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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013168
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20230119BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20230119BHJP
   B01D 53/81 20060101ALI20230119BHJP
   B01D 53/96 20060101ALI20230119BHJP
   B01J 20/22 20060101ALI20230119BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20230119BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20230119BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20230119BHJP
【FI】
B01D53/14 100
B01D53/62 ZAB
B01D53/81
B01D53/96
B01J20/22 A
B01J20/28 Z
B01J20/34 Z
C01B32/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021117150
(22)【出願日】2021-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】國枝 雅文
(72)【発明者】
【氏名】岡田 佳史
(72)【発明者】
【氏名】栗谷 祐矢
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4G066
4G146
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC01
4D002AC05
4D002AC10
4D002BA03
4D002BA12
4D002BA13
4D002CA13
4D002DA31
4D002DA32
4D002EA08
4D002GA01
4D002GB20
4D020AA03
4D020BA16
4D020BB01
4D020BC01
4D020CA02
4D020CC01
4D020CC05
4D020CC10
4G066AB05B
4G066AB13B
4G066BA02
4G066BA36
4G066CA35
4G066DA01
4G066GA01
4G146JA02
4G146JC21
4G146JC28
4G146JC29
4G146JC35
4G146JC37
(57)【要約】      (修正有)
【課題】装置全体を吸脱着に適した温度にすることができ、二酸化炭素を効率的に回収可能な二酸化炭素回収装置を提供する。
【解決手段】ガスに含まれる二酸化炭素を吸脱着する二酸化炭素回収装置100であって、二酸化炭素を吸脱着する吸着材が担持された板11を複数枚、上記ガスが流通するガス流通路12となる間隔をあけて積み重ねられた吸着板10と、上記吸着板10に対して積み重ね方向に貫通され、熱媒体が流通する熱媒体流通路となる複数の管20と、を備え、上記吸着材の厚みは、50~1000μmであり、上記間隔は、0.5~3.8mmであり、上記積み重ね方向に沿って見たときに、上記吸着板10の面積に対する上記管が占有する面積の割合は、10~50%であることを特徴とする二酸化炭素回収装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスに含まれる二酸化炭素を吸脱着する二酸化炭素回収装置であって、
二酸化炭素を吸脱着する吸着材が担持され、前記ガスが流通するガス流通路となる間隔をあけて、複数枚積み重ねられた吸着板と、
前記吸着板に対して積み重ね方向に貫通され、熱媒体が流通する熱媒体流通路となる複数の管と、
を備え、
前記吸着材の厚みは、50~1000μmであり、
前記間隔は、0.5~3.8mmであり、
前記積み重ね方向に沿って見たときに、前記吸着板の面積に対する前記管が占有する面積の割合は、10~50%であることを特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項2】
前記吸着材は、アミン化合物である請求項1に記載の二酸化炭素回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素(CO)の濃度が、大気温の上昇や、台風、洪水などの自然災害の機会が上昇する地球温暖化との強い相関性を示すことが広く知られている。発電所、石油精製所、セメント工場及び鉄鋼生産プロセスなどの産業では、各プラントから多量のCOを放出しており、このようなCOの放出量を如何にして低減させるかは、大きな問題となっている。
【0003】
上記の問題を解決する方法として、放出するCOを捕捉し、貯蔵することが、以前より研究、検討されている。上記の方法は、実質的にCO排出量を減少させることができる点で優れており、基本プロセスに大きな変更を行わない種々の方法が検討されている。
【0004】
