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特開2023-131741医療画像表示システム、医療画像表示方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131741
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】医療画像表示システム、医療画像表示方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G09B 19/00 20060101AFI20230914BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
G09B19/00 Z
A61B6/00 390Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036652
(22)【出願日】2022-03-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 集会名:第85回日本循環器学会学術集会 開催日:2021年3月26日~2021年3月28日(オンデマンド配信:2021年3月26日~2021年6月30日)
(71)【出願人】
【識別番号】510126379
【氏名又は名称】地方独立行政法人神奈川県立病院機構
(74)【代理人】
【識別番号】100140866
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 武史
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 脩
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093AA24
4C093AA26
4C093CA23
4C093DA02
4C093FF11
4C093FF31
4C093FG01
(57)【要約】
【課題】医療の初学者が平面的な臓器画像から、当該臓器を立体的に把握することを支援する。
【解決手段】医療画像表示システム1は、臓器を撮影した平面的な臓器画像と、臓器を立体的に模した3Dモデルであり、複数の部位からなる模擬臓器の画像である3D模擬画像と、を表示し、臓器画像を取得する臓器画像取得手段10と、模擬臓器を取得する模擬臓器取得手段30と、臓器画像と模擬臓器に基づく3D模擬画像とを、表示手段に表示する表示制御手段50と、臓器画像における臓器の撮影位置を示す撮影位置情報を受け付ける撮影位置情報受付手段40と、を備え、表示制御手段50は、撮影位置情報受付手段40が受け付けた撮影位置情報に基づき、表示手段に表示した3D模擬画像における模擬臓器の向きを変更する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
臓器を撮影した平面的な臓器画像と、臓器を立体的に模した3Dモデルであり、複数の部位からなる模擬臓器の画像である3D模擬画像と、を表示する医療画像表示システムであって、
前記臓器画像を取得する臓器画像取得手段と、
前記模擬臓器を取得する模擬臓器取得手段と、
前記臓器画像と前記模擬臓器に基づく前記3D模擬画像とを、表示手段に表示する表示制御手段と、
前記臓器画像における臓器の撮影位置を示す撮影位置情報を受け付ける撮影位置情報受付手段と、
を備え、
前記表示制御手段は、前記撮影位置情報受付手段が受け付けた前記撮影位置情報に基づき、前記表示手段に表示した前記3D模擬画像における前記模擬臓器の向きを変更することを特徴とする医療画像表示システム。
【請求項2】
前記表示制御手段は、複数の前記部位に互いに異なる色が付された前記模擬臓器の前記3D模擬画像を、前記表示手段に表示することを特徴とする請求項1に記載の医療画像表示システム。
【請求項3】
前記表示制御手段は、
複数の前記部位をそれぞれ識別する識別情報が、前記模擬臓器の複数の前記部位にそれぞれ対応づけられた前記3D模擬画像を、前記表示手段に表示し、
前記撮影位置情報に基づき、前記3D模擬画像における前記模擬臓器の向きを変更する場合、前記識別情報の位置も変更することを特徴とする請求項1又は2に記載の医療画像表示システム。
【請求項4】
前記表示制御手段は、前記模擬臓器の一部を示す前記3D模擬画像を、前記表示手段に表示することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の医療画像表示システム。
【請求項5】
前記表示制御手段は、前記模擬臓器の一部を示す前記3D模擬画像と、前記模擬臓器の全体を示す前記3D模擬画像とを切り替えて、前記表示手段に表示することを特徴とする請求項4に記載の医療画像表示システム。
【請求項6】
臓器を撮影した平面的な臓器画像と、臓器を立体的に模した3Dモデルであり、複数の部位からなる模擬臓器の画像である3D模擬画像と、を表示する医療画像表示システムが実行する方法であって、
前記臓器画像を取得するステップと、
前記模擬臓器を取得するステップと、
前記臓器画像と前記模擬臓器に基づく前記3D模擬画像とを、表示手段に表示するステップと、
前記臓器画像における臓器の撮影位置を示す撮影位置情報を受け付けるステップと、
を含み、
受け付けた前記撮影位置情報に基づき、表示手段に表示した前記3D模擬画像における前記模擬臓器の向きを変更することを特徴とする医療画像表示方法。
【請求項7】
臓器を撮影した平面的な臓器画像と、臓器を立体的に模した3Dモデルであり、複数の部位からなる模擬臓器の画像である3D模擬画像と、を表示する医療画像表示システムを、
