち、良質な構造部材を効率良く製造するための構成について、未だ改良の余地のある可能性があった。
【0005】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、良質な構造部材を効率良く製造することが可能な板材加工装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、請求項1に記載の板材加工装置は、
所定の厚みを有するようにして形成された板材を、薄板状に形成された切断部材によって切断する加工が可能な板材加工装置であって、
前記切断部材によって前記板材が切断される場合に前記板材が配置される板材配置部に対して当該板材の厚み方向の一面側に設けられ、前記切断部材が取り付けられる取付部と、
当該取付部を介して前記切断部材を、前記板材の厚み方向に移動可能とする第1移動機構と、
前記板材配置部を基準とした場合に前記取付部側に配置可能に設けられ、前記切断部材の一部に対して当該一部の厚み方向における両側に位置して当該一部の変位を制限可能な取付部側制限部材と、
その取付部側制限部材を、前記板材の厚み方向において前記切断部材に対して相対的に移動可能とする第2移動機構と、を備え、
前記切断部材は、略一定の厚みを有するように形成された本体部と、前記板材を切断可能な刃先と、前記本体部から前記刃先にわたって厚みが減少するように形成された傾斜部とを有し、
前記切断部材の本体部に対して当該本体部の厚み方向における両側に前記取付部側制限部材が位置した状態で、前記板材配置部に配置される板材の一面側から当該板材に対して切込動作を開始し、
前記第1移動機構によって前記切断部材を移動させて前記板材の切り込み量を増大する場合において、前記取付部側制限部材は、前記第2移動機構によって前記板材の一面側に配置された状態を維持可能に構成されていることを特徴としている。
【0007】
この請求項1に記載の板材加工装置によれば、第1移動機構によって切断部材を移動させて切り込み量を増大する場合において、取付部側制限部材は、第2移動機構によって板材の一面側に配置された状態が維持される。板材に進入していない部分の厚み方向に切断部材の一部分が変位しようとしても、その変位は、取付部側制限部材によって制限される。このため、板材に近い位置で切断部材の厚み方向における両側の移動を取付部側制限部材によって制限しつつ、板材に切り込みを生成していくことができる。
【0008】
請求項2に記載の板材加工装置は、請求項1に記載の板材加工装置において、
前記切断部材は、前記板材の厚み方向に交差して前記板材が連続する連続方向に前記板材を切断する状況において、前記板材に対して前記切断部材が相対的に進行する第1方向側の縁部分には前記刃先が前記板材の厚みの範囲内における全区間にわたって設けられ、前記第1方向側とは逆の第2方向側の縁部分には前記刃先が前記板材の厚みの範囲内において設けられない形状とされ、
前記取付部側制限部材は、前記切断部材に対して前記第2方向側に位置する基部と、前記切断部材の本体部に対して当該本体部の厚み方向における両側に位置する制限部とを有し、前記基部と前記制限部とが1つの部品として一体化されて構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の板材加工装置によれば、切断部材を移動させて板材の切り込み量を増大する場合に、取付部側制限部材により板材に近い位置で切断部材の厚み方向における両側の移動を制限することができる。このため、板材に接触している箇所と、取付部に固定している箇所との間で切断部材が圧縮させられる力により変形する事態を回避し易くすることができる。よって、切断部材の厚みを薄く設定しても切断部材の変形や破損を抑制し易くすることができ、薄く設定した切断部材を利用して良質な構造部材を効率良く製造することができるという効果がある。
【0010】
請求項2に記載の板材加工装置によれば、請求項1に記載の板材加工装置の奏する効果に加え、1つの部品として一体化された取付部制限部材によって切断部材の厚み方向の移動を制限することができる。このため、取付部制限部材を1の樹脂材料で小型に成形可能とする等、取付部制限部材を用いた機能の追加によるコストの増大を抑えることができるという効果がある。
【0011】
また、切断部材において刃先の無い第2方向側の縁部分を利用して切断部材の厚み方向の移動を制限することができるので、その移動が制限される縁部分の位置や形状は、刃先の形状に関与しない自由度の高い部分とすることができる。このため、切断部材の変形の抑制に適した縁部分に切断部材の形状を設定し易く、単純な構造や小型の取付部制限部材であっても切断部材の変形を抑制し易くすることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】板材加工装置を示す正面図
図2】上側動作部の動作機構説明図
図3】切断部材と上下の制限部材を示す斜視図
図4】切込動作を示す説明図
図5】分断進行動作と抜出動作を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、実施例としての板材加工装置10を示す正面図である。なお、図1には、板材加工装置10の構成を模式的に示し、制御装置23と各駆動機構との電気的な接続を矢印を付した実線で示し、また、板材動作機構26を一点鎖線で示している。また、図1には、各駆動機構によって動作する部位の動作方向を、理解の容易のために、矢印で示している。
【0014】
板材加工装置10は、一定の厚み(例えば、100mm)を有するようにして形成された板材13を、薄板状に形成された切断部材11によって切断する加工が可能な装置であり、1枚の板材13から1又は複数の構造部材(例えば、断熱材)を製造可能に構成されている。板材加工装置10は、図1に示すように、床面Fに配置されるフレーム21に取り付けられた支持台22に、加工対象としての板材13が配置され、制御装置23の制御によって板材13と切断部材11との相対的な位置と向きとが制御されて板材13を加工する。
【0015】
板材加工装置10は、良質な構造部材を製造可能とするための特徴的な構成として、2つの制限部12a,12bを備えている。具体的には、板材加工装置10は、切断部材11の厚み方向の変位を制限する切断部材制限部12aと、板材13の移動を制限する板材移動制限部12bとを備えている。以下においては、まず、板材加工装置10の基本的な構成を説明し、その後、2つの制限部12a,12bに関する構成について説明する。
【0016】
なお、以下の説明において、支持台22の上に板材13が配置される部位(領域)を板材配置部13aとし、また、板材13を切断(分断)して構造部材を製造する切断部材11の動作として、板材13の厚み方向に切断部材11が進行して板材13に切り込みが生成される切断部材11の動作を切込動作とし、切込動作とは逆の方向に切断部材11が進行して板材13から抜き出される切断部材11の動作を抜出動作とし、板材13の厚み方向に交差(直交)する方向(すなわち、板材13が連続する連続方向)を進行方向側として板材13に対して相対的に進行する切断部材11の動作を分断進行動作として説明する。
【0017】
