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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131735
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】エアバッグ取付構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/205 20110101AFI20230914BHJP
   B60R 21/215 20110101ALI20230914BHJP
【FI】
B60R21/205
B60R21/215
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036645
(22)【出願日】2022-03-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】マレリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋介
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA03
3D054AA07
3D054AA14
3D054BB09
3D054BB17
3D054DD07
3D054FF17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】インストルメントパネルの表面に開裂線が浮き上がることがないエアバッグ取付構造を提供する。
【解決手段】一端部がインストルメントパネル2の開裂線に沿うようにインストルメントパネル2の裏面に溶着され、エアバッグ4aが展開することにより扉部が開く。扉部40には、扉部40の内側から外側に、扉部40のヒンジ部30側から一端部41側へと鋭角の傾斜をもって貫通する貫通孔45を有し、フラップ60は、その先端部に、貫通孔45に挿入される凸部62を有し、フラップ60は、凸部62が貫通孔45に挿入された状態で、インストルメントパネル2の裏面と凸部62との間に隙間が形成され、フラップ60の先端部であって凸部62が形成されていない箇所と扉部40の内側との間に隙間が形成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグをインストルメントパネルに取り付けるエアバッグ取付構造であって、
少なくとも一端部が前記インストルメントパネルの開裂線に沿うように前記インストルメントパネルの裏面に溶着され、前記エアバッグが展開することにより開く扉部と、
前記エアバッグが展開すると前記扉部が開いて開状態になる開口部を有し、前記エアバッグを収容するエアバッグケースが取り付けられる取付部と、
前記取付部に接続され、前記扉部を回動可能に保持するヒンジ部と、
前記エアバッグと前記ヒンジ部との間に介在し、前記エアバッグの展開時に前記エアバッグによって付勢されて前記扉部と共に回動するフラップと、
を備え、
前記扉部には、前記扉部の内側から外側に、前記扉部の前記ヒンジ部側から前記一端部側へと鋭角の傾斜をもって貫通する貫通孔を有し、
前記フラップは、その先端部に、前記貫通孔に挿入される凸部を有し、
前記フラップは、前記凸部が前記貫通孔に挿入された状態で、前記インストルメントパネルの裏面と前記凸部の間に隙間が形成され、前記フラップの先端部であって前記凸部が形成されていない箇所と前記扉部の内側との間に隙間が形成される、
ことを特徴とするエアバッグ取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載のエアバッグ取付構造であって、
前記凸部は、前記エアバッグが展開して前記扉部により前記開裂線が開裂するときに、前記貫通孔から外れる、
ことを特徴とするエアバッグ取付構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエアバッグ取付構造であって、
前記凸部及び前記貫通孔の少なくとも一方に、前記凸部の厚さ方向で他方に接触するリブが設けられる、
ことを特徴とするエアバッグ取付構造。
【請求項4】
請求項3に記載のエアバッグ取付構造であって、
前記リブは、前記凸部に形成され、
前記リブは、前記貫通孔の内側に接触する第1のリブと、前記第1のリブよりも前記貫通孔の幅方向の端部に設けられて前記貫通孔に接触する第2のリブと、を有する、
