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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131651
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】RB活性化食品組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20230914BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230914BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230914BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230914BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20230914BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230914BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230914BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20230914BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20230914BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20230914BHJP
   A61K 8/99 20170101ALI20230914BHJP
   A61K 35/744 20150101ALI20230914BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20230914BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20230914BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20230914BHJP
   A23L 2/02 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
A23L33/105
A61P35/00
A61P25/00
A61P9/00
A61P31/00
A61P29/00
A61P19/02
A61P29/00 101
A61K36/185
A61K8/9789
A61Q19/08
A61K8/99
A61K35/744
A61K35/747
A23L33/135
A23L2/00 F
A23L2/52 101
A23L2/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036535
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】509349141
【氏名又は名称】京都府公立大学法人
(71)【出願人】
【識別番号】591066362
【氏名又は名称】築野食品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100185258
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 宏理
(74)【代理人】
【識別番号】100101085
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 健至
(74)【代理人】
【識別番号】100134131
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 知理
(72)【発明者】
【氏名】酒井 敏行
(72)【発明者】
【氏名】堀中 真野
(72)【発明者】
【氏名】増田 光治
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
4C083
4C087
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018MD48
4B018MD86
4B018ME08
4B018ME09
4B018ME14
4B117LC04
4B117LG01
4B117LK23
4C083AA031
4C083AA111
4C083AA112
4C083CC02
4C083EE12
4C083FF01
4C083FF05
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BC56
4C087CA09
4C087MA02
4C087MA52
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA36
4C087ZA96
4C087ZB11
4C087ZB15
4C087ZB26
4C087ZB31
4C087ZC75