特許文献1には、特定のガス成分を含む反応ガスを流通させる反応流路層と、反応流路層と熱交換を行うための媒体ガスを流通させる媒体流路層とが交互に積層された積層体を備えた熱交換型反応器が開示されている。この熱交換型反応器における反応ガスとしてCOが挙げられており、COを吸収・放出することが可能な反応材(CO吸収材)としては、LiSiO等が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-84500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の熱交換型反応器では、ハニカム構造の反応流通路と媒体流通路の積層であるため、反応流路層のうち媒体流通路から離れた場所にある流路では温度の上下の追従性が悪く、COの回収・放出のムラがある。また、それをなくすために、それぞれの反応流路層(ハニカム厚み)を薄く、積層数を多く設計すると、COを回収(吸着)できる体積の割に反応器が大きくなってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、装置全体を吸脱着に適した温度にすることができ、二酸化炭素を効率的に回収可能な二酸化炭素回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の二酸化炭素回収装置は、ガスに含まれる二酸化炭素を吸脱着する二酸化炭素回収装置であって、二酸化炭素を吸脱着する吸着材が担持され、上記ガスが流通するガス流通路となる間隔をあけて、複数枚積み重ねられた吸着板と、上記吸着板に対して積み重ね方向に貫通され、熱媒体が流通する熱媒体流通路となる複数の管と、を備え、上記吸着材の厚みは、50~1000μmであり、上記間隔は、0.5~3.8mmであり、上記積み重ね方向に沿って見たときに、上記吸着板の面積に対する上記管が占有する面積の割合は、10~50%であることを特徴とする。
【0009】
本発明の二酸化炭素回収装置によれば、二酸化炭素を吸脱着する吸着材が担持され上記ガスが流通するガス流通路となる間隔をあけて、複数枚積み重ねられた吸着板と、上記吸着板に対して積み重ね方向に貫通され、熱媒体が流通する熱媒体流通路となる複数の管と、を備えることから、熱媒体が流通する管と吸着板全体の距離を近くできる。
【0010】
また、本発明者らは、上記吸着板及び管を備える二酸化炭素回収装置において、熱源の伝熱面積を大きく、みなし伝熱距離を短く、かつ伝熱阻害を小さくすることが、熱媒体に対する吸着板の温度追従性に効果的であることを見出した。
一方で二酸化炭素の吸着量を大きくするためには、装置の容積あたりの吸着材量を大きくする必要があり、これらを両立させることで二酸化炭素をより効率的に回収できることを見出した。
そして、本発明の二酸化炭素回収装置において、上記積み重ね方向に沿って見たときに、上記吸着板の面積に対する上記管が占有する面積の割合(以下、「管の占有率」という場合がある)を10%以上と大きくすることで、伝熱面積を大きく、かつみなし伝熱距離を小さくすることができることを見出した。
また、上記吸着材の厚みを1000μm以下と薄くすることで、伝熱阻害を小さくすることができることを見出した。
さらに、上記吸着材の厚みを50μm以上にし、上記間隔を3.8mm以下にし、上記管の占有率を50%以下にすることで、装置の容積あたりの吸着材量を増加できることを見出した。
【0011】
以上より、本発明の二酸化炭素回収装置によれば、熱媒体による吸着板の温度追従性が高く、装置全体を二酸化炭素の吸着及び脱着のそれぞれの過程において適した温度にすることができる。そのため、吸着板に担持した吸着材の二酸化炭素吸脱着能を充分に発揮することができる。その結果、二酸化炭素を効率的に回収することができる。
また、吸着板の間に熱媒体層を挟む必要がないため、装置のサイズを小さくすることができる。
なお、本明細書において、吸脱着は、吸着、脱着のほか、吸収、放出も含んだ意味として用いることとする。また、吸着材は、二酸化炭素を吸着・吸収し、所定の温度で脱着・放出する物質を意味する。
また、熱媒体は、吸着板等の対象物を加熱又は冷却して目的の温度に制御するために熱を移動させる流体を意味し、対象物を加熱する加熱媒体(熱媒)と冷却する冷却媒体(冷媒)のいずれであってもよい。
【0012】
本発明の二酸化炭素回収装置において、上記吸着材の厚みが50μm未満であると、装置の容積あたりの吸着材量が少なくなり、二酸化炭素を効率的に回収することが難しくなる。
一方、上記吸着材の厚みが1000μmを超えると、伝熱阻害が大きくなり、吸着材の温度追従性が悪化し、二酸化炭素を効率的に回収することが難しくなる。
【0013】
本発明の二酸化炭素回収装置において、上記間隔が0.5mm未満であると、ガス流通路を確保することが難しくなる。
一方、上記間隔が3.8mmを超えると、装置の容積あたりの吸着材量が少なくなり、二酸化炭素を効率的に回収することが難しくなる。
【0014】
本発明の二酸化炭素回収装置において、上記管の占有率が10%未満であると、伝熱面積が小さくなり、かつみなし伝熱距離が大きくなり、吸着材の温度追従性が悪化し、二酸化炭素を効率的に回収することが難しくなる。
一方、上記管の占有率が50%を超えると、装置の容積あたりの吸着材量が少なくなり、二酸化炭素を効率的に回収することが難しくなる。
なお、本明細書において、吸着板の面積とは、管が占有する面積を含むものである。
【0015】
本発明の二酸化炭素回収装置では、上記吸着材は、アミン化合物であることが望ましい。
