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  • 特開-充填材の打設深度確認装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131740
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】充填材の打設深度確認装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 15/06 20060101AFI20230914BHJP
   E02D 5/34 20060101ALI20230914BHJP
   G01B 21/18 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
E02D15/06
E02D5/34 Z
G01B21/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036651
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嵯峨 裕輝
(72)【発明者】
【氏名】川島 幸哲
(72)【発明者】
【氏名】金子 佳大
(72)【発明者】
【氏名】三橋 幸作
(72)【発明者】
【氏名】中島 朋宏
【テーマコード(参考)】
2D041
2D045
2F069
【Fターム(参考)】
2D041AA01
2D041BA44
2D041CB05
2D041DA01
2D045AA04
2D045BA04
2D045CA16
2F069AA43
2F069CC02
2F069DD19
2F069GG16
2F069HH30
2F069JJ02
(57)【要約】
【課題】場所打ち鋼管コンクリート杭の外周に設けられる鋼管と杭孔との間に充填される充填材の深度を正確に確認することができる充填材の打設深度確認装置を提供する。
【解決手段】充填材の打設深度確認装置10は、場所打ち鋼管コンクリート杭の外周に設けられる鋼管14と、鋼管14の外周面に、鋼管14の長手方向に沿って間隔を開けて配置した複数の温接点18Bと、温接点18Bが測定した温度を表示する温度表示部20Aと、を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
場所打ち鋼管コンクリート杭の外周に設けられる鋼管と、
前記鋼管の外周面に、前記鋼管の長手方向に沿って間隔を開けて配置した複数の温度測定部と、
前記温度測定部が測定した温度を表示する温度表示部と、
を有する、
充填材の打設深度確認装置。
【請求項2】
前記温度測定部は、熱電対の温接点である、
請求項1に記載の充填材の打設深度確認装置。
【請求項3】
前記温度測定部と前記鋼管との間に断熱材が設けられている、
請求項1または請求項2に記載の充填材の打設深度確認装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填材の打設深度確認装置に関する。
【背景技術】
【0002】
場所打ち鋼管コンクリート杭工事に用いられる工法として、オーバーフロー充填工法と呼ばれる工法がある。オーバーフロー充填工法では、上部に鋼管が取り付けられた鉄筋籠が杭孔に建て込まれ、鉄筋籠の内側に差し込んだトレミー管からコンクリートを吐出している。コンクリートの吐出に伴い、コンクリートのレベルが上昇し、鋼管の上端からコンクリートがオーバーフローすると、オーバーフローしたコンクリートが、鋼管と杭孔との間の隙間(一例として、50~100mm程度の間隔)に介在する安定液中に落下し、安定液と入れ替わるようにして該隙間に充填され、安定液はコンクリートによって押し上げられる。
【0003】
したがって、オーバーフロー充填工法において、コンクリートの充填途中では、鋼管の内側にコンクリートが充填されていても、鋼管と杭孔との間の隙間に充填されるコンクリートのレベルは鋼管の内側のレベルよりも低くなるため、鋼管と杭孔との間の隙間において、コンクリートが充填されているか否かを確認する必要がある。
充填材の打設レベルを測定する方法として、例えば特許文献1~5に記載の方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6343864号公報
【特許文献2】特許第2907769号公報
【特許文献3】特開平6-347306号公報
【特許文献4】特開平9-059982号公報
【特許文献5】特開2019-015084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2では、検尺錘を用いて削孔深度やコンクリート等の充填材の打設レベルを測定している。
検尺錘を用いる充填材の打設レベルの測定では、検尺錘を充填材の上端に吊下げて測定を行うが、充填材の硬さ、比重、粘性により測定者の手に伝わる感触が異なるため、測定値にバラつきが発生しやすい。また、感触で深度を判断するため、測定者の技能や経験値によって判断する測定値にバラつきが生じる。
さらに、場所打ちコンクリート杭の鋼管と杭孔との間における充填材の打設を確認する場合、検尺錘を隙間に挿入できない場合がある。
【0006】
