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特開2023-13169二酸化炭素回収システム及び二酸化炭素回収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013169
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収システム及び二酸化炭素回収方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20230119BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20230119BHJP
   B01D 53/83 20060101ALI20230119BHJP
   B01D 53/96 20060101ALI20230119BHJP
   B01J 20/22 20060101ALI20230119BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20230119BHJP
   F28D 1/053 20060101ALI20230119BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20230119BHJP
【FI】
B01D53/14 100
B01D53/62 ZAB
B01D53/83
B01D53/96
B01J20/22 A
B01J20/34 H
F28D1/053 Z
C01B32/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021117151
(22)【出願日】2021-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】國枝 雅文
【テーマコード(参考)】
3L103
4D002
4D020
4G066
4G146
【Fターム(参考)】
3L103AA46
3L103BB02
3L103CC02
3L103CC27
3L103DD08
3L103DD33
4D002AA09
4D002AC05
4D002AC06
4D002AC10
4D002BA03
4D002DA31
4D002DA32
4D002EA08
4D002FA01
4D002GA03
4D002GB11
4D002HA03
4D020AA03
4D020BA16
4D020BB07
4D020BC01
4D020CA01
4D020CC09
4D020CC10
4D020DA01
4D020DA03
4D020DB06
4G066AA02C
4G066AA72C
4G066AB13B
4G066CA35
4G066DA02
4G146JA02
4G146JB09
4G146JC28
4G146JC35
4G146JC37
(57)【要約】      (修正有)
【課題】COの回収にかかる熱量を抑えつつ、COの吸収/放出の際にアミンの蒸発を防止して、COの吸収/放出量の減少を防止することのできる二酸化炭素回収システムを提供する。
【解決手段】アミン化合物が担持された板からなり、二酸化炭素の吸脱着を行う吸着板と、吸着板を加熱する加熱媒体又は冷却する冷却媒体が流通する媒体流通管とを有する少なくとも2つの構造体と、これら構造体を連結する2経路の構造体連結管と、を備え、構造体連結管は、冷却媒体又は加熱媒体を流通させる配管であり、二酸化炭素の吸収を行う一の構造体から加熱媒体を一方の構造体連結管に流出させて、二酸化炭素の放出を行う他の構造体に加熱媒体を流入させ、同時に、二酸化炭素の放出を行う他の構造体から冷却媒体を他方の構造体連結管に流出させて、二酸化炭素の吸収を行う一の構造体に冷却媒体を流入させる、ことを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミン化合物が担持された板からなり、二酸化炭素の吸脱着を行う吸着板と、
前記吸着板を加熱する加熱媒体又は前記吸着板を冷却する冷却媒体が流通する媒体流通管と、を有する、少なくとも2つの構造体と、
一の前記構造体の前記媒体流通管の一方の端部と他の前記構造体の前記媒体流通管の一方の端部とを連結する構造体連結管、前記一の構造体の前記媒体流通管の他方の端部と前記他の構造体の前記媒体流通管の他方の端部とを連結する構造体連結管、を含む少なくとも2経路の構造体連結管と、を備え、
前記構造体連結管は、冷却媒体又は加熱媒体を流通させる配管であり、
二酸化炭素の吸収を行う一の前記構造体から加熱媒体を一方の構造体連結管に流出させて、二酸化炭素の放出を行う他の前記構造体に加熱媒体を流入させ、同時に、二酸化炭素の放出を行う他の前記構造体から冷却媒体を他方の構造体連結管に流出させて、二酸化炭素の吸収を行う一の前記構造体に冷却媒体を流入させる、ことを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項2】
二酸化炭素の吸収を行う構造体から流出させた加熱媒体を加熱する加熱機構をさらに備える請求項1に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項3】
前記構造体に流入させる前の二酸化炭素含有ガスから熱を回収する熱交換器を備え、前記熱交換器で回収した熱を、前記加熱機構において前記加熱媒体を加熱するための熱として使用する請求項2に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項4】
二酸化炭素の放出を行う構造体から流出させた冷却媒体を冷却する冷却機構をさらに備える請求項1~3のいずれか1項に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項5】
アミン化合物が担持された板からなり、二酸化炭素の吸脱着を行う吸着板と、前記吸着板を加熱する加熱媒体又は前記吸着板を冷却する冷却媒体が流通する媒体流通管と、を有する構造体と、
前記構造体の前記媒体流通管に連結された配管であり、前記媒体流通管に加熱媒体を流入させる加熱媒体導入管と、
前記構造体の前記媒体流通管に連結された配管であり、前記媒体流通管に冷却媒体を流入させる冷却媒体導入管と、を備え、
前記吸着板に二酸化炭素を吸収させる際には前記冷却媒体導入管から冷却媒体を前記媒体流通管に流入させ、
前記吸着板から二酸化炭素を放出させる際には前記加熱媒体導入管から加熱媒体を前記媒体流通管に流入させる、ことを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項6】
前記加熱媒体導入管に流通させる加熱媒体を加熱する加熱機構をさらに備える請求項5に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項7】
前記構造体に流入させる前の二酸化炭素含有ガスから熱を回収する熱交換器を備え、前記熱交換器で回収した熱を、前記加熱機構において前記加熱媒体を加熱するための熱として使用する請求項6に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項8】
前記冷却媒体導入管に流通させる冷却媒体を冷却する冷却機構をさらに備える請求項5~7のいずれか1項に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項9】
前記構造体が有する前記吸着板が複数枚、二酸化炭素含有ガスが流通するガス流通路となる間隔をあけて積み重ねられており、
前記媒体流通管は、前記吸着板に対して積み重ね方向に貫通された複数の管である、請求項1~8のいずれか1項に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項10】
前記アミン化合物は、吸収した二酸化炭素を60~200℃で放出する請求項1~9のいずれか1項に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項11】
二酸化炭素含有ガスがコジェネレーション発電装置の排ガスである請求項1~10のいずれか1項に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項12】
アミン化合物が担持された板からなり、二酸化炭素の吸脱着を行う吸着板と、
前記吸着板を加熱する加熱媒体又は前記吸着板を冷却する冷却媒体が流通する媒体流通管と、を有する構造体を用いた二酸化炭素回収方法であって、
二酸化炭素含有ガスを前記吸着板に接触させて二酸化炭素を前記吸着板に吸収させる二酸化炭素吸収工程と、
前記吸着板を加熱して二酸化炭素を前記吸着板から放出させる二酸化炭素放出工程と、を行い、
前記二酸化炭素吸収工程において、前記媒体流通管に冷却媒体を流通させることにより前記吸着板を冷却し、
前記二酸化炭素放出工程において、前記媒体流通管に加熱媒体を流通させることにより前記吸着板を加熱する、ことを特徴とする二酸化炭素回収方法。
【請求項13】
前記二酸化炭素吸収工程において、前記媒体流通管に流通させる前記冷却媒体の温度が10~50℃である請求項12に記載の二酸化炭素回収方法。
【請求項14】
前記二酸化炭素放出工程において、前記媒体流通管に流通させる前記加熱媒体の温度が60~220℃である請求項12又は13に記載の二酸化炭素回収方法。
【請求項15】
前記二酸化炭素吸収工程において前記媒体流通管に流通させた前記冷却媒体が前記吸着板から回収した熱を蓄熱し、前記二酸化炭素放出工程において、前記媒体流通管に流通させる前記加熱媒体を加熱する熱源として利用する請求項12~14のいずれか1項に記載の二酸化炭素回収方法。
【請求項16】
前記構造体に流入させる前の二酸化炭素含有ガスから熱を回収する熱交換器をさらに用いた二酸化炭素回収方法であって、
前記熱交換器で回収した熱を、前記二酸化炭素放出工程において、前記媒体流通管に流通させる前記加熱媒体を加熱する熱源として利用する請求項12~15のいずれか1項に記載の二酸化炭素回収方法。
【請求項17】
前記加熱媒体が水蒸気である請求項12~16のいずれか1項に記載の二酸化炭素回収方法。
【請求項18】
前記冷却媒体が水である請求項12~17のいずれか1項に記載の二酸化炭素回収方法。
【請求項19】
前記構造体を少なくとも2つ用いた二酸化炭素回収方法であって、
前記二酸化炭素吸収工程において、一の前記構造体の前記媒体流通管に冷却媒体を流通させることにより前記一の構造体の前記吸着板を冷却しつつ二酸化炭素を前記吸着板に吸収させ、前記二酸化炭素放出工程において、他の前記構造体の前記媒体流通管に加熱媒体を流通させることにより前記他の構造体の前記吸着板を加熱して前記吸着板から二酸化炭素を放出させて回収する第一の二酸化炭素回収工程と、
前記第一の二酸化炭素回収工程の後、前記一の構造体と前記他の構造体の役割を入れ替える切替工程と、