板材加工装置10は、分断進行動作のみを利用して板材13を切断可能に構成されている。例えば、板材13の一方の端面(例えば、図1の板材13の左側の端面)から反対側の端面(例えば、図1の板材13の右側の端面)まで、板材13を2つに分断するように切断部材11を移動することで、板材13を2つに切断(分断)することができる。また、切込動作の後に分断進行動作を実行することで、板材13の端面から離れた部分から板材13の一部を分断することができる。また、分断進行動作の後に抜出動作を実行することで、板材13の端面から離れた部分まで板材13の一部を分断することもできる。板材加工装置10は、これら切込動作と、分断進行動作と、抜出動作とを組み合わせて構造部材を製造可能とすることで、構造部材として利用できない残材の量を少なくし、また、各構造部材の輪郭形状として、矩形に限らず、台形や三角形等の他の形状についても、切断部材11の移動量を抑えて製造することができる。よって、板材加工装置10を利用することで、少ない板材13から、多数の構造部材を効率良く製造することができる。
【0018】
板材加工装置10は、図1に示すように、切断部材11と、上側制限部材12と、下側制限部材14と、制御装置23と、上側動作機構24と、下側動作機構25と、板材動作機構26と、板材位置決め機構27とを備えている。上側制限部材12は、切断部材制限部12aと、板材移動制限部12bとを一体化した部材であり、上側動作機構24によって上下方向に移動可能に構成される。
【0019】
切断部材11は、上側動作機構24の一部である上側動作部28(上側固定部材28a)に取り付けられている。上側動作部28は、鉛直方向(図1の上下方向)及び水平方向(図1の左右方向)に設けられるレールに沿ってスライド移動が可能であり、これにより、切断部材11が板材13に対して相対的に移動可能に構成されている。
【0020】
板材動作機構26は、板材13の端部(図1の紙面垂直方向における前後の端部)をクランプするクランプ機構と、クランプ機構を前後に移動するための移動機構と、各機構部分を動作させる駆動モータとを組み合わせて構成され、板材13の一方向(図1の紙面垂直方向)への移動が可能に構成される。上側動作機構24による切断部材11の移動動作と、板材動作機構26による板材13の移動動作とは、制御装置23によって制御される。この制御装置23の制御により、板材13の全範囲にわたって、切断部材11を配置可能とすることができる。
【0021】
板材位置決め機構27は、板材13の移動を制限して板材13を位置決めする機構である。板材位置決め機構27は、板材13の厚み方向に交差して板材13が連続する方向に沿って移動可能な位置決め部材27aと、位置決め部材27aを動作させる動作機構とを含めて構成される。
【0022】
位置決め部材27aは、板材13の周縁側の端面に対して両側から接触して押圧するように動作し、切断部材11による板材13の切断において板材13の移動を制限する。板材13は、切断部材11によって複数の構造部材に分断されるものであり、元の大きさより小さくなった分断後の板材13に対しても位置決めが必要となる。このため、位置決め部材27aは、切断部材11の配置位置に対して、前後左右の両側にて板材13を位置決め可能に、また、切断部材11と接触しない位置に、複数設置されている。
【0023】
上側動作機構24は、切断部材11と、上側制限部材12とを、板材13に対して相対的に動作させる機構である。切断部材11と上側制限部材12とは、上下方向においては相対移動可能に構成され、他の方向においては、一体的に移動し、また、一体的に回動するように構成されている。
【0024】
上側動作機構24には、切断部材11と上側制限部材12とを、回動中心軸C1に沿った鉛直方向を中心にして360度以上に回動可能とする動作機構とが設けられ、制御装置23の制御によって板材13に対する切断部材11の向きを変化させることが可能に構成される。これにより、板材13の表面に沿ったいずれの方向に対しても、板材13を切断可能な向きに切断部材11の向きを設定可能とし、板材13を種々の形状に切断することができる。
【0025】
上側動作機構24は、板材13の厚み方向である上下方向に切断部材11及び上側制限部材12を移動可能とする第1移動機構24aと、板材13の厚み方向に切断部材11に対して相対的に上側制限部材12を移動可能とする第2移動機構24bとを備えている。第1移動機構24aは、切断部材11と上側制限部材12とを移動可能とする駆動力を発生する駆動源と、板材13の厚み方向に切断部材11と上側制限部材12とを移動可能とするスライド機構とを組み合わせて構成される。第2移動機構24bは、切断部材11に対して上側制限部材12を移動可能とする駆動力を発生する駆動源と、板材13の厚み方向において切断部材11に対して上側制限部材12を移動可能とするスライド機構とを組み合わせて構成される。
【0026】
第1移動機構24aと第2移動機構24bとにおいて、駆動源としては、空圧や油圧で動作させることが可能なシリンダや、電気的に動作させることが可能な駆動モータによって構成することができる。また、スライド機構としては、ガイド部分と、ガイド部分に沿った移動を可能とする可動部とを組み合わせた直動型の移動機構によって構成することができる。
【0027】
第1移動機構24aは、上側動作部28を上下方向に移動可能な機構によって構成される。上側動作部28は、動作部本体28bと、動作部本体28bに対して駆動モータ(図示せず)によって回動可能な回動体28cと、切断部材11と、上側制限部材12と、第2移動機構24bとが一体化されて構成されている。上側固定部材28aは、回動体28cの一部として構成されている。
【0028】
ここで、図2を参照して、第1移動機構24a及び第2移動機構24bによる切断部材11と上側制限部材12との上下動作について説明する。図2は、上側動作部28の動作機構の説明図であり、図2(A)は、上側動作部28が、最大に上昇した上昇位置に配置された状態を示し、図2(B)は、上昇位置から上側動作部28が下降した下降位置に配置された状態を示し、図2(C)は、下降位置において、切断部材11に対して上側制限部材12が上方側へ移動した状態を示している。なお、図2において、第1移動機構24aの図示は省略し、上側動作部28と板材配置部13aの外形形状を一点鎖線で示し、第1移動機構24aによる切断部材11と上側動作部28の移動可能量を下向きの矢印の長さで示し、第2移動機構24bによる上側制限部材12の移動可能量を上向きの矢印の長さで示している。
【0029】
第1移動機構24aは、上側動作部28の全体を、上昇位置と、下降位置との間で移動させる機能を有している。また、第2移動機構24bは、切断部材11に対して上側制限部材12を、最大限に上側に位置した待機位置と、待機位置と比べて、切断部材11に対して上側制限部材12が下方側に位置した作動位置との間で移動させる機能を有している。なお、第1移動機構24aと第2移動機構24bとは、いずれも一方側(上方側)と他方側(下方側)とのいずれかに向かって可動部(例えば、シリンダロッド)を移動させる指示を制御装置23で制御することが可能な、駆動方向のみを指示する移動機構(例えば、エアシリンダ)によって構成することが好ましい。これにより、コスト増を抑えつつ、上側動作部28に対して必要な動作を実行可能とすることができる。
【0030】
図2には、第2移動機構24bとして、エアシリンダ24cを用いた場合を例示している。上側動作部28が上昇位置に配置された状態では、図2(A)に示すように、板材配置部13aの上端13bより上方側に、切断部材11と上側制限部材12が配置される。また、上側動作部28が上昇位置に配置された状態では、第2移動機構24bは、切断部材11に対して上側制限部材12を最大限に下側に移動させた状態(下側配置状態)となるように、制御装置23に制御される。制御装置23が第1移動機構24aを制御して、上側動作部28を下方側へ移動させると、切断部材11と上側制限部材12とが下降位置へ向けて移動する。