前記臓器画像を取得する臓器画像取得手段、
前記模擬臓器を取得する模擬臓器取得手段、
前記臓器画像と前記模擬臓器に基づく前記3D模擬画像とを、表示手段に表示する表示制御手段、
前記臓器画像における臓器の撮影位置を示す撮影位置情報を受け付ける撮影位置情報受付手段、
として機能させ、
前記表示制御手段は、前記撮影位置情報受付手段が受け付けた前記撮影位置情報に基づき、前記表示手段に表示した前記3D模擬画像における前記模擬臓器の向きを変更することを特徴とするプログラム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療画像表示システム、医療画像表示方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、患者の関心対象の冠動脈を画像化するための方法として、冠動脈枝を描写するコンピュータ断層撮影(CT)画像化データを取得し、関心対象の冠動脈の単一の血管造影投影を取得し、単一の血管造影投影をCT画像化データに位置合わせする方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-142320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、臓器を撮影した臓器画像(例えば、造影投影等)は平面的であり、この平面的な臓器画像から臓器を立体的に把握するには、医師等の医療関係従事者における多くの経験と知識が必要であった。このため、経験と知識が乏しい研修医等の初学者は、平面的な臓器画像から臓器を立体的に把握することは困難であった。
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法を実現するには、造影投影を取得するための造影装置に加え、断層撮影し立体的に表示するめの医療用のCT(Computed Tomography)装置が必要である。一般的に、CT装置は高価であり、医療機関においても設置台数が限られており、研修医等の初学者が、臓器を立体的に把握するための学習や練習のために用いることはできない。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、医療の初学者が平面的な臓器画像から、当該臓器を立体的に把握することを支援することが可能な医療画像表示システム、医療画像表示方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 臓器を撮影した平面的な臓器画像と、臓器を立体的に模した3Dモデルであり、複数の部位からなる模擬臓器の画像である3D模擬画像と、を表示する医療画像表示システムであって、
前記臓器画像を取得する臓器画像取得手段と、
前記模擬臓器を取得する模擬臓器取得手段と、
前記臓器画像と前記模擬臓器に基づく前記3D模擬画像とを、表示手段に表示する表示制御手段と、
前記臓器画像における臓器の撮影位置を示す撮影位置情報を受け付ける撮影位置情報受付手段と、
を備え、
前記表示制御手段は、前記撮影位置情報受付手段が受け付けた前記撮影位置情報に基づき、前記表示手段に表示した前記3D模擬画像における前記模擬臓器の向きを変更することを特徴とする医療画像表示システム。
【0008】
(1)の発明によれば、臓器を撮影した平面的な臓器画像(X線画像や内視鏡で撮影された画像等)と、臓器を立体的に模し、複数の部位からなる模擬臓器(例えば、既成の模型を3Dスキャンした3Dモデルや、臓器を立体的にモデリングした3Dモデル等)の画像である3D模擬画像と、を表示する医療画像表示システムは、臓器画像取得手段と、模擬臓器取得手段と、表示制御手段と、撮影位置情報受付手段と、を備える。
臓器画像取得手段は、臓器画像を取得する。
模擬臓器取得手段は、模擬臓器を取得する。
表示制御手段は、臓器画像と模擬臓器に基づく3D模擬画像とを、表示手段に表示する。
撮影位置情報受付手段は、臓器画像における臓器の撮影位置を示す撮影位置情報を受け付ける。
そして、表示制御手段は、撮影位置情報受付手段が受け付けた撮影位置情報に基づき、表示手段に表示した3D模擬画像における模擬臓器の向きを変更する。
【0009】
これにより、臓器を撮影した平面的な臓器画像と、臓器を立体的に模した模擬臓器の画像である3D模擬画像と、を表示可能となる。そして、3D模擬画像において、臓器画像における臓器の撮影位置に応じた向きの模擬臓器を表示できる。
【0010】
ここで、3D模擬画像は、臓器を立体的に模した模擬臓器の画像であり、実際の人間の臓器を撮影して得るデータでないので、既存の模型や資料等に基づき、予め作成し、記憶手段に記憶しておき、必要な時に、記憶手段から取得し(読み出し)、利用することが可能である。このため、従来技術のように、CT装置で実際の人間を断層撮影し立体的に表示する場合に比べ、容易に臓器の立体的な表示を得ることが可能となる。
【0011】
よって、CT装置のような高価な装置を必要とせずに、いつでも臓器を立体的に表示可能となり、これを平面的な臓器画像とを表示し、これを連動して向きを変えることが可能なので、医療の初学者が容易に、学習や練習のために用いることができる。
したがって、医療の初学者が平面的な臓器画像から、当該臓器を立体的に把握することを支援することが可能な医療画像表示システムを提供できる。
【0012】
また、従来、経験や知識が豊富な医師等の医療関係従事者は、臓器を撮影した平面的な臓器画像を頭の中で、立体的に変換して、手術等を行っていた。本発明によれば、このような経験や知識が豊富な医師等にしてみても、CT装置のような高価な装置を用いることなく、臓器を視覚で立体的に把握できるので、施術や判断の精度を向上することが可能となる。