4C088AB12
4C088AC04
4C088CA02
4C088CA12
4C088CA17
4C088MA07
4C088MA52
4C088NA05
4C088NA14
4C088ZA01
4C088ZA36
4C088ZA96
4C088ZB11
4C088ZB15
4C088ZB26
4C088ZB31
4C088ZC75
(57)【要約】
【課題】RB活性化作用を有する食品を提供し、RB活性化作用に加えて抗炎症作用及び抗酸化作用をも併せ持つ食品を提供し、さらに、がんの予防及び/又は治療、神経性疾患の予防及び/又は治療、循環器疾患の予防及び/又は治療、及び/又は、感染症、慢性炎症疾患及び関節リウマチの予防及び/又は治療や、生活習慣病の予防及び/又は老化予防にも用いられる食品及び剤を提供する。
【解決手段】カカドゥプラム及びザクロからなるRB活性化作用を有する植物の実の可食部又はその処理物を含有することを特徴とするRB活性化用食品組成物及びRB活性化剤とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カカドゥプラム及びザクロからなるRB活性化作用を有する植物の実の可食部又はその処理物を含有することを特徴とするRB活性化用食品組成物。
【請求項2】
さらに乳酸菌を含有することを特徴とする、第1の手段に記載のRB活性化用食品組成物。
【請求項3】
前記処理物が果汁であることを特徴とする、第1または第2の手段に記載のRB活性化用食品組成物。
【請求項4】
飲料であることを特徴とする、第1~第3の手段のいずれか一の手段に記載のRB活性化用食品組成物。
【請求項5】
がんの予防及び/又は治療、神経性疾患の予防及び/又は治療、循環器疾患の予防及び/又は治療、及び/又は、感染症、慢性炎症疾患及び関節リウマチの予防及び/又は治療に用いられることを特徴とする、第1の手段~第4の手段のいずれか一の手段に記載のRB活性化用食品組成物。
【請求項6】
生活習慣病の予防及び/又は老化予防に用いられることを特徴とする、第1の手段~第4の手段のいずれか一の手段に記載のRB活性化用食品組成物。
【請求項7】
カカドゥプラム及びザクロからなるRB活性化作用を有する植物の実の可食部又はその処理物を含有することを特徴とするRB活性化剤。
【請求項8】
さらに乳酸菌を含有することを特徴とする、第8の手段に記載のRB活性化剤。
【請求項9】
前記処理物が果汁であることを特徴とする、第7の手段または第8の手段に記載のRB活性化剤。
【請求項10】
がんの予防及び/又は治療、神経性疾患の予防及び/又は治療、循環器疾患の予防及び/又は治療、及び/又は、感染症、慢性炎症疾患及び関節リウマチの予防及び/又は治療に用いられることを特徴とする、第7~第9の手段のいずれか一の手段に記載のRB活性剤。
【請求項11】
生活習慣病の予防及び/又は老化予防に用いられることを特徴とする、第7の手段~第9の手段のいずれか一の手段に記載のRB活性化剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品に関する。より詳細には、本発明は、RB活性化作用、抗炎症作用及び抗酸化作用を有する食品に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、がん抑制遺伝子であるRBに着目してRB再活性化物質をスクリーニングする手法を開発し、MEK阻害剤であるトラメチニブ等を発見した。トラメチニブは、国際的に最も深刻ながんの一つとされていた難治性の皮膚がんのうち、進行性BRAF変異メラノーマ(悪性黒色腫)に対して既存薬に比べ著しく高い治療効果を示す。そして、2013年に初のMEK阻害剤として米国承認後、日本を含む80カ国以上で承認、第一選択薬として使用され、さらに、BRAF変異非小細胞肺がんや甲状腺未分化がんにも著効を示して承認され、世界のがん克服に大きく貢献している。
【0003】
このように、がん抑制遺伝子であるRBを活性化するトラメチニブなどの医薬は、がん克服に有用であると考えられる。しかしながら、これらはいずれも医薬であるために、医師による処方が必要になるなど利用の場が限られる上、高価であることなどの理由で予防薬として用いることは困難である。そのため、より簡便に利用可能な手法の提供が求められている。
【0004】
一方、ビタミンC含有量が高いものとしてカカドゥプラム(一般名Kakadu plum、学名Terminalia ferdinandiana)があり、その果実にはオレンジの果実の100倍に相当する70mg/g DWものビタミンCが含まれ、その総還元力は抗酸化TEAC値で204.8 Trolox equivalents/gと、ブルーベリーの5.19倍という極めて高い値を有し、カリウム/ナトリウム比が大きいとの報告がある(非特許文献1)。そして、抗酸化物質の一例としてカカドゥプラムが記載される文献もある(特許文献1)。また、ザクロの抽出物が前立腺がん患者の腫瘍マーカーPSAを改善させた報告がある(非特許文献2)。さらに、乳酸菌については、Lactobacillus caseiが、ヒト臨床試験において前がん病変の大腸ポリープの発生を抑制し(非特許文献3)、別の乳酸菌が、抗腫瘍性サイトカインのTRAILの発現を上昇しNK活性を増強した(非特許文献4)との報告がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6105588号公報