前記二酸化炭素吸収工程において、前記他の構造体の前記媒体流通管に冷却媒体を流通させることにより前記他の構造体の前記吸着板を冷却しつつ二酸化炭素を前記吸着板に吸収させ、前記二酸化炭素放出工程において、前記一の構造体の前記媒体流通管に加熱媒体を流通させることにより前記一の構造体の前記吸着板を加熱して前記吸着板から二酸化炭素を放出させて回収する、第二の二酸化炭素回収工程と、を行う請求項12~18のいずれか1項に記載の二酸化炭素回収方法。
【請求項20】
前記第一の二酸化炭素回収工程では、前記一の構造体の前記媒体流通管に流入させた冷却媒体が加熱されて流出し、前記他の構造体の前記媒体流通管に加熱媒体として流入され、前記他の構造体の前記媒体流通管に流入させた加熱媒体が冷却されて流出し、前記一の構造体の前記媒体流通管に冷却媒体として流入されるように媒体を循環させ、かつ、
前記第二の二酸化炭素回収工程では、前記他の構造体の前記媒体流通管に流入させた冷却媒体が加熱されて流出し、前記一の構造体の前記媒体流通管に加熱媒体として流入され、前記一の構造体の前記媒体流通管に流入させた加熱媒体が冷却されて流出し、前記他の構造体の前記媒体流通管に冷却媒体として流入されるように媒体を循環させる、請求項19に記載の二酸化炭素回収方法。
【請求項21】
前記切替工程では、前記一の構造体と前記他の構造体の間を循環する媒体の流れる向きを逆転させることにより、前記一の構造体と前記他の構造体の役割を入れ替える請求項20に記載の二酸化炭素回収方法。
【請求項22】
前記切替工程では、前記一の構造体と前記他の構造体の間を循環する媒体の種類を変えることにより、前記一の構造体と前記他の構造体の役割を入れ替える請求項20に記載の二酸化炭素回収方法。
【請求項23】
前記二酸化炭素放出工程において使用した加熱媒体を、二酸化炭素回収システム以外の用途の熱源として利用する請求項12~22のいずれか1項に記載の二酸化炭素回収方法。
【請求項24】
前記二酸化炭素回収システム以外の用途は、植物工場、メタン発酵又はヒーターである請求項23に記載の二酸化炭素回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素回収システム及び二酸化炭素回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素(CO)の濃度が、大気温の上昇や、台風、洪水などの自然災害の機会が上昇する地球温暖化との強い相関性を示すことが広く知られている。発電所、石油精製所、セメント工場及び鉄鋼生産プロセスなどの産業では、各プラントから多量のCOを放出しており、このようなCOの放出量を如何にして低減させるかは、大きな問題となっている。
【0003】
上記の問題を解決する方法として、放出するCOを捕捉し、貯蔵することが、以前より研究、検討されている。上記の方法は、実質的にCO排出量を減少させることができる点で優れており、基本プロセスに大きな変更を行わない種々の方法が検討されている。
【0004】
特許文献1には、特定のガス成分を含む反応ガスを流通させる反応流路層と、反応流路層と熱交換を行うための媒体ガスを流通させる媒体流路層とが交互に積層された積層体を備えた熱交換型反応器が開示されている。この熱交換型反応器における反応ガスとしてCOが挙げられており、COを吸収・放出することが可能な反応材(CO吸収材)としては、LiSiO等が挙げられている。
【0005】
LiSiOによるCOの吸収/放出では、最適吸収温度域が500~550℃であり、最適放出温度域が650~700℃であるとされている。そのため、LiSiOを500~550℃に加温してCOの吸収を行い、さらに650~700℃に加温してCOの放出を行う。
この技術ではCO吸収材を常時500℃以上に加温しておく必要があるので、COの回収に多くの熱量を必要とするという問題があった。
【0006】
一方、特許文献2には、ハニカム状の基体(ハニカム構造体)を、担体を含むスラリーに浸漬処理することにより、基体に担体をコーティングし、さらに担体上にアミン等の吸着剤を含むスラリーを用いて吸着剤をコーティングして二酸化炭素を回収する装置が開示されている。
【0007】
アミンは60~200℃の比較的低温でCOを吸収/放出することができる。そのため、COの回収にかかる熱量を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019-84500号公報
【特許文献2】特表2014-533195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
アミンを使用すると低温でのCOの吸収/放出が可能になるが、ハニカム構造体に流通するガスの温度が高く、アミンの周囲の温度が高くなるとアミンの一部が蒸発してしまい、徐々にアミンの担持量が減少してCOの吸収/放出量が減少してしまうという問題があることがわかった。また、ハニカム構造体に流通するガスの温度による温度上昇だけではなく、アミンがCOを吸収する際に発生する反応熱による温度上昇の影響もあることがわかった。
【0010】
本発明は、このような観点からなされたものであり、COの回収にかかる熱量を抑えつつ、COの吸収/放出の際にアミンの蒸発を防止して、COの吸収/放出量の減少を防止することのできる二酸化炭素回収システム及び二酸化炭素回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明の第1の態様に係る二酸化炭素回収システムは、アミン化合物が担持された板からなり、二酸化炭素の吸脱着を行う吸着板と、上記吸着板を加熱する加熱媒体又は上記吸着板を冷却する冷却媒体が流通する媒体流通管と、を有する、少なくとも2つの構造体と、一の上記構造体の上記媒体流通管の一方の端部と他の上記構造体の上記媒体流通管の一方の端部とを連結する構造体連結管、上記一の構造体の上記媒体流通管の他方の端部と上記他の構造体の上記媒体流通管の他方の端部とを連結する構造体連結管、を含む少なくとも2経路の構造体連結管と、を備え、上記構造体連結管は、冷却媒体又は加熱媒体を流通させる配管であり、二酸化炭素の吸収を行う一の上記構造体から加熱媒体を一方の構造体連結管に流出させて、二酸化炭素の放出を行う他の上記構造体に加熱媒体を流入させ、同時に、二酸化炭素の放出を行う他の上記構造体から冷却媒体を他方の構造体連結管に流出させて、二酸化炭素の吸収を行う一の上記構造体に冷却媒体を流入させる、ことを特徴とする。
【0012】
本発明の第1の態様に係る二酸化炭素回収システムは、アミン化合物が担持された吸着板を有する少なくとも2つの構造体を備える。2つの構造体にはそれぞれ媒体流通管が設けられ、2つの構造体の媒体流通管は構造体連結管で連結されている。
構造体連結管には構造体を冷却するための冷却媒体又は構造体を加熱するための加熱媒体を流通させることができる。
二酸化炭素の吸収の際には、構造体の温度が高くなり過ぎないことが好ましいので、構造体連結管に冷却媒体を流し、二酸化炭素の吸収を行う構造体の吸着板を冷却する。
一方、二酸化炭素の放出の際には、構造体の温度を高くする必要があるので、構造体連結管に加熱媒体を流し、二酸化炭素の放出を行う構造体の吸着板を加熱して二酸化炭素の放出を行う。
2つの構造体のうちの一方の構造体を二酸化炭素の吸収を行う構造体とし、他方の構造体を二酸化炭素の放出を行う構造体として、構造体連結管を介して2つの構造体間で熱の移動を行うことにより、二酸化炭素の回収に必要な熱量を二酸化炭素回収システム全体として低減させることができる。そして、二酸化炭素の吸収の際に冷却媒体を使用して構造体を冷却することによって、二酸化炭素の吸収時の発熱反応による構造体の温度上昇を抑制して、アミン化合物の蒸発を防ぎ、二酸化炭素の吸収/放出量の減少を防止することができる。
【0013】
二酸化炭素回収システムにおいて、二酸化炭素の吸収を行う構造体から流出させた加熱媒体を加熱する加熱機構をさらに備えることが好ましい。
二酸化炭素の吸収を行う構造体から流出させた加熱媒体の温度が、二酸化炭素の放出を行う構造体の吸着板を加熱するためには充分に高くない場合は、加熱媒体を加熱機構で加熱した後に二酸化炭素の放出を行う構造体の媒体流通管に導入することで、二酸化炭素の放出を適切に実施することができる。
【0014】
二酸化炭素回収システムは、上記構造体に流入させる前の二酸化炭素含有ガスから熱を回収する熱交換器を備え、上記熱交換器で回収した熱を、上記加熱機構において上記加熱媒体を加熱するための熱として使用することが好ましい。
構造体に流入させる前の二酸化炭素含有ガスは、工場などの排ガスであることが典型的であり、比較的高温のガスであることが多い。一方、二酸化炭素の吸収を行う構造体に二酸化炭素含有ガスを流入させる際には二酸化炭素含有ガスの温度が高すぎないことが好ましい。そのため、構造体に流入させる前の二酸化炭素含有ガスの熱を熱交換器により回収して二酸化炭素含有ガスの温度を低下させる。そして、熱交換器で回収した熱を、加熱機構において加熱媒体を加熱するための熱として使用すると、二酸化炭素の回収に必要な熱量を二酸化炭素回収システム全体としてさらに低減させることができる。
【0015】
二酸化炭素回収システムは、二酸化炭素の放出を行う構造体から流出させた冷却媒体を冷却する冷却機構をさらに備えることが好ましい。
二酸化炭素の放出を行う構造体から流出させた冷却媒体の温度が、二酸化炭素の吸収を行う構造体の吸着板を冷却するためには充分に低くない場合は、冷却媒体を冷却機構で冷却した後に二酸化炭素の吸収を行う構造体の媒体流通管に導入することで、アミン化合物の蒸発をより効果的に防ぎ、二酸化炭素の吸収を適切に実施することができる。
【0016】
本発明の第2の態様に係る二酸化炭素回収システムは、アミン化合物が担持された板からなり、二酸化炭素の吸脱着を行う吸着板と、上記吸着板を加熱する加熱媒体又は上記吸着板を冷却する冷却媒体が流通する媒体流通管と、を有する構造体と、上記構造体の上記媒体流通管に連結された配管であり、上記媒体流通管に加熱媒体を流入させる加熱媒体導入管と、上記構造体の上記媒体流通管に連結された配管であり、上記媒体流通管に冷却媒体を流入させる冷却媒体導入管と、を備え、上記吸着板に二酸化炭素を吸収させる際には上記冷却媒体導入管から冷却媒体を上記媒体流通管に流入させ、上記吸着板から二酸化炭素を放出させる際には上記加熱媒体導入管から加熱媒体を上記媒体流通管に流入させる、ことを特徴とする。
【0017】
本発明の第2の態様に係る二酸化炭素回収システムは、アミン化合物が担持された吸着板を有する構造体を備える。構造体の媒体流通管には、加熱媒体導入管から加熱媒体を流入させることができる。また、構造体の媒体流通管には、冷却媒体導入管から冷却媒体を流入させることができる。
二酸化炭素の吸収の際には、構造体の温度が高くなり過ぎないことが好ましいので、冷却媒体導入管から冷却媒体を構造体の媒体流通管に流入させ、二酸化炭素の吸収を行う構造体の吸着板を冷却する。
一方、二酸化炭素の放出の際には、構造体の温度を高くする必要があるので、加熱媒体導入管から加熱媒体を構造体の媒体流通管に流入させ、二酸化炭素の放出を行う構造体の吸着板を加熱して二酸化炭素の放出を行う。