【0013】
また、臓器を立体的に模した3Dモデルである模擬臓器を用いることで、実際の患者にX線等を照射し、実際の患者データを事前に取得する必要がないので、術前に放射線被ばくや薬剤投与といった患者への侵襲を抑えることができる。
【0014】
(2) 前記表示制御手段は、複数の前記部位に互いに異なる色が付された前記模擬臓器の前記3D模擬画像を、前記表示手段に表示することを特徴とする(1)に記載の医療画像表示システム。
【0015】
ここで、臓器画像がX線画像である場合、臓器画像は、無彩色で表示され、臓器の各部位の前後関係を把握することが困難である。
(2)の発明によれば、3D模擬画像において、複数の部位に互いに異なる色が付されているので、初学者であっても、臓器の構造や、臓器の各部位の把握が容易となる。
【0016】
(3) 前記表示制御手段は、
複数の前記部位をそれぞれ識別する識別情報が、前記模擬臓器の複数の前記部位にそれぞれ対応づけられた前記3D模擬画像を、前記表示手段に表示し、
前記撮影位置情報に基づき、前記3D模擬画像における前記模擬臓器の向きを変更する場合、前記識別情報の位置も変更することを特徴とする(1)又は(2)に記載の医療画像表示システム。
【0017】
(3)の発明によれば、3D模擬画像において、部位をそれぞれ識別する識別情報を、模擬臓器の各部位に対応づけた3D模擬画像を表示できる。これにより、初学者であっても、臓器の各部位の認識が容易となる。
また、臓器画像における臓器の撮影位置を示す撮影位置情報に基づき、3D模擬画像における模擬臓器の向きを変更する場合、識別情報の位置も変更する。これにより、臓器画像における臓器の撮影位置を変更した場合、これに追随して、3D模擬画像における識別情報も移動するので、向きが変わって、部位の識別情報の認識が困難になることを防止できる。
【0018】
(4) 前記表示制御手段は、前記模擬臓器の一部を示す前記3D模擬画像を、前記表示手段に表示することを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の医療画像表示システム。
【0019】
ここで、臓器は、複雑な構造のものが多い。このため、臓器全体の模擬臓器を表示した場合、3D模擬画像が煩雑となり、初学者において、臓器の部位の認識が困難となる場合がある。
(4)の発明によれば、模擬臓器の一部だけを表示可能となるので、複雑な構造を有する臓器の模擬臓器を分かり易く表示することが可能となる。
【0020】
(5) 前記表示制御手段は、前記模擬臓器の一部を示す前記3D模擬画像と、前記模擬臓器の全体を示す前記3D模擬画像とを切り替えて、前記表示手段に表示することを特徴とする(4)に記載の医療画像表示システム。
【0021】
ここで、複雑な構造を有する臓器の模擬臓器を表示した場合、3D模擬画像が煩雑となる一方で、模擬臓器の一部のみを表示した場合、この一部が模擬臓器全体のどの部分のものなのかを認識できなくなるという問題がある。
(5)の発明によれば、模擬臓器の一部を示す3D模擬画像と、模擬臓器の全体を示す3D模擬画像とを切り替えて表示することが可能となるので、模擬臓器の一部のみを表示し、当該部分の理解を深めつつ、全体の表示に切り替え、臓器全体における当該部分の位置を確認しながら、当該臓器の理解を深めることが可能となる。
【0022】
(6) 臓器を撮影した平面的な臓器画像と、臓器を立体的に模した3Dモデルであり、複数の部位からなる模擬臓器の画像である3D模擬画像と、を表示する医療画像表示システムが実行する方法であって、
前記臓器画像を取得するステップと、
前記模擬臓器を取得するステップと、
前記臓器画像と前記模擬臓器に基づく前記3D模擬画像とを、表示手段に表示するステップと、
前記臓器画像における臓器の撮影位置を示す撮影位置情報を受け付けるステップと、
を含み、
受け付けた前記撮影位置情報に基づき、表示手段に表示した前記3D模擬画像における前記模擬臓器の向きを変更することを特徴とする医療画像表示方法。
【0023】
(7) 臓器を撮影した平面的な臓器画像と、臓器を立体的に模した3Dモデルであり、複数の部位からなる模擬臓器の画像である3D模擬画像と、を表示する医療画像表示システムを、
前記臓器画像を取得する臓器画像取得手段、
前記模擬臓器を取得する模擬臓器取得手段、
前記臓器画像と前記模擬臓器に基づく前記3D模擬画像とを、表示手段に表示する表示制御手段、
前記臓器画像における臓器の撮影位置を示す撮影位置情報を受け付ける撮影位置情報受付手段、
として機能させ、
前記表示制御手段は、前記撮影位置情報受付手段が受け付けた前記撮影位置情報に基づき、前記表示手段に表示した前記3D模擬画像における前記模擬臓器の向きを変更することを特徴とするプログラム。
【0024】
このような(6)及び(7)の発明によれば、(1)に係る医療画像表示システムと同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、医療の初学者が平面的な臓器画像から、当該臓器を立体的に把握することを支援することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係る医療画像表示システムの概要を説明する図である。