ことを特徴とするエアバッグ取付構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載のエアバッグ取付構造であって、
前記フラップは、
前記エアバッグの展開時に、接続箇所を中心として揺動し、
前記接続箇所から前記凸部の先端までが、直線状に形成される、
ことを特徴とするエアバッグ取付構造。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載のエアバッグ取付構造であって、
前記貫通孔は、前記扉部の肉厚が薄い薄肉部を有し、前記薄肉部により、前記扉部の内側から外側に向かうにつれて前記貫通孔の開口面積が小さくなる、
ことを特徴とするエアバッグ取付構造。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一つに記載のエアバッグ取付構造であって、
前記凸部の側面には、前記フラップにおける前記エアバッグに臨む面とは反対側の面側寄りにパーティングラインが形成される、
ことを特徴とするエアバッグ取付構造。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一つに記載のエアバッグ取付構造であって、
前記エアバッグと前記扉部との間の展開通路が狭まるように前記取付部から突出し、前記エアバッグが展開するのをガイドするガイド部を更に備え、
前記フラップは、前記ガイド部に接続され、
前記ガイド部は、前記フラップと比較して剛性が高い、
ことを特徴とするエアバッグ取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、支持フレームにヒンジを介して接続される扉部と、扉部とエアバッグとの間に設けられエアバッグの展開時にヒンジを保護するディフレクタ(フラップ)と、を備える車両安全装置が開示されている。この車両安全装置では、エアバッグのインフレータが作動すると、エアバッグが扉部の下方の空間で膨張することによる圧力によってインストルメントパネルに形成されている開裂線が裂け、扉部がヒンジを中心に外側に回転する。これにより、エアバッグが乗員に向かって膨出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第9156428号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の車両安全装置では、フラップの端部に設けられたリブを、扉部の裏側に設けられた溝に係合させることでフラップが位置決めされる。このような構造では、例えば製造時の誤差によりフラップが設計寸法よりも大きく形成された状態でリブが溝に係合する場合がある。このような場合には、フラップが扉部を押し上げる方向に力を与え、扉部の外側にあるインストルメントパネルの表面に開裂線の輪郭が浮き上がるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、フラップが扉部を押し上げるような力の発生を抑制して、インストルメントパネルの表面に開裂線が浮き上がることがないエアバッグ取付構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、エアバッグをインストルメントパネルに取り付けるエアバッグ取付構造であって、少なくとも一端部がインストルメントパネルの開裂線に沿うようにインストルメントパネルの裏面に溶着され、エアバッグが展開することにより開く扉部と、エアバッグが展開すると扉部が開いて開状態になる開口部を有し、エアバッグを収容するエアバッグケースが取り付けられる取付部と、取付部に接続され、扉部を回動可能に保持するヒンジ部と、エアバッグとヒンジ部との間に介在し、エアバッグの展開時にエアバッグによって付勢されて扉部と共に回動するフラップと、を備え、扉部には、扉部の内側から外側に、扉部のヒンジ部側から一端部側へと鋭角の傾斜をもって貫通する貫通孔を有し、フラップは、その先端部に、貫通孔に挿入される凸部を有し、フラップは、凸部が貫通孔に挿入された状態で、インストルメントパネルの裏面と凸部との間に隙間が形成され、フラップの先端部であって凸部が形成されていない箇所と扉部の内側との間に隙間が形成される。
【発明の効果】
【0007】