【非特許文献1】オーストラリア貿易投資促進庁 (オーストレード)、カカドゥプラム、機能性の欄(https://www.austrade.gov.au/local-sites/japan/buy-from-australia/industry-information/kakadu-plum)
【非特許文献2】Prostate Cancer Prostatic Dis. 2013 March; 16(1): 50-55.
【非特許文献3】Int J Cancer. 2005; 116: 762-7
【非特許文献4】FEBS Lett. 2010; 584: 577-82
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、RBタンパク質活性化作用を有する食品を提供することを目的とする。好ましくは、本発明は、RB活性化作用に加えて抗炎症作用及び抗酸化作用をも併せ持つ食品を提供することを目的とする。そしてさらに好ましくは、本発明は、がんの予防及び/又は治療、神経性疾患の予防及び/又は治療、循環器疾患の予防及び/又は治療、及び/又は、感染症、慢性炎症疾患及び関節リウマチの予防及び/又は治療や、生活習慣病の予防及び/又は老化予防にも用いられる食品及び剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
カカドゥプラム、ザクロにおけるRB活性化作用、カカドゥプラムとザクロとを組み合わせたことによる腫瘍病変の発生抑制作用、カカドゥプラムとザクロにさらに乳酸菌を組合せる場合における効果が全く知られていなかったところ、本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、カカドゥプラム及びザクロがRB活性化作用を奏すること、それらを組合せることにより腫瘍病変の発生抑制作用を奏すること、及び、さらに乳酸菌を組合せる場合にも良好な効果を奏することを初めて発見し、この知見に基づいてさらに研究を進め、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の課題を解決するための第1の手段は、カカドゥプラム及びザクロからなるRB活性化作用を有する植物の実の可食部又はその処理物を含有することを特徴とするRB活性化用食品組成物である。
【0009】
本発明の第2の手段は、さらに乳酸菌を含有することを特徴とする、第1の手段に記載のRB活性化用食品組成物である。
【0010】
本発明の第3の手段は、前記処理物が果汁であることを特徴とする、第1または第2の手段に記載のRB活性化用食品組成物である。
【0011】
本発明の第4の手段は、飲料であることを特徴とする、第1~第3の手段のいずれか一の手段に記載のRB活性化用食品組成物である。
【0012】
本発明の第5の手段は、がんの予防及び/又は治療、神経性疾患の予防及び/又は治療、循環器疾患の予防及び/又は治療、及び/又は、感染症、慢性炎症疾患及び関節リウマチの予防及び/又は治療に用いられることを特徴とする、第1の手段~第4の手段のいずれか一の手段に記載のRB活性化用食品組成物である。
【0013】
本発明の第6の手段は、生活習慣病の予防及び/又は老化予防に用いられることを特徴とする、第1の手段~第4の手段のいずれか一の手段に記載のRB活性化用食品組成物である。
【0014】
本発明の第7の手段は、カカドゥプラム及びザクロからなるRB活性化作用を有する植物の実の可食部又はその処理物を含有することを特徴とするRB活性化剤である。
【0015】
本発明の第8の手段は、さらに乳酸菌を含有することを特徴とする、第7の手段に記載のRB活性化剤である。
【0016】
本発明の第9の手段は、前記処理物が果汁であることを特徴とする、第7の手段または第8の手段に記載のRB活性化剤である。
【0017】
本発明の第10の手段は、がんの予防及び/又は治療、神経性疾患の予防及び/又は治療、循環器疾患の予防及び/又は治療、及び/又は、感染症、慢性炎症疾患及び関節リウマチの予防及び/又は治療に用いられることを特徴とする、第7~第9の手段のいずれか一の手段に記載のRB活性剤である。
【0018】
本発明の第11の手段は、生活習慣病の予防及び/又は老化予防に用いられることを特徴とする、第7~第9の手段のいずれか一の手段に記載のRB活性化剤である。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、RB活性化作用を有する食品を提供することができる。本発明のRB活性化作用を有する食品は、がん、神経性疾患、循環器疾患、感染症、慢性炎症疾患及び関節リウマチを予防及び/又は治療できる。さらに好ましくは、本発明は、RB活性化作用に加えて抗炎症作用及び抗酸化作用をも併せ持つ食品を提供することができる。本発明の抗炎症作用を有する食品は、慢性炎症疾患を予防及び/又は治療し得る。本発明の抗酸化作用を有する食品は、抗老化剤、並びに生活習慣病の予防及び/又は治療剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】カカドゥプラム果汁及びザクロ果汁によるLIM1215大腸がん細胞のコロニー形成抑制試験の結果を示す。図1Aは各果汁(1.56μL/mL)で2週間処理した細胞のコロニー形成試験結果(各1ウェル)を示す。図1Bは、各濃度の果汁で細胞を2週間培養した際の試験結果であり、各値は3ウェルの平均値をS.D.で示している(**:p<0.01,***:p<0.001)。