吸着材としてアミン化合物を使用すると、比較的低温の領域で二酸化炭素の吸脱着を行うことができるので、二酸化炭素の回収に必要な熱量を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の二酸化炭素回収装置の一例を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1に示した二酸化炭素回収装置の断面模式図であり、板の積み重ね方向に対して直交する方向から見た図である。
図3図3は、図1に示した二酸化炭素回収装置を板の積み重ね方向に沿って見た模式図である。
図4図4は、本発明の二酸化炭素回収装置の他の例を模式的に示す断面図であり、板の積み重ね方向に対して直交する方向から見た図である。
図5図5は、本発明の二酸化炭素回収装置のさらに他の例を模式的に示す断面図であり、板の積み重ね方向に対して直交する方向から見た図である。
図6図6は、本発明の二酸化炭素回収装置を備えた二酸化炭素回収システムを模式的に示す説明図である。
図7A図7Aは、実施例1の二酸化炭素回収装置の製造方法を説明する模式図であり、吸着材を担持体に担持させる工程を示す。
図7B図7Bは、実施例1の二酸化炭素回収装置の製造方法を説明する模式図であり、バインダを板に塗布する工程を示す。
図7C図7Cは、実施例1の二酸化炭素回収装置の製造方法を説明する模式図であり、板上に担持体を接着させる工程を示す。
図7D図7Dは、実施例1の二酸化炭素回収装置の製造方法を説明する模式図であり、吸着材が担持された板を示す。
図7E図7Eは、実施例1の二酸化炭素回収装置の製造方法を説明する模式図であり、吸着材が担持された吸着板を示す。
図8A図8Aは、実施例1の二酸化炭素回収装置の製造方法を説明する模式図であり、吸着材が担持された吸着板と管とを組み付ける工程の組付前の状態を示す。
図8B図8Bは、実施例1の二酸化炭素回収装置の製造方法を説明する模式図であり、吸着材が担持された吸着板と管とを組み付ける工程の組付後の状態を示す。
図9図9は、実施例1の二酸化炭素回収装置の製造方法を説明する模式図であり、組み付けられた吸着板と管を容器に収容する工程を示す。
図10図10は、二酸化炭素の脱吸着試験に用いた装置を模式的に示す図であり、二酸化炭素の吸着試験時の状態を示す。
図11図11は、二酸化炭素の脱吸着試験に用いた装置を模式的に示す図であり、二酸化炭素の脱着試験時の状態を示す。
【0017】
(発明の詳細な説明)
以下、本発明の二酸化炭素回収装置について説明する。
本発明の二酸化炭素回収装置は、ガスに含まれる二酸化炭素を吸脱着する二酸化炭素回収装置であって、二酸化炭素を吸脱着する吸着材が担持され、上記ガスが流通するガス流通路となる間隔をあけて、複数枚積み重ねられた吸着板と、上記吸着板に対して積み重ね方向に貫通され、熱媒体が流通する熱媒体流通路となる複数の管と、を備え、上記吸着材の厚みは、50~1000μmであり、上記間隔は、0.5~3.8mmであり、上記積み重ね方向に沿って見たときに、上記吸着板の面積に対する上記管が占有する面積の割合は、10~50%であることを特徴とする。
【0018】
なお、本明細書において、「A~B(A、Bは任意の数)」で表される数値範囲は、境界値であるA及びBを含む範囲を示す。すなわち、A以上、B以下を示す。
【0019】
図1は、本発明の二酸化炭素回収装置の一例を模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示した二酸化炭素回収装置の断面模式図であり、板の積み重ね方向に対して直交する方向から見た図である。図3は、図1に示した二酸化炭素回収装置を板の積み重ね方向に沿って見た模式図である。
図1図3には、ガスに含まれる二酸化炭素を吸脱着する二酸化炭素回収装置100を示す。
【0020】
図1に示すように、二酸化炭素回収装置100は、略四角柱形状の構造体であり、複数枚の吸着板10及び複数の管20を備えている。
二酸化炭素回収装置100の外形は、略四角柱形状であることが望ましいが、特に限定されるものではなく、使用状況に合わせて他の形状であってもよい。
二酸化炭素回収装置100は、複数枚の吸着板10及び複数の管20を収容する、例えば直方体状の容器(図示せず)をさらに備えていてもよい。この場合、管20の両端部は容器を貫通して外部に突き出することが望ましく、また、容器の対向する一対の面には、二酸化炭素を含有するガスや二酸化炭素回収用ガスを導入・排出するための貫通孔を設けることが望ましい。貫通孔が設けられた面は錐台状に外側の突出していてもよい。
【0021】
図1及び図2に示すように、板11に二酸化炭素を吸脱着する吸着材13が担持された吸着板10が複数枚、ガスが流通するガス流通路12となる間隔をあけて積み重ねられている。
【0022】
板11は、吸着板10を構成する基礎となる部材(フィン、薄板)であり、隣り合う2枚の板11同士が接触しないように配置されている。そして、板11のガスと接触する部分、すなわち表面に、吸着材13が担持されており、隣り合う板11の間に広がる隙間がガス流通路12となる。
板11を構成する材料は、特に限定されないが、耐蝕性及び熱伝導性に優れた材料が好ましく、例えば、チタン、アルミニウム等の金属や、ステンレス鋼等の合金、炭化珪素、窒化珪素等のセラミックスが挙げられる。
【0023】