上記態様では、フラップの先端に凸部を設け、鋭角の傾斜を持って貫通する貫通孔に凸部が挿入され、凸部とインストルメントパネルとの間に隙間が形成され、フラップの凸部以外の箇所と扉部との間に隙間が形成される構成とした。このような構成により、フラップの凸部が貫通孔に対して鋭角の傾斜方向に自在に扉部に対して移動可能とすることができると共に、製造時の誤差等によりフラップが設計寸法よりも大きく形成された場合にも扉部を外側に押す力は発生しない。従って、扉部がフラップに押されることがなく、インストルメントパネルに開裂線が浮き出ることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態に係るエアバッグ取付構造が適用されるインストルメントパネルの斜視図である。
図2図2は、エアバッグ取付構造をインストルメントパネルの裏面から見た図である。
図3図3は、図2のIII-III断面に相当する図であり、エアバッグ取付構造について説明する断面図である。
図4図4は、図2のIV-IV断面に相当する図であり、エアバッグ取付構造について説明する断面図である。
図5図5は、エアバッグ取付構造について説明する背面からの斜視図である。
図6図6は、図5のエアバッグ取付構造からガイド部及びフラップを取り外した状態を示す斜視図である。
図7図7は、ガイド部及びフラップを表面から見た斜視図である。
図8図8は、ガイド部及びフラップを裏面から見た斜視図である。
図9図9は、凸部の表面の拡大図である。
図10図10は、凸部の裏面の拡大図である。
図11図11は、凸部が貫通孔に嵌装された状態の扉部の断面図である。
図12図12は、エアバッグの展開途中の状態を説明する断面図である。
図13図13は、エアバッグの展開途中の状態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態に係るエアバッグ取付構造10について説明する。
【0010】
まず、図1図2及び図3を参照して、エアバッグ取付構造10が適用される自動車等の車両1のインストルメントパネル2について説明する。図1は、インストルメントパネル2の斜視図である。図2は、図1におけるエアバッグ取付構造10をインストルメントパネル2の裏面から見た図である。図3は、図2のIII-III断面に相当する図であり、エアバッグ取付構造10について説明する断面図である。
【0011】
図1に示すように、インストルメントパネル2は、車両1の車室内の前部に設けられる。車両1は、エアバッグ装置3を備える。
【0012】
エアバッグ装置3は、車両1の衝突時等の緊急時に乗員を保護するための安全装置である。エアバッグ装置3は、インストルメントパネル2の助手席側の部分に設けられ、助手席乗員を保護する。エアバッグ装置3は、エアバッグモジュール4(図3参照)と、エアバッグ取付構造10と、を備える。
【0013】
エアバッグ装置3には、例えば、運転席用のエアバッグ、助手席用のエアバッグ、サイドエアバッグ、カーテンエアバッグ等がある。本実施形態では、エアバッグ装置3は、助手席用のエアバッグである。
【0014】
図3に示すように、エアバッグモジュール4は、エアバッグ4aと、エアバッグケース4bと、複数のフック4cと、インフレータ4dと、を有する。
【0015】
エアバッグ4aは、袋状に形成され、折り畳まれてエアバッグケース4bに収納される。エアバッグ4aは、緊急時に展開されて膨張する。複数のフック4cは、エアバッグケース4bをインストルメントパネル2に固定する。インフレータ4dは、エアバッグ4aを展開させ膨張させるためのガスを発生させる。
【0016】
図1に示すように、エアバッグ取付構造10は、インストルメントパネル2の助手席側の裏面に設けられる。エアバッグ取付構造10は、インストルメントパネル2と一体に設けられる一体型や、インストルメントパネル2と別体に設けられてインストルメントパネル2に取り付けられる別体型等がある。本実施形態では、エアバッグ取付構造10は一体型であり、インストルメントパネル2の一部を構成する。
【0017】
インストルメントパネル2は、通常時にエアバッグモジュール4を表面から覆い隠す。インストルメントパネル2は、その裏面に開裂線6を有する。インストルメントパネル2は、緊急時には、展開されて膨張するエアバッグ4aの押圧力によって開裂線6から開裂し、エアバッグ4aを車室内へ膨出させる開口部を形成する。
【0018】
開裂線6は、インストルメントパネル2の裏面から凹状に形成されインストルメントパネル2の表面に達しない溝形状である。開裂線6は、略車幅方向に延びる横開裂線部6aと、横開裂線部6aの両端部から略車両前後方向に延びる左右の縦開裂線部6bと、を有する略H字状に設けられる。本実施形態では、開裂線6は、縦開裂線部6bの両端部間を各々連結する一対の横開裂線部6cをさらに有する。インストルメントパネル2には、開口部を形成可能な一対の開閉部7が、開裂線6によって画成される。なお、横開裂線部6aは、略H字状の開裂線6において、最初に開裂させるべき位置である。これら開裂線6は、インストルメントパネル2の裏面側のみに形成され、表側からは観察できない。
