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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013167
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20230119BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20230119BHJP
   B01D 53/82 20060101ALI20230119BHJP
   B01J 20/22 20060101ALI20230119BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20230119BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20230119BHJP
【FI】
B01D53/14 100
B01D53/62 ZAB
B01D53/82
B01J20/22 A
B01J20/28 A
C01B32/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021117149
(22)【出願日】2021-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】國枝 雅文
(72)【発明者】
【氏名】岡田 佳史
(72)【発明者】
【氏名】栗谷 祐矢
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4G066
4G146
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC05
4D002AC10
4D002BA03
4D002BA13
4D002BA14
4D002CA07
4D002DA31
4D002DA32
4D002EA01
4D002EA02
4D002EA04
4D002EA08
4D002FA01
4D002GA01
4D002GA03
4D002GB11
4D002GB20
4D002HA03
4D002HA08
4D020AA03
4D020BA16
4D020BA19
4D020BB01
4D020BB07
4D020BC01
4D020CA05
4D020CC01
4D020CC09
4D020CC10
4D020CC14
4D020CD02
4D020DA01
4D020DA03
4D020DB06
4D020DB12
4G066AB13B
4G066BA02
4G066BA05
4G066BA20
4G066BA38
4G066CA35
4G066DA02
4G146JA02
4G146JB04
4G146JC08
4G146JC28
4G146JC30
(57)【要約】
【課題】 装置全体を吸脱着に適した温度にすることができ、小型化が可能な二酸化炭素回収装置を提供する。
【解決手段】 ガスに含まれる二酸化炭素を吸脱着する二酸化炭素回収装置であって、アミン化合物が担持された板が複数枚、上記ガスが流通するガス流通路となる間隔をあけて積み重ねられた吸着板と、上記吸着板に対して積み重ね方向に貫通され、熱媒体が流通する熱媒体流通路となる複数の管と、を備えることを特徴とする二酸化炭素回収装置。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスに含まれる二酸化炭素を吸脱着する二酸化炭素回収装置であって、
アミン化合物が担持された板が複数枚、前記ガスが流通するガス流通路となる間隔をあけて積み重ねられた吸着板と、
前記吸着板に対して積み重ね方向に貫通され、熱媒体が流通する熱媒体流通路となる複数の管と、
を備えることを特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項2】
前記板は、平板、波板又は断面視ジグザグ状である請求項1に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項3】
前記板は、300~1800枚積み重ねられる請求項1又は2に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項4】
