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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131684
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】循環式穀物乾燥機
(51)【国際特許分類】
   F26B 17/14 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
F26B17/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036580
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】升尾 智裕
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA07
3L113AB04
3L113AC04
3L113AC40
3L113AC45
3L113AC46
3L113AC51
3L113AC58
3L113AC61
3L113AC63
3L113AC67
3L113BA03
3L113CA02
3L113CB03
3L113CB22
3L113CB28
3L113CB29
3L113CB34
3L113DA07
3L113DA24
(57)【要約】
【課題】貯留部内に張り込まれた穀物を適切に繰出バルブによって排出し、貯留部内の穀物の水分ムラを効果的に抑制することが可能な、循環式穀物乾燥機を提供すること。
【解決手段】貯留部3に貯留される穀物の各層の水分含有率のバラツキが所定の大きさを超える場合に、繰出バルブ9を正回転して開口91を一方の穀物流下路6Aの排出口61Aに対向させ、他方の穀物流下路6Bの排出口61Bに対向させることなく繰出バルブ9を逆回転させて、該繰出バルブ9の開口91から排出された穀物を揚穀機5によって貯留部3に搬送することを特徴とする。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥する穀物を貯留する貯留部と、
前記貯留部に張り込まれる穀物の張込量を測定する張込量測定手段と、
前記貯留部に貯留される穀物の水分含有率を測定する水分測定手段と、
前記貯留部の下方に穀物を流下させる一対の穀物流下路を備える乾燥部と、
前記一対の穀物流下路のそれぞれの排出口から排出された穀物が投入される開口を備えた繰出バルブと、
前記繰出バルブの前記開口から排出された穀物を前記貯留部に揚穀する揚穀手段と、
前記繰出バルブの動作態様を少なくとも制御することが可能な制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記貯留部に貯留される穀物の各層の水分含有率のバラツキが所定の大きさを超える場合に、前記繰出バルブを正回転して前記開口を一方の穀物流下路の排出口に対向させ、他方の穀物流下路の排出口に対向させることなく前記繰出バルブを逆回転させて、該繰出バルブの開口から排出された穀物を前記揚穀手段によって前記貯留部に搬送する
ことを特徴とする循環式穀物乾燥機。
【請求項2】
乾燥する穀物を貯留する貯留部と、
前記貯留部に張り込まれる穀物の張込量を測定する張込量測定手段と、
前記貯留部に貯留される穀物の水分含有率を測定する水分測定手段と、
前記貯留部の下方に穀物を流下させる一対の穀物流下路を備える乾燥部と、
前記一対の穀物流下路のそれぞれの排出口から排出された穀物が投入される開口を備えた繰出バルブと、
前記繰出バルブの前記開口から排出された穀物を前記貯留部に揚穀する揚穀手段と、
前記繰出バルブの動作態様を少なくとも制御することが可能な制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記貯留部に貯留される穀物の各層の水分含有率のバラツキが所定の大きさを超える場合に、前記繰出バルブを正回転して前記開口を一方の穀物流下路の排出口に対向させて穀物を充満させた後、該繰出バルブを正回転させて、該繰出バルブの開口から排出された穀物を前記揚穀手段によって前記貯留部に搬送する