図2】本発明の実施形態に係る医療画像表示システムの機能構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る医療画像表示システムにおける3D模擬画像の一例を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る医療画像表示システムにおける3D模擬画像の一例を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る医療画像表示システムにおける3D模擬画像の切り替えの一例を説明する図である。
図6】本発明の実施形態に係る医療画像表示システムに実行される医療画像表示処理を示すフローチャートである。
図7】本発明の実施形態に係る医療画像表示システムの作用効果を説明する図である。
図8】本発明の実施形態に係る医療画像表示システムの作用効果を説明する図である。
図9】本発明の実施形態に係る医療画像表示システムにおける3D模擬画像の別例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。
【0028】
[医療画像表示システムの概要]
図1は、本発明の実施形態に係る医療画像表示システムの概要を説明する図である。
医療画像表示システム1の概要について説明する。医療画像表示システム1は、臓器を撮影した平面的な臓器画像と、臓器を立体的に模し、複数の部位からなる模擬臓器の画像である3D模擬画像と、を表示手段300(例えば、ディスプレイ等)に表示する。
【0029】
医療画像表示システム1は、例えば、血管撮影において用いられるが、これに限らず、放射線を用いる検査、手術等の臓器の画像を表示する必要がある施術等に用いることができる。また、医療画像表示システム1は、臓器を立体的に把握する経験や知識が乏しい研修医等の初学者が、臓器を立体的に把握するための学習や練習を可能とする学習装置(例えば、医療画像表示システム1の機能を実現するアプリケーションを実行するスマートフォンやタブレット等)として用いることもできる。
【0030】
臓器画像は、図1に示す例では、画像取得医療機器100(例えば、造影装置等)により撮影された画像である。なお、本実施形態の説明では、臓器の一例として、冠動脈を例に説明するが、本発明は、冠動脈等の血管に限らず、骨、神経、肺、肝臓等の他の臓器を表示することもできる。
【0031】
模擬臓器は、例えば、臓器を立体的に模した模型を、3Dスキャナで読み取り生成された3Dモデルである。なお、模擬臓器は、臓器を立体的に模した模型の点群データ等の座標プロットから生成されたものでもよいし、模型を用いずに、臓器を参照してモデリングされた3Dモデルでもよい。
3D模擬画像は、任意の方向(例えば、臓器画像において臓器を撮影した方向に対応した方向)から見た模擬臓器を表示したものである。
【0032】
医療画像表示システム1は、例えば、画像取得医療機器100で撮影された臓器の臓器画像(例えば、造影画像)を取得する。また、医療画像表示システム1は、例えば、記憶手段から、当該臓器の模擬臓器を取得する。そして、医療画像表示システム1は、取得した臓器画像と取得した模擬臓器の3D模擬画像とを、表示手段300に表示する。
【0033】
また、医療画像表示システム1は、臓器画像における臓器の撮影位置を示す撮影位置情報を受け付ける。
【0034】
ここで、画像取得医療機器100は、例えば、造影装置(レントゲン装置)の場合、画像取得医療機器100を操作する操作者の操作に基づき、臓器を撮影する方向を変更可能である。本実施形態において、撮影位置情報は、臓器を撮影した方向を示す情報である。操作者の操作に基づき、臓器を撮影した方向が変わると、当然に、臓器画像に表示された臓器の向きが変わる。
【0035】
そして、医療画像表示システム1は、撮影位置情報に基づき、3D模擬画像における模擬臓器の向きを変更する。すなわち、医療画像表示システム1は、臓器画像における臓器を撮影した方向が変更された場合、これに連動して、3D模擬画像における模擬臓器の向きを変更する。
【0036】
このような医療画像表示システム1によれば、CT装置のような高価な装置を必要とせずに、いつでも臓器を立体的に表示可能となり、これを平面的な臓器画像とを表示し、これを連動して向きを変えることが可能なので、医療の初学者が容易に、学習や練習のために用いることができる。
したがって、医療の初学者が平面的な臓器画像から、当該臓器を立体的に把握することを支援することが可能となる。
【0037】
また、臓器を立体的に模した3Dモデルである模擬臓器を用いることで、実際の患者にX線等を照射し、実際の患者データを事前に取得する必要がないので、術前に放射線被ばくや薬剤投与といった患者への侵襲を抑えることができる。
【0038】
[システムの機能構成]
次に、システムの機能構成について説明する。
図2は、本発明の実施形態に係る医療画像表示システムの機能構成を示すブロック図である。
【0039】
医療画像表示システム1は、臓器画像取得手段10と、模擬臓器生成手段20と、模擬臓器取得手段30と、撮影位置情報受付手段40と、表示制御手段50と、を備え、画像取得医療機器100、記憶手段200、表示手段300等が接続可能であり、臓器を撮影した平面的な臓器画像と、臓器を立体的に模し、複数の部位からなる模擬臓器の画像である3D模擬画像と、を表示手段300に表示する。
【0040】
なお、医療画像表示システム1は、画像取得医療機器100において機能を実現してもよいし、画像取得医療機器100とは別の装置であってもよい。また、医療画像表示システム1は、記憶手段や表示手段に相当する機能を有する装置を備えてもよいし、図2に示すように、記憶手段200及び表示手段300を別の装置として設け、これらを接続してもよい。
【0041】