前記管は、前記積み重ね方向に直交する平面10~100cmあたり1本設けられる請求項1~3のいずれかに記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項5】
隣り合う2枚の前記板の中心間距離は、1~6mmである請求項1~4のいずれかに記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項6】
前記板の主面の表面積は、8000~135000cmである請求項1~5のいずれかに記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項7】
前記ガスは、コジェネレーション発電装置から排出されるガスである請求項1~6のいずれかに記載の二酸化炭素回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素(CO)の濃度が、大気温の上昇や、台風、洪水などの自然災害の機会が上昇する地球温暖化との強い相関性を示すことが広く知られている。発電所、石油精製所、セメント工場及び鉄鋼生産プロセスなどの産業では、各プラントから多量のCOを放出しており、このようなCOの放出量を如何にして低減させるかは、大きな問題となっている。
【0003】
上記の問題を解決する方法として、放出するCOを捕捉し、貯蔵することが、以前より研究、検討されている。上記の方法は、実質的にCO排出量を減少させることができる点で優れており、基本プロセスに大きな変更を行わない種々の方法が検討されている。
【0004】
特許文献1には、特定のガス成分を含む反応ガスを流通させる反応流路層と、反応流路層と熱交換を行うための媒体ガスを流通させる媒体流路層とが交互に積層された積層体を備えた熱交換型反応器が開示されている。この熱交換型反応器における反応ガスとしてCOが挙げられており、COを吸収・放出することが可能な反応材(CO吸収材)としては、LiSiO等が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-84500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の熱交換型反応器では、ハニカム構造の反応流通路と媒体流通路の積層であるため、反応流路層のうち媒体流通路から離れた場所にある流路では温度の上下の追従性が悪く、COの回収・放出のムラがある。また、それをなくすために、それぞれの反応流路層(ハニカム厚み)を薄く、積層数を多く設計すると、COを吸収できる体積の割に反応器が大きくなってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、装置全体を吸脱着に適した温度にすることができ、小型化が可能な二酸化炭素回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の二酸化炭素回収装置は、ガスに含まれる二酸化炭素を吸脱着する二酸化炭素回収装置であって、アミン化合物が担持された板が複数枚、上記ガスが流通するガス流通路となる間隔をあけて積み重ねられた吸着板と、上記吸着板に対して積み重ね方向に貫通され、熱媒体が流通する熱媒体流通路となる複数の管と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の二酸化炭素回収装置によれば、アミン化合物が担持された板が複数枚、上記ガスが流通するガス流通路となる間隔をあけて積み重ねられた吸着板と、上記吸着板に対して積み重ね方向に貫通され、熱媒体が流通する熱媒体流通路となる複数の管と、を備えることから、熱媒体が流通する管と吸着板全体との距離を近くできるため、熱媒体に対する吸着板の温度追従性が高く、装置全体を二酸化炭素の吸着及び脱着のそれぞれの過程において適した温度にすることができる。そのため、吸着板に担持したアミン化合物の二酸化炭素吸脱着能を充分に発揮することができる。
また、吸着板の間に熱媒体層を挟む必要がないため、装置のサイズを小さくすることができる。
なお、本明細書において、吸脱着は、吸着、脱着のほか、吸収、放出も含んだ意味として用いることとする。また、本発明の二酸化炭素回収装置では、アミン化合物が、二酸化炭素を吸着・吸収し、所定の温度で脱着・放出する。