ことを特徴とする循環式穀物乾燥機。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記繰出バルブを正回転及び/又は逆回転して前記一対の穀物流下路のそれぞれの排出口から該繰出バルブに穀物を充填し、該繰出バルブの開口から排出された穀物を前記揚穀手段によって前記貯留部に搬送する
請求項1又は2に記載の循環式穀物乾燥機。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記貯留部に貯留される穀物の各層の水分含有率のバラツキが所定の大きさを超えない場合、又は、前記貯留部に貯留される穀物の各層の水分含有率が所定の閾値未満である場合に、前記繰出バルブを正回転及び/又は逆回転して前記一対の穀物流下路のそれぞれの排出口から該繰出バルブに穀物を充填し、該繰出バルブの開口から排出された穀物を前記揚穀手段によって前記貯留部に搬送する
請求項1乃至3のいずれかに記載の循環式穀物乾燥機。
【請求項5】
前記貯留部は、該貯留部に張り込まれる穀物の満量を検出することが可能な満量検出センサを備え、
前記制御手段は、
前記満量検出センサが満量を検出した場合には、前記貯留部に貯留される穀物の各層の水分含有率に関わらず、前記繰出バルブを正回転及び/又は逆回転して前記一対の穀物流下路のそれぞれの排出口から該繰出バルブに穀物を充填し、該繰出バルブの開口から排出された穀物を前記揚穀手段によって前記貯留部に搬送する
請求項1乃至4のいずれかに記載の循環式穀物乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯留部内の穀物の水分ムラを抑制することが可能な、循環式穀物乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
循環式の穀物乾燥機では、穀物の張り込み時に水分含有率の高い穀物の層と水分含有率の低い穀物の層とが積層する穀層が形成される場合がある。これに対しては、水分含有率の高い層と水分含有率の低い層のそれぞれの穀物を撹拌・混合し、貯留部内に分散させることが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の発明では、乾燥部の下端に設けた一つの繰出バルブの回転を制御することで、穀物の撹拌・混合を行っている。具体的には、貯留部の下方に設けた乾燥部に左右一対の流下路を配置した循環式の穀物乾燥機において、各流下路の下方に配置した一つの繰出バルブ(回転シャッター3)を一方向にのみ連続で回転させ、流下路の一方を流下する穀物だけを排出させている。
【0004】
これにより、一方の流下路の上方に張り込まれている貯留部の穀物のみが、その下方の流下路に流下するので、形成された穀層に、地層に生じる断層と同じようなズレを生じさせることが可能となり、穀層を形成する穀物を上下方向に撹拌・混合することができる。
【0005】
特許文献1に記載の繰出バルブ(回転シャッター3)には、穀物を繰出バルブ内に流入させる開口が設けられており、当該開口と先に対向した一方の流下路の排出口から繰出バルブ内に穀物が流入して満杯となる。したがって、次に対向する他方の流下路の排出口から繰出バルブ内に穀物が流入することはない。このため、繰出バルブを一方向にのみ連続で回転させることで、一方の流下路を流下する穀物だけを排出することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09-324984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、貯留されている穀物の水分含有率が高い場合、その穀物は安息角が大きいため、流下路の排出口から繰出バルブ内へスムーズに流入せず、当該繰出バルブ内に穀物が満杯に充填されないおそれがある。そうなると、繰出バルブが回転して当該繰出バルブの開口が他方の流下路の排出口に対向した際に、他方の流下路の穀物も繰出バルブ内に流入することになる。したがって、繰出バルブを一方向に連続で回転させても、一方の流下路の穀物のみを排出することが困難となり、前述したような、穀層にズレを効率的に生じさせることができないおそれがある。