臓器画像取得手段10は、臓器画像を取得する。臓器画像取得手段10は、接続された画像取得医療機器100が撮影した臓器の画像をリアルタイムで臓器画像として取得してもよいし、予め画像取得医療機器100で撮影され、外部の記憶手段200や内部の記憶手段に記憶された臓器画像を、これらの記憶手段から読み出すことで取得してもよい。
【0042】
また、臓器画像取得手段10は、画像取得医療機器100から取得した臓器画像に、この臓器画像における臓器の撮影位置(臓器を撮影した方向)を示す撮影位置情報を対応付けて記憶手段に記憶する。撮影位置情報は、後述する撮影位置情報受付手段40が、画像取得医療機器100から取得する。
【0043】
模擬臓器生成手段20は、臓器を立体的に模した模型が、3Dスキャナで読み取られたデータから、3Dモデルである模擬臓器を生成し、記憶手段に記憶する。また、模擬臓器生成手段20は、模擬臓器の基準位置を設定する。基準位置は、後述する表示制御手段50が表示する3D模擬画像(模擬臓器を所定方向から見た画像)における初期状態(模擬臓器の向きを変更していない状態)の模擬臓器の向きである。例えば、人の冠動脈の模擬臓器であれば、基準位置は、人を正面から見た方向である。
【0044】
図3は、本発明の実施形態に係る医療画像表示システムにおける3D模擬画像の一例を示す図である。図3に示す例では、画像取得医療機器100を3Dスキャナとして機能させ、冠動脈を立体的に模した模型を3Dスキャンして生成した3Dモデルである模擬臓器を任意の方向から視た3D模擬画像を示している。この初期状態では、3Dモデルにおける全ての部位に同一の色(例えば、初期設定の色)が付されている。
【0045】
模擬臓器生成手段20は、模擬臓器を複数の部位(例えば、医学において分類される臓器の部位)に分類し、これらの部位に互いに異なる色を付する。
【0046】
また、模擬臓器生成手段20は、複数の部位をそれぞれ識別する識別情報を、模擬臓器の各部位に対応付ける。
【0047】
模擬臓器生成手段20は、生成した模擬臓器を、例えば、AI(artificial intelligence)により部位を解析し、各部位に色を付したり、識別情報を付したりしてもよいし、使用者の操作に基づき、各部位に色を付したり、識別情報を付したりしてもよい。
【0048】
図4は、本発明の実施形態に係る医療画像表示システムにおける3D模擬画像の一例を示す図である。図4に示す例では、図3に示す3D模擬画像の模擬臓器の各部位に、互いに異なる色が付され、各部位に識別情報(例えば、「1」、「2」、「13」、「4PO」等)が対応付けられている。
【0049】
図4に示す例において、識別情報と模擬臓器の各部位とを補助線で繋ぐことで、各部位と識別情報とを対応付けている。これにより、3D模擬画像において、模擬臓器と識別情報とが重なり、認識しづらくなることを防止できる。なお、模擬臓器の各部位のそれぞれの位置に、それぞれの識別情報を配置し、補助線を省略してもよい。
【0050】
本実施形態では、模擬臓器の各部位を、冠動脈のAHA分類(American Heart Association Committee Report)に準じて分類し、このAHA分類に規定されている符号を識別情報としているが、模擬臓器の各部位の分類は、これに限らず、任意の位置で分類することができるし、各部位に任意の識別情報を付することができる。
【0051】
図2に戻って、模擬臓器取得手段30は、模擬臓器を取得する。模擬臓器取得手段30は、記憶手段から模擬臓器を読み出す。
【0052】
撮影位置情報受付手段40は、臓器画像における臓器の撮影位置を示す撮影位置情報を受け付ける。画像取得医療機器100からリアルタイムで臓器画像を取得する場合には、撮影位置情報受付手段40は、臓器画像取得手段10が取得した臓器画像における臓器の撮影位置を示す撮影位置情報を、画像取得医療機器100から受信する。また、記憶手段から臓器画像を読み出す場合には、撮影位置情報受付手段40は、記憶手段において当該臓器画像に対応付けられている撮影位置情報を読み出す。
【0053】
表示制御手段50は、臓器画像と3D模擬画像とを並べて、表示手段(例えば、表示手段300)に表示する。詳細には、表示制御手段50は、臓器画像取得手段10が取得した臓器画像を、表示手段に表示する。また、表示制御手段50は、模擬臓器取得手段30が取得した模擬臓器を所定方向から見た状態を示す3D模擬画像を、表示手段に表示する。
【0054】
医療画像表示システム1は、初期状態において、人を正面から見た状態の臓器を撮影(ベッドに仰向けで横架した人を上方から撮影)した臓器画像を、臓器画像取得手段10により取得する。そして、表示制御手段50は、この臓器画像と、模擬臓器取得手段30が取得した初期状態の模擬臓器の3D模擬画像と、を並べた医療画像を表示手段に表示する(図1参照)。
【0055】
また、表示制御手段50は、撮影位置情報受付手段40が受け付けた撮影位置情報に基づき、3D模擬画像における模擬臓器の向きを変更する。詳細には、例えば、画像取得医療機器100において、初期状態からカメラの位置が変更された場合、臓器画像に表示される臓器の向きが変更され、臓器画像取得手段10は、変更後の臓器画像を取得する。また、撮影位置情報受付手段40は、変更後の臓器の撮影位置を示す撮影位置情報を受け付ける。そして、表示制御手段50は、変更後の臓器画像と、模擬臓器を変更後の撮影位置情報が示す方向から見た3D模擬画像を、表示手段に表示する。また、表示制御手段50は、撮影位置情報(例えば、初期状態(初期位置(例えば、0度))からの回転角度等)を、表示手段に表示してもよい。
【0056】