【0019】
次に、図4から図6をあわせて参照して、エアバッグ取付構造10について説明する。図4は、図2におけるIV-IV断面のインストルメントパネル2付近の拡大図である。図5は、エアバッグ取付構造10について説明する背面からの斜視図である。図6は、図5のエアバッグ取付構造10からガイド部50及びフラップ60を取り外した状態を示す斜視図である。
【0020】
図3に示すように、エアバッグ取付構造10は、エアバッグ4aをインストルメントパネル2に取り付けるものである。エアバッグ取付構造10は、取付部20と、一対のヒンジ部30と、一対の扉部40と、ガイド部50と、フラップ60と、を有する。
【0021】
取付部20は、樹脂材料によって成形される。取付部20は、エアバッグ4aが展開すると扉部40が開いて開状態になる開口部20aを有する。取付部20には、エアバッグ4aを収容するエアバッグケース4bがフック4cを介して取り付けられる。取付部20は、本体部21と、フランジ部22と、取付孔23と、複数の補強リブ24(図5及び図6参照)と、を有する。
【0022】
図5及び図6に示すように、本体部21は、略矩形の筒状に形成される。図3に示すように、本体部21の一端部21aには、開口部20aが形成される。本体部21の他端部21bには、エアバッグモジュール4が取り付けられる。
【0023】
フランジ部22は、本体部21の一端部21aの外周に、全周にわたって形成される。図3に示すように、フランジ部22は、インストルメントパネル2の裏面に当接するように取り付けられる。フランジ部22は、インストルメントパネル2の裏面に溶着され、インストルメントパネル2を補強している。
【0024】
取付孔23は、本体部21を厚さ方向に貫通する。取付孔23には、エアバッグモジュール4のフック4cが、本体部21の内側から外側に突出するように係合する。これにより、取付部20にエアバッグモジュール4が取り付けられる。
【0025】
図5及び図6に示すように、補強リブ24は、互いに間隔をあけてフランジ部22の外周に複数設けられる。補強リブ24は、本体部21とフランジ部22とを連結して補強する。
【0026】
図3に示すように、ヒンジ部30は、各々の扉部40を回動可能に保持するように一対設けられる。ヒンジ部30は、扉部40及び取付部20と一体に成形される。ヒンジ部30は、略U字状の断面を有するように開口部20aの内側に突出して形成される。ヒンジ部30は、エアバッグ4aが展開して扉部40が開くときに、略U字状の断面の部分が開口部20aから外部に向かって伸長しながら、取付部20との接続箇所を起点に回転する。
【0027】
なお、以降は、扉部40、エアバッグ4a、及び取付部20で囲まれる空間を「展開通路8」と称する。
【0028】
展開通路8内に設けられるエアバッグ4aは、一方のヒンジ部30との距離よりも他方のヒンジ部30との距離が大きくなるように傾斜して取付部20に取り付けられる。つまり、エアバッグ4aは、展開する方向が扉部40に対して垂直ではなく傾斜した状態で取付部20に取り付けられる。
【0029】
扉部40は、取付部20及びヒンジ部30と一体に成形される。扉部40は、一端部41がインストルメントパネル2の横開裂線部6aに沿うように設けられる。即ち、扉部40は、少なくとも一端部41がインストルメントパネル2の開裂線6に沿うように設けられる。扉部40は、一端部41の両端の側端部が各々インストルメントパネル2の縦開裂線部6bに沿うように設けられる。扉部40は、インストルメントパネル2の裏面に当接するように取り付けられる。より具体的には、扉部40の外側には、外側に起立する振動溶着リブ40bが複数形成されており、振動溶着リブ40bの先端部とインストルメントパネル2の裏面とが振動溶着によって接合されている。
【0030】
扉部40は、互いの自由端部である一端部41が横開裂線部6aの内側にて対向するように一対設けられる。扉部40は、エアバッグ4aが展開することにより、ヒンジ部30を中心として一端部41が回動するように開く。扉部40は、フラップ60の先端に形成される凸部62が係合する貫通孔45が複数形成される。
【0031】