【0031】
下降位置に切断部材11が配置された状態では、図2(B)に示すように、切断部材11の下端部31が、板材配置部13aの下端13cより下側へ突出し、また、切断部材11の刃先33の上端が板材配置部13aの上端より上方に位置するように、切断部材11が配置される。このため、板材13に対して切断部材11が水平方向側へ移動する分断進行動作により、板材13の厚み範囲の全域を分断することができる。ここで、下降位置に切断部材11が配置された状態では、板材13の表面(上面)によって上側制限部材12の下方側への移動が制限され、図2(B)に示す位置よりも高い位置で、上側制限部材12が停止することとなるが、この上側制限部材12の動作については後述する。
【0032】
制御装置23が第2移動機構24bを制御して、シリンダロッド24dを上方側へ移動させると、図2(C)に示すように、シリンダロッド24dと移動体24eを介して接続された上側制限部材12が、切断部材11に対して上方側へ移動する。ここで、図2には、縦長の円柱状の移動体24eが、上下に離間して設置されたガイド24fによって鉛直方向に真っ直ぐ移動するようにガイドされた状態を例示している。
【0033】
シリンダロッド24dは、エアシリンダ24cの移動可能量によって設定された長さ分、上方側へ移動する。シリンダロッド24dが上方側へ最大限に移動した上側配置状態へ到達すると、上側制限部材12が停止する。上側制限部材12の上方側への移動可能量は、板材配置部13aの上端13bより上方側へ上側制限部材12の下端が位置する長さに設定されている。これにより、切断部材11によって板材13を分断する場合において、上側制限部材12が板材13の厚み範囲内に位置しないようにして、板材13をスムースに分断可能とすることができる。
【0034】
第1移動機構24aと、第2移動機構24bとは、制御装置23によって制御される。この制御装置23の制御により、板材配置部13a(板材13)に対する切断部材11と上側制限部材12の高さ位置と、切断部材11に対しての上側制限部材12の高さ位置を、必要に応じた切断加工に必要な高さ位置に設定可能とすることができる。
【0035】
また、第2移動機構24bは、上側制限部材12が板材13に上方側から接触した場合に、その接触位置に上側制限部材12が停止する機能を有している。この第2移動機構24bの動作力としては、板材13との接触によって板材13が大きく変形しない程度の押圧力(例えば、板材13が塑性変形しない程度の押圧力や、板材13の表面にひび割れや破損が生じない程度の押圧力)となるような動作力が設定される。これにより、構造部材として利用する板材13の一部に対して、上側制限部材12の接触により見栄えの悪い部分が生じてしまう事態を回避することができる。
【0036】
なお、第1移動機構24aおよび第2移動機構24bは、上記した構成に限らず、他の構成としてもよく、例えば、上側動作部28とは別の部品として、上側制限部材12を上下動可能に設置し、第1移動機構24aによって切断部材11が上下方向に移動し、第2移動機構24bによって上側制限部材12が上下方向に移動する構成としてもよい。また、切断部材11及び上側制限部材12と、板材13との相対的な移動をさせるための機構は、上記に限らず、他の機構を用いてもよく、例えば、複数の回動軸を中心に切断部材11及び上側制限部材12とを移動可能とした第1移動機構24aを有する多関節ロボットに、第2移動機構24bを取り付けて板材13を切断する構成としてもよい。また、板材加工装置10に対しては、板材13を切断する際に上下方向へ板材13が変位することを制限する制限ローラ(図示せず)や、支持台22に支持された板材13の移動を円滑にする回転ローラ(図示せず)等、切断部材11によって板材13を切断する場合に用いる一般的な他の構成を含めて構成してもよい。
【0037】
制御装置23は、板材13を加工する場合に、切断部材11と、上側制限部材12と、下側制限部材14と、板材13とを相対的に変位動作させる制御を含む各種の制御を行う装置である。制御装置23は、例えば、パーソナルコンピュータによって構成され、加工用のプログラム(上側動作機構24と、下側動作機構25と、板材動作機構26と、板材位置決め機構27とを含む各部位の動作を制御するプログラム)を記憶する記憶装置としてのROM、加工データを一時的に記憶するRAM、演算処理装置としてのCPU、板材13を加工して部品を製造するために必要な加工データを入力するための情報入力装置、キーボード、マウス、ディスプレイ等を備えて構成される。切断部材11と、上側制限部材12と、下側制限部材14と、板材13とを相対的に変位動作させる変位動作手段は、ROMに記憶されるプログラムに基づいて各機構の制御を行う制御装置23の機能の一部によって構成される。なお、制御装置23は、必ずしも1つのパーソナルコンピュータで構成する必要はなく、これに代えて、又はこれに加えて、リレー回路を利用したシーケンサーなどの装置を利用してもよいし、複数のコンピュータで制御を分担する構成であってもよい。
【0038】
次に、上側制限部材12の一部によって構成される切断部材制限部12aと、板材移動制限部12bとに関する構成について、図3を主に参照して説明する。図3(A)は、切断部材11と、上側制限部材12とを示す分解斜視図であり、図3(B)及び図3(C)は、切断部材11の下端部31と、下側制限部材14とを示す斜視図である。また、図3(B)は、下側制限部材14の間に切断部材11の下端部31が配置された状態であって移動の制限がされていない状態を示し、図3(C)は、下側制限部材14によって切断部材11の下端部31の移動が制限された状態を示している。なお、図3(A)には、切断部材11に対する、切断部材制限部12aと、板材移動制限部12bとの相対位置関係の理解を容易とするために、切断部材11の一部に、切断部材制限部12aと、板材移動制限部12bとの断面が位置する部分の外形形状を一点鎖線で示している。
【0039】
切断部材11は、上側固定部材28aにネジ等の固定具28dによって固定されている。切断部材11は、薄板状の金属板によって構成され、略一定の厚みを有するように形成された本体部32と、板材13を切断可能な刃先33と、本体部32から刃先33にわたって厚みが減少するように形成された傾斜部34とを有している。切断部材11は、本体部32の上側部分における厚み方向の両側が上側固定部材28aにより挟まれた状態とされ、ボルト等の固定具28dを用いて上側固定部材28aに締結固定されている。
【0040】
切断部材11の刃先33は、傾斜部34に対して研磨加工を施すことによって鋭く尖った状態を維持可能に形成されている。刃先33は、斜め下側に長く連続した部分で構成さる主刃先33aと、主刃先33aの下端から主刃先33aとは逆の方向側(斜め上側)に向かって短い長さにて連続する副刃先33bとを組み合わせて構成されている。
【0041】
主刃先33aは、切断部材11が分断進行動作により板材13を切断する状況において、板材13に対して切断部材11が相対的に進行する進行方向側の縁部分を構成している。主刃先33aの長さは、分断進行動作において板材13の厚みの範囲内における全区間にわたる長さに設定されている。