また、表示制御手段50は、模擬臓器生成手段20により、模擬臓器の複数の部位に、互いに異なる色が付されていた場合、複数の部位に互いに異なる色が付された模擬臓器の3D模擬画像を、表示手段300に表示する。
【0057】
また、表示制御手段50は、模擬臓器生成手段20により、模擬臓器の複数の部位に、それぞれ識別情報が付されていた場合、識別情報が、模擬臓器の複数の部位にそれぞれ対応づけられた3D模擬画像を、表示手段300に表示する。また、この場合、表示制御手段50は、撮影位置情報受付手段40が受け付けた撮影位置情報に基づき、3D模擬画像における模擬臓器の向きを変更する場合、識別情報の位置も変更する。
【0058】
また、表示制御手段50は、使用者の操作に基づき、3D模擬画像において、模擬臓器の表示態様を変更してもよい。例えば、表示制御手段50は、使用者の操作に基づき、模擬臓器を、図3に示す初期状態、図4に示す色と識別情報が付された状態、色のみが付された状態、識別情報のみが付された状態のいずれかに切り替えて表示してもよい。これにより、初学者の習熟度に応じた態様で模擬臓器を表示可能となり、初学者の学習を促進することが可能となる。
【0059】
また、表示制御手段50は、模擬臓器の一部を示す3D模擬画像を、表示手段300に表示する。また、表示制御手段50は、模擬臓器の一部を示す3D模擬画像と、模擬臓器の全体を示す3D模擬画像とを切り替えて、表示手段300に表示する。
【0060】
図5は、本発明の実施形態に係る医療画像表示システムにおける3D模擬画像の切り替えの一例を説明する図である。
図5に示す例において、3D模擬画像に表示されている模擬臓器は、冠動脈である。表示制御手段50は、使用者の操作に応じて、3D模擬画像に表示する冠動脈の模擬臓器を、全体、一部(例えば、左冠動脈)又は他の一部(例えば、右冠動脈)に切り替えて、表示手段300に表示する。
【0061】
表示制御手段50は、例えば、模擬臓器の一部のみを3D模擬画像に表示している場合に、撮影位置情報受付手段40で受け付けた撮影位置情報が変更された場合(臓器画像に表示される臓器の向きが変更された場合)、3D模擬画像に表示している当該模擬臓器の一部の向きを変更する。そして、表示制御手段50は、3D模擬画像に表示する模擬臓器が、この一部から、全体又は他の一部に切り替えられた場合、切り替え後の模擬臓器(全体又は他の一部)も変更後の向きで表示する。
【0062】
なお、このような態様に限らず、表示制御手段50は、模擬臓器の全体と一部を互いに異なる方向(例えば、全体を初期状態のままとし、一部を撮影位置情報に応じた向き)から見た3D模擬画像を表示してもよい。また、表示制御手段50は、模擬臓器の全体と一部を互いに異なる拡大率で表示してもよい。また、表示制御手段50は、全体と一部とを切り替えずに、例えば、並べて表示してもよい。
【0063】
上記の本システムの機能構成は、あくまで一例であり、1つの機能ブロック(データベース及び機能処理部)を分割したり、複数の機能ブロックをまとめて1つの機能ブロックとして構成したりしてもよい。各機能処理部は、装置や端末に内蔵されたCPU(Central Processing Unit)が、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、ハードディスク等の記憶装置(記憶手段)に格納されたコンピュータプログラム(例えば、基幹ソフトや上述の各種処理をCPUに実行させるアプリ等)を読み出し、CPUにより実行されたコンピュータプログラムによって実現される。すなわち、各機能処理部は、このコンピュータプログラムが、記憶装置に格納されたデータベース(DB;Data Base)やメモリ上の記憶領域からテーブル等の必要なデータを読み書きし、場合によっては、関連するハードウェア(例えば、入出力装置、表示装置、通信インターフェース装置)を制御することによって実現される。また、本発明の実施形態におけるデータベース(DB)は、商用データベースであってよいが、単なるテーブルやファイルの集合体をも意味し、データベースの内部構造自体は問わないものとする。
【0064】
[医療画像表示処理]
次に、本システムにより実行される医療画像表示処理について説明する。以下の処理フロー図(フローチャート)においては、各ステップの入力と出力の関係を損なわない限り、各ステップの処理順序を入れ替えてもよい。
図6は、本発明の実施形態に係る医療画像表示システムに実行される医療画像表示処理を示すフローチャートである。
【0065】
ステップS1において、臓器画像取得手段10は、画像取得医療機器100が撮影した臓器の画像である臓器画像を、画像取得医療機器100又は記憶手段から取得する。
【0066】
ステップS2において、模擬臓器取得手段30は、記憶手段から、模擬臓器を読み出す。
【0067】
ステップS3において、表示制御手段50は、ステップS1で臓器画像取得手段10が取得した臓器画像と、ステップS2で模擬臓器取得手段30が取得した模擬臓器取得手段30が取得した初期状態の模擬臓器の3D模擬画像と、を並べた医療画像を表示手段に表示する。
【0068】
リアルタイムで臓器画像を取得している場合、ステップS4において、画像取得医療機器100でカメラの位置が変更(臓器画像に表示される臓器の向きが変更)されると、臓器画像取得手段10は、変更後の臓器画像を、画像取得医療機器100から取得する。このとき、撮影位置情報受付手段40は、臓器画像取得手段10が取得した変更後の臓器画像における臓器の撮影位置を示す撮影位置情報を、画像取得医療機器100から受信する。
【0069】