特許文献3のアンカー・グラウト天端検知方法では、アンカー孔に配置されたガイドバー、PC鋼線などの引張り材に複数の熱電対を深さ方向に所定間隔で取付け、各熱電対の温度差を検知して打設グラウトの位置を検出しているが、場所打ちコンクリート杭の外周に設けられる鋼管と杭孔との間の隙間に充填されるコンクリートの位置を検出することはできない。
【0007】
特許文献4の水中コンクリートの打設方法では、コンクリートを打設する際に用いるトレミー管に、またはそれに平行に配置した保持部材に光ファイバー温度センサを配置し、コンクリートと水との温度差によってそれらの境界部位を検知しており、場所打ちコンクリート杭の外周に設けられる鋼管と杭孔との間の隙間に充填されるコンクリートの位置を検出することはできない。
【0008】
また、特許文献5のコンクリートの充填確認方法では、地中孔に建込む鉄筋籠に、接続部材を介して鉄筋籠から所定の距離を確保しつつ光ファイバセンサを設けてコンクリートの充填状況を確認しており、場所打ちコンクリート杭の外周に設けられる鋼管と杭孔との間の隙間に充填されるコンクリートの位置を検出することはできない。
【0009】
本発明は上記事実を考慮し、場所打ち鋼管コンクリート杭の外周に設けられる鋼管と杭孔との間に充填される充填材の深度を正確に確認することができる打設深度確認装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の充填材の打設深度確認装置は、場所打ち鋼管コンクリート杭の外周に設けられる鋼管と、前記鋼管の外周面に、前記鋼管の長手方向に沿って間隔を開けて配置した複数の温度測定部と、前記温度測定部が測定した温度を表示する温度表示部と、を有する。
【0011】
請求項1に記載の充填材の打設深度確認装置は、以下のようにして充填材の打設深度を確認することができる。
場所打ちコンクリート杭を施工する際に、外周に複数の温度測定部を配置した鋼管を杭孔に挿入して充填材を打設し、鋼管と杭孔壁との間に充填材が充填されると、充填材が充填された部分と充填されていない部位との温度が相違する。温度測定部が配置された複数箇所の温度を温度表示部で見ることで、鋼管と杭孔との間の充填材の深度を正確に確認することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の充填材の打設深度確認装置において、前記温度測定部は、熱電対の温接点である。
【0013】
請求項2に記載の充填材の打設深度確認装置では、熱電対の温接点で温度を検知することができる。熱電対は、例えば、光ファイバーと比較して屈曲させ易く、取り扱いが容易である。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の充填材の打設深度確認装置において、前記温度測定部と前記鋼管との間に断熱材が設けられている。
【0015】
請求項3に記載の充填材の打設深度確認装置では、温度測定部と鋼管との間に断熱材を設けることで、鋼管の温度の影響を受けずに、充填材などの温度測定対象の温度を正確に測定することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明の充填材の打設深度確認装置によれば、場所打ち鋼管コンクリート杭の外周に設けられる鋼管と杭孔との間に充填される充填材の深度を正確に確認することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る打設深度確認装置の温接点の位置を示す側面図である。
図2】シース熱電対の端部付近を示す鋼管の断面図である。
図3】打設深度確認装置でコンクリートの天端の位置を測定している様子を示す杭孔の縦断面図である。
図4】温度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1図4を用いて、本発明の一実施形態に係る打設深度確認装置10について説明する。
図1には、場所打ちコンクリート杭の施工途中の地盤Gが断面図にて示されている。
図1に示すように、地盤Gに形成された杭孔12の内部には、場所打ちコンクリート杭の杭頭となる上部に鋼管14が設けられた鉄筋かご16が建て込まれている。なお、杭孔12の開口部分には表層ケーシング17が嵌められている。
【0019】
鋼管14の上端部には、図示しないフーチング等と連結するための定着筋16Aが立設している。
【0020】
図2に示すように、鋼管14の外周には、打設深度確認装置10の温度計の一部を構成する複数のシース熱電対18が取り付けられている。シース熱電対18は、熱電対素線(図示せず)をチューブ18Aで覆ったものであり、熱電対素線の先端に設けられた温度測定部としての温接点18Bがチューブ18Aの端部から露出している。
【0021】
シース熱電対18の先端部分と鋼管14との間には、温接点18Bが鋼管14と接触しないように断熱材22が設けられている。断熱材22は、テープ、両面テープ、接着剤等を用いて鋼管14の外周面に固定されている。断熱材22としては、非吸水性の断熱材、一例として発泡スチロール、ポリウレタンフォーム等を用いることができる。
【0022】
シース熱電対18は、温度を表示する温度表示部20Aを備え、温度管理を行うためのデータロガー機能を備えた計測器本体20に接続されている。本実施形態では、シース熱電対18と、計測器本体20とで温度計24が構成されている。
【0023】