【0008】
そこで本発明は上記問題点に鑑み、貯留部内に張り込まれた穀物を適切に繰出バルブによって排出し、貯留部内の穀物の水分ムラを効果的に抑制することが可能な、循環式穀物乾燥機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)に係る発明は、乾燥する穀物を貯留する貯留部と、前記貯留部に張り込まれる穀物の張込量を測定する張込量測定手段と、前記貯留部に貯留される穀物の水分含有率を測定する水分測定手段と、前記貯留部の下方に穀物を流下させる一対の穀物流下路を備える乾燥部と、前記一対の穀物流下路のそれぞれの排出口から排出された穀物が投入される開口を備えた繰出バルブと、前記繰出バルブの前記開口から排出された穀物を前記貯留部に揚穀する揚穀手段と、前記繰出バルブの動作態様を少なくとも制御することが可能な制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記貯留部に貯留される穀物の各層の水分含有率のバラツキが所定の大きさを超える場合に、前記繰出バルブを正回転して前記開口を一方の穀物流下路の排出口に対向させ、他方の穀物流下路の排出口に対向させることなく前記繰出バルブを逆回転させて、該繰出バルブの開口から排出された穀物を前記揚穀手段によって前記貯留部に搬送することを特徴とする循環式穀物乾燥機である。
【0010】
(2)に係る発明は、乾燥する穀物を貯留する貯留部と、前記貯留部に張り込まれる穀物の張込量を測定する張込量測定手段と、前記貯留部に貯留される穀物の水分含有率を測定する水分測定手段と、前記貯留部の下方に穀物を流下させる一対の穀物流下路を備える乾燥部と、前記一対の穀物流下路のそれぞれの排出口から排出された穀物が投入される開口を備えた繰出バルブと、前記繰出バルブの前記開口から排出された穀物を前記貯留部に揚穀する揚穀手段と、前記繰出バルブの動作態様を少なくとも制御することが可能な制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記貯留部に貯留される穀物の各層の水分含有率のバラツキが所定の大きさを超える場合に、前記繰出バルブを正回転して前記開口を一方の穀物流下路の排出口に対向させて穀物を充満させた後、該繰出バルブを正回転させて、該繰出バルブの開口から排出された穀物を前記揚穀手段によって前記貯留部に搬送することを特徴とする循環式穀物乾燥機である。
【0011】
(3)に係る発明は、前記制御手段は、前記繰出バルブを正回転及び/又は逆回転して前記一対の穀物流下路のそれぞれの排出口から該繰出バルブに穀物を充填し、該繰出バルブの開口から排出された穀物を前記揚穀手段によって前記貯留部に搬送する上記(1)又は(2)に記載の循環式穀物乾燥機である。
【0012】
(4)に係る発明は、前記制御手段は、前記貯留部に貯留される穀物の各層の水分含有率のバラツキが所定の大きさを超えない場合、又は、前記貯留部に貯留される穀物の各層の水分含有率が所定の閾値未満である場合に、前記繰出バルブを正回転及び/又は逆回転して前記一対の穀物流下路のそれぞれの排出口から該繰出バルブに穀物を充填し、該繰出バルブの開口から排出された穀物を前記揚穀手段によって前記貯留部に搬送する上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の循環式穀物乾燥機である。
【0013】
(5)に係る発明は、前記貯留部は、該記貯留部に張り込まれる穀物の満量を検出することが可能な満量検出センサを備え、前記制御手段は、前記満量検出センサが満量を検出した場合には、前記貯留部に貯留される穀物の各層の水分含有率に関わらず、前記繰出バルブを正回転及び/又は逆回転して前記一対の穀物流下路のそれぞれの排出口から該繰出バルブに穀物を充填し、該繰出バルブの開口から排出された穀物を前記揚穀手段によって前記貯留部に搬送する上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の循環式穀物乾燥機である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の循環式穀物乾燥機によれば、貯留部内の穀物の水分ムラを効果的に解消して、穀物の乾燥効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態における循環式穀物乾燥機の断面図である。