また、予め記憶された臓器画像を記憶手段から取得している場合、ステップS4において、臓器画像取得手段10は、使用者の操作に基づき、現在、表示している臓器画像とは臓器の向きが異なる臓器画像を取得する。このとき、撮影位置情報受付手段40は、記憶手段において当該臓器画像に対応付けられている撮影位置情報を読み出す。
【0070】
ステップS5において、表示制御手段50は、ステップS4の撮影位置変更処理に基づき、ステップS3で表示した医療画像を更新する。詳細には、表示制御手段50は、医療画像において、ステップS1で臓器画像取得手段10が取得した臓器画像をステップS4で取得した臓器画像に変更し、ステップS3で表示した3D模擬画像をステップS4で撮影位置情報受付手段40が受け付けた撮影位置情報に基づき、模擬臓器の向きが変更された3D模擬画像に変更する。
【0071】
図7は、本発明の実施形態に係る医療画像表示システムの作用効果を説明する図である。図7は、医療画像表示システム1で表示する医療画像に、理解を容易にするために、臓器画像に表示されている臓器と3D模擬画像に表示されている模擬臓器とにおける部位を対応付ける説明(矢印、「右冠動脈入口部画面奥から手前方向」、「3番遠位部画面手前から奥方向」、臓器画像に付された符号)を付加したものである。
【0072】
図7に示すように、例えば、画像取得医療機器100が造影装置(レントゲン装置)の場合、臓器画像は、グレースケールの濃淡で平面的に臓器が表示される。また、このような臓器の表示は、撮影されている者に投与されている造影剤が効いている間しか表示されないし、また、造影剤が効いている間も濃淡が変化し安定して表示されない。このため、医療の初学者は、このような不鮮明で平面的な臓器画像から、臓器の構造を把握するのは極めて困難である。
【0073】
これに対し、3D模擬画像は、臓器を立体的に模した模擬臓器の画像であるので、模擬臓器を明確で立体的に表示できる(例えば、教科書に記載されている形状に近似した形態で表示できる。)。このため、初学者は、3D模擬画像から臓器の構造を把握することができる。しかしながら、3D模擬画像だけを見ていても、臓器画像から、臓器の構造を把握できるようにはならない。3D模擬画像に表示された教科書的な模擬臓器で把握した知識を、臓器画像に表示された実際の臓器に対応付けて確認することで、最終的には、臓器画像だけから臓器の構造を把握することが可能となる。
【0074】
また、画像取得医療機器100のカメラが向いている角度に対応した向きの模擬臓器の3D模擬画像を表示するので、角度変更時につながりを持って3D模擬画像を観察可能となり、平面画像の立体把握が容易になる。具体的には、例えば、血管の前後左右が交差する動きから立体イメージを掴むことが容易になる。
【0075】
また、撮影をする前から模擬臓器の3D模擬画像を表示しておくことで、撮影をする前から臓器の撮影方向を知ることが可能となる。これにより、次に撮影される冠動脈の立体的な方向の事前把握が可能となる。
【0076】
図8は、本発明の実施形態に係る医療画像表示システムの作用効果を説明する図である。図8は、カテーテルを冠動脈に留置する際に、医療画像表示システム1で表示する医療画像の一例である。
【0077】
ここで、カテーテルを冠動脈に留置する場合、造影剤を用いずに骨や心臓の輪郭のみが投影される透視画像(テレビのようにパルス撮影された動画画像)を頼りに冠動脈の入口部をカテーテルで探り、分岐を選択的に進める。この際、従来のように、骨と心臓の輪郭のみが映される透視画像(臓器画像)だけでは、初学者にとっては、入口部の方向を把握する事が困難であった。
【0078】
図8に示すように、医療画像表示システム1によれば、模範的に作成された模擬臓器の3D模擬画像から目的とする方向を知ることでカテーテルの操作を学ぶことが可能となる。また、医療画像において、臓器画像の臓器の撮影方向を示す角度(カメラの回転角度)に対応し、模擬臓器を見た方向を示す角度を、3D模擬画像に表示することで、初学者は、骨や心臓の輪郭のみが投影される透視画像から、おおよその方向を知りながら、例えば、経験や知識が豊富な医師等である指導医から、技術説明を受けることも可能となる。また、指導医は、模範的に作成された模擬臓器の3D模擬画像を用いて、手技に対してリアルタイムの説明が可能となる。このように、医療画像表示システム1によれば、学ぶ側の理解を容易にし、教える側の指導を容易にすることが可能となる。
【0079】
また、医療画像表示システム1によれば、例えば、既に術中でも撮影された臓器画像を記憶手段から読み出し、読み出した臓器画像と3D模擬画像とを共に表示した医療画像を表示することで、過去の術中でも撮影されたシリーズに対応させた角度を手動で再現してプレビューすることが可能となる。この場合、医療画像表示システム1では、術中と同様に、画像取得医療機器100のカメラの向きを変えると自動で3D模擬画像の模擬臓器が追従して向きが変わる。このように構成することで、従来、実際の検査をガラス越しの隣室で技術指導をしたり、模型のみで技術指導したりしていた場面において、臓器画像と3D模擬画像とを対比しながら技術指導をすることが可能となるので、初学者の理解度をより向上することが可能となる。
【0080】
図9は、本発明の実施形態に係る医療画像表示システムにおける3D模擬画像の別例を説明する図である。
上記実施形態の説明では、3D模擬画像における主たる模擬臓器(例えば、冠動脈)背景が単色(例えば、黒等)で塗りつぶされている例を示したが、これに限らず、3D模擬画像における背景を他の模擬臓器(例えば、アライメント(脊椎の骨格)の模範模擬臓器)としてもよい。即ち、医療画像表示システム1は、3D模擬画像において、複数種類の模擬臓器(図9に示す例では第1模擬臓器、第2模擬臓器)を、模範的な位置関係で配置してもよい。