二酸化炭素の吸収を行う場合と二酸化炭素の放出を行う場合で構造体に流入させる媒体を異ならせることで、構造体の吸着板の温度を二酸化炭素の吸収と放出のそれぞれに対して適した温度に保つことができる。そして、二酸化炭素の吸収の際に冷却媒体を使用して構造体を冷却することによって、二酸化炭素の吸収時の発熱反応による構造体の温度上昇を抑制して、アミン化合物の蒸発を防ぎ、二酸化炭素の吸収/放出量の減少を防止することができる。
【0018】
二酸化炭素回収システムは、上記加熱媒体導入管に流通させる加熱媒体を加熱する加熱機構をさらに備えることが好ましい。
加熱媒体導入管に流通させる加熱媒体の温度が、二酸化炭素の放出を行う構造体の吸着板を加熱するためには充分に高くない場合は、加熱媒体を加熱機構で加熱した後に加熱媒体導入管に流通させることで、二酸化炭素の放出を適切に実施することができる。
【0019】
二酸化炭素回収システムは、上記構造体に流入させる前の二酸化炭素含有ガスから熱を回収する熱交換器を備え、上記熱交換器で回収した熱を、上記加熱機構において上記加熱媒体を加熱するための熱として使用することが好ましい。
構造体に流入させる前の二酸化炭素含有ガスは、工場などの排ガスであることが典型的であり、比較的高温のガスであることが多い。一方、二酸化炭素の吸収を行う構造体に二酸化炭素含有ガスを流入させる際には二酸化炭素含有ガスの温度が高すぎないことが好ましい。そのため、構造体に流入させる前の二酸化炭素含有ガスの熱を熱交換器により回収して二酸化炭素含有ガスの温度を低下させる。そして、熱交換器で回収した熱を、加熱機構において加熱媒体を加熱するための熱として使用すると、二酸化炭素の回収に必要な熱量を二酸化炭素回収システム全体としてさらに低減させることができる。
【0020】
二酸化炭素回収システムは、上記冷却媒体導入管に流通させる冷却媒体を冷却する冷却機構をさらに備えることが好ましい。
冷却媒体導入管に流通させる冷却媒体の温度が、二酸化炭素の吸収を行う構造体の吸着板を冷却するためには充分に低くない場合は、冷却媒体を冷却機構で冷却した後に冷却媒体導入管に流通させることで、アミン化合物の蒸発をより効果的に防ぎ、二酸化炭素の吸収を適切に実施することができる。
【0021】
本発明の二酸化炭素回収システムでは、上記構造体が有する上記吸着板が複数枚、二酸化炭素含有ガスが流通するガス流通路となる間隔をあけて積み重ねられており、上記媒体流通管は、上記吸着板に対して積み重ね方向に貫通された複数の管であることが好ましい。
【0022】
上記のような構成であると、媒体流通管とアミン化合物全体の距離を近くできる。
そして、加熱媒体又は冷却媒体に対するアミン化合物の温度追従性を高くすることができる。
【0023】
本発明の二酸化炭素回収システムでは、上記アミン化合物は、吸収した二酸化炭素を60~200℃で放出することが好ましい。
アミン化合物は、CO吸収材としてのLiSiOと比べて低温で二酸化炭素の吸収/放出を行うことができるので、二酸化炭素の回収に必要な熱量を抑えることができる。
【0024】
本発明の二酸化炭素回収システムでは、二酸化炭素含有ガスがコジェネレーション発電装置の排ガスであることが好ましい。
本発明の二酸化炭素回収システムがコジェネレーション発電装置の排ガスである二酸化炭素含有ガスからの二酸化炭素の回収に使用されると、発電機等の排気を利用して加熱媒体を加熱することができ、効率よく、低コストでアミン化合物から二酸化炭素を放出させることができる。
【0025】
本発明の二酸化炭素回収方法は、アミン化合物が担持された板からなり、二酸化炭素の吸脱着を行う吸着板と、上記吸着板を加熱する加熱媒体又は上記吸着板を冷却する冷却媒体が流通する媒体流通管と、を有する構造体を用いた二酸化炭素回収方法であって、二酸化炭素含有ガスを上記吸着板に接触させて二酸化炭素を上記吸着板に吸収させる二酸化炭素吸収工程と、上記吸着板を加熱して二酸化炭素を上記吸着板から放出させる二酸化炭素放出工程と、を行い、上記二酸化炭素吸収工程において、上記媒体流通管に冷却媒体を流通させることにより上記吸着板を冷却し、上記二酸化炭素放出工程において、上記媒体流通管に加熱媒体を流通させることにより上記吸着板を加熱する、ことを特徴とする。
【0026】
本発明の二酸化炭素回収方法では、二酸化炭素吸収工程において、媒体流通管に冷却媒体を流通させることにより吸着板を冷却するので、二酸化炭素の吸収時の発熱反応による吸着板の温度上昇を抑制して、アミン化合物の蒸発を防ぎ、二酸化炭素の吸収/放出量の減少を防止することができる。
また、二酸化炭素放出工程において、媒体流通管に加熱媒体を流通させることにより吸着板を加熱して、二酸化炭素の放出を行うことができる。
【0027】
本発明の二酸化炭素回収方法では、上記二酸化炭素吸収工程において、上記媒体流通管に流通させる上記冷却媒体の温度が10~50℃であることが好ましい。
冷却媒体の温度を上記範囲とすると、吸着板の温度をアミン化合物による二酸化炭素の吸収により適した温度域に調節することができる。
【0028】
本発明の二酸化炭素回収方法では、上記二酸化炭素放出工程において、上記媒体流通管に流通させる上記加熱媒体の温度が60~220℃であることが好ましい。
加熱媒体の温度を上記範囲とすると、吸着板の温度をアミン化合物による二酸化炭素の放出により適した温度域に調節することができる。
【0029】
本発明の二酸化炭素回収方法では、上記二酸化炭素吸収工程において上記媒体流通管に流通させた上記冷却媒体が上記吸着板から回収した熱を蓄熱し、上記二酸化炭素放出工程において、上記媒体流通管に流通させる上記加熱媒体を加熱する熱源として利用することが好ましい。
【0030】
上記のように熱を蓄熱し、蓄熱した熱を熱源として利用して加熱媒体を加熱するようにすると、二酸化炭素回収方法全体において熱を効率よく使用することができる。
【0031】
本発明の二酸化炭素回収方法は、上記構造体に流入させる前の二酸化炭素含有ガスから熱を回収する熱交換器をさらに用いた二酸化炭素回収方法であって、上記熱交換器で回収した熱を、上記二酸化炭素放出工程において、上記媒体流通管に流通させる上記加熱媒体を加熱する熱源として利用することが好ましい。
【0032】
構造体に流入させる前の二酸化炭素含有ガスは、工場などの排ガスであることが典型的であり、比較的高温のガスであることが多い。一方、二酸化炭素の吸収を行う構造体に二酸化炭素含有ガスを流入させる際には二酸化炭素含有ガスの温度が高すぎないことが好ましい。そのため、構造体に流入させる前の二酸化炭素含有ガスの熱を熱交換器により回収して二酸化炭素含有ガスの温度を低下させる。そして、熱交換器で回収した熱を、媒体流通管に流通する加熱媒体を加熱するための熱として使用すると、二酸化炭素の回収に必要な熱量がさらに低減された二酸化炭素回収方法とすることができる。
【0033】
本発明の二酸化炭素回収方法では、上記加熱媒体が水蒸気であることが好ましい。
水蒸気は安価で安全な加熱媒体として使用することができる。
【0034】
本発明の二酸化炭素回収方法では、上記冷却媒体が水であることが好ましい。
水は安価で安全な加熱媒体として使用することができる。
【0035】
本発明の二酸化炭素回収方法は、上記構造体を少なくとも2つ用いた二酸化炭素回収方法であって、上記二酸化炭素吸収工程において、一の上記構造体の上記媒体流通管に冷却媒体を流通させることにより上記一の構造体の上記吸着板を冷却しつつ二酸化炭素を上記吸着板に吸収させ、上記二酸化炭素放出工程において、他の上記構造体の上記媒体流通管に加熱媒体を流通させることにより上記他の構造体の上記吸着板を加熱して上記吸着板から二酸化炭素を放出させて回収する第一の二酸化炭素回収工程と、上記第一の二酸化炭素回収工程の後、上記一の構造体と上記他の構造体の役割を入れ替える切替工程と、上記二酸化炭素吸収工程において、上記他の構造体の上記媒体流通管に冷却媒体を流通させることにより上記他の構造体の上記吸着板を冷却しつつ二酸化炭素を上記吸着板に吸収させ、上記二酸化炭素放出工程において、上記一の構造体の上記媒体流通管に加熱媒体を流通させることにより上記一の構造体の上記吸着板を加熱して上記吸着板から二酸化炭素を放出させて回収する、第二の二酸化炭素回収工程と、を行うことが好ましい。
【0036】
2つの構造体のうちの一方の構造体を二酸化炭素の吸収を行う構造体とし、他方の構造体を二酸化炭素の放出を行う構造体として、切替工程によりその役割を入れ替えるようにする。このようにすると、連続的に二酸化炭素の吸収と放出を行い、二酸化炭素の回収を効率的に行うことができる。
【0037】
本発明の二酸化炭素回収方法において、上記第一の二酸化炭素回収工程では、上記一の構造体の上記媒体流通管に流入させた冷却媒体が加熱されて流出し、上記他の構造体の上記媒体流通管に加熱媒体として流入され、上記他の構造体の上記媒体流通管に流入させた加熱媒体が冷却されて流出し、上記一の構造体の上記媒体流通管に冷却媒体として流入されるように媒体を循環させ、かつ、上記第二の二酸化炭素回収工程では、上記他の構造体の上記媒体流通管に流入させた冷却媒体が加熱されて流出し、上記一の構造体の上記媒体流通管に加熱媒体として流入され、上記一の構造体の上記媒体流通管に流入させた加熱媒体が冷却されて流出し、上記他の構造体の上記媒体流通管に冷却媒体として流入されるように媒体を循環させることが好ましい。
【0038】
上記の方法により媒体を循環させるようにすると、同じ媒体を繰り返し使用することができるので、外部からの媒体の補充を行う必要がない。また、当該媒体の持つ熱を再利用することができるため、吸着板の加熱及び冷却を効率よく行うことができる。
【0039】
また、上記切替工程では、上記一の構造体と上記他の構造体の間を循環する媒体の流れる向きを逆転させることにより、上記一の構造体と上記他の構造体の役割を入れ替えてもよい。
また、上記切替工程では、上記一の構造体と上記他の構造体の間を循環する媒体の種類を変えることにより、上記一の構造体と上記他の構造体の役割を入れ替えてもよい。
切替工程を上記の方法で行うことにより、二酸化炭素を吸収する構造体と二酸化炭素を放出する構造体を簡便に切り替えることができる。
【0040】
本発明の二酸化炭素回収方法では、上記二酸化炭素放出工程において使用した加熱媒体を、二酸化炭素回収システム以外の用途の熱源として利用することが好ましい。
また、上記二酸化炭素回収システム以外の用途は、植物工場、メタン発酵又はヒーターであることが好ましい。
【0041】
二酸化炭素放出工程において使用した加熱媒体の温度が、吸着板から二酸化炭素を放出させることができるほどには高くない場合、二酸化炭素回収システムの中で使用する熱源としての使用は難しいが、他の用途であれば熱源として使用できる場合がある。そのため、植物工場、メタン発酵又はヒーター等の他の用途の熱源として使用することによって、他の用途も含めた熱の利用効率を向上させることができる。
【0042】
なお、本明細書において、吸脱着は、吸着、脱着のほか、吸収、放出も含んだ意味として用いることとする。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は、二酸化炭素回収システムで使用する構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1に示した構造体の断面模式図であり、板の積み重ね方向に対して直交する方向から見た図である。