また、熱媒体は、吸着板等の対象物を加熱又は冷却して目的の温度に制御するために熱を移動させる流体を意味し、対象物を加熱する加熱媒体(熱媒)と冷却する冷却媒体(冷媒)のいずれであってもよい。
【0010】
本発明の二酸化炭素回収装置では、上記板は、平板、波板又は断面視ジグザグ状であることが望ましい。
【0011】
本発明の二酸化炭素回収装置では、上記板は、300~1800枚積み重ねられることが望ましい。
本発明の二酸化炭素回収装置において、上記板が300~1800枚積み重ねられると、二酸化炭素を多量に吸着板に吸着させ、かつ吸着した二酸化炭素を高効率で脱着することができる。
【0012】
本発明の二酸化炭素回収装置において、上記板が300枚未満であると、二酸化炭素を吸収するに充分なアミン化合物を担持することが難しくなる。
一方、上記板が1800枚を超えると、熱媒体によってすべての板を吸着・脱着に適した温度にすることが難しくなる。
【0013】
本発明の二酸化炭素回収装置では、上記管は、上記積み重ね方向に直交する平面10~100cmあたり1本設けられることが望ましい。すなわち、上記積み重ね方向に直交する平面100cmあたり1~10本管が設けられていることが望ましい。
本発明の二酸化炭素回収装置において、上記管が上記積み重ね方向に直交する平面10~100cmあたり1本設けられると、熱媒体によって板全体を吸着・脱着に適した温度にすることができる。
【0014】
本発明の二酸化炭素回収装置において、上記管が上記積み重ね方向に直交する平面100cmあたり1本より少なく設けられると、板全体に熱を充分に伝えることが難しくなる。
一方、上記管が上記積み重ね方向に直交する平面100cmあたり10本より多く設けられると、充分なアミン化合物を担持する面積を確保することが難しくなる。
【0015】
本発明の二酸化炭素回収装置では、隣り合う2枚の上記板の中心間距離は、1~6mmであることが望ましい。
本発明の二酸化炭素回収装置において、隣り合う2枚の上記板の中心間距離が1~6mmであると、二酸化炭素回収装置の単位体積あたりに充分なアミン化合物を担持することができる。
【0016】
本発明の二酸化炭素回収装置において、隣り合う2枚の上記板の中心間距離が1mm未満であると、隣り合う2枚の板の間隔が狭すぎるので、アミン化合物の層を厚く形成することが難しくなる。
一方、隣り合う2枚の上記板の中心間距離が6mmを超えると、ガス流通路の幅が広すぎて、単位体積あたりに充分なアミンを担持することが難しくなる。
【0017】
本発明の二酸化炭素回収装置では、上記板の主面の表面積は、8000~135000cmであることが望ましい。
本発明の二酸化炭素回収装置において、上記板の主面の表面積が8000~135000cmであると、二酸化炭素を多量に吸着板に吸着させ、かつ吸着した二酸化炭素を高効率で脱着することができる。
【0018】
本発明の二酸化炭素回収装置において、上記板の主面の表面積が8000cm未満であると、積層する板の枚数が多くなり、熱媒体によってすべての板を吸着・脱着に適した温度にすることが難しくなる。
一方、上記板の主面の表面積が135000cmを超えると、アミン化合物を均一に担持することが難しくなる。
【0019】
本発明の二酸化炭素回収装置は、上記ガスがコジェネレーション発電装置から排出されるガスであることが望ましい。
【0020】
本発明の二酸化炭素回収装置がコジェネレーション発電装置から排出されるガスに使用されると、排気を利用して熱媒体を加熱することができ、効率よく、低コストでアミン化合物から二酸化炭素を脱着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の二酸化炭素回収装置の一例を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1に示した二酸化炭素回収装置の断面模式図であり、板の積み重ね方向に対して直交する方向から見た図である。
図3図3は、図1に示した二酸化炭素回収装置を板の積み重ね方向に沿って見た模式図である。
図4図4は、本発明の二酸化炭素回収装置の他の例を模式的に示す断面図であり、板の積み重ね方向に対して直交する方向から見た図である。