貫通孔45は、図6に示すように、ヒンジ部30における回転軸の軸方向(ヒンジ部30が延在する延在方向ともいい、車両1の助手席前に搭載された状態では車両1の幅方向である)に沿って三つ形成される。図3に示すように、貫通孔45には、エアバッグ4aが収納されている状態、すなわちエアバッグ4aが展開する前の状態で、フラップ60の先端部61に形成される凸部62が挿入される。
【0032】
ガイド部50は、取付部20の本体部21から展開通路8に突出するように設けられる。ガイド部50は、展開通路8の容積を小さくしつつ、エアバッグ4aが展開するのをガイドする。ガイド部50は、樹脂材料によって成形される。
【0033】
なお、ガイド部50は、フラップ60と比較して剛性が高く形成される。ここで、剛性とは、エアバッグ4aが展開して膨張し、展開通路8内の圧力が上昇したときの変形のしにくさ(変形量の小ささ)である。即ち、展開通路8内でエアバッグ4aの内圧が上昇した状態で、エアバッグ4aがガイド部50及びフラップ60と接触したときに、ガイド部50はフラップ60と比較して変形しにくい(変形量が小さい)ように形成される。より具体的には、ガイド部50は、展開通路8に臨まない裏面に補強リブ56を有する(図7参照)。これにより、ガイド部50は、フラップ60と比較して剛性が高く構成される。
【0034】
フラップ60は、ガイド部50の接続箇所54に接続されて扉部40に向かって延在する。フラップ60は、ガイド部50の接続箇所54から展開通路8に直線状に延設し、エアバッグ4aとヒンジ部30との間に介在する。フラップ60は、その扉部40側の先端部61に、フラップ60の延在方向に従って直線状に三つの凸部62(図7参照)が延設する。
【0035】
フラップ60は、エアバッグ4aの展開時にエアバッグ4aによって付勢されて撓み、エアバッグ4aが展開されると接続箇所54を中心として扉部40と共に回動する。エアバッグ4aとヒンジ部30との間にフラップ60が設けられることで、エアバッグ4aが展開する際に、エアバッグ4aの膨張による圧力を一対の扉部40の間(横開裂線部6a)に集中させ、また、エアバッグ4aがヒンジ部30の回転軸に直接接触するのを防止することでヒンジ部30の損傷を防止できる。
【0036】
なお、フラップ60は、ガイド部50と一体に成形される。これに代えて、ガイド部50とフラップ60とを別体に形成して組み立ててもよい。この場合、ガイド部50とフラップ60とを異なる材料で成形したり、異なる厚さにしたりすることで、ガイド部50の剛性をフラップ60と比較して高くしてもよい。
【0037】
次に、図7及び図8を併せて参照して、扉部40とフラップ60との接続構造を説明する。
【0038】
図7は、ガイド部50及びフラップ60を本体部21に接する側から見た斜視図である。図8は、ガイド部50及びフラップ60を展開通路8側から見た斜視図である。
【0039】
図7に示すように、ガイド部50には接続箇所54から平板状に直線的に延びるフラップ60が延設する。フラップ60の先端部61には、三つの凸部62が、フラップ60の延設方向に、先端部61からさらに突説して形成される。なお、ガイド部50は、展開通路8に臨まない裏面に格子状の補強リブ56を有する。
【0040】
図3に示すように、扉部40には、扉部40の内側から外側に、扉部40のヒンジ部30側から一端部41側へと傾斜をもって貫通する貫通孔45が形成される。貫通孔45の傾斜方向は、ガイド部50が本体部21に取り付けられた状態でガイド部50から延設するフラップ60における凸部62の延設方向と略同一方向に設定される。すなわち、貫通孔45は、扉部40の裏面に対して、90度以下の鋭角に傾斜して形成される。
【0041】
このような構成により、ガイド部50を本体部21に固定した状態で、フラップ60の先端部61から突設された凸部62が、扉部40に形成された貫通孔45にそれぞれ挿入される。
【0042】
ここで、凸部62は、その先端(先端部61から最も離間する側の端部)が、扉部40を貫通して形成される貫通孔45の表側に達しない位置、すなわち、インストルメントパネル2の裏面に接しない位置、となるように配置される。また、図4に示すように、三つの凸部62以外のフラップ60の先端部61は、扉部40の裏面には接しない。すなわち、凸部62の先端とインストルメントパネル2の裏面と間に間隙が形成され、凸部62以外のフラップ60の先端部61と扉部40の裏面との間に間隙が形成される。
【0043】
従って、フラップ60の先端部61において、凸部62が扉部40の貫通孔45に接触するのみで、先端部61のその他の箇所では、扉部40には接しない。
【0044】