図3図3は、図1に示した構造体を板の積み重ね方向に沿って見た模式図である。
図4図4は、二酸化炭素回収システムで使用する構造体の別の一例を模式的に示す断面図であり、板の積み重ね方向に対して直交する方向から見た図である。
図5図5は、二酸化炭素回収システムで使用する構造体の別の一例を模式的に示す断面図であり、板の積み重ね方向に対して直交する方向から見た図である。
図6図6は、二酸化炭素回収システムで使用する構造体のさらに別の一例を模式的に示す斜視図である。
図7図7は、2つの構造体を備えた二酸化炭素回収システムの一例を模式的に示す説明図である。
図8A図8Aは、媒体流通管を通じた冷却媒体と加熱媒体の流通形態の一例を示す模式図である。
図8B図8Bは、媒体流通管を通じた冷却媒体と加熱媒体の流通形態の一例を示す模式図である。
図8C図8Cは、媒体流通管を通じた冷却媒体と加熱媒体の流通形態の一例を示す模式図である。
図9図9は、1つの構造体を備えた二酸化炭素回収システムの一例を模式的に示す説明図である。
図10図10は、加熱/冷却機構を備えた二酸化炭素回収システムの一例を模式的に示す説明図である。
【0044】
(発明の詳細な説明)
最初に、二酸化炭素回収システムで使用する構造体を説明する。
二酸化炭素回収システムで使用する構造体は、アミン化合物が担持された板からなり、二酸化炭素の吸脱着を行う吸着板と、吸着板を加熱する加熱媒体又は吸着板を冷却する冷却媒体が流通する媒体流通管と、を有する。
【0045】
構造体としては、構造体が有する吸着板が複数枚、二酸化炭素含有ガスが流通するガス流通路となる間隔をあけて積み重ねられており、媒体流通管は、吸着板に対して積み重ね方向に貫通された複数の管であるものが好ましい。
【0046】
図1は、二酸化炭素回収システムで使用する構造体の一例を模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示した構造体の断面模式図であり、板の積み重ね方向に対して直交する方向から見た図である。図3は、図1に示した構造体を板の積み重ね方向に沿って見た模式図である。
図1図2及び図3には、ガスに含まれる二酸化炭素を吸脱着する構造体100を示す。
【0047】
図1に示すように、構造体100は、略四角柱形状の構造体であり、吸着板10及び複数の媒体流通管20を備えている。
構造体100の外形は、略四角柱形状であることが好ましいが、特に限定されるものではなく、使用状況に合わせて他の形状であってもよい。
構造体100は、吸着板10及び複数の媒体流通管20を収容する、例えば直方体状の容器(図示せず)をさらに備えていてもよい。この場合、媒体流通管20の両端部は容器を貫通して外部に突き出ることが好ましく、また、容器の対向する一対の面には、二酸化炭素含有ガスや二酸化炭素回収用ガスを導入・排出するための貫通孔を設けることが好ましい。
【0048】
吸着板10は、ガスに含まれる二酸化炭素を吸脱着する機能を主に担う部材であり、図1及び図2に示すように、アミン化合物が担持された板11が複数枚、ガスが流通するガス流通路12となる間隔をあけて積み重ねられている。
【0049】
板11は、吸着板10を構成する基礎となる部材(フィン、薄板)であり、隣り合う2枚の板11同士が接触しないように配置されている。そして、板11のガスと接触する部分、すなわち表面に、アミン化合物が担持されており、隣り合う板11の間に広がる隙間がガス流通路12となる。
板11を構成する材料は、特に限定されないが、耐蝕性及び熱伝導性に優れた材料が好ましく、例えば、チタン、アルミニウム等の金属や、ステンレス鋼等の合金、炭化珪素、窒化珪素等のセラミックスが挙げられる。
【0050】
具体的なアミン化合物としては、例えば、ポリエチレンイミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラエチレンアミンペンタミン、メチルジエタノールアミン、ジブチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサエチレンジアミン、ベンジルアミン、メタキシレンジアミン、ポリエチレンイミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等が挙げられる。
【0051】
板11にアミン化合物を担持させる方法としては、例えば、
(1)アミン化合物とバインダ等を含有する水溶液やアルコール溶液を板11の表面に塗布した後、水やアルコールを除去する方法
(2)アミン化合物とバインダ等を含有する水溶液やアルコール溶液に板11を浸漬した後、水やアルコールを除去する方法
(3)アミン化合物を担持した担持体(例えばシリカ粒子)を、板11にコーティングする方法
(4)アミン化合物を含有する樹脂シートであるアミンシートを板11に貼付する方法
(5)板11に担持体(例えばシリカ粒子)を塗布し、その担持体にアミン化合物を担持する方法等が挙げられる。このようにして、図2及び図3に示したように、板11の表面上にアミン化合物を含有するアミン含有層13が形成されてもよい。
【0052】
なお、図2ではアミン化合物(アミン含有層13)は、媒体流通管20には担持されていないが、アミン化合物は、媒体流通管20のガスと接触する部分、すなわち媒体流通管20の外周面に担持されていてもよい。
媒体流通管20にアミン化合物を担持させる方法としては、上記(1)~(5)に示した方法と同様の方法を用いてもよい。
【0053】
アミン化合物は、吸収した二酸化炭素を60~200℃で放出することが好ましい。
アミン化合物は、CO吸収材としてのLiSiOと比べて低温で二酸化炭素の吸収/放出を行うことができるので、二酸化炭素の回収に必要な熱量を抑えることができる。
【0054】
媒体流通管20は、二酸化炭素の吸着及び脱着のそれぞれの過程において適した温度となるように、吸着板10(アミン化合物)の温度を制御するための部材であり、図1及び図2に示すように、吸着板10に対して積み重ね方向に貫通され、熱媒体が流通する熱媒体流通路となる。
媒体流通管20(熱媒体流通路)を所定の温度の熱媒体が流通することによって、媒体流通管20を介して板11に熱を与えるか、又は媒体流通管20を介して板11から熱を奪う。
【0055】
媒体流通管20は、例えば直線状であり、各々の板11と交差するように、例えば直交するように、設けられている。また、図3に示すように、複数の媒体流通管20は、互いに接触しないように間隔をあけて、好ましくは略均等に、配置されている。
媒体流通管20を構成する材料は、特に限定されないが、耐蝕性及び熱伝導性に優れた材料が好ましく、例えば、チタン、アルミニウム等の金属や、ステンレス鋼等の合金、炭化珪素、窒化珪素等のセラミックスが挙げられる。
【0056】
なお、板11を構成する材料と媒体流通管20を構成する材料は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0057】
媒体流通管20は、積み重ねられた全ての板11を貫通しており、各々の板11との接触部分で接着又は接合されている。
媒体流通管20を板11に接合させる方法としては、例えば、板11に媒体流通管20よりも少し小さな貫通孔を設け、所定の間隔をあけて積み重ねられた板11に媒体流通管20を圧入(加圧して挿入)してもよい。これにより、両者が反発し合うように圧力を生じ、両者が接合される。
また、板11の貫通孔に媒体流通管20を挿入した後、媒体流通管20を拡管してもよい。
なお、隣り合う2枚の板11の間に柱状のスペーサを複数配置した状態で板11に媒体流通管20を圧入してもよい。これらのスペーサは、その後取り除いてもよいし、板11の間にそのまま残存してもよい。
また、媒体流通管20と板11とは、例えば、接着剤や溶接等の他の手段によって接着又は接合されてもよい。
【0058】
熱媒体は、吸着板10を加熱又は冷却するための流体である。
熱媒体は、特に限定されるものではなく、窒素、空気、水蒸気、水等が挙げられるが、加熱媒体としては水蒸気が好ましく、冷却媒体としては水が好ましい。安価であるためである。
【0059】
ここで、構造体100の動作原理、すなわち構造体100によってガスに含まれる二酸化炭素を吸脱着する方法について説明する。
【0060】
二酸化炭素の吸着時は、まず、通常では熱媒体として冷却媒体(好ましくは水)を媒体流通管20に流通させて板11を冷却し、吸着板10(アミン化合物)の温度を二酸化炭素の吸着に適した温度(好ましくは10~50℃)となるように制御する。
このとき、冷却媒体は、媒体流通管20を所定の一方向(例えば図1及び図2に示した黒矢印の方向)に流通する。
そして、二酸化炭素含有ガスを板11の間のガス流通路12に導入し、ガス中の二酸化炭素を吸着板10に担持されたアミン化合物に吸着・吸収させる。その結果、二酸化炭素が除去されたガスがガス流通路12から排出される。
二酸化炭素含有ガスは、図1図2及び図3に示したように、板11の積み重ね方向に直交する所定の一方向(例えば図1図2及び図3に示した白抜き矢印の方向)に向かって、ガス流通路12に導入され、かつ、ガス流通路12から排出されることが好ましい。
【0061】
二酸化炭素の脱着時は、まず、通常では熱媒体として加熱媒体(好ましくは水蒸気)を媒体流通管20に流通させて板11を加熱し、吸着板10(アミン化合物)の温度を二酸化炭素の脱着に適した温度(好ましくは60~200℃)となるように制御する。
それにより、アミン化合物から二酸化炭素を脱着・放出させる。放出された二酸化炭素は、減圧して回収してもよく、二酸化炭素回収用ガスを板11の間のガス流通路12に導入して回収してもよい。
二酸化炭素回収用ガスは、図1図2及び図3に示したように、板11の積み重ね方向に直交する所定の一方向(例えば、図1図2及び図3に示した白抜き矢印の方向)に向かって、ガス流通路12に導入され、かつガス流通路12から排出されることが好ましい。
【0062】
なお、冷却媒体が媒体流通管20内を流通する方向と、加熱媒体が媒体流通管20内を流通する方向は、同じであってもよいし、反対であってもよい。
また、二酸化炭素含有ガスをガス流通路12に導入する方向と、二酸化炭素回収用ガスをガス流通路12に導入する方向は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。後者の場合、それらの方向は、例えば、反対を向いていたり、交差(例えば直交)していてもよい。
【0063】
構造体100は、アミン化合物が担持された板11が複数枚、ガスが流通するガス流通路12となる間隔をあけて積み重ねられた吸着板10と、吸着板10に対して積み重ね方向に貫通され、熱媒体が流通する熱媒体流通路となる複数の媒体流通管20と、を備える。この構成であると、熱媒体が流通する媒体流通管20とアミン化合物との距離を近くできるため、熱媒体に対するアミン化合物の温度追従性が高く、アミン化合物を二酸化炭素の吸着及び脱着のそれぞれの過程において適した温度にすることができる。そのため、吸着板10に担持したアミン化合物の二酸化炭素吸脱着能を充分に発揮することができる。