板11に担持される吸着材13としては、アミン化合物が望ましく、具体的なアミン化合物としては、例えば、ポリエチレンイミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラエチレンアミンペンタミン、メチルジエタノールアミン、ジブチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサエチレンジアミン、ベンジルアミン、メタキシレンジアミン、ポリエチレンイミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、等が挙げられる。
【0024】
板11に吸着材を担持させる方法としては、例えば、
(1)吸着材とバインダ等を含有する水溶液やアルコール溶液を板11の表面に塗布した後、水やアルコールを除去する方法
(2)吸着材とバインダ等を含有する水溶液やアルコール溶液に板11を浸漬した後、水やアルコールを除去する方法
(3)吸着材(例えばアミン化合物)を担持した担持体(例えばシリカ粒子)を、板11にコーティングする方法
(4)吸着材を含有する樹脂シートである吸着材シート(例えばアミンシート)を板11に貼付する方法
(5)板11に担持体(例えばシリカ粒子)を塗布し、その担持体に吸着材(例えばアミン化合物)を担持する方法
等が挙げられる。
なお、バインダは予め板11の表面に塗布しておいてもよい。
このようにして、図2及び図3に示したように、板11の表面上に吸着材13が担持される。板11の表面上に吸着材13を含有する吸着材含有層が形成されてもよい。
吸着材含有層は、吸着材を担持した担持体の粒子から構成されていてもよい。
【0025】
なお、図2では吸着材13(吸着材含有層)は、管20には担持されていないが、吸着材13は、管20のガスと接触する部分、すなわち管20の外周面に担持されていてもよい。
管20に吸着材13を担持させる方法としては、上記(1)~(5)に示した方法と同様の方法を用いてもよい。
【0026】
管20は、二酸化炭素の吸着及び脱着のそれぞれの過程において適した温度となるように、吸着板10(吸着材13)の温度を制御するための部材であり、図1及び図2に示すように、吸着板10に対して積み重ね方向に貫通され、熱媒体が流通する熱媒体流通路となる。
管20(熱媒体流通路)を所定の温度の熱媒体が流通することによって、管20を介して板11に熱を与えるか、又は管20を介して板11から熱を奪う。
【0027】
管20は、例えば直線状であり、各々の板11と交差するように、例えば直交するように、設けられている。また、図3に示すように、複数の管20は、互いに接触しないように間隔をあけて、望ましくは略均等に、配置されている。
管20を構成する材料は、特に限定されないが、耐蝕性及び熱伝導性に優れた材料が好ましく、例えば、チタン、アルミニウム等の金属や、ステンレス鋼等の合金、炭化珪素、窒化珪素等のセラミックスが挙げられる。
【0028】
なお、板11を構成する材料と管20を構成する材料は、同じであってもよし、異なっていてもよい。
【0029】
管20は、積み重ねられた全ての板11を貫通しており、各々の板11との接触部分で接着又は接合されている。
管20を板11に接合させる方法としては、例えば、板11に管20よりも少し小さな貫通孔を設け、所定の間隔をあけて積み重ねられた板11に管20を圧入(加圧して挿入)してもよい。これにより、両者が反発し合うように圧力を生じ、両者が接合される。また、板11の貫通孔に管20を挿入した後、管20を拡管してもよい。
なお、隣り合う2枚の板11の間に柱状のスペーサを複数配置した状態で板11に管20を圧入してもよい。これらのスペーサは、その後取り除いてもいいし、板11の間にそのまま残存してもよい。
また、管20と板11とは、例えば、接着剤や溶接等の他の手段によって接着又は接合されてもよい。
【0030】
熱媒体は、吸着板10を加熱又は冷却するための流体である。
熱媒体は、特に限定されるものではなく、窒素、空気、水蒸気、水等が挙げられるが、加熱媒体としては水蒸気又は水が望ましく、冷却媒体としては水が望ましい。安価であるためである。
【0031】
二酸化炭素回収装置100において、吸着材13の厚みは、50~1000μmであり、ガス流通路12となる間隔は、0.5~3.8mmであり、板11の積み重ね方向に沿って見たときに、吸着板10の面積に対する管20が占有する面積の割合、すなわち管20の占有率は、10~50%である。
【0032】
吸着材13の厚みは、75~850μmであることが望ましく、100~680μmであることがより望ましい。
【0033】
ガス流通路12となる間隔は、0.6~3.1mmであることが望ましく、0.7~2.4mmであることがより望ましい。
なお、ガス流通路12となる間隔は、図2と、後で示す図4及び図5に示したように、隣り合う2枚の板11間の、板11の積み重ね方向における間隔Dを表す。
【0034】
管20の占有率は、10~45%であることが望ましく、10~40%であることがより望ましい。
管20の占有率における吸着板10の面積とは、上述のように、管20が占有する面積を含むものである。
【0035】
ここで、二酸化炭素回収装置100の動作原理、すなわち二酸化炭素回収装置100によってガスに含まれる二酸化炭素を吸脱着する方法について説明する。
【0036】
二酸化炭素の吸着時は、まず、通常では熱媒体として冷却媒体(好ましくは水)を管20(熱媒体流通路)に流通させて板11を冷却し、吸着板10(吸着材13)の温度を二酸化炭素の吸着に適した温度(好ましくは10~50℃)となるように制御する。