【0042】
副刃先33bは、主刃先33aに対して、分断進行動作により板材13を切断する場合における切断部材11の進行方向側とは逆の方向側(以下、刃先33の無い側、ともいう)に設けられている。副刃先33bの長さは、分断進行動作において板材13の厚み範囲内より下側に全範囲が突出可能な長さに設定されている。
【0043】
なお、主刃先33a及び副刃先33bの形状は、直線状に限らず、湾曲した形状の部位を含んだり、折れ線状に形成するなど、他の形状であってもよい。また、副刃先33bを必ずしも設ける必要はなく、主刃先33aのみにより構成してもよい。また、副刃先33bの長さは、板材13の切断において必ずしも板材13の厚み範囲内に設けられない長さとする必要はなく、その厚み範囲内に副刃先33bが入り込む長さに副刃先33bを形成してもよい。
【0044】
上側制限部材12は、縦長に形成された切断部材制限部12aと、板状に構成された板材移動制限部12bとを有している。切断部材制限部12aと板材移動制限部12bとは、ネジや接着材等の一体化手段(図示せず)により一体化されている。切断部材制限部12aの上側部分には、第2移動機構24bの移動体24e(図2参照)の下端部分がネジ等の固定具(図示せず)により接続固定される。
【0045】
切断部材制限部12aは、切断部材11の副刃先33bの上側に位置するように配置され、切断部材11の一部に対して厚み方向における両側に位置して厚み方向の移動を制限する制限部を有し、厚み方向の変位量を一定範囲内に制限可能に構成されている。切断部材制限部12aには、切断部材11に対して刃先33の無い側に位置する基部41と、基部41から切断部材11の側に縦長の隙間部42を隔てて突出した突出部43とが設けられている。突出部43は、切断部材11の厚み方向における移動を制限する制限部として機能する。
【0046】
基部41と突出部43とは、合成樹脂を用いた1つの部品として一体成形され、一体化されて構成されている。このため、切断部材11から片方の突出部43に対して押圧される力を受けても、基部41を介して接続された反対側の突出部43が切断部材11に引っ掛かった状態となっているため、変形を効率良く抑制できる。このため、小型の切断部材制限部12aでも高い剛性で切断部材11の変位を制限することができ、切断部材11の移動可能範囲を制限することが少なく、また、低コストで切断部材制限部12aを用いた機能を付加することができる。
【0047】
突出部43は、切断部材11の本体部32に対して当該本体部32の厚み方向における両側に位置している。突出部43の間に形成される隙間部42の隙間幅は、切断部材11の本体部32の厚みに対して僅かに大きく、例えば、片側ずつにそれぞれ0.2mmの隙間を有するようにして構成されている。板材13を加工する際に板材13の抵抗力が切断部材11に加わると、本体部32が平面形状から変形しそうになり、この変形は、本体部32が薄いほど変形し易くなる。しかしながら、突出部43により本体部32の変位は制限することができるので、薄い切断部材11であっても変形を回避することができ、良質な構造部材を高精度で加工可能とすることができる。
【0048】
なお、基部41と突出部43とを必ずしも一体成形した部品により構成する必要はなく、基部41と突出部43とを別部品として形成して一体化してもよいし、基部41のない構成として本体部32の厚み方向における両側に突出部43に対応する部位が切断部材11に対して位置するように構成してもよい。
【0049】
また、突出部43の間に形成される隙間部42の隙間幅は、切断部材11の本体部32の厚みと略同一の幅に設定してもよいし、本体部32の厚みより隙間部42の隙間幅を小さく設定してもよく、本体部32の少なくとも一面側に接触して切断部材11を押圧するようにしてもよい。また、突出部43(隙間部42)において本体部32と接触する部分は、必ずしも平面状に形成する必要はなく、起伏を有するようにして、本体部32と接触する部分が限定されるようにしてもよい。また、突出部43を、本体部32の厚み方向において移動させることを可能とする移動機構を付加し、突出部43の間に形成される隙間部42の隙間幅を制御装置23により変動可能に構成してもよく、隙間幅を縮小した制限状態にすることにより切断部材11の本体部32の厚み方向における移動を制限可能にしてもよい。
【0050】
また、突出部43(隙間部42)の表面と切断部材11の表面との摩擦力が低くなるように構成してもよく、例えば、突出部43(隙間部42)において切断部材11に接触する部分には、切断部材11との接触による摩擦力が基部41より低い別の材質を用いた別部材を設けて構成してもよい。また、突出部43(隙間部42)と切断部材11とが接触する部分の少なくともいずれかに摩擦力が低くなる表面処理(例えば、フッ素コーティング)を付加してもよいし、突出部43(隙間部42)に対して切断部材11の厚み方向の両側に位置するように回転ローラを設けて、回転ローラの間部分に切断部材11が位置し、回転ローラにより切断部材11の厚み方向における変位を制限可能とし、且つ、切込動作の際に回転ローラが回転することで摩擦力が低くなるように構成してもよい。
【0051】
ここで、本体部32において刃先33の無い側の周縁35は、上下方向に連続する形状とされている。この周縁35の連続する方向は、第2移動機構24bによって、切断部材11に対して上側制限部材12が相対移動可能な方向と一致している。そして、切断部材11に対して上側制限部材12は、切込動作と抜出動作とにおいて相対移動する場合があり、この相対移動が可能な上下方向に連続する形状に、刃先33の無い側の周縁35が形成されている。
【0052】
刃先33の無い側の周縁35の下側には、切断部材11の下端部31が位置している。切断部材11の下端部31は、刃先33が設けられる部位の中で、上側固定部材28aとの距離が最大となる部位であり、本体部32の中でも刃先33の無い側の周縁35の付近が最も変形が大きくなり易い。本実施形態では、この変形が大きくなりやすい部分の周縁35を直線状に形成し、上側制限部材12の切断部材制限部12aも同一の断面形状を有するように鉛直方向に連続する縦長の形状として構成している。これにより、第2移動機構24bによって切断部材11と切断部材制限部12aとが相対的に移動しても、常に、同じ断面形状の組み合わせにて、切断部材11の厚み方向の変位を切断部材制限部12aによって制限することができる。よって、切断部材11において厚み方向の変位が抑制される部分と、切断部材制限部12aの形状及び大きさを、小型で単純な構造により構成しても、効率良く切断部材11の変位を制限可能な構造とすることができる。
【0053】
板材移動制限部12bは、切断部材11の抜出動作において、切断部材11の近くで板材13の上面に当接し、切断部材11と一緒に板材13の一部が上側に移動することを制限する部位である。板材13として用いられる発泡樹脂は、柔らかくて変形し易く、板材13を位置決めしている箇所から切断部材11が少し離れただけでも、抜出動作において板材13が変形する可能性がある。板材移動制限部12bが設けられることにより、抜出動作において切断部材11の近くで板材13の変形を抑制可能とし、これにより、板材13の加工の精度を高く維持したり、抜出動作において板材13の切断面に刃先33が当接して切断面が傷ついてしまう事態を回避し易くすることができる。
【0054】