図2】カカドゥプラム果汁及びザクロ果汁による大腸がん細胞の細胞周期に及ぼす影響を評価した試験の結果を示す。
図3】カカドゥプラム果汁及びザクロ果汁による大腸がん細胞株におけるRBタンパク質量及び脱リン酸化の程度を評価した試験結果を示す。
図4】カカドゥプラム果汁及びザクロ果汁に共通の成分であるコリラギン(corilagin)とプニカラギン(punicalagin)によるRBタンパク質活性化効果を確認した試験結果を示す。
図5】カカドゥプラム果汁及びザクロ果汁による抗炎症作用を確認した試験結果を示す。
図6】カカドゥプラム果汁とザクロ果汁の併用による抗炎症作用を確認した試験結果を示す。
図7】カカドゥプラム果汁、ザクロ果汁及びその併用による活性酸素の誘導抑制効果を確認した試験結果を示す。
図8】乳酸菌Lactobacillus pentosus S-PT84摂取による健康なボランティアからのPBMCにおけるtumor necrosis factor-related apoptosis-inducing ligand(TRAIL)のタンパク質レベルの誘導効果を確認した試験結果を示す。
図9】表3の試験において観察されたaberrant crypt foci(ACF)像を、ACFを構成するaberrant crypt(AC)の個数毎に示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態を、実施例の記載と図面を適宜参照しつつ以下に具体的に説明する。なお、当該記載によって本発明のRB活性化用食品組成物やRB活性化剤の態様が限定して解釈されるものではない。
【0022】
本発明は、本発明の効果を奏する限り、本発明の技術的範囲内において、上記の本発明の手段に記載の構成を種々組み合わせた態様を含む。
【0023】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【実施例0024】
<果汁、野菜汁及び茶などによるG1期停止作用による細胞周期解析>
【0025】
細胞周期への影響においてG1期停止作用が認められれば、細胞におけるRBの活性化が示唆される。そこで、果汁、野菜汁及び茶などを用い、細胞周期解析を行い、高いG1期停止作用を有するか確認を行った。
【0026】
以下に示す原材料を用いて調製されたもの又は商品を各サンプルとして用いるものとし、それぞれ記載の購入先より購入し、検討に用いた。
[サンプル番号 原料名等、購入先]
No.1 ゴーヤ:株式会社サンヨーフーズ、日本
No.2 アセロラ:株式会社ニチレイフーズ、日本
No.4 烏龍茶飲料、市販品(サントリー食品インターナショナル株式会社製)、日本
No.5 発酵ぶどう果汁用ぶどう:大洋香料株式会社、日本
No.6 カカドゥプラム:株式会社サンヨーフーズ、日本(オーストラリアより輸入)
No.7 温州みかん:日本果実加工株式会社、日本
No.8 ブロッコリースプラウト:株式会社サンヨーフーズ、日本
No.10 コーヒー飲料、市販品(サントリー食品インターナショナル株式会社製)、日本
No.11 緑茶飲料A、市販品(サントリー食品インターナショナル株式会社製)、日本
No.12 緑茶飲料B、市販品(サントリー食品インターナショナル株式会社製)、日本
No.13 紫いも:株式会社サンヨーフーズ、日本
No.14 ザクロ:雄山株式会社、日本
No.15 トマト:寿高原食品株式会社、日本
No.17 オレンジ:日本果実加工株式会社、日本
No.18 バレンシアオレンジ:日本果実加工株式会社、日本
No.19 りんご:日本果実加工株式会社、日本
No.20 ぶどう:日本果実加工株式会社、日本
No.21 ウコン:三栄源エフ・エフ・アイ株式会社、日本
No.22 ニンジン:Grimmway Farms、米国
No.23 ニンジン:株式会社サンヨーフーズ、日本
No.24 うめ:プラム食品株式会社、日本
No.25 ラズベリー:株式会社サンヨーフーズ、日本
No.26 ブルーベリー:株式会社サンヨーフーズ、日本
No.27 マンゴー:株式会社サンヨーフーズ、日本
No.28 薬用ゴーヤ:株式会社サンヨーフーズ、日本
【0027】
これらの原料より、果汁もしくは野菜汁は以下の手順にて調製される。各原料の実もしくは野菜を清浄水で洗浄し、果汁もしくは野菜汁を搾汁する。搾汁した果汁もしくは野菜汁は、遠心処理(2500rpm)し、可溶成分が溶解している上清をポアサイズ5μm、0.8μm及び0.2μmのシリンジフィルターで順にろ過滅菌し、それぞれ小分けにした後に-20℃にて保存した。使用時毎に融解して用いた。
【0028】
<in vitro試験における細胞の準備>