このとき、冷却媒体は、管20(熱媒体流通路)を所定の一方向(例えば図1及び図2に示した黒矢印の方向)に流通される。
そして、二酸化炭素を含むガスを板11の間のガス流通路12に導入し、ガス中の二酸化炭素を吸着板10に担持された吸着材13に吸着・吸収させる。その結果、二酸化炭素が除去されたガスがガス流通路12から排出される。
ガスは、図1図3に示したように、板11の積み重ね方向に直交する所定の一方向(例えば図1図3に示した白抜き矢印の方向)に向かって、ガス流通路12に導入され、かつガス流通路12から排出されることが望ましい。
【0037】
二酸化炭素の脱着時は、まず、通常では熱媒体として加熱媒体(好ましくは水蒸気又は水)を管20(熱媒体流通路)に流通させて板11を加熱し、吸着板10(吸着材13)の温度を二酸化炭素の脱着に適した温度(好ましくは60~200℃)となるように制御する。
それにより、吸着材13から二酸化炭素を脱着・放出させる。放出された二酸化炭素は、減圧して回収してよく、二酸化炭素回収用ガスを板11の間のガス流通路12に導入して回収してもよい。
二酸化炭素回収用ガスは、図1図3に示したように、板11の積み重ね方向に直交する所定の一方向(例えば図1図3に示した白抜き矢印の方向)に向かって、ガス流通路12に導入され、かつガス流通路12から排出されることが望ましい。
【0038】
なお、冷却媒体が管20内を流通する方向と、加熱媒体が管20内を流通する方向は、同じであってもよいし、反対であってもよい。
また、二酸化炭素を含むガスをガス流通路12に導入する方向と、二酸化炭素回収用ガスをガス流通路12に導入する方向は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。後者の場合、それらの方向は、例えば、反対を向いていたり、交差(例えば直交)していてもよい。
【0039】
二酸化炭素回収装置100によれば、二酸化炭素を吸脱着する吸着材13が担持され、ガスが流通するガス流通路12となる間隔をあけて、複数枚積み重ねられた吸着板10と、吸着板10に対して積み重ね方向に貫通され、熱媒体が流通する熱媒体流通路となる複数の管20と、を備えることから、熱媒体が流通する管20と吸着板10全体との距離を近くできる。
また、吸着材13の厚みは、50~1000μmであり、ガス流通路12となる間隔は、0.5~3.8mmであり、板11の積み重ね方向に沿って見たときに、吸着板10の面積に対する管20が占有する面積の割合、すなわち管20の占有率は、10~50%であるため、熱媒体に対する吸着板10の温度追従性が高く、二酸化炭素回収装置100全体を二酸化炭素の吸着及び脱着のそれぞれの過程において適した温度にすることができる。そのため、吸着板10に担持した吸着材13の二酸化炭素吸脱着能を充分に発揮することができる。その結果、二酸化炭素を効率的に回収することができる。
また、吸着板10の間に熱媒体層を挟む必要がないため、二酸化炭素回収装置100のサイズを小さくすることができる。
【0040】
さらに、二酸化炭素の脱吸着を行う吸着板10とは別に熱媒体が流通する管20を設けているので、熱媒体と吸着材13とは直接接触しない。そのため、都度水を蒸発させる必要がなく、熱媒体として安価な水蒸気及び水を用いることができ、二酸化炭素を効率よく、低コストで吸脱着することができる。
【0041】
なお、二酸化炭素を含むガスの供給源は、特に限定されないが、コジェネレーション発電装置から排出されるガスであることが望ましい。
【0042】
図4は、本発明の二酸化炭素回収装置の他の例を模式的に示す断面図であり、板の積み重ね方向に対して直交する方向から見た図である。図5は、本発明の二酸化炭素回収装置のさらに他の例を模式的に示す断面図であり、板の積み重ね方向に対して直交する方向から見た図である。
【0043】
図1に示した二酸化炭素回収装置100では、板11は、図1及び図2に示したように平板であるが、板11は、図4に示すように波板であってもよいし、図5に示すように断面視ジグザグ状であってもよいし、いずれの場合も望ましい。
板11の断面形状は、これらに特に限定されず、その他の形状であってもよいが、すべての板11が同じ断面形状であることが望ましく、また、隣り合う2枚の板11は、ガス流通路12となる間隔が略一定となるように互いに平行に配置されることが望ましい。
【0044】
また、板11の平面形状も特に限定されないが、図1及び図3に示したように、矩形状であることが望ましい。
複数の板11の平面形状は、互いに異なっていてもよいが、図1及び図3に示したように実質的に同じものであることが望ましく、また、板11の積み重ね方向に沿って見たときにすべての板11が略完全に重なり合うことが望ましい。
【0045】
板11の枚数は、特に限定されないが、より多量かつより効率的に二酸化炭素を吸脱着する観点からは、300~1800枚積み重ねられることが望ましく、500~1600枚積み重ねられることがより望ましく、700~1300枚積み重ねられることがさらに望ましい。
【0046】
管20の本数は、特に限定されないが、板11の全体を吸脱着により適した温度に制御する観点からは、管20は、板11の積み重ね方向に直交する平面10~100cmあたり1本設けられることが望ましく、上記平面11.1~50cmあたり1本設けられることがより望ましく、上記平面12.5~33.3cmあたり1本設けられることがさらに望ましい。