図5図5は、本発明の二酸化炭素回収装置のさらに他の例を模式的に示す断面図であり、板の積み重ね方向に対して直交する方向から見た図である。
図6図6は、本発明の二酸化炭素回収装置を備えた二酸化炭素回収システムを模式的に示す説明図である。
【0022】
(発明の詳細な説明)
以下、本発明の二酸化炭素回収装置について説明する。
本発明の二酸化炭素回収装置は、ガスに含まれる二酸化炭素を吸脱着する二酸化炭素回収装置であって、アミン化合物が担持された板が複数枚、前記ガスが流通するガス流通路となる間隔をあけて積み重ねられた吸着板と、前記吸着板に対して積み重ね方向に貫通され、熱媒体が流通する熱媒体流通路となる複数の管と、を備えることを特徴とする。
【0023】
図1は、本発明の二酸化炭素回収装置の一例を模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示した二酸化炭素回収装置の断面模式図であり、板の積み重ね方向に対して直交する方向から見た図である。図3は、図1に示した二酸化炭素回収装置を板の積み重ね方向に沿って見た模式図である。
図1図3には、ガスに含まれる二酸化炭素を吸脱着する二酸化炭素回収装置100を示す。
【0024】
図1に示すように、二酸化炭素回収装置100は、略四角柱形状の構造体であり、吸着板10及び複数の管20を備えている。
二酸化炭素回収装置100の外形は、略四角柱形状であることが望ましいが、特に限定されるものではなく、使用状況に合わせて他の形状であってもよい。
二酸化炭素回収装置100は、吸着板10及び複数の管20を収容する、例えば直方体状の容器(図示せず)をさらに備えていてもよい。この場合、管20の両端部は容器を貫通して外部に突き出することが望ましく、また、容器の対向する一対の面には、二酸化炭素を含有するガスや二酸化炭素回収用ガスを導入・排出するための貫通孔を設けることが望ましい。
【0025】
吸着板10は、ガスに含まれる二酸化炭素を吸脱着する機能を主に担う部材であり、図1及び図2に示すように、アミン化合物が担持された板11が複数枚、ガスが流通するガス流通路12となる間隔をあけて積み重ねられている。
【0026】
板11は、吸着板10を構成する基礎となる部材(フィン、薄板)であり、隣り合う2枚の板11同士が接触しないように配置されている。そして、板11のガスと接触する部分、すなわち表面に、アミン化合物が担持されており、隣り合う板11の間に広がる隙間がガス流通路12となる。
板11を構成する材料は、特に限定されないが、耐蝕性及び熱伝導性に優れた材料が好ましく、例えば、チタン、アルミニウム等の金属や、ステンレス鋼等の合金、炭化珪素、窒化珪素等のセラミックスが挙げられる。
【0027】
具体的なアミン化合物としては、例えば、ポリエチレンイミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラエチレンアミンペンタミン、メチルジエタノールアミン、ジブチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサエチレンジアミン、ベンジルアミン、メタキシレンジアミン、ポリエチレンイミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、等が挙げられる。
【0028】
板11にアミン化合物を担持させる方法としては、例えば、
(1)アミン化合物とバインダ等を含有する水溶液やアルコール溶液を板11の表面に塗布した後、水やアルコールを除去する方法
(2)アミン化合物とバインダ等を含有する水溶液やアルコール溶液に板11を浸漬した後、水やアルコールを除去する方法
(3)アミン化合物を担持した担持体(例えばシリカ粒子)を、板11にコーティングする方法
(4)アミン化合物を含有する樹脂シートであるアミンシートを板11に貼付する方法
(5)板11に担持体(例えばシリカ粒子)を塗布し、その担持体にアミン化合物を担持する方法
等が挙げられる。このようにして、図2及び図3に示したように、板11の表面上にアミン化合物を含有するアミン含有層13が形成されてもよい。
【0029】
なお、図2ではアミン化合物(アミン含有層13)は、管20には担持されていないが、アミン化合物は、管20のガスと接触する部分、すなわち管20の外周面に担持されていてもよい。