板材移動制限部12bは、切断部材制限部12aより上方側から見て大きな外形形状を有するように形成されている。これにより、板材移動制限部12bが板材13に対して上方側で接触した場合の圧力を低減可能とし、板材13の表面の凹み変形や破損を抑制することができる。なお、必ずしも板材移動制限部12bを、切断部材制限部12aとは別に設ける必要はなく、板材移動制限部12bの下側の端面を切断部材制限部12aとして構成してもよい。
【0055】
板材移動制限部12bは、上方側から見て略半円状の外形形状に形成されて上下方向に厚み方向を有する板状の部材によって構成される。また、板材移動制限部12bにおいて、円弧状の外周形状の半径の中心に相当する部分には、切断部材11の一部が入り込み可能な隙間部42が形成されている。なお、上方側から見た板材移動制限部12bの外形形状は、略半円状に限らず、略矩形状や略三角形状などの他の形状であってもよく、また、板材移動制限部12bの下面は、平面に限らず、起伏を有する形状であってもよいし、一部分のみ(例えば、外形形状に沿った外周部分)が下方に突出した形状であってもよい。
【0056】
隙間部42の下方には、切断部材11の下端部31が位置している。このため、切断部材11の下端部31に対して鉛直上方側に位置する本体部32の一部分に対しては、切断部材11の厚み方向の両側と、板材移動制限部12bが位置する一方側(刃先33の無い側)とを含む三方が、囲われたような状態となっている。これにより、板材移動制限部12bが板材13に接触した状況において、下端部31の上方側における板材13の上方側への移動を、板材13の変位が大きな部分の周囲のほぼ全域で圧力を分散して抑制することができる。これにより、板材13の表面の凹み変形や破損を効率良く抑制することができる。
【0057】
なお、板材移動制限部12bは、必ずしも切断部材11の厚み方向の両側と、板材移動制限部12bが位置する一方側(刃先33の無い側)とを含む三方に設けられる構成とする必要はなく、切断部材11の周りにおける少なくとも一方側に設けられればよい。例えば、切断部材11の厚み方向の両側には板材移動制限部12bが設けられず、板材移動制限部12bが位置する一方側(刃先33の無い側)にのみ板材移動制限部12bが位置する大きさにして板材移動制限部12bを構成してもよいし、切断部材11の厚み方向における一方側にのみ板材移動制限部12bが位置する構成としてもよく、または、切断部材11の周りを囲うように切断部材11の四方に板材移動制限部12bが位置する構成としてもよい。
【0058】
下側制限部材14は、切断部材11の下端部31に対して当該下端部31の厚み方向における両側に位置し、下端部31の厚み方向の変位量を一定範囲内に制限する部材である。下側制限部材14は、図3(B)に示すように、切断部材11の下端部31が入り込み可能な高さ位置に設けられている。下側制限部材14は、例えば、金属片を切削加工して形成され、対称形状をした2つの部材の間の隙間部分を構成する平面状の接触可能面14aを有して構成される。接触可能面14aは、切断部材11の下端部31に対して厚み方向の両側に配置可能に構成される。なお、図3(B)及び(C)において、下側制限部材14は、接触可能面14aを含む一部のみを図示し、全体の構造や機構の図示は、省略している。
【0059】
接触可能面14aは、切断部材11の厚み方向において移動可能に構成され、具体的には、切断部材11から離間した離間位置と、離間位置より切断部材11に近接または接触した作動位置との間を移動可能に構成される。下側制限部材14の移動は、例えば、下側制限部材14の下側部分に設定された回動中心軸C2を中心として回動することで、下側制限部材14を動作させることが可能な動作機構(図示せず)によって構成され、その動作機構の動作が制御装置23によって制御される。
【0060】
下側制限部材14が作動位置に配置されるのは、切断部材11が第1移動機構24aによって下降位置に配置された状況に制限される。切断部材11によって板材13が分断される分断進行動作において、下側制限部材14が作動位置に配置され、下側制限部材14によって切断部材11の下端部31の厚み方向における変位が制限される。これにより、切断部材11の下端部31が、その厚み方向において一定以上に大きく変位することが制限され、板材13を高い精度で加工し易くすることができる。
【0061】
下側制限部材14が作動位置に配置された場合に、接触可能面14aが、切断部材11の厚み方向の移動を制限する制限部を構成する。制限部としての接触可能面14aの隙間幅は、切断部材11の本体部32の厚みより小さく設定され、動作機構の動作力によって切断部材11が設計上の中心位置側に位置して挟まれた状態に維持され易く構成される。なお、作動位置に配置された場合における接触可能面14aの隙間幅は、必ずしも、切断部材11の本体部32の厚みより小さく設定する必要はなく、本体部32の厚みより僅かに大きく設定してもよく、この場合でも、切断部材11の下端部31を設計上の中心位置に配置し易くすることができる。
【0062】
下側制限部材14は、下側動作機構25に取り付けられ(図1参照)、上側動作機構24による切断部材11の移動動作に同期して動作可能に構成される。具体的には、下側制限部材14は、下側動作機構25に設けられるレールに沿って水平方向(図1の左右方向)にスライド移動が可能であり、また、切断部材11と同様に、鉛直方向を中心に360度以上に回動可能に構成される。この下側動作機構25による下側制限部材14の移動動作及び回動動作も制御装置23によって制御され、下側制限部材14は、切断部材11の下側において切断部材11の位置及び向きに対応し、切断部材11と回動中心軸C1(図1参照)が一致するように、同期して動作する。
【0063】
なお、下側制限部材14は、必ずしも切断部材11の厚み方向に移動可能に構成する必要はない。例えば、制限部としての一定間隔の隙間部分と、制限部の一方側(例えば、上方側)において次第に拡がる隙間部分(誘導部)とを有し、制限部の隙間幅が変動しないように構成された一体型の下側制限部材14を構成し、この下側制限部材14に対して切断部材11を誘導部から制限部に進入するようにして、切断部材11の厚み方向の移動を制限してもよい。また、制限部は、必ずしも平面によって構成する必要はなく、湾曲した部分を含むようにする等、他の形状により構成してもよい。
【0064】
ここで、切断部材制限部12aにおける突出部43(隙間部42)の大きさや、下降位置に配置された切断部材11に対しての下側制限部材14の制限部(接触可能面14a)の大きさは、切断部材11の厚み方向において傾斜部34や刃先33が重なる大きさとしてもよいが、刃先33が重ならない大きさとすることが好ましく、傾斜部34が重ならない大きさとすることが好適である。これにより、板材13を切断する際に、傾斜部34や刃先33と制限部が接触して切断部材11の傾斜部34が変形したり刃先33が破損したりする事態を回避し易くすることができる。
【0065】
次に、板材加工装置10によって板材13から構造部材を製造する場合における切断部材11の動作について、図4及び図5を参照して説明する。図4は、切込動作を示す説明図であり、図5は、分断進行動作と抜出動作を示す説明図である。なお、図4及び図5には、第2移動機構24bによって上側制限部材12が移動可能に制御される方向(押圧力を発生する方向)を太い矢印で示し、切断部材11が移動制御される方向を細い矢印で示している。