すなわち、管20は、上記平面100cmあたり1~10本設けられていることが望ましく、上記平面100cmあたり2~9本設けられていることがより望ましく、上記平面100cmあたり3~8本設けられていることがさらに望ましい。
【0047】
管20の断面積は、特に限定されないが、2~54cmであることが望ましく、2~38.5cmであることがより望ましく、2~28.2cmであることがさらに望ましい。
なお、管20の断面積とは、板11の積み重ね方向に直交する方向に管20を切断した時に当該外周によって確定される面積を示す。
【0048】
管20の厚み(肉厚)は、特に限定されないが、1.2~12.5mmであることが望ましく、1.3~7mmであることがより望ましく、1.4~4mmであることがさらに望ましい。
【0049】
図1に示した二酸化炭素回収装置100では、管20の断面形状は、図1及び図3に示したように円形であるが、特に限定されず、円形以外の断面形状としては、例えば、楕円、オーバルのような曲線を有する形状、矩形等の多角形等が挙げられる。
複数の管20の断面形状は、互いに異なっていてもよいが、図1及び図3に示したように実質的に同じものであることが望ましい。
【0050】
隣り合う2枚の板11の中心間距離は、特に限定されないが、充分な量のアミン化合物を担持する観点からは、1~6mmであることが望ましく、1~5mmであることがより望ましく、1~4mmであることがさらに望ましい。
なお、隣り合う2枚の板11の中心間距離は、図2図4及び図5に示したように、隣り合う2枚の板11の中心間の、板11の積み重ね方向における距離dを表す。
【0051】
板11の主面の表面積は、特に限定されないが、多量かつ効率的に二酸化炭素を吸脱着する観点からは、8000~135000cmであることが望ましく、10000~80000cmであることがより望ましく、15000~60000cmであることがさらに望ましい。
なお、「板の主面の表面積」とは、板のいずれか一方の主面の表面積であり、管が存在する領域の面積を含むものとする。
【0052】
板11の厚み(肉厚)は、特に限定されないが、0.2~2.1mmであることが望ましく、0.2~1.0mmであることがより望ましく、0.2~0.5mmであることがさらに望ましい。
【0053】
以下、本発明の二酸化炭素回収装置を備えた二酸化炭素回収システムについて説明する。
図6は、本発明の二酸化炭素回収装置を備えた二酸化炭素回収システムを模式的に示す説明図である。
図6に示す二酸化炭素回収システム200は、第1の二酸化炭素回収装置211と第2の二酸化炭素回収装置212の2台の二酸化炭素回収装置を備えている。二酸化炭素回収システム200は、3台以上の二酸化炭素回収装置を備えていてもよいが、ここでは、2台の二酸化炭素回収装置を備えているシステムとして説明する。
また、図示していないが、この二酸化炭素回収システム200に備え付けられた第1の二酸化炭素回収装置211と第2の二酸化炭素回収装置212は、二酸化炭素を吸脱着する吸着材が担持され、ガスが流通するガス流通路となる間隔をあけて、複数枚積み重ねられた吸着板と、吸着板に対して積み重ね方向に貫通され、熱媒体が流通する熱媒体流通路となる複数の管と、を備えている。
【0054】
発電機等から発生した二酸化炭素(CO)含有ガス210は、図示しない脱硝装置、集塵装置、脱硫装置、予備冷却器等を通過した後、第1の二酸化炭素回収装置211又は第2の二酸化炭素回収装置212のガス流通路に導入される。二酸化炭素(CO)含有ガス210が通過する配管は、切り替えバルブ240、241、250、251を備えており、切り替えバルブ240、241、250、251を切り替えることにより、二酸化炭素(CO)含有ガス210がいずれかの二酸化炭素回収装置に択一的に導入されるようになっている。二酸化炭素(CO)含有ガス210は、第1の二酸化炭素回収装置211又は第2の二酸化炭素回収装置212のガス流通路を出た後、煙突213を通過し、排気ガス214として排出される。
【0055】
一方、加熱媒体としての水蒸気を含む水蒸気ガス230が通過する配管は、切り替えバルブ244、245、247、248を備えており、水蒸気ガス230は、第1の二酸化炭素回収装置211又は第2の二酸化炭素回収装置212のいずれかの管に導入され、熱交換器231を経て、排気ガス232として排出されてもよく、循環されて使用されてもよい。
【0056】
加熱媒体としての水蒸気ガス230は、第1の二酸化炭素回収装置211及び第2の二酸化炭素回収装置212のうち、二酸化炭素の脱着を行う二酸化炭素回収装置の管に流通させる。加熱媒体により二酸化炭素回収装置を加熱することによって吸着板の温度を高くして、吸着材に吸収させた二酸化炭素を放出させる。
なお、加熱媒体としては水蒸気ガス230の代わりに温水を用いてもよく、排気ガス232の代わりに排水236を排出してもよい。
【0057】
冷却媒体としての水を含む冷却水235が通過する配管は、切り替えバルブ252、253、247、248を備えており、冷却水235は、第1の二酸化炭素回収装置211又は第2の二酸化炭素回収装置212のいずれかの管に導入され、排水236として排出されてもよく、循環されて使用されてもよい。
【0058】