図2】本発明の実施形態における循環式穀物乾燥機の側断面図である。
図3】本発明の実施形態における繰出バルブの斜視図である。
図4】循環式穀物乾燥機における穀物の貯留態様を説明する上面図である。
図5】本発明の実施形態における循環式穀物乾燥機の制御フローである。
図6】本発明の実施形態における循環式穀物乾燥機の制御フローである。
図7】本発明の実施形態におけるまぜあわせ動作の実施例1を説明する図である。
図8】本発明の実施形態におけるまぜあわせ動作の実施例2を説明する図である。
図9】本発明の実施形態におけるまぜあわせ動作の実施例3を説明する図である。
図10】本発明の実施形態における通常バルブ周期動作を説明する図である。
図11】通常バルブ周期動作におけるシミュレーション画像である。
図12】まぜあわせ動作におけるシミュレーション画像である。
図13】まぜあわせ動作におけるシミュレーション画像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の循環式穀物乾燥機について、その一実施形態について図面を用いて説明する。
【0017】
(循環式穀物乾燥機の構成)
図1には、本実施形態における循環式穀物乾燥機1の断面図が、図2には循環式穀物乾燥機1の側断面図が図示されている。図示されるように、循環式穀物乾燥機1は、箱状に形成した乾燥機本体2の上部に、乾燥対象となる穀物を張り込む貯留部3が形成されている。そして当該貯留部3の下部には、張り込んだ穀物を乾燥させる乾燥部4が形成されている。
【0018】
乾燥部4の下部と貯留部3の上部との間には、乾燥部4で乾燥した穀物を貯留部3に還流するための揚穀機5が設けられている。また乾燥部4の内部には、貯留部3から穀物を流下させる通気性を有した一対の穀物流下路6A、6Bが形成されている。さらに、当該穀物流下路6A、6Bを流下する穀物に、乾燥風を送給するための送風路7と、乾燥後の排風を排出する排風路8とが並設されている。
【0019】
上記した一対の穀物流下路6A、6Bの排出口61A、61Bの先には、一定量の穀物を回転しながら下方へ送り出す繰出バルブ9が設けられている。当該繰出バルブ9の下方には、繰出バルブ9の開口91から排出された穀物を集穀するための漏斗状の集穀樋10が設けられ、その中央部には、穀物を機外に排出するための下部スクリューコンベア11が設けられている。下部スクリューコンベア11の搬送方向終端部は、図2に示されるように連絡樋を介して揚穀機5の底部に接続されている。
【0020】
乾燥機本体2の上部には、上スクリューコンベヤ13が設けられており、揚穀機5の上端に連通されている。そして、当該揚穀機5の上端まで搬送された穀物が上スクリュー131によって搬送され、回転する飛散盤14の遠心力によって貯留部3内に均等に放散分配される。なお、図1図2図4に示されるように、貯留部3の上方角部には満量センサ15が設置されており、貯留部3内における穀物の張込み量や貯留状況を監視して、貯留部3内における穀物の満量を検出することが可能となっている。
【0021】
図3には実施形態における繰出バルブ9の斜視図が示されている。繰出バルブ9は、全体が長尺状に形成されており、図2等に示されるように、乾燥機本体2の前後方向において架橋されるように回転可能に横設されている。また、中空状のバルブ筒90には、軸方向(水平方向)と平行にスリット状の開口91が複数個設けられている。そして、回転軸92を中心に繰出バルブ9が回転し、開口91が穀物流下路6A、6Bの排出口61A、61Bに対向すると、当該穀物流下路6A、6Bの穀物が開口91に流れ込む。その後、繰出バルブ9が回転して開口91が下方に向くと、繰出バルブ9内に充填された穀物が、下部スクリューコンベア11へと排出される。
【0022】
(繰出バルブの制御)