管20にアミン化合物を担持させる方法としては、上記(1)~(5)に示した方法と同様の方法を用いてもよい。
【0030】
管20は、二酸化炭素の吸着及び脱着のそれぞれの過程において適した温度となるように、吸着板10(アミン化合物)の温度を制御するための部材であり、図1及び図2に示すように、吸着板10に対して積み重ね方向に貫通され、熱媒体が流通する熱媒体流通路となる。
管20(熱媒体流通路)を所定の温度の熱媒体が流通することによって、管20を介して板11に熱を与えるか、又は管20を介して板11から熱を奪う。
【0031】
管20は、例えば直線状であり、各々の板11と交差するように、例えば直交するように、設けられている。また、図3に示すように、複数の管20は、互いに接触しないように間隔をあけて、望ましくは略均等に、配置されている。
管20を構成する材料は、特に限定されないが、耐蝕性及び熱伝導性に優れた材料が好ましく、例えば、チタン、アルミニウム等の金属や、ステンレス鋼等の合金、炭化珪素、窒化珪素等のセラミックスが挙げられる。
【0032】
なお、板11を構成する材料と管20を構成する材料は、同じであってもよし、異なっていてもよい。
【0033】
管20は、積み重ねられた全ての板11を貫通しており、各々の板11との接触部分で接着又は接合されている。
管20を板11に接合させる方法としては、例えば、板11に管20よりも少し小さな貫通孔を設け、所定の間隔をあけて積み重ねられた板11に管20を圧入(加圧して挿入)してもよい。これにより、両者が反発し合うように圧力を生じ、両者が接合される。また、板11の貫通孔に管20を挿入した後、管20を拡管してもよい。
なお、隣り合う2枚の板11の間に柱状のスペーサを複数配置した状態で板11に管20を圧入してもよい。これらのスペーサは、その後取り除いてもいいし、板11の間にそのまま残存してもよい。
また、管20と板11とは、例えば、接着剤や溶接等の他の手段によって接着又は接合されてもよい。
【0034】
熱媒体は、吸着板10を加熱又は冷却するための流体である。
熱媒体は、特に限定されるものではなく、窒素、空気、水蒸気、水等が挙げられるが、加熱媒体としては水蒸気が望ましく、冷却媒体としては水が望ましい。安価であるためである。
【0035】
ここで、二酸化炭素回収装置100の動作原理、すなわち二酸化炭素回収装置100によってガスに含まれる二酸化炭素を吸脱着する方法について説明する。
【0036】
二酸化炭素の吸着時は、まず、通常では熱媒体として冷却媒体(好ましくは水)を管20(熱媒体流通路)に流通させて板11を冷却し、吸着板10(アミン化合物)の温度を二酸化炭素の吸着に適した温度(好ましくは10~50℃)となるように制御する。
このとき、冷却媒体は、管20(熱媒体流通路)を所定の一方向(例えば図1及び図2に示した黒矢印の方向)に流通される。
そして、二酸化炭素を含むガスを板11の間のガス流通路12に導入し、ガス中の二酸化炭素を吸着板10に担持されたアミン化合物に吸着・吸収させる。その結果、二酸化炭素が除去されたガスがガス流通路12から排出される。
ガスは、図1図3に示したように、板11の積み重ね方向に直交する所定の一方向(例えば図1図3に示した白抜き矢印の方向)に向かって、ガス流通路12に導入され、かつガス流通路12から排出されることが望ましい。
【0037】
二酸化炭素の脱着時は、まず、通常では熱媒体として加熱媒体(好ましくは水蒸気)を管20(熱媒体流通路)に流通させて板11を加熱し、吸着板10(アミン化合物)の温度を二酸化炭素の脱着に適した温度(好ましくは60~200℃)となるように制御する。
それにより、アミン化合物から二酸化炭素を脱着・放出させる。放出された二酸化炭素は、減圧して回収してよく、二酸化炭素回収用ガスを板11の間のガス流通路12に導入して回収してもよい。
二酸化炭素回収用ガスは、図1図3に示したように、板11の積み重ね方向に直交する所定の一方向(例えば図1図3に示した白抜き矢印の方向)に向かって、ガス流通路12に導入され、かつガス流通路12から排出されることが望ましい。
【0038】
なお、冷却媒体が管20内を流通する方向と、加熱媒体が管20内を流通する方向は、同じであってもよいし、反対であってもよい。