大腸上皮細胞におけるWnt-β-catenin経路は、細胞増殖と大腸上皮細胞の元となる幹細胞から種々の上皮細胞への分化などに関わる重要な細胞内シグナル伝達系である。そして、ヒト大腸がんの多くは、大腸粘膜上皮細胞の分化過程で、Wnt-β-catenin経路を構成する遺伝子(たとえば、APC及びβ-cateninなど)の変異が生じ、その結果として無秩序な細胞増殖が促進される。その後、他の細胞増殖に関わる遺伝子(K-Ras、BRAFなど)や細胞増殖抑制に関わる遺伝子(たとえば、p53など)の変異が蓄積され、がんに発達する。
【0029】
そこで、これら大腸がんにおける遺伝子変異の蓄積に関する知見を踏まえ、大腸がん予防効果を検証すべく、その検証試験の対象細胞株として、Wnt-β-catenin経路の異常のみを持つ発がん初期の遺伝子ステータスに近い、ヒト遺伝性非ポリポーシス大腸がん患者由来の大腸がん細胞株であるLIM1215を選定した。LIM1215はCellBank Australiaより購入した。なお、LIM1215の主な遺伝子ステータスは下記表1に示すとおりである。
【0030】
【表1】
【0031】
<試験方法>
細胞培養用6ウェルプレートに、LIM1215細胞を1×10cells/2mL/ウェルずつ播種した。一晩培養後、培地を無血清培地に置き換え、2日間培養した後、培地を通常培地に置き換え、各サンプルを培地に対してvol./vol.で、1/160、1/80又は1/40の割合で添加した。1ウェル当たり、各サンプルとPBS(-)(リン酸緩衝生理食塩水)との合計50μLを添加した。24時間後、細胞周期を測定した。各サンプルのG1期をコントロール群(PBS(-)添加)のG1期比率を1とした相対値で計算した。
【0032】
<結果>
表2に、全サンプルのG1期停止作用の相対値一覧を示す。
【0033】
【表2】
【0034】
上記試験の結果、カカドゥプラム果汁及びザクロ果汁などにおいて、ヒト大腸がん細胞LIM1215における優れたG1期停止作用が認められた。
【0035】
そこで、ヒト大腸がん細胞LIM1215における優れたG1期停止作用が認められたカカドゥプラム果汁及びザクロ果汁を、以降の評価試験に用いた。
【0036】
<評価試験1:大腸がん細胞のコロニー形成抑制試験>
通常のin vitro実験では、細胞が高密度で培養されている状態が一般的である。しかしながら、正常細胞からがんへの変遷では、1個の正常細胞が増殖制御に異常を来し、それが無秩序に増殖を繰り返してがん化していく。そのため、がん細胞を低密度培養するコロニー形成抑制試験は、発がん過程をより反映したin vitro実験系といえる。そこで、カカドゥプラム果汁及びザクロ果汁などのカカドゥプラム及びザクロの実の可食部又はその処理物を用い、がん細胞を低密度培養するコロニー形成抑制試験を実施した。
【0037】
<試験方法>
細胞培養用6ウェルプレートを用い、LIM1215細胞を300cells/2mL/ウェルずつ播種した。24時間培養した後、各サンプルを培地に対して図1に示す濃度となるようにPBS(-)で希釈し、1ウェル当たり50μLを添加した。コントロールとしてPBS(-)を添加した。なお、サンプル添加による培地のpHへの影響はなかった。
【0038】
サンプル添加後2週間培養し、培地を除去した後4%中性緩衝ホルマリンでコロニーを固定し、0.1%クリスタルバイオレットでコロニーを染色し、染まったコロニー数を肉眼で測定した。コロニー数の集計では、各3ウェルのコロニー数の平均値を用いた。
【0039】
<結果>
試験結果を図1に示す。カカドゥプラム果汁、及び、ザクロ果汁は、大変優れたコロニー形成抑制能を示すことが確認された(図1Aを参照。)。また、そのコロニー形成抑制能は、カカドゥプラム及びザクロ共に用量依存的であり、カカドゥプラム果汁、及び、ザクロ果汁は、いずれもその濃度を高めることで大腸がん細胞のコロニー形成能を完全に抑制することが確認された(図1Bを参照。)。
【0040】
これらの結果から、カカドゥプラム果汁及びザクロ果汁などのカカドゥプラム及びザクロの実の可食部又はその処理物を含有するものは、大腸がん細胞のコロニー形成を用量依存的に抑制する優れた効果を奏するものであることが理解される。
【0041】
<評価試験2:カカドゥプラム果汁及びザクロ果汁の細胞周期に及ぼす影響の確認試験(G1期停止作用の確認試験)>
【0042】
細胞周期への影響においてG1期停止作用が認められればRBの活性化が示唆されることが知られている。そこで、カカドゥプラム果汁及びザクロ果汁などのカカドゥプラム及びザクロの実の可食部又はその処理物を添加した際のヒト大腸がん細胞における細胞周期解析(すなわち、G1期停止作用の確認)を行った。
【0043】
<試験方法>
細胞培養用6ウェルプレートに、LIM1215細胞を1×10cells/2mL/ウェルずつ播種した。一晩培養後、培地を無血清培地に置き換え、2日間培養した後、培地を通常培地に置き換え、各サンプルを図2に示す濃度となるようにPBS(-)で希釈し各ウェルに50μLずつ添加した。コントロールとしてPBS(-)を添加した。24時間培養した後、フローサイトメトリーによる細胞周期解析のために細胞を回収した。細胞周期の解析は、ModFit LT software、アポトーシス(SubG1)の解析はCellQuest softwareで行った。
【0044】
<結果>