次に、本実施形態における繰出バルブ9の制御構成について説明する。循環式穀物乾燥機1では、通常の動作態様として「通常バルブ周期動作」が実行される。「通常バルブ周期動作」は、図10の(f)~(k)に示されるようにして、繰出バルブ9が動作する。すなわち、図10(f)に示されるように、繰出バルブ9が正回転し、繰出バルブ9の開口91が一方の穀物流下路6Aの排出口61Aに対向すると、穀物流下路6Aの穀物が開口91から取り込まれる。その後、そのまま正回転して、図10(g)に示されるように、繰出バルブ9の開口91が他方の穀物流下路6Bの排出口61Bに対向すると、穀物流下路6Bの穀物が開口91から取り込まれる。その後、図10(h)に示されるように、繰出バルブ9は360°回転して開口91が下方を向くと、所定の時間、回転が一旦停止し、繰出バルブ9に取り込まれた穀物は、下部スクリューコンベア11へ排出されて繰出バルブ9は空となる。
【0023】
続いて、図10(i)に示されるように、繰出バルブ9が逆回転し、繰出バルブ9の開口91が一方の穀物流下路6Bの排出口61Bに対向すると、穀物流下路6Bの穀物が開口91から取り込まれる。その後、そのまま逆回転して、図10(j)に示されるように、繰出バルブ9の開口91が他方の穀物流下路6Aの排出口61Aに対向すると、穀物流下路6Aの穀物が開口91から取り込まれる。その後、図10(k)に示されるように、繰出バルブ9は360°回転して開口91が下方を向くと、所定の時間、回転が一旦停止し、繰出バルブ9に取り込まれた穀物は、下部スクリューコンベア11へ排出されて繰出バルブ9は空となる。
【0024】
以上が、「通常バルブ周期動作」における繰出バルブ9の動作態様である。ところで、前述した従来技術で説明したように、循環式穀物乾燥機1の貯留部3内では、穀物の収穫場所や天候などの種々の要因によって、水分含有率の高い穀物の層と水分含有率の低い穀物の層とが積層する穀層が形成される場合がある。一例として、図11(a)には、貯留部3内に、水分含有率の異なる「A」、「B」、「C」の穀層が形成された循環式穀物乾燥機1のシミュレーション画像が示されている。
【0025】
ここで、上記した「通常バルブ周期動作」を実行すると、図11の(b)、(c)のシミュレーション画像に示されるように、繰出バルブ9は左右一対の穀物流下路6A、6Bから略均等に穀物を取り込んで、貯留部3との間で穀物を循環させることができる。当然ながら、「通常バルブ周期動作」を実行しても、貯留部3内に形成された「A」、「B」、「C」の穀層は殆ど混ざることはなく、穀層が維持されることとなる。
【0026】
(まぜあわせ動作)
本実施形態の循環式穀物乾燥機1は、前述した「通常バルブ周期動作」に加えて、「まぜあわせ動作」を実行することが可能となっている。図7には、「まぜあわせ動作」の実施形態の一例として、まぜあわせ動作(実施例1)における、繰出バルブ9の動作態様が図示されている。
【0027】
図7(a)には「まぜあわせ動作」の動作開始状態が示され、このとき、繰出バルブ9の開口91が空の状態で下方を向いている。次に、図7(b)に示されるように繰出バルブ9が正回転し、繰出バルブ9の開口91が一方の穀物流下路6Aの排出口61Aに対向すると、穀物流下路6Aの穀物が開口91から取り込まれる。その後、そのまま正半回転して、図7(c)に示されるように繰出バルブ9の開口91が上方を向いて一旦停止する。次に、図7(d)に示されるように繰出バルブ9が逆回転し、繰出バルブ9の開口91が再び穀物流下路6Aの排出口61Aに対向すると、穀物流下路6Aの穀物が開口91からさらに追加して取り込まれて、穀物が充満される。その後、そのまま逆半回転して、図7(e)に示されるように繰出バルブ9の開口91が下方を向き、所定の時間、回転が一旦停止して、繰出バルブ9に取り込まれた穀物は、下部スクリューコンベア11へ排出されて繰出バルブ9は空となる。
【0028】
上記のような「まぜあわせ動作」によれば、一方の穀物流下路6Aのみから穀物を繰出バルブ9へ取り込んで排出することが可能となり、貯留部3内に形成された穀層を崩して穀物を混ぜることが可能となる。
【0029】