また、二酸化炭素を含むガスをガス流通路12に導入する方向と、二酸化炭素回収用ガスをガス流通路12に導入する方向は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。後者の場合、それらの方向は、例えば、反対を向いていたり、交差(例えば直交)していてもよい。
【0039】
二酸化炭素回収装置100によれば、アミン化合物が担持された板11が複数枚、ガスが流通するガス流通路12となる間隔をあけて積み重ねられた吸着板10と、吸着板10に対して積み重ね方向に貫通され、熱媒体が流通する熱媒体流通路となる複数の管20と、を備えることから、熱媒体が流通する管20と吸着板10全体との距離を近くできるため、熱媒体に対する吸着板10の温度追従性が高く、二酸化炭素回収装置100全体を二酸化炭素の吸着及び脱着のそれぞれの過程において適した温度にすることができる。そのため、吸着板10に担持したアミン化合物の二酸化炭素吸脱着能を充分に発揮することができる。
また、吸着板10の間に熱媒体層を挟む必要がないため、二酸化炭素回収装置100のサイズを小さくすることができる。
【0040】
さらに、二酸化炭素の吸脱着を行う吸着板10とは別に熱媒体が流通する管20を設けているので、熱媒体とアミン化合物とは直接接触しない。そのため、都度水を蒸発させる必要がなく、熱媒体として安価な水蒸気及び水を用いることができ、二酸化炭素を効率よく、低コストで吸脱着することができる。
【0041】
なお、二酸化炭素を含むガスの供給源は、特に限定されないが、コジェネレーション発電装置から排出されるガスであることが望ましい。
【0042】
図4は、本発明の二酸化炭素回収装置の他の例を模式的に示す断面図であり、板の積み重ね方向に対して直交する方向から見た図である。図5は、本発明の二酸化炭素回収装置のさらに他の例を模式的に示す断面図であり、板の積み重ね方向に対して直交する方向から見た図である。
【0043】
図1に示した二酸化炭素回収装置100では、板11は、図1及び図2に示したように平板であるが、板11は、図4に示すように波板であってもよいし、図5に示すように断面視ジグザグ状であってもよいし、いずれの場合も望ましい。
板11の断面形状は、これらに特に限定されず、その他の形状であってもよいが、すべての板11が同じ断面形状であることが望ましく、また、隣り合う2枚の板11は、ガス流通路12となる間隔が略一定となるように互いに平行に配置されることが望ましい。
【0044】
また、板11の平面形状も特に限定されないが、図1及び図3に示したように、矩形状であることが望ましい。
複数の板11の平面形状は、互いに異なっていてもよいが、図1及び図3に示したように実質的に同じものであることが望ましく、また、板11の積み重ね方向に沿って見たときにすべての板11が略完全に重なり合うことが望ましい。
【0045】
板11の枚数は、特に限定されないが、多量かつ効率的に二酸化炭素を吸脱着する観点からは、300~1800枚積み重ねられることが望ましく、500~1600枚積み重ねられることがより望ましく、700~1300枚積み重ねられることがさらに望ましい。
【0046】
管20の本数は、特に限定されないが、板11の全体を吸脱着に適した温度に制御する観点からは、管20は、板11の積み重ね方向に直交する平面10~100cmあたり1本設けられることが望ましく、上記平面11.1~50cmあたり1本設けられることがより望ましく、上記平面12.5~33.3cmあたり1本設けられることがさらに望ましい。
すなわち、管20は、上記平面100cmあたり1~10本設けられていることが望ましく、上記平面100cmあたり2~9本設けられていることがより望ましく、上記平面100cmあたり3~8本設けられていることがさらに望ましい。
【0047】
管20の断面積は、特に限定されないが、2~54cmであることが望ましく、2~38.5cmであることがより望ましく、2~28.2cmであることがさらに望ましい。
なお、管20の断面積とは、板11の積み重ね方向に直交する方向に管20を切断した時に当該外周によって確定される面積を示す。
【0048】
管20の厚み(肉厚)は、特に限定されないが、1.2~12.5mmであることが望ましく、1.3~7mmであることがより望ましく、1.4~4mmであることがさらに望ましい。