また、吸着板10の間に熱媒体層を挟む必要がないため、構造体100のサイズを小さくすることができる。
【0064】
さらに、二酸化炭素の脱吸着を行う吸着板10とは別に熱媒体が流通する媒体流通管20を設けているので、熱媒体とアミン化合物とは直接接触せず、熱媒体として安価な水蒸気及び水を用いることができ、アミン化合物に吸着した水を蒸発させる必要がなく、二酸化炭素を効率よく、低コストで吸脱着することができる。
【0065】
図4は、二酸化炭素回収システムで使用する構造体の別の一例を模式的に示す断面図であり、板の積み重ね方向に対して直交する方向から見た図である。図5は、二酸化炭素回収システムで使用する構造体の別の一例を模式的に示す断面図であり、板の積み重ね方向に対して直交する方向から見た図である。
【0066】
図1に示した構造体100では、板11は、図1及び図2に示したように平板であるが、板11は、図4に示すように波板であってもよいし、図5に示すように断面視ジグザグ状であってもよい。板11の断面形状は、これらに特に限定されず、その他の形状であってもよいが、すべての板11が同じ断面形状であることが好ましく、また、隣り合う2枚の板11は、ガス流通路12となる間隔が略一定となるように互いに平行に配置されることが好ましい。
【0067】
また、板11の平面形状も特に限定されないが、図1及び図3に示したように、矩形状であることが好ましい。
複数の板11の平面形状は、互いに異なっていてもよいが、図1及び図3に示したように実質的に同じものであることが好ましく、また、板11の積み重ね方向に沿って見たときにすべての板11が略完全に重なり合うことが好ましい。
【0068】
板11の枚数は、特に限定されないが、多量かつ効率的に二酸化炭素を吸脱着する観点からは、300~1800枚積み重ねられることが好ましく、500~1600枚積み重ねられることがより好ましく、700~1300枚積み重ねられることがさらに好ましい。
【0069】
媒体流通管20の本数は、特に限定されないが、板11の全体を吸脱着に適した温度に制御する観点からは、媒体流通管20は、板11の積み重ね方向に直交する平面10~100cmあたり1本設けられることが好ましく、上記平面11.1~50cmあたり1本設けられることがより好ましく、上記平面12.5~33.3cmあたり1本設けられることがさらに好ましい。
すなわち、媒体流通管20は、上記平面100cmあたり1~10本設けられていることが好ましく、上記平面100cmあたり2~9本設けられていることがより好ましく、上記平面100cmあたり3~8本設けられていることがさらに好ましい。
【0070】
媒体流通管20の断面積は、特に限定されないが、2~54cmであることが好ましく、2~38.5cmであることがより好ましく、2~28.2cmであることがさらに好ましい。
なお、媒体流通管20の断面積とは、板11の積み重ね方向に直交する方向に媒体流通管20を切断した時に当該外周によって確定される面積を示す。
【0071】
媒体流通管20の厚み(肉厚)は、特に限定されないが、1.2~12.5mmであることが好ましく、1.3~7mmであることがより好ましく、1.4~4mmであることがさらに好ましい。
【0072】
図1に示した構造体100では、媒体流通管20の断面形状は、図1及び図3に示したように円形であるが、特に限定されず、円形以外の断面形状としては、例えば、楕円、オーバルのような曲線を有する形状、矩形等の多角形等が挙げられる。
複数の媒体流通管20の断面形状は、互いに異なっていてもよいが、図1及び図3に示したように実質的に同じものであることが好ましい。
【0073】
隣り合う2枚の板11の中心間距離は、特に限定されないが、充分な量のアミン化合物を担持する観点からは、1~6mmであることが好ましく、1~5mmであることがより好ましく、1~4mmであることがさらに好ましい。
なお、隣り合う2枚の板11の中心間距離は、図2図4及び図5に示したように、隣り合う2枚の板11の中心間の、板11の積み重ね方向における距離dを表す。
【0074】
板11の主面の表面積は、特に限定されないが、多量かつ効率的に二酸化炭素を吸脱着する観点からは、8000~135000cmであることが好ましく、10000~80000cmであることがより好ましく、15000~60000cmであることがさらに好ましい。
なお、「板の主面の表面積」とは、板のいずれか一方の主面の表面積であり、管が存在する領域の面積を含むものとする。
【0075】
板11の厚み(肉厚)は、特に限定されないが、1.2~12.5mmであることが好ましく、1.3~7mmであることがより好ましく、1.4~4mmであることがさらに好ましい。
【0076】
アミン化合物(例えばアミン含有層13)の厚みは、50~1000μmであることが好ましく、75~850μmであることがより好ましく、100~680μmであることがさらに好ましい。アミン化合物の厚みを1000μm以下と薄くすることで、伝熱阻害を小さくすることができ、熱媒体に対する吸着板の温度追従性により効果的である。また、アミン化合物の厚みを50μm以上にすることで、構造体100の容積あたりのアミン化合物量を増加できる。
【0077】
二酸化炭素回収システムで使用する構造体は、これまで説明した形態のものに限定されず、吸着板と媒体流通管を有するものであればよい。例えば、媒体流通管が吸着板に対して貫通された複数の管でなくてもよい。
図6は、二酸化炭素回収システムで使用する構造体のさらに別の一例を模式的に示す斜視図である。
図6に示す構造体101は、略四角柱形状の構造体であり、吸着板10及び複数の媒体流通管20を備えている。
【0078】
吸着板10は、アミン化合物が担持された板11が複数枚、ガスが流通するガス流通路12となる間隔をあけて積み重ねられている。
媒体流通管20は、2枚の板11の間に、ガス流通路12に沿うように設けられている。
媒体流通管20は、隣り合う2枚の板との接触部分で接着剤や溶接等の手段により接着又は接合されている。
アミン化合物は媒体流通管20の外周面に担持されていてもよい。
【0079】
媒体流通管20が板11と接着又は接合されていることにより、媒体流通管20に流通させた熱媒体によって、板11、すなわち吸着板10が加熱又は冷却される。
図6には、熱媒体が媒体流通管20を流れる方向を黒矢印の方向で示している。また、二酸化炭素含有ガス及び二酸化炭素回収用ガスがガス流通路12を流れる方向を白矢印の方向で示している。
熱媒体が媒体流通管20を流れる方向と、二酸化炭素含有ガス及び二酸化炭素回収用ガスが流れる方向は同じであってもよく、異なっていてもよい。また、二酸化炭素含有ガスがガス流通路を流れる方向と、二酸化炭素回収用ガスがガス流通路を流れる方向は同じであってもよく異なっていてもよい。
【0080】
構造体101によれば、アミン化合物が担持された板11が複数枚、ガスが流通するガス流通路12となる間隔をあけて積み重ねられた吸着板10と、2枚の板11の間にガス流通路12に沿うように設けられた媒体流通管20と、を備える。この形態でも、熱媒体が流通する媒体流通管20と吸着板10が接しているため、熱媒体に対する吸着板10の温度追従性が高い。
そして、構造体101全体を二酸化炭素の吸着及び脱着のそれぞれの過程において適した温度にすることができる。そのため、吸着板10に担持したアミン化合物の二酸化炭素吸脱着能を充分に発揮することができる。
【0081】
さらに、二酸化炭素の脱吸着を行う吸着板10とは別に熱媒体が流通する媒体流通管20を設けているので、熱媒体とアミン化合物とは直接接触せず、熱媒体として安価な水蒸気及び水を用いることができ、アミン化合物に吸着した水を蒸発させる必要がなく、二酸化炭素を効率よく、低コストで吸脱着することができる。
【0082】
次に、上記のような構造体を使用することのできる、本発明の二酸化炭素回収システムの一例について説明する。
本発明の第1の態様に係る二酸化炭素回収システムは、アミン化合物が担持された板からなり、二酸化炭素の吸脱着を行う吸着板と、上記吸着板を加熱する加熱媒体又は上記吸着板を冷却する冷却媒体が流通する媒体流通管と、を有する、少なくとも2つの構造体と、一の上記構造体の上記媒体流通管の一方の端部と他の上記構造体の上記媒体流通管の一方の端部とを連結する構造体連結管、上記一の構造体の上記媒体流通管の他方の端部と上記他の構造体の上記媒体流通管の他方の端部とを連結する構造体連結管、を含む少なくとも2経路の構造体連結管と、を備え、上記構造体連結管は、冷却媒体又は加熱媒体を流通させる配管であり、二酸化炭素の吸収を行う一の上記構造体から加熱媒体を一方の構造体連結管に流出させて、二酸化炭素の放出を行う他の上記構造体に加熱媒体を流入させ、同時に、二酸化炭素の放出を行う他の上記構造体から冷却媒体を他方の構造体連結管に流出させて、二酸化炭素の吸収を行う一の上記構造体に冷却媒体を流入させる、ことを特徴とする。
【0083】
第1の態様に係る二酸化炭素回収システムは、アミン化合物が担持された吸着板を有する少なくとも2つの構造体を備える。2つの構造体にはそれぞれ媒体流通管が設けられ、2つの構造体の媒体流通管は構造体連結管で連結されている。
構造体連結管には構造体を冷却するための冷却媒体又は構造体を加熱するための加熱媒体を流通させることができる。
二酸化炭素の吸収の際には、構造体の温度が高くなり過ぎないことが好ましいので、構造体連結管に冷却媒体を流し、二酸化炭素の吸収を行う構造体の吸着板を冷却する。
一方、二酸化炭素の放出の際には、構造体の温度を高くする必要があるので、構造体連結管に加熱媒体を流し、二酸化炭素の放出を行う構造体の吸着板を加熱して二酸化炭素の放出を行う。
2つの構造体のうちの一方の構造体を二酸化炭素の吸収を行う構造体とし、他方の構造体を二酸化炭素の放出を行う構造体として、構造体連結管を介して2つの構造体間で熱の移動を行うことにより、二酸化炭素の回収に必要な熱量を二酸化炭素回収システム全体として低減させることができる。そして、二酸化炭素の吸収の際に冷却媒体を使用して構造体を冷却することによって、二酸化炭素の吸収時の発熱反応による構造体の温度上昇を抑制して、アミン化合物の蒸発を防ぎ、二酸化炭素の吸収/放出量の減少を防止することができる。
【0084】
以下に、本発明の第1の態様に係る二酸化炭素回収システム及び二酸化炭素回収方法について図面を参照して説明する。本発明の第1の態様に係る二酸化炭素回収システムは、2つの構造体を備えており、一の構造体が二酸化炭素の吸収を行う構造体となり、他の構造体が二酸化炭素の放出を行う構造体となる。
以下には、2つの構造体として第1の構造体と第2の構造体を備える二酸化炭素回収システムについて図面を参照して説明する。
【0085】
図7は、2つの構造体を備えた二酸化炭素回収システムの一例を模式的に示す説明図である。
二酸化炭素回収システム200は、第1の構造体211と第2の構造体212の2つの構造体を備えている。本発明の二酸化炭素回収システムは、3つ以上の構造体を備えていてもよいが、ここでは、2つの構造体を備えている二酸化炭素回収システムを説明する。