その結果、カカドゥプラム果汁及びザクロ果汁を添加すると、ヒト大腸がん細胞株LIM1215の細胞周期においてG1期停止が認められた(図2左を参照。)。また、G1期停止は、カカドゥプラム、及び、ザクロ共に用量依存的であった。さらにカカドゥプラムの果汁において用量依存的に強いSubG1期細胞の増加効果も認められたことからアポトーシスが誘導されていることが示唆された(図2右を参照。)。
【0045】
これらの結果から、カカドゥプラム果汁及びザクロ果汁などのカカドゥプラム及びザクロの実の可食部又はその処理物を含有するものは、大腸がん細胞の細胞周期において用量依存的なG1期停止作用を奏するものであること、その際のRBの活性化が示唆されるものであることが理解される。そこで、これらRB活性化に関する作用についてさらに検討を加えることとした。
【0046】
<評価試験3:カカドゥプラム果汁及びザクロ果汁によるRBタンパク質の脱リン酸化作用の確認試験>
【0047】
RBは、タンパク質のアミノ酸残基(780番目のセリン残基や807/811番目のセリン残基、826番目のスレオニン残基など)がリン酸化されることで失活する。すなわち、上記のような特定の部位がリン酸化されたRBタンパク質の量の変化を調べることで、その活性の変動を知ることができる。そこで、カカドゥプラム果汁及びザクロ果汁などのカカドゥプラム及びザクロの実の可食部又はその処理物を添加した際のRBの活性化について確認する試験を行った。
【0048】
<試験方法>
細胞培養用10cmディッシュに、LIM1215細胞を2×10cells/10mL/ディッシュずつ播種した。一晩培養後、カカドゥプラム果汁、ザクロ果汁、及びカカドゥプラム果汁とザクロ果汁の混合果汁を図3に示す比率に調整し、それぞれ62.5μL/ディッシュずつ添加した。コントロールとしてPBS(-)を添加した。72時間後に細胞を回収してタンパク質を抽出し、ウェスタンブロッティングを行いRBタンパク質の脱リン酸化の程度とRBタンパク質を脱リン酸化型(活性化型)にする作用を有するp21タンパク質の発現量を確認する試験を行った。GAPDHをローディングコントロールとして確認した。試験結果を図3に示す。
【0049】
<結果>
カカドゥプラム果汁、ザクロ果汁、及びカカドゥプラム果汁とザクロ果汁の混合果汁を添加すると、リン酸化RBタンパク質の量の減少と、RBタンパク質の脱リン酸化型への移行が観察され、すなわち、RBが活性化型になったことが確認された(図3を参照)。
【0050】
また、RBタンパク質が脱リン酸化型に移行する時に、RBタンパク質を脱リン酸化型にさせるp21タンパク質の発現量も増えていた(図3を参照)。これらから、カカドゥプラム果汁、ザクロ果汁、及びカカドゥプラム果汁とザクロ果汁の混合果汁により、p21タンパク質の発現が増強することにより、RBタンパク質は活性化され、細胞周期のG1期停止を起こす可能性が示唆された。
【0051】
これらの結果から、カカドゥプラム果汁及びザクロ果汁などのカカドゥプラム及びザクロの実の可食部又はその処理物を含有するものは、大腸がん細胞のRBを活性化型にするp21タンパク質の発現を増強し、RBタンパク質を活性化型にして細胞周期のG1期停止を起こすであろうことが想定される。
【0052】
<評価試験4:カカドゥプラム果汁及びザクロ果汁に共通する果汁成分によるRBタンパク質の脱リン酸化作用の確認試験>
【0053】
上記各試験により、カカドゥプラム果汁及びザクロ果汁は、大腸がん細胞のRBタンパク質を活性化型(脱リン酸化型)にし、細胞周期のG1期停止を起こすことに寄与するものであると考えられた。カカドゥプラム果汁及びザクロ果汁には、共通する成分としてコリラギン(corilagin)及びプニカラギン(punicalagin)が含まれることが知られている。そこで、これら果汁に共通する成分であるコリラギン及びプニカラギンが、大腸がん細胞のRBタンパク質を活性化型(脱リン酸化型)にする効果を奏するか否かについて確認する試験を行った。
【0054】
<試験方法>
評価試験3と同様にして、LIM1215細胞を播種し、翌日に各濃度のコリラギン及びプニカラギンを添加した。その後、細胞を72時間培養した後、細胞溶解液を調製し、ウエスタンブロットを行い、RBタンパク質のリン酸化状態を評価した。
【0055】
<結果>
カカドゥプラム果汁及びザクロ果汁に共通する果汁成分であるコリラギン及びプニカラギンは、いずれも用量依存的に大腸がん細胞のRBタンパク質を活性化型(脱リン酸化型)にする効果を示すことが確認された(図4を参照。)。
【0056】
これらの結果から、カカドゥプラム果汁及びザクロ果汁などのカカドゥプラム及びザクロの実の可食部又はその処理物に共通する成分であるコリラギン及びプニカラギンは、いずれも大腸がん細胞のRBタンパク質を用量依存的に活性化型(脱リン酸化型)に変換し、RBタンパク質を活性化して細胞周期のG1期停止を起こすことに寄与するであろうことが理解される。
【0057】
<評価試験5:カカドゥプラム果汁及びザクロ果汁による抗炎症作用(TNF-α惹起IL-6誘導の抑制能)の評価試験>
【0058】
大腸がん細胞をTNF-αに曝露することでIL-6誘導が起き、炎症反応が生じる。そこで、カカドゥプラム果汁及びザクロ果汁により、抗炎症作用(TNF-α惹起IL-6誘導の抑制作用)が生じるか確認する試験を行った。
【0059】
<試験方法>