図1に示すように、本実施形態では、鋼管14の予め決められた深度方向(鋼管14の軸方向)の6箇所に温度測定箇所L1~L6が等間隔(一例として、2mピッチ)で設けられている。
【0024】
一番上の温度測定箇所L6、下から5番目の温度測定箇所L5、及び下から2番目の温度測定箇所L2には一断面に4箇所に周方向に等間隔で温接点(測温接点)が18Bが配置され、一番下の温度測定箇所L1、下から3番目の温度測定箇所L3、及び下から4番目の温度測定箇所L4には、一断面に1箇所に温接点18Bが配置されている。
このため、本実施形態では、15本のシース熱電対18が計測器本体20に接続されている。
【0025】
なお、一番上の温度測定箇所L1は、鋼管14の上端に位置している。
【0026】
図1、及び図2に示すように、鋼管14の外周には、鋼管14の外周面と杭孔12の内周面との所定の間隔を保つように、周方向、及び軸方向の複数個所にスペーサ26が設けられている。なお、シース熱電対18の温接点18Bは、スペーサ26よりも鋼管14の径方向内側に位置しており、温接点18Bが杭孔12の内周面に接触しないようになっている。
【0027】
(作用、効果)
次に、本実施形態の打設深度確認装置10の使用例を説明する。
場所打ち鋼管コンクリート杭の鋼管外周部の充填材の充填方法としては、一例として、オーバーフロー充填工法と、グラウト充填工法とがあるが、以下、オーバーフロー充填工法でコンクリートの打設深度を確認する方法について説明する。
【0028】
杭孔12に鉄筋籠16および鋼管14を建て込んだ後、各温度測定箇所(L1~L6)の計測温度が安定してからコンクリート32の打設を開始する。ここで、計測温度が安定とは、事前に測定したコンクリート32の温度よりも低い温度で安定することである。
【0029】
図3には、安定液(ベントナイト等)28が満たされた杭孔12の内部に配置された鋼管14にトレミー管30の先端が配置され、コンクリート32を打設している途中の様子が示されている。なお、図中、符号34はバイブレータである。
【0030】
トレミー管30の先端からコンクリート32が吐出され、鋼管14の内部でコンクリート32が上昇して鋼管14の上端からコンクリート32が溢れ出ると、溢れ出たコンクリート32は鋼管14と杭孔12との間に落下する。
【0031】
鋼管14と杭孔12との間の隙間に鋼管14の上端から溢れ出たコンクリート32が落下するにしたがい、該隙間においてコンクリート32のレベルが上昇する。
ここで、上昇するコンクリート32の天端が一番下の温度測定箇所L1に設けられた温接点18Bに接触すると、該温接点18Bで計測した温度が上昇するので、作業者は、温度表示部20Aを見ればコンクリート32が一番下の温度測定箇所L1まで充填されたことが確認できる。
【0032】
同様に、各温度測定箇所の温接点18Bにコンクリート32が接触すると、計測温度が高くなるので、鋼管14と杭孔12との間の隙間において、どの深度までコンクリート32が充填されたかが正確に確認できる。
したがって、鋼管14の上端に配置された温接点18Bで計測した温度が高くなれば、鋼管14の上端までコンクリート32が打設されたことになる。これにより、鋼管14の上端までコンクリート32が打設されたことが正確に確認できる。
【0033】
図4には、各温接点18Bで計測された温度変化を示すグラフの一例が示されている。このグラフから、時間が経過するにしたがってコンクリート32が鋼管14と杭孔12との間の隙間で上昇していることが分かる。
【0034】
本実施形態では、コンクリート32の温度が安定液28の温度よりも高い場合を想定して説明しているが、コンクリート32の温度が安定液28の温度よりも低い場合も考えられる。このような場合には、温度変化(ここでは温度低下)が計測された温接点18Bの部位がコンクリート32と安定液28との境界である、即ち、該温接点18Bの位置までコンクリート32が打設されたことが分かる。なお、安定液28、及びコンクリート32の温度は、コンクリート32の打設前に予め計測しておく。
【0035】
本実施形態では、オーバーフロー充填工法について説明したが、本実施形態の打設深度確認装置10は、鋼管を用いる場所打ちコンクリート杭の施工であればオーバーフロー充填工法以外の工法にも適用可能であり、グラウト充填工法にも適用できる。
【0036】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0037】
上記実施形態では、温接点18Bが鋼管14に接触しないようにシース熱電対18と鋼管14との間に断熱材22を設けたが、温接点18Bが鋼管14に接触しないように鋼管14に取り付けた支持部材等でシース熱電対18の先端部分を鋼管14から離間した状態で保持してもよい。
【0038】
上記実施形態では、熱電対を用いて温度を測定したが、本発明はこれに限らず、光ファイバー温度センサ、サーミスタ等の他の種類の温度計を用いることもできる。
【0039】
これらの温度計を用いる場合も、鋼管14の外周面に温度測定部が接触しないように温度測定部と鋼管14との間に断熱材22を設けることが好ましい。
【符号の説明】
【0040】
10 打設深度確認装置
14 鋼管
18B 温接点(温度測定部)
20A 温度表示部
24 温度計
32 コンクリート(充填材)
図1
図2
図3
図4