また、図示していないが、この二酸化炭素回収システム200に備え付けられた第1の構造体211と第2の構造体212は、いずれもアミン化合物が担持された板からなり、二酸化炭素の吸脱着を行う吸着板と、吸着板を加熱する加熱媒体又は吸着板を冷却する冷却媒体が流通する媒体流通管とを有する。
【0086】
発電機等から発生した二酸化炭素(CO)含有ガス210は、図示しない脱硝装置、集塵装置、脱硫装置、予備冷却器等を通過した後、第1の構造体211又は第2の構造体212に導入される。二酸化炭素(CO)含有ガス210が通過する配管は、切り替えバルブ240、241、250、251を備えており、切り替えバルブ240、241、250、251を切り替えることにより、二酸化炭素(CO)含有ガス210がいずれかの構造体に択一的に導入されるようになっている。二酸化炭素(CO)含有ガス210は、第1の構造体211又は第2の構造体212を出た後、煙突213を通過し、排気ガス214として排出される。
【0087】
第1の構造体211又は第2の構造体212には、二酸化炭素(CO)回収用ガス220も導入されるようになっている。二酸化炭素(CO)回収用ガス220の配管は、切り替えバルブ246、249、242、243を備えており、いずれかの構造体から脱着・放出された二酸化炭素は、ポンプ221を経て、種々の方法により、二酸化炭素(CO)222として貯蔵される。
【0088】
加熱媒体としての水蒸気を含む水蒸気ガス230が通過する配管は、切り替えバルブ244、245、247、248を備えており、水蒸気ガス230は、第1の構造体211又は第2の構造体212のいずれかの媒体流通管に導入され、熱交換器231を経て、排気ガス232として排出される。熱交換器231には、空気等からなるガス233が導入され、媒体流通管を出た水蒸気ガス230により温められたガス233は、水蒸気余熱用ガス234として使用され、図示しない熱交換器を介して水蒸気を予熱する。このガスは、所定の設備等を加熱する他の用途に用いられてもよい。
【0089】
加熱媒体としての水蒸気ガス230は、第1の構造体211及び第2の構造体212のうち、二酸化炭素の放出を行う構造体に流通させる。加熱媒体により構造体を加熱することによって構造体の温度を高くして、アミン化合物に吸収させた二酸化炭素を放出させる。
【0090】
冷却媒体としての水を含む冷却水235が通過する配管は、切り替えバルブ252、253、247、248を備えており、冷却水235は、第1の構造体211又は第2の構造体212のいずれかの媒体流通管に導入され、熱交換器231を経て、排水236として排出される。
【0091】
冷却媒体としての冷却水235は、第1の構造体211及び第2の構造体212のうち、二酸化炭素の吸収を行う構造体に流通させる。冷却媒体により構造体を冷却することによって構造体の温度を低くすることにより、二酸化炭素の吸収時の発熱反応による構造体の温度上昇を抑制して、アミン化合物の蒸発を防ぎ、二酸化炭素の吸収/放出量の減少を防止することができる。
【0092】
第1の構造体211と第2の構造体212は2経路の構造体連結管で連結されている。
第1の構造体211の媒体流通管の一方の端部を第1端部215とし、媒体流通管の他方の端部を第2端部216とする。
第2の構造体212の媒体流通管の一方の端部を第3端部217とし、媒体流通管の他方の端部を第4端部218とする。
【0093】
第1の構造体211の媒体流通管の第2端部216と第2の構造体212の媒体流通管の第3端部217を連結する構造体連結管を第1の構造体連結管261とする。
第1の構造体211の媒体流通管の第1端部215と第2の構造体212の媒体流通管の第4端部218を連結する構造体連結管を第2の構造体連結管262とする。
第1の構造体連結管261及び第2の構造体連結管262は配管であり、図7に示す他の配管と同様の配管とすることができるが、図7にはこの2本の配管の位置を明確に示すために他の配管とは異なるハッチングで示している。
【0094】
第1の構造体連結管261及び第2の構造体連結管262は、冷却媒体又は加熱媒体を流通させる配管である。
冷却媒体は流入先の構造体を冷却する媒体であり、水を使用することが好ましい。
冷却媒体は二酸化炭素の吸収を行う構造体に流通させる。
加熱媒体は流入先の構造体を加熱する媒体であり、水蒸気を使用することが好ましい。
加熱媒体は二酸化炭素の放出を行う構造体に流通させる。
【0095】
第1の構造体連結管261及び第2の構造体連結管262に流通させる媒体の種類及び媒体の流れる向きはそれぞれ変更することが可能である。媒体の種類及び媒体の流れる向きを変更する場合の具体例については後述する。
【0096】
また、第1の構造体連結管261の途中に、加熱/冷却機構263を設けることが好ましい。
また、第2の構造体連結管262の途中に、加熱/冷却機構264を設けることが好ましい。
加熱媒体を流通させる場合に、加熱媒体の温度が、二酸化炭素の放出を行う構造体を加熱するためには充分に高くない場合は、加熱媒体を加熱機構で加熱した後に二酸化炭素の放出を行う構造体に導入することで、二酸化炭素の放出を適切に実施することができる。
冷却媒体を流通させる場合に、冷却媒体の温度が、二酸化炭素の吸収を行う構造体を冷却するためには充分に低くない場合は、冷却媒体を冷却機構で冷却した後に二酸化炭素の吸収を行う構造体に導入することで、アミン化合物の蒸発をより効果的に防ぎ、二酸化炭素の吸収を適切に実施することができる。
【0097】
加熱機構としてはヒーターなどを使用することができる。冷却機構としてはチラー、放熱フィンなどを使用することができる。加熱機構及び冷却機構としては、ヒートポンプのように流通する媒体の圧縮膨張を利用した装置であってもよい。
【0098】
また、構造体に流入させる前の二酸化炭素含有ガスから熱を回収する熱交換器を備え、熱交換器で回収した熱を、二酸化炭素放出工程において、媒体流通管に流通させる加熱媒体を加熱する熱源として利用してもよい。
構造体に流入させる前の二酸化炭素含有ガスは、工場などの排ガスであることが典型的であり、比較的高温のガスであることが多い。一方、二酸化炭素の吸収を行う構造体に二酸化炭素含有ガスを流入させる際には二酸化炭素含有ガスの温度が高すぎないことが好ましい。そのため、構造体に流入させる前の二酸化炭素含有ガスの熱を熱交換器により回収して二酸化炭素含有ガスの温度を低下させる。そして、熱交換器で回収した熱を、加熱媒体を加熱するための熱として使用すると、二酸化炭素の回収に必要な熱量を二酸化炭素回収システム全体としてさらに低減させることができる。
【0099】
構造体に流入させる前の二酸化炭素含有ガスから熱を回収する熱交換器としては、任意の熱交換器を使用することができ、特にその形状等は限定されるものではない。
先に説明した、図1図2図3図4図5及び図6に示したような形状であって、アミン化合物が担持されていない板と媒体流通管の組み合わせからなる、いわゆるフィンチューブ型の熱交換器を使用することができる。
また、フィンチューブ型の熱交換器において板がない形態の熱交換器である、多管式の熱交換器を使用することができる。
また、フィンチューブ型の熱交換器において管がない形態の熱交換器である、プレート式の熱交換器を使用することができる。
【0100】
なお、二酸化炭素含有ガスの供給源は、特に限定されないが、二酸化炭素含有ガスがコジェネレーション発電装置の排ガスであることが好ましい。
二酸化炭素回収システムがコジェネレーション発電装置の排ガスである二酸化炭素含有ガスからの二酸化炭素の回収に使用されると、発電機等の排気を利用して加熱媒体を加熱することができ、効率よく、低コストでアミン化合物から二酸化炭素を放出させることができる。
【0101】
以下に、本発明の二酸化炭素回収システムを用いた本発明の二酸化炭素回収方法の例について説明する。
本発明の二酸化炭素回収方法は、アミン化合物が担持された板からなり、二酸化炭素の吸脱着を行う吸着板と、上記吸着板を加熱する加熱媒体又は上記吸着板を冷却する冷却媒体が流通する媒体流通管と、を有する構造体を用いた二酸化炭素回収方法であって、二酸化炭素含有ガスを上記吸着板に接触させて二酸化炭素を上記吸着板に吸収させる二酸化炭素吸収工程と、上記吸着板を加熱して二酸化炭素を上記吸着板から放出させる二酸化炭素放出工程と、を行い、上記二酸化炭素吸収工程において、上記媒体流通管に冷却媒体を流通させることにより上記吸着板を冷却し、上記二酸化炭素放出工程において、上記媒体流通管に加熱媒体を流通させることにより上記吸着板を加熱する、ことを特徴とする。
【0102】
二酸化炭素吸収工程では、二酸化炭素含有ガスを吸着板に接触させて二酸化炭素を吸着板に吸収させる。
二酸化炭素(CO)含有ガス210が第1の構造体211に導入され、二酸化炭素が吸着・吸収された後、煙突213を通過して排出される。
二酸化炭素吸収工程では、第1の構造体211の媒体流通管に冷却媒体を流通させることにより第1の構造体211を冷却する。
第1の構造体211の媒体流通管に流通させる冷却媒体は、切り替えバルブ252を開にすることにより導入された冷却水235であってもよく、第1の構造体連結管261又は第2の構造体連結管262から媒体流通管に流入させた冷却媒体であってもよい。
【0103】
また、二酸化炭素吸収工程において、媒体流通管に流通させる冷却媒体の温度が10~50℃であることが好ましい。
冷却媒体の温度を上記範囲とすると、構造体の温度をアミン化合物による二酸化炭素の吸収により適した温度域に調節することができる。
【0104】
第1の構造体211において二酸化炭素(CO)の吸収率が減少してくると、切り替えバルブ240、241、250、251が操作され、二酸化炭素(CO)含有ガス210は、第2の構造体212に導入される。二酸化炭素(CO)含有ガス210は、二酸化炭素が吸着・吸収された後、煙突213を通過して排出される。
二酸化炭素吸収工程では、第2の構造体212の媒体流通管に冷却媒体を流通させることにより第2の構造体212を冷却する。
第2の構造体212の媒体流通管に流通させる冷却媒体は、切り替えバルブ253を開にすることにより導入された冷却水235であってもよく、第1の構造体連結管261又は第2の構造体連結管262から媒体流通管に流入させた冷却媒体であってもよい。
【0105】
第2の構造体212で二酸化炭素を吸収すると同時に、二酸化炭素が充分に吸着・吸収された第1の構造体211では二酸化炭素放出工程を行う。
二酸化炭素放出工程では、媒体流通管に加熱媒体を流通させることにより吸着板を加熱して二酸化炭素を吸着板から放出させる。
第1の構造体211の媒体流通管に流通させる加熱媒体は、切り替えバルブ244を開にすることにより導入された水蒸気ガス230であってもよく、第1の構造体連結管261又は第2の構造体連結管262から媒体流通管に流入させた加熱媒体であってもよい。
【0106】
また、二酸化炭素放出工程において、媒体流通管に流通させる加熱媒体の温度が60~220℃であることが好ましい。
加熱媒体の温度を上記範囲とすると、構造体の温度をアミン化合物による二酸化炭素の放出により適した温度域に調節することができる。