冷却媒体としての冷却水235は、第1の二酸化炭素回収装置211及び第2の二酸化炭素回収装置212のうち、二酸化炭素の吸着を行う二酸化炭素回収装置の管に流通させる。冷却媒体により二酸化炭素回収装置を冷却することによって吸着板の温度を低くすることにより、二酸化炭素の吸着時の発熱反応による吸着板の温度上昇を抑制して、吸着材の蒸発を防ぎ、二酸化炭素の吸収/放出量の減少を防止することができる。
【0059】
第1の二酸化炭素回収装置211又は第2の二酸化炭素回収装置212は、二酸化炭素(CO)回収用ガス220も導入されるようになっている。二酸化炭素(CO)回収用ガス220の配管は、切り替えバルブ246、249、242、243を備えており、第1の二酸化炭素回収装置211又は第2の二酸化炭素回収装置212のいずれかの吸着材から脱着・放出された二酸化炭素は、ポンプ221を経て、種々の方法により、二酸化炭素(CO)222として貯蔵される。
【0060】
二酸化炭素回収システム200を稼働させる際には、まず、二酸化炭素(CO)含有ガス210が第1の二酸化炭素回収装置211のガス流通路に導入され、二酸化炭素が吸着板に担持された吸着材に吸着・吸収された後、煙突213を通過して排出される。第1の二酸化炭素回収装置211の吸着板が飽和状態となると、切り替えバルブ240、241、250、251が操作され、二酸化炭素(CO)含有ガス210は、第2の二酸化炭素回収装置212のガス流通路に導入され、同様に、二酸化炭素が吸着・吸収された後、煙突213を通過して排出される。
【0061】
二酸化炭素(CO)含有ガス210が第2の二酸化炭素回収装置212に導入されている間に、二酸化炭素を充分に吸着・吸収した第1の二酸化炭素回収装置211の管には、水蒸気ガス230が導入され、管により加熱された第1の二酸化炭素回収装置211の吸着板から、二酸化炭素が脱着・放出される。脱着・放出された二酸化炭素は、二酸化炭素回収用ガス220とともに、ポンプ221に導入され、ポンプ221を出た後、二酸化炭素(CO)222として貯蔵され、発電機等で発生した二酸化炭素が回収されることとなる。
【0062】
第1の二酸化炭素回収装置211において、上記の二酸化炭素の回収操作が行われている間に、第2の二酸化炭素回収装置212の管には、冷却水235が導入され、第2の二酸化炭素回収装置212の吸着板において、二酸化炭素が充分に吸着・吸収される。従って、切り替えバルブ240、241、250、251を操作することにより、二酸化炭素(CO)含有ガス210は、再び第1の二酸化炭素回収装置211に導入される。一方、第2の二酸化炭素回収装置212では、上記した第1の二酸化炭素回収装置211の場合と同様に、二酸化炭素の回収操作が行われる。
上記の二酸化炭素の吸着・吸収及び脱着・放出の操作を、第1の二酸化炭素回収装置211と第2の二酸化炭素回収装置212との間で交互に繰り返すことにより、二酸化炭素の回収を効率的に行うことができる。
【0063】
(実施例)
以下、本発明の実施形態をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0064】
(実施例1)
まず、図7A図7Dを用いて、板に吸着材を担持させる工程について説明する。
図7Aは、実施例1の二酸化炭素回収装置の製造方法を説明する模式図であり、吸着材を担持体に担持させる工程を示す。図7Bは、実施例1の二酸化炭素回収装置の製造方法を説明する模式図であり、バインダを板に塗布する工程を示す。図7Cは、実施例1の二酸化炭素回収装置の製造方法を説明する模式図であり、板上に担持体を接着させる工程を示す。図7Dは、実施例1の二酸化炭素回収装置の製造方法を説明する模式図であり、吸着材が担持された板を示す。図7Eは、実施例1の二酸化炭素回収装置の製造方法を説明する模式図であり、吸着材が担持された吸着板を示す。
【0065】
図7Aに示すように、吸着材としてのアミン化合物113を、担持体としてのシリカゲル粒子130に担持させた。より詳細には、アミン化合物113を含有する溶液にシリカゲル粒子(二次粒子)130を浸漬し、シリカゲル粒子130を構成する一次粒子130a間の隙間(細孔)に当該溶液を吸着させた。
【0066】
次に、図7Bに示すように、板111の一方の主面にバインダ131を塗布した。用いた板111は、管を挿入するための貫通孔が複数、ここでは9個設けられた、100mm×100mmの正方形状の平板であった。
【0067】
次に、図7Cに示すように、一方の主面にバインダ131が塗布された板111上にアミン化合物113を担持したシリカゲル粒子130を散布して、図7Dに示すような、一方の主面にアミン化合物113が担持された板111を作製した。
【0068】
そして、同様に、一方の主面にアミン化合物113が担持された板111の他方の主面にバインダ131を塗布した後、アミン化合物113を担持したシリカゲル粒子130を散布して、図7Eに示すように、両方の主面にアミン化合物113が担持された吸着板110を作製した。
【0069】
続いて、図8A及び図8Bを用いて、吸着材が担持された吸着板と管との組付工程について説明する。
図8Aは、実施例1の二酸化炭素回収装置の製造方法を説明する模式図であり、吸着材が担持された吸着板と管とを組み付ける工程における組付前の状態を示す。図8Bは、実施例1の二酸化炭素回収装置の製造方法を説明する模式図であり、吸着材が担持された吸着板と管とを組み付ける工程における組付後の状態を示す。
【0070】
図8Aに示すように、アミン化合物113が担持された吸着板110を複数枚、ここでは50枚と、管120を複数、ここでは9本、それぞれ準備した。用いた管120は、外径18mmの直線状の円管であった。