このような構成により、フラップ60は、その凸部62がフラップ60の延伸方向で貫通孔45に挿入されて、扉部40に保持される。
【0045】
ここで、従来、フラップ60を扉部40に固定する方法として、フラップ60の先端部61に設けたリブを、扉部40の裏側に設けた溝に係合させることでフラップ60を位置決めしていた。このような構造では、例えば製造時の誤差によりフラップ60が設計寸法よりも大きく形成された状態でリブが溝に係合する場合がある。このような場合には、フラップ60が扉部40を押し上げる方向に力を与え、扉部40が、その外側に固定されたインストルメントパネル2を押し上げることで、インストルメントパネル2の表面に開裂線6の輪郭が浮き上がるおそれがあった。
【0046】
これに対して本願発明のフラップ60は、その先端部61に突設された凸部62が、フラップ60の延伸方向に貫通孔45に挿入されて、挿入方向に自在に扉部40に対して移動可能に構成した。これにより、フラップ60と扉部40との位置関係が変化したとしても、フラップ60の延伸方向に自在に扉部40に対して移動可能となることにより、扉部40を押し上げる方向に力が働くことを抑制できる。さらに、扉部40とインストルメントパネル2の裏面とは振動溶着リブ40bを介して固定されているため、この振動溶着リブ40bの高さ分、インストルメントパネル2の裏面と凸部62との間の隙間を大きく確保でき、凸部62の先端がインストルメントパネル2の裏面に干渉することを防止できる。
【0047】
次に、図9から図11を参照して、フラップ60の凸部62の構成を説明する。
【0048】
図9は、凸部62の表面(フラップ60の展開通路8とは逆側の面)拡大図であり、図10は、凸部62の裏面(フラップ60の展開通路8側の面、すなわちエアバッグ4aに臨む面)の拡大図である。図11は、凸部62が貫通孔45に嵌装された状態の扉部40の断面図である。
【0049】
図9及び10に示すように、凸部62は、フラップ60の先端部61から矩形状に突出する。凸部62は、その表面及び裏面に、厚さ方向に拡大されたリブを有する。凸部62の表面には二つのリブ62a、62bが形成され、凸部62の裏面には二つのリブ62c、62dが形成される。また、凸部62の裏面には、第1のリブである二つのリブ62c、62dに加え、その外周部分で裏面側へと厚さ方向に拡大された第2のリブであるリブ62eが形成される。
【0050】
凸部62は、表面のリブ62a、62b及び裏面のリブ62c、62d、62eにより、厚さ方向に拡大される。凸部62の表面のリブ62a、62b及び裏面のリブ62c、62dは、貫通孔45の幅方向の中央付近で貫通孔45の内側に接触し、リブ62eは、貫通孔45の幅方向の端部付近で貫通孔45の内側に接触する。凸部62が、これらリブを備えることにより、扉部40の貫通孔45の幅方向(扉部40の裏面から表面にかけての幅方向)へと、より密接して嵌装される。このような構成により、凸部62と貫通孔45とのガタを詰めることができ、車両1の走行時による振動によっても、凸部62と貫通孔45とにより発生する異音の発生を防止することができる。これらリブの厚さ方向の高さは、後述するようにエアバッグ4aが展開して扉部40が開く際に、扉部40の貫通孔45から凸部62が容易に外れるような高さに形成される。
【0051】
なお、凸部62にリブを形成するのではなく、貫通孔45の内側に、凸部62に向かって立設するリブを形成し、このリブが凸部62に接触するように構成してもよいし、凸部62と貫通孔45の双方に、他方に接触するようにリブを形成してもよい。
【0052】
また、図11に示すように、扉部40の貫通孔45は、その裏面側(展開通路8側)に対向する側において、扉部40の厚さ方向に薄肉形状とされた薄肉部45aを有する。薄肉部45aの厚さBは、扉部40の他の箇所の厚さAよりも薄く形成される。薄肉部45aにより、貫通孔45の開口面積が扉部40の内側から外側に向かうにつれて段差状に小さくなる。このように貫通孔45の開口面積が扉部40の内側で大きくなるような形状により、扉部40の貫通孔45にフラップ60の凸部62を挿入する際に、挿入が容易となり作業性が向上する。さらに、エアバッグ4aが展開して扉部40が開く際に、扉部40の貫通孔45から、容易に凸部62が外れることができる。
【0053】
なお、フラップ60及びガイド部50は、樹脂材料により射出成形により形成される。この形成のために、フラップ60はパーティングライン60Lが形成される。パーティングライン60Lは、図9に示すように、フラップ60の厚さ方向の一箇所にフラップ60を取り囲むような方向に形成される。パーティングライン60Lにおいては、樹脂材料が外側に突設する、いわゆるバリが形成される場合がある。