【0066】
切込動作が開始される際には、図4(A)に示すように、切断部材11の下端部31が上側制限部材12より下側に突出し、切断部材11と上側制限部材12とが一体化された状態で、板材13の表面(上面)に切断部材11が接触する位置まで下降する。この下降動作は、切断部材11と上側制限部材12とが一体化された上側動作部28を、上昇位置(図2(A)参照)から下降位置(図2(B)参照)に向けて下降させる第1移動機構24aに対する制御装置23の制御により実行される。
【0067】
切込動作の際には、切断部材11の本体部32に対して当該本体部32の厚み方向における両側に上側制限部材12の切断部材制限部12aが位置している。この状態で、板材配置部13aに配置される板材13の一面側から当該板材13の切込動作が開始される。
【0068】
切断部材11の下端が板材13に接触すると、板材13からの反力により、切断部材11の下端と上側固定部材28aとの間で、切断部材11には、座屈により板材13の厚み方向に変形を生じさせる応力が発生する。切断部材11の変形による本体部32の厚み方向の変位量は、上側固定部材28aと、切断部材11の下端との間部分に相当する刃先33の無い側の周縁35の付近にて大きくなり易く、高さとしては、上側固定部材28aと切断部材11の下端との間で中央に近い高さ部分において大きくなり易い。
【0069】
しかしながら、切断部材11の本体部32が厚み方向に変位しようとしても、上側固定部材28aと切断部材11の間部分における厚み方向への変位は、上側制限部材12の切断部材制限部12a(突出部43)によって阻止される。このため、切断部材11に発生する応力は、一定の値以上とはならず、切断部材11の変形も抑えられるので、良質な構造部材を製造するために切断部材11の厚さを薄く設定しても、切断部材11に対して精度の高い加工に支障が生じるような変形や破損の発生を抑制することができる。
【0070】
また、切込動作において、切断部材11が板材13の内部に入り込むと、切断部材11の厚み分、板材13に切り込みが生成された表面部分は、切断部材11の厚み方向に押し広げられる。このとき、板材13の切り込みが生成される前に、上側制限部材12が板材13の表面に接触していると、切断部材11が板材13の中に進行しにくくなって切断部材11の内部に発生する応力が高くなってしまう可能性がある。また、板材13の表面が上側制限部材12に接触したままで切断部材11が板材13の中に進入すると、板材13の表面部分が切断部材11の厚み方向に移動することで板材13の表面に擦れ傷が生じてしまう可能性もある。
【0071】
これに対して、本実施形態においては、切込動作の際に、上側制限部材12が板材13の表面に接触するより前に、切断部材11が板材13に接触し、切断部材11が一定量、板材13の内部に入り込んだ後に上側制限部材12が板材13の表面に接触する。このため、切り込みの生成開始時における板材13からの反力を低く抑えて切断部材11の内部に生じる応力を低い値にすることで切断部材11の変形を少なく抑えることを可能とし、且つ、上側制限部材12と板材13の表面とが接触して擦れ傷が生じてしまう事態を回避可能としている。
【0072】
図4(B)には、上側制限部材12が板材13の表面に接触した状態を示している。この状態では、切断部材11の本体部32の下端が板材13の内部に進入した状態となっている。また、上側制限部材12の突出部43が位置する部分においては、突出部43の下側にて本体部32が先に板材13の内部に入り込むように構成されている。このため、上側制限部材12が板材13に接触した後には、上側制限部材12と板材13との接触部分は、切断部材11が下方へ進行しても拡げられることがなく、擦れ傷の発生を防止することができる。
【0073】
制御装置23による第1移動機構24a(図1参照)の制御によって、切断部材11を更に下方へ移動させると、板材13の切り込み量が増大する。この切り込み量を増大する場合において、上側制限部材12の切断部材制限部12aは、第2移動機構24b(図2参照)によって板材13の一面側(上側)に配置された状態が維持される。このため、切断部材11の厚み方向に切断部材11の一部分が変位しようとしても、その変位は、上側制限部材12によって制限され続けることとなる。よって、板材13に近い位置で切断部材11の厚み方向における両側の移動を切断部材制限部12aによって制限しつつ板材13に切り込みを生成していくことができる。
【0074】
このように、切込動作により切断部材11を移動させて、板材13へ切り込みを開始する時でも、切り込み量を増大する場合でも、上側制限部材12(切断部材制限部12a)は、第2移動機構24bによって板材13の一面側(上面側)に配置された状態が維持されて切断部材11の一部の厚み方向における変位を制限する。このため、切り込みが生成されていく過程において、板材13に接触している箇所と、上側固定部材28aに固定している箇所との間で切断部材11が圧縮させられる力により変形する事態を回避することができる。よって、切断部材11の厚みを薄く設定しても切断部材11の変形を抑制することができ、薄く設定した切断部材11を利用して良質な構造部材を効率良く製造することができる。
【0075】
また、上側制限部材12(切断部材制限部12a)は、切断部材11において刃先33の無い側(周縁35が設けられる側)の縁部分における切断部材11の厚み方向の移動を制限するように構成される。このため、移動が制限される周縁35が設けられる縁部分の位置や形状は、刃先33の形状に関与しない自由度の高い部分とすることができる。
【0076】
本実施形態においては、切断部材11の変形の抑制に適した形状として、切断部材11の下端に対して周縁35が鉛直上方側に直線状に連続する切断部材11の形状を設定し、その周縁35が設けられる縁部分の変位を、細長い小型の切断部材制限部12aによって制限可能としている。すなわち、切断部材11において刃先33の形状に影響しない部位を利用することで、切断部材11の機能を低下させることなく、単純な構造で小型の上側制限部材12を用いて、切断部材11の変形を効率良く抑制することができる。
【0077】
なお、必ずしも上側制限部材12に対して切断部材11が下方に突出した状態で、板材13に接触する構成とする必要はない。例えば、上側制限部材12の移動可能範囲内において下方への移動を制御装置23によって停止制御可能とし、板材13の表面に接触する前に、上側制限部材12の下方への移動を停止して、切断部材11の方が先に板材13に接触するように構成してもよい。この場合における上側制限部材12の下方への移動停止位置は、投入される板材13の厚み寸法に基づいて決定してもよいし、板材13の上面の位置を検出するセンサによって上側制限部材12の移動を停止してもよい。
【0078】
また、切断部材11と、上側制限部材12とが、同時に板材13に接触する構成としてもよいし、切断部材11の下端が上側制限部材の下端より高い位置に配置されて、先に上側制限部材12が板材13に接触するようにしてもよい。この場合であっても、上側制限部材12を設けることにより切断部材11の変形を抑制可能であるので、切断部材11の厚みとして薄いものを選択することができる。薄い切断部材11を選択可能とすることで、板材13の内部に切断部材11が入り込んだことによる板材13の表面の移動を少なくすることができ、板材13の表面の擦れ傷の発生を抑制することができる。