【0049】
図1に示した二酸化炭素回収装置100では、管20の断面形状は、図1及び図3に示したように円形であるが、特に限定されず、円形以外の断面形状としては、例えば、楕円、オーバルのような曲線を有する形状、矩形等の多角形等が挙げられる。
複数の管20の断面形状は、互いに異なっていてもよいが、図1及び図3に示したように実質的に同じものであることが望ましい。
【0050】
隣り合う2枚の板11の中心間距離は、特に限定されないが、充分な量のアミン化合物を担持する観点からは、1~6mmであることが望ましく、1~5mmであることがより望ましく、1~4mmであることがさらに望ましい。
なお、隣り合う2枚の板11の中心間距離は、図2図4及び図5に示したように、隣り合う2枚の板11の中心間の、板11の積み重ね方向における距離dを表す。
【0051】
板11の主面の表面積は、特に限定されないが、多量かつ効率的に二酸化炭素を吸脱着する観点からは、8000~135000cmであることが望ましく、10000~80000cmであることがより望ましく、15000~60000cmであることがさらに望ましい。
なお、「板の主面の表面積」とは、板のいずれか一方の主面の表面積であり、管が存在する領域の面積を含むものとする。
【0052】
板11の厚み(肉厚)は、特に限定されないが、0.2~2.1mmであることが望ましく、0.2~1.0mmであることがより望ましく、0.2~0.5mmであることがさらに望ましい。
【0053】
アミン化合物(例えばアミン含有層13)の厚みは、50~1000μmであることが望ましく75~850μmであることがより望ましく、100~680μmであることがさらに望ましい。アミン化合物の厚みを1000μm以下と薄くすることで、伝熱阻害を小さくすることができ、熱媒体に対する吸着板の温度追従性により効果的である。また、アミン化合物の厚みを50μm以上にすることで、二酸化炭素回収装置100の容積あたりのアミン化合物量を増加できる。
【0054】
以下、本発明の二酸化炭素回収装置を備えた二酸化炭素回収システムについて説明する。
図6は、本発明の二酸化炭素回収装置を備えた二酸化炭素回収システムを模式的に示す説明図である。
図6に示す二酸化炭素回収システム200は、第1の二酸化炭素回収装置211と第2の二酸化炭素回収装置212の2台の二酸化炭素回収装置を備えている。二酸化炭素回収システム200は、3台以上の二酸化炭素回収装置を備えていてもよいが、ここでは、2台の二酸化炭素回収装置を備えているシステムとして説明する。
また、図示していないが、この二酸化炭素回収システム200に備え付けられた第1の二酸化炭素回収装置211と第2の二酸化炭素回収装置212は、アミン化合物が担持された板が複数枚、ガスが流通するガス流通路となる間隔をあけて積み重ねられた吸着板と、吸着板に対して積み重ね方向に貫通され、熱媒体が流通する熱媒体流通路となる複数の管と、を備えている。
【0055】
発電機等から発生した二酸化炭素(CO)含有ガス210は、図示しない脱硝装置、集塵装置、脱硫装置、予備冷却器等を通過した後、第1の二酸化炭素回収装置211又は第2の二酸化炭素回収装置212のガス流通路に導入される。二酸化炭素(CO)含有ガス210が通過する配管は、切り替えバルブ240、241、250、251を備えており、切り替えバルブ240、241、250、251を切り替えることにより、二酸化炭素(CO)含有ガス210がいずれかの二酸化炭素回収装置に択一的に導入されるようになっている。二酸化炭素(CO)含有ガス210は、第1の二酸化炭素回収装置211又は第2の二酸化炭素回収装置212のガス流通路を出た後、煙突213を通過し、排気ガス214として排出される。
【0056】
一方、加熱媒体としての水蒸気を含む水蒸気ガス230が通過する配管は、切り替えバルブ244、245、247、248を備えており、水蒸気ガス230は、第1の二酸化炭素回収装置211又は第2の二酸化炭素回収装置212のいずれかの管に導入され、排気ガス232として排出されてもよく、循環されて使用されてもよい。
【0057】