また、必ずしも図7に示した「まぜあわせ動作(実施例1)」に、「まぜあわせ動作」は限定されるものではなく、図8には、「まぜあわせ動作」の別実施形態として、「まぜあわせ動作(実施例2)」における、繰出バルブ9の動作態様が図示されている。
【0030】
図8(a)には「まぜあわせ動作」の動作開始状態が示され、このとき、繰出バルブ9の開口91が空の状態で下方を向いている。次に、図8(b)に示されるように繰出バルブ9が正回転し、繰出バルブ9の開口91が一方の穀物流下路6Aの排出口61Aに対向すると、穀物流下路6Aの穀物が開口91から取り込まれる。このとき、図8(c)に示されるように、所定の時間、回転を一旦停止して繰出バルブ9内に穀物を充満させる。その後、図8(d)に示されるように、繰出バルブ9が逆回転し、図8(e)に示されるように繰出バルブ9の開口91が下方を向き、所定の時間、回転が一旦停止して、繰出バルブ9に取り込まれた穀物は、下部スクリューコンベア11へ排出されて繰出バルブ9は空となる。
【0031】
さらに、図9には、「まぜあわせ動作」の別実施形態として、「まぜあわせ動作(実施例3)」における、繰出バルブ9の動作態様が図示されている。
【0032】
図9(a)には「まぜあわせ動作」の動作開始状態が示され、このとき、繰出バルブ9の開口91が空の状態で下方を向いている。次に、図9(b)に示されるように繰出バルブ9が正回転し、繰出バルブ9の開口91が一方の穀物流下路6Aの排出口61Aに対向すると、穀物流下路6Aの穀物が開口91から取り込まれる。このとき、図9(c)に示されるように、所定の時間、回転を一旦停止して繰出バルブ9内に穀物を充満させる。その後、図9(d)に示されるように繰出バルブ9が正回転する。正回転を続けると、繰出バルブ9の開口91が他方の穀物流下路6Bの排出口61Bに対向するタイミングがあるが、既に繰出バルブ9内には穀物流下路6Aから取り込んだ穀物が充満しているので、穀物流下路6Bから繰出バルブ9内に取り込まれる穀物の量はごく僅かとなる。続いて、図9(e)に示されるように繰出バルブ9の開口91が下方を向き、所定の時間、回転が一旦停止して、繰出バルブ9に取り込まれた穀物は、下部スクリューコンベア11へ排出されて繰出バルブ9は空となる。
【0033】
以上、図7~9に例示した「まぜあわせ動作」と、図10に示された「通常バルブ周期動作」を交互に繰り返すことによって、穀物の左層を下げつつ、左右層を同時に下げて、貯留部3の穀物全体を乾燥させることが可能となる。もちろん、「まぜあわせ動作」と「通常バルブ周期動作」の実行回数は適宜設定することが可能である。例えば、「まぜあわせ動作」を複数回繰り返した後に「通常バルブ周期動作」を実行し、これを繰り返すことでまぜあわせ時間を短縮することが出来る。また、「まぜあわせ動作」を実行した後に「通常バルブ周期動作」を複数回繰り返して実行し、これを繰り返すことで、貯留部3内における穀物上面の起伏を緩やかに変化させることが出来る。
【0034】
(制御フロー)
次に、本実施形態の循環式穀物乾燥機1における制御フローの一例について、図5及び図6のフロー図に基づいて説明する。なお、本実施形態における循環式穀物乾燥機1は不図示の制御手段を備えており、当該制御手段によって以下に示す制御が実行される。
【0035】
循環式穀物乾燥機1による乾燥開始に先立って、前述した「まぜあわせ動作」を実行するか否かの設定操作を行う(ステップS100)。「まぜあわせ動作」を実行しない設定をすると、前述した「通常バルブ周期動作」によって繰出バルブ9が動作することとなる。
【0036】
一方、「まぜあわせ動作」を実行する設定がされると、貯留部3の満量センサ15による検出信号の有無が判断される(ステップS101)。満量センサ15の検出信号があった場合は、「通常バルブ周期動作」が実行され、満量センサ15の検出信号が無い場合は、貯留部3における穀物の張込量の最終判定が行われた否かが判断される(ステップS102)。
【0037】