【0079】
また、上側制限部材12の切断部材制限部12aは、切断部材11の変形を抑える突出部43(隙間部42)が切断部材11の本体部32のうち刃先33がない側の周縁35の上下方向における略全域に亘って設けられ、上側固定部材28aの高さ位置まで、切断部材制限部12aが切断部材11の変位を制限可能に構成されている。これにより、切断部材11の変形を上下方向における全域に亘って確実に抑えることができる。
【0080】
なお、切断部材11の変形を抑える突出部43(隙間部42)は、刃先33がない側の周縁35の上下方向における略全域に亘って連続して設けられる必要は無く、周縁35の長さより短く構成したり、上下方向における2箇所以上に断続的に設ける構成としてもよい。この場合には、切り込みの生成開始時において、上側固定部材28aと、切断部材11の下端との間部分のうち高さ方向における中央に相当する部分には、突出部43(隙間部42)が位置するようにし、その部分より上方側には、突出部43(隙間部42)が設けられない部分を含むように構成して、切断部材制限部12aを小型に構成することが好ましい。また、上側固定部材28aと切断部材11の下端との間部分のうち高さ方向における中央に相当する部分を基準とした場合に、板材13が位置する側(下側)の方が、逆側(上側)と比べて、突出部43(隙間部42)が設けられる範囲が長くなるように構成することが好ましい。
【0081】
次に、切り込みが生成された後の分断進行動作と、抜出動作について説明する。
【0082】
図4(C)には、上側動作部28が下降位置に配置された状態(図2(B)の状態)を示している。上側動作部28が下降位置に配置されると、切断部材11の下端が板材13の下側に突出し、下側制限部材14の接触可能面14aが設けられる高さ位置に到達する。この状態となった後、切断部材11が板材13に対して相対的に水平方向に進行して、切断部材11の分断進行動作が開始される。
【0083】
図5(A)には、上側動作部28が下降位置に配置された後に、第2移動機構24bによって上側制限部材12を移動制御する方向を反転し、上側制限部材12が、上方側へ移動して板材13から離間した状態を示している。ここで、上側制限部材12は、分断進行動作が開始されるより前に、上方側へ移動して板材13から離間させておくように、制御装置23の制御を設定しておくことが好ましい。これにより、分断進行動作において板材13の表面と上側制限部材12とが接触した状態で相対移動することによる板材13の擦れ傷の発生を抑制することができる。
【0084】
なお、必ずしも分断進行動作の前に上側制限部材12を上方側へ移動する必要はない。例えば、上側制限部材12の下側への押圧力が低ければ、板材13の擦れ傷は、ほとんど生じることがなく、この場合には、上方側への移動を省略してもよい。また、上側制限部材12と板材13の表面との摩擦力が低くなるように構成してもよく、例えば、上側制限部材12において板材13に接触する部分は、板材13との接触による摩擦力が低い材質の組合せを選定してもよいし、板材13と上側制限部材12の下端面とのいずれかに摩擦力が低くなる表面処理(例えば、フッ素コーティング)を付加してもよいし、上側制限部材12の下端面に回転ローラを設けて、分断進行動作の際に回転ローラが回転することで摩擦力が低くなるようにしてもよい。
【0085】
また、上側動作部28が下降位置に配置された後、分断進行動作が開始されるより前に、下側制限部材14は、待機位置(図3(B)参照)から作動位置(図3(C)参照)へと変位する。これにより、分断進行動作中において、下側制限部材14により切断部材11の下端部31の厚み方向の変位量を一定範囲内に制限することができる。よって、切断部材11を用いた分断進行動作における切断の精度を高く維持し易くすることができる。
【0086】
図5(B)には、分断進行動作が終了して、抜出動作が開始される状態を示している。分断進行動作が終了すると、下側制限部材14は、作動位置(図3(C)参照)から待機位置(図3(B)参照)へと変位する。これにより、下側制限部材14による切断部材11の下端部31の厚み方向の変位が制限された状態が解除される。
【0087】
分断進行動作の終了後であって抜出動作が開始されるより前に、図5(B)に矢印を付して示すように、第2移動機構24bによって上側制限部材12を移動制御する方向が反転して下方側となる。これにより、上側制限部材12が下方へ移動し、板材13の表面に接触して表面を押圧した状態となる。このため、切断部材11が抜出動作によって上昇するときには、上側制限部材12の板材移動制限部12bによって板材13の一部が下方側へ押さえつけられた状態が維持され、切断部材11と共に板材13が上昇することを阻止することができる。
【0088】
ここで、板材移動制限部12bは、切断部材11の下端部31の位置に対して鉛直上方側に位置するように配置され、その上側部分において、切断部材11の厚み方向の両側と、板材移動制限部12bが位置する一方側(刃先33の無い側)とを含む三方が囲われた状態(図3(A)参照)になって板材13に接触する。板材13の断面と、切断部材11とが接触する上下方向の長さは、切断部材11の下端部31が位置する部分で最大となるので、切断部材11によって板材13が上側に引き上げられる力も下端部31が位置する部分で最大となる可能性が高い。この下端部31が位置する部分の上昇を、下端部31の上側に位置する板材移動制限部12bにて制限することができるので、板材13の上昇を、小型の板材移動制限部12bを用いて効率良く抑制することができる。
【0089】
切断部材11が上昇を開始しても、第2移動機構24bのシリンダロッド24dに対しては、上側制限部材12(板材移動制限部12b)を下方に移動させるように、エアシリンダ24cの動作が制御装置23により制御され続ける。このため、シリンダロッド24dが一定の高さ位置を維持し、板材移動制限部12bが板材13の上面に接触した状態のまま、切断部材11が上昇することとなり、これに伴い、切断部材11の下端部31と上側制限部材12の下端面とが近づいていく。第2移動機構24bのシリンダロッド24dが移動可能な限界位置に到達すると、切断部材11と上側制限部材12との相対移動が不能な状態(下側配置状態)となる。相対移動が不能になると、切断部材11と上側制限部材12とは一体的に上昇し始め、上側制限部材12が板材13から離れて上昇する。この結果、切込動作から分断進行動作を経て抜出動作が実行される1回分の切断工程が完了する。
【0090】
ここで、抜出動作において、切断部材11に対して上側制限部材12が最大限に下側に配置されて相対移動が不能となった状態(下側配置状態)においては、副刃先33bの上端部分と、板材移動制限部12bの下端とが近い位置に配置される(図2(A)参照)。そして、下側配置状態においては、板材移動制限部12bより下側には、切断部材11の本体部32はほとんど突出せず、本体部32より傾斜部34の突出している面積の方が多くなるように設定することが好ましい。これにより、抜出動作において下側配置状態となった後、上側制限部材12が切断部材11と一体的に上昇しても、切断部材11と一緒に板材13が上昇してしまう事態を回避し易くすることができる。なお、抜出動作において下側配置状態となった場合には、板材移動制限部12bより下側に切断部材11の本体部32が全く突出しない高さ位置に板材移動制限部12bを配置する構成としてもよいし、板材移動制限部12bより下側に、切断部材11の下端部31が突出しない高さ位置に板材移動制限部12bを配置する構成としてもよい。