加熱媒体としての水蒸気ガス230は、第1の二酸化炭素回収装置211及び第2の二酸化炭素回収装置のうち、二酸化炭素の脱着を行う二酸化炭素回収装置の管に流通させる。加熱媒体により二酸化炭素回収装置を加熱することによって吸着板の温度を高くして、アミン化合物に吸収させた二酸化炭素を放出させる。
【0058】
冷却媒体としての水を含む冷却水235が通過する配管は、切り替えバルブ252、253、247、248を備えており、冷却水235は、第1の二酸化炭素回収装置211又は第2の二酸化炭素回収装置212のいずれかの管に導入され、排水236として排出されてもよく、循環されて使用されてもよい。
【0059】
冷却媒体としての冷却水235は、第1の二酸化炭素回収装置211及び第2の二酸化炭素回収装置212のうち、二酸化炭素の吸着を行う二酸化炭素回収装置の管に流通させる。冷却媒体により二酸化炭素回収装置を冷却することによって吸着板の温度を低くすることにより、二酸化炭素の吸着時の発熱反応による吸着板の温度上昇を抑制して、アミン化合物の蒸発を防ぎ、二酸化炭素の吸収/放出量の減少を防止することができる。
【0060】
第1の二酸化炭素回収装置211又は第2の二酸化炭素回収装置212は、二酸化炭素(CO)回収用ガス220も導入されるようになっている。二酸化炭素(CO)回収用ガス220の配管は、切り替えバルブ246、249、242、243を備えており、第1の二酸化炭素回収装置211又は第2の二酸化炭素回収装置212のいずれかのアミン化合物から脱着・放出された二酸化炭素は、ポンプ221を経て、種々の方法により、二酸化炭素(CO)222として貯蔵される。
【0061】
二酸化炭素回収システム200を稼働させる際には、まず、二酸化炭素(CO)含有ガス210が第1の二酸化炭素回収装置211のガス流通路に導入され、二酸化炭素が吸着板に担持されたアミン化合物に吸着・吸収された後、煙突213を通過して排出される。第1の二酸化炭素回収装置211の吸着板が飽和状態となると、切り替えバルブ240、241、250、251が操作され、二酸化炭素(CO)含有ガス210は、第2の二酸化炭素回収装置212のガス流通路に導入され、同様に、二酸化炭素が吸着・吸収された後、煙突213を通過して排出される。
【0062】
二酸化炭素(CO)含有ガス210が第2の二酸化炭素回収装置212に導入されている間に、二酸化炭素を充分に吸着・吸収した第1の二酸化炭素回収装置211の管には、水蒸気ガス230が導入され、管により加熱された第1の二酸化炭素回収装置211の吸着板から、二酸化炭素が脱着・放出される。脱着・放出された二酸化炭素は、二酸化炭素回収用ガス220とともに、ポンプ221に導入され、ポンプ221を出た後、二酸化炭素(CO)222として貯蔵され、発電機等で発生した二酸化炭素が回収されることとなる。
【0063】
第1の二酸化炭素回収装置211において、上記の二酸化炭素の回収操作が行われている間に、第2の二酸化炭素回収装置212の管には、冷却水235が導入され、第2の二酸化炭素回収装置212の吸着板において、二酸化炭素が充分に吸着・吸収される。従って、切り替えバルブ240、241、250、251を操作することにより、二酸化炭素(CO)含有ガス210は、再び第1の二酸化炭素回収装置211に導入される。一方、第2の二酸化炭素回収装置212では、上記した第1の二酸化炭素回収装置211の場合と同様に、二酸化炭素の回収操作が行われる。
上記の二酸化炭素の吸着・吸収及び脱着・放出の操作を、第1の二酸化炭素回収装置211と第2の二酸化炭素回収装置212との間で交互に繰り返すことにより、二酸化炭素の回収を効率的に行うことができる。
【符号の説明】
【0064】
10 吸着板
11 板
12 ガス流通路
13 アミン含有層
20 管
100 二酸化炭素回収装置
200 二酸化炭素回収システム
210 二酸化炭素(CO)含有ガス
211 第1の二酸化炭素回収装置
212 第2の二酸化炭素回収装置
213 煙突
214、232 排気ガス
220 二酸化炭素(CO)回収用ガス
221 ポンプ
222 二酸化炭素(CO
230 水蒸気ガス
235 冷却水
236 排水
240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253 切り替えバルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6