【0054】
ここで、エアバッグ4aが展開し、フラップ60の凸部62が扉部40の貫通孔45から外れたとき、フラップ60及び凸部62の裏面側にエアバッグ4aが接する。このとき、フラップ60の凸部62のパーティングライン60Lにバリが形成されている場合、パーティングライン60Lとエアバッグ4aとが接触するおそれがある。
【0055】
ここで、本実施形態の凸部62では、図9に示すように、パーティングライン60Lは、フラップ60の裏面、すなわちエアバッグ4aに臨む面とは反対の面側(インストルメントパネル2に近い側)に片寄った側面に形成される。このような構成により、エアバッグ4aの展開時に、パーティングライン60Lにエアバッグ4a直接接触することが防止される。
【0056】
次に、エアバッグ4aの展開時における扉部40及びフラップ60について説明する。図12は、エアバッグ4aの展開途中の状態を説明する断面図である。図13は、同じくエアバッグ4aの展開途中の状態を説明する断面図である。
【0057】
車両1の衝突時等の緊急時には、衝突を検出するセンサ(図示省略)からの信号に基づき、助手席乗員を保護するためにエアバッグ装置3が作動する。エアバッグ装置3が作動すると、エアバッグ4aは、インフレータ4dが発生させるガスによって展開して膨張し、インストルメントパネル2の裏面を押圧する。
【0058】
ここで、仮に、ガイド部が設けられずにフラップのみが取付部に取り付けられている場合(比較例)について検討する。この場合には、エアバッグの上面と取付部の本体部とによって画成される展開通路にフラップが配置されることになる。エアバッグが展開して膨張すると、フラップが撓み、その分だけ扉部の間の開裂線部に圧力を集中させることができない。特に、フラップが取付部に取り付けられている場合には、フラップの根本となる取付部との接触位置を起点として、フラップが回転するように撓むため、撓み量が大きくなる。
【0059】
本実施形態のエアバッグ取付構造10では、フラップ60と比較して剛性が高いガイド部50が、展開通路8を狭めるように取付部20から突出して設けられ、ガイド部50にフラップ60が接続される。これにより、剛性の高いガイド部50が展開通路8の容積を小さくするので、エアバッグ4aが膨張したときには、扉部40の間(横開裂線部6a)に圧力を集中させることができる。また、フラップ60は、取付部20から突出したガイド部50に接続されているので、フラップ60を小型化することが可能になる。そうすると、フラップ60を小型化した分だけフラップ60の撓みが小さくなるため、エアバッグ4aが膨張する際の圧力が扉部40の間に集中しやすくなる。
【0060】
エアバッグ4aが膨張して展開通路8内の圧力が上昇すると、図12に示すように、エアバッグ4aが扉部40の裏面を押圧して、扉部40がヒンジ部30を支点として回動する方向に移動する。これにより、インストルメントパネル2は開裂線6から開裂して開閉部7が開く。
【0061】
このとき、凸部62は、扉部40の貫通孔45に対して、回動する扉部40の回動方向に挿入されているので、図13に示すように、扉部40が回動するに従って、容易に貫通孔45から外れる。
【0062】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0063】
エアバッグ4aをインストルメントパネル2に取り付けるエアバッグ取付構造10は、少なくとも一端部41がインストルメントパネル2の開裂線6に沿うようにインストルメントパネル2の裏面に溶着され、エアバッグ4aが展開することにより開く扉部40と、エアバッグ4aが展開すると扉部40が開いて開状態になる開口部20aを有し、エアバッグ4aを収容するエアバッグケース4bが取り付けられる取付部20と、取付部20に接続され、扉部40を回動可能に保持するヒンジ部30と、エアバッグ4aとヒンジ部30との間に介在し、エアバッグ4aの展開時にエアバッグ4aによって付勢されて扉部40と共に回動するフラップ60と、を備える。扉部40には、扉部40の内側から外側に、扉部40のヒンジ部30側から一端部41側へと鋭角の傾斜をもって貫通する貫通孔45を有する。フラップ60は、その先端部61に、貫通孔45に挿入される凸部62を有し、フラップ60は、凸部62が貫通孔45に挿入された状態で、インストルメントパネル2の裏面と凸部62との間に隙間が形成され、フラップ60の先端部61であって凸部62が形成されていない箇所と扉部40の内側との間に隙間が形成される。