【0091】
このように、板材加工装置10によれば、分断進行動作により板材13(板材配置部13a)に対して下側に切断部材11の刃先33の一部が突出した状態から、当該刃先33の一部が板材13内に位置する側へ切断部材11を移動する抜出動作を利用して構造部材を製造することができる。このため、板材13を切断する場合において、板材13の切断を開始した後に板材13の端まで切断しなければならないといった制限を少なくすることができる。よって、板材13を効率良く切断して歩留まりの高い切断加工を行い易くすることができる。
【0092】
また、抜出動作中には、第2移動機構24bによって板材移動制限部12bが板材13の一面側(上面側)に配置された状態が維持され、板材移動制限部12bが板材13に接触することで板材13が切断部材11と共に上側固定部材28aの側へ移動することを制限可能に構成されている。このため、板材13の切断面に切断部材11の表面部分が張り付いた状態で、切断部材11と共に板材13の一部分が移動してしまう事態を回避し易くすることができる。よって、切断部材11の抜出動作中に切断部材11と共に板材13の一部が移動することで板材13が変形したり、板材13の一部が一旦上昇した後に元の位置に落下する際に板材13の切断面に刃先33が接触するなどして切断面が破損してしまうといった事態を回避し易くすることができる。
【0093】
また、第2移動機構24bによって移動動作が可能な上側制限部材12には、切断部材11の厚み方向の変位を制限可能な切断部材制限部12aと、板材13の移動を制限可能な板材移動制限部12bとが一体的に設けられている。このため、2つの制限部12a,12bを利用して良質な構造部材を効率良く製造することができる機能を、共通する1つの移動機構を用いて、低コストで付加することができる。
【0094】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものでなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものであり、例えば、以下に記載するように変形して実施してもよい。
【0095】
上記実施形態においては、上側制限部材12の切断部材制限部12aと下側制限部材14とによって切断部材11の一部の変位を制限可能とする場合について説明したが、上側制限部材12の切断部材制限部12aと下側制限部材14とのいずれか又は両方を省略してもよい。この場合であっても、上側制限部材12の板材移動制限部12bを利用して抜出動作を行うことができ、歩留まりの高い切断加工を可能とし、また、板材13の切断面の破損を回避し易くすることができる。
【0096】
また、上記実施形態においては、上側制限部材12の板材移動制限部12bを利用して抜出動作を実行する場合について説明したが、板材移動制限部12bを省略し、抜出動作における板材13の上側への移動を制限しない構成としてもよい。この場合であっても、上側制限部材12の切断部材制限部12aを利用して切込動作を行うことができ、薄く設定した切断部材11を利用して良質な構造部材を効率良く製造することができる。
【0097】
また、上記実施形態においては、上側制限部材12が板材13に対して上方側に配置され、切断部材11が板材13の上面側から切込動作を開始し、板材13が厚み方向を上下方向にして配置される場合について例示したが、これに限らず、板材13に対して下側に上側制限部材12の切断部材制限部12aと板材移動制限部12bとが位置し、切断部材11が板材13の下面側から切込動作を開始するように配置するなど、他の配置にしてもよい。すなわち、上昇することで切込動作を実行し、下降することで抜出動作を実行するように構成してもよいし、板材13が水平でなく、斜めに配置されてもよいし、板材13が垂直に配置されて、切断部材11及び上側制限部材12の切断部材制限部12aと板材移動制限部12bとが水平方向側に移動することで切込動作や抜出動作を実行するように構成してもよい。
【0098】
また、上記実施形態においては、第1移動機構24aと第2移動機構24bとによる切断部材11及び上側制限部材12の移動方向と、板材13の厚み方向とを一致させる場合について説明したが、これらの方向を必ずしも一致させる必要はない。例えば、板材13の厚み方向に対して、僅かに斜めに傾斜した方向に、第1移動機構24aと第2移動機構24bとによる切断部材11と上側制限部材12の移動方向を設定してもよく、また、必ずしも直線状に移動方向を設定する必要はなく、これに代えて、又はこれに加えて、曲線状や折れ線状に移動可能な区間を含むように構成してもよい。
【0099】
また、上記実施形態においては、第2移動機構24bとして、制御装置23によって移動制御が可能な場合について説明したが、必ずしも移動制御が可能な構成とする必要はない。例えば、第2移動機構24bのエアシリンダ24cに代えて、上側制限部材12を下方側に付勢する力を発生する弾性体(例えば、圧縮バネ)を設け、切込動作において、上側制限部材12が板材13に接触するまでは、切断部材11と一体的に上側制限部材12が下方へ移動し、上側制限部材12が板材13に接触した後は、弾性体が変形して上側制限部材12は下降せず、切断部材11だけが下方に移動するようにしてもよい。この構成であっても、切断部材制限部12aと、板材移動制限部12bの機能を発揮させることができる。
【0100】
また、上記実施形態においては、板材加工装置10によって発泡樹脂製の断熱材を加工対象とする場合について説明したが、これに限らず、他の材料から形成される板材を加工対象としてもよいし、また、断熱以外の機能(例えば、防音機能)を付加することを目的とした板材を加工対象としてもよい。
【0101】
また、上記実施形態においては、板材加工装置10の加工対象である板材13が、単一の材料から構成される場合について説明したが、これに限らず、複数の層が積層されて複数種類の材料から構成してもよく、厚み方向の少なくとも一面に、光や熱を反射可能なアルミニウム箔等の反射層や、水を遮断可能な樹脂膜等の防水層を含むものなど、1又は2以上の機能層を含む積層型の板材であってもよい。
【0102】
また、上記実施形態においては、切断部材11と下側制限部材14として金属が用いられ、上側制限部材12として合成樹脂が用いられる場合について説明したが、これに限らず、切断部材11にセラミックを用いたり、下側制限部材14に合成樹脂を用いたり、上側制限部材12に金属を用いたりするなど、他の材料を用いて切断部材11、上側制限部材12及び下側制限部材14を構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0103】
以上説明したように、この発明は、板材を切断する加工が可能な板材加工装置に適している。
【符号の説明】
【0104】
10:板材加工装置、11:切断部材、12:上側制限部材、12a:切断部材制限部(取付部側制限部材)、12b:板材移動制限部(板材移動制限部材)、13:板材、13a:板材配置部、14:下側制限部材、23:制御装置、24:上側動作機構、24a:第1移動機構、24b:第2移動機構、28a:上側固定部材(取付部)、31:下端部、32:本体部、33:刃先、33a:主刃先、33b:副刃先、34:傾斜部、41:基部、42:隙間部、43:突出部(制限部)
図1
図2
図3
図4
図5