上記ステップS102において、張込量の最終判定が未判定である場合は、「通常バルブ周期動作」が実行され、判定済みである場合は、その張込量が判断される(ステップS103)。ステップS103において、張込量が1.5以下であると判断された場合は、穀物の張込量が少なく、送風路7の有孔部が吹き抜け、乾燥低下につながることを防止するため、「通常バルブ周期動作」が実行される。なお、穀物の張込量が少ない場合、「まぜあわせ動作」を実行するまでもなく、貯留部3内の穀物が自然にかき混ぜられるので、「通常バルブ周期動作」の実行で十分である。因みに、上記張込量の「1.5以下」とは、本実施形態では循環式穀物乾燥機1に設けられた観察窓において視認される張込量の指標であるが、他の方法で張込量の下限値を設定してもよい。もちろん、張込量の最終判定は、観察窓を視認して手動設定した値を用いてもよい。
【0038】
一方、ステップS103において、張込量が1.5を超える場合は、貯留部3内の穀物の平均水分含有率が判断される(ステップS104)。すなわち、乾燥仕上げ時の目標水分含有率15%に対して、現在貯留している穀物の水分含有率が、+2.0%以上であるのか、+2.0%未満であるのかが判断される。仕上水分含有率(15%)+2.0%未満の場合は、「まぜあわせ動作」を実行することなく「通常バルブ周期動作」が実行される。これは、「まぜあわせ動作」を実行することにより、一方の穀物流下路6A又は6Bの穀物の流れが遅くなり、過乾燥による被害が増加することを防ぐためである。もちろん、バーナーの燃焼を抑制したり、送風機の回転数を上昇させるなどの対策を行った上で、「まぜあわせ動作」を実行することも可能である。
【0039】
一方、ステップS104で、仕上水分含有率(15%)+2.0%以上であると判断された場合は、貯留部3内の穀物の水分量のバラツキが判断される(ステップS105)。本実施形態では、サンプリングした穀物を水分計によって水分含有率を計測し、分散分析によってバラツキを判断している。そして、水分含有率のバラツキを「大」(19≦分散)「中」(3≦分散≦19)「小」(0≦分散<3)の3段階で評価し、バラツキが小さい「小」の場合には、そもそも、まぜあわせる必要性がないため、「まぜあわせ動作」を実行することなく「通常バルブ周期動作」が実行される。一方、バラツキが「大」又は「中」となった場合は、「まぜあわせ動作」を実行することとなる(ステップS106)。
【0040】
なお、図6のステップS106の次工程には、本実施形態における「まぜあわせ動作」による運転制御構成の一例が示されている。すなわち、図3に示されるような、開口91の開口方向が前後で180°逆になった繰出バルブ9を使用して「まぜあわせ動作」を実行すると、図4に示されるように、穀物の上面に高低差を有する起伏が生じる。そして、貯留部3から穀物が溢れることがないように適切に「まぜあわせ動作」を実行するには、満量センサ15の設置位置に穀物が高く積層されるようにする必要がある。このため、「乾燥機正面から見て右側手前に満量センサ15がある場合」には、穀物流下路6Aを流下する穀物のみを排出するべく制御 (正半回転[3sec]+Wait[1sec]+逆半回転[3sec])し、「乾燥機正面から見て左側手前に満量センサ15がある場合」には、穀物流下路6Bを流下する穀物のみを排出するべく制御 (逆半回転[3sec]+Wait[1sec]+正半回転[3sec])する。つまり、満量センサ15の設置位置が貯留部3内上部の前後左右のどこに設置されても、「まぜあわせ動作」において一方の穀物排出量を増やす側の流下路6A、6Bを選択することで、満量センサ15の設置位置における穀物上面を高くすることが可能である。
【0041】
続いて、ステップS107では「まぜあわせ動作」の実行時間がカウントされ、ステップS108では、貯留部3の満量センサ15の検出有無が判断される。ステップS108において満量センサ15の検出信号が30sec継続して検知された場合は、図4に示されるように、「まぜあわせ動作」が継続して行われたことで、穀物の上面に高低差が生じ、起伏が大きくなっていることが想定される。これを解消するために、ステップS111では「まぜあわせ動作」の実行時間のカウントを停止するとともに、「通常バルブ周期動作」を実行する。その後、満量センサ15の検出信号が30sec継続して検知されなくなった場合は、「まぜあわせ動作」の実行を再開する(ステップS112)。