細胞培養用12ウェルプレートに、LIM1215細胞を5×10cells/1mL/ウェルずつ播種した。2日間培養した後、各種濃度に調整したカカドゥプラム果汁またはザクロ果汁を培地に添加した。各果汁を添加することによる培地のpHへの影響はなかった。添加1時間後に、1ウェル当たりTNF-α 10ng/mLを添加して炎症反応を惹起し、その1時間後に培地を除去して細胞を回収し、Sepasol(登録商標)-RNA I Super G溶液で細胞を溶解の後、トータルRNAを抽出回収した。そして、High-Capacity cDNA Reverse Transcription Kitを用いてcDNAを合成し、IL-6のTaqManプローブ(Hs00985639 m1)とGAPDHのTaqManプローブ(Hs99999905 m1)を用いて、リアルタイムPCRを行い、IL-6とGAPDHのmRNA量を定量した。IL-6のmRNA量は、GAPDHの量で補正した。
【0060】
<結果>
カカドゥプラム果汁及びザクロ果汁はいずれも、TNF-α添加により大腸がん細胞に誘導されるIL-6の発現量を用量依存的に減少させるものであることが確認された(図5を参照。)。
【0061】
これらの結果から、カカドゥプラム果汁及びザクロ果汁などのカカドゥプラム及びザクロの実の可食部又はその処理物は、いずれも大腸がん細胞のTNF-α添加により誘導されるIL-6の発現を用量依存的に抑制する抗炎症作用を奏するものであることが理解される。
【0062】
<評価試験6:カカドゥプラム果汁とザクロ果汁の併用による抗炎症作用(TNF-α惹起IL-6誘導の抑制能)の評価試験>
カカドゥプラム果汁及びザクロ果汁はいずれも、TNF-α添加により大腸がん細胞に誘導されるIL-6の発現量を用量依存的に減少させる成分であることが確認されたので、これら果汁を併用することによる抗炎症作用(TNF-α惹起IL-6誘導の抑制能)への影響を確認する試験を行った。
【0063】
<試験方法>
上記評価試験5と同様にして、細胞培養用12ウェルプレートに、LIM1215細胞を播種し、カカドゥプラム果汁とザクロ果汁、及び、それら果汁の50%濃度溶液となるよう等量混合した溶液(カカドゥプラム+ザクロ)をそれぞれ3.13μL/mLとなるよう添加し、TNF-α添加により大腸がん細胞に誘導されるIL-6の発現量の抑制効果を確認した。また、混合果汁の添加量を変えて添加し、IL-6抑制能の用量依存性を確認した。
【0064】
<結果>
カカドゥプラム果汁とザクロ果汁の50%濃度溶液1:1の混合果汁にも、用量依存的な優れた抗炎症作用が認められた(図6を参照。)。
【0065】
これらの結果から、カカドゥプラム果汁などのカカドゥプラムの実の可食部又はその処理物、及び、ザクロ果汁などのザクロの実の可食部又はその処理物は、それを併用することで、大腸がん細胞のTNF-α添加により誘導されるIL-6の発現を用量依存的に抑制する抗炎症作用を奏するものであることが理解される。
【0066】
<評価試験7:カカドゥプラム果汁、ザクロ果汁及びその併用による活性酸素の誘導抑制効果の評価試験>
大腸がん細胞における過酸化水素処理による活性酸素の誘導がカカドゥプラム果汁、ザクロ果汁及びその併用により抑制されるものであるか確認する試験を行った。
【0067】
<試験方法>
上記評価試験と同様にしてカカドゥプラム果汁、ザクロ果汁及びそれらを1:1で混合した果汁を準備し、各果汁6.25μL/mLを含む培地でLIM1215細胞を24時間培養した。その後、活性酸素を誘導するために、細胞を500μMの過酸化水素で1時間処理した。細胞内の活性酸素は、10μM CM-HDCFDAを指標としてFACS Caliburを用いて測定した。得られたデータをCellQuest softwareを用いて解析した(n=3)。
【0068】
<結果>
カカドゥプラム果汁、ザクロ果汁及びそれらを1:1で混合した果汁は、LIM1215細胞を過酸化水素処理することによる活性酸素の誘導を有意に抑制することが確認された(図7を参照。**:P<0.01)。
【0069】
これらの結果から、カカドゥプラム果汁などのカカドゥプラムの実の可食部又はその処理物、及び、ザクロ果汁などのザクロの実の可食部又はその処理物、及び、それらの併用物は、大腸がん細胞の過酸化水素処理による活性酸素の誘導を有意に抑制する効果を奏するものであることが理解される。
【0070】
<評価試験8:乳酸菌Lactobacillus pentosus S-PT84株摂取による健康なボランティアの末梢血単核球(PBMC)におけるTRAILのタンパク質レベルの誘導評価試験>
TRAILは、特異的受容体との結合を介して標的となるがん細胞にアポトーシスを誘導する働きを担う抗腫瘍性サイトカインであり、TRAIL産生増強作用を有するものとして乳酸菌が知られている。そこで、乳酸菌のLactobacillus pentosus S-PT84株摂取による健康なヒトのボランティアからのPBMCにおけるTRAILのタンパク質レベルの誘導を確認する試験を行った。
【0071】
<試験方法>