【0071】
そして、図8Bに示すように、隣り合う吸着板110の間に所定の間隔を空けた状態で重ねられた複数の吸着板110に管120をそれぞれ圧入し、吸着板110と管120とを組付けた。
【0072】
最後に、図9を用いて、組み付けられた吸着板と管を容器に収容する工程について説明する。
図9は、実施例1の二酸化炭素回収装置の製造方法を説明する模式図であり、組み付けられた吸着板と管を容器に収容する工程を示す。
【0073】
図9に示すように、一対の対向面が開放された箱141に、組み付けられた吸着板と管を収容した後、当該開口をそれぞれ、管120を挿入するための貫通孔143が設けられた蓋142で閉じて容器140を組み立て、実施例1の二酸化炭素回収装置(試験用装置)を完成した。
【0074】
なお、吸着板110の積み重ね方向に直交する方向において対向する箱141の一対の面には、二酸化炭素を含有するガスや二酸化炭素回収用ガス(二酸化炭素を含有しないガス)を導入・排出するための貫通孔144が設けられていた。
また、貫通孔144が設けられた面は錐台状に外側に突出していた。
【0075】
実施例1の二酸化炭素回収装置における、板111のサイズ、板111の枚数、管120の外径、及び、管120の本数を下記表1に示す。また、アミン化合物113は、ジエタノールアミン、板111、はステンレス鋼製の板を用いた。
【0076】
(実施例2~3及び比較例1~3)
下記表1に示すように、板111の枚数、及び、管120の本数を変更した他は、実施例1と同様に二酸化炭素回収装置を作製した。
実施例2~3及び比較例1~3の二酸化炭素回収装置における、板111のサイズ、板111の枚数、管120の外径、及び、管120の本数も下記表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
(二酸化炭素の脱吸着試験)
続いて、実施例1~3及び比較例1~3の二酸化炭素回収装置を用いた二酸化炭素の脱吸着試験について説明する。
【0079】
まず、図10及び図11を用いて、二酸化炭素の脱吸着試験に用いた装置について説明する。
図10は、二酸化炭素の脱吸着試験に用いた装置を模式的に示す図であり、二酸化炭素の吸着試験時の状態を示す。図11は、二酸化炭素の脱吸着試験に用いた装置を模式的に示す図であり、二酸化炭素の脱着試験時の状態を示す。
【0080】
図10及び図11に示すように、容器140の錐台状の面に設けられた貫通口(図9の144参照)に配管150及び151を接続し、配管151の他端にはガス分析計152を接続した。
【0081】
二酸化炭素の吸着試験では、管120に熱媒体(冷却媒体)として水(温度40℃)を流量=20L/minで導入しつつ、配管150を介して二酸化炭素回収装置に、二酸化炭素を含むガス(温度40℃、CO濃度7.4%)をSV(空間流速)=200/hrで導入し、配管151を介して排出されたガスをガス分析計152で分析し、3600秒間の二酸化炭素の吸着量を測定した。
【0082】
二酸化炭素の脱着試験では、管120に熱媒体(加熱媒体)として水(温度95℃)を流量=20L/minで導入しつつ、配管150を介して二酸化炭素回収装置に、二酸化炭素を含まないガス(温度40℃、CO濃度0%)をSV=200/hrで導入し、配管151を介して排出されたガスをガス分析計152で分析し、3600秒間の二酸化炭素の脱着量を測定した。
【0083】
試験結果を下記表2に示す。
なお、下記表2には、板111の枚数、吸着材(アミン化合物113)の厚み、ガス流通路112となる間隔、及び、管120の占有率についても示している。
【0084】
【表2】
【0085】
この結果、実施例1~3では、多量の二酸化炭素を吸脱着でき、二酸化炭素を効率的に回収できた。これは、実施例1~3では、二酸化炭素回収装置全体を吸脱着に適した温度にすることができたためと考えられる。
一方、比較例1~3では、二酸化炭素の脱着量が少なく、二酸化炭素を効率的に回収できなかった。
比較例1では、吸着材の厚みが厚いために伝熱阻害が大きく、CO脱着量が少なくなっていた。
比較例2では、管の占有率が低いために伝熱面積が小さく、かつみなし伝熱距離が大きく、CO脱着量が少なくなっていた。
比較例3では、ガス流通路となる間隔が広く、吸着材量が少ないため、CO脱着量が少なくなっていた。
【符号の説明】
【0086】
10、110 吸着板
11、111 板
12、112 ガス流通路
13 吸着材
20、120 管
100 二酸化炭素回収装置
113 アミン化合物
130 シリカゲル粒子
131 バインダ
140 容器
141 箱
142 蓋
143、144 貫通孔
150、151 配管
152 ガス分析計
200 二酸化炭素回収システム
210 二酸化炭素(CO)含有ガス
211 第1の二酸化炭素回収装置
212 第2の二酸化炭素回収装置
213 煙突
214、232 排気ガス
220 二酸化炭素(CO)回収用ガス
221 ポンプ
222 二酸化炭素(CO
230 水蒸気ガス
235 冷却水
236 排水
240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253 切り替えバルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8A
図8B
図9
図10
図11