【0107】
吸着板から放出された二酸化炭素は、切り替えバルブ249を開にすることにより第1の構造体211に導入された二酸化炭素(CO)回収用ガス220とともに、ポンプ221に導入され、ポンプ221を出た後、二酸化炭素(CO)222として貯蔵され、発電機等で発生した二酸化炭素が回収されることとなる。
【0108】
第1の構造体211において、上記の二酸化炭素の回収操作が行われている間に、第2の構造体212の吸着板において、二酸化炭素が充分に吸着・吸収される。
すなわち、二酸化炭素吸収工程と二酸化炭素放出工程は同時に行われる。一方の構造体は二酸化炭素吸収工程が行われる構造体となり、他方の構造体は二酸化炭素放出工程が行われる構造体となる。
【0109】
各切り替えバルブを再び操作することにより、二酸化炭素(CO)含有ガス210及び冷却媒体が第1の構造体211に導入され、第1の構造体で二酸化炭素吸収工程が行われる。一方、第2の構造体212には加熱媒体及び二酸化炭素回収用ガスが導入され、二酸化炭素回収工程が行われる。
上記の二酸化炭素の吸着・吸収及び脱着・放出の操作を、第1の構造体211と第2の構造体212との間で交互に繰り返すことにより、二酸化炭素の回収を効率的に行うことができる。
【0110】
第1の構造体及び第2の構造体を備える二酸化炭素回収システムを用いた二酸化炭素回収方法における、構造体連結管を通じた冷却媒体と加熱媒体の流通について説明する。
下記に説明する二酸化炭素回収方法は、上記構造体を少なくとも2つ用いた二酸化炭素回収方法であって、上記二酸化炭素吸収工程において、一の上記構造体の上記媒体流通管に冷却媒体を流通させることにより上記一の構造体の上記吸着板を冷却しつつ二酸化炭素を上記吸着板に吸収させ、上記二酸化炭素放出工程において、他の上記構造体の上記媒体流通管に加熱媒体を流通させることにより上記他の構造体の上記吸着板を加熱して上記吸着板から二酸化炭素を放出させて回収する第一の二酸化炭素回収工程と、上記第一の二酸化炭素回収工程の後、上記一の構造体と上記他の構造体の役割を入れ替える切替工程と、上記二酸化炭素吸収工程において、上記他の構造体の上記媒体流通管に冷却媒体を流通させることにより上記他の構造体の上記吸着板を冷却しつつ二酸化炭素を上記吸着板に吸収させ、上記二酸化炭素放出工程において、上記一の構造体の上記媒体流通管に加熱媒体を流通させることにより上記一の構造体の上記吸着板を加熱して上記吸着板から二酸化炭素を放出させて回収する、第二の二酸化炭素回収工程と、を行う方法である。
【0111】
また、下記に説明する二酸化炭素回収方法において、上記第一の二酸化炭素回収工程では、上記一の構造体の上記媒体流通管に流入させた冷却媒体が加熱されて流出し、上記他の構造体の上記媒体流通管に加熱媒体として流入され、上記他の構造体の上記媒体流通管に流入させた加熱媒体が冷却されて流出し、上記一の構造体の上記媒体流通管に冷却媒体として流入されるように媒体を循環させ、かつ、上記第二の二酸化炭素回収工程では、上記他の構造体の上記媒体流通管に流入させた冷却媒体が加熱されて流出し、上記一の構造体の上記媒体流通管に加熱媒体として流入され、上記一の構造体の上記媒体流通管に流入させた加熱媒体が冷却されて流出し、上記他の構造体の上記媒体流通管に冷却媒体として流入されるように媒体を循環させる。
【0112】
図8A図8B及び図8Cは、構造体連結管を通じた冷却媒体と加熱媒体の流通形態の一例を示す模式図である。
これらの図面には第1の構造体211の媒体流通管の第1端部215及び第2端部216並びに第2の構造体212の媒体流通管の第3端部217及び第4端部218を示している。そして、第2端部216と第3端部217を連結する第1の構造体連結管261と、第1端部215と第4端部218を連結する第2の構造体連結管262とを示している。
第1の構造体連結管261と第2の構造体連結管262には冷却媒体又は加熱媒体を流通させるが、構造体連結管を流れる加熱媒体と冷却媒体を異なるハッチングで示している。
また、構造体連結管を流れる加熱媒体と冷却媒体の向きを、構造体連結管の形状に沿った矢印で示している。
【0113】
図8Aには、第1の構造体211で二酸化炭素吸収工程を行い、第2の構造体212で二酸化炭素放出工程を行う状態を示している。
この工程を第一の二酸化炭素回収工程とする。
第1の構造体211に二酸化炭素含有ガスが流入する。第2の構造体連結管262には冷却媒体が流通し、第1の構造体211の媒体流通管の第1端部215から冷却媒体が第1の構造体211の媒体流通管に流入する。
第1の構造体211の媒体流通管に流入した冷却媒体が第1の構造体211の吸着板を冷却する。冷却媒体は第1の構造体211で加熱されて第1の構造体211の媒体流通管の第2端部216から第1の構造体連結管261に流出する。
【0114】
第1の構造体連結管261に流出した媒体は、第1の構造体211で加熱されているので加熱媒体となる。そして、第1の構造体連結管261を流通し、第2の構造体212の媒体流通管の第3端部217から加熱媒体として第2の構造体212の媒体流通管に流入する。
第2の構造体212の媒体流通管に流入した加熱媒体が第2の構造体212の吸着板を加熱する。この加熱により第2の構造体212の吸着板から二酸化炭素が放出される。加熱媒体は第2の構造体212で冷却されて第2の構造体212の媒体流通管の第4端部218から第2の構造体連結管262に流出する。
第2の構造体連結管262に流出した媒体は第2の構造体212で冷却されているので冷却媒体となり、再び第2の構造体連結管262を流通して第1の構造体211の媒体流通管の第1端部215から冷却媒体として第1の構造体211の媒体流通管に流入する。
【0115】
図8B及び図8Cには、第1の構造体211で二酸化炭素放出工程を行い、第2の構造体212で二酸化炭素吸収工程を行う状態を示している。
この工程を第二の二酸化炭素回収工程とする。
図8Aに示す第一の二酸化炭素回収工程の後、第1の構造体211と第2の構造体212の役割を入れ替える切替工程を行う。
【0116】
図8Bには、第1の構造体と第2の構造体の間を循環する媒体の流れる向きを逆転させることにより、第1の構造体と第2の構造体の役割を入れ替えた状態を示している。
図8Aに示す状態と同様に、第1の構造体連結管261には加熱媒体が流れ、第2の構造体連結管262には冷却媒体が流れる。
図8Aに示す第一の二酸化炭素回収工程に対して、図8Bに示す第二の二酸化炭素回収工程では加熱媒体及び冷却媒体の流れる向きが反対になっている。
【0117】
第二の二酸化炭素回収工程では、第2の構造体212に二酸化炭素含有ガスが流入する。第2の構造体連結管262には冷却媒体が流通し、第2の構造体212の媒体流通管の第4端部218から冷却媒体が第2の構造体212の媒体流通管に流入する。
第2の構造体212の媒体流通管に流入した冷却媒体が第2の構造体212の吸着板を冷却する。冷却媒体は第2の構造体212で加熱されて第2の構造体212の媒体流通管の第3端部217から第1の構造体連結管261に流出する。
【0118】
第1の構造体連結管261に流出した媒体は、第2の構造体212で加熱されているので加熱媒体となる。そして、第1の構造体連結管261を流通し、第1の構造体211の媒体流通管の第2端部216から加熱媒体として第1の構造体211の媒体流通管に流入する。
第1の構造体211の媒体流通管に流入した加熱媒体が第1の構造体211の吸着板を加熱する。この加熱により第1の構造体211の吸着板から二酸化炭素が放出される。加熱媒体は第1の構造体211で冷却されて第1の構造体211の媒体流通管の第1端部215から第2の構造体連結管262に流出する。
第2の構造体連結管262に流出した媒体は第1の構造体211で冷却されているので冷却媒体となり、再び第2の構造体連結管262を流通して第2の構造体212の媒体流通管の第4端部218から冷却媒体として第2の構造体212の媒体流通管に流入する。
【0119】
図8Cには、第1の構造体と第2の構造体の間を循環する媒体の種類を変えることにより、第1の構造体と第2の構造体の役割を入れ替えた状態を示している。
図8A及び図8Bに示す状態とは異なり、第1の構造体連結管261には冷却媒体が流れ、第2の構造体連結管262には加熱媒体が流れる。
図8Aに示す第一の二酸化炭素回収工程に対して、図8Cに示す第二の二酸化炭素回収工程では第1の構造体連結管及び第2の構造体連結管のそれぞれを流れる媒体の流れる向きは同じになっている。
【0120】
第二の二酸化炭素回収工程では、第2の構造体212に二酸化炭素含有ガスが流入する。第1の構造体連結管261には冷却媒体が流通し、第2の構造体212の媒体流通管の第3端部217から冷却媒体が第2の構造体212の媒体流通管に流入する。
第2の構造体212の媒体流通管に流入した冷却媒体が第2の構造体212の吸着板を冷却する。冷却媒体は第2の構造体212で加熱されて第2の構造体212の媒体流通管の第4端部218から第2の構造体連結管262に流出する。
【0121】
第2の構造体連結管262に流出した媒体は、第2の構造体212で加熱されているので加熱媒体となる。そして、第2の構造体連結管262を流通し、第1の構造体211の媒体流通管の第1端部215から加熱媒体として第1の構造体211の媒体流通管に流入する。
第1の構造体211の媒体流通管に流入した加熱媒体が第1の構造体211の吸着板を加熱する。この加熱により第1の構造体211の吸着板から二酸化炭素が放出される。加熱媒体は第1の構造体211で冷却されて第1の構造体211の媒体流通管の第2端部216から第1の構造体連結管261に流出する。
第1の構造体連結管261に流出した媒体は第1の構造体211で冷却されているので冷却媒体となり、再び第1の構造体連結管261を流通して第2の構造体212の媒体流通管の第3端部217から冷却媒体として第2の構造体212の媒体流通管に流入する。
【0122】
上記の方法により媒体を循環させるようにすると、同じ媒体を繰り返し使用することができるので、外部からの媒体の補充を行う必要がない。また、当該媒体の持つ熱を再利用することができるため、構造体の加熱及び冷却を効率よく行うことができる。また、第1の構造体連結管261及び第2の構造体連結管262の途中にバッファータンクを設置して、媒体の流量を調整してもよい。
【0123】
構造体連結管に流通させる加熱媒体の温度が吸着板を加熱するために充分に高くない場合は、加熱機構により加熱媒体を加熱してもよい。
また、構造体連結管に流通させる冷却媒体の温度が吸着板を冷却するために充分に低くない場合は、冷却機構により冷却媒体を冷却してもよい。
【0124】
また、二酸化炭素吸収工程において媒体流通管に流通させた冷却媒体が吸着板から回収した熱を蓄熱し、二酸化炭素放出工程において、媒体流通管に流通させる加熱媒体を加熱する熱源として利用することが好ましい。
上記のように熱を蓄熱し、蓄熱した熱を熱源として利用して加熱媒体を加熱するようにすると、二酸化炭素回収方法全体において熱を効率よく使用することができる。