【0042】
ステップS108において満量センサ15の検出信号の入力が無ければ、貯留部3内の穀物の平均水分含有率が判断される(ステップS109)。すなわち、乾燥仕上げ時の目標水分量15%に対して、現在貯留している穀物の水分量が、仕上水分含有率(15%)+2.0%以上であるのか、仕上水分含有率(15%)+2.0%未満であるのかが判断される。仕上水分含有率(15%)+2.0%未満の場合は、「まぜあわせ動作」を終了して「通常バルブ周期動作」が実行される。一方、ステップS109で仕上水分含有率(15%)+2.0%以上であると判断された場合は、ステップS110で「まぜあわせ動作」の総時間が判断され、60min未満であれば「まぜあわせ動作」を継続し、60minを経過していれば「まぜあわせ動作」の実行を終了するとともに「通常バルブ周期動作」を実行する。なお、「まぜあわせ動作」の実施時間は、循環式穀物乾燥機1内に張り込まれた穀物を、当該循環式穀物乾燥機1内で一循環させる時間が目安となる。ただし、乾燥条件により上記時間は適宜設定すればよい。
【0043】
以上のような制御フローにより、「まぜあわせ動作」を効率的に実行することが可能となり、貯留部3内の穀物の水分ムラを効果的に解消して、穀物の乾燥効率を向上させることが可能となる。
【0044】
なお、図12及び図13には、「A」、「B」、「C」3層の穀層を形成する貯留部3内の穀物を、「まぜあわせ動作」によって1循環させた場合のシミュレーション画像が段階的に示されている。図12(c)に示されるように、1/2循環した段階で、A層の穀物とB層の穀物が混ぜ合わさって貯留部3に戻され、図13(e)に示されるように、1循環した段階で、すべての層を混ぜ合わせることが可能な状態になり、この後「通常バルブ周期動作」に移行することで、すべての層の穀物を混ぜ合わせて貯留部3に戻すことが可能となる。
【0045】
(他の実施形態)
以上、本発明の循環式穀物乾燥機の一実施形態について説明したが、必ずしもこのような実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0046】
前述した「まぜあわせ動作」において、繰出バルブ9の回転速度や各回転途中の一旦停止時間は適宜設定することが可能である。
【0047】
また、図5及び図6の制御フローにおける張込量や平均水分含有率、水分バラツキなどは任意の閾値を設定することが可能である。
【0048】
また、前述した実施形態においては、開口91の開口方向が前後で180°逆になった繰出バルブ9を使用しているが、必ずしもこのような繰出バルブ9に限定されるものではなく、本発明では開口91が繰出バルブ9の一方向にのみに形成された繰出バルブ9を使用することも可能である。
【0049】
また、前述した実施形態では、繰出バルブ9の右回りを正回転、左回りを逆回転としたが、左右どちらを正回転又は逆回転としてもよい。
【0050】
また、前述した実施形態では、「まぜあわせ動作」において、左側の穀物流下路6Aの穀物を優先して排出するように構成したが、必ずしもこのような形態に限定されるものではなく、右側の穀物流下路6Bの穀物を優先して排出するようにしてもよい。
【0051】
また、本発明の範囲は、前述した各実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。また、前述の実施形態に記載された具体的な材質、寸法形状等は本発明の課題を解決する範囲において、変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 循環式穀物乾燥機
2 乾燥機本体
3 貯留部
4 乾燥部
5 揚穀機
6A 穀物流下路
6B 穀物流下路
7 送風路
8 排風路
9 繰出バルブ
10 集穀樋
11 下部スクリューコンベア
13 上スクリューコンベヤ
14 飛散盤
15 満量センサ
61A 排出口
61B 排出口
90 バルブ筒
91 開口
92 回転軸
131 上スクリュー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
図10
図11
図12
図13