【0081】
また、使用者の操作に基づき、画像取得医療機器100のカメラの位置が変更(臓器画像に表示される臓器の向きが変更)された場合、これに伴い、3D模擬画像における複数種類の模擬臓器の向き(回転角度)を変更してもよい。
【0082】
これにより、主たる模擬臓器(例えば、冠動脈)と、当該臓器の周囲の臓器(例えば、アライメント)を重ねて把握することが可能となり、複数種類の臓器の互いの位置関係に対する初学者の理解度をより向上することが可能となる。
【0083】
医療画像表示システム1によれば、臓器を撮影した平面的な臓器画像と、臓器を立体的に模した模擬臓器の画像である3D模擬画像と、を表示可能となる。そして、3D模擬画像において、臓器画像における臓器の撮影位置に応じた向きの模擬臓器を表示できる。これにより、初学者が平面的な臓器画像から、当該臓器を立体的に把握することを支援することが可能となる。
【0084】
また、3D模擬画像は、臓器を立体的に模した模擬臓器の画像であり、実際の人間の臓器を撮影して得るデータでないので、既存の模型や資料等に基づき、予め作成し、記憶手段に記憶しておき、必要な時に、記憶手段から取得し(読み出し)、利用することが可能である。このため、CT装置で実際の人間を断層撮影し立体的に表示する場合に比べ、容易に臓器の立体的な表示を得ることが可能となる。
【0085】
ここで、CT装置で実際の人間を断層撮影した場合、臓器の形状は個人ごとに異なる。
医療画像表示システム1によれば、臓器を立体的に模した模擬臓器を用いることで、同一の模範欠陥を全検査に再現し続けられる。これにより、初学者は、模範の形、アライメントを学習することが可能となる。
【0086】
よって、CT装置のような高価な装置を必要とせずに、いつでも臓器を立体的に表示可能となり、これを平面的な臓器画像と表示し、これを連動して向きを変えることが可能なので、医療の初学者が容易に、学習や練習のために用いることができる。
したがって、医療の初学者が平面的な臓器画像から、当該臓器を立体的に把握することを支援することが可能な医療画像表示システムを提供できる。
【0087】
また、医療画像表示システム1によれば、このような経験や知識が豊富な医師等にしてみても、CT装置のような高価な装置を用いることなく、臓器を視覚で立体的に把握できるので、施術や判断の精度を向上することが可能となる。
【0088】
また、医療画像表示システム1によれば、臓器を立体的に模した3Dモデルである模擬臓器を用いることで、実際の患者にX線等を照射し、実際の患者データを事前に取得する必要がないので、術前に放射線被ばくや薬剤投与といった患者への侵襲を抑えることができる。
【0089】
また、臓器画像がX線画像である場合、臓器画像は、無彩色で表示され、臓器の各部位の前後関係を把握することが困難であるが、医療画像表示システム1によれば、3D模擬画像において、複数の部位に互いに異なる色が付されているので、初学者であっても、臓器の構造や、臓器の各部位の把握が容易となる。
【0090】
また、医療画像表示システム1によれば、3D模擬画像において、部位をそれぞれ識別する識別情報を、模擬臓器の各部位に対応づけた3D模擬画像を表示できる。これにより、初学者であっても、臓器の各部位の認識が容易となる。
また、臓器画像における臓器の撮影位置を示す撮影位置情報に基づき、3D模擬画像における模擬臓器の向きを変更する場合、識別情報の位置も変更する。これにより、臓器画像における臓器の撮影位置を変更した場合、これに追随して、3D模擬画像における識別情報も移動するので、向きが変わって、部位の識別情報の認識が困難になることを防止できる。
【0091】
また、臓器は、複雑な構造のものが多い。このため、臓器全体の模擬臓器を表示した場合、3D模擬画像が煩雑となり、初学者において、臓器の部位の認識が困難となる場合があるが、医療画像表示システム1によれば、模擬臓器の一部だけを表示可能となるので、複雑な構造を有する臓器の模擬臓器を分かり易く表示することが可能となる。
【0092】
また、複雑な構造を有する臓器の模擬臓器を表示した場合、3D模擬画像が煩雑となる一方で、模擬臓器の一部のみを表示した場合、この一部が模擬臓器全体のどの部分のものなのかを認識できなくなるという問題がある。
医療画像表示システム1によれば、模擬臓器の一部を示す3D模擬画像と、模擬臓器の全体を示す3D模擬画像とを切り替えて表示することが可能となるので、模擬臓器の一部のみを表示し、当該部分の理解を深めつつ、全体の表示に切り替え、臓器全体における当該部分の位置を確認しながら、当該臓器の理解を深めることが可能となる。
【0093】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の内容に限定されないことはいうまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者にとって明らかである。またその様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0094】
1 医療画像表示システム
10 臓器画像取得手段
20 模擬臓器生成手段
30 模擬臓器取得手段
40 撮影位置情報受付手段
50 表示制御手段
100 画像取得医療機器
200 記憶手段
300 表示手段



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9