熱を蓄熱する機能を有する蓄熱部材を、構造体連結管などの媒体が流通する経路に設置しておくことにより、構造体の冷却時に放出させた熱を蓄熱し、構造体の加熱時には蓄熱した熱を放出させることができる。
【0125】
また、二酸化炭素回収方法においては、構造体に流入させる前の二酸化炭素含有ガスから熱を回収する熱交換器をさらに用いてもよく、熱交換器で回収した熱を、二酸化炭素放出工程において、媒体流通管に流通させる加熱媒体を加熱する熱源として利用することが好ましい。
【0126】
構造体に流入させる前の二酸化炭素含有ガスは、工場などの排ガスであることが典型的であり、比較的高温のガスであることが多い。一方、二酸化炭素の吸収を行う構造体に二酸化炭素含有ガスを流入させる際には二酸化炭素含有ガスの温度が高すぎないことが好ましい。そのため、構造体に流入させる前の二酸化炭素含有ガスの熱を熱交換器により回収して二酸化炭素含有ガスの温度を低下させる。そして、熱交換器で回収した熱を、媒体流通管に流通する加熱媒体を加熱するための熱として使用すると、二酸化炭素の回収に必要な熱量がさらに低減された二酸化炭素回収方法とすることができる。
【0127】
また、二酸化炭素回収方法においては、二酸化炭素放出工程において使用した加熱媒体を、二酸化炭素回収システム以外の用途の熱源として利用してもよい。
また、二酸化炭素回収システム以外の用途は、植物工場、メタン発酵又はヒーターであることが好ましい。
【0128】
二酸化炭素放出工程において使用した加熱媒体の温度が、吸着板から二酸化炭素を放出させることができるほどには高くない場合、二酸化炭素回収システムの中で使用する熱源としての使用は難しいが、他の用途であれば熱源として使用できる場合がある。そのため、植物工場、メタン発酵又はヒーター等の他の用途の熱源として使用することによって、他の用途も含めた熱の利用効率を向上させることができる。
【0129】
これまで、本発明の二酸化炭素回収システムとして構造体を2つ使用する二酸化炭素回収システムについて説明したが、構造体の数が1つであってもよい。
本発明の第2の態様に係る二酸化炭素回収システムは、アミン化合物が担持された板からなり、二酸化炭素の吸脱着を行う吸着板と、上記吸着板を加熱する加熱媒体又は上記吸着板を冷却する冷却媒体が流通する媒体流通管と、を有する構造体と、上記構造体の上記媒体流通管に連結された配管であり、上記媒体流通管に加熱媒体を流入させる加熱媒体導入管と、上記構造体の上記媒体流通管に連結された配管であり、上記媒体流通管に冷却媒体を流入させる冷却媒体導入管と、を備え、上記吸着板に二酸化炭素を吸収させる際には上記冷却媒体導入管から冷却媒体を上記媒体流通管に流入させ、上記吸着板から二酸化炭素を放出させる際には上記加熱媒体導入管から加熱媒体を上記媒体流通管に流入させる、ことを特徴とする。
【0130】
第2の態様に係る二酸化炭素回収システムは、アミン化合物が担持された吸着板を有する構造体を1つ備える。
構造体としては第1の態様に係る二酸化炭素回収システムで使用する構造体と同様のものを使用することができる。
【0131】
第2の態様に係る二酸化炭素回収システムは、アミン化合物が担持された吸着板を有する構造体を備える。構造体の媒体流通管には、加熱媒体導入管から加熱媒体を流入させることができる。また、構造体の媒体流通管には、冷却媒体導入管から冷却媒体を流入させることができる。
二酸化炭素の吸収の際には、構造体の温度が高くなり過ぎないことが好ましいので、冷却媒体導入管から冷却媒体を構造体の媒体流通管に流入させ、二酸化炭素の吸収を行う構造体の吸着板を冷却する。
一方、二酸化炭素の放出の際には、構造体の温度を高くする必要があるので、加熱媒体導入管から加熱媒体を構造体の媒体流通管に流入させ、二酸化炭素の放出を行う構造体の吸着板を加熱して二酸化炭素の放出を行う。
二酸化炭素の吸収を行う場合と二酸化炭素の放出を行う場合で構造体に流入させる媒体を異ならせることで、構造体の温度を二酸化炭素の吸収と放出のそれぞれに対して適した温度に保つことができる。そして、二酸化炭素の吸収の際に冷却媒体を使用して構造体を冷却することによって、二酸化炭素の吸収時の発熱反応による構造体の温度上昇を抑制して、アミン化合物の蒸発を防ぎ、二酸化炭素の吸収/放出量の減少を防止することができる。
【0132】
以下に、本発明の第2の態様に係る二酸化炭素回収システム及び二酸化炭素回収方法について図面を参照して説明する。
図9は、1つの構造体を備えた二酸化炭素回収システムの一例を模式的に示す説明図である。
なお、下記の説明において言及しない構成については図7に示す二酸化炭素回収システムと同様の構成とすることができる。
二酸化炭素回収システム201は、構造体211を1つ備えている。
図示していないが、この二酸化炭素回収システム201に備え付けられた構造体211は、アミン化合物が担持された板からなり、二酸化炭素の吸脱着を行う吸着板と、吸着板を加熱する加熱媒体又は吸着板を冷却する冷却媒体が流通する媒体流通管とを有する。
【0133】
二酸化炭素回収システム201は、構造体211の媒体流通管に連結された配管であり、媒体流通管に加熱媒体を流入させる加熱媒体導入管271と、構造体211の媒体流通管に連結された配管であり、媒体流通管に冷却媒体を流入させる冷却媒体導入管272と、を備えている。
加熱媒体導入管271は切り替えバルブ244を、冷却媒体導入管272は切り替えバルブ252をそれぞれ備えており、切り替えバルブ244、252を切り替えることにより構造体211の媒体流通管に加熱媒体又は冷却媒体を択一的に導入できるようになっている。
【0134】
加熱媒体導入管271には加熱媒体としての水蒸気ガス230を流通させる。
冷却媒体導入管272には冷却媒体としての冷却水235を流通させる。
【0135】
構造体211の吸着板に二酸化炭素を吸収させる際には冷却媒体導入管272から冷却媒体を媒体流通管に流入させる。
冷却媒体としての水を含む冷却水235が通過する配管は、切り替えバルブ252及び247を備えており、冷却水235は、構造体211の媒体流通管に導入され、熱交換器231を経て、排水236として排出される。
【0136】
構造体211の吸着板に二酸化炭素を吸収させる際に冷却媒体により構造体211を冷却することによって構造体の温度を低くすることにより、二酸化炭素の吸収時の発熱反応による構造体の温度上昇を抑制して、アミン化合物の蒸発を防ぎ、二酸化炭素の吸収/放出量の減少を防止することができる。
【0137】
構造体211の吸着板から二酸化炭素を放出させる際には加熱媒体導入管271から加熱媒体を媒体流通管に流入させる。
加熱媒体としての水蒸気ガス230が通過する配管は、切り替えバルブ244及び247を備えており、水蒸気ガス230は、構造体211の媒体流通管に導入され、熱交換器231を経て、排気ガス232として排出される。
【0138】
構造体211の吸着板から二酸化炭素を放出させる際に加熱媒体により構造体を加熱することによって構造体の温度を高くして、アミン化合物に吸収させた二酸化炭素を放出させる。
【0139】
第2の態様に係る二酸化炭素回収システムは、加熱媒体導入管に流通させる加熱媒体を加熱する加熱機構をさらに備えていてもよく、冷却媒体導入管に流通させる冷却媒体を冷却する冷却機構をさらに備えていてもよい。
図10は、加熱/冷却機構を備えた二酸化炭素回収システムの一例を模式的に示す説明図である。
なお、下記の説明において言及しない構成については図9に示す二酸化炭素回収システムと同様の構成とすることができる。
【0140】
図10に示す二酸化炭素回収システム202では、構造体211の媒体流通管に連結された配管であり、媒体流通管に加熱媒体を流入させる加熱媒体導入管271と、媒体流通管に冷却媒体を流入させる冷却媒体導入管272とは同じ配管である。
加熱媒体導入管271及び冷却媒体導入管272となる配管の上流側に加熱/冷却機構273が設けられている。加熱/冷却機構273には媒体237としての水又は水蒸気が導入される。
【0141】
構造体211の吸着板に二酸化炭素を吸収させる際に媒体流通管に冷却媒体を流通させる場合は加熱/冷却機構273を冷却機構として使用して媒体237を冷却し、冷却媒体を媒体流通管に流入させる。この場合、媒体流通管に連結された配管は冷却媒体導入管272として機能する。
【0142】
構造体211の吸着板から二酸化炭素を放出させる際に媒体流通管に加熱媒体を流通させる場合は加熱/冷却機構273を加熱機構として使用して媒体237を加熱し、加熱媒体を媒体流通管に流入させる。この場合、媒体流通管に連結された配管は加熱媒体導入管271として機能する。
【0143】
上記に説明した通り、加熱/冷却機構を使用することによって媒体流通管に冷却媒体及び加熱媒体を択一的に流通させることができる。
なお、上記の説明では加熱/冷却機構として加熱機構と冷却機構を共に備える構成として説明したが、加熱機構と冷却機構のうちのいずれか一方のみを設けてもよい。
例えば、媒体237を水とし、加熱機構だけを設けておき、冷却媒体を流通させる際には水をそのまま冷却媒体として媒体流通管に流通させるようにする。一方、加熱媒体を流通させる際には加熱機構で水を加熱して水蒸気として、加熱媒体としての水蒸気を媒体流通管に流通させるようにすることができる。
反対に、媒体237を水蒸気とし、冷却機構だけを設けておき、加熱媒体を流通させる際には水蒸気をそのまま加熱媒体として媒体流通管に流通させるようにする。一方、冷却媒体を流通させる際には冷却機構で水蒸気を冷却して水として、冷却媒体としての水を媒体流通管に流通させるようにする。
【0144】
また、構造体に流入させる前の二酸化炭素含有ガスから熱を回収する熱交換器を備え、熱交換器で回収した熱を、加熱媒体を加熱するための熱として使用するようにしてもよい。熱交換器としては、構造体に流入させる前の二酸化炭素含有ガスから熱を回収する熱交換器として既に説明したものを使用することができる。
【符号の説明】
【0145】
10 吸着板
11 板
12 ガス流通路
13 アミン含有層
20 媒体流通管
100、101 構造体
200、201、202 二酸化炭素回収システム
210 二酸化炭素(CO)含有ガス
211 第1の構造体(構造体)
212 第2の構造体
213 煙突
214、232 排気ガス
215 第1の構造体の媒体流通管の第1端部
216 第1の構造体の媒体流通管の第2端部
217 第2の構造体の媒体流通管の第3端部
218 第2の構造体の媒体流通管の第4端部
220 二酸化炭素(CO)回収用ガス
221 ポンプ
222 二酸化炭素(CO
230 水蒸気ガス
231 熱交換器
233 ガス
234 水蒸気余熱用ガス
235 冷却水
236 排水
237 媒体
240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253 切り替えバルブ
261 第1の構造体連結管
262 第2の構造体連結管
263、264、273 加熱/冷却機構
271 加熱媒体導入管
272 冷却媒体導入管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10