【0064】
この構成によれば、フラップ60の先端部61に凸部62を設け、鋭角の傾斜をもって貫通する貫通孔45に凸部62を挿入させ、凸部62とインストルメントパネル2との間に隙間が形成され、フラップ60の凸部62以外の先端部61と扉部40との間に隙間が形成される構成とした。このような構成により、フラップ60の凸部62が貫通孔45に対して鋭角の傾斜方向に自在に扉部40に移動可能とすることができると共に、製造時の誤差等によりフラップ60が設計寸法よりも大きく形成された場合にも扉部40を外側に押す力は発生しない。従って、扉部40がフラップ60に押されることがなく、インストルメントパネル2に開裂線6が浮き出ることが防止される。
【0065】
また、凸部62は、エアバッグ4aが展開して扉部40により開裂線6が開裂するときに、貫通孔45から外れる。
【0066】
この構成では、エアバッグ4aの展開時に凸部62が貫通孔45から外れ、フラップ60が、エアバッグ4aの膨張による圧力を一対の扉部40の間に集中させることができる。また、フラップ60が、エアバッグ4aがヒンジ部30の回転軸に直接接触するのを防止することができる。
【0067】
また、凸部62及び貫通孔45の少なくとも一方に、凸部62の厚さ方向で他方に接触するリブ(62a~62e)が設けられる。
【0068】
この構成では、凸部62のリブが貫通孔45に接触することで凸部62と貫通孔45との間隙を少なくしてガタを詰めることができ、車両1の走行時による振動によっても、凸部62と貫通孔45とにより発生する異音の発生を防止することができる。
【0069】
また、リブは、凸部62に形成され、貫通孔45の内側に接触する第1のリブ(62c、62d)と、第1のリブよりも貫通孔45の幅方向の端部に設けられて貫通孔45に接触する第2のリブ(62c、62d)と、を有する。
【0070】
この構成では、貫通孔45の幅方向の中心付近に第1のリブが、端部付近に第2のリブがそれぞれ接触することで、凸部62をより確実に貫通孔45に対して固定することで、凸部62と貫通孔45との間隙を少なくしてガタを詰めることができ、車両1の走行時による振動によっても、凸部62と貫通孔45とにより発生する異音の発生を防止することができる。
【0071】
また、フラップ60は、エアバッグ4aの展開時に、接続箇所54を中心として揺動し、接続箇所54から凸部62の先端までが、直線状に形成される。
【0072】
この構成では、フラップ60が、エアバッグ4aが展開するときに、エアバッグ4aが直線状のフラップ60に面で接して、接続箇所54を中心としてフラップ60を回動させることで、フラップ60が、エアバッグ4aの膨張による圧力を一対の扉部40の間に集中させることができる。
【0073】
また、貫通孔45は、扉部40の裏面側で肉厚が薄い薄肉部45aを有し、薄肉部45aにより、扉部40の内側から外側に向かうにつれて、貫通孔45の開口面積が小さくなる。
【0074】
この構成では、扉部40の裏面側で、貫通孔45の開口面積が大きくなるので、凸部62を挿入するときの作業性が向上する。なお、薄肉部45aは、扉部40の内側から外側に向かうにつれて貫通孔45がテーパ状に小さくなるような形状としてもよい。
【0075】
また、凸部62の側面には、フラップ60におけるエアバッグ4aに臨む面とは反対側の面側寄りにパーティングライン60Lを有する。
【0076】
この構成では、エアバッグ4aの展開時に、パーティングライン60Lにエアバッグ4a直接接触することが防止され、エアバッグ4aがパーティングライン60Lに接触することが防止される。
【0077】
また、ガイド部50は、フラップ60と比較して剛性が高い。
【0078】
この構成では、エアバッグ4aが膨張したときには、剛性の高いガイド部50が展開通路8に存在するため、エアバッグ4aの膨張による圧力を開裂線6に集中させやすい。
【0079】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0080】
10 エアバッグ取付構造
1 車両
2 インストルメントパネル
4a エアバッグ
6 開裂線
8 展開通路
20 取付部
20a 開口部
30 ヒンジ部
40 扉部
41 一端部
45 貫通孔
50 ガイド部
54 接続箇所
60 フラップ
60L パーティングライン
61 先端部
62 凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13