Lactobacillus pentosus S-PT84株は、京都の漬物より単離された乳酸菌である。培養後、集めた菌体は、生理食塩水と水で順に洗浄し、加熱殺菌し、最後に凍結乾燥し、打錠した。プラセボまたはS-PT84錠剤を4週間、1日1回摂取した健康なボランティアから血液サンプルを採取した。血液サンプルのサンプリングは、錠剤を服用する1週間前、摂取開始4週間後、休薬後4週間後に行った。血液サンプルからPBMCを単離し、ウェスタンブロッティングによりTRAILタンパク質発現量を評価した。TRAILの量はGAPDHで補正し、服用する一週間前のPBMCサンプルを1とした倍率で示した。
【0072】
<結果>
図8Aに示すように、S-PT84群(n=16)における摂取開始4週間後のTRAIL発現量は、摂取前と比較して大きく増加した。また、図8Bに示すように、休薬4週間後のS-PT84群(n=16)におけるTRAIL発現量も、摂取前と比較して大きく増加した。いずれも、対照群(n=5)との差は有意であった。
【0073】
これらの結果から、乳酸菌のLactobacillus pentosus S-PT84株は、ヒトにおいて、TRAIL発現を効果的に誘導し得るものであることが理解される。
【0074】
<評価試験9:アゾキシメタン誘発ラット大腸前がん病変モデルを用いた、カカドゥプラム果汁、カカドゥプラム果汁とザクロ果汁の1:1混合果汁、カカドゥプラム果汁とザクロ果汁の1:1混合果汁とLactobacillus pentosus S-PT84株の併用による大腸発がん抑制効果の検討>
【0075】
上記の各種のin vitroにおける評価試験により、カカドゥプラム果汁、及びカカドゥプラム果汁とザクロ果汁の1:1混合果汁は、ヒト大腸がん細胞において優れたRB活性化能を示すとともに、その増殖を用量依存的に効果的に抑制する効果を奏するものであることが新たに確認された。そこで、カカドゥプラム果汁、及びカカドゥプラム果汁とザクロ果汁の混合果汁がin vivo試験においても有効に大腸前がん病変の発生を抑制するか確認する試験を行った。さらに、上記ヒト試験により乳酸菌のLactobacillus pentosus S-PT84株には、標的となるがん細胞にアポトーシスを誘導する働きを担う抗腫瘍性サイトカインのTRAIL産生増強作用を効果的に誘導し得ることが確認された。そこで、カカドゥプラム果汁とザクロ果汁の混合果汁にさらに上記乳酸菌を併用する場合においても、in vivo試験にて有効に大腸前がん病変の発生を抑制するか確認する試験を行った。
【0076】
<試験方法>
アゾキシメタン誘発ラット大腸前がん病変モデルを用いた試験を行った。施設順化が終了した6週齢のF344雄ラットを2群に分け、一群にはカカドゥプラム果汁、カカドゥプラム果汁とザクロ果汁の1:1混合果汁、または乳酸菌を添加した当該混合果汁を、他群には水を、月曜から金曜まで一日一回、1.5mLを強制経口投与した。乳酸菌菌体は約5億個/1.5mL果汁となるよう懸濁して投与した。果汁投与2日目と9日目に、アゾキシメタンを皮下注射し、前がん病変を惹起させた。果汁投与開始から5週間目に、全個体を安楽死させ、大腸を摘出し、長軸方向に開いて生理食塩水で洗浄後、10%中性緩衝ホルマリンで組織固定した。0.2%メチレンブルーで染色後、低倍率の顕微鏡下で大腸粘膜面の前がん病変であるACFの数を、各ACFを構成するAC数毎に確認し、集計した。結果を表3及び図9に示す。
【0077】
【表3】
【0078】
<結果>
カカドゥプラム果汁、カカドゥプラム果汁とザクロ果汁の1:1混合果汁、また乳酸菌を添加した当該混合果汁の投与により、大腸前がん病変の発生が抑制されたことが確認された(表3、図9を参照。)。また、AC及びACFはカカドゥプラム果汁、カカドゥプラム果汁とザクロ果汁の1:1混合果汁を投与することで共に減少し、乳酸菌を添加したカカドゥプラム果汁とザクロ果汁の1:1混合果汁を投与することで、AC及びACFは顕著に減少したことが確認された(表3、図9を参照。)。
【0079】
これらの結果から、カカドゥプラム果汁、カカドゥプラム果汁とザクロ果汁の1:1混合果汁は、in vivoにおいても、大腸前がん病変の発症の明らかな抑制傾向が示され、また、カカドゥプラム果汁とザクロ果汁の1:1混合果汁に乳酸菌を添加したものは、in vivoにおいてさらに優れた大腸前がん病変の発症の抑制傾向が示されたことから、RB活性化用食品組成物及びRB活性化剤が顕著に有用なものとして利用に供しうる可能性が理解される。
【産業上の利用可能性】
【0080】
カカドゥプラム及びザクロからなるRB活性化作用を有する植物の実の可食部又はその処理物を含有する食品組成物は、in vivoにおいて有用な飲料などのRB活性化用食品組成物及びRB活性化剤として供することができる。また、RB活性化により予防及び/又は治療されるがんや各種疾患に対するRB活性化用食品組成物及びRB活性化剤として有用なものとして供することが可能になる。さらに、カカドゥプラムからなるRB活性化作用を有する植物の実の可食部又はその処理物を含有する食品組成物とザクロからなるRB活性化作用を有する植物の実の可食部又はその処理物を含有する食品組成物にさらに乳酸菌を含有させることで、より優れた前がん病変の発症の抑制傾向が示されるRB活性化用食品組成物及びRB活性化剤として供